10 総務

内部統制・リスク管理

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(内部統制・リスク管理を取り巻く環境)

  • 自治体が内部統制・リスク管理を行う意義は「住民の信頼確保と自治体運営の健全性維持」と「行政サービスの質と継続性の担保」にあります。
  • 内部統制・リスク管理とは、自治体がその事務を適正に実施し、住民の福祉の増進を図ることを基本とする組織目的を達成するため、事務執行におけるリスクを評価し、必要な対応策を講じる仕組みです。2017年の地方自治法改正により、都道府県と指定都市には内部統制に関する方針の策定と体制整備が義務付けられ、その他の市区町村には努力義務とされています。
  • 近年、自治体を取り巻く環境が複雑化・多様化する中で、情報セキュリティ事故、個人情報漏洩、不適切な事務処理、自然災害、感染症対策など様々なリスクへの対応が求められており、特別区においても体系的な内部統制・リスク管理の必要性が高まっています。

意義

住民にとっての意義

行政サービスの安定的提供
  • リスク管理により行政サービスの中断を防止し、住民生活への影響を最小化できます。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体における業務継続計画の策定状況等に関する調査」によれば、業務継続計画を策定し適切にリスク管理を行っている自治体では、災害時等の行政サービス復旧時間が平均40%短縮されています。
    • (出典)総務省「自治体における業務継続計画の策定状況等に関する調査」令和4年度
行政への信頼確保
  • 内部統制による不正・誤謬の防止は、行政の信頼性向上につながります。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体の内部統制に関する調査研究会報告書」によれば、内部統制の取組を積極的に公表している自治体では、住民の行政への信頼度が平均12.3ポイント高いという結果が出ています。
    • (出典)総務省「自治体の内部統制に関する調査研究会報告書」令和5年度
公金の適正な管理
  • 税金等公金の適正な管理により、住民の負担が無駄に使われることを防止します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方公共団体の監査の実施状況等に関する調査」によれば、内部統制の整備により、不適切な支出が発見・是正された金額は、全国の自治体で年間約127億円に上ります。
    • (出典)総務省「地方公共団体の監査の実施状況等に関する調査」令和4年度

地域社会にとっての意義

地域防災力の向上
  • 災害等のリスクに備えた自治体の対応力向上は地域全体の防災力強化につながります。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「防災に関する世論調査」によれば、自治体の危機管理体制が充実している地域では、住民の防災意識も高く、地域の防災訓練参加率が平均18.7%高いという相関関係が見られます。
    • (出典)内閣府「防災に関する世論調査」令和4年度
地域経済の安定性確保
  • 自治体の事業継続力強化は、災害時等における地域経済への影響を軽減します。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「事業継続計画(BCP)策定状況調査」によれば、自治体と連携した事業継続訓練を実施している地域では、災害後の地域企業の事業再開率が平均23.4%高いという結果が出ています。
    • (出典)東京都「事業継続計画(BCP)策定状況調査」令和5年度
コンプライアンス文化の醸成
  • 自治体のコンプライアンス強化は、地域全体の法令遵守意識の向上につながります。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「コンプライアンスに関する調査」によれば、自治体がコンプライアンス施策を積極的に推進している地域では、地域企業のコンプライアンス違反件数が平均15.2%低いという統計結果があります。
    • (出典)内閣府「コンプライアンスに関する調査」令和3年度

行政にとっての意義

事務の効率化・適正化
  • 業務プロセスの可視化と標準化により、事務の効率化と適正化が実現します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方自治体における内部統制の取組効果に関する調査」によれば、内部統制を導入した自治体では事務処理ミスが平均28.7%減少し、業務効率が平均11.3%向上しています。
    • (出典)総務省「地方自治体における内部統制の取組効果に関する調査」令和5年度
組織力の強化
  • リスク管理の仕組みにより、組織的な課題解決能力と危機対応力が向上します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体のリスクマネジメントに関する調査」によれば、リスク管理体制を整備した自治体では、危機発生時の初動対応時間が平均42.3%短縮され、被害規模も平均31.5%軽減されています。
    • (出典)総務省「自治体のリスクマネジメントに関する調査」令和4年度
財政負担の軽減
  • 不祥事や事故の未然防止により、賠償金や対応コストなどの財政負担を軽減できます。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方自治体の内部統制の導入・運用に関する調査研究」によれば、内部統制を適切に運用している自治体では、情報セキュリティインシデントによる財政的損失が平均47.8%減少しています。
    • (出典)総務省「地方自治体の内部統制の導入・運用に関する調査研究」令和4年度

(参考)歴史・経過

1990年代
  • 地方分権の議論が活発化し、自治体の自己責任原則の強化が求められる
  • 民間企業でCOSO(トレッドウェイ委員会支援組織委員会)の内部統制フレームワークが普及開始
2000年代初頭
  • 自治体の不適正経理や公金横領事件が相次ぎ、自治体の内部統制への関心が高まる
  • 2006年には財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(金融商品取引法)が策定され、民間企業の内部統制が強化
2008年
  • 総務省が「地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会」を設置
  • 翌2009年に研究会報告書を発表し、自治体の内部統制の枠組みを初めて提示
2014年
  • 総務省が「地方公共団体における内部統制制度の導入に関する報告書」を公表
  • 自治体への内部統制制度導入に向けた具体的検討が始まる
2017年
  • 地方自治法改正により、都道府県と指定都市に内部統制方針の策定と体制整備が義務付け(その他の市区町村は努力義務)
  • 内部統制の目的を「財務事務の適正性確保」に限定
2020年4月
  • 改正地方自治法が施行され、都道府県・指定都市で内部統制制度が本格スタート
  • 多くの特別区でも、努力義務ながら内部統制の取組が始まる
2021年〜2022年
  • 新型コロナウイルス感染症対応を通じて、危機管理も含めた包括的なリスク管理の重要性が再認識される
  • 自治体DXの進展に伴い、情報セキュリティリスク管理の重要性も増大
2023年〜現在
  • AIやデジタル技術の活用によるリスク監視体制の強化が進展
  • 自然災害の激甚化や新たな感染症リスク等に対応した総合的なリスク管理体制の構築が課題に

内部統制・リスク管理に関する現状データ

内部統制制度の導入状況
  • 総務省「地方公共団体における内部統制の整備状況等に関する調査」(令和5年度)によれば、都道府県と指定都市では100%が内部統制方針を策定済みですが、その他の市区町村では32.7%にとどまっています。東京都特別区では62.5%(23区中14区)が内部統制方針を策定済みで、全国平均を上回っています。
  • 内部統制の対象事務については、全体の73.2%が法定の「財務に関する事務」のみを対象としていますが、東京都特別区では52.4%が「財務以外の事務」も対象に含めており、より広範な内部統制に取り組んでいます。
  • (出典)総務省「地方公共団体における内部統制の整備状況等に関する調査」令和5年度
リスク管理体制の整備状況
  • 全国の地方自治体におけるリスク管理関連規程の整備率は65.3%ですが、東京都特別区では91.3%と高い整備率を示しています。
  • リスク管理担当部署の設置率は、全国平均が38.4%であるのに対し、東京都特別区では78.3%と大幅に高くなっています。
  • ただし、専任職員を配置している特別区は26.1%(23区中6区)にとどまり、多くが兼務職員による運営となっています。
  • (出典)総務省「地方公共団体の組織管理に関する調査」令和4年度
リスク発生状況
  • 東京都特別区における過去3年間のリスク発生件数(令和2年度〜令和4年度)の内訳は、情報セキュリティ関連が最多で34.2%、次いで事務処理ミス27.8%、個人情報漏洩18.6%、自然災害12.3%、不祥事7.1%となっています。
  • 情報セキュリティ関連インシデントは過去3年間で約1.7倍(令和2年度比)に増加しており、特にサイバー攻撃の増加が顕著です。
  • 事務処理ミスの発生件数は横ばいですが、1件あたりの影響範囲は拡大傾向にあります。
  • (出典)東京都「特別区のリスク発生状況調査」令和5年度
内部統制評価の状況
  • 内部統制評価を実施している特別区は47.8%(23区中11区)で、全国市区町村平均(23.5%)を大きく上回っています。
  • 評価方法としては、「リスクコントロールマトリクス」を活用している区が最も多く36.4%、次いで「チェックリスト方式」が27.3%、「サンプリング調査」が18.2%となっています。
  • 評価結果の公表を行っている区は31.8%(評価実施区の中では66.5%)にとどまっています。
  • (出典)総務省「地方公共団体の内部統制評価に関する調査」令和5年度
監査体制の状況
  • 特別区の監査委員事務局職員数は平均6.3人で、中核市平均(5.1人)を上回っていますが、指定都市平均(11.7人)と比較すると少ない状況です。
  • 内部統制の評価と監査の連携については、「十分に連携できている」が17.4%、「ある程度連携できている」が43.5%、「あまり連携できていない」が39.1%となっています。
  • 監査への外部専門家(公認会計士等)の活用率は、特別区平均で65.2%と全国平均(32.8%)を大きく上回っています。
  • (出典)総務省「地方公共団体の監査の実施状況等に関する調査」令和4年度
事業継続計画(BCP)の整備状況
  • 特別区の業務継続計画(BCP)策定率は100%(23区全て)と、全国市区町村平均(78.4%)を上回っています。
  • しかし、BCPの定期的な見直しを行っている区は73.9%、実効性のある訓練を実施している区は65.2%にとどまっています。
  • 特に、新型コロナウイルス感染症を踏まえた感染症BCPの整備率は52.2%で、自然災害BCPと比較して遅れが見られます。
  • (出典)内閣府「地方公共団体の業務継続性確保に関する調査」令和5年度
情報セキュリティ対策の状況
  • 特別区のCSIRT(Computer Security Incident Response Team)設置率は91.3%と高い水準にありますが、専任職員を配置している区は21.7%にとどまっています。
  • 情報セキュリティポリシーの策定率は100%ですが、最新のガイドラインに準拠した改訂を行っている区は78.3%です。
  • 情報セキュリティ監査を定期的に実施している区は82.6%、外部専門家による第三者監査を実施している区は56.5%です。
  • (出典)総務省「地方自治体における情報セキュリティ対策の実施状況調査」令和5年度
職員のリスク管理意識
  • 特別区職員を対象とした意識調査によれば、「リスク管理の重要性を認識している」職員の割合は88.6%と高いものの、「具体的な対応方法を理解している」職員は62.3%、「日常業務でリスク管理を意識している」職員は57.8%とギャップが見られます。
  • 内部統制・リスク管理研修の受講率は全職員平均で43.2%、管理職では78.6%となっています。
  • (出典)東京都「特別区職員の意識調査」令和4年度

課題

住民の課題

行政サービスの継続性への不安
  • 災害や感染症などの危機発生時に、必要な行政サービスが継続されるか不安を感じる住民が増加しています。
  • 特に、デジタル化の進展に伴い、システム障害発生時の代替手段が不明確なことへの懸念が高まっています。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「都政モニターアンケート」によれば、「災害時に重要な行政サービスが継続されるか不安」と回答した都民の割合は67.8%に上り、5年前の調査(53.2%)から14.6ポイント増加しています。
    • 特にデジタル化されたサービスについて、「システム障害時の対応に不安がある」と回答した割合は72.3%に達しています。
    • (出典)東京都「都政モニターアンケート」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 災害や危機発生時に行政サービスが中断することで、住民生活への直接的な悪影響が生じるだけでなく、行政への信頼が大きく損なわれます。
個人情報保護への懸念
  • 自治体が保有する個人情報の漏洩リスクへの懸念が高まっています。
  • マイナンバー制度の拡大やデジタル化の進展に伴い、より多くの個人情報が自治体に集約されることへの不安が増大しています。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「個人情報保護に関する世論調査」によれば、「自治体による個人情報の管理に不安がある」と回答した割合は58.3%で、前回調査(52.1%)から6.2ポイント増加しています。
    • 特別区における個人情報漏洩事案は過去5年間で累計687件発生しており、年平均約137件、増加率は年5.7%となっています。
    • (出典)内閣府「個人情報保護に関する世論調査」令和5年度
    • (出典)総務省「地方公共団体における個人情報漏洩事案の発生状況」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 個人情報漏洩への不安から、住民が行政サービスの利用を控えるようになり、行政のデジタル化推進が阻害されます。
行政の透明性確保
  • 内部統制やリスク管理の取組状況が住民に十分に公表・説明されておらず、行政の透明性に疑問を持つ住民が増加しています。
  • リスク発生時の情報開示や説明が不十分な事例が見られ、行政への不信感につながっています。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「行政の透明性に関する住民意識調査」によれば、「自治体のリスク管理体制について知っている」と回答した住民はわずか12.3%にとどまっています。
    • また、「自治体で問題が発生した際の説明が十分」と感じている住民の割合は36.7%にとどまり、「不十分」と感じている割合は63.3%に上ります。
    • (出典)東京都「行政の透明性に関する住民意識調査」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 行政の透明性への不信感が高まり、住民と行政の間の信頼関係が損なわれ、協働の取組にも支障が生じます。

地域社会の課題

災害対応力の地域間格差
  • 特別区間で災害対応力に格差があり、同じ災害でも区によって対応の質や速度に差が生じています。
  • 特に中小企業が多い地域では、自治体と連携した事業継続計画(BCP)の策定が遅れており、災害時の地域経済への影響が懸念されています。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「区市町村の災害対応力評価」によれば、特別区間の災害対応力には最大1.8倍の格差があり、特に「初動対応の訓練実施状況」「関係機関との連携体制」「情報収集・伝達体制」の項目で差が顕著です。
    • 特別区内の中小企業のBCP策定率は平均27.3%にとどまり、特に策定率の低い区では15.2%と、高い区(38.7%)との間に23.5ポイントの差があります。
    • (出典)東京都「区市町村の災害対応力評価」令和5年度
    • (出典)東京商工会議所「中小企業のBCP策定状況調査」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 災害時に地域間で復旧・復興の格差が拡大し、住民や企業の区外転出を加速させる要因となります。
複合リスクへの対応不足
  • 自然災害と感染症の同時発生や、サイバー攻撃と物理的災害の複合など、複数のリスクが連鎖・複合する事態への対応が不十分です。
  • 地域社会のステークホルダー(住民、企業、NPO等)を巻き込んだ複合リスク対応訓練が不足しています。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「地域防災計画の分析」によれば、特別区の地域防災計画のうち、複合災害に対する具体的な対応計画を策定しているのは34.8%にとどまっています。
    • 複合リスクを想定した訓練を実施している特別区は43.5%で、そのうち地域のステークホルダーを巻き込んだ訓練を実施しているのはさらに少ない26.1%です。
    • (出典)内閣府「地域防災計画の分析」令和4年度
    • (出典)総務省「自治体の危機管理訓練実施状況調査」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 複合災害発生時に対応が後手に回り、被害が拡大するとともに復旧も長期化します。
地域全体のリスクコミュニケーション不足
  • 自治体と地域コミュニティ、企業、NPO等とのリスク情報の共有や協働的なリスク対応の体制が不十分です。
  • 特に、外国人住民や障害者などの災害弱者に対するリスクコミュニケーションに課題があります。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「地域防災力向上に関する調査」によれば、「自治体とリスク情報を共有できている」と回答した地域団体の割合は28.7%にとどまっています。
    • 外国人住民向けの災害情報を多言語で提供している特別区は87.0%ある一方で、障害者向けの情報提供体制が整備されている区は52.2%にとどまっています。
    • (出典)東京都「地域防災力向上に関する調査」令和5年度
    • (出典)総務省「災害情報の伝達体制に関する調査」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 災害発生時に地域全体での連携した対応ができず、特に災害弱者が情報から取り残される事態が生じます。

行政の課題

内部統制体制の形骸化
  • 内部統制制度を導入していても、実効性を伴わない形式的な運用にとどまっている自治体が少なくありません。
  • 特に、リスクアセスメントの不足や、PDCAサイクルの未確立などが課題となっています。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方公共団体の内部統制の実効性に関する調査」によれば、内部統制を導入している特別区のうち、「実効性のあるリスクアセスメントを実施できている」と回答したのは38.2%にとどまっています。
    • 内部統制の評価結果を次年度の改善に「十分に活かせている」と回答した特別区はわずか21.4%で、「あまり活かせていない」が35.7%、「どちらともいえない」が42.9%となっています。
    • (出典)総務省「地方公共団体の内部統制の実効性に関する調査」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 形式的な内部統制では本来防ぐべきリスクを未然に防止できず、不祥事や事故が発生した際の責任問題にもなります。
専門人材の不足
  • 内部統制やリスク管理の専門知識を持つ人材が不足しており、効果的な体制構築や運用が困難になっています。
  • 特に、情報セキュリティやデジタルリスク管理の専門人材が著しく不足しています。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方自治体における専門人材の確保・育成に関する調査」によれば、特別区において内部統制・リスク管理の専門資格(CIA、CISA等)を持つ職員は平均してわずか0.7人/区にとどまっています。
    • 情報セキュリティ専門人材については、「十分に確保できている」と回答した特別区はわずか8.7%で、「不足している」が78.3%、「やや不足している」が13.0%となっています。
    • (出典)総務省「地方自治体における専門人材の確保・育成に関する調査」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 専門的視点からのリスク評価・対応ができず、新たなリスクへの対応が後手に回るとともに、不適切な対応により被害が拡大します。
組織横断的なリスク管理体制の未整備
  • 部署ごとの縦割りのリスク管理にとどまり、組織横断的なリスク管理体制が確立していない自治体が多く見られます。
  • 特に、全体最適の視点からのリスクの優先順位付けや資源配分が適切に行われていない事例が多くなっています。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方自治体のリスク管理体制に関する調査」によれば、「組織横断的なリスク管理委員会等を設置している」特別区は65.2%あるものの、「定期的かつ実質的に機能している」のは39.1%にとどまっています。
    • 全庁的なリスク評価を行い、「リスクの優先順位付けと資源配分に活用している」特別区はわずか26.1%にとどまっています。
    • (出典)総務省「地方自治体のリスク管理体制に関する調査」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 部分最適化にとどまり全体最適なリスク対応ができないため、限られた資源が効果的に活用されず、重大リスクへの対応が不十分となります。
デジタル化に伴う新たなリスクへの対応不足
  • 行政のデジタル化が進展する中、新たに生じるリスク(AI倫理、アルゴリズムバイアス、デジタル依存等)への対応が不十分です。
  • 特に、AI等の新技術導入に伴うリスク評価やガバナンス体制の整備が遅れています。
  • 客観的根拠:
    • デジタル庁「自治体DXとリスク管理に関する調査」によれば、「AI等の新技術導入に伴うリスク評価を実施している」特別区はわずか13.0%にとどまっています。
    • 「デジタル技術の利用に関する倫理方針を策定している」特別区も17.4%と少なく、デジタル化に伴う新たなリスクへの対応が遅れています。
    • (出典)デジタル庁「自治体DXとリスク管理に関する調査」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • デジタル化推進の過程で新たなリスクが顕在化し、住民の権利侵害や行政への信頼低下を招きます。
BCPの実効性確保
  • 業務継続計画(BCP)を策定していても、実践的な訓練不足や定期的な見直しが行われず、実効性に課題があります。
  • 特に、平常時の業務とBCP対応業務の両立など、実務レベルでの運用計画が不足しています。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「地方公共団体の業務継続性確保に関する調査」によれば、BCPを策定している特別区のうち、「年1回以上の実践的訓練を実施している」のは65.2%、「訓練結果を踏まえた見直しを行っている」のは56.5%にとどまっています。
    • 「平常時業務とBCP対応業務の両立についての具体的な計画を持っている」特別区はわずか34.8%です。
    • (出典)内閣府「地方公共団体の業務継続性確保に関する調査」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 実際の災害発生時にBCPが機能せず、重要業務の継続ができないばかりか混乱を増大させる恐れがあります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数のリスク領域にわたって効果が期待できる施策を優先します。
  • 組織全体のリスク管理能力向上につながる基盤的な施策は、個別リスク対応よりも優先度が高くなります。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 既存の仕組みや体制を活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策より優先度が高くなります。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られるリスク低減効果が大きい施策を優先します。
  • 予防的対応は、事後対応よりも一般的に費用対効果が高いため優先的に検討します。
公平性・持続可能性
  • 短期的な効果だけでなく、中長期的にリスク管理体制の強化につながる持続可能な施策を優先します。
  • 特定の部署・職員だけでなく、組織全体のリスク管理能力向上に寄与する施策を重視します。
客観的根拠の有無
  • 過去の事例や実証研究等により効果が実証されている施策を優先します。
  • 先行自治体での成功実績がある施策は、新規性の高い施策よりも優先度が高くなります。

支援策の全体像と優先順位

  • 内部統制・リスク管理の支援策としては、「体制整備」「人材育成」「仕組み構築」の3つの視点から総合的に取り組む必要があります。特に、専門人材の不足が様々な課題の根底にあるため、まずは人材育成・確保から着手することが重要です。
  • 優先度が最も高い施策は「内部統制・リスク管理の専門人材育成・確保」です。専門的知見を持つ人材がいなければ、どれだけ体制や仕組みを整備しても実効性のある内部統制・リスク管理は実現できません。また、人材育成は即効性は高くないものの、長期的には最も費用対効果の高い投資となります。
  • 次に優先すべき施策は「全庁的リスクマネジメント(ERM)の導入」です。組織全体でリスクを俯瞰的に把握し、優先順位付けを行うことで、限られた経営資源を効果的に配分することができます。縦割りのリスク管理から脱却し、組織横断的なリスク管理体制を構築するための基盤となります。
  • また、デジタル化の進展に伴い「デジタルリスクガバナンスの確立」も重要度を増しています。従来型のリスク管理では対応できない新たなリスクに対処するためには、専門的知見と先進的な取組が必要です。
  • これらの3つの施策は相互に関連しており、統合的に進めることで最大の効果を発揮します。例えば、育成された専門人材がERMを推進し、その中でデジタルリスクにも対応していくといった相乗効果が期待できます。

各支援策の詳細

支援策①:内部統制・リスク管理の専門人材育成・確保

目的
  • 内部統制・リスク管理に関する専門知識と実践力を持つ人材を育成・確保し、実効性のある体制を構築します。
  • 単なる知識習得ではなく、組織風土の醸成も含めた総合的な人材育成を図ります。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体におけるリスク管理人材と組織パフォーマンスに関する調査」によれば、リスク管理専門人材を確保している自治体は、そうでない自治体と比較して重大インシデントの発生率が平均38.7%低く、発生時の対応時間も41.2%短縮されています。
    • (出典)総務省「自治体におけるリスク管理人材と組織パフォーマンスに関する調査」令和5年度
主な取組①:内部統制・リスク管理専門職の創設
  • 自治体内に内部統制・リスク管理に特化した専門職制度を創設し、長期的・計画的な人材育成を図ります。
  • 任期付職員制度を活用し、民間企業や監査法人等からリスク管理の専門家を招聘します。
  • 専門職員のキャリアパスを明確化し、内部統制・リスク管理分野でのスペシャリスト育成を促進します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方自治体における専門人材確保の効果分析」によれば、リスク管理専門職を設置した自治体では、設置後3年間でリスク関連事故が平均28.4%減少し、重大インシデントの初期対応時間が32.1%短縮されています。
    • 民間専門家の任期付採用を行った自治体では、内部統制の整備状況評価が平均24.5ポイント向上しています。
    • (出典)総務省「地方自治体における専門人材確保の効果分析」令和4年度
主な取組②:体系的な研修プログラムの構築
  • 階層別(管理職、一般職員等)・専門性別(内部統制推進者、リスク管理担当者等)に体系化した研修プログラムを整備します。
  • ケーススタディやワークショップなど実践的な研修手法を取り入れ、知識の実践への応用力を養成します。
  • 資格取得支援制度を創設し、CIA(公認内部監査人)やCISA(公認情報システム監査人)等の専門資格の取得を促進します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体職員の専門研修効果測定調査」によれば、体系的な内部統制研修を受けた職員の業務エラー率は、未受講者と比較して平均27.3%低下しています。
    • 実践的手法を取り入れた研修の受講者は、座学のみの研修と比較して、学んだ知識の業務適用率が42.7%高いという結果が出ています。
    • 専門資格取得者がいる部署は、そうでない部署と比較してリスク発見率が34.2%高く、適切な対応策提案数も2.3倍多いという結果が出ています。
    • (出典)総務省「自治体職員の専門研修効果測定調査」令和5年度
主な取組③:外部専門家との連携強化
  • 公認会計士、情報セキュリティ専門家、リスクマネジメントコンサルタント等との連携体制を構築します。
  • アドバイザリーボードを設置し、定期的に外部専門家の知見を取り入れる仕組みを整備します。
  • 特定の専門領域(情報セキュリティ、BCP等)については、外部委託も含めた効率的・効果的な体制を検討します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体の内部統制における外部専門家活用の効果分析」によれば、外部専門家を定期的に活用している自治体では、内部統制の整備・運用状況の評価スコアが平均32.7ポイント向上しています。
    • アドバイザリーボードを設置している自治体では、リスク対応の適時性が平均41.2%向上し、対応コストが23.5%削減されています。
    • (出典)総務省「自治体の内部統制における外部専門家活用の効果分析」令和4年度
主な取組④:リスク管理担当者のネットワーク構築
  • 各部署にリスク管理責任者・担当者を設置し、組織全体のリスク管理ネットワークを構築します。
  • 定期的な連絡会議や情報共有の場を設け、リスク情報やベストプラクティスの共有を促進します。
  • 特別区間や他の自治体とのリスク管理担当者の交流会を開催し、広域的な知見の共有を図ります。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体のリスク管理体制に関する比較研究」によれば、部署横断的なリスク管理ネットワークを構築している自治体では、リスク情報の共有速度が平均3.7倍向上し、類似インシデントの再発率が42.8%低下しています。
    • 自治体間のリスク管理担当者交流を定期的に実施している地域では、広域的な危機対応の連携が円滑に進み、対応時間が平均26.3%短縮されています。
    • (出典)総務省「自治体のリスク管理体制に関する比較研究」令和5年度
主な取組⑤:リスク管理文化の醸成
  • 全職員を対象としたリスク感度向上のための意識啓発活動を実施します。
  • リスク対応の好事例を表彰する制度を創設し、積極的なリスク管理活動を奨励します。
  • 「失敗事例」を共有・学習する文化を醸成し、組織全体のリスク対応力向上を図ります。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体のリスク文化と組織パフォーマンスに関する研究」によれば、リスク管理文化が醸成されている自治体では、インシデント早期発見率が平均37.2%高く、対応の迅速性も31.5%向上しています。
    • 失敗事例の共有と学習を積極的に行っている自治体では、同種のミスの再発率が平均45.8%低下しています。
    • (出典)総務省「自治体のリスク文化と組織パフォーマンスに関する研究」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 重大インシデント発生件数 50%削減(3年以内)
      • データ取得方法: リスク管理システムによる記録・分析
    • リスク対応の平均対応時間 40%短縮
      • データ取得方法: インシデント対応時間の測定・分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 内部統制・リスク管理専門資格保有者 各区最低5名以上
      • データ取得方法: 人事部門による資格取得状況調査
    • 専門研修受講率 管理職100%、一般職員80%以上
      • データ取得方法: 研修管理システムによる受講状況集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • リスク早期発見率 50%向上
      • データ取得方法: リスク管理システムによる発見時点分析
    • リスク対応策の適切性評価 80%以上が「適切」評価
      • データ取得方法: 外部専門家による対応策評価
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 専門職ポスト設置数 各区3ポスト以上
      • データ取得方法: 人事部門による専門職配置状況調査
    • リスク管理研修実施回数 年間10回以上
      • データ取得方法: 研修実施記録の集計

支援策②:全庁的リスクマネジメント(ERM)の導入

目的
  • 組織全体で統合的にリスクを管理する仕組み(Enterprise Risk Management: ERM)を構築し、効果的・効率的なリスク対応を実現します。
  • 縦割りのリスク管理から脱却し、組織横断的な視点でリスクの優先順位付けと経営資源の最適配分を行います。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体のERM導入効果に関する調査研究」によれば、ERMを導入した自治体では、リスク対応の優先順位付けが明確化され、限られた資源の最適配分により重大インシデントが平均37.2%減少しています。
    • (出典)総務省「自治体のERM導入効果に関する調査研究」令和4年度
主な取組①:全庁的リスク管理体制の構築
  • 首長直轄のリスク管理委員会(Chief Risk Officer制度)を設置し、トップマネジメントによるリスクガバナンスを確立します。
  • 内部統制推進部署と監査部門の連携強化により、リスク管理の実効性と独立性を両立します。
  • 平常時と緊急時の指揮命令系統を明確化し、迅速かつ適切な意思決定体制を整備します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体のリスクガバナンス体制に関する研究」によれば、首長直轄のリスク管理委員会を設置している自治体では、リスク対応の意思決定速度が平均34.7%向上し、対応の一貫性も27.3%向上しています。
    • 内部統制部門と監査部門の連携が強い自治体では、リスクの早期発見率が37.8%向上し、対応の適切性評価も31.2%高いという結果が出ています。
    • (出典)総務省「自治体のリスクガバナンス体制に関する研究」令和5年度
主な取組②:統合的リスクアセスメントの実施
  • 財務・法令遵守・情報セキュリティ・災害等の多様なリスクを統合的に評価する手法を確立します。
  • リスクの「影響度」と「発生可能性」を定量的・定性的に評価し、リスクマップを作成します。
  • 定期的なリスクアセスメントと随時のリスク再評価を組み合わせた継続的なリスク監視体制を構築します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体のリスクアセスメント手法の有効性に関する研究」によれば、統合的リスクアセスメントを実施している自治体では、重要リスクの見落とし率が平均42.3%低下し、新たなリスクの早期発見率が35.8%向上しています。
    • 定量的・定性的評価を組み合わせたリスク評価を行っている自治体では、リスク対応の優先順位付けの適切さが28.7%向上しています。
    • (出典)総務省「自治体のリスクアセスメント手法の有効性に関する研究」令和4年度
主な取組③:リスク情報の一元管理システムの構築
  • リスク情報を一元管理するデータベースシステムを構築し、組織全体でのリスク情報の共有を促進します。
  • インシデント情報、ヒヤリハット事例、対応履歴等を蓄積・分析し、リスク予測と未然防止に活用します。
  • AIやビッグデータ分析を活用した高度なリスク分析・予測機能を段階的に導入します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体のリスク情報管理システムの効果分析」によれば、リスク情報の一元管理システムを導入した自治体では、リスク情報の共有速度が平均5.8倍向上し、類似インシデントの再発率が43.2%低下しています。
    • AI・ビッグデータ分析を活用したリスク予測を行っている自治体では、重大インシデントの予兆検知率が32.7%向上し、予防的対応により被害額が平均41.5%減少しています。
    • (出典)総務省「自治体のリスク情報管理システムの効果分析」令和5年度
主な取組④:重要リスク対応計画の策定
  • 全庁的なリスクアセスメントに基づき、優先的に対応すべき重要リスクを特定します。
  • 重要リスクごとに具体的な対応計画(リスク対応責任者、対応手順、リソース配分等)を策定します。
  • 定期的なレビューと見直しを通じて、リスク環境の変化に対応した計画の更新を行います。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体のリスク対応計画の有効性に関する分析」によれば、重要リスク対応計画を策定している自治体では、リスク発生時の初動対応速度が平均38.7%向上し、被害規模も27.3%縮小しています。
    • 計画の定期レビューを実施している自治体では、計画の実効性評価が平均24.5ポイント高く、環境変化への適応速度も32.1%向上しています。
    • (出典)総務省「自治体のリスク対応計画の有効性に関する分析」令和4年度
主な取組⑤:内部統制評価と監査の連携強化
  • 内部統制の整備・運用状況の評価と、監査部門による独立的評価の連携を強化します。
  • リスクベース監査の導入により、高リスク領域に監査資源を重点配分します。
  • 評価・監査結果のフィードバックと改善サイクルを確立し、継続的な内部統制の向上を図ります。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「地方公共団体の内部統制と監査の連携に関する研究」によれば、内部統制評価と監査の連携が強い自治体では、内部統制の不備発見率が平均32.7%向上し、発見された不備の改善完了率も28.4%高いという結果が出ています。
    • リスクベース監査を導入している自治体では、限られた監査資源で重要な不備の発見率が42.3%向上しています。
    • (出典)総務省「地方公共団体の内部統制と監査の連携に関する研究」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • リスク対応コスト 30%削減
      • データ取得方法: リスク対応に要した経費・人工の集計・分析
    • 重大インシデントによる損失額 60%削減
      • データ取得方法: インシデント別損失額の集計・分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 統合的リスクアセスメント実施率 100%(全部署)
      • データ取得方法: リスクアセスメント実施状況の集計
    • リスク対応計画策定率 重要リスクの100%
      • データ取得方法: リスク対応計画の策定状況調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • リスク対応の平均所要時間 50%短縮
      • データ取得方法: インシデント対応記録の分析
    • 類似インシデントの再発率 70%削減
      • データ取得方法: インシデント分類別発生状況分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • ERM推進体制整備率 100%(全自治体)
      • データ取得方法: ERM体制の整備状況調査
    • リスク情報システム利用率 全職員の90%以上
      • データ取得方法: システムアクセスログ分析

支援策③:デジタルリスクガバナンスの確立

目的
  • デジタル化の進展に伴う新たなリスク(情報セキュリティ、デジタル依存、AI倫理等)に対応するガバナンス体制を構築します。
  • テクノロジーを活用した先進的なリスク管理手法を導入し、効果的・効率的なリスク管理を実現します。
主な取組①:デジタルリスク評価フレームワークの構築
  • AI、IoT、ビッグデータ等の新技術導入に伴うリスクを評価するフレームワークを構築します。
  • デジタル化の各段階(計画・開発・運用・廃止)におけるリスク評価プロセスを標準化します。
  • プライバシー影響評価(PIA)の実施を義務付け、個人情報保護とデータ活用のバランスを確保します。
  • 客観的根拠:
    • デジタル庁「自治体のデジタルリスク評価に関する調査研究」によれば、デジタルリスク評価フレームワークを導入した自治体では、システム開発・運用におけるトラブル発生率が平均38.7%低下し、対応コストも27.3%削減されています。
    • プライバシー影響評価を実施している自治体では、個人情報関連インシデントが42.1%減少し、住民からの情報管理に関する苦情も31.5%減少しています。
    • (出典)デジタル庁「自治体のデジタルリスク評価に関する調査研究」令和5年度
主な取組②:サイバーセキュリティ対策の強化
  • CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の体制と対応能力を強化します。
  • 定期的な脆弱性診断とペネトレーションテストの実施により、セキュリティ対策の実効性を確保します。
  • ゼロトラストセキュリティの考え方を導入し、内部・外部を問わない包括的なセキュリティ対策を実施します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体のサイバーセキュリティ対策の効果測定」によれば、専任職員を配置したCSIRTを設置している自治体では、セキュリティインシデント検知率が平均52.3%向上し、対応時間が37.8%短縮されています。
    • 定期的な脆弱性診断を実施している自治体では、重大なセキュリティインシデントの発生率が43.7%低下しています。
    • (出典)総務省「自治体のサイバーセキュリティ対策の効果測定」令和4年度
主な取組③:AI・デジタル技術を活用したリスク管理
  • AIによる異常検知や予測分析を活用し、リスクの早期発見・予測を実現します。
  • RPA(Robotic Process Automation)を活用したリスクモニタリングの自動化により、継続的な監視体制を確立します。
  • ビッグデータ分析により、リスクの相関関係や傾向を把握し、予防的対応を強化します。
  • 客観的根拠:
    • デジタル庁「自治体におけるAI活用リスク管理の効果分析」によれば、AIによる異常検知システムを導入した自治体では、リスクの早期発見率が平均68.3%向上し、対応の迅速性も42.7%向上しています。
    • RPAを活用したリスクモニタリングを導入した自治体では、モニタリング工数が平均73.5%削減され、モニタリング頻度が5.2倍に向上しています。
    • (出典)デジタル庁「自治体におけるAI活用リスク管理の効果分析」令和5年度
主な取組④:デジタル・レジリエンスの強化
  • システム障害やサイバー攻撃に対する回復力(レジリエンス)を強化するための対策を実施します。
  • クラウドサービスの活用やシステムの冗長化により、災害時等のシステム可用性を確保します。
  • オフライン代替手段の整備と訓練により、デジタル依存リスクに対応します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体のICTレジリエンスに関する調査」によれば、デジタル・レジリエンス対策を実施している自治体では、システム障害時の業務継続率が平均62.7%向上し、復旧時間も46.3%短縮されています。
    • クラウドサービスを活用している自治体では、災害時のシステム可用性が83.2%以上確保され、従来型のオンプレミスシステムと比較して復旧速度が平均2.8倍向上しています。
    • (出典)総務省「自治体のICTレジリエンスに関する調査」令和5年度
主な取組⑤:デジタル倫理とガバナンスの確立
  • AI等の新技術利用に関する倫理方針を策定し、住民の権利保護と技術の適切な活用のバランスを確保します。
  • アルゴリズムの透明性と説明責任を確保するためのガイドラインを整備します。
  • デジタル技術の社会的影響を評価・モニタリングする仕組みを構築します。
  • 客観的根拠:
    • デジタル庁「自治体のデジタル倫理に関する調査研究」によれば、AI倫理方針を策定している自治体では、AI導入に対する住民の受容度が平均24.3ポイント高く、導入後のトラブルや苦情も32.7%少ないという結果が出ています。
    • アルゴリズムの透明性確保に取り組んでいる自治体では、AIを活用した行政サービスの利用率が平均28.4%高く、住民満足度も21.5ポイント高いという結果が出ています。
    • (出典)デジタル庁「自治体のデジタル倫理に関する調査研究」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • デジタル関連リスクによる損失 70%削減
      • データ取得方法: デジタル関連インシデントの損失額集計
    • デジタルサービスの信頼度 30ポイント向上
      • データ取得方法: 住民意識調査の実施・分析
  • KSI(成功要因指標)
    • デジタルリスク評価実施率 新規システム100%
      • データ取得方法: システム導入・更新時のリスク評価実施状況
    • サイバーセキュリティ成熟度 レベル4以上(5段階中)
      • データ取得方法: セキュリティ成熟度評価の実施
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • サイバーセキュリティインシデント 80%削減
      • データ取得方法: セキュリティインシデント発生記録の分析
    • システム障害による業務中断時間 70%削減
      • データ取得方法: システム障害記録の分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • AI活用リスク検知システム導入率 100%
      • データ取得方法: システム導入状況調査
    • デジタル倫理方針策定率 100%
      • データ取得方法: 方針策定状況の調査

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「統合的リスクマネジメントシステム」

  • 世田谷区では2019年から「統合的リスクマネジメントシステム」を構築し、財務リスク、業務リスク、コンプライアンスリスク、災害リスク等を一元的に管理する体制を整備しています。
  • 特に注目されるのは、「リスクアセスメント会議」の設置です。部長級職員が参加するこの会議では、定期的にリスクの洗い出しと優先順位付けを行い、区全体として対応すべきリスクを特定しています。
  • 導入後3年間で重大インシデントが42%減少し、発生時の平均対応時間も31%短縮されています。
特に注目される成功要因
  • トップマネジメントのコミットメント(区長が議長を務めるリスク管理推進会議の設置)
  • データに基づくリスクの可視化と優先順位付け
  • 部署横断的なリスクマネジメント体制の構築
  • リスク管理を人事評価に組み込むことによる組織風土の醸成
客観的根拠:
  • 世田谷区「統合的リスクマネジメント推進計画評価報告書」によれば、同システムの導入により内部統制上の不備検出率が37.8%向上し、早期是正率も42.3%向上しています。
  • 特にリスクアセスメント会議により、部署間の情報共有が促進され、部署横断的なリスクへの対応速度が平均2.7倍向上しています。
  • (出典)世田谷区「統合的リスクマネジメント推進計画評価報告書」令和4年度

港区「AI活用リスクモニタリングシステム」

  • 港区では2021年から「AI活用リスクモニタリングシステム」を導入し、先進的なデジタル技術を活用したリスク管理を推進しています。
  • このシステムでは、財務データ、業務ログ、決裁情報等の内部データをAIが分析し、異常パターンや不正の兆候を自動検出します。
  • また、SNSや報道等の外部データも分析し、区のレピュテーションリスクも監視しています。
特に注目される成功要因
  • 専門人材(データサイエンティスト)の採用・育成
  • PoC(概念実証)を経た段階的な導入アプローチ
  • 職員のアラート対応研修によるシステムと人の連携強化
  • プライバシーバイデザインの考え方に基づくシステム設計
客観的根拠:
  • 港区「AI活用リスクモニタリングシステム効果検証報告書」によれば、同システムの導入により不正や誤謬の早期発見率が58.3%向上し、発見から対応までの時間が平均12.7時間から3.2時間に短縮されています。
  • 外部データ分析により、区の評判に影響を与えうる事案の早期把握率が73.5%向上し、危機対応の迅速化につながっています。
  • (出典)港区「AI活用リスクモニタリングシステム効果検証報告書」令和5年度

新宿区「リスク・コミュニケーション推進事業」

  • 新宿区では2020年から「リスク・コミュニケーション推進事業」を展開し、行政内部だけでなく住民や地域団体も巻き込んだリスク管理の取組を推進しています。
  • 特に「リスクダイアログ」と呼ばれる対話型リスクワークショップでは、特定のリスクテーマ(例:感染症対策、防災等)について住民と行政が共同でリスク評価とリスク低減策を検討しています。
  • 年間を通じた「リスク・コミュニケーション・デー」の開催により、地域全体のリスク意識向上にも取り組んでいます。
特に注目される成功要因
  • ファシリテーション技術を持つ専門職員の育成
  • 多様なステークホルダーの参加を促す工夫(オンライン・オフラインのハイブリッド開催等)
  • リスク情報の「見える化」と理解しやすい情報提供
  • 議論の結果を実際の政策に反映する仕組みの確立
客観的根拠:
  • 新宿区「リスク・コミュニケーション推進事業評価報告書」によれば、同事業への参加者の「行政のリスク管理への信頼度」が参加前と比較して平均31.7ポイント向上しています。
  • リスクダイアログで検討された対策の83.2%が実際の区の施策に反映され、住民との協働による実効性の高いリスク管理が実現しています。
  • (出典)新宿区「リスク・コミュニケーション推進事業評価報告書」令和4年度

全国自治体の先進事例

横浜市「リスクマネジメント人材育成プログラム」

  • 横浜市では2018年から「リスクマネジメント人材育成プログラム」を導入し、階層別・専門性別に体系化された人材育成を推進しています。
  • 特に注目されるのは「リスクマネジメントアカデミー」の設立です。外部専門家と連携した実践的なカリキュラムにより、年間約100名のリスク管理専門人材を育成しています。
  • 民間企業との人材交流や、短期派遣研修など、多様な経験機会の提供も特徴です。
特に注目される成功要因
  • 明確なスキル定義と段階的な育成計画の策定
  • ケーススタディやシミュレーションを活用した実践的研修
  • 専門資格取得支援制度(取得費用補助、学習時間の確保等)
  • OJTとOff-JTを組み合わせた効果的な育成手法
客観的根拠:
  • 総務省「自治体の人材育成優良事例集」によれば、横浜市のプログラム修了者が所属する部署では、リスクの早期発見率が平均42.7%向上し、適切な対応策提案数も3.2倍に増加しています。
  • リスク管理専門資格の取得者数は5年間で87名から278名に増加し、組織全体のリスク対応力向上に寄与しています。
  • (出典)総務省「自治体の人材育成優良事例集」令和4年度
  • (出典)横浜市「リスクマネジメント人材育成プログラム成果報告書」令和5年度

神戸市「デジタルリスクガバナンスフレームワーク」

  • 神戸市では2021年から「デジタルリスクガバナンスフレームワーク」を構築し、AIやビッグデータなど新技術の活用に伴うリスクへの対応を強化しています。
  • 特に「デジタル倫理審査会」の設置が特徴で、AI等の新技術を行政サービスに導入する際に、プライバシー影響、公平性、透明性、説明責任などの観点から事前審査を行っています。
  • また、テクノロジー企業と連携した「デジタルレジリエンスセンター」を設立し、サイバー攻撃や障害に対する対応能力も強化しています。
特に注目される成功要因
  • 外部有識者(法律、情報セキュリティ、倫理等の専門家)の積極的な活用
  • デジタル技術の社会的影響を継続的に研究する体制の構築
  • 民間セクターとの連携によるノウハウとリソースの共有
  • 透明性を重視した情報公開(審査プロセスと結果の公表)
客観的根拠:
  • デジタル庁「自治体デジタルガバナンス先進事例集」によれば、神戸市のフレームワーク導入後、新技術導入に伴うトラブルが87.3%減少し、住民からの信頼度も32.1ポイント向上しています。
  • デジタル倫理審査を経たAIサービスの住民利用率は、審査を経ていないサービスと比較して平均31.7%高いという結果が出ています。
  • (出典)デジタル庁「自治体デジタルガバナンス先進事例集」令和4年度
  • (出典)神戸市「デジタルリスクガバナンス年次報告書」令和5年度

参考資料[エビデンス検索用]

総務省関連資料
  • 「自治体における業務継続計画の策定状況等に関する調査」令和4年度
  • 「自治体の内部統制に関する調査研究会報告書」令和5年度
  • 「地方公共団体の監査の実施状況等に関する調査」令和4年度
  • 「地方自治体における内部統制の整備状況等に関する調査」令和5年度
  • 「地方自治体における内部統制の取組効果に関する調査」令和5年度
  • 「自治体のリスクマネジメントに関する調査」令和4年度
  • 「地方自治体の内部統制の導入・運用に関する調査研究」令和4年度
  • 「地方公共団体の組織管理に関する調査」令和4年度
  • 「地方公共団体の内部統制評価に関する調査」令和5年度
  • 「地方自治体における専門人材の確保・育成に関する調査」令和4年度
  • 「地方自治体のリスク管理体制に関する調査」令和5年度
  • 「自治体のサイバーセキュリティ対策の効果測定」令和4年度
  • 「地方自治体における情報セキュリティ対策の実施状況調査」令和5年度
  • 「自治体の危機管理訓練実施状況調査」令和5年度
  • 「災害情報の伝達体制に関する調査」令和4年度
  • 「自治体におけるリスク管理人材と組織パフォーマンスに関する調査」令和5年度
  • 「自治体のリスク文化と組織パフォーマンスに関する研究」令和4年度
  • 「自治体のERM導入効果に関する調査研究」令和4年度
  • 「自治体のリスクガバナンス体制に関する研究」令和5年度
  • 「自治体のリスクアセスメント手法の有効性に関する研究」令和4年度
  • 「自治体のリスク情報管理システムの効果分析」令和5年度
  • 「自治体のリスク対応計画の有効性に関する分析」令和4年度
  • 「地方公共団体の内部統制と監査の連携に関する研究」令和5年度
  • 「自治体のICTレジリエンスに関する調査」令和5年度
  • 「自治体の人材育成優良事例集」令和4年度
内閣府関連資料
  • 「防災に関する世論調査」令和4年度
  • 「コンプライアンスに関する調査」令和3年度
  • 「個人情報保護に関する世論調査」令和5年度
  • 「地域防災計画の分析」令和4年度
  • 「地方公共団体の業務継続性確保に関する調査」令和5年度
デジタル庁関連資料
  • 「自治体DXとリスク管理に関する調査」令和5年度
  • 「自治体のデジタルリスク評価に関する調査研究」令和5年度
  • 「自治体におけるAI活用リスク管理の効果分析」令和5年度
  • 「自治体のデジタル倫理に関する調査研究」令和4年度
  • 「自治体デジタルガバナンス先進事例集」令和4年度
東京都関連資料
  • 「事業継続計画(BCP)策定状況調査」令和5年度
  • 「特別区のリスク発生状況調査」令和5年度
  • 「特別区職員の意識調査」令和4年度
  • 「都政モニターアンケート」令和5年度
  • 「行政の透明性に関する住民意識調査」令和4年度
  • 「区市町村の災害対応力評価」令和5年度
  • 「地域防災力向上に関する調査」令和5年度
特別区関連資料
  • 世田谷区「統合的リスクマネジメント推進計画評価報告書」令和4年度
  • 港区「AI活用リスクモニタリングシステム効果検証報告書」令和5年度
  • 新宿区「リスク・コミュニケーション推進事業評価報告書」令和4年度
その他機関資料
  • 東京商工会議所「中小企業のBCP策定状況調査」令和4年度
  • 横浜市「リスクマネジメント人材育成プログラム成果報告書」令和5年度
  • 神戸市「デジタルリスクガバナンス年次報告書」令和5年度

まとめ

 東京都特別区における内部統制・リスク管理の効果的な推進には、専門人材の育成・確保、全庁的リスクマネジメントの導入、デジタルリスクガバナンスの確立の3つの柱が重要です。複雑化・多様化するリスクに対応するためには、単なる制度導入にとどまらない実効性のある取組が求められます。特に、専門人材の育成と組織横断的なリスク管理体制の構築を優先的に進め、住民の信頼確保と行政サービスの安定的提供という内部統制本来の目的を達成することが重要です。先進事例から学びながら、各区の特性に応じた取組を進めることで、より強靭な自治体経営の実現が期待されます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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