【監査事務局】定期監査実施計画・実地検査 完全マニュアル
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。

定期監査(財務・事務・施設)実施計画・実地検査の基本要素と業務フロー
業務の意義と歴史的変遷
定期監査の意義と役割
監査事務局が実施する定期監査(財務・事務・施設)は、地方自治体の行財政運営が法令等に準拠して適正に行われているか、また、最小の経費で最大の効果を上げているかを独立した立場で検証する極めて重要な業務です。首長や各執行機関の指揮監督に属さない監査委員を補助する事務局職員として、住民の貴重な税金が無駄なく、かつ適法に使われているかを監視することは、民主主義の根幹を支える「最後の砦」としての役割を果たします。指摘や指導を通じて不正を未然に防ぐだけでなく、組織全体の業務改善を促し、区民の行政に対する信頼を確保することが本業務の最大の意義です。
監査制度の歴史的変遷と内部統制の導入
地方自治法制定以来、監査委員制度は主に財務に関する事務の「適法性(合規性)」の確認に重点が置かれてきました。しかし、行政需要の多様化や財政の逼迫に伴い、単なる適法性だけでなく、「経済性」「効率性」「有効性」といういわゆる3Eの視点を取り入れた行政監査的アプローチが強く求められるようになりました。さらに、平成29年の地方自治法改正により、長による内部統制体制の整備が法定化され、監査基準の策定が義務付けられました。これに伴い、監査事務局の役割も、すべての証拠を悉皆的にチェックする従来型から、組織の内部統制の整備・運用状況を評価し、リスクの高い分野に監査資源を集中させる「リスク・アプローチ」へと歴史的な転換を遂げています。
標準的な年間および月次の業務フロー
年間監査計画の策定と対象部署への通知
年度当初(または前年度末)に、過去の監査結果、議会での議論、社会的な不祥事の動向などを総合的に勘案し、年間監査計画を策定します。全ての部局を一定のサイクルで一巡する基本方針に加え、今年度特にリスクが高いと見込まれる重点監査テーマを設定します。計画が監査委員の決定を経た後、対象となる各部局に対して監査の実施時期、提出資料のリスト、実地検査の日程等を正式に通知し、全庁的な協力を求めます。
予備調査と膨大な資料の事前分析
実地検査の1ヶ月から2ヶ月前より、対象部署から提出された事前調書や財務データ、各種契約書、マニュアル等の分析を行う「予備調査」を開始します。この段階で、予算執行の異常値、随意契約の乱用、未収金の滞留状況などのリスク箇所を徹底的に洗い出し、実地検査当日に誰に何をヒアリングし、どの書類の原本を確認するかという詳細な「監査プログラム(質問票)」を作成します。予備調査の深さが実地検査の質を決定づけます。
実地検査の実施と講評
実地検査当日は、監査委員とともに(または事務局職員が先行して)対象部署に赴き、あるいは施設へ出向いて監査を実施します。責任者からの事業概要の説明を受けた後、作成したプログラムに沿って担当者へのヒアリング、金庫の現計照合、契約書の原本確認、そして施設の現況確認を行います。終了時には、その場で判明した軽微な誤りや改善すべき点について、対象部署の管理職に対して「講評(口頭指導)」を行い、早期の是正を促します。
監査結果の取りまとめと公表・措置確認
実地検査終了後、指摘すべき事項を法的な根拠に基づき論理的に整理し、「監査結果報告書」の案を作成します。対象部署との間で事実関係の誤認がないか意見照会(事実確認)を行った上で、監査委員の最終決定を仰ぎます。確定した報告書は区議会や区長等に提出され、区報やウェブサイトで区民に公表されます。さらに、指摘事項に対して対象部署がどのような改善措置を講じたかを後日報告させ、その内容を確認し公表するまでが、監査の一連のサイクルとなります。
各段階における実務の詳解
財務監査における証拠突合とリスク・アプローチ
財務監査では、予算の執行、収入、支出、契約、財産管理などの金銭に関わる事務が適正かを検証します。全ての伝票を確認することは不可能なため、重要性の原則に基づき、特定の高額契約や、エラーが起きやすい現金取扱事務をサンプリングして検証します。支出命令書の決裁プロセスが適正か、納品書や検査調書の日付に矛盾がないか(架空発注や前倒し検収の防止)、随意契約の理由書が客観的かつ妥当かを、証拠書類と徹底的に突合する精緻な実務が求められます。
事務監査における合規性と妥当性の検証
事務監査は、財務以外の一般的な行政事務(補助金の交付、許認可、個人情報の管理など)が、条例や規則に従って正しく行われているかを検証します。例えば、補助金交付事務においては、要綱に基づく申請書の審査が適正に行われているか、実績報告書の確認が甘く目的外使用を見逃していないかを点検します。マニュアルが形骸化していないか、担当者の属人的な判断に依存していないかという、組織のガバナンスの脆弱性を突く視点が不可欠です。
施設監査における現況確認と保全状況の点検
施設監査では、区役所本庁舎、学校、保育園、公園などの公の施設に実際に赴き、帳簿上の財産記録と実際の現況が一致しているかを確認します。図面と異なる無断の増改築がないか、目的外の占有がされていないか(不法占拠など)を歩いて確認します。また、消火設備の点検記録、避難経路の確保状況、老朽化による外壁の剥落リスクなど、利用する区民の安全に直結する施設管理の瑕疵を見逃さない、現場主義の厳しい目が要求されます。
法的根拠と条文解釈
根拠法令と主要条文の概要
地方自治法第199条第1項から第4項(定期監査等)
地方自治法第199条は、監査委員の職務権限を定める中核的な条文です。第1項では財務に関する事務の執行および経営に係る事業の管理を監査することが規定され、第2項では必要があると認めるときは事務の執行についても監査できる(行政監査)とされています。そして第4項において、これらの監査を「毎会計年度少なくとも一回以上期日を定めて」行わなければならないと規定されており、これが定期監査を実施する直接的な義務規定となっています。
地方自治法第150条(内部統制体制の整備)
都道府県および指定都市に対しては義務付け、その他の市町村(特別区を含む)に対しては努力義務とされている内部統制の方針策定に関する条文です。財務に関する事務の適正な管理を確保するための体制を長が整備し、その評価報告書を監査委員が審査することを規定しています。この条文の存在により、監査事務局は「個別のミスを指摘する」だけでなく、「ミスを防ぐ組織的な仕組み(内部統制)が機能しているかを評価する」という高次な役割を付与されています。
実務上の意義と解釈のポイント
監査委員の独立性と事務局職員の立場
監査委員は、区長から独立した執行機関として位置付けられています。事務局職員は、区長の部局から出向してきた身であっても、監査事務に従事する間は区長の指揮監督を離れ、監査委員の特命事項を遂行する独立した立場となります。実務において、かつての同僚や上司が対象部署の管理職であっても、一切の情実を交えず、客観的かつ厳正に法令違反や不適切な処理を指摘する高い職業倫理と法的解釈の厳格性が求められます。
「指摘事項」と「指導事項」等の明確な切り分け
監査の結果報告において、事実の認定と評価の基準を明確にする必要があります。法令違反や条例違反、著しい損害をもたらす重大な事象は「指摘事項」として公表し、首長に是正措置を義務付けます。一方、法令違反とまでは言えないものの、効率性の観点や事務手続き上の軽微な不備については「指導事項」または「要望事項」として取り扱います。この線引きは、根拠となる条文の解釈や区に与えるリスクの大きさによって決定されるため、監査委員への事案説明の段階で、事務局として確固たる法的な論理構成を構築しておく必要があります。
応用知識と特殊事例対応
複雑な契約形態と公金取扱いの検証
指定管理者制度における監査の視点
公の施設の管理を民間事業者等に代行させる指定管理者制度の監査は、極めて高度な応用知識を要します。指定管理者に対しては、協定書に基づき適正に施設が運営されているか、利用料金の徴収と区への納入が確実に行われているかを監査します。特に、人員配置基準が守られているか(架空の人件費計上がないか)、修繕費の負担区分(区が負担すべきか指定管理者が負担すべきか)が曖昧に運用されていないかを、事業者側の財務諸表や労働条件通知書にまで踏み込んで検証する追及力が不可欠です。
各種外郭団体および補助金交付団体への監査対応
区が出資する外郭団体(社会福祉協議会や文化振興財団など)や、多額の補助金を交付している民間団体への監査は、区の直接の事業ではないため資料要求のハードルが高くなります。補助金の目的外使用(団体の経常的な飲み会代や他事業への流用など)を見抜くため、領収書の宛名や日付、使途明細を精査します。不正が発覚した場合は、補助金返還命令の妥当性を立証するため、極めて緻密な証拠保全と、団体役員に対する厳格なヒアリングを実施する必要があります。
イレギュラーな事象発覚時の対応方針
不正や横領の端緒を発見した場合の特別対応
定期監査の予備調査や実地検査の最中に、公金の着服や文書の偽造といった明らかな犯罪行為の端緒を発見することがあります。このような場合、通常の監査手続きを直ちに一時中断し、証拠隠滅を防ぐために金庫の封印や関係書類の即時確保(コピーの取得)を行います。対象者に対するヒアリングは、複数名で事実関係のみを客観的に問い詰め、録音等の記録を残します。
監査委員への緊急報告と特別監査への移行
不正の疑いが濃厚となった場合、直ちに代表監査委員等に緊急報告を行い、首長や副区長、総務部長等と秘密裏に情報共有を図ります。その後、対象部署の定期監査という枠組みを外し、地方自治法第199条第5項に基づく随時監査、あるいは特別監査へと移行し、全容解明に向けた集中的な調査体制を敷きます。刑事告発を視野に入れた警察との連携や、懲戒処分に向けた人事部門との調整など、監査事務局が全庁的な危機管理の司令塔となる極めてシビアな対応が求められます。
東京と地方の比較分析
東京都特別区と地方自治体の位置付けの差異
圧倒的な予算規模と事業の複雑性
地方の一般市町村における一般会計予算が数百億円規模であるのに対し、東京都の特別区の多くは数千億円規模の予算を運用しています。これに伴い、締結される契約の件数や金額、保有する公有財産の規模も桁違いとなります。特別区の監査事務局職員は、莫大なトランザクション(取引)の中から、リスクの高い異常値を短期間で抽出しなければならず、地方自治体以上に、データ分析力とサンプリングの精度が実務の成否を決定づける環境にあります。
ステークホルダーの多様性と専門性の要求度
特別区の事業は、大規模な市街地再開発、複雑なPFI(民間資金等活用事業)案件、多様な外国人住民向けの施策など、高度で専門的な領域に及んでいます。そのため、対象となる部署の担当者も高い専門性を持っています。彼らの事業を監査するためには、監査事務局職員も建築基準法、都市計画法、あるいは高度な金融スキームに関する一定以上の知見を有していなければならず、単なる財務規則のチェックにとどまらない、広範かつ専門的な事業理解が求められます。
抱える課題の違いと傾向
膨大な事業数に対する絶対的なマンパワー不足
特別区は事業の多角化が進む一方で、監査事務局の人員は限られています。限られた人数で数百の課や施設を漏れなく監査することは物理的に不可能です。そのため、どこを深く監査し、どこを簡易な書面審査で済ませるかという「監査資源の選択と集中」が、地方自治体以上に切実な課題となっています。全ての部署に公平に時間をかけるのではなく、リスクベースのアプローチをいかに組織として確立できるかが、監査事務局長および事務局職員のマネジメント能力にかかっています。
監査委員の構成と議会との緊張関係
特別区の監査委員は、識見を有する者(公認会計士や弁護士、元区の幹部職員など)と、区議会議員の中から選出された議会選出委員で構成されます。議会選出委員は、住民の代表としての視点を持つ一方で、政治的な立ち位置も有しています。監査事務局職員は、純粋な適法性・妥当性の観点から事案を整理しつつ、立場の異なる監査委員全員が納得できる客観的で中立な監査報告書を取りまとめるという、高度な調整能力と政治的バランス感覚が要求されます。
特別区固有の状況
23区における行政特性と監査の焦点
都有施設と区有施設が混在する複雑な権利関係の検証
23区の特異な点として、清掃工場、大規模公園、一部の児童相談所など、過去の制度改革(都から区への事務移管等)に伴い、東京都の財産と特別区の財産が複雑に入り組んでいる施設が多数存在します。これらの施設の維持管理費や修繕費の負担割合が、都区間の協定等に基づき正確に按分され、区の負担が不当に過大になっていないかを監査することは、特別区ならではの極めて高度で専門的な実務となります。協定書の細部を読み解き、予算の裏付けを確認する精緻な作業が不可欠です。
人口密集地における安全管理体制への厳格な目
世界有数の人口過密地域である23区では、区有施設のちょっとした管理の瑕疵が、重大な事故や大惨事に直結するリスクを孕んでいます。例えば、区立学校のブロック塀の倒壊リスク、狭小な敷地に建つ保育園の避難経路の安全性、路上に設置された区の看板の落下リスクなどです。施設監査においては、単なる図面と現況の照合にとどまらず、「もしここで災害が起きたら区民の命を守れるか」という安全管理の観点からの極めて厳しい指摘が、特別区の監査事務局には求められています。
各区の相対的な位置付けと地域特性
都心区における大規模再開発と外郭区における老朽化インフラ
港区や渋谷区といった都心区では、民間事業者と共同で行う数兆円規模の市街地再開発事業が目白押しです。これらの区の監査では、複雑な権利変換計画や補助金交付の妥当性、区の保留床処分の適正性など、高度な不動産・金融監査の視点が求められます。一方、高度経済成長期に一斉にインフラ整備が進んだ外郭区(足立区や江戸川区など)では、区営住宅や橋梁の老朽化が深刻な課題です。施設監査において、長寿命化計画に基づく修繕が計画通りに執行されているか、先送りによる将来の財政リスクが放置されていないかという、中長期的な視点からの監査が重要となります。
最新の先進事例
東京都および特別区における最新の取組
データ駆動型監査(デジタル・オーディット)の試験導入
膨大な財務データから不正の兆候を抽出するため、一部の特別区ではCAAT(コンピュータ支援監査技法)などのデータ分析ツールの試験導入を進めています。全件の支払データを取り込み、「休日や深夜に行われたシステム入力」「特定の業者への支払いが不自然に特定の金額の直下(例えば随意契約の限度額ギリギリ)に集中しているケース」「ベンフォードの法則から逸脱する数値」などをアルゴリズムで自動抽出し、実地検査の対象をピンポイントで絞り込む、データ駆動型の先進的な監査手法が模索されています。
包括外部監査と内部監査(監査委員監査)のハイブリッド連携
特定のテーマについて外部の公認会計士等が実施する「包括外部監査」と、監査事務局が実施する「定期監査」が別々に動くのではなく、相互に連携して相乗効果を生み出す取り組みが行われています。例えば、包括外部監査人が抽出した全庁的な課題(例:未収金の回収体制の弱さ)を受け、監査事務局が翌年の定期監査で各部局における具体的な改善状況を徹底的に追跡調査(フォローアップ監査)することで、指摘を出しっぱなしにせず、区の組織風土の変革にまで踏み込む強力な監査サイクルが構築されています。
業務改革とデジタルトランスフォーメーション
ICT活用による業務負担の軽減
監査調書のペーパーレス化とクラウド監査システムの導入
かつての監査は、トラックで運ばれるほどの段ボール箱いっぱいの書類(契約書、伝票、稟議書)と向き合うものでした。現在、業務改革として、監査に必要な資料を対象部署にあらかじめPDF等で電子ファイル化させ、セキュアなクラウドストレージ上で共有する仕組みへの移行が進んでいます。監査事務局職員は、デュアルモニターと検索機能(OCR)を駆使して、数千ページの仕様書の中から特定のキーワードを瞬時に探し出すことが可能となり、書類をめくる物理的な時間を大幅に削減し、本質的な分析に時間を割けるようになっています。
リモートヒアリングとウェアラブルカメラによる施設監査
実地検査における移動時間のロスを削減するため、書類の確認等で済む事案については、Web会議システムを用いたリモートヒアリングによる監査が定着しつつあります。また、施設監査においては、監査事務局職員全員が現場に赴くのではなく、対象部署の担当者がウェアラブルカメラ(スマートグラス等)を装着して現場を歩き、区役所にいる監査委員や事務局職員がリアルタイムの映像を見ながら「その天井のシミをズームして見せてほしい」といった指示を出す、遠隔からの施設監査手法の導入が検討・実証されています。
民間活力の導入事例
公認会計士等による監査補助業務の外部委託
企業会計の要素が強い公営企業会計(病院事業や下水道事業など)の監査や、指定管理者の財務状況の分析において、行政職員だけでは高度な会計基準の解釈に限界がある場合があります。そのため、監査事務局の予算で公認会計士や監査法人を「監査専門委員」や「業務委託」として登用し、専門的な財務分析や意見書(レビュー)の作成をアウトソーシングする事例が増加しています。これにより、監査結果の客観性と専門的な説得力が飛躍的に向上します。
生成AIの業務適用
当該業務における生成AIの具体的な用途
過去の監査指摘事項や関係法令の高度検索と論点整理
監査の実地検査において、対象部署から出された言い分が過去の監査でどのように扱われたか、あるいは関連する国の通知がどうなっているかを調べる際、生成AIを活用します。「地方自治法第234条の随意契約に関して、過去の総務省通知に基づき、緊急の必要がある場合として認められる要件と、不適切とされる典型的な事例を5点に要約して整理して」とプロンプトで指示することで、膨大な法規集をめくる時間を短縮し、監査調書を作成する際の法的な論点整理の強力な補助ツールとします。(※実際の事業者名や未公開の監査情報は絶対に入力しません)
監査結果報告書および対象部署向け講評案のドラフト作成
指摘事項が固まった後、それを誰が読んでも分かりやすく、かつ厳格なトーンの報告書にまとめる作業に生成AIを活用できます。「区の補助金交付要綱に基づく実績報告書の確認が不十分であった事案について、改善を求める指摘事項の文章を、客観的事実、課題、改善要求の3段構成で、自治体の監査報告書にふさわしい硬質な文体でドラフト作成して」と指示することで、文章の推敲にかかる時間を大幅に削減し、事務局内のピアレビュー(査読)プロセスを迅速化させます。
実践的スキルとPDCAサイクル
組織レベルにおけるPDCAサイクルの構築
Plan(計画):リスク評価に基づく年間監査計画の精緻化
年度当初に、全庁の各事業を「予算規模」「過去の指摘の有無」「新規事業か否か」「区民生活への影響度」などの指標でマトリクス化し、リスクスコアを算出します。この客観的なリスク評価に基づき、本年度重点的に人員を投入する監査テーマ(例えば、「大規模システム調達契約の妥当性」など)を明確に設定した、戦略的な年間監査計画を策定します。
Do(実行):標準化された監査プログラムに沿った実地検査
計画に基づき、各担当班が予備調査と実地検査を実行します。この際、担当者のスキルによる監査の質のばらつきを防ぐため、事務局内で標準化された「監査チェックリスト(確認すべき必須項目と質問例が網羅されたもの)」を使用し、漏れのない均質な監査手続きを組織的に遂行します。
Check(評価):監査結果報告書の内部審査と有効性検証
各班が持ち帰った指摘事項案について、事務局長や次長を交えた内部の審査会議(調書審査会)を実施します。法的根拠は十分か、事実誤認はないか、指摘のトーンが他部署とバランスが取れているかを厳格にピアレビューします。年度末には、今年度の監査指摘によって区のどの事務がどれだけ改善されたか(削減された無駄な経費など)、監査自体の有効性を評価します。
Action(改善):次年度へのナレッジ共有と監査手法のアップデート
監査の過程で得られた新たな手口(巧妙な契約分割など)や、効果的だった資料分析の手法を「監査ノウハウ集」として文書化し、事務局全体で共有します。また、対象部署からのフィードバック(資料要求が遅かった、ヒアリングの趣旨が不明確だった等)を真摯に受け止め、次年度の監査計画におけるスケジュール設定や事前通知のあり方を改善し、監査業務自体の品質を継続的に向上させます。
個人レベルにおけるPDCAサイクルの実践
Plan(計画):専門知識の習得とヒアリングスキルの目標設定
事務局に配属された職員は、まず自身の知識の棚卸しを行います。「地方自治法の財務規定の理解が浅い」「決算書の読み方がわからない」といった課題を認識し、自治体内部監査士や簿記などの資格取得、あるいは関連書籍の通読といった具体的な学習計画を立てます。また、対象から事実を引き出すための「ヒアリングスキル」の向上も目標に据えます。
Do(実行):予備調査での仮説構築と現場での検証
実際の監査案件において、漫然と書類を見るのではなく、「この事業の構造なら、ここに無駄が発生するはずだ」「この契約形態なら、業者との癒着のリスクがあるはずだ」という『仮説』を自ら立てて予備調査に臨みます。そして実地検査において、その仮説が正しいかどうかを、鋭い質問と証拠書類の確認によって検証するプロセスを実践します。
Check(評価):指摘事項の論理的整合性の自己点検
自らが起案した指摘事項案が、上司の審査で「法的根拠が弱い」「事実関係の裏付けが足りない」と差し戻された場合、自分の仮説のどこに飛躍があったのか、どの証拠書類を見落としていたのかを深く反省し、自身の監査スキルの甘さを客観的に評価します。
Action(改善):論理的思考力の強化と他部署業務の学習
差し戻された経験を糧に、次は「反論の余地がない完璧な論理構成と証拠」を揃えるための準備手法を改善します。また、表面的な財務規則だけでなく、対象部署が所管する専門的な事業法(福祉関連法規や建設関連法規など)についても自ら進んで学び、監査人としての引き出しを増やし続ける自己研鑽を実践します。
他部署との連携要件
庁内関係部署との連携体制
総務・会計・コンプライアンス部門との緊密な情報共有
監査事務局は独立した機関ですが、区の組織を良くするという目的は首長部局と同じです。そのため、会計事務を統括する会計室や、契約制度を所管する総務部門(契約課)、そして不祥事防止を担うコンプライアンス推進部門とは、平時から緊密な情報共有体制を築いておく必要があります。監査で発見した制度上の欠陥を契約課に伝え、全庁的なルール改正につなげてもらうなど、個別の指摘を超えた組織的改善を図るための連携ルートが不可欠です。
情報システム部門とのデータ抽出連携
データ駆動型監査を進めるにあたり、財務会計システムや契約管理システムから必要な生データ(ログデータなど)を直接抽出するためには、情報システム部門の技術的な協力が欠かせません。監査事務局が必要とするデータフォーマットや抽出のタイミングについて、平時からシステム部門の担当者と仕様のすり合わせを行い、スムーズなデータ提供を受けられる関係性を構築しておくことが、予備調査の効率化に直結します。
外部関係機関との情報共有ノウハウ
他自治体監査事務局との情報交換とベンチマーキング
特別区の監査事務局間、あるいは東京都や他道府県の監査事務局との間で、定期的な情報交換会や協議会が開催されています。他区で発生した不正事例や、効果的だった監査テーマ、新たな監査ツールの導入事例などを共有し合うことで、「自区でも同じリスクが潜んでいないか」という気づきを得ることができます。閉鎖的になりがちな監査業務において、外部の先進事例を常にベンチマーキングし、自区の監査手法を客観視する外部ネットワークの活用が極めて重要です。
住民監査請求に基づくオンブズマン等への対応ノウハウ
地方自治法第242条に基づく住民監査請求が提起された場合、監査事務局は請求人(区民や市民オンブズマンなど)から直接意見を聴取し、証拠の提出を受ける必要があります。請求人の主張には法的な誤解が含まれることもありますが、行政に対する不信感や熱意に真摯に向き合い、中立・公正な立場で事実関係を淡々と調査し、監査委員が判断を下すための客観的な材料を整える、高いコミュニケーション能力と冷静な調整ノウハウが求められます。
総括と職員へのエール
地方自治体職員としての誇りと使命
監査事務局における定期監査の実務は、膨大な書類の山と格闘し、重箱の隅をつつくような地味で過酷な作業の連続です。時には、必死に区民のために汗を流している対象部署の職員に対し、冷徹に法令の壁を突きつけ、厳しい指摘をしなければならない局面に立たされます。同僚から疎まれ、嫌われ役となることに、思い悩み、孤独を感じる日もあるかもしれません。
しかし、監査という機能が存在しなければ、行政という巨大な組織はいずれ必ず腐敗し、区民の血税は際限なく浪費されてしまいます。皆さんが一つの伝票の不備を見逃さず、一つの契約の不透明さを正すことは、区民の信頼という自治体の根幹を守り抜くことに他なりません。皆さんの厳しい指摘の裏にあるのは、行政を貶めることではなく、「より良く適正な区政を実現したい」という強烈な愛情と使命感のはずです。
監査事務局への配属は、自治体職員として行政全体のメカニズムを俯瞰し、法務・財務の最高峰の実務を身につけることができる、極めて貴重で名誉ある機会です。対象部署の事業を深く理解しようとする謙虚さと、不正を決して許さない毅然とした態度を併せ持ち、常に研鑽を怠らないでください。皆さんが真のプロフェッショナルとして、特別区の健全な発展を力強く支え、区民の信託に応える最後の砦として大いに活躍されることを、心より確信しています。





-320x180.jpg)

-320x180.jpg)

