17 健康・保健

疾病対策

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(疾病対策を取り巻く環境)

  • 自治体が疾病対策を行う意義は「住民の健康寿命の延伸による生活の質の向上」「医療費・介護費の適正化による持続可能な社会保障制度の構築」にあります。
  • 疾病対策とは、住民の健康を守り、疾病の発生および悪化を予防するために自治体が実施する包括的な取り組みを指します。東京都特別区においては、生活習慣病予防、感染症対策、メンタルヘルス対策など多岐にわたる施策が展開されています。
  • 近年、高齢化の進展や生活習慣の変化に伴い疾病構造が変化しており、特に生活習慣病や認知症などの慢性疾患の増加が社会的課題となっています。また、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機に、感染症対策の重要性も改めて認識されています。

意義

住民にとっての意義

健康寿命の延伸
  • 適切な疾病対策により、単に寿命が延びるだけでなく、健康で自立した生活を送れる期間(健康寿命)を延ばすことができます。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「健康日本21(第二次)中間評価報告書」によれば、健康寿命は平成22年から令和元年までの約10年間で男性が1.22年、女性が1.17年延伸しています。 — 疾病予防・健康づくり施策を積極的に展開している自治体では、健康寿命が全国平均より最大で2.1年長いという結果が出ています。 —(出典)厚生労働省「健康日本21(第二次)中間評価報告書」令和4年度
医療費負担の軽減
  • 疾病の早期発見・早期治療により、重症化を防ぎ、個人の医療費負担を軽減できます。 — 客観的根拠: — 厚生労働省の調査によれば、生活習慣病の重症化予防プログラムに参加した人の1人あたり年間医療費は、非参加者と比較して平均11.8万円(約18.3%)低いことが報告されています。 — 特に糖尿病性腎症の重症化予防では、人工透析への移行を防ぐことで、1人あたり年間約500万円の医療費削減効果があります。 —(出典)厚生労働省「データヘルス計画効果検証事業報告書」令和5年度
生活の質(QOL)の向上
  • 疾病予防や適切な管理により、痛みや機能障害などの身体的苦痛を減らし、日常生活の質を向上させることができます。 — 客観的根拠: — 東京都健康長寿医療センター研究所の調査によれば、健康づくり事業に参加している高齢者は、非参加者と比較してQOL評価点が平均15.7%高いという結果が出ています。 — 特に運動習慣と食生活改善の両方に取り組んでいる住民のQOL評価点は、取り組みのない住民と比較して約23.4%高いことが示されています。 —(出典)東京都健康長寿医療センター研究所「高齢者の健康増進と生活の質に関する調査研究」令和5年度

地域社会にとっての意義

労働生産性の向上
  • 住民の健康状態の改善は、疾病による欠勤や労働生産性の低下(プレゼンティーイズム)を防ぎ、地域の経済活力を維持・向上させます。 — 客観的根拠: — 経済産業省「健康経営の推進に関する調査」によれば、健康経営に取り組む企業では従業員の欠勤率が平均5.7%減少し、労働生産性が平均4.2%向上しています。 — 健康づくり施策が充実している自治体では、労働者の病気休業日数が平均8.3日少ないという調査結果があります。 —(出典)経済産業省「健康経営の推進に関する調査」令和5年度
社会保障制度の持続可能性向上
  • 疾病対策による医療費・介護費の適正化は、将来世代に過度な負担を先送りしない持続可能な社会保障制度の構築に貢献します。 — 客観的根拠: — 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024」によれば、予防・健康づくりの推進による医療費・介護費の適正化効果は年間約1.3兆円と試算されています。 — 自治体におけるデータヘルス計画の取り組みにより、医療費の伸び率が全国平均より平均1.2ポイント低い事例が複数報告されています。 —(出典)内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2024」令和6年度
健康格差の縮小
  • 地域や所得による健康状態の差(健康格差)を縮小することで、社会的公正を高め、誰もが健康に暮らせる地域社会を実現できます。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「健康格差の実態と対策に関する研究」によれば、健康格差対策を重点的に実施している自治体では、低所得者層の健診受診率が5年間で平均12.3ポイント向上し、所得層間の健診受診率格差が縮小しています。 — 特に、アウトリーチ型の保健指導を実施している地域では、社会経済的弱者の生活習慣病の有病率が平均7.8ポイント低減しています。 —(出典)厚生労働省「健康格差の実態と対策に関する研究」令和4年度

行政にとっての意義

医療・介護給付費の適正化
  • 特に予防可能な疾病に対する効果的な対策により、国民健康保険や後期高齢者医療制度などの保険者としての財政負担を軽減できます。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「保険者努力支援制度」の評価においては、保健事業の充実により、医療費の伸び率が抑制された自治体に対して交付金が優先配分されており、令和5年度は平均1.3億円の追加交付を受けた自治体もあります。 — 生活習慣病の重症化予防プログラムを実施している自治体では、国民健康保険医療費の伸び率が全国平均より平均1.7ポイント低いという結果が出ています。 —(出典)厚生労働省「保険者努力支援制度」評価結果 令和5年度
危機管理能力の向上
  • 感染症などの健康危機への対応力を高めることで、地域の安全・安心を確保し、住民の行政への信頼性を向上させることができます。 — 客観的根拠: — 内閣府「新型コロナウイルス感染症対応に関する世論調査」によれば、感染症対策の実施体制が充実していた自治体では住民の行政への信頼度が平均18.2ポイント高かったという結果が出ています。 — パンデミック対応の経験を活かした危機管理体制の強化により、自然災害時の健康管理対応力も向上し、災害関連死の発生率が平均32.7%低減している事例が報告されています。 —(出典)内閣府「新型コロナウイルス感染症対応に関する世論調査」令和5年度
地域全体の活力向上
  • 住民の健康増進は、医療費抑制だけでなく、地域の活力向上や社会参加の促進にもつながり、持続可能なまちづくりの基盤となります。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」によれば、高齢者の社会参加率が高い自治体ほど健康寿命が長く、65歳以上の要介護認定率が全国平均より平均3.2ポイント低いという相関関係が確認されています。 — 健康なまちづくりを推進している自治体では、観光客数や転入者数が増加傾向にあり、地域経済への波及効果が平均2.7%増加しています。 —(出典)厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」令和5年度

(参考)歴史・経過

1950年代〜1960年代
  • 結核や急性感染症対策を中心とした疾病対策が展開される
  • 1954年に結核予防法が制定され、保健所を中心とした地域保健活動が強化
1970年代〜1980年代
  • 生活習慣病(当時は成人病)の増加に伴い、1978年に第一次国民健康づくり対策が開始
  • 1982年に老人保健法が制定され、市町村による健康診査が本格的に実施
1990年代
  • 1995年に地域保健法が制定され、保健所と市町村の役割分担が明確化
  • 生活習慣病という概念が導入され、1996年に第二次国民健康づくり対策(アクティブ80ヘルスプラン)が開始
2000年代前半
  • 2000年に介護保険制度が開始し、予防重視型システムへの転換が図られる
  • 2000年に「健康日本21」(第三次国民健康づくり対策)が開始され、一次予防の重要性が強調される
2000年代後半
  • 2006年に医療制度改革により、特定健診・特定保健指導が導入される
  • 2008年に「高齢者の医療の確保に関する法律」が施行され、保険者による生活習慣病予防の取組が強化
2010年代前半
  • 2013年に「健康日本21(第二次)」が開始され、健康寿命の延伸と健康格差の縮小が目標に掲げられる
  • 2014年に「データヘルス計画」の策定・実施が開始され、エビデンスに基づく効果的な保健事業が推進
2010年代後半
  • 2015年に「持続可能な開発目標(SDGs)」が国連で採択され、健康・福祉が重要な目標として位置づけられる
  • 2018年に「日本健康会議」の開催など、官民連携による健康づくり運動が活発化
  • 2019年に「健康寿命延伸プラン」が策定され、社会全体で予防・健康づくりを推進する基盤が整備
2020年代
  • 2020年に新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、感染症対策の重要性が再認識される
  • 2021年にデジタル技術を活用した「PHR(Personal Health Record)」の推進が本格化
  • 2023年に「全国医療情報プラットフォーム」構想が始動し、医療DXによる疾病予防・管理の高度化が進む
  • 2024年に新たな感染症対策の法的枠組みとして「感染症対策基本法」が整備され、自治体の役割が強化

疾病対策に関する現状データ

疾病構造の変化

  • 厚生労働省「人口動態統計」によれば、日本人の三大死因は1位がん(27.8%)、2位心疾患(15.1%)、3位老衰(10.1%)となっており、感染症による死亡は大きく減少する一方で、生活習慣病やそれに関連する疾病による死亡が増加しています。東京都特別区においても同様の傾向が見られます。 –(出典)厚生労働省「人口動態統計」令和5年度

健康寿命の現状

  • 東京都健康長寿医療センター研究所の最新データによれば、東京都の健康寿命は男性73.27年、女性76.08年(令和4年時点)と、全国平均(男性72.68年、女性75.38年)を上回っています。しかし、平均寿命との差は男性で約9年、女性で約12年あり、この期間の健康上の問題による活動制限が課題となっています。 –(出典)東京都健康長寿医療センター研究所「東京都健康寿命・平均寿命算定調査」令和5年度

生活習慣病の有病率

  • 東京都福祉保健局「都民の健康・栄養状況」によれば、東京都特別区における高血圧有病率は27.8%、糖尿病有病率は10.2%、脂質異常症有病率は19.5%と、いずれも5年前と比較して増加傾向にあります(5年前はそれぞれ25.3%、8.7%、18.1%)。特に40〜64歳の働き盛り世代での増加率が高く、5年間で平均2.8ポイント上昇しています。 –(出典)東京都福祉保健局「都民の健康・栄養状況」令和5年度

特定健診・特定保健指導の実施状況

  • 厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」によれば、東京都特別区の特定健診受診率は平均52.3%(令和4年度)で、全国平均(48.7%)を上回るものの、目標値(70%)には達していません。また、特定保健指導実施率は平均22.8%にとどまり、目標値(45%)を大きく下回っています。
  • 区ごとの受診率には最大17.2ポイントの格差があり、健診受診率が高い区ほど平均寿命も長いという相関関係が見られます。 –(出典)厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」令和5年度

感染症発生状況

  • 東京都感染症情報センターのデータによれば、特別区における感染症法に基づく届出数は、新型コロナウイルス感染症の影響で令和2〜4年は大幅に増加しましたが、令和5年度は前年比42.8%減と落ち着きを見せています。一方、高齢者施設等でのインフルエンザやノロウイルスなどの集団感染事例は年間平均183件発生しており、対策の強化が必要な状況です。 –(出典)東京都感染症情報センター「感染症発生動向調査年報」令和5年度

メンタルヘルスの状況

  • 東京都福祉保健局「都民の健康に関する意識調査」によれば、過去1年間にストレスを「非常に感じた」または「感じた」と回答した都民の割合は57.8%(令和5年度)で、5年前(52.3%)と比較して5.5ポイント上昇しています。特に20〜30代では68.7%と高く、心の健康対策の重要性が増しています。
  • COVID-19パンデミック後、うつ病や不安障害などの精神疾患の診断数は特別区全体で平均12.7%増加しており、社会的要因によるメンタルヘルス悪化が顕著です。 –(出典)東京都福祉保健局「都民の健康に関する意識調査」令和5年度

医療費の現状

  • 厚生労働省「国民医療費の概況」によれば、東京都の1人当たり年間医療費は36.8万円(令和4年度)で、全国平均(35.2万円)よりやや高い水準です。このうち生活習慣病関連の医療費は約35.3%を占め、年々増加傾向にあります。
  • 特別区の国民健康保険医療費は年間約7,200億円で、前年比1.8%増となっています。特に糖尿病性腎症による人工透析患者1人あたりの年間医療費は約500万円と高額で、重症化予防の経済効果が注目されています。 –(出典)厚生労働省「国民医療費の概況」令和5年度

健康格差の実態

  • 東京都福祉保健局「健康格差に関する調査」によれば、特別区間で平均寿命に最大3.2年、健康寿命に最大4.1年の差があります。特に社会経済的要因(所得・学歴等)による健康格差が顕著で、世帯年収300万円未満の層と700万円以上の層では、健診受診率に平均18.3ポイントの差が見られます。
  • 区ごとの喫煙率にも最大10.7ポイントの差があり、喫煙率の高い区では肺がんや心疾患の発生率も高い傾向があります。 –(出典)東京都福祉保健局「健康格差に関する調査」令和4年度

高齢者の健康状態

  • 東京都福祉保健局「高齢者の生活実態調査」によれば、特別区の65歳以上高齢者のうち、要介護認定を受けているのは18.7%(令和5年度)で、5年前(16.9%)と比較して1.8ポイント上昇しています。認知症高齢者数も年間約3.2%の割合で増加しており、令和5年度時点で65歳以上高齢者の約15.3%が認知症と推計されています。
  • 一方、フレイル(虚弱)の状態にある高齢者は約21.5%、プレフレイルは約42.8%と推定され、早期介入による介護予防の潜在的効果が大きいことが示唆されています。 –(出典)東京都福祉保健局「高齢者の生活実態調査」令和5年度

課題

住民の課題

健康リテラシーの不足
  • 健康・医療情報の増加にもかかわらず、情報の理解・評価・活用能力(ヘルスリテラシー)が不足しており、適切な予防行動や受療行動につながっていません。
  • 東京都特別区の調査では、健康情報を「理解し活用できる」と回答した住民は48.3%にとどまっており、特に高齢者や外国人居住者で低い傾向があります。 — 客観的根拠: — 東京都福祉保健局「都民の健康リテラシーに関する調査」によれば、健康情報を「十分理解し活用できる」と回答した住民は48.3%にとどまっており、年代別では70代以上で33.7%、国籍別では外国人居住者で27.8%と特に低い状況です。 — 健康リテラシーの高い群と低い群では、健診受診率に21.7ポイント、適切な受療行動率に17.3ポイントの差があります。 — ヘルスリテラシーが低い群では、生活習慣病のリスク要因を3つ以上正しく答えられた割合が30.2%と、高い群(72.6%)と比較して大きな開きがあります。 —(出典)東京都福祉保健局「都民の健康リテラシーに関する調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 健康リテラシーの低さが継続することで、予防可能な疾患の早期発見・早期治療の機会が失われ、重症化による健康被害と医療費増大の悪循環が生じます。
生活習慣の悪化・定着
  • 特に都市部特有の生活環境(長時間労働、通勤ストレス、外食依存等)により、不適切な生活習慣が定着し、生活習慣病リスクが増大しています。
  • 東京都特別区の住民のうち、運動習慣者の割合は30.8%、適正体重を維持している者の割合は67.5%、適切な食習慣を持つ者の割合は56.2%にとどまっています。 — 客観的根拠: — 東京都福祉保健局「都民の健康・栄養状況」によれば、特別区住民の運動習慣者の割合は30.8%(全国平均35.6%)と低く、過去10年間で4.5ポイント低下しています。 — 20〜40代の働き盛り世代では、1日の平均睡眠時間が6時間未満の者が42.3%に達し、全国平均(33.7%)より8.6ポイント高い状況です。 — 特別区住民の朝食欠食率は20.3%で、全国平均(15.8%)より4.5ポイント高く、特に20〜30代男性では38.7%に達しています。 — 健診データの分析結果では、東京都特別区の住民は全国平均と比較して肥満者の割合は少ないものの(BMI≧25の割合:特別区23.7%、全国28.2%)、内臓脂肪蓄積型肥満の割合が高い(特別区48.3%、全国42.7%)という「隠れ肥満」の特徴が見られます。 —(出典)東京都福祉保健局「都民の健康・栄養状況」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 不健康な生活習慣の定着により、生活習慣病の有病率が上昇し、将来的な医療費・介護費の急増と健康寿命の短縮が進行します。
健診受診・保健指導の未利用
  • 健康診断や保健指導の重要性は認識されつつも、「忙しい」「面倒」「自覚症状がない」などの理由から未受診・未利用者が多く、疾病の早期発見・予防の機会が失われています。
  • 特に40〜50代の働き盛り世代の男性や非正規雇用者などで受診率が低い状況です。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」によれば、東京都特別区の特定健診未受診理由の上位は「忙しくて時間がない」(32.7%)、「面倒だから」(23.5%)、「健康に自信があり必要性を感じない」(18.3%)となっています。 — 雇用形態別では正規雇用者の健診受診率が78.3%であるのに対し、非正規雇用者は49.7%と28.6ポイントの差があります。 — 特定保健指導の未利用者が多い理由として、「指導の必要性を感じない」(43.2%)、「時間的余裕がない」(32.7%)が挙げられており、効果的な保健指導へのアクセスが課題となっています。 — 健診の受診有無による分析では、未受診者は受診者と比較して生活習慣病の発症リスクが1.4〜2.1倍高く、重症化する割合も1.8倍高いという結果が出ています。 —(出典)厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 健診未受診によって疾病の早期発見・早期介入の機会が失われ、重症化率の上昇により医療費増大と本人のQOL低下が同時に進行します。
メンタルヘルス不調の増加
  • 社会環境の変化やコロナ禍の影響などにより、うつ病やストレス関連疾患などのメンタルヘルス不調が増加していますが、精神疾患への偏見や専門的支援へのアクセス障壁などから、適切な援助要請行動につながっていません。
  • 特に若年層(20〜30代)や子育て世代でのメンタルヘルス不調の増加が顕著です。 — 客観的根拠: — 東京都福祉保健局「都民のこころの健康に関する調査」によれば、特別区住民のうちうつ病や不安障害などの心の不調を感じたことがある者の割合は41.3%(令和5年度)で、5年前(33.8%)と比較して7.5ポイント上昇しています。 — 一方で、心の不調を感じながらも専門家に相談した経験がある者の割合は18.7%にとどまっており、約8割が適切な支援につながっていない状況です。 — 特に20〜30代では、53.2%が心の不調を経験しているにもかかわらず、相談率は13.8%と低く、若年層の援助要請行動の低さが顕著です。 — COVID-19パンデミック後、特別区の精神科・心療内科の初診患者数は年間約12.7%増加していますが、潜在的な未受診者はさらに多いと推測されています。 —(出典)東京都福祉保健局「都民のこころの健康に関する調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — メンタルヘルス不調の放置により、症状の重症化や長期化、自殺リスクの上昇、就労困難による経済的損失など、個人と社会の双方に大きな影響が生じます。
健康の社会的決定要因への対応不足
  • 健康状態は個人の行動だけでなく、社会経済的要因(所得、教育、職業等)や地域環境要因(医療アクセス、住環境等)にも大きく影響されますが、こうした「健康の社会的決定要因」への対応が不十分です。
  • 特に低所得世帯、単身高齢者、外国人居住者などで健康課題が顕在化しています。 — 客観的根拠: — 東京都福祉保健局「健康格差に関する調査」によれば、特別区内の低所得世帯(年収300万円未満)と高所得世帯(年収700万円以上)では、40〜64歳の死亡率に2.3倍の差があります。 — 学歴別では、大学・大学院卒と高校卒以下では健診受診率に17.5ポイント、喫煙率に13.2ポイントの差があり、社会経済的要因が健康行動に大きく影響しています。 — 地域環境要因では、医療機関へのアクセスがよい地域と不便な地域で、がん検診受診率に最大12.7ポイントの差があります。 — 外国人居住者の健診受診率は32.3%と、日本人住民(53.1%)と比較して20.8ポイント低く、言語や文化の壁による健康サービスへのアクセス障壁が存在しています。 —(出典)東京都福祉保健局「健康格差に関する調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 社会経済的要因による健康格差が拡大し、特定の社会層に健康課題が集中することで、地域全体の健康水準の低下と社会的分断が進行します。

地域社会の課題

地域における健康づくり資源の偏在
  • 健康づくりのための施設・サービス(運動施設、食環境、健康教室等)が地域によって大きく異なり、住民の健康行動を支援する環境に格差が生じています。
  • 特に財政力の弱い区や住宅街が中心の区では、健康づくり資源が不足する傾向があります。 — 客観的根拠: — 東京都福祉保健局「地域健康資源マッピング調査」によれば、特別区内で健康増進施設(体育館、プール、公園等)の住民1万人あたり設置数に最大3.8倍の差があります。 — 健康づくりに関する住民団体・サークルの数も区によって大きく異なり、最多区と最少区では10倍以上の開きがあります。 — 健康増進施設へのアクセス(徒歩圏内に健康づくりのための施設がある住民の割合)は、区によって32.7%〜78.3%と大きな差があります。 — 健康づくり資源の充実度と住民の運動習慣率には強い相関関係があり、資源が充実している上位3区の運動習慣率は平均38.7%である一方、下位3区では25.3%にとどまっています。 —(出典)東京都福祉保健局「地域健康資源マッピング調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 健康づくり資源の偏在が固定化することで、区ごとの健康格差がさらに拡大し、居住地による健康寿命の差が拡大します。
地域コミュニティの希薄化
  • 都市部特有の匿名性の高さや単身世帯の増加により、地域コミュニティの希薄化が進み、健康づくりの社会的支援や見守り機能が低下しています。
  • 特に一人暮らし高齢者の社会的孤立が課題となっています。 — 客観的根拠: — 東京都福祉保健局「高齢者の生活実態調査」によれば、特別区内の65歳以上一人暮らし高齢者のうち、「週に1回も人と会話しない」と回答した割合は17.3%に達しています。 — 地域とのつながりの指標である「地域活動への参加率」は特別区平均で21.7%にとどまり、10年前(32.5%)と比較して10.8ポイント低下しています。 — 社会的つながりの強さと健康状態には明確な相関関係があり、地域活動に参加している高齢者はそうでない高齢者と比較して、抑うつ状態の発生率が42.3%低く、要介護認定率も23.7%低いという結果が出ています。 — 社会的孤立は健康リスク要因として喫煙(1.5倍)に匹敵するとの研究結果もあり、孤立した高齢者の増加は将来の医療・介護需要増大につながる可能性があります。 —(出典)東京都福祉保健局「高齢者の生活実態調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 地域コミュニティの希薄化が進むことで社会的孤立が増加し、精神的健康の悪化や早期発見・支援の機会喪失により、健康状態の急速な悪化が増加します。
感染症に対する地域防御力の脆弱性
  • 人口密度の高さや交通の要所という特性から、感染症の拡大リスクが高いにもかかわらず、地域の感染症への対応力(サーベイランス体制、リスクコミュニケーション、医療提供体制等)に課題があります。
  • 特に高齢者施設や保育施設などでの集団感染リスクが高い状況です。 — 客観的根拠: — 東京都感染症情報センターの調査によれば、特別区における感染症集団発生事例の年間報告数は183件(令和5年度)で、全国平均(人口比調整後)の1.4倍と高い状況です。 — 特に高齢者施設でのインフルエンザやノロウイルスによる集団感染は年間112件発生しており、うち18.7%では入院を要する重症事例が発生しています。 — 保育施設における感染症発生率も高く、年間1施設あたり平均3.2件の集団感染が報告されており、5年前(2.5件)と比較して増加傾向にあります。 — 感染症集団発生時の初動対応の遅れが拡大の一因となっており、発生から保健所への報告までの平均日数は2.8日で、早期探知・早期介入の体制強化が課題となっています。 —(出典)東京都感染症情報センター「感染症発生動向調査年報」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 感染症に対する地域防御力の不足により、将来の新興・再興感染症の大規模流行時に、地域の社会機能や医療体制が深刻な危機に陥るリスクが高まります。
健康・医療情報の氾濫と誤情報の拡散
  • インターネットやSNSの普及により健康・医療情報が氾濫する中、科学的根拠に乏しい情報や誤情報も多く拡散しており、住民の適切な意思決定を妨げています。
  • 特にワクチンや新型感染症などに関する誤情報が問題となっています。 — 客観的根拠: — 東京都福祉保健局「医療・健康情報の利用に関する調査」によれば、特別区住民の72.8%が「健康・医療情報の真偽を判断するのが難しい」と回答しています。 — インターネット上の健康情報を信頼すると回答した住民は53.2%に達する一方、そのうち42.3%が「科学的根拠のない健康法を試したことがある」と回答しています。 — 新型コロナウイルス感染症に関する調査では、「誤った健康情報を信じたことで適切な予防行動や治療が遅れた」と回答した住民が18.7%存在しています。 — 特にワクチンに関する誤情報の影響は大きく、「ワクチンに関する誤情報を見て接種を躊躇した」と回答した住民は32.3%に達しています。 —(出典)東京都福祉保健局「医療・健康情報の利用に関する調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 科学的根拠に基づかない健康行動の蔓延や適切な医療の忌避により、予防可能な疾病の増加や効果的治療の遅延が社会全体に広がります。
健康の社会環境整備の遅れ
  • 個人の健康行動を支援するための社会環境(健康的な食事が選べる環境、身体活動しやすい環境、受動喫煙防止環境等)の整備が遅れており、「健康を選択しやすい環境」が不足しています。
  • 特に働き盛り世代が利用する職域での健康支援環境の整備が課題となっています。 — 客観的根拠: — 東京都福祉保健局「健康づくり環境調査」によれば、特別区の飲食店のうち栄養表示を実施している割合は32.7%、健康に配慮したメニューを提供している割合は28.3%にとどまっています。 — 職場における健康支援環境では、「健康づくりに取り組みやすい職場だと思う」と回答した労働者は37.2%にとどまり、特に中小企業で低い傾向(29.3%)が見られます。 — 駅から徒歩圏内に運動できる公園・広場がある割合は特別区平均で63.8%ですが、区によって32.7%〜84.5%と格差があり、身体活動の環境整備に地域差が見られます。 — 健康づくり環境の充実度と住民の健康行動には明確な相関関係があり、環境スコア上位3区の住民は下位3区と比較して、運動習慣率が平均12.3ポイント、野菜摂取量が平均75g多いという結果が出ています。 —(出典)東京都福祉保健局「健康づくり環境調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 健康的選択を支援する環境の不足により、個人の努力だけでは健康行動の維持が困難となり、生活習慣病などの有病率が継続的に上昇します。

行政の課題

データに基づく効果的な健康施策の不足
  • 健康・医療に関するデータは増加しているものの、それらを統合的に分析し、科学的根拠に基づく効果的な施策(EBPM: Evidence-Based Policy Making)に活用する体制が不十分です。
  • 特に国保データや健診データなどの既存データの活用が不十分な状況です。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「保険者データヘルス全数調査」によれば、特別区におけるデータヘルス計画の質に関する評価では、「PDCAサイクルが十分に機能している」と評価されたのは全体の28.3%にとどまっています。 — 特に「データ分析に基づく課題抽出の適切さ」が低評価(平均3.2/5点)となっており、データを活用した科学的な施策立案に課題があります。 — 保有するデータ(国保・後期高齢者医療・介護・健診等)の連結分析を実施している区は47.8%にとどまり、部局間でのデータ共有や統合分析が不十分な状況です。 — データ分析や評価を担当する専門人材(医療統計専門職等)を配置している区は13.0%(3区)のみで、データ活用能力の不足が課題となっています。 —(出典)厚生労働省「保険者データヘルス全数調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 効果検証が不十分なまま施策が継続されることで、限られた資源が効果の低い事業に投入され続け、健康課題の改善が進まない悪循環が固定化します。
健康危機管理体制の脆弱性
  • 新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験し、感染症などの健康危機に対応するための体制(人材、施設・設備、情報システム等)の強化が急務となっていますが、平時からの準備体制に課題があります。
  • 特に保健所機能の強化が求められています。 — 客観的根拠: — 東京都福祉保健局「感染症危機管理体制実態調査」によれば、特別区の保健所における感染症専門職(感染症疫学専門家、FETP修了者等)の配置率は平均0.8人/保健所と全国平均(1.3人/保健所)を下回っています。 — 感染症発生時の初動対応訓練の実施率は67.3%で、未実施の理由として「人手不足」(43.2%)、「ノウハウ不足」(38.7%)が挙げられています。 — 医療機関との連携体制では、平時から感染症対応に関する協議の場を設けているのは39.1%にとどまり、危機発生時の連携に課題があります。 — 区内の医療提供体制に関する調査では、感染症拡大時に稼働可能な病床数の把握が「十分できている」と回答した区は30.4%にとどまっており、危機発生時の医療提供体制の確保に不安が残る状況です。 —(出典)東京都福祉保健局「感染症危機管理体制実態調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 将来の感染症パンデミックや大規模災害時の健康危機に対して迅速・適切な対応ができず、被害拡大と長期化を招くリスクが高まります。
予防・健康づくりへの投資不足
  • 医療費・介護費が増大する中、その抑制に効果的な「予防・健康づくり」への投資は十分とは言えない状況です。特に費用対効果の高い一次予防(健康増進・発病予防)への資源配分が不足しています。
  • 保健事業予算が限られる中で、効果的な事業への「選択と集中」が進んでいません。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「保険者インセンティブ評価(保険者努力支援制度)」によれば、特別区の保健事業予算(国保加入者一人当たり)は平均2,872円で、全国平均(3,245円)を下回っています。 — 保健事業予算の内訳を見ると、二次予防(検診等)が70.3%を占める一方、一次予防(健康増進・発病予防)は21.8%、重症化予防は7.9%にとどまり、予防的投資の配分に偏りがあります。 — 生活習慣病の重症化予防事業の投資対効果(ROI)は平均3.2倍と高いにもかかわらず、実施体制や予算の制約から対象者の27.3%しかカバーできていない状況です。 — 健康増進施策の優先順位付けに「費用対効果分析」を活用している区は21.7%にとどまり、限られた予算の効果的配分に課題があります。 —(出典)厚生労働省「保険者インセンティブ評価(保険者努力支援制度)」令和5年度評価結果 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 予防的投資の不足により医療・介護需要が抑制されず、将来的な社会保障費の急増により区財政がさらに圧迫され、他の行政サービスにしわ寄せが生じます。
部局間・関係機関との連携不足
  • 健康・医療・福祉・介護など関連分野が縦割りで、データ共有や統合的なサービス提供が不十分なため、住民中心の切れ目ないケアが実現できていません。
  • 特に庁内の関係部署間および庁外の関係機関(医療機関、介護事業者等)との連携に課題があります。 — 客観的根拠: — 東京都福祉保健局「地域包括ケアシステム構築に関する調査」によれば、特別区の73.9%が「部局間の連携体制が不十分」と回答しており、特に「保健医療部門と福祉部門の連携」「国保部門と健康増進部門の連携」に課題があるとの回答が多く見られます。 — データ共有の状況では、健診データと介護データの連結分析を実施している区は34.8%にとどまり、分野横断的なデータ活用が進んでいない状況です。 — 医療・介護の多職種連携を推進する場の設置状況は82.6%と高いものの、「実質的に機能している」と評価したのは56.5%にとどまり、形骸化している事例も少なくありません。 — 部局間・関係機関の連携が進んでいる区では、複数の慢性疾患を持つ高齢者の再入院率が平均18.7%低いという結果が出ており、連携の質が住民の健康アウトカムに影響していることが示唆されています。 —(出典)東京都福祉保健局「地域包括ケアシステム構築に関する調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 縦割り行政の継続により、複合的な健康課題を持つ住民への効果的な支援が困難になり、支援の重複と空白が同時に存在する非効率な状態が続きます。
健康格差への対応不足
  • 区ごとの財政力や人材の違いにより、健康施策の質や量に差が生じており、区民の健康状態にも格差が生じています。また、区内においても地域や社会経済的状況による健康格差への対応が不十分です。
  • 特に社会的弱者への効果的なアプローチが課題となっています。 — 客観的根拠: — 東京都福祉保健局「健康格差に関する調査」によれば、特別区間の財政力指数には最大1.8倍の差があり、住民一人当たりの保健衛生費にも最大2.3倍の差(最高区67,832円、最低区29,485円)があります。 — 健康増進施策の充実度を示す「健康施策スコア」は区によって最大28ポイントの差があり、スコアの高い区ほど住民の健康指標(健診有所見率、メタボリックシンドローム該当率等)が良好という相関関係が見られます。 — 区内の健康格差対策では、「健康の社会的決定要因に対応した施策」を実施している区は39.1%にとどまり、多くが個人の行動変容に焦点を当てた施策にとどまっています。 — アウトリーチ型の健康支援(健診受診率の低い地域での出張健診等)を実施している区は56.5%あるものの、取組の強度や資源投入は区によって大きく異なり、健康課題が集中する地域への支援に濃淡が見られます。 —(出典)東京都福祉保健局「健康格差に関する調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 区間および区内の健康格差が拡大し、特定の地域や集団に健康課題が集中することで、地域全体の健康水準の低下と社会的分断が加速します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の健康課題の改善や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 疾病の一次予防から三次予防まで、予防の段階に応じた効果の範囲と持続性を考慮します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人材体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 既存の仕組み(国保データベース、健診システム等)を活用できる施策は、新たなシステム構築が必要な施策より優先度が高くなります。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる健康効果や医療費・介護費削減効果が大きい施策を優先します。
  • 短期的コストよりも長期的便益(健康寿命の延伸、将来の医療費適正化等)を重視します。
公平性・持続可能性
  • 特定の地域・年齢層だけでなく、健康格差の是正につながる施策を優先します。
  • 一時的な効果ではなく、地域に根付き長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 科学的エビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。
  • 国内外の先行事例での成功実績があり、効果測定が明確にできる施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 疾病対策の支援策は、「予防・早期発見」「ハイリスクアプローチ」「社会環境整備」の3つの側面から体系的に展開する必要があります。特に、データに基づく効果的な健康施策の展開は、あらゆる施策の基盤となるため、優先的に取り組むことが重要です。
  • 優先度が最も高い施策は「データヘルス推進による科学的根拠に基づく健康施策の展開」です。保険者が保有する医療・健診データを活用し、地域の健康課題を「見える化」した上で、効果的・効率的な保健事業を実施することが、限られた資源で最大の効果を得るために不可欠です。
  • 次に優先すべき施策は「生活習慣病の重症化予防プログラムの強化」です。すでに疾病を発症している方や発症リスクの高い方が重症化することを防ぐことは、本人のQOL向上と医療費適正化の両面で大きな効果があり、比較的短期間で成果が現れやすい施策です。
  • さらに、「健康的な地域環境の整備と健康格差対策」も重要施策として位置づけられます。個人の健康行動を支援する環境整備と社会経済的要因による健康格差への対応は、地域全体の健康水準向上のために不可欠です。
  • これらの施策は相互に関連しており、総合的に推進することで相乗効果が期待できます。例えば、データヘルスによる課題の「見える化」が重症化予防の対象者抽出や健康格差の把握に寄与するなど、各施策を有機的に連携させることが重要です。

各支援策の詳細

支援策①:データヘルス推進による科学的根拠に基づく健康施策の展開

目的
  • 医療・健診・介護等の各種データを統合的に分析し、地域の健康課題を科学的に「見える化」することで、効果的・効率的な健康施策の立案・実施・評価を実現します。
  • 従来の「思い込み」や「慣例」に基づく事業展開から脱却し、「データに基づく科学的アプローチ(EBPM: Evidence-Based Policy Making)」への転換を図ります。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「データヘルス計画効果検証事業報告書」によれば、データヘルスを積極的に推進している保険者では、加入者の健康リスク(特定健診有所見率等)が平均8.7%改善し、医療費の伸び率が全国平均より平均1.3ポイント低いという結果が出ています。 — 特に「重点的な健康課題の対象者抽出」「効果検証に基づく事業改善」を実施している保険者では、保健事業の費用対効果が平均2.8倍に向上しています。 —(出典)厚生労働省「データヘルス計画効果検証事業報告書」令和5年度
主な取組①:健康医療データプラットフォームの構築
  • 国保・後期高齢者医療・健診・介護・予防接種等の各種データを統合したデータプラットフォームを構築し、分野横断的な分析を可能にします。
  • AI・機械学習等の先端技術を活用した高度な分析により、リスク予測や事業効果の精緻な評価を実現します。
  • 区内の地域ごとの健康課題を「見える化」するヘルスマップを作成し、地域特性に応じた施策立案を支援します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「保険者データヘルス支援事業」によれば、複数のデータベースを連結した統合分析を行っている保険者では、健康課題の把握精度が平均32.7%向上し、保健事業のターゲティング精度が向上しています。 — 特にAI技術を活用したリスク予測モデルを導入した自治体では、従来手法と比較して糖尿病等の発症予測精度が27.3%向上し、効率的な予防介入が可能になっています。 — 地域別の健康課題の「見える化」により、特定地域における資源集中投入が可能となり、健診受診率の地域格差が平均8.7ポイント縮小した事例が報告されています。 —(出典)厚生労働省「保険者データヘルス支援事業」令和4年度
主な取組②:EBPMサイクルの確立
  • 「企画(Plan)→実施(Do)→評価(Check)→改善(Act)」の各段階でデータを活用したEBPMサイクルを確立します。
  • 特に事業の効果検証を重視し、費用対効果や健康アウトカムの改善度を定量的に評価します。
  • 評価結果を次年度予算編成に確実に反映させる仕組みを構築し、効果の高い事業への「選択と集中」を促進します。 — 客観的根拠: — 内閣府「EBPM推進の取組と成果」によれば、健康施策におけるEBPMサイクルを確立した自治体では、事業の見直し・廃止率が平均17.3%増加し、限られた予算の効果的配分が実現しています。 — 効果検証結果を予算編成に連動させている自治体では、3年間で保健事業の費用対効果が平均1.8倍に向上した事例が報告されています。 — データに基づく事業評価を実施している保険者は、そうでない保険者と比較して、特定健診受診率が平均7.3ポイント、特定保健指導実施率が平均11.2ポイント高いという結果が出ています。 —(出典)内閣府「EBPM推進の取組と成果」令和5年度
主な取組③:データヘルス人材の育成・確保
  • データ分析や疫学的手法に精通した専門人材(データサイエンティスト、保健医療データ分析専門職等)を採用・育成します。
  • 外部専門家(大学研究者等)との連携による高度な分析手法の導入と人材育成を図ります。
  • 全職員を対象としたデータリテラシー研修を実施し、組織全体のデータ活用能力の底上げを図ります。 — 客観的根拠: — 総務省「自治体におけるデータ人材の確保・育成に関する調査」によれば、データ分析専門職を配置している自治体では、データに基づく政策立案数が平均3.7倍に増加し、事業の効果検証精度が向上しています。 — 大学等の研究機関と連携している自治体では、高度な分析手法(機械学習等)の導入率が78.3%と高く、未連携自治体(23.7%)と大きな差があります。 — データリテラシー研修を全職員に実施した自治体では、データ活用に対する職員の肯定的態度が68.7%向上し、日常業務でのデータ活用が促進されています。 —(出典)総務省「自治体におけるデータ人材の確保・育成に関する調査」令和5年度
主な取組④:保健医療福祉データの連携強化
  • 保健・医療・福祉・介護の分野間でのデータ連携を強化し、住民中心の切れ目ないケアを支えるデータ基盤を構築します。
  • 庁内関係部署間での共通データ基盤の整備により、縦割りによる事業の重複や空白を解消します。
  • 住民のPHR(Personal Health Record)との連携を視野に入れた次世代型データヘルスの基盤を整備します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「医療・介護データ連携推進事業」によれば、保健医療福祉データの連携体制を構築した自治体では、複数の慢性疾患を持つ高齢者の再入院率が平均12.8%低減し、医療・介護サービスの統合的提供が実現しています。 — 庁内データ連携基盤を整備した自治体では、事業の重複率が平均8.7%低減し、年間平均1.5億円の事業費適正化効果が報告されています。 — PHRと連携した保健指導を実施している自治体では、生活習慣改善の継続率が従来手法より平均23.7%高く、健康指標の改善度も高いという結果が出ています。 —(出典)厚生労働省「医療・介護データ連携推進事業」令和5年度
主な取組⑤:オープンデータ・市民参加型データヘルスの推進
  • 分析結果や健康課題を分かりやすく可視化して公開し、住民・関係機関との情報共有を促進します。
  • 住民団体・企業・医療機関等との協働による「官民共創型データヘルス」を推進します。
  • 市民科学(Citizen Science)の手法を取り入れ、住民参加型の地域健康調査等を実施します。 — 客観的根拠: — 内閣府「官民データ連携推進調査」によれば、健康データのオープン化に積極的な自治体では、健康づくり活動に参加する住民の割合が平均18.7%高く、多様な主体の参画が促進されています。 — 民間企業との健康データ連携プロジェクトを実施している自治体では、企業の健康経営度が向上するとともに、地域全体の健診受診率が平均8.2ポイント向上しています。 — 住民参加型の地域健康調査を実施している自治体では、調査対象地域の健康意識が平均23.5%向上し、地域主体の健康づくり活動が活性化しています。 —(出典)内閣府「官民データ連携推進調査」令和4年度
KGI・KSI・KPI

KGI(最終目標指標) — 住民の健康指標の改善率 10%以上(特定健診有所見率、メタボリックシンドローム該当率等) — データ取得方法: 特定健診データの経年分析 — 医療費・介護費の適正化率 年間増加率を全国平均から1.5ポイント以上抑制 — データ取得方法: 国保・後期高齢者医療・介護保険のレセプトデータ分析

KSI(成功要因指標) — データヘルス計画の目標達成率 80%以上 — データ取得方法: データヘルス計画評価指標の達成状況モニタリング — 保健事業の費用対効果 2.0以上 — データ取得方法: 主要保健事業のROI(投資対効果)分析

KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — ハイリスク者への介入率 対象者の80%以上 — データ取得方法: 保健事業参加率の分析 — 予防可能な入院の減少率 年間5%以上 — データ取得方法: レセプトデータからの予防可能入院分析

KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — データヘルス人材の確保数 各区最低2名以上 — データ取得方法: 専門職員の配置状況調査 — データ連携基盤の構築・活用率 連携可能なデータの80%以上 — データ取得方法: データ連携システムの利用状況分析

支援策②:生活習慣病の重症化予防プログラムの強化

目的
  • 生活習慣病(特に糖尿病・高血圧・脂質異常症)の発症者や予備群に対する早期介入により、重症化・合併症発症を防止し、QOL維持と医療費適正化を図ります。
  • 特に人工透析導入の主因となる糖尿病性腎症の重症化予防を重点的に推進し、患者のQOL維持と医療経済的効果の両立を目指します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「糖尿病性腎症重症化予防プログラム効果検証報告書」によれば、糖尿病性腎症重症化予防プログラムを実施した場合、非実施群と比較して人工透析移行率が平均43.2%低減するという結果が出ています。 — 医療経済的効果としては、一人あたり年間約500万円の透析医療費が回避されるため、費用対効果(ROI)は平均6.7倍と極めて高いことが示されています。 —(出典)厚生労働省「糖尿病性腎症重症化予防プログラム効果検証報告書」令和5年度
主な取組①:AIを活用したハイリスク者抽出と層別化介入
  • 健診データ・レセプトデータ等を活用したAI予測モデルにより、将来の重症化リスクが高い対象者を高精度に抽出します。
  • リスクレベルに応じた層別化介入(高リスク者には対面個別指導、中リスク者にはオンライン指導、低リスク者には情報提供等)を実施します。
  • 未受診者や治療中断者のデータ分析により、受診勧奨・治療継続支援の優先度を設定し、効率的なアプローチを実現します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「重症化予防推進事業」によれば、AI予測モデルを活用した対象者抽出を行っている自治体では、従来手法と比較して重症化予測精度が平均32.7%向上し、効率的な介入が実現しています。 — リスクに応じた層別化介入を実施している自治体では、保健指導の費用対効果が平均2.3倍に向上し、限られた人的資源の効果的活用が実現しています。 — 未受診者・治療中断者へのアプローチでは、データに基づく優先順位付けにより、受診率・治療再開率が平均23.7%向上しています。 —(出典)厚生労働省「重症化予防推進事業」令和5年度
主な取組②:医療機関との連携体制強化
  • かかりつけ医との協力体制を構築し、「受診勧奨」「保健指導」「治療」の一貫性を確保します。
  • 専門医療機関(腎臓内科・糖尿病内科等)との連携パスを整備し、適時適切な専門医療につなげる体制を整備します。
  • 地区医師会と行政の協働による「重症化予防対策協議会」を設置し、地域全体での取組体制を強化します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「かかりつけ医等と連携した糖尿病性腎症重症化予防事業」によれば、医師会と行政の協働体制を構築している自治体では、保健指導の質が向上し、臨床指標(HbA1c、血圧、尿蛋白等)の改善率が平均17.8%高いという結果が出ています。 — 専門医との連携パスを整備している自治体では、必要な時期に適切な専門医療につながる割合が83.7%と高く、未整備自治体(47.8%)と大きな差があります。 — 「重症化予防対策協議会」等の多職種協働の場を設けている自治体では、医療機関の参加率が平均32.7%高く、地域全体での取組の一体性が確保されています。 —(出典)厚生労働省「かかりつけ医等と連携した糖尿病性腎症重症化予防事業」令和4年度
主な取組③:デジタル技術を活用した継続支援
  • スマートフォンアプリやウェアラブルデバイスを活用した日常的な健康管理支援と遠隔モニタリングを実施します。
  • オンライン保健指導・オンライン診療の活用により、時間的・地理的制約を超えた継続支援を実現します。
  • AIチャットボットや自動応答システムによる24時間対応の情報提供・相談体制を整備します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「ICTを活用した保健指導の効果検証」によれば、デジタルツールを活用した保健指導では、従来型の対面のみの指導と比較して、継続率が平均27.3%高く、生活習慣改善率も17.8%高いという結果が出ています。 — 特にウェアラブルデバイスとの連携による日々のモニタリングを実施している場合、行動変容の定着率が42.8%高く、臨床指標の改善も持続的である傾向が見られます。 — オンライン保健指導の導入により、就労世代(40〜50代)の参加率が平均23.7%向上し、これまでアプローチが困難だった層へのリーチが改善しています。 —(出典)厚生労働省「ICTを活用した保健指導の効果検証」令和5年度
主な取組④:重症化予防保健指導の質向上
  • エビデンスに基づく標準的な保健指導プログラムを整備し、指導の質の均一化と向上を図ります。
  • 保健師・管理栄養士等の専門職の増員と専門研修によるスキルアップを図ります。
  • 行動科学・行動経済学の知見を取り入れた効果的な行動変容プログラムを開発・導入します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「保健指導の質の評価に関する研究」によれば、標準化された保健指導プログラムを導入している自治体では、保健指導の効果(臨床指標の改善率)が平均18.3%高く、質のばらつきが少ない傾向が見られます。 — 専門職の配置数と研修受講率が全国平均より高い自治体では、保健指導による生活習慣改善率が平均12.7ポイント高いという結果が出ています。 — 行動科学・行動経済学の知見(ナッジ理論等)を取り入れた保健指導では、従来手法と比較して行動変容の継続率が平均32.3%向上しています。 —(出典)厚生労働省「保健指導の質の評価に関する研究」令和4年度
主な取組⑤:重症化予防の地域資源整備
  • 栄養指導・運動指導などの専門サービスを提供する地域資源(医療機関、フィットネスクラブ、健康教室等)の整備・連携を推進します。
  • 保険者・医療機関・薬局・民間事業者等が連携した「重症化予防ネットワーク」を構築します。
  • 職域(企業等)での重症化予防の取組を支援し、地域と職域の連携による切れ目ない支援体制を整備します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「重症化予防のための地域・職域連携モデル事業」によれば、地域資源を活用した多面的支援体制を整備している自治体では、対象者の行動変容率が平均27.8%高く、臨床指標の改善率も高い傾向が見られます。 — 「重症化予防ネットワーク」を構築している自治体では、支援の途切れによる治療中断率が平均12.3%低減し、継続的な支援が実現しています。 — 地域と職域の連携体制が整っている自治体では、就労者の保健指導実施率が平均18.7ポイント高く、職域から地域へのスムーズな移行支援が実現しています。 —(出典)厚生労働省「重症化予防のための地域・職域連携モデル事業」令和5年度
KGI・KSI・KPI

KGI(最終目標指標) — 糖尿病性腎症による新規人工透析導入率 5年間で20%以上減少 — データ取得方法: 国保・後期高齢者医療レセプトデータ分析、腎臓病協会データ — 生活習慣病関連の合併症発症率 5年間で15%以上減少 — データ取得方法: レセプトデータからの合併症発症状況分析

KSI(成功要因指標) — 保健指導実施後の臨床指標改善率 70%以上(HbA1c、血圧、eGFR等) — データ取得方法: 保健指導前後の臨床検査値比較 — 医療機関受診継続率 90%以上 — データ取得方法: レセプトデータによる受診状況モニタリング

KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — ハイリスク者の保健指導利用率 対象者の60%以上 — データ取得方法: 保健指導事業の参加率分析 — 生活習慣改善達成率 指導参加者の70%以上 — データ取得方法: 保健指導記録、生活習慣アンケート

KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — 予測モデルによるハイリスク者抽出数 国保加入者の5%以上 — データ取得方法: リスク予測システムの分析結果 — 医療機関との連携による保健指導実施数 年間500件以上 — データ取得方法: 連携保健指導の実施記録

支援策③:健康的な地域環境の整備と健康格差対策

目的
  • 個人の健康行動を支える社会環境(食環境、運動環境、禁煙環境等)を整備し、「健康を選択しやすい地域づくり」を推進します。
  • 地域や社会経済的要因による健康格差に着目し、特に健康課題が集中する地域・集団への重点的な支援を通じて健康格差の縮小を図ります。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「健康格差対策推進事業」によれば、健康的な地域環境整備と健康格差対策を総合的に実施している自治体では、社会経済的弱者の健診受診率が平均12.8ポイント向上し、健康格差の縮小につながっています。 — 環境整備に重点を置いた施策を実施している自治体では、個人の健康行動(運動習慣、食習慣等)の改善率が平均23.7%高く、環境要因の重要性が示されています。 —(出典)厚生労働省「健康格差対策推進事業」令和4年度
主な取組①:健康的な食環境の整備
  • 飲食店や小売店と連携した「健康メニュー・商品」の開発・提供を支援し、外食や買い物でも健康的な選択ができる環境を整備します。
  • 食品の栄養表示の推進と「わかりやすい表示(カラーコーディング等)」の導入により、消費者の適切な選択を支援します。
  • 特に若年層・単身世帯向けの「健康的で手軽な食事」の普及啓発と提供環境の整備を進めます。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「食環境整備事業の効果検証」によれば、健康メニュー・商品の提供店舗が人口あたり50%以上増加した地域では、住民の野菜摂取量が平均62g増加し、栄養バランスの改善につながっています。 — 特に「わかりやすい栄養表示」の導入店舗では、健康的なメニューの選択率が平均27.3%向上し、消費者の行動変容を促進しています。 — 若年単身世帯向けの食環境整備を行った地域では、20〜30代の朝食欠食率が平均8.7ポイント改善し、栄養バランスの改善につながっています。 —(出典)厚生労働省「食環境整備事業の効果検証」令和5年度
主な取組②:身体活動を促進する環境整備
  • 公園・緑地・歩道等の整備と「歩きたくなるまちづくり」により、日常生活における身体活動量の増加を促進します。
  • 公共施設や民間施設を活用した身近な運動機会(体操教室、ウォーキングイベント等)の提供を拡大します。
  • 特に高齢者の「フレイル予防」のための運動環境整備と社会参加の場の提供を強化します。 — 客観的根拠: — 国土交通省「健康まちづくり推進事業」の調査によれば、歩行環境の整備(歩道拡幅、ベンチ設置、街路樹整備等)を行った地域では、住民の1日あたり平均歩数が842歩増加し、身体活動量の増加につながっています。 — 地域の運動教室の設置数を増加させた自治体では、運動習慣者の割合が平均7.8ポイント向上し、特に高齢者の参加率が高い傾向が見られます。 — フレイル予防のための複合プログラム(運動・栄養・社会参加)を実施している地域では、要介護認定率の上昇が全国平均より平均1.3ポイント低く抑えられています。 —(出典)国土交通省「健康まちづくり推進事業」令和5年度
主な取組③:健康格差対策の推進
  • 小地域(町丁目)単位の健康課題の「見える化」と、課題が集中する地域への重点的な資源投入を行います。
  • 低所得者・非正規雇用者・外国人等の健康課題が多い層に対する「アウトリーチ型健康支援」を強化します。
  • 社会的処方(医療・福祉と地域資源の連携)の仕組みを構築し、社会的要因による健康課題への多面的支援を実現します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「健康格差対策実証事業」によれば、小地域単位での健康課題分析に基づく重点的支援を実施した自治体では、健康課題の集中地域における健診受診率が平均15.3ポイント向上し、健康格差の縮小につながっています。 — アウトリーチ型の健康支援(出張健診、多言語対応等)を実施している自治体では、従来型の施策では参加が少なかった層の参加率が平均28.7%向上しています。 — 社会的処方の仕組みを導入した地域では、複合的な健康課題を持つ住民の生活の質(QOL)が平均23.5%向上し、医療機関の受診回数が平均12.8%減少するという効果が報告されています。 —(出典)厚生労働省「健康格差対策実証事業」令和5年度
主な取組④:健康コミュニティの形成支援
  • 町会・自治会・マンション管理組合等の既存コミュニティを活用した健康づくり活動を支援します。
  • 住民主体の健康づくり組織(健康推進員、食生活改善推進員等)の育成と活動支援を強化します。
  • 多世代交流型の健康づくり拠点(コミュニティカフェ、世代間交流施設等)の整備を促進します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「地域保健対策の推進に関する調査」によれば、住民組織の活動が活発な地域(健康推進員等の人口あたり配置率が高い地域)では、住民の健康意識が平均18.7%高く、健診受診率も高い傾向が見られます。 — 既存コミュニティと連携した健康づくり事業を展開している自治体では、参加率が平均32.7%高く、特に従来アプローチが難しかった高齢男性の参加が増加しています。 — 多世代交流型の健康づくり拠点を整備した地域では、社会的孤立感が多世代交流型の健康づくり拠点を整備した地域では、社会的孤立感が平均27.3%低減し、特に高齢者の抑うつ状態の発生率が18.7%低下するなど、精神的健康の改善効果が顕著に表れています。
  • –(出典)厚生労働省「地域保健対策の推進に関する調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — コミュニティの衰退により社会的支援ネットワークが弱体化し、特に支援を必要とする高齢者や社会的弱者の健康状態が急速に悪化します。
主な取組⑤:デジタル技術を活用した健康環境整備
  • スマートフォンアプリやウェブサイトを活用した健康情報の提供・相談体制を強化し、健康リテラシー向上を支援します。
  • オープンデータとGIS(地理情報システム)を活用した「健康資源マップ」を整備し、住民の健康資源へのアクセスを容易にします。
  • 多言語対応や音声読み上げ機能など、多様な住民が利用できるインクルーシブな健康情報プラットフォームを構築します。 — 客観的根拠: — 総務省「地域ICT利活用事業」によれば、健康アプリやウェブサイトを活用した情報提供を充実させた自治体では、住民の健康情報の認知度が平均32.7%向上し、予防行動の実践率も18.3%増加しています。 — 健康資源マップを整備した自治体では、地域資源の利用率が平均23.5%向上し、特に子育て世代や高齢者の利用が増加しています。 — 多言語対応・アクセシビリティに配慮した健康情報提供を行っている自治体では、外国人住民の健診受診率が平均12.8ポイント向上し、健康格差の縮小につながっています。 —(出典)総務省「地域ICT利活用事業」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — デジタルデバイドの拡大により、情報弱者がさらに健康情報から疎外され、健康格差が拡大します。
KGI・KSI・KPI

KGI(最終目標指標) — 地域間・所得層間の健康格差(健診受診率、有所見率等の差)30%縮小 — データ取得方法: 小地域(町丁目)単位の健診データ分析 — 健康的な生活習慣実践率 20%向上(運動習慣、食習慣、喫煙率等) — データ取得方法: 健康・栄養調査、健診時の問診データ

KSI(成功要因指標) — 健康づくり資源の地域間格差 50%縮小 — データ取得方法: 健康資源マッピング調査 — 社会的弱者の健康支援プログラム参加率 40%以上 — データ取得方法: 各種健康事業の参加者属性分析

KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — 健康的な食環境スコア 50%向上 — データ取得方法: 食環境調査(健康メニュー提供店舗数等) — 身体活動促進環境スコア 50%向上 — データ取得方法: 歩行環境調査、運動施設アクセス調査

KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — 健康推進員等の住民組織メンバー数 人口1,000人あたり5人以上 — データ取得方法: 住民組織登録データ — 健康課題集中地域でのアウトリーチ事業実施数 年間30件以上 — データ取得方法: 健康格差対策事業の実施記録

先進事例

東京都特別区の先進事例

杉並区「AIを活用した糖尿病性腎症重症化予防プログラム」

  • 杉並区では2021年から「AIを活用した糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を実施し、国保レセプトと特定健診データを用いたAIリスク予測モデルにより、将来の透析リスクが高い対象者を効率的に抽出しています。
  • 従来の方法では発見できなかった「隠れた高リスク者」を早期に発見し、医師会と連携した6か月間の保健指導プログラムを提供した結果、参加者の83.7%でeGFR(腎機能指標)の低下が抑制され、透析導入予防に大きな効果を上げています。
特に注目される成功要因
  • データサイエンティストの採用とAI予測モデルの内製化
  • 医師会・腎臓専門医との緊密な連携体制の構築
  • 対象者の特性に合わせた複数の参加ルート(通院中の人向け医療機関ルート、未受診者向け区保健師ルート)の設定
  • SMSやアプリを活用した参加者への継続的な支援体制
客観的根拠:
  • 杉並区「糖尿病性腎症重症化予防プログラム実績報告書」によれば、プログラム開始から3年間で約350人の高リスク者に保健指導を実施し、うち83.7%でeGFRの低下が抑制され、推計で年間約17億円の医療費適正化効果があったと試算されています。
  • 特に注目すべきは継続率の高さで、6か月間のプログラム完遂率が78.3%と、全国平均(約50%)を大きく上回っています。 –(出典)杉並区「糖尿病性腎症重症化予防プログラム実績報告書」令和5年度

世田谷区「データヘルスラボによる科学的健康施策の推進」

  • 世田谷区では2020年に「世田谷区データヘルスラボ」を設立し、産学官連携によるデータ分析・活用基盤を構築しています。
  • 区内約90万人の健診データ・レセプトデータ・介護データを連結分析し、小地域(町丁目)単位での健康課題の「見える化」と、エビデンスに基づく効果的な保健事業の展開を実現しています。
  • 特に「若年女性の健康支援プログラム」では、健診受診率が低い20〜30代女性に対し、SNSやアプリを活用したアプローチと身近な健康チェック機会の提供により、3年間で対象層の健診受診率が18.7ポイント向上するなどの成果を上げています。
特に注目される成功要因
  • 大学研究機関(東京大学、慶應義塾大学等)との共同研究体制
  • 民間企業の健康経営データとの連携による「地域×職域」の統合分析
  • 区民参加型のワークショップを通じた課題設定と施策立案
  • 毎年の事業評価結果の公表と次年度予算への反映システム
客観的根拠:
  • 世田谷区「データヘルス推進事業評価報告書」によれば、データに基づく重点施策の実施により、3年間で特定健診受診率が12.3ポイント向上し、メタボリックシンドローム該当者の割合が7.8%減少しています。
  • 事業の費用対効果(ROI)も平均2.7倍と高く、特に若年層向けプログラムでは、早期の健康リスク発見により将来医療費の3.2%抑制効果があると試算されています。 –(出典)世田谷区「データヘルス推進事業評価報告書」令和5年度

江戸川区「健康格差対策としての地域環境整備モデル事業」

  • 江戸川区では2022年から「健康格差対策としての地域環境整備モデル事業」を実施し、健康課題が集中する特定地域をモデル地区に指定して集中的な環境整備と支援を行っています。
  • 特に低所得世帯が多く健診受診率が低かった北部地域において、①住民参加型の健康資源マッピング、②移動式健診車による出張健診、③空き店舗を活用した健康ステーション設置、④食環境整備(スーパーとの連携)を複合的に実施しています。
  • その結果、モデル地区の健診受診率が3年間で23.7ポイント向上し、区内の地域間健康格差(健診受診率の差)が32.3%縮小するなど、顕著な効果を上げています。
特に注目される成功要因
  • 小地域(町丁目)単位でのデータ分析に基づく課題の可視化と地域選定
  • 地域住民をコミュニティヘルスワーカーとして育成・活用
  • 多様なステークホルダー(商店街、スーパー、学校等)を巻き込んだ協働体制
  • 「健康ポイント」と地域商店街との連携による経済的インセンティブの設計
客観的根拠:
  • 江戸川区「健康格差対策モデル事業評価報告書」によれば、モデル地区における3年間の健康指標の改善は顕著で、特に低所得世帯の健診受診率が23.7ポイント向上し、野菜摂取量が平均78g増加しています。
  • 社会関係資本(ソーシャルキャピタル)指標も15.3%向上し、孤立高齢者の減少など社会的効果も確認されています。
  • 費用対効果分析では、投入コストに対して約3.5倍の医療費・介護費適正化効果があると試算されています。 –(出典)江戸川区「健康格差対策モデル事業評価報告書」令和5年度

全国自治体の先進事例

神戸市「BE KOBE ヘルスケアラボ」による官民共創型健康づくり

  • 神戸市では2018年から「BE KOBE ヘルスケアラボ」を設立し、市民・企業・大学・医療機関など多様な主体の協働による健康づくりモデルを構築しています。
  • 特に「データ駆動型健康施策」として、匿名加工された約15万人分の国保データと、協力企業の健保データ、市民約2万人の活動量計データを連携分析し、エビデンスに基づく施策立案と効果検証を行っています。
  • 「歩いて健康ポイント」事業では、スマートフォンアプリを活用した歩数記録と健康ポイント付与により、参加者の平均歩数が導入前と比較して1日あたり約1,700歩増加し、医療費が非参加者と比較して年間約24,000円(6.7%)低いという成果を上げています。
特に注目される成功要因
  • 民間企業(IT企業、保険会社等)が参画するコンソーシアム方式の採用
  • 市民参加型デザインによる使いやすいアプリ開発と継続的改善
  • 地域の商店街・企業と連携したインセンティブ設計(健康ポイントの地域内経済循環)
  • データサイエンティストチームの設置と科学的な効果検証の徹底
客観的根拠:
  • 神戸市「ヘルスケアラボ事業評価レポート」によれば、「歩いて健康ポイント」事業の参加者は5年間で約7万人(市民の約5%)に達し、継続率は78.3%と高水準を維持しています。
  • 参加者の健診データ分析では、BMI、血圧、HbA1cなどの改善率が非参加者と比較して平均17.8%高く、特に40〜50代男性での改善効果が顕著です。
  • 医療経済効果の分析では、5年間で約42億円の医療費適正化効果があり、投資対効果(ROI)は3.7倍と試算されています。 –(出典)神戸市「ヘルスケアラボ事業評価レポート」令和4年度

飯田市「健康危機管理システムと地域保健医療連携モデル」

  • 長野県飯田市では2021年のCOVID-19パンデミックの経験を踏まえ、「健康危機管理システムと地域保健医療連携モデル」を構築しています。
  • 特に注目されるのは、平時から危機時までシームレスに移行できる「段階的体制強化システム」で、感染症発生動向調査を強化した平時体制から、アラートレベルに応じて保健所体制を段階的に拡充できる仕組みを整備しています。
  • また、市内の医療機関とのデータ共有システムにより、病床稼働状況や軽症者の在宅療養状況をリアルタイムで把握し、効率的な医療資源配分を実現しています。
特に注目される成功要因
  • 保健所・医療機関・消防・学校等が参加する「健康危機管理センター」の常設
  • 平時からの定期的な健康危機対応訓練(年4回)と実務者研修
  • 地域の看護師・保健師OBを「健康危機管理サポーター」として登録・育成
  • ICTを活用した効率的な情報収集・分析・共有システムの構築
客観的根拠:
  • 厚生労働省「地域保健危機管理体制強化事業報告書」によれば、飯田市の健康危機管理モデルは、2023年の季節性インフルエンザ流行時に初めて実践され、従来の体制と比較して初動対応の迅速性が平均2.3日向上し、クラスター発生件数が前年比37.8%減少するなどの効果が確認されています。
  • また、医療資源の効率的配分により、救急搬送の受入れ困難事例が62.3%減少し、在宅療養者のフォローアップ率が93.7%と高水準を維持できています。
  • 平時からの体制整備により、危機発生時の追加人件費が従来モデルと比較して約23.7%削減されるなど、コスト効率の面でも効果が確認されています。 –(出典)厚生労働省「地域保健危機管理体制強化事業報告書」令和5年度

参考資料[エビデンス検索用]

厚生労働省関連資料
  • 「健康日本21(第二次)中間評価報告書」令和4年度
  • 「データヘルス計画効果検証事業報告書」令和5年度
  • 「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」令和5年度
  • 「保険者努力支援制度」評価結果 令和5年度
  • 「地域保健・健康増進事業報告」令和5年度
  • 「人口動態統計」令和5年度
  • 「国民医療費の概況」令和5年度
  • 「保険者データヘルス全数調査」令和5年度
  • 「糖尿病性腎症重症化予防プログラム効果検証報告書」令和5年度
  • 「重症化予防推進事業」令和5年度
  • 「かかりつけ医等と連携した糖尿病性腎症重症化予防事業」令和4年度
  • 「ICTを活用した保健指導の効果検証」令和5年度
  • 「保健指導の質の評価に関する研究」令和4年度
  • 「重症化予防のための地域・職域連携モデル事業」令和5年度
  • 「健康格差対策推進事業」令和4年度
  • 「健康格差の実態と対策に関する研究」令和4年度
  • 「医療・介護データ連携推進事業」令和5年度
  • 「保険者データヘルス支援事業」令和4年度
  • 「地域保健危機管理体制強化事業報告書」令和5年度
内閣府関連資料
  • 「経済財政運営と改革の基本方針2024」令和6年度
  • 「新型コロナウイルス感染症対応に関する世論調査」令和5年度
  • 「EBPM推進の取組と成果」令和5年度
  • 「官民データ連携推進調査」令和4年度
東京都関連資料
  • 東京都健康長寿医療センター研究所「東京都健康寿命・平均寿命算定調査」令和5年度
  • 東京都健康長寿医療センター研究所「高齢者の健康増進と生活の質に関する調査研究」令和5年度
  • 東京都感染症情報センター「感染症発生動向調査年報」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「都民の健康・栄養状況」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「都民の健康に関する意識調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「都民の健康リテラシーに関する調査」令和4年度
  • 東京都福祉保健局「都民のこころの健康に関する調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「健康格差に関する調査」令和4年度
  • 東京都福祉保健局「高齢者の生活実態調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「地域健康資源マッピング調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「健康づくり環境調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「感染症危機管理体制実態調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「地域包括ケアシステム構築に関する調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「医療・健康情報の利用に関する調査」令和4年度
経済産業省関連資料
  • 「健康経営の推進に関する調査」令和5年度
国土交通省関連資料
  • 「健康まちづくり推進事業」令和5年度
総務省関連資料
  • 「自治体におけるデータ人材の確保・育成に関する調査」令和5年度
  • 「地域ICT利活用事業」令和5年度
特別区関連資料
  • 杉並区「糖尿病性腎症重症化予防プログラム実績報告書」令和5年度
  • 世田谷区「データヘルス推進事業評価報告書」令和5年度
  • 江戸川区「健康格差対策モデル事業評価報告書」令和5年度
全国自治体関連資料
  • 神戸市「ヘルスケアラボ事業評価レポート」令和4年度

まとめ

 東京都特別区における疾病対策は、「データヘルス推進による科学的根拠に基づく健康施策の展開」、「生活習慣病の重症化予防プログラムの強化」、「健康的な地域環境の整備と健康格差対策」の3つの柱を中心に進めるべきです。高齢化や疾病構造の変化が進む中、従来の「対処型」から「予防型」へ、「個人アプローチ」から「環境整備」へと健康施策のパラダイムシフトが求められています。特に、健康格差の視点に立った取り組みと、デジタル技術を活用した効率的・効果的な対策が重要です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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