12 生活安全

高齢運転者対策、免許返納促進

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(高齢運転者を取り巻く環境)

  • 自治体が高齢運転者対策および免許返納促進を行う意義は「深刻化する高齢者関連の交通事故を抑制し、住民の生命と安全を守ること」と「自動車運転に依存しない、高齢者の自立した生活と社会参加を支援し、持続可能な地域社会を構築すること」にあります。
  • 日本、特に東京都特別区のような都市部は、世界でも類を見ない速度で進行する超高齢社会という課題の最前線に立っています。75歳以上の運転免許保有者が急増する中、交通安全の確保と、高齢者の生活の質(QOL)を支える移動手段の確保という二つの要請に同時に応える、包括的な政策対応が急務となっています。
  • この問題は、単なる交通安全対策に留まらず、高齢者福祉、都市計画、財政、地域コミュニティのあり方までを包含する、自治体経営の根幹に関わる重要課題です。

意義

住民にとっての意義

安全な交通環境の享受
  • 高齢運転者が関与する交通事故のリスクが低減されることで、子どもから現役世代、そして高齢者自身まで、全ての住民が安心して道路を利用できる環境が実現します。
    • 客観的根拠
      • 75歳以上の運転者による死亡事故は増加傾向にあり、社会全体の安全を脅かす要因となっています。対策を講じることで、これらのリスクを直接的に低減できます。
      • (出典)警察庁「令和5年上半期における交通死亡事故の発生状況等について」令和5年度
高齢者自身の尊厳と安全の確保
  • 加齢による心身機能の変化を自覚し、適切な時期に運転を「卒業」できる環境を整えることで、高齢者が交通事故の加害者となる悲劇を防ぎ、尊厳ある人生の最終段階を守ります。
    • 客観的根拠
      • 75歳以上の運転者による死亡事故では、ブレーキとアクセルの踏み間違いが75歳未満の約7倍に上るなど、加齢に伴う特有のリスクが存在します。
      • (出典)経済産業省「安全運転サポート車(サポカー)の普及促進」ウェブサイト
免許返納後の生活の質(QOL)の維持・向上
  • 免許返納をためらう最大の理由である「移動手段の喪失」という不安を解消し、多様な代替交通手段を提供することで、返納後も通院、買い物、社会参加などの活動を継続でき、健康で自立した生活を維持できます。
    • 客観的根拠
      • 免許返納後の主な移動手段は「家族の送迎」(59.1%)、「徒歩」(43.8%)、「バス」(35.8%)となっており、家族に頼れない場合の公共交通や地域支援の重要性が示唆されます。
      • (出典)株式会社ウェブクルー「運転免許証の自主返納に関する調査」2024年

地域社会にとっての意義

交通事故による社会的損失の低減
  • 交通事故の減少は、医療費、介護費用、保険金支払、事故処理に関わる行政コストなど、目に見える形・見えない形での社会全体の経済的・精神的損失を大幅に軽減します。
持続可能な移動手段の構築
  • 個人の自家用車への過度な依存から脱却し、コミュニティバスやデマンド交通といった効率的な公共・準公共交通へのシフトを促します。これは、環境負荷の低減や、交通弱者全般(若者や子育て世代含む)の利便性向上にも繋がり、持続可能な地域交通システムの基盤となります。
地域経済の活性化
  • 高齢者が外出しやすい環境を整備することは、地域の商店街や商業施設、文化施設へのアクセスを改善し、地域内での消費活動を活発化させ、地域経済の循環に貢献します。
    • 客観的根拠
      • 富山市の「おでかけ定期券」のように、高齢者の移動を支援する施策が中心市街地の賑わい創出に寄与した事例があります。
      • (出典)地方創生推進事務局「富山市のまちづくりの基本方針」

行政にとっての意義

行政コストの最適化と将来への投資
  • 初期投資は必要ですが、交通事故の減少による事後対応コストの削減や、高齢者の健康維持・介護予防による将来的な社会保障費の抑制効果が期待でき、中長期的な視点で見れば行政コストの最適化に繋がります。
EBPM(証拠に基づく政策立案)の実践
  • 高齢化率、免許保有者数、事故発生件数、返納者数など、豊富なデータに基づいて政策を立案・評価・改善できるため、EBPMを実践し、政策効果を客観的に示す格好のモデルケースとなります。
来るべき超高齢社会への先進的備え
  • 2070年には日本の人口の約4割が高齢者になると推計される中、現在構築する制度やインフラは、将来さらに深刻化する課題への備えとなります。東京都特別区が先進的なモデルを示すことは、国全体の課題解決をリードする意義を持ちます。
    • 客観的根拠
      • 令和52(2070)年には、日本の高齢化率は38.7%に達し、2.6人に1人が65歳以上、約4人に1人が75歳以上になると推計されています。
      • (出典)内閣府「令和7年版 高齢社会白書」令和7年度

(参考)歴史・経過

  • 高齢運転者対策は、社会の高齢化と重大事故の発生を背景に、段階的に強化されてきました。その変遷は、努力義務から義務化へ、そして認知機能や運転技能といった個人の能力を直接評価する方向へと深化しています。
    • 1997年(平成9年)改正 / 1998年(平成10年)施行
      • 75歳以上の運転者を対象に、高齢運転者標識(もみじマーク、現クローバーマーク)の表示努力義務、および免許更新時の「高齢者講習」受講が義務化されました。また、本人の申請による「運転免許証の自主返納制度」が創設されました。
      • (出典)警察庁「高齢運転者対策に係る道路交通法改正の主な経緯」、日本老年医学会「高齢ドライバーの増加に伴う交通事故の増加」
    • 2001年(平成13年)改正 / 2002年(平成14年)施行
      • 70~74歳層の事故増加を受け、高齢者講習および高齢運転者標識の努力義務の対象年齢が70歳以上に引き下げられました。また、返納後の身分証明書のニーズに応えるため「運転経歴証明書」制度が導入されました。
      • (出典)警察庁「高齢運転者対策に係る道路交通法改正の主な経緯」
    • 2007年(平成19年)改正 / 2009年(平成21年)施行
      • 認知機能の低下が事故の一因とみられることから、75歳以上の運転者に対し、免許更新時の「認知機能検査」が義務化されました。
      • (出典)警察庁「高齢運転者対策に係る道路交通法改正の主な経緯」、國學院大學「高齢ドライバーの事故を防ぐには」
    • 2015年(平成27年)改正 / 2017年(平成29年)施行
      • 認知機能検査が強化され、検査で「認知症のおそれあり(第1分類)」と判定された者全員に、医師の診断が義務付けられました。診断の結果、認知症と判断された場合は免許の取消しまたは停止の対象となりました。
      • (出典)早稲田大学社会安全政策研究所「高齢運転者対策の現状と課題」、内閣府「交通安全白書」
    • 2020年(令和2年)改正 / 2022年(令和4年)施行
      • 過去3年間に一定の違反歴がある75歳以上の運転者に対し、免許更新時に実車試験である「運転技能検査」の受検が義務化され、合格しなければ更新できなくなりました。また、安全運転支援機能を搭載した車両のみ運転できる「サポートカー限定免許」制度が導入されました。
      • (出典)警視庁「改正道路交通法の施行」、シンク・ディー・エス・ピー「道路交通法施行令の改正」

高齢運転者対策に関する現状データ

高齢化の進展と運転免許保有状況
  • 日本の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は29.3%(令和6年10月1日時点)に達し、過去最高を更新し続けています。特に75歳以上人口は2,078万人となり、65~74歳人口(1,547万人)を大きく上回っています。これは、交通事故リスクがより高いとされる後期高齢者層が急速に拡大していることを意味します。
    • (出典)内閣府「令和7年版 高齢社会白書」令和7年度
  • 75歳以上の運転免許保有者数は、令和4年末時点で約689万人となり、10年前の平成24年末(約409万人)から約1.7倍に急増しています。今後もこの増加傾向は続くと予測されており、対策の重要性は増すばかりです。
    • (出典)経済産業省・国土交通省「安全運転サポート車の普及促進に向けた取組」
高齢運転者による交通事故の発生状況
  • 交通事故による死亡者数全体は長期的に減少傾向にありますが、その中で75歳以上の運転者が第一当事者となる死亡事故の割合は増加し続けています。令和5年には、全死亡事故件数に占める割合が17.9%となり、過去10年間で最も高い水準に達しました。
    • (出典)警察庁「令和5年中の交通死亡事故の発生状況について」令和6年
  • 免許人口10万人当たりの死亡事故件数を見ると、75歳以上の運転者は75歳未満の運転者と比較して2倍以上高くなっています。特に80歳代になるとその差はさらに開き、車両単独(工作物衝突)事故のリスクは80~84歳で75歳未満の約9.3倍、85歳以上では約15倍にも達します。
    • (出典)警察庁「高齢運転者による交通事故防止対策に関する提言」、経済産業省・国土交通省「安全運転サポート車の普及促進に向けた取組」
事故の人的要因と違反内容
  • 75歳以上の運転者による死亡事故の人的要因を分析すると、「操作不適」が約3割を占め、75歳未満(約1.5割)の2倍近い構成比となっています。
  • 中でも特徴的なのが「ブレーキとアクセルの踏み間違い」で、75歳未満の運転者では死亡事故全体の1.1%に過ぎないのに対し、75歳以上の運転者では7.7%と、約7倍の高い割合を占めています。これは加齢に伴う身体・認知機能の変化が事故に直結していることを示す重要なデータです。
    • (出典)経済産業省・国土交通省「安全運転サポート車の普及促進に向けた取組」
  • 違反種別では、漫然運転や脇見運転などの「安全不確認」や「前方不注意」といった、注意力の低下に起因するものが大半を占めています。
    • (出典)警視庁「高齢運転者(第1当事者)の交通事故発生状況」
運転免許証の自主返納状況
  • 運転免許の自主返納件数は、平成30年(2018年)以降、年間40万人を超える高い水準で推移しています。令和4年中には全国で約44万8千人が免許を返納し、そのうち約6割にあたる約27万人が75歳以上でした。
    • (出典)警察庁「運転免許統計」令和5年版
  • 返納と同時に申請される「運転経歴証明書」の交付件数も、令和4年中に約40万件に上っており、公的な身分証明書としての需要が高いことがうかがえます。これは、返納後の生活における本人確認手段の確保が重要であることを示しています。
    • (出典)警察庁「運転免許統計」令和5年版
安全運転サポート車(サポカー)の普及状況
  • 衝突被害軽減ブレーキ(AEB)を搭載した新車の販売比率は9割を超えていますが、これはあくまで新車市場の話です。高齢者が長年乗り続けている旧型の車両も多く、日本全体の保有車両におけるサポカーの普及率はまだ十分とは言えません。
    • (出典)日本自動車工業会「軽自動車の使用実態調査報告書」
  • 一方で、サポカー(特に衝突被害軽減ブレーキとペダル踏み間違い時加速抑制装置の両方を備えた「サポカーSワイド」)は、非搭載車と比較して人身事故の発生を約42%低減させるというデータがあり、事故防止への高い効果が実証されています。
    • (出典)経済産業省・国土交通省「安全運転サポート車の普及促進に向けた取組」

課題

住民の課題

免許返納後の移動手段の喪失
  • 特に公共交通機関の路線が少ない、バス停まで遠い、坂道が多いといった地域に住む高齢者にとって、自動車は買い物、通院、友人との交流など、自立した生活を維持するための「命綱」です。免許返納は、こうした生活基盤そのものを失うことと同義になりかねません。
    • 客観的根拠
      • 警察庁の調査で、運転を継続している高齢者が免許返納をためらう最大の理由として、68.5%が「車がないと生活が不便なこと」を挙げています。
      • (出典)警察庁「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」
      • 免許返納後の主な移動手段は「家族などによる送迎」が59.1%で最多であり、次いで「徒歩」(43.8%)、「バス」(35.8%)と続きます。これは、公的な支援よりも家族への依存度が高い現状を示しており、核家族化や高齢者のみの世帯が増加する中で、この移動手段が持続可能でないケースが増えることを示唆しています。
      • (出典)株式会社ウェブクルー「運転免許証の自主返納に関する調査」2024年
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 免許返納が社会的孤立や閉じこもり、フレイル(虚弱)を招き、結果的に介護需要の増大や医療費の増加に繋がります。
免許返納への心理的抵抗と情報不足
  • 長年の運転経験からくる「自分はまだ大丈夫」という自信や、運転自体が生きがい・楽しみとなっていることに加え、返納後の生活が具体的にどう変わるのか、どのような支援があるのかといった情報が不足していることが、返納の決断をためらわせる大きな要因となっています。
    • 客観的根拠
      • 返納をためらう理由として「車を運転する楽しみが失われること」も10.1%を占めており、移動手段以上の価値を運転に見出している層がいることがわかります。
      • (出典)警察庁「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」
      • 免許更新時の高齢者講習で最も取り入れてほしい情報として、運転継続者・自主返納者ともに4割以上が「交通手段に関する支援制度の情報提供」を挙げており、代替手段に関する情報への強いニーズが浮き彫りになっています。
      • (出典)警察庁「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 本人や家族が返納の適切なタイミングを逸し、身体・認知機能が著しく低下した状態で運転を継続し、重大事故を引き起こすリスクが高まります。
代替交通手段の利用におけるデジタルデバイド
  • 近年導入が進むデマンド交通やMaaS(Mobility as a Service)といった新しい移動サービスは、スマートフォンのアプリでの予約・決済を前提としているものが多く、デジタル機器の操作に不慣れな高齢者にとっては利用のハードルが高く、敬遠されがちです。
    • 客観的根拠
      • 全国で実施されているMaaSの実証実験の多くは、スマートフォンアプリを中核に据えています。
      • (出典)AI-MARKET「【2024年最新】MaaSの国内・海外の面白い活用事例26選!」、Tech Trend「【2024年最新】日本版MaaSの推進・支援事業12の事例を紹介」
      • 足立区のデマンド交通実証実験では、アプリ予約と並行して「電話予約」も可能としており、この課題を行政側が認識し、対策を講じていることがうかがえます。
      • (出典)足立区「『チョイソコ×せんじゅ』運行開始に向けて」、大和自動車交通株式会社「足立区の地域交通課題の解消に向けたオンデマンド型乗合タクシーの実証実験に参画」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 最新技術を活用した利便性の高い移動支援サービスが、最もそれを必要とする高齢者層に届かず、政策効果が限定的になってしまいます。

地域社会の課題

高齢運転者による交通事故の発生
  • 高齢運転者による重大事故は、被害者やその家族の人生を大きく狂わせるだけでなく、加害者となった高齢者自身とその家族の生活も破綻させます。一つの事故が、地域社会全体の安全・安心感を根底から揺るがす深刻な問題です。
    • 客観的根拠
      • 75歳以上高齢運転者による死亡事故件数は、令和5年上半期で179件と、前年同期比で10.5%増加しており、依然として深刻な状況が続いています。
      • (出典)警察庁「令和5年上半期における交通死亡事故の発生状況等について」令和5年
      • 過去には、登校中の小学生の列に高齢者の運転する車が突っ込むといった痛ましい事故も発生しており、社会に大きな衝撃を与え、対策強化の契機となってきました。
      • (出典)警察庁「高齢運転者による交通事故防止対策に関する提言」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 地域住民の間に高齢運転者に対する漠然とした不安や偏見が広がり、世代間の対立や分断を生む土壌となります。
免許返納者への移動支援に伴う地域負担の増大
  • 免許返納者の移動を支えるコミュニティバスやデマンド交通は、その多くが採算性に乏しく、自治体からの補助金によって運営が成り立っています。利用者が増えれば増えるほど、地域の財政負担が増加するというジレンマを抱えています。
    • 客観的根拠
      • 専門家の指摘によれば、コミュニティバスの多くは赤字運営であり、その持続可能性が大きな課題となっています。
      • (出典)東京商工会議所「都内コミュニティバスの現状と課題」
      • NPOなどが担う福祉有償運送も、運転ボランティアの高齢化や担い手不足、運営資金の確保といった課題に常に直面しており、善意だけでは継続が困難な状況です。
      • (出典)厚生労働省 関東信越厚生局「地域における高齢者の移動支援の取組事例」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 自治体の財政難から移動支援サービスが縮小・廃止され、一度は確保された高齢者の足が再び奪われる事態に陥ります。

行政の課題

多様なニーズに対応する画一的でない支援策の難しさ
  • 同じ特別区内であっても、駅周辺の商業地域、鉄道駅から離れた戸建て住宅地、坂道の多い丘陵地など、地理的条件は様々です。高齢者の移動ニーズも地域ごとに大きく異なるため、全区一律の施策ではきめ細やかな対応が困難です。
    • 客観的根拠
      • 目黒区のコミュニティバス検討では、都心部からの放射状の交通網は充実しているものの、地域内を横断する交通ネットワークの弱さが課題として認識されていました。
      • (出典)目黒区「目黒区コミュニティバス調査報告書」
      • 足立区では、デマンドタクシー(入谷・鹿浜)、乗合型デマンド交通(常東)、定時定路線型交通(花畑)と、地区の特性に合わせて3種類の交通モデルの実証実験を行っており、画一的な解決策が存在しないことを示唆しています。
      • (出典)LIGARE「足立区が23区初のデマンド交通本格運行開始 地域の移動課題解決へ」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 多額の予算を投じた施策が一部の地域のニーズにしか合致せず、費用対効果が低いまま、多くの交通弱者を取り残してしまいます。
縦割り行政による連携不足
  • 高齢者の移動支援は、交通計画(都市整備部局)、高齢者福祉(福祉保健部局)、財政(企画財政部局)、免許制度(警察)、地域振興(産業経済部局)など、複数の部局にまたがる複合的な課題です。しかし、部局間の縦割り意識が障壁となり、効果的な連携体制が構築できていないのが現状です。
    • 客観的根拠
      • 高齢者の移動支援は、閉じこもりやフレイルの防止、介護予防といった福祉施策と一体で考えることが極めて重要です。
      • (出典)内閣府「令和元年版 高齢社会白書」
      • 先進事例である富山市では、都市計画部局と福祉保健部局が密接に連携し、「おでかけ定期券」のような、交通・福祉・地域活性化の相乗効果を生む施策を実現しています。
      • (出典)地方創生推進事務局「富山市のまちづくりの基本方針」、内閣府「令和元年版 高齢社会白書」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 各部局が個別の対症療法的な施策に終始し、政策間の相乗効果が生まれず、総合的・戦略的な課題解決が進みません。
持続可能な財源の確保
  • 高齢化の進展に伴い、移動支援の対象者と需要は今後も増え続けることが確実です。自治体の補助金に全面的に依存する運営モデルでは、将来的な財政硬直化を招き、制度の持続が困難になります。
    • 客観的根拠
      • 富山市のコミュニティバス「まいどはやバス」の事業費は、運賃収入のほか、市からの補助金や商工会議所からの負担金で賄われています。
      • (出典)国土交通省 北陸地方整備局「富山市はなぜコンパクトシティを目指したのか?」
      • 先進的な取り組みでは、広告収入の活用(富山市)や、複数の社会福祉法人が共同で車両や人件費を負担する(東京都町田市)など、行政の財政負担を軽減するための多様な工夫が見られます。
      • (出典)国土交通省 北陸地方整備局「富山市はなぜコンパクトシティを目指したのか?」、厚生労働省 関東信越厚生局「地域における高齢者の移動支援の取組事例」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 自治体の財政状況の悪化に伴い、事業規模の縮小や運賃の値上げを余儀なくされ、高齢者の生活基盤が不安定化します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
    • 即効性・波及効果
      • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の課題解決(例:交通安全+福祉向上+地域活性化)や、より多くの住民への便益に繋がる施策を高く評価します。
    • 実現可能性
      • 現在の法制度や、予算規模、人員体制の中で、比較的速やかに着手・実現できる施策を優先します。既存の仕組みや地域資源を活用できる施策は、優先度が高くなります。
    • 費用対効果
      • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して、得られる効果(事故削減による社会的損失の軽減、QOL向上、将来の医療・介護費抑制効果等)が大きい施策を優先します。
    • 公平性・持続可能性
      • 特定の地域や所得層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、かつ、一時的な取り組みで終わらず、長期的に継続可能な制度設計を持つ施策を高く評価します。
    • 客観的根拠の有無
      • 国の白書や学術研究、他の自治体での先行事例等によって、その有効性が実証または示唆されている、エビデンスに基づいた施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 高齢運転者対策は、①免許返納後の生活を支える「出口戦略」②運転継続者の安全を確保する「リスク管理」③円滑な返納へと導く「入口戦略」 の3つのフェーズから総合的にアプローチする必要があります。これらの施策は相互に関連しており、一体的に推進することで最大の効果を発揮します。
  • 優先度【高】:支援策① 免許返納後の「移動の足」確保と生活の質(QOL)維持支援
    • 理由:高齢者が免許返納をためらう最大の障壁が「移動手段の喪失」への不安であるため、この不安を解消する施策は全ての対策の土台となります。住民の生活に直結し、返納を促進する上で最も即効性と波及効果が高い施策です。
  • 優先度【中】:支援策② 運転継続を希望する高齢者への多角的安全対策
    • 理由:全ての高齢者が即時に返納できるわけではないという現実を踏まえ、運転継続中の事故リスクを低減させることは、社会の安全を守る上で不可欠です。特にサポカーの普及促進は、事故削減効果に関する客観的根拠が明確です。
  • 優先度【中】:支援策③ 円滑な免許返納を促すための情報提供と相談体制の強化
    • 理由:支援策①と②が整備されることを前提として、本人や家族が適切な情報を得て、納得の上で返納を判断できる環境を整える施策です。効果の発現には時間を要しますが、長期的に見て対策全体の効果を高める上で重要です。

各支援策の詳細

支援策①:免許返納後の「移動の足」確保と生活の質(QOL)維持支援

目的
  • 免許返納者が、自動車を運転していた時と同等の社会参加や日常生活のレベルを維持できるよう、多様で使いやすく、経済的負担の少ない移動手段を総合的に確保します。
  • 「免許を返納しても、生活は変わらない、むしろ豊かになる」という安心感を提供し、自主返納を前向きな選択肢として確立することを目指します。
    • 客観的根拠
      • 国土交通省は、免許返納が進まない背景に「車がない生活が不便だから」という理由があることを指摘しており、代替交通手段の確保が国の政策としても重要視されています。
      • (出典)国土交通省「令和7年度 高齢運転者の免許返納後の移動手段確保に向けた調査」、国土交通省 東北運輸局「地域公共交通実態調査」
主な取組①:コミュニティバス・デマンド交通の戦略的拡充と高度化
  • 区民アンケートや乗降データに基づき、既存コミュニティバスのルートをきめ細かく見直し、病院、スーパー、地域包括支援センター、区民ひろば等、高齢者の生活拠点を結ぶルートを強化します。
  • AIを活用したオンデマンド交通(予約型乗合交通)を、交通が不便な地域から順次導入します。その際、スマートフォンアプリだけでなく、必ず電話予約地域拠点(コンビニ、薬局等も含む)での予約代行など、デジタルに不慣れな高齢者に配慮した予約手段を確保します。
    • 客観的根拠
      • 足立区では、デマンドタクシーや乗合型デマンド交通など、地域特性に応じた複数の実証実験を経て本格運行に移行しており、多様なモデルを組み合わせるアプローチの有効性を示しています。
      • (出典)LIGARE「足立区が23区初のデマンド交通本格運行開始 地域の移動課題解決へ」、足立区「デマンド型交通「足タク」、4月から本格運行へ」
      • 静岡県掛川市の「ふれあいタクシー」は、住民が主体となり、予約制で自宅と指定施設を結ぶモデルとして成功しています。
      • (出典)掛川市「デマンド型乗合タクシー」
主な取組②:タクシーおよび福祉有償運送の利用支援強化
  • 運転経歴証明書を持つ高齢者に対し、タクシー利用料金を助成する「タクシー利用券」を交付します(例:年間12,000円分)。
  • 通院やリハビリ、公的な手続きなど、生活に不可欠な目的での利用については、助成額を上乗せする、または利用回数の上限を緩和するなどの重点的な支援を行います。
  • NPO法人等が実施する安価な移動サービス「福祉有償運送(自家用有償旅客運送)」の運営団体に対し、車両購入費や燃料費、保険料などの運営経費への補助を拡充し、サービスの安定供給と担い手の育成を支援します。
    • 客観的根拠
      • 杉並区のNPO法人「さんじゅ会」が運営する「おでかけサービス」では、会員制の福祉有償運送を提供し、区が発行する福祉タクシー利用券も使用可能となっており、公的支援と市民活動の連携モデルとなっています。
      • (出典)社会福祉法人杉樹会「おでかけサービス(福祉有償運送)」
主な取組③:地域密着型「移動支援相談センター」の設立・運営支援
  • 地域の移動支援に精通したNPO法人や社会福祉協議会と協働し、高齢者の移動に関するあらゆる相談にワンストップで応じる「移動支援相談センター」の各地域への設置を支援します。
  • このセンターは、電話一本で利用者の状況や目的地に応じ、コミュニティバス、デマンド交通、福祉有償運送、ボランティアによる送迎など、地域で利用可能な全ての移動手段の中から最適なものを提案し、予約手配までを代行するコンシェルジュ機能を担います。
    • 客観的根拠
      • 杉並区がNPO法人に委託して運営する「杉並区外出支援相談センター もび~る」は、電話相談を主体に、多様な移動サービスへの案内・取次を行う全国でも先進的な事例です。
      • (出典)杉並区「杉並区外出支援相談センター もび~る」リーフレット
主な取組④:民間事業者と連携した「運転卒業応援」特典制度の拡充
  • 地域のスーパー、商店街、飲食店、理美容室、娯楽施設、金融機関等と連携し、運転経歴証明書の提示による特典(例:商品代金の割引、購入品の無料宅配サービス、金利優遇など)を大幅に拡充します。
  • 区の広報誌やウェブサイト、SNSなどで特典提供事業者を「高齢者にやさしい店」として積極的にPRし、地域ぐるみで免許返納者を応援する機運を醸成します。
    • 客観的根- 拠
      • 警視庁が主導する「高齢者運転免許自主返納サポート協議会」には、既に多くの民間事業者が加盟し、多様な特典を提供しています。この取り組みを、より地域に密着した形で深化・拡大させます。
      • (出典)警視庁「高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧」
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 免許返納者の外出頻度維持・向上率:返納1年後のアンケートで、返納前と比較して外出頻度が「変わらない」または「増えた」と回答した人の割合を80%以上とする。
    • データ取得方法:免許返納手続き時の同意に基づき、返納1年後の利用者へ郵送またはオンラインによるアンケート調査を実施。
  • KSI(成功要因指標)
    • 免許返納後の代替交通手段に対する総合満足度:アンケート調査で「満足」「やや満足」と回答した人の割合を80%以上とする。
    • データ取得方法:上記KGIアンケート調査に設問を追加。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • コミュニティバス・デマンド交通の高齢者(65歳以上)利用者数:対前年比10%増。
    • データ取得方法:交通事業者から提供されるICカード利用実績や乗降調査データ。
    • タクシー利用券の利用率:交付総額に対し85%以上。
    • データ取得方法:換金のために事業者から回収された利用券の集計データ。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • デマンド交通の新規導入エリア数:年間2エリア増。
    • データ取得方法:都市整備部局等の事業実施計画の進捗管理。
    • 移動支援相談センターの年間相談・手配件数:年間1,000件以上。
    • データ取得方法:委託先NPO等からの事業実績報告。
    • 免許返納者向け特典提供事業者数:対前年比20%増。
    • データ取得方法:産業経済部局等での登録事業者数の集計。

支援策②:運転継続を希望する高齢者への多角的安全対策

目的
  • 健康上の理由や生活環境から、直ちに免許返納が困難な高齢者が安全に運転を継続できるよう、技術的・教育的・医療的な側面から多角的に支援し、交通事故リスクを最大限低減します。
  • 客観的な運転能力の評価機会を提供し、本人や家族が適切な返納時期を判断するための材料を提供します。
    • 客観的根拠
      • 令和4年5月に施行された改正道路交通法は、運転技能検査やサポートカー限定免許を導入しており、運転継続者の安全対策を強化する方向性を国が明確に示しています。
      • (出典)内閣府「令和4年版 交通安全白書 トピックス」、警視庁「改正道路交通法の施行」
主な取組①:安全運転サポート車(サポカー)購入・後付け装置設置の強力な助成
  • 衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置を搭載した「サポカー」への買い替えに対し、区独自の購入費用助成制度を創設します(例:定額10万円を助成)。
  • 現在保有している車両に後付けできるペダル踏み間違い時加速抑制装置の設置費用を助成します(例:設置費用の9割、上限額4万円)。
    • 客観的根拠
      • サポカー(特にサポカーSワイド)は、非搭載車に比べて人身事故の発生を41.6%低減させるというデータがあり、事故防止効果が科学的に証明されています。
      • (出典)経済産業省「安全運転サポート車(サポカー)の普及促進」ウェブサイト
      • 過去に国が実施した「サポカー補助金」は、高齢者の安全装備への関心を高める上で一定の効果がありました。自治体レベルでの継続的な支援は、国の施策を補完し、普及をさらに加速させます。
      • (出典)楽天インサイト「ASV機能に関する調査」2024年
主な取組②:実践的な高齢者向け安全運転トレーニング・シミュレーターの提供
  • 地域の自動車教習所と連携し、高齢者が苦手とする状況(夜間、雨天、見通しの悪い交差点、駐車など)に特化した実践的な運転技能トレーニングプログラムを開発し、受講費用の一部を助成します。
  • VR(仮想現実)技術を活用した危険予知トレーニングシミュレーターを区民施設やイベント会場に設置し、ゲーム感覚で自身の運転能力の変化を気軽に「見える化」できる機会を提供します。
    • 客観的根拠
      • JAF(日本自動車連盟)などが提供する高齢者向けの実践的な講習会は人気が高く、自身の運転を客観的に見直したいというニーズが存在します。
      • (出典)一般社団法人日本自動車連盟(JAF)「交通安全トレーニング」
主な取組③:かかりつけ医・薬剤師・ケアマネジャー等との連携による早期相談体制の構築
  • 地域医師会、歯科医師会、薬剤師会、介護支援専門員協会等と連携し、専門職が日常業務の中で高齢者の心身機能や認知機能の変化に気づいた際に、本人や家族に安全運転に関する相談を促すための連携ガイドラインを作成・共有します。
  • 警察の「安全運転相談窓口(#8080)」の周知を徹底するとともに、地域包括支援センターに交通安全の専門知識を持つ相談員を配置し、医療・福祉・警察が連携して多角的な視点から相談に応じる体制を構築します。
    • 客観的根拠
      • 免許更新時の認知機能検査で「認知症のおそれあり」と判定された場合に医師の診断が求められるなど、医療と運転免許制度の連携は既に制度化されています。この連携を、より早期の「気になる」段階に広げ、予防的なアプローチを強化します。
      • (出典)警察庁「高齢運転者対策に係る道路交通法改正の主な経緯」
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 75歳以上の運転者が第一当事者となる死亡・重傷事故件数:5年間で25%削減(年平均5%減)。
    • データ取得方法:警視庁が公表する交通事故統計データ(区市町村別)。
  • KSI(成功要因指標)
    • 区内在住高齢運転者のサポカー(衝突被害軽減ブレーキ搭載車)保有率:5年間で現状から30ポイント向上。
    • データ取得方法:自動車検査登録情報をもとにした推計、および定期的な住民アンケート調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • サポカー助成制度利用者の事故率:助成利用後2年間の事故率が、非利用者群と比較して40%以上低い水準を達成。
    • データ取得方法:助成利用者リストと警察の事故データを個人情報保護に配慮した上で突合分析。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • サポカー購入・後付け装置設置の年間助成件数:年間500件以上。
    • データ取得方法:担当部署における助成金申請・交付実績の集計。
    • 安全運転トレーニングの年間受講者数:年間1,000人以上。
    • データ取得方法:委託先自動車教習所等からの事業実績報告。
    • 医療・福祉専門職向け連携ガイドラインの説明会参加機関数:対象機関の90%以上。
    • データ取得方法:関係団体との連携による説明会参加実績の確認。

支援策③:円滑な免許返納を促すための情報提供と相談体制の強化

目的
  • 高齢者本人とその家族が、客観的な情報に基づき、心身の状態や生活環境に合わせて最適なタイミングで免許返納を納得して決断できるよう、多角的に支援します。
  • 免許返納を「能力の喪失」や「生活の終わり」といったネガティブなものとしてではなく、「安全で豊かな次のライフステージへの移行」というポジティブな行動として社会全体で捉え直す文化を醸成します。
主な取組①:ワンストップ相談窓口「運転卒業サポートセンター」の設置
  • 区役所内に、免許返納に関するあらゆる手続きと相談をワンストップで行える専門窓口「運転卒業サポートセンター(仮称)」を設置します。
  • ここでは、警察署に行かずとも免許返納の申請代行や運転経歴証明書の取次ができるようにし、同時に支援策①で整備した代替交通手段(コミュニティバスの利用案内、デマンド交通の利用登録、タクシー券の交付等)や、支援策②のサポカー助成の申請受付までを一括して行います。
    • 客観的根拠
      • 高齢者講習参加者が最も求める情報が「交通手段に関する支援制度」であることから、関連情報が一元化された相談窓口への潜在的ニーズは非常に高いと考えられます。
      • (出典)警察庁「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」
主な取組②:家族・地域サポーター向け「運転卒業応援セミナー」の開催
  • 地域包括支援センターや町会・自治会、民生委員・児童委員協議会、高齢者施設等と連携し、「親の運転、どうする?~家族ができるサポート術~」といったテーマで出張セミナーを定期的に開催します。
  • セミナーでは、高齢者の心身機能の変化、事故のデータ、家族が返納を穏やかに切り出すためのコミュニケーション方法、利用可能な支援サービス一覧などを具体的に解説し、家族や地域全体で高齢者の運転卒業を支える体制を構築します。
    • 客観的根拠
      • 高齢者が免許返納を決断するきっかけとして、「家族等に勧められて」が3割以上を占めており、家族への働きかけが極めて重要であることがデータで示されています。
      • (出典)警察庁「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」
主な取組③:「運転卒業」ポジティブキャンペーンの展開
  • 区の広報誌やウェブサイト、ケーブルテレビ、SNS等を活用し、免許を返納して生き生きと趣味や社会参加活動を楽しんでいる高齢者を「運転卒業の達人」としてシリーズで紹介します。
  • 免許返納者に対し、区長からの感謝状とともに、地域の小学生が描いた絵などを添えた「運転卒業証書」を授与するセレモニーを実施します。これにより、長年の安全運転への敬意を表し、返納を誇らしい行動として位置づけます。
    • 客観的根拠
      • 返納をためらう心理的要因として「運転の楽しみが失われること」が挙げられているため、それに代わる新たな楽しみや社会との繋がり、そして社会的承認を提示することが、意識変革を促す上で有効です。
      • (出典)警察庁「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 75歳以上の運転免許自主返納率:5年間で現状の返納率から20%向上させる。
    • データ取得方法:警視庁が公表する「運転免許統計」の区市町村別データを活用。
  • KSI(成功要因指標)
    • 免許返納に関する年間相談件数(サポートセンター、地域包括支援センター合計):対前年比30%増。
    • データ取得方法:各相談窓口における相談記録(内容、件数)の集計。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 相談後の免許返納実行率:相談者のうち、6ヶ月以内に免許を返納した人の割合を50%以上とする。
    • データ取得方法:相談記録と免許返納者データを、個人情報保護に最大限配慮した上で匿名化して突合分析。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 出張セミナーの年間開催回数と延べ参加者数:年間50回、延べ1,500人以上。
    • データ取得方法:福祉保健部局等における事業実施記録。
    • 広報媒体におけるポジティブキャンペーン記事の年間掲載回数:年12回以上(月1回ペース)。
    • データ取得方法:広報課等における掲載実績の確認。

先進事例

東京都特別区の先進事例

杉並区「NPO連携による外出支援相談センター『もび~る』の運営」

  • 高齢や障害により一人での外出が困難な区民を対象に、区がNPO法人「おでかけサービス杉並」に運営を委託し、外出に関する相談にワンストップで応じる相談センターを運営しています。電話一本で、利用者の状況やニーズに合わせ、福祉有償運送、介護タクシー、一般タクシーなど、地域で利用可能な多様な移動手段の中から最適なものを紹介・手配しています。
  • 成功要因は、行政の直接運営ではなく、地域の移動支援に精通し、きめ細やかな対応が可能なNPOに運営を委託した点にあります。これにより、制度の狭間にいる利用者の多様なニーズにも柔軟に応えることができ、利用者満足度の高いサービスを実現しています。
    • 客観的根拠
      • 「もび~る」は、①福祉輸送事業限定タクシー、②NPO等の福祉有償運送、③介護保険・障害者総合支援法対応タクシー、④一般タクシーの4タイプの移動サービスを案内・取次しており、利用者の身体状況や介助の必要性に応じた幅広い選択肢を提供しています。
      • (出典)杉並区「杉並区外出支援相談センター もび~る」リーフレット

足立区「複数モデルによるデマンド型交通の実証実験と本格運行」

  • 足立区は、交通不便地域の解消に向け、地域特性に合わせて複数のデマンド型交通モデルを試行し、順次本格運行へと移行させています。入谷・鹿浜地区では「足タク」(デマンド型相乗りタクシー)、常東地区では「チョイソコ×せんじゅ」(乗合型デマンド交通)、花畑地区では定時定路線型交通と、異なるアプローチを同時に展開しています。
  • 成功要因は、全区一律の導入ではなく、地域住民の意見を丁寧に聞き取りながら、それぞれの地域に最適な方式を模索するボトムアップ型のアプローチにあります。また、予約方法を電話とアプリの両方で可能とし、デジタルデバイドにも配慮している点が、高齢者の利用促進に繋がっています。23区で初となるデマンド交通の本格運行事例として、他区からも注目されています。
    • 客観的根拠
      • 「チョイソコ×せんじゅ」は令和7年8月から約6ヶ月間の実証実験として開始され、エリア内の44か所の乗降スポット間を1乗車200円という低廉な料金で利用できます。
      • (出典)足立区「『チョイソコ×せんじゅ』運行開始に向けて」、大和自動車交通株式会社 プレスリリース

練馬区「NPO法人による地域密着型の福祉有償運送サービス」

  • 練馬区では、NPO法人「福祉送迎サービスきずな」などが、公共交通機関の利用が困難な高齢者や障害者を対象に、会員制の福祉有償運送サービスを提供しています。通院や買い物を中心に、地域住民の生活の足をきめ細かく支えています。
  • 成功要因は、行政の手が届きにくい、よりパーソナルな移動ニーズに対し、地域に根差したNPOが柔軟に応えている点です。低廉な料金設定(初乗り380円など)と、練馬区の福祉タクシー券が利用できる公民連携により、利用者の経済的負担を軽減しています。運転手も地域住民が担うことが多く、顔の見える関係性が安心感に繋がっています。
    • 客観的根拠
      • NPO法人「福祉送迎サービスきずな」は、練馬区民を対象とした会員制(年会費1,200円)で、初乗り2kmまで380円という低料金でサービスを提供しています。
      • (出典)NPO法人 福祉送迎サービスきずな 公式ウェブサイト、田柄5丁目地域商工会「タガラファイブ」ウェブサイト

全国自治体の先進事例

富山市「コンパクトシティ戦略と連携した高齢者向け公共交通割引制度」

  • 富山市は、人口減少・超高齢社会を見据え、公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりを全国に先駆けて推進しています。その中核的な施策の一つとして、65歳以上の高齢者が日中の公共交通(路面電車、バス)を1回100円で利用できる「おでかけ定期券」を導入しました。
  • 成功要因は、高齢者の移動支援を単独の福祉施策としてではなく、中心市街地の活性化、健康増進(外出促進による介護予防)、公共交通の利用促進といった都市戦略全体の中に明確に位置付けている点です。高齢者の約4分の1が所有し、1日平均で2,700人以上が利用するなど、広く普及しており、高齢者のQOL向上と持続可能な都市経営の両立に成功しています。
    • 客観的根拠
      • 利用者は年間1,000円の負担で「おでかけ定期券」を申し込むことができ、午前9時から午後5時の間に市内中心部の公共交通機関を1乗車100円で利用できます。
      • (出典)地方創生推進事務局「富山市のまちづくりの基本方針」、富山市「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」

静岡県掛川市「地域住民主体のデマンド型乗合タクシー『ふれあいタクシー』」

  • 交通空白地帯となっている市内の一部エリアにおいて、地域住民が主体となって運営するデマンド型乗合タクシー「ふれあいタクシー」を運行しています。利用者は事前に登録・予約することで、自宅と指定された施設(病院、スーパー、駅など)の間を安価な料金で移動できます。
  • 成功要因は、行政主導のトップダウンではなく、地域住民が運営の主体となるボトムアップ型で事業を構築した点です。予約受付や運転ボランティアを地域住民が担うことで、利用者ニーズへの柔軟な対応とコミュニティの活性化を両立させています。さらに、AIオンデマンド交通の実証実験も進めるなど、住民参加と先進技術の導入を組み合わせ、持続可能なモデルを目指しています。
    • 客観的根拠
      • 曽我・和田岡、満水、大須賀の3エリアで運行されており、料金はエリアごとに設定されています。小学生や障害者は半額、未就学児は無料といった、地域の実情に合わせた丁寧な制度設計がなされています。
      • (出典)掛川市「デマンド型乗合タクシー」
      • 令和7年度には「AIオンデマンド交通実証実験業務」の委託事業者を公募しており、サービスの高度化に継続的に取り組んでいます。
      • (出典)掛川市「掛川市AIオンデマンド交通実証実験業務委託 公募型プロポーザルの実施」

参考資料[エビデンス検索用]

  • 内閣府
    • 「令和7年版 交通安全白書」
    • 「令和6年版 交通安全白書」
    • 「令和7年版 高齢社会白書」
    • 「令和6年版 高齢社会白書」
  • 警察庁
    • 「運転免許統計(令和6年版等)」
    • 「令和5年中の交通死亡事故の発生状況について」
    • 「高齢運転者対策に係る道路交通法改正の主な経緯」
    • 「運転免許証の自主返納に関するアンケート調査結果」
  • 国土交通省
    • 「令和7年版 交通政策白書」
    • 「高齢運転者の免許返納後の移動手段確保に向けた調査」関連資料
  • 東京都・特別区
    • 杉並区「杉並区外出支援相談センター もび~る」関連資料
    • 足立区「デマンド型交通」関連資料
    • 品川区「運転免許自主返納支援」関連資料
    • 練馬区「NPO法人による福祉有償運送」関連資料
  • その他自治体・機関
    • 富山市「コンパクトシティ戦略」「おでかけ定期券」関連資料
    • 掛川市「デマンド型乗合タクシー」関連資料
    • 警視庁「高齢者運転免許自主返納サポート協議会」関連資料

まとめ

 高齢運転者問題は、交通事故防止という安全確保の側面と、免許返納後の移動手段確保という福祉の側面を併せ持つ、現代日本の縮図ともいえる複合的な課題です。東京都特別区においては、増加する75歳以上の免許保有者数とそれに伴う事故リスクの上昇に、喫緊の対策が求められています。提案した、①返納後の移動手段確保、②運転継続者の安全対策、③円滑な返納支援、という3本柱の施策を総合的に推進することが不可欠です。特に、返納をためらう最大の要因である「移動の足」の不安を、コミュニティバスやデマンド交通、NPO等との連携によって解消することが、全ての施策の成功の鍵を握ります。先進事例に学びつつ、各区の地域特性に応じたきめ細やかな制度設計を進めることで、全ての住民が安全で、かつ自立した生活を送れる持続可能な社会の実現を目指すべきです。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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