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PFS②

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成果連動型契約(PFS)導入事例(特別区以外の実例)

東京都特別区内において、市民活動支援施設でPFS(成果連動型民間委託契約)を導入した例は確認できません。実際、全国的にPFS導入自治体は1割未満にとどまっており 、認知症検診など健康・福祉分野での実施例が多い状況です 。以下に、他自治体での市民活動支援や類似分野におけるPFS事例をまとめます。主要事例を自治体・施設別に契約スキーム、期間・規模、成果検証方法、メリット・課題の各項目で比較しました。

導入自治体・施設

契約スキーム(成果指標・支払い)

実施期間・規模

成果・検証

メリット・課題・留意点

文京区:シビックセンター(認知症検診事業)(東京都文京区)

● エーザイ社との委託契約の一部にPFSを導入 。● 具体的な成果指標は公開されていないが、民間提案の創意工夫により成果向上を狙う。

令和4年度~(継続中)事業費:不明(介護・健康支援事業)

● 区内高齢者向け認知症検診の実施状況・啓発効果を、評価検討会で4段階評価 。● 令和4~6年度に計3回の評価検討会を実施 。

● 民間企業のノウハウ・資源を活用し、認知症早期発見や普及啓発を強化。● 成果連動により効果測定・可視化を促進。● ただし、指標設定やデータ収集の仕組み構築、評価委員会設置などの体制作りが課題。

島田市:金谷地区生活交流拠点(静岡県島田市)

● PPP(PFI)方式で旧庁舎跡地に複合施設(市役所支所・包括支援センター等)を整備・運営。 ● 指定管理者(民間企業)に運営委託し、その中の「SC(社会関係資本)醸成・向上業務」にPFSを導入 。● 成果指標は市民アンケートで測る「対面交流指標」「団体参加指標」「信頼感指標」等で、固定報酬+成果連動報酬の二重払い 。

令和5年10月1日~令和10年3月31日(約4.5年) 施設整備費:約2,305百万円(消費税含) うちPFS対象業務:約490百万円(固定267百+成果138百+成果85百)

● アンケート調査で市民の社会関係資本(SC)を評価し、醸成・向上度合いを測定。● 運営側はSC向上のためにイベントやワークショップ等を実施し、定量的なアンケート結果で成果を検証 。

● 複数機能を一体的に整備・管理し、まちづくり推進と行政コスト削減を両立。● 地域コミュニティ活性化をインセンティブ設計で促進。● 課題はSCという定性的概念の定量化・基準値設定の難しさとアンケート運用負担 。● 導入時はPFIの入札・契約手続き、KPI設計(客観的・測定可能指標の選定)が重要 。

前橋市:馬場川通り地区再生事業(群馬県前橋市)

● 中心市街地活性化の一環で、民間団体(前橋デザインコミッション)にまちづくり事業を委託し成果連動型とした(SIB/PFS) 。● 事業費は固定740万円+成果570万円(合計1,310万円) 。

R3年9月~R6年3月(約2年6ヶ月) 事業費:1,310万円(最大委託料)

● 成果指標に「馬場川通りエリアの1か月歩行者通行量」を設定(目標45,915人/月 )。● 街づくり勉強会開催数・参加者数、イベント数などのアウトプット指標も設定し、最終年度に歩行者数増加で評価 。

● 民間の創意工夫を重視し、まちの賑わい創出を目指す実験的事業。歩行者増加で成果を可視化。● 短期(数年)契約で実施し、成果連動による費用対効果改善を図る。● 一方、目標達成は不確実で、歩行者計測等のモニタリングコストや、小規模事業へのインセンティブ設計課題がある 。● 指標は事前調査データを基に設定し、契約中途で施工スケジュール変更対応など柔軟性も併せて検討 。

東近江市:コミュニティビジネス支援(滋賀県東近江市)

● 地方公共団体の補助金制度を成果連動型(SIB)に転換。 ● 市内の公益財団(東近江三方よし基金)が事務局となり、市の補助事業(コミュニティビジネス支援)を成果連動で実施 。● 採択事業者が自ら目標設定し、事業終了後の達成度合いで助成額を決定する仕組み。

平成28年度~(継続中) 年度ごとに数百万円規模の補助金枠で運用(例:平成28年度3~4件)。

● 例:採択事業(木材おもちゃ製作、空き家再生、地域困りごと解決支援など)ごとに事業計画と成果目標を設定。 ● 事業終了後に東近江三方よし基金が審査し、目標達成度合いに応じて補助金額を変動。 。

● 従来型補助に成果連動を組み込み、補助金の効果検証・最大化を図る。地域資金の循環や住民参加促進も期待。● 課題は事前に適切なKPI(成果目標)を設定する必要がある点と、中間評価・審査体制の整備。 。● 地域企業・金融機関等から出資を受けることで、民間参画を促進している。

池田市:フリースクール支援事業(大阪府池田市)

● 不登校児の学習支援(フリースクール事業)を段階的成果報酬型で実施(SIB/PFS) 。● 成果連動報酬型モデル契約で、第1期・第2期で段階委託(第1期9,000千円、第2期9,500千円) 。

第1期:平成30年度(7ヶ月)、第2期:令和元年度(9ヶ月) 契約金額:第1期9,000千円、第2期9,500千円

● 参加児童の学習計画達成率や通学率などの指標を設定し、達成度合いによって成果報酬を支払う 。● 各期終了後に中間評価・総括報告書を作成し、成果指標の達成状況を検証 。

● 学校に行けない子どもへの支援効果を明確化し、プログラム改善につなげる狙い。● ICT教材導入など民間ノウハウも活用。● 一方、短期間事業のため長期効果の把握は困難。また数値指標だけでは捉えにくい教育・心身面の成果測定が課題。

以上の事例から分かるように、まちづくり・福祉・教育分野でもPFS/SIB導入が試行されています。共通する留意点としては、以下が挙げられます。

民間事業者選定:原則として公募(プロポーザル)方式で事業者を選定し、公平性・透明性を確保すべき 。随意契約とする場合も選定理由の公表等が求められます 。 成果指標(KPI)設計:契約期間内に改善が見込める、客観的かつ定量的な指標を選ぶことが重要です 。指標設定にあたってはデータの入手可能性も考慮し、不適切な指標による“歪んだインセンティブ”に注意します 。初導入時は試行期間を短く設定する例もありますが、PFS本来の効果を発揮するには複数年契約が望ましいとされています 。 予算・契約:成果連動部分の予算は既存事業費の一部振替や補助金を活用でき、必要に応じて国のPFS交付金等も検討します。契約書には成果水準書を添付し、達成基準・支払い条件を明記します 。 評価体制:客観性確保のため第三者評価機関を活用することが推奨されます 。ただし成果指標が完全定量的な場合は必須ではありません。評価委員会の設置や定期的な成果検証報告など、透明な検証プロセスが求められます。 その他:実施主体間の連携(行政・民間・住民)、行政側の理解・合意形成も導入の鍵となります 。また、事業終了後の追跡調査や成果公表により、エビデンスを蓄積していくこともPFS普及には重要です 。

参考資料: 内閣府や国土交通省のガイドライン等 、各自治体・民間調査報告 など。表中の数値・期間は公表資料による。

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