15 教育

食育の推進

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(食育を取り巻く環境)

  • 自治体が食育の推進を行う意義は、「こどもの健全な心身の育成と豊かな人間形成の基礎を築くこと」と「将来の生活習慣病予防による社会全体の健康増進と医療費抑制」にあります。
  • 食育は、単に栄養知識を教えるだけでなく、食に関する適切な判断力を養い、生涯にわたる健全な食生活を実現することを目指すものです。現代社会では、ライフスタイルの多様化、孤食の増加、栄養の偏り、そして生活習慣病の若年化といった課題が深刻化しており、行政が主体的に食育を推進する重要性が一層高まっています。
  • 本稿では、東京都特別区の小学校・中学校を主たる対象とし、こども、保護者、学校、地域、行政が直面する課題をデータに基づき分析し、実効性のある支援策を提案します。

意義

こどもにとっての意義

生涯にわたる健康の基礎形成
豊かな人間性の育成
学力・体力の向上

保護者にとっての意義

こどもの健やかな成長の支援
親子関係の深化

学校・教師にとっての意義

教育効果の向上
専門性の発揮

地域社会にとっての意義

食文化の継承
地域経済の活性化

行政にとっての意義

住民の健康増進と医療費の適正化
多様な主体との協働推進
  • 食育は、NPO、食品関連事業者、生産者、地域団体など多様な主体が関わるテーマです。行政がハブとなり、これらの主体との連携を促進することで、地域全体の課題解決力を高めることができます。

(参考)歴史・経過

食育の推進に関する現状データ

  • 国民の食育への関心は高い水準で維持されている一方で、実際の食生活、特にこどもや若い世代においては課題が山積しています。高い関心と実際の行動との間に「関心・行動ギャップ」が存在することは、政策立案において考慮すべき重要な点です。情報提供だけでなく、行動変容を促すための具体的な支援策が求められていることが、以下のデータから読み取れます。
こどもの食生活の実態(全国・東京都)
家庭における食生活
食に関する意識と行動
  • 食育への関心
  • 食品ロス削減への意識
    • 食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民の割合は76.5%(令和元年度)と高い水準にありますが、第4次食育推進基本計画の目標値である80%以上にはまだ達していません。
学校給食の状況
  • 地場産物・国産食材の活用
    • 学校給食における地産地消の取り組みは着実に進展しています。東京近郊の調査では、給食に地元の食材が「出る」と回答した小中学生は57.3%にのぼり、2005年の28.6%から倍増しています。これは、食育の観点から地産地消を推進する行政や学校の努力が反映された結果と言えます。
    • 全国的に見ても、学校給食における地場産物の使用割合(金額ベース)は平均で52.7%(令和元年度)となっており、多くの地域で地産地消が推進されています。

課題

こどもの課題

栄養バランスの偏りと味覚形成の課題
  • 現代のこどもたちは、朝食の欠食、野菜摂取量の不足、一方で脂質や糖質の過剰摂取といった栄養バランスの偏りに直面しています。特に、成長期にあるこどもたちにとって、主食・主菜・副菜を揃えて食べる習慣が身についていないことは深刻な問題です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • こどもの肥満や若年からの生活習慣病リスクが増大し、将来的に国民全体の医療費増大の要因となります。
食に関する実践力の不足
  • 家庭での調理機会の減少に伴い、こどもたちが自ら健康的な食事を計画し、準備する「食の実践力」が育ちにくい環境にあります。

保護者の課題

  • 保護者が直面する課題は、単なる知識不足ではなく、現代の都市生活に根差した構造的な問題、すなわち「時間的・経済的な制約」に起因しています。データは、低所得と不健康な食生活との間に明確な関連性を示しています。特に東京都の特別区で一般的な共働き世帯やひとり親世帯では、手の込んだ家庭料理を作る時間がなく、結果として利便性の高い中食や外食への依存度が高まっています。この背景を理解せず、単に情報を提供するだけの施策では、多忙な保護者の行動変容を促すことは困難です。
時間的・経済的制約による食生活の質の低下
  • 共働き世帯やひとり親家庭の増加は、保護者が食事の準備にかけられる時間を著しく制約しています。その結果、栄養バランスの取れた手作りの食事を用意することが難しくなり、惣菜や加工食品への依存度が高まる傾向にあります。また、経済的な困窮は、購入できる食材の選択肢を狭め、食生活の質を直接的に低下させる要因となっています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 家庭の社会経済的な状況がこどもの健康状態に直結する「健康格差」が拡大し、貧困の世代間連鎖を助長する一因となります。
食に関する知識・意識の格差
  • 子育て世代の女性を中心に食育への関心は総じて高いものの、具体的な栄養バランスの知識や調理技術には個人差が大きく、また、一部の層では食への関心が低いままです。特に若年の男性などは食育への関心が低く、効果的なアプローチが届いていないのが現状です。

学校・教師の課題

栄養教諭の配置と多忙化
  • 栄養教諭は学校における食育推進の中核を担う専門職ですが、その配置状況は自治体によって異なり、配置されている場合でも、献立作成、食材発注、衛生管理といった給食管理業務に多くの時間を割かれ、こどもたちへの直接的な指導時間を十分に確保することが難しいという課題があります。
    • 客観的根拠:
      • 国の食育白書では、栄養教諭の配置充実と、その専門性を活かした指導体制の強化が継続的な課題として挙げられています。
      • 先進事例である足立区では、全校に栄養士が1名ずつ配置されていることが「おいしい給食」の成功要因の一つとして分析されており、専門職の配置の重要性を示唆しています。
        • (出典)(https://www.watch.impress.co.jp/docs/topic/1667890.html) 31
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 学校における体系的かつ継続的な食育の実施が困難となり、食育の質に学校間で格差が生じる恐れがあります。
教科指導との連携不足
  • 食育は、家庭科や保健体育科だけでなく、食材の生産地を学ぶ社会科、植物の成長を観察する理科、食文化に触れる総合的な学習の時間など、多くの教科と関連付けることが可能です。しかし、教科横断的な視点での指導計画の策定や、学級担任と栄養教諭との連携が十分に行われていないケースが見られます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • こどもが食を多角的な視点から捉える貴重な機会を失い、食に関する学習が断片的な知識の習得にとどまってしまいます。

地域社会の課題

地域コミュニティの希薄化と食文化の継承危機
  • 都市部を中心に地域コミュニティのつながりが希薄化する中で、地域の祭りや年中行事と共に受け継がれてきた行事食や郷土料理といった伝統的な食文化を、こどもたちが実体験として学ぶ機会が著しく減少しています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域の貴重な食文化が次世代に継承されずに失われ、食を通じた世代間交流や地域への愛着が育まれにくくなります。

行政の課題

縦割り行政による連携不足
  • 食育は、教育(教育委員会)、健康・福祉(保健福祉部門)、産業(産業振興部門)、環境(環境部門)など、複数の行政分野にまたがる複合的なテーマです。しかし、従来の縦割り組織の中では部署間の連携が不十分となり、施策が個々に展開されることで、総合的な効果を発揮しにくいという課題があります。
    • 客観的根拠:
      • 多くの自治体の食育推進計画では、庁内関連部署による分野横断的な連携体制の構築が、計画を実効性あるものにするための重要な課題として挙げられています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 施策の重複や非効率が生じるだけでなく、複合的な課題を抱える家庭に対して、必要な支援が一体的に届かない事態を招きます。
施策効果の測定とEBPMの未徹底
  • 食育に関する様々な事業が実施されているものの、その成果を客観的なデータに基づいて測定・評価し、その結果を次の政策立案や予算配分に活かす「EBPM(証拠に基づく政策立案)」のサイクルが十分に確立されていません。
    • 客観的根拠:
      • 国の第4次食育推進基本計画では、朝食欠食率や野菜摂取量など24の具体的な数値目標が設定されていますが、これらの目標達成度を自治体レベルで継続的に追跡・評価し、政策改善に繋げる体制の構築が今後の課題です。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 効果の低い施策が前例踏襲で継続されてしまい、限られた行政資源(予算・人材)が最も効果的な分野に投下されない恐れがあります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
    • 即効性・波及効果
      • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、健康改善、地域活性化、コミュニティ形成など、複数の課題解決や多くの住民への便益に繋がる施策を高く評価します。
    • 実現可能性
      • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。特に、学校給食など既存の仕組みや資源を有効活用できる施策は、優先度が高くなります。
    • 費用対効果
      • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。短期的なコストだけでなく、将来的な医療費削減や住民のQOL向上といった長期的な便益も考慮します。
    • 公平性・持続可能性
      • 特定の層だけでなく、家庭の経済状況等に関わらず、全てのこどもに等しく便益が及ぶ施策を優先します。また、一過性のイベントではなく、長期的・継続的に効果が持続する仕組みづくりを重視します。
    • 客観的根拠の有無
      • 国の白書や学術研究、あるいは先進自治体の事例によって、その効果が客観的なデータで実証されている施策を高く評価します。

支援策の全体像と優先順位

  • 食育推進における課題は、学校内だけでなく、家庭や地域社会に深く根差しています。したがって、単一の施策では効果が限定的であり、①既存の強力なプラットフォームである学校給食を**「強化」し、②支援を学校外の家庭・地域へ「拡大」し、③全ての施策の効果をデータで「評価」**するという、相互に連携した三本柱の戦略が必要です。
  • この考え方に基づき、優先順位を以下のように設定します。
    • 優先度 高:支援策① 学校を核とした「体験型食育」の高度化
      • 学校給食という全てのこどもに公平にアプローチできる既存の仕組みを活用するため、即効性と波及効果が最も高いと判断します。足立区の事例が示すように、明確な成果が期待できます。
    • 優先度 中:支援策② 家庭・地域と連携した「食のセーフティネット」構築
      • 公平性の観点から極めて重要であり、特に困難を抱える家庭への支援は急務です。ただし、多様な主体との連携体制の構築には一定の時間を要するため、中長期的な視点で着実に進めるべき施策と位置づけます。
    • 優先度 中:支援策③ データとデジタルを活用した「個別最適化食育」の推進
      • 施策の持続可能性と費用対効果を高める上で不可欠です。施策①と②の効果を最大化するための基盤となるため、これらと並行してシステム構築を進め、将来的な政策決定の質的向上を目指します。

各支援策の詳細

支援策①:学校を核とした「体験型食育」の高度化

目的
  • 学校給食を単なる食事提供の場から「生きた教材」へと転換させ、こどもの食への興味・関心と、自ら健康的な食を選択し実践する力を高めます。
  • 学校給食における地産地消を推進することで、自分たちが住む地域への愛着と、食を支える生産者への感謝の念を育みます。
主な取組①:「日本一おいしい給食」の全区展開
  • 東京都足立区の成功事例をモデルとし、各学校の栄養教諭・栄養士が中心となって給食の質的向上を目指します。具体的には、化学調味料に頼らず、昆布や鰹節から丁寧に取った「出汁」を基本とした調理を徹底します。
  • 旬の食材の積極的な活用や、季節の行事食、郷土料理などを献立に体系的に取り入れ、食文化を学ぶ機会を創出します。
  • 全校で統一した基準による残菜率の計測を徹底し、データを可視化します。残菜率が低い学校の優れた取組(献立の工夫、指導方法など)を共有する定例会を開催し、全区的なレベルアップを図ります。
    • 客観的根拠:
主な取組②:調理実習・栽培体験の必修化と支援
  • 学習指導要領に基づき、小学校中学年・高学年、そして中学校の各段階で、年間一定時間数の調理実習をカリキュラムに確実に組み込むことを支援します。
  • 学校内の空きスペースを活用した学校農園やプランターでの野菜栽培を、資材提供や専門家派遣などで支援します。収穫した野菜を給食や調理実習で活用する「栽培から消費まで」のサイクルを構築し、こどもの達成感と食への関心を高めます。
    • 客観的根拠:
主な取組③:生産者・料理人とこどもを繋ぐデジタルコンテンツ制作
  • 群馬県安中市の先進事例を参考に、区内の農家や飲食店のプロの料理人が出演する、質の高い食育動画コンテンツを制作し、各学校に配信します。
  • 動画は、給食で提供される食材の生産過程や生産者の苦労、食材への想いなどを伝える内容とし、給食時間や関連教科の授業で活用します。これにより、生産者への感謝の気持ちを育み、食べ残しの削減に繋げます。
    • 客観的根拠:
      • 安中市の事例では、生産者の動画を視聴したこどもから「(生産者の苦労を)見ちゃったら残すわけにいかない」という声が聞かれ、実際に完食に繋がるなど、映像コンテンツがこどもの内発的動機付けに強く作用することが報告されています。
        • (出典)(https://www.wam.go.jp/newsPublic/sp_public-detail?newsno=2105) 33
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区内小中学校における肥満傾向児の割合の5%削減(対現状値)
      • データ取得方法: 文部科学省「学校保健統計調査」の各区公表データ
    • 主食・主菜・副菜を揃えて食べるこどもの割合 50%達成
      • データ取得方法: 区が実施する児童・生徒への食生活実態アンケート調査(年1回)
  • KSI(成功要因指標)
    • 学校給食の平均残菜率 5%以下達成(全国平均は約7%)
      • データ取得方法: 各学校からの残菜量報告の月次集計
    • 学校給食における地場産物使用率(金額ベース) 40%以上達成
      • データ取得方法: 各学校の学校給食会計報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 給食を「毎日おいしい・楽しみだ」と感じる児童・生徒の割合 95%以上
      • データ取得方法: 児童・生徒への給食満足度アンケート調査(学期ごと)
    • 調理実習や栽培体験を「楽しい・ためになった」と感じる児童・生徒の割合 90%以上
      • データ取得方法: 授業後のアンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 食育動画コンテンツの新規制作本数 年間10本以上
      • データ取得方法: 教育委員会による事業実績報告
    • 全小中学校における栽培体験の実施率 100%達成
      • データ取得方法: 各学校からの年間活動報告

支援策②:家庭・地域と連携した「食のセーフティネット」構築

目的
  • 家庭の経済状況や保護者の就労状況に関わらず、全てのこどもが心身の成長に必要な栄養を確保できる、重層的なセーフティネットを構築します。
  • 多忙な保護者の調理負担を軽減するとともに、家庭での食育実践を容易にするための具体的な支援を提供します。
主な取組①:アウトリーチ型食料支援の拡充
  • 東京都品川区の「子育て世帯へのお米支援プロジェクト」をモデルとし、学校給食のない夏休み・冬休み等の長期休業期間中に、支援を希望する全ての子育て世帯へ、米や保存可能な食材を無償で配布します。
  • 配布拠点を区内の児童館や子ども食堂とすることで、食料支援をきっかけに、潜在的な困難を抱える家庭との継続的な繋がりを構築します。これにより、食の問題だけでなく、学習支援や生活相談など、必要な支援へ繋げるアウトリーチの拠点としての機能を強化します。
主な取組②:親子向け「時短・簡単・健康」クッキング講座の展開
  • 保健センターや区の施設、オンラインなどを活用し、管理栄養士による親子向けの料理教室を定期的に開催します。
  • 「週末1時間で平日5日分を乗り切る下ごしらえ術」や「コンビニ食材で作る栄養満点ごはん」など、多忙な保護者の現実的なニーズに応える、実践的でハードルの低いプログラムを提供します。
    • 客観的根拠:
      • 自治体の調査では、特に幼児の保護者から「こどもに調理体験をさせたいが、時間や知識の余裕がない」というニーズが多く寄せられており、実践的な学習機会の提供が求められています。
主な取組③:子ども食堂への運営支援と栄養相談機能の付加
  • 区内各地で活動する子ども食堂に対し、運営補助金を増額するとともに、地域の食品関連企業や農家からの食材提供を促進するためのマッチング支援を強化します。
  • 地域を担当する保健センターの管理栄養士を子ども食堂へ定期的に派遣し、食事の場において、保護者からの離乳食や偏食、アレルギーに関する悩みなど、日頃の食に関する相談に気軽に応じる体制を構築します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 経済的理由によるこどもの食事の欠食率 0%達成
      • データ取得方法: 支援対象世帯へのアンケート調査(匿名性を確保)
    • 区内小中学生の朝食欠食率 2%以下達成(第4次計画目標0%)
      • データ取得方法: 区が実施する児童・生徒への食生活実態アンケート調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 長期休業期間中の食料支援事業の利用率(対象年齢人口比) 50%以上
      • データ取得方法: 事業申込者数と住民基本台帳データの突合分析
    • 親子クッキング講座参加者の事後アンケートにおける満足度 90%以上
      • データ取得方法: 講座参加者へのアンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 支援事業利用後の保護者の「日々の食事準備に関する負担感」の20%軽減
      • データ取得方法: 事業参加者への事前・事後アンケート(心理尺度を使用)
    • 区内子ども食堂の利用者数(延べ人数)の対前年度比10%増加
      • データ取得方法: 子ども食堂運営団体からの活動報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 長期休業期間中における食材配布対象世帯数 年間5,000世帯
      • データ取得方法: 福祉部門による事業実績報告
    • 親子クッキング講座の年間開催回数(オンライン含む) 50回以上
      • データ取得方法: 保健部門による事業実績報告

支援策③:データとデジタルを活用した「個別最適化食育」の推進

目的
  • EBPM(証拠に基づく政策立案)を食育分野で本格的に推進し、施策の費用対効果と実効性を継続的に高める仕組みを構築します。
  • デジタル技術を最大限に活用し、画一的な情報提供から脱却し、各家庭の多様なニーズに応じた、きめ細やかで個別最適な情報提供を実現します。
主な取組①:食育EBPM推進のためのデータ基盤構築
  • 区が保有する各種データを連携させ、食育施策の効果を多角的に分析できるデータ基盤を構築します。具体的には、学校保健統計(肥満度等)、給食残菜データ、住民健診データ(生活習慣病関連)、各種アンケート調査結果などを一元的に管理します。
  • この基盤を活用して施策の効果を可視化し、客観的データに基づいた次年度の予算配分や事業内容の見直しを制度化します。
主な取組②:AI活用パーソナライズ献立提案アプリの開発・提供
  • アレルギー情報、こどもの好き嫌い、家族構成、食費の予算などを入力すると、AIが栄養バランスを考慮した1週間分の献立と買い物リストを自動で提案するスマートフォンアプリを開発し、区民に無償で提供します。
  • 区内のスーパーマーケット事業者と連携し、アプリで作成した買い物リストから直接ネットスーパーに注文できる機能を搭載することで、買い物の利便性を向上させます。
主な取組③:オンライン栄養相談・食育セミナーの拡充
  • 子育て中の保護者が、自宅からPCやスマートフォンを使って気軽に管理栄養士に相談できるオンライン栄養相談窓口を常設します。
  • 「月齢別の離乳食の進め方」「スポーツを頑張るこどものための栄養学」「アレルギーを持つこどもの食事」など、特定のテーマに特化した質の高いオンラインセミナーを、夜間や休日も含めて定期的に開催します。
    • 客観的根拠:
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区民の健康寿命の1年延伸(10年間の目標)
      • データ取得方法: 厚生労働省公表の生命表データ、区民健康意識調査
  • KSI(成功要因指標)
    • データ分析結果に基づき、内容の改善または見直しが行われた食育関連事業の割合 50%以上
      • データ取得方法: 政策評価シートおよび予算編成プロセスの記録
    • 食育アプリのダウンロード数 3万件、月間アクティブユーザー率 60%
      • データ取得方法: アプリケーションの管理データ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • アプリ利用者の週平均野菜摂取品目数の10%増加
      • データ取得方法: アプリ内アンケートによる自己申告値の利用前後比較
    • オンライン栄養相談の利用者アンケートにおける満足度 90%以上
      • データ取得方法: 相談後のアンケート調査結果
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • EBPMデータ基盤に統合されるデータソースの種類 5種類以上(学齢期健診、住民健診、給食データ等)
      • データ取得方法: システム設計・管理記録
    • オンラインセミナーの年間開催回数 24回以上(月2回ペース)
      • データ取得方法: 事業実績報告

先進事例

東京都特別区の先進事例

足立区「日本一おいしい給食」プロジェクト

  • 足立区では、平成19年度から「日本一おいしい給食」をスローガンに、区を挙げた給食改革を推進しています。この取り組みは、単に味を良くするだけでなく、「味」「食材」「献立」「環境」の4つの柱から総合的に食育を推進するものです。具体的には、全小中学校への栄養士の単独配置、化学調味料を排し天然出汁を基本とする調理の徹底、全校での残菜率の計測・公表と優れた取組の共有、有名シェフとのコラボ給食などを実施しました。
  • その結果、事業開始から約10年間で給食の残菜率を約7割削減(年間生ゴミ量381トン→186トン)するという驚異的な成果を上げました。さらに、こどもの体力・運動能力調査の結果が向上し、学力調査の成績も都平均に近づくなど、副次的な効果も報告されています。成功の最大の要因は、区長の強いリーダーシップのもと、栄養士、調理員、教員、生産者、そして保護者といった関係者が一体となった全区的な推進体制を構築した点にあります。

品川区「子育て世帯へのお米支援プロジェクト」

台東区「地域ふれあい給食」

  • 台東区では、区内の小中学校が、地域の高齢者やこどもたちの祖父母などを学校に招き、一緒に給食を食べる「地域ふれあい給食」を実施しています。この取り組みは、こどもたちにとっては、多様な大人と食卓を囲むことで食事の楽しさや他者を思いやる心を育む貴重な機会となります。
  • 一方、参加した高齢者にとっては、現在の栄養バランスや地産地消に配慮された学校給食への理解を深めるとともに、こどもたちとの交流を通じて地域社会との繋がりを感じる場となっています。成功要因は、学校給食という既存のプラットフォームを巧みに活用し、食を媒介として、コストを抑えながらも自然な形で世代間交流と地域コミュニティの連携を深めている点にあります。

全国自治体の先進事例

福井県「県全体で推進する組織的食育」

  • 福井県は、県が主導して「ふくいの食育・地産地消推進県民会議」を設置し、行政(農林、教育、福祉)、生産者団体、JA、大学、企業などが一体となって、県全体の食育を組織的に推進しています。具体的な取り組みとして、食育に関する専門知識を持つ「ふくいの食育リーダー」を養成・認定し、学校や地域からの要請に応じて派遣する制度や、毎月19日を「ふるさと給食の日」と定め、県産食材や郷土料理を積極的に提供する地産地消の徹底、さらには食育に熱心な企業を「ふくいの食育推進企業」として登録・PRする制度など、多岐にわたる施策を重層的に展開しています。
  • 成功要因は、県が強力な司令塔(ハブ)となり、多様な関係主体の役割分担を明確にし、それぞれの活動を有機的に連携させるプラットフォームを構築・運営している点にあります。

群馬県安中市「生産者動画を活用した地産地消教育

  • 群馬県安中市では、市内の小中学校に勤務する栄養教諭と栄養士が中心となり、地元の野菜生産者を取材した食育動画を自主制作し、給食の時間に各教室の電子黒板で放映するユニークな取り組みを行っています。動画では、生産者の顔や栽培の様子、野菜づくりにかける想いや苦労などを紹介しています。
  • この取り組みにより、こどもたちは自分たちが食べる給食の食材が、誰によって、どのように作られているのかを具体的に知ることができます。その結果、食材への関心が高まり、「生産者の〇〇さんが作った野菜だから残せない」といった気持ちが芽生え、実際に完食するこどもが増えるなど、食べ残しの削減に顕著な効果を上げています。成功要因は、デジタルツールを活用して生産者とこどもを身近に繋ぎ、感謝の気持ちという強い内発的動機付けに成功した点です。
    • (出典)(https://www.wam.go.jp/newsPublic/sp_public-detail?newsno=2105) 33

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区における食育の推進は、こどもの心身の健全な発達を支え、ひいては将来の健康寿命延伸に不可欠な長期的視点に立った政策課題です。現状では、データが示す通り、こどもたちの朝食欠食や栄養バランスの偏りが深刻化しており、その背景には、保護者の多忙化や家庭の経済状況といった、個人の努力だけでは解決困難な構造的問題が存在します。本稿で提案した、学校給食の質的向上を核とする「体験型食育の高度化」、困難を抱える家庭を支える「食のセーフティネット構築」、そしてデータに基づく「個別最適化食育の推進」という三本柱の支援策は、これらの複合的な課題に多角的にアプローチするものです。先進事例に学びつつ、各区の実情に応じた施策を着実に展開することで、全てのこどもが食を通じて健やかに成長できる社会の実現が期待されます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました