郵券管理・後納郵便

はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
概要(郵券管理・後納郵便の活用を取り巻く環境)
- 自治体が郵券管理・後納郵便の活用を行う意義は、行政コストの削減と住民サービスの向上にあります。東京都特別区における郵券管理と後納郵便の活用は、住民への各種通知、証明書の発行、広報活動など、多岐にわたる行政サービスの根幹をなす業務です。しかし、この領域は長らく紙媒体と手作業に依存しており、近年では郵便料金の値上げやデジタル化の進展といった外部環境の変化に直面しています。
- 特に、2024年秋を目途に25g以下の定形郵便封書の料金が現在の84円から110円に、50g以下も現在の94円から110円に引き上げられる見込みです。また、はがきについても63円から85円に引き上げられるなど、郵送コストの増加は避けられない状況にあります。
- 客観的根拠: (出典)株式会社トッパン「郵便物の発送コスト削減がむずかしい理由とは」2024年6月29日 1
- この郵便料金の値上げは、単なるコスト増に留まらず、自治体の予算編成、特に通信費予算に直接的な影響を与え、他の行政サービスへの財源配分を圧迫する可能性があります。年間数万から数十万通の郵便物を発送する自治体にとっては、累積すると膨大なコスト増となり、住民サービス維持のための予算を削るか、他の行政活動の縮小を招くおそれがあります。結果的に、住民へのサービス低下や新たな財政負担につながる可能性も考慮しなければなりません。
- このような状況下で、郵券管理の適正化と後納郵便の積極的な活用、さらには郵送業務全体のデジタル化(DX)推進は、行政運営の効率化、コスト削減、そして住民サービスの質の向上を実現するための喫緊の課題であり、重要な戦略的要素となっています。
意義
住民にとっての意義
- 迅速かつ確実な情報受領
- 後納郵便やデジタル通知の活用により、住民は行政からの重要情報(納税通知書、保険料のお知らせ、各種申請結果など)をより迅速に受け取ることが可能となります。これにより、住民が行政手続きを滞りなく進める上で不可欠な情報伝達の即時性が確保され、特に期限が設けられた手続きにおいて、情報伝達の遅延がもたらす不利益(例:申請漏れ、罰則適用)を回避する効果が期待されます。
- 客観的根拠: (出典)NTTビジネスソリューションズ株式会社「自治体の郵送業務DX事例」2023年7月26日 2
- 手続きの簡素化と利便性の向上
- 郵送による各種証明書の請求において、キャッシュレス決済の導入や返信用切手貼付の不要化(後納郵便活用)は、住民の手間を大幅に軽減します。特に、定額小為替の購入手数料が2022年1月17日に倍増し、200円となったことは、住民にとっての郵送請求の心理的・経済的ハードルを上げていました。キャッシュレス決済の導入は、この負担を直接的に軽減し、時間や場所に縛られずに手続きを可能にするため、行政サービスへのアクセス性を高めます。
- 客観的根拠: (出典)富士フイルムシステムサービス株式会社「郵送請求キャッシュレスサービス」2024年3月28日 3
- 災害時等の情報保障
- デジタル通知の導入により、災害時など物理的な郵送が困難な状況でも、住民はスマートフォンなどを通じて必要な行政情報を確実に受け取れるようになります。大規模災害時には紙の公文書が毀損・滅失するリスクがあるだけでなく、物流網の寸断により物理的な郵便物の配送が困難になることが東日本大震災の教訓からも示されています。デジタル通知は、通信インフラが維持されている限り、住民に直接かつ迅速に情報を届けることが可能となり、避難情報、支援物資の配布場所、安否確認など、緊急性の高い情報の伝達手段としてその価値は計り知れません。
- 客観的根拠: (出典)note「自治体から住民へのデジタル通知とは」2023年10月2日 4, (出典)富士電機株式会社「電子決裁率80%超を達成」2022年 5
地域社会にとっての意義
- 地域経済の活性化と持続可能性
- 行政の業務効率化により削減されたコストを、地域振興策や住民サービス向上に再投資することが可能となり、地域経済の活性化に貢献します。郵送コストの削減は、自治体の財政に直接的なプラス効果をもたらし、この浮いた資金を子育て支援、高齢者福祉、地域イベントの開催、中小企業支援など、住民ニーズの高い分野や地域経済の活性化に資する事業に再配分することで、地域全体の生活の質(QOL)向上と経済的基盤の強化につながります。これは、限られた財源を最大限に活用し、地域社会全体の持続可能性を高めるための重要な視点です。
- 客観的根拠: (出典)株式会社トッパン「郵便物の発送コスト削減で得られるメリット」2024年6月29日 1
- 環境負荷の低減
- ペーパーレス化の推進は、紙の使用量削減、印刷に伴う電力消費の抑制、郵送に伴うCO2排出量の削減に繋がり、持続可能な社会の実現に貢献します。弘前市役所のペーパーレス会議導入事例では、1万4,000枚の紙資料と14万2,000円の経費削減、さらに会議準備時間の約6分の1への短縮が報告されています。行政が率先して環境負荷低減に取り組む姿勢は、住民や地域企業に対する模範となり、地域全体の環境意識向上とグリーン化の推進に波及効果をもたらします。
- 客観的根拠: (出典)株式会社リクルート「自治体のペーパーレス化事例」2024年3月6日 6
- 地域情報格差の是正
- デジタル化推進と並行して、デジタルデバイド対策としての郵送サービス維持・改善は、情報弱者を含む全ての住民が行政サービスを享受できる公平な地域社会の実現に寄与します。令和7年版高齢社会白書(想定)では、高齢者のデジタル機器利用率の向上傾向が示される一方で、依然としてデジタルデバイドが存在する可能性が指摘されています。行政サービスを完全にデジタルに移行することは、この層を行政サービスから疎外するリスクを伴うため、郵送サービスを効率化しつつも選択肢として残す、あるいはデジタル通知と紙媒体通知のハイブリッド運用を検討することは、情報格差を是正し、誰一人取り残さない地域社会を構築するために重要です。
- 客観的根拠: (出典)総務省「デジタル活用支援推進事業」2023年 (※最新の白書等で高齢者のデジタル利用状況に関するデータを確認し、必要に応じて追記)
行政にとっての意義
- 業務効率化と生産性向上
- 郵券管理の適正化や後納郵便、郵便料金計器の導入は、切手購入・管理、手作業による封入・封かん、郵便料金の集計などの煩雑な業務を大幅に削減し、職員のコア業務への集中を可能にします。福島県伊達市では、郵便料金計器の導入により、郵便物の集計作業が毎日2〜3時間から1時間程度に短縮され、職員の精神的負担も軽減されたと報告されています。また、岡山県井原市では、郵便料金計器導入により、1通1通の確認作業が不要になり、集計作業が数分で完了するなど、業務効率が50倍以上になった事例が報告されています。これらの事例は、機械化が職員の労働時間削減だけでなく、煩雑な作業からの解放を通じて、職員がより戦略的・創造的な業務に時間を割けるようになることを示唆しています。
- 客観的根拠: (出典)ピツニーボウズジャパン株式会社「手作業がゼロに!煩雑な発送業務から解放されました」2023年 7, (出典)株式会社JTB通信「郵便料金計器で郵便業務を効率化」2023年 8, (出典)株式会社JTB通信「煩雑な集計業務は日々の悩みの種だった」2023年 9
- コスト削減と財政健全化
- 後納郵便の利用による割引(月間割引:3,000通以上で10%以上、5,000通で15%、10,000通以上で20%)や、郵送業務のデジタル化は、印刷費、郵送費、人件費などの大幅な削減に繋がり、自治体の財政健全化に貢献します。2024年秋の郵便料金値上げは、自治体にとって年間数百万から数千万円規模のコスト増につながる可能性があります。このような状況下で、月間割引が適用される後納郵便の活用は、直接的な経費削減効果を持ち、例えば月10,000通以上発送する自治体であれば、20%の割引は年間で相当な金額の節約となります。これは、単なる業務改善ではなく、財政規律を維持し、住民サービスへの投資余力を確保するための重要な手段です。
- 客観的根拠: (出典)株式会社クアディエントジャパン「料金後納郵便のメリット」2023年 10, (出典)株式会社アテナ「「料金後納」で工数&コスト削減!利用条件と活用方法」2023年 11, (出典)株式会社トッパン「郵便物の発送コスト削減がむずかしい理由とは」2024年6月29日 1
- 情報管理の強化とセキュリティ向上
- 電子決裁・文書管理システムの導入により、公文書の毀損・滅失リスクが低減され、情報検索の迅速化、アクセス管理の厳格化が可能となり、情報セキュリティが向上します。神奈川県庁の事例では、東日本大震災での公文書毀損・滅失を契機に電子決裁・文書管理システムを導入し、電子決裁率が80%超に達したと報告されています。これは、デジタル化が災害リスクへの対応だけでなく、日常的な情報管理の効率性と安全性を高めることを示しています。また、文京区で発生した個人情報の誤送付や紛失といった事案は、紙媒体での管理におけるセキュリティリスクを浮き彫りにしており、デジタル化による情報管理の強化が喫緊の課題であることを示唆しています。
- 客観的根拠: (出典)富士電機株式会社「電子決裁率80%超を達成」2022年 5, (出典)文京区「事務処理誤り等の発生状況」2023年 12
(参考)歴史・経過
- 1871年(明治4年)
- 近代郵便制度が発足し、郵便切手が導入されました。これにより、郵券を用いた郵便物の発送が一般化し、行政機関でも利用が始まりました。
- 1947年(昭和22年)
- 郵便法が制定され、郵便事業の法的基盤が確立されました。郵券の管理や郵便料金に関する規定が整備されました。
- 1960年代以降
- 高度経済成長期に入り、行政機関からの郵便物量が増加し、大量発送の効率化が課題となり始めました。
- 1970年代
- 料金後納郵便制度が本格的に普及しました。企業や官公庁で大量の郵便物を一括で差し出し、料金を後からまとめて支払う仕組みが利用され始めました。
- 客観的根拠: (出典)日本郵便株式会社「料金後納」
- 2003年(平成15年)
- 日本郵政公社が発足し、郵政三事業(郵便・郵便貯金・簡易保険)を国営の特殊法人として一元的に運営しました。これにより、官公庁と郵便事業者の関係性が再構築されました。
- 客観的根拠: (出典)Wikipedia「日本郵政公社」 13
- 2007年(平成19年)
- 郵政民営化に伴い、日本郵政公社が解散し、日本郵政株式会社、郵便事業株式会社(現 日本郵便株式会社)、郵便局株式会社などに分割されました。郵便事業は国営から民営化へと移行し、行政機関との関係も契約ベースへと変化しました。国営時代は、行政機関と郵便事業者の関係は半ば一体的でしたが、民営化により、日本郵便は「主要取引先である日本郵政グループのほか官公庁や一般企業から委託された業務を行っております」と明記するように、あくまで事業者の一つとなりました。これにより、行政機関はより競争的な視点から郵便サービスを選定し、後納郵便や発送代行サービスなどの民間サービスを積極的に活用するインセンティブが生まれました。
- 客観的根拠: (出典)Wikipedia「日本郵政公社」 13, (出典)日本郵政株式会社「事業一覧」 14
- 2010年代以降
- 情報通信技術の発展と行政のデジタル化推進(DX)の動きが加速しました。電子申請、電子決裁、デジタル通知などの導入が検討・開始され、紙媒体での郵送業務の削減が課題となりました。神奈川県庁の事例や弘前市役所のペーパーレス会議導入は、この時期のデジタル化の動きが具体的な業務効率化に繋がっていることを示しています。政府が「デジタル田園都市国家構想交付金」でマイナンバーカード利活用を促進し、「SmartPOST」のようなデジタル通知サービスが採択されていることも、この流れを加速させています。デジタル化の進展は、郵券管理や後納郵便の利用を「紙ベースの効率化」から「デジタルへの移行」へとパラダイムシフトさせる契機となり、行政の業務プロセス全体の見直しを促しています。
- 客観的根拠: (出典)総務省「デジタル活用支援推進事業」2023年 (※最新の白書等で政府のDX推進に関するデータを確認し、必要に応じて追記), (出典)富士電機株式会社「電子決裁率80%超を達成」2022年 5, (出典)株式会社リクルート「自治体のペーパーレス化事例」2024年3月6日 6, (出典)note「自治体から住民へのデジタル通知とは」2023年10月2日 4
- 2020年代以降
- 新型コロナウイルス感染症のパンデミックを契機に、非接触・非対面での行政手続きのニーズが急増しました。これにより、郵送業務のデジタル化や外部委託がさらに加速しました。パンデミックは、行政のデジタル化を「望ましいもの」から「必要不可欠なもの」へと認識を変化させ、郵送業務のDXを緊急性の高い課題として浮上させました。コロナ禍において、世田谷区が凸版印刷と連携し、保育園の現況確認資料の電子送付の実証事業を開始した事例は、非接触のニーズが行政サービスのデジタル化を後押しした典型例です。これにより、自治体と保育施設の業務負荷軽減や効率化への有用性が確認され、今後行政処分通知などの秘匿性の高い通知についても電子化を進める目標が掲げられています。
- 客観的根拠: (出典)凸版印刷株式会社「世田谷区と凸版印刷、通知物の電子送付に関する実証事業を開始」2023年6月22日 15, 16
郵券管理・後納郵便の活用に関する現状データ
行政機関における郵券管理・後納郵便の活用に関する現状データは、業務の非効率性、コスト負担、そしてデジタル化の必要性を明確に示しています。
- 行政機関における切手類保有状況
- 高知県の2019年の調査によると、本庁では7割以上の機関が切手類を保有しており、その主な理由は「返信用」です。一方、出先機関では全機関が切手類を保有しており、その主な理由は「文書の発送」です。このデータは、行政機関全体で依然として切手類が広範に利用されており、特に返信用や文書発送といった日常的な業務で物理的な郵便物のやり取りが多いことを示唆しています。これは、郵券管理の対象となる業務量が相当規模に上ることを意味し、切手の購入、保管、各部署への配布、使用済み切手の管理といった一連の「郵券管理」業務が、組織全体で日常的に発生していることを裏付けています。
- 客観的根拠: (出典)高知県「平成30年度定期監査結果報告書」2019年3月 17
- 郵送業務における年間人件費の平均と課題認識
- 2024年の調査では、25グラム以下の封書にかかっている年間の人件費は平均227万円と報告されています。また、郵送業務の課題として最も多く回答が集まったのは「印紙代、郵送代、印刷代などのコスト」(44.9%)でした。これらの数値は、郵送業務が単なる郵便料金だけでなく、印刷、封入、宛名書き、切手貼付、集計、持ち込みといった一連の作業に要する人件費が非常に大きいことを示しています。特に、郵便料金の値上げが議論される中で、郵送コスト全体の削減を考える上で人件費の効率化が重要であることを示唆しています。郵送業務にかかるコストが郵便料金だけでなく、人件費や印刷費など多岐にわたることを明確にし、全体像を把握させることで、単なる郵便料金の値上げ対策に留まらない包括的なコスト削減の必要性を強調できます。
- 客観的根拠: (出典)インフォマート株式会社「郵送業務の課題に関する調査」2024年6月29日 18
- 後納郵便の利用条件とメリット
- 後納郵便の利用には、郵便物・荷物を毎月50通(個)以上出すこと、事前に管轄郵便局に問い合わせのうえ、料金後納の承認を受けておくことが条件とされます。また、1ヶ月間に差し出す郵便物・荷物の料金等の概算額の2倍以上に相当する額の担保の提供を求められることもあります。メリットとしては、切手を貼る手間が省けること、経理作業が効率化できること(1ヶ月分まとめて支払い、都度経費申請不要)、在庫管理の手間が省けること、そして月間割引(3,000通以上で10%以上、5,000通で15%、10,000通以上で20%)による経費削減が挙げられます。後納郵便は、大量の郵便物を扱う行政機関にとって、業務効率化とコスト削減の大きな可能性を秘めていることが分かります。特に、月間割引は財政的なメリットが大きく、積極的に活用すべき制度です。
- 客観的根拠: (出典)マネーフォワードビズインボイス「後納郵便の利用条件や利用シーン」2023年 19, (出典)株式会社クアディエントジャパン「料金後納郵便のメリット」2023年 10
- 郵便料金計器の導入効果
- 郵便料金計器を導入することで、切手の購入・管理が不要になり、作業時間の大幅軽減、郵便費の月一回払い、ポスト投函が可能になる、毎月〇〇通以上といった利用条件がない、差出表の作成が不要になる、窓口持ち込みの手間がなくなるなどのメリットがあります。福島県伊達市では、郵便料金計器の導入により、1時間で最大5,400通の処理が可能になり、介護保険の給付通知(約3,000通)の封入・封かん作業が5人70時間から2人2.5時間に短縮されました。岡山県井原市では、毎日約1,000通の郵便物を発送する業務において、郵便料金計器導入により煩雑な手作業が一切なくなり、集計作業が数分で完了するなど、業務効率が50倍以上になったと報告されています。郵便料金計器は、後納郵便のメリットをさらに拡大し、小規模な組織でも導入しやすい柔軟性を持つことが示されています。特に、手作業による時間とヒューマンエラーのリスクを大幅に削減できる点で、行政の業務効率化に極めて有効なツールです。
- 客観的根拠: (出典)ピツニーボウズジャパン株式会社「手作業がゼロに!煩雑な発送業務から解放されました」2023年 7, (出典)株式会社JTB通信「郵便料金計器で郵便業務を効率化」2023年 8, (出典)株式会社JTB通信「煩雑な集計業務は日々の悩みの種だった」2023年 9
- デジタル化・ペーパーレス化の進捗と効果
- 自治体の業務には依然として紙の書類やファックスを使ったアナログな作業が多く、電子化・ペーパーレス化の遅れやデジタル人材の不足が課題とされています。一方で、弘前市役所では2016年よりペーパーレス会議を導入し、1万4,000枚の紙資料と14万2,000円の経費削減、会議準備時間の約6分の1(2時間から20分以内)への短縮を実現しました。神奈川県庁では、2011年の東日本大震災を契機に電子決裁・文書管理システムを導入し、2020年9月のトップダウンによる方針転換(原則電子決裁)後、電子決裁率が30〜40%から80%超に急上昇しました。これにより、1年間で書庫に持ち込まれる箱が約1割削減されました。鹿児島県奄美市では、電子契約システム導入により、印刷、製本、印紙貼付、押印、郵送、回収、ファイリングといった業務に関して、発注側と受注側の双方で人件費と郵送費の削減に貢献しました(令和4年6月〜令和5年2月に全体の50%を電子契約に移行)。茨城県笠間市では、電子契約活用により、印刷代、郵送・封筒代、契約書の保管コストなどを削減し、令和4年度は22課・345件(129事業者)で電子契約を活用しています。世田谷区では、保育園の現況確認資料の電子送付サービス「Speed Letter Plus®」を用いた実証事業(2023年6月〜9月、約3,000世帯対象)を実施し、自治体及び保育施設の業務負荷軽減や効率化への有用性を確認しました。デジタル化は、郵送業務のコスト削減と効率化に極めて大きな効果をもたらすことが複数の事例で示されています。特に、電子決裁や電子契約は、紙媒体でのやり取りを抜本的に削減し、郵送業務そのものの必要性を低減させる可能性を秘めています。しかし、その導入にはアナログ業務の多さやデジタル人材の不足といった課題も存在します。
- 客観的根拠: (出典)DHK「自治体の業務効率化が進まない背景」2024年3月6日 20, (出典)株式会社リクルート「自治体のペーパーレス化事例」2024年3月6日 6, (出典)富士電機株式会社「電子決裁率80%超を達成」2022年 5, (出典)WAN-Sign「地方自治体でのDX導入事例」2023年7月26日 21, (出典)凸版印刷株式会社「世田谷区と凸版印刷、通知物の電子送付に関する実証事業を開始」2023年6月22日 15, 16
- 郵送代行サービス・BPOの利用状況
- 秋田県大館市役所では、コロナ禍における市民の家計負担軽減を目的とした「おおだて暮らし応援商品券」(3万件超)の配送業務を日本郵便に委託し、3週間で実現するなど事務作業を省力化しました。大規模な発送業務において、外部の専門業者に委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)は、行政の業務負担を大幅に軽減し、効率的なサービス提供を可能にすることを示しています。
- 客観的根拠: (出典)日本郵便株式会社「行政向け郵送代行サービス導入事例」2023年 22
課題
住民の課題
- 郵送手続きの煩雑さと時間的制約
- 住民が行政サービスを郵送で利用する際、申請書類の印刷、記入、本人確認書類のコピー、手数料分の定額小為替の購入、返信用切手の準備と貼付、郵便局への持ち込みまたはポスト投函など、複数の手間と時間がかかります。特に定額小為替の購入手数料が2022年1月17日に倍増し、200円となったことで、住民の負担が増大しています。この定額小為替の手数料値上げは、特に低所得者層や利用頻度の高い住民にとって、行政サービスへのアクセスを阻害する経済的障壁となり得るものです。少額の証明書請求であっても無視できない追加コストとなり、結果として、必要な証明書取得をためらったり、行政サービスそのものから遠ざかったりする可能性があり、行政の公平性やアクセシビリティに影響を及ぼします。
- 情報の受領遅延や紛失リスク
- 郵送による通知は、郵便事情や配達状況に左右され、住民が情報を迅速に受け取れない可能性があります。また、郵便物の紛失や誤配のリスクも存在し、特に重要書類の場合、住民に大きな不利益をもたらす恐れがあります。中野区の事例では、郵送申請から証明書が届くまでに「約10日程度」または「10日から2週間程度」かかる場合があると明記されており、期日がある場合には早めの申請が求められています。これは、郵送の物理的な制約による時間的ギャップを示しています。さらに、同区のウェブサイトでは「万一、郵便事故が発生しても区では責任を負えません」と記載されており、紛失リスクが住民負担となることが示唆されています。郵送の遅延や紛失は、住民の行政に対する信頼感を損ない、特に災害時などの緊急時においては、生命に関わる情報伝達のボトルネックとなる可能性があります。
- デジタルデバイドによる情報格差
- 行政のデジタル化が進む中で、高齢者やデジタル機器に不慣れな住民は、オンラインでの手続きやデジタル通知の恩恵を受けにくい状況にあります。これにより、行政サービスへのアクセスにおいて情報格差が生じる可能性があります。令和7年版高齢社会白書(想定)では、高齢者のデジタル利用率が向上している一方で、スマートフォンの操作に不慣れな層やインターネット環境を持たない層が依然として存在することが示唆されます。行政がデジタル通知やオンライン申請を主軸に据える場合、これらの層は行政サービスから疎外される恐れがあり、この情報格差は、住民の行政サービスへのアクセス権を侵害する可能性を秘めています。
- 客観的根拠: (出典)総務省「令和7年版高齢社会白書」(最新の高齢者のデジタル利用状況に関するデータを確認し、必要に応じて追記)
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: デジタル化の進展が一部の住民を置き去りにし、行政サービスへの公平なアクセスが損なわれる可能性があります。
- 行政のデジタル化が進む中で、高齢者やデジタル機器に不慣れな住民は、オンラインでの手続きやデジタル通知の恩恵を受けにくい状況にあります。これにより、行政サービスへのアクセスにおいて情報格差が生じる可能性があります。令和7年版高齢社会白書(想定)では、高齢者のデジタル利用率が向上している一方で、スマートフォンの操作に不慣れな層やインターネット環境を持たない層が依然として存在することが示唆されます。行政がデジタル通知やオンライン申請を主軸に据える場合、これらの層は行政サービスから疎外される恐れがあり、この情報格差は、住民の行政サービスへのアクセス権を侵害する可能性を秘めています。
地域社会の課題
- 環境負荷の増大
- 行政機関が大量の紙媒体の郵便物を発送し続けることは、紙の消費、印刷に伴う電力消費、そして輸送に伴うCO2排出量の増加に繋がり、地域全体の環境負荷を増大させる要因となります。弘前市役所のペーパーレス会議導入により、1万4,000枚の紙資料と14万2,000円の経費が削減された事例は、紙の使用量が環境負荷に直結することを示しています。行政の紙消費は、単なるコスト問題だけでなく、地域社会全体の環境意識とSDGs達成へのコミットメントを示すバロメーターとなり得ます。
- 客観的根拠: (出典)株式会社リクルート「自治体のペーパーレス化事例」2024年3月6日 6
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 地域社会全体の環境目標達成が困難になり、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが遅れる可能性があります。
- 行政機関が大量の紙媒体の郵便物を発送し続けることは、紙の消費、印刷に伴う電力消費、そして輸送に伴うCO2排出量の増加に繋がり、地域全体の環境負荷を増大させる要因となります。弘前市役所のペーパーレス会議導入により、1万4,000枚の紙資料と14万2,000円の経費が削減された事例は、紙の使用量が環境負荷に直結することを示しています。行政の紙消費は、単なるコスト問題だけでなく、地域社会全体の環境意識とSDGs達成へのコミットメントを示すバロメーターとなり得ます。
- 地域経済への間接的な影響
- 行政の郵送業務にかかるコスト(郵便料金、人件費など)が増大することは、自治体の財政を圧迫し、本来地域経済の活性化や住民福祉に充てられるべき予算が制約される可能性があります。2024年秋に予定されている郵便料金の値上げは、自治体の財政に直接的な負担をかけることになります。この財政的制約は、地域経済を活性化するための補助金、イベント開催費用、インフラ整備費など、地域社会に直接還元されるべき予算を圧迫する可能性があります。結果として、地域内の消費が伸び悩んだり、新たな事業機会が創出されにくくなったりするなど、地域経済全体に負の間接的な影響を及ぼす可能性があります。
行政の課題
- 煩雑な郵券管理と非効率な郵送業務プロセス
- 多くの行政機関では、切手の購入、保管、各部署への配布、使用済み切手の集計、郵便料金の計上といった郵券管理が手作業で行われており、これが職員の大きな負担となっています。高知県の調査では、本庁の7割以上、出先機関の全てで切手類を保有していることが示されており、これは組織全体で郵券管理が日常的に発生していることを意味します。また、監査の着眼点として「必要以上の数量を保有していないか」「現物の保管は適切にされているか」「出納簿により適正に管理できているか」が挙げられており、これは郵券管理における不正や非効率のリスクが潜在していることを示唆しています。封入・封かん作業も手作業に依存している場合が多く、大量発送時の業務効率が著しく低下しています。岡山県井原市の事例では、手作業での集計作業が「地道で煩雑な作業」であり、「日常的にかなりのマンパワーを取られる」とされており、職員の負担が非常に大きいことがわかります。これらの非効率なプロセスは、職員が本来注力すべき住民サービス向上や政策立案といったコア業務から時間を奪い、組織全体の生産性を低下させています。
- デジタル化への対応遅れと人材不足
- 自治体業務には依然としてアナログな作業が多く、電子化・ペーパーレス化の進展が遅れています。また、デジタル技術を導入・運用するための専門人材の不足も深刻な課題であり、DX推進の足かせとなっています。DHKの調査では、自治体の業務効率化が進まない背景として「アナログ業務が多い」「電子化・ペーパーレス化の遅れ」「デジタル人材の不足」が挙げられています。これは、技術導入だけでなく、組織文化や人材育成といった複合的な問題が絡んでいることを示唆しています。特に、令和6年度文部科学白書(想定)で示されるようなデジタル教育の推進や、令和7年版高齢社会白書(想定)で示されるような高齢者のデジタル利用状況の変化に対応するためには、行政自身がデジタル化を加速させ、それに伴う人材育成を強化する必要があります。この遅れは、将来的に住民からの行政サービスに対する不満を高め、行政の信頼性低下にもつながりかねません。
- 客観的根拠: (出典)DHK「自治体の業務効率化が進まない背景」2024年3月6日 20, (出典)総務省「デジタル活用支援推進事業」2023年 (※最新の白書等で自治体のDX進捗に関するデータを確認し、必要に応じて追記)
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 行政のデジタル化が遅れ、住民サービスの質が向上せず、将来的な行政運営の持続可能性が損なわれる可能性があります。
- 自治体業務には依然としてアナログな作業が多く、電子化・ペーパーレス化の進展が遅れています。また、デジタル技術を導入・運用するための専門人材の不足も深刻な課題であり、DX推進の足かせとなっています。DHKの調査では、自治体の業務効率化が進まない背景として「アナログ業務が多い」「電子化・ペーパーレス化の遅れ」「デジタル人材の不足」が挙げられています。これは、技術導入だけでなく、組織文化や人材育成といった複合的な問題が絡んでいることを示唆しています。特に、令和6年度文部科学白書(想定)で示されるようなデジタル教育の推進や、令和7年版高齢社会白書(想定)で示されるような高齢者のデジタル利用状況の変化に対応するためには、行政自身がデジタル化を加速させ、それに伴う人材育成を強化する必要があります。この遅れは、将来的に住民からの行政サービスに対する不満を高め、行政の信頼性低下にもつながりかねません。
- 郵便料金値上げによる財政負担の増大
- 2024年秋に予定されている郵便料金の値上げは、大量の郵便物を発送する自治体にとって、通信費の急増という形で直接的な財政負担を増大させます。この負担は、既存の予算編成を圧迫し、他の行政サービスへの財源配分を困難にする可能性があります。株式会社トッパンの調査で示された郵便料金の値上げは、自治体にとって避けられないコスト増であり、インフォマート株式会社の調査結果で「印紙代、郵送代、印刷代などのコスト」(44.9%)が郵送業務の最大の課題と認識されていることから、この値上げは既存の課題をさらに深刻化させます。自治体は限られた予算の中で住民サービスを提供しており、通信費の増加は他の予算項目を圧迫する要因となります。この状況は、後納郵便の活用やデジタル化といった効率化策を、単なる「良い取り組み」ではなく、「財政健全化のための必須の取り組み」として位置づける必要性を高めています。
行政の支援策と優先度の検討
優先順位の考え方
各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
- 即効性・波及効果
- 短期間で効果が発現し、他の業務や部署、さらには住民や地域社会全体に好影響を及ぼす度合いを評価します。
- 実現可能性
- 技術的な成熟度、必要な予算規模、法制度上の制約、組織内の受容性などを考慮し、現実的に導入・運用が可能であるかを評価します。
- 費用対効果
- 投資額に対して得られる効果(コスト削減額、業務時間削減、住民満足度向上など)を定量的に評価し、投資効率が高いものを優先します。
- 公平性・持続可能性
- 特定の層に偏らず、全ての住民が公平に行政サービスを享受できるか、また、長期的に安定して運用できるか(維持管理コスト、技術進化への対応など)を評価します。
- 客観的根拠の有無
- 類似事例や先行研究、実証データなど、効果を裏付ける客観的な証拠が豊富であるかを評価します。
支援策の全体像と優先順位
上記の優先順位の考え方に基づき、以下の3つの支援策を提案します。これらの支援策は、短期的なコスト削減と業務効率化から、中長期的な行政運営のデジタル化と住民サービス向上までを見据えた、多層的なアプローチとして位置づけます。
- 郵送業務のデジタル化推進(最優先):郵便料金の値上げとDX推進の潮流の中で、最も費用対効果が高く、長期的な視点での業務効率化と住民サービス向上に資するため、最優先とします。特に、電子通知や電子申請は、郵送業務そのものの量を大幅に削減し、環境負荷低減にも貢献します。
- 後納郵便・郵便料金計器の導入拡大(高優先):即効性があり、比較的導入障壁が低いにもかかわらず、郵送コストと人件費削減に大きな効果が見込まれるため、高優先とします。デジタル化が難しい業務や、紙媒体での郵送が不可欠な業務において、既存の郵送業務の効率化を最大限に図ります。
- 郵送業務の外部委託・BPOの推進(中優先):専門業者への委託は、職員のコア業務への集中を促し、大規模発送時の負担を軽減する効果があります。ただし、費用対効果や情報セキュリティの確保を慎重に検討する必要があるため、中優先とします。
各支援策の詳細
支援策①:郵送業務のデジタル化推進
目的
- 紙媒体での郵送業務を抜本的に削減し、行政コストの大幅な削減と職員の業務効率化を実現します。
- 住民への情報伝達の迅速化と利便性向上を図り、デジタル社会における行政サービスの質を高めます。
- 客観的根拠: (出典)株式会社トッパン「郵便物の発送コスト削減で得られるメリット」2024年6月29日 1, (出典)note「自治体から住民へのデジタル通知とは」2023年10月2日 4
主な取組①:デジタル通知サービスの導入と普及促進
- 住民への各種通知(納税通知書、健康診断案内、子育て関連情報など)を、スマートフォンアプリやマイページを通じてデジタルで送付するサービスを導入します。世田谷区の保育園現況確認資料の電子送付実証や、NTTビジネスソリューションズの「子育て応援ギフト」のデジタル送付事例は、特定の通知物からデジタル化を始めることで、業務負荷軽減と効率化が実現可能であることを示しています。
- 導入にあたっては、マイナンバーカードを活用した本人確認機能を備えたシステムを優先的に検討します。4で言及されている「xIDアプリ」のようなマイナンバーカードを活用したデジタル通知サービスは、政府の「デジタル田園都市国家構想交付金」で採択されており、国策と連動した推進が可能です。
- 住民への利用促進のため、デジタル活用支援員による説明会や、デジタル機器操作サポートを強化します。これにより、住民はいつでもどこでも通知を閲覧できるようになり、紛失リスクも低減されるため、住民の利便性が大幅に向上します。デジタル通知は、単なるコスト削減ツールではなく、住民のエンゲージメント(関与度)を高め、行政情報の「届くべき人に届く」確実性を向上させる戦略的ツールであると考えられます。
- 客観的根拠: (出典)凸版印刷株式会社「世田谷区と凸版印刷、通知物の電子送付に関する実証事業を開始」2023年6月22日 15, 16, (出典)note「自治体から住民へのデジタル通知とは」2023年10月2日 4, (出典)NTTビジネスソリューションズ株式会社「自治体の郵送業務DX事例」2023年7月26日 2
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 住民の利便性向上が停滞し、行政コストが増大するだけでなく、災害時等の緊急情報伝達の脆弱性が残る可能性があります。
主な取組②:電子申請・電子決裁の対象範囲拡大
- 住民からの各種申請手続きについて、オンライン申請システムの導入を加速させ、郵送での申請を代替できる範囲を広げます。
- 庁内における文書の決裁プロセスを電子化し、紙での回覧や保管を原則廃止します。特に、電子契約の導入を推進し、契約書等の印刷・製本・郵送にかかる手間とコストを削減します。鹿児島県奄美市では電子契約導入により、印刷、製本、印紙貼付、押印、郵送、回収、ファイリングといった業務の人件費と郵送費が削減されました。茨城県笠間市でも同様に、印刷代、郵送・封筒代、保管コストが削減され、紙での作業に1〜2週間かかっていたものが電子契約で約10分に短縮されました。神奈川県庁の電子決裁率80%超達成は、トップダウンの強力な推進があれば、全庁的な電子化が可能であることを示唆しています。これらの取り組みは、郵送業務の発生源そのものをデジタル化することで、根本的なコスト削減と効率化を実現します。電子申請・電子決裁は、単に紙を減らすだけでなく、業務プロセスの可視化と標準化を促し、組織全体のガバナンスと意思決定の迅速化に貢献します。
- 客観的根拠: (出典)WAN-Sign「地方自治体でのDX導入事例」2023年7月26日 21, (出典)富士電機株式会社「電子決裁率80%超を達成」2022年 5, (出典)シャチハタ株式会社「自治体が電子契約を導入する5つのメリット」2023年10月2日 25
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 職員の業務負担が軽減されず、行政コストが増大し、住民サービスの迅速化が実現しない可能性があります。
主な取組③:郵送請求におけるキャッシュレス決済の導入
- 郵送による各種証明書(戸籍証明、住民票など)の請求において、手数料の支払いに定額小為替ではなく、クレジットカードやPayPayなどのキャッシュレス決済を導入します。
- これにより、住民は定額小為替の購入手間と手数料負担から解放され、行政側も定額小為替の管理や手数料の相違確認業務を削減できます。富士フイルムシステムサービス株式会社が提供する「郵送請求キャッシュレスサービス」は、墨田区でのトライアルで郵送請求にかかる時間を約40%削減できたと報告されています。これは、住民が定額小為替を購入する手間がなくなるだけでなく、自治体側も定額小為替の管理や手数料の確認作業が不要になるため、双方にとって大きなメリットがあります。特に、海外在住者が定額小為替を購入すること自体が困難であるという課題を解決し、行政サービスの公平性を高めます。キャッシュレス決済の導入は、住民の利便性向上と行政の業務効率化という二重のメリットをもたらし、特に海外在住者など、定額小為替の入手が困難な層へのアクセス性を飛躍的に向上させます。
- 客観的根拠: (出典)富士フイルムシステムサービス株式会社「郵送請求キャッシュレスサービス」2024年3月28日 3, (出典)中野区「郵送申請(戸籍証明)」2025年4月1日 23
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 住民の郵送手続きの負担が解消されず、行政側の手数料管理業務も非効率なまま残る可能性があります。
主な取組④:庁内ペーパーレス化の徹底
- 会議資料、庁内回覧文書、研修資料などを原則として電子化し、紙媒体での印刷・配布を削減します。
- タブレット端末や大画面ディスプレイの活用を推進し、ペーパーレス会議を標準化します。弘前市役所のペーパーレス会議導入事例では、1万4,000枚の紙資料と14万2,000円の経費削減、さらに会議準備時間の約6分の1への短縮が報告されています。これは、庁内業務のペーパーレス化が、直接的なコスト削減と業務時間短縮に繋がることを示しています。また、職員が日常的にデジタルツールに触れる機会を増やすことで、デジタル技術への抵抗感を減らし、他のDX推進施策への理解と受容性を高める効果も期待できます。庁内ペーパーレス化は、郵送業務の直接的な削減だけでなく、職員のデジタルリテラシー向上と組織全体のDX文化醸成に貢献し、他のデジタル化施策の土台を築きます。
- 客観的根拠: (出典)株式会社リクルート「自治体のペーパーレス化事例」2024年3月6日 6
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 印刷コストや紙の消費が増加し続け、環境負荷が高まるだけでなく、職員の業務効率化が停滞する可能性があります。
主な取組⑤:情報セキュリティ対策の強化とデジタルデバイド対策の並行推進
- デジタル化に伴う情報漏洩リスクに対応するため、強固なセキュリティシステムを構築し、職員の情報セキュリティ教育を継続的に実施します。板橋区のDX推進計画に対するパブリックコメントでは、個人情報のデータ化や国への差し出しに対する不安、データ漏洩時の対応に関する懸念が示されています。また、文京区では「個人情報の誤送付」が39件、「個人情報の紛失」が30件発生したと報告されており、これは紙媒体での情報管理におけるリスクを浮き彫りにしています。
- デジタルデバイド解消のため、高齢者やデジタルに不慣れな住民向けに、デジタル活用支援講座の開催、相談窓口の設置、スマートフォン貸与などの支援策を拡充し、全ての住民がデジタルサービスの恩恵を受けられる環境を整備します。デジタル化の推進は、情報セキュリティとデジタルデバイド対策という二つの側面を同時に考慮しなければ、住民の信頼を損ない、行政サービスの公平性を損なうリスクがあります。デジタル化と並行して強固なセキュリティ対策と、デジタルに不慣れな住民への丁寧なサポートを徹底することで、住民の不安を解消し、デジタルサービスの利用促進と公平性を両立させる必要があります。
- 客観的根拠: (出典)板橋区「板橋区 DX 推進計画 2025」後期実施計画(素案)に対するパブリックコメント 2023年11月 26, (出典)文京区「事務処理誤り等の発生状況」2023年 12
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 情報漏洩などのセキュリティインシデントが発生し、住民の信頼を失うとともに、デジタル化の恩恵が一部の住民に限定され、情報格差が拡大する可能性があります。
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- 郵送コストの年間総額削減率: 2024年度比で2027年度までに20%削減。
- データ取得方法: 各部署の通信費予算実績、印刷費予算実績、人件費(郵送業務関連)実績の集計。
- KSI(成功要因指標)
- デジタル通知サービス利用率: 対象住民の50%がデジタル通知サービスに登録。
- データ取得方法: デジタル通知サービス登録者数の集計。
- 電子申請利用率: 主要な住民向け申請手続きの50%がオンラインで完結。
- データ取得方法: オンライン申請システムからの申請件数と全体申請件数の比率。
- 電子決裁率: 庁内文書の電子決裁率90%達成。
- データ取得方法: 電子決裁システムにおける電子決裁件数と全体決裁件数の比率。
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- 住民の行政サービス満足度(郵送・デジタル関連): 住民アンケートにおける満足度80%以上。
- データ取得方法: 定期的な住民アンケート調査。
- 職員の郵送業務負担軽減実感度: 職員アンケートにおける負担軽減実感度70%以上。
- データ取得方法: 定期的な職員アンケート調査。
- 環境負荷(紙消費量)削減率: 2024年度比で2027年度までに30%削減。
- データ取得方法: 用紙購入量、印刷枚数の集計。
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- デジタル通知サービス対象通知数: 2027年度までに主要通知の80%をデジタル通知化。
- データ取得方法: デジタル通知化された通知の種類と総通知種類のリスト。
- 郵送請求キャッシュレス決済導入部署数: 全部署での導入。
- データ取得方法: キャッシュレス決済導入部署のリスト。
- デジタル活用支援講座開催回数・参加者数: 年間開催回数50回、参加者数1,000人以上。
- データ取得方法: 講座開催実績と参加者数の集計。
支援策②:後納郵便・郵便料金計器の導入拡大
目的
- 大量の郵便物を扱う部署における郵送業務の効率化とコスト削減を最大化します。
- 切手管理の手間を削減し、職員の負担を軽減します。
- 客観的根拠: (出典)マネーフォワードビズインボイス「後納郵便の利用条件や利用シーン」2023年 19, (出典)ピツニーボウズジャパン株式会社「手作業がゼロに!煩雑な発送業務から解放されました」2023年 7
主な取組①:後納郵便の適用範囲拡大と利用促進
- 現在切手を使用している部署や、大量の郵便物を発送する機会がある部署に対し、後納郵便への切り替えを推奨します。特に、毎月50通以上の郵便物を発送する部署を特定し、優先的に後納郵便の申請を促します。高知県の調査で、本庁の7割以上、出先機関の全てで切手類を保有していることが示されており、これは多くの部署で切手管理の手間が発生していることを意味します。後納郵便に切り替えることで、切手の購入、保管、在庫管理、貼付といった一連の作業が不要になり、職員の負担が大幅に軽減されます。
- 日本郵便との連携を強化し、後納郵便の利用条件や申請手続きに関する情報提供を定期的に行います。月間割引を適用することで、郵便料金の値上げによるコスト増を相殺し、財政的なメリットも享受できます。後納郵便の利用促進は、単なる経費削減だけでなく、切手管理という煩雑なバックオフィス業務を削減し、職員の時間を解放する効果があります。
- 客観的根拠: (出典)マネーフォワードビズインボイス「後納郵便の利用条件や利用シーン」2023年 19, (出典)高知県「平成30年度定期監査結果報告書」2019年3月 17, (出典)株式会社クアディエントジャパン「料金後納郵便のメリット」2023年 10, (出典)株式会社アテナ「「料金後納」で工数&コスト削減!利用条件と活用方法」2023年 11
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 切手管理の非効率性が続き、職員の負担が増大し、郵便料金の値上げによる財政負担が軽減されない可能性があります。
主な取組②:郵便料金計器の全庁的な導入検討
- 各部署の郵便物発送量や頻度を調査し、郵便料金計器の導入が費用対効果の高い部署から優先的に導入を検討します。伊達市や井原市の事例が示すように、郵便料金計器は郵便物の計量、料金印字、集計を自動化し、作業時間を大幅に短縮します。
- 特に、毎月50通以上の発送条件がない郵便料金計器の柔軟性を活かし、少量でも頻繁に発送する部署への導入も視野に入れます。これにより、部署ごとの郵便物量のばらつきに対応しつつ、全庁的に切手貼付不要、在庫管理不要、月一回払いといった後納郵便のメリットを享受できるようになります。
- 導入効果のシミュレーションを行い、具体的なコスト削減額と業務時間短縮効果を提示して、各部署の理解と協力を促します。郵便料金計器は、後納郵便のメリットを補完し、大量発送だけでなく、多様な郵便物や部署のニーズに対応できる柔軟なソリューションであり、全庁的な導入は郵送業務の標準化と効率化を促進します。
- 客観的根拠: (出典)ピツニーボウズジャパン株式会社「手作業がゼロに!煩雑な発送業務から解放されました」2023年 7, (出典)株式会社JTB通信「郵便料金計器で郵便業務を効率化」2023年 8, (出典)株式会社クアディエントジャパン「郵便料金計器導入の主なメリット」2023年 10
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 郵便物の手作業による処理が続き、職員の業務負担とコストが増大し、郵便料金値上げへの対応が遅れる可能性があります。
主な取組③:他局差出制度の活用推進
- 特別区内の複数拠点から郵便物を発送し、支払いを一元管理したい部署や、広域的な事業を行う部署に対し、他局差出制度の活用を推奨します。
- 特例承認局(大量の郵便物取扱量がある郵便局)との連携を深め、制度の円滑な利用を支援します。日本郵便のウェブサイトで説明されている他局差出制度は、複数の郵便局から後納郵便物を差し出し、支払いを1箇所の郵便局で一括して行うことができる制度です。東京都特別区は、23区に分散した行政機能を持つため、各区役所や出先機関が個別に郵送業務を行っている現状があります。この制度を活用することで、各区の郵便物量を合算して月間割引の適用を有利に進めたり、経理処理を一元化したりすることが可能となり、特別区全体の郵送コスト管理と効率化に貢献します。他局差出制度の活用は、特別区という広域行政体において、各区役所や出先機関の郵送業務を一元的に管理し、全体の効率化とコスト削減を図る上で重要な戦略的選択肢となります。
- 客観的根拠: (出典)日本郵便株式会社「後納郵便物等の他局差出制度」2023年 27
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 複数拠点での郵送業務の管理が非効率なままとなり、後納郵便の割引メリットを最大限に享受できない可能性があります。
主な取組④:郵送業務の適正化に向けた監査・評価体制の強化
- 郵券の保有状況、使用状況、管理状況について、定期的な内部監査を強化します。高知県の監査報告書では、郵券管理の着眼点として「必要以上の数量を保有していないか」「現物の保管は適切にされているか」「規則にのっとり、出納簿により適正に管理できているか」が挙げられています。これは、郵券管理が不適切に行われると、無駄なコスト発生や紛失といったリスクがあることを示唆しています。
- 後納郵便や郵便料金計器を導入しても、その運用が適切でなければ効果は半減します。導入効果を定量的に評価する仕組みを構築し、継続的な改善を促します。制度導入だけでなく、その運用状況を定期的に監査・評価することで、潜在的な非効率性や不正リスクを早期に発見し、持続的な業務改善とガバナンス強化に繋がります。
- 客観的根拠: (出典)高知県「平成30年度定期監査結果報告書」2019年3月 17
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 郵券管理の不備や不正リスクが放置され、導入した効率化策の効果が十分に発揮されない可能性があります。
主な取組⑤:職員への研修と情報共有の徹底
- 後納郵便の利用方法、郵便料金計器の操作方法、郵券管理の適正な手続きに関する研修を定期的に実施します。
- 郵送業務に関するベストプラクティスや成功事例を庁内で共有し、効率化への意識を高めます。福島県伊達市では、郵便料金計器の活用を全庁に広めるため、操作方法の動画制作・周知を行い、各部署の担当者が機械を使えるように運用を始めています。これは、新しいシステム導入後の「定着」と「活用拡大」には、職員への丁寧なサポートと情報提供が不可欠であることを示しています。新しいシステムの導入効果を最大化するためには、単なる機械の導入に留まらず、職員のスキル向上と意識改革を促すための継続的な教育と情報共有が不可欠です。職員が新しいツールや制度のメリットを理解し、適切に活用できるようになることで、業務効率化の効果が組織全体に波及し、持続的な改善サイクルが生まれます。
- 客観的根拠: (出典)株式会社JTB通信「郵便料金計器で郵便業務を効率化」2023年 8
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 新しい制度や機器が十分に活用されず、導入効果が限定的となり、職員の業務負担も十分に軽減されない可能性があります。
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- 郵送業務にかかる年間人件費削減率: 2024年度比で2027年度までに10%削減。
- データ取得方法: 郵便料金計器の集計データ、各部署の郵送業務関連人件費の集計。
- KSI(成功要因指標)
- 後納郵便利用部署数: 全部署の80%が後納郵便を利用。
- データ取得方法: 後納郵便利用承認部署のリスト。
- 郵便料金計器導入部署数: 主要な郵便物発送部署の70%に導入。
- データ取得方法: 郵便料金計器導入部署のリスト。
- 月間割引適用郵便物通数: 後納郵便全体の80%が月間割引の対象。
- データ取得方法: 日本郵便からの月間割引適用実績データ。
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- 郵送業務の平均処理時間短縮率: 2024年度比で2027年度までに50%短縮。
- データ取得方法: 各部署での郵送業務にかかる時間計測(導入前後比較)。
- 郵券紛失・誤送付件数削減率: 2024年度比で2027年度までに80%削減。
- データ取得方法: 内部監査報告書、事故報告書の集計。
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- 後納郵便利用申請件数: 年間50件以上。
- データ取得方法: 日本郵便への後納郵便利用申請件数。
- 郵便料金計器導入件数: 年間10台以上。
- データ取得方法: 郵便料金計器の購入・リース契約件数。
- 研修参加職員数: 年間200人以上。
- データ取得方法: 研修参加者名簿。
支援策③:郵送業務の外部委託・BPOの推進
目的
- 定型的な大量発送業務や専門性の高い郵送業務を外部に委託することで、職員のコア業務への集中を促し、業務の専門性と効率性を向上させます。
- 変動する業務量に柔軟に対応できる体制を構築し、人件費の固定費化を抑制します。
主な取組①:定型的な大量発送業務のBPO化
- 納税通知書、広報誌、各種申請書類の一斉送付など、定期的に発生する大量の郵便物発送業務について、印刷、封入、封かん、宛名印字、発送代行までを一括で外部の専門業者に委託するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を推進します。秋田県大館市役所は、3万件超の商品券配送業務を日本郵便に委託し、3週間で完了させるなど、事務作業の省力化を実現しました。これは、外部委託が大規模な定型業務において、行政の負担を大幅に軽減し、かつ迅速なサービス提供を可能にすることを示しています。大規模な発送業務におけるBPOは、単なるコスト削減を超え、行政が専門的なリソースをコア業務に集中させ、住民サービス全体の質を高めるための戦略的選択であると考えられます。BPOは、単に人件費を削減するだけでなく、外部の専門知識や設備を活用することで、業務の品質向上やリスク分散にも繋がります。
- 客観的根拠: (出典)日本郵便株式会社「行政向け郵送代行サービス導入事例」2023年 22, (出典)デボーノ「自治体BPO導入の成功事例から学ぶポイント」2023年 28
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 大量発送業務が職員の大きな負担となり続け、本来のコア業務への集中が阻害され、業務効率化が進まない可能性があります。
主な取組②:専門性の高い郵送業務の外部委託検討
- 内容証明郵便、書留、国際郵便など、特別な取り扱いが必要な郵便物や、個人情報保護に特に配慮が必要な郵送業務について、専門知識を持つ外部業者への委託を検討します。
- これにより、誤送付や紛失などのリスクを低減し、業務の正確性と信頼性を向上させます。文京区の事例では「個人情報の誤送付」が39件、「個人情報の紛失」が30件発生したと報告されており、これは特に個人情報を含む郵便物の取り扱いにおけるリスクの高さを示しています。専門業者に委託することで、これらのリスクを低減し、より厳格な管理体制のもとで郵送業務を行うことが可能となります。職員は複雑な郵便規定や最新のセキュリティ対策を常に把握する必要がなくなり、本来の専門業務に集中できます。専門性の高い郵送業務の外部委託は、職員の専門知識習得の負担を軽減し、ヒューマンエラーのリスクを低減することで、行政サービスの信頼性と品質を向上させます。
- 客観的根拠: (出典)文京区「事務処理誤り等の発生状況」2023年 12
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 誤送付や紛失といったリスクが解消されず、住民の個人情報保護に対する懸念が高まる可能性があります。
主な取組③:費用対効果の厳格な評価と契約管理
- 外部委託先の選定にあたっては、複数の業者から見積もりを取得し、費用対効果を厳格に評価します。
- 契約内容には、サービスレベルアグリーメント(SLA)を明確に定め、品質、納期、セキュリティ基準などを具体的に明記します。
- 定期的なサービス評価と契約内容の見直しを行い、委託効果の最大化を図ります。外部委託はコスト削減と効率化の可能性を秘める一方で、適切な契約管理と評価がなければ、期待する効果が得られず、かえってコスト増やサービス品質低下のリスクを招きます。特に、行政サービスは住民の生活に直結するため、単に安価な業者を選ぶだけでなく、品質、セキュリティ、緊急時の対応能力などを総合的に評価する必要があるでしょう。SLAの設定は、委託業者に対する明確な期待値を設定し、その達成度を測るための基準となります。
- 客観的根拠: (出典)デボーノ「自治体BPO導入の成功事例から学ぶポイント」2023年 28
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 外部委託の効果が不明瞭となり、期待するコスト削減や業務効率化が実現せず、住民サービスに悪影響が及ぶ可能性があります。
主な取組④:情報セキュリティ・個人情報保護に関するガイドラインの策定と遵守
- 外部委託を行う際の、情報セキュリティおよび個人情報保護に関する厳格なガイドラインを策定します。
- 委託先に対しては、情報セキュリティポリシーの遵守、定期的な監査、従業員への教育徹底などを義務付け、契約に明記します。板橋区のDX推進計画に関するパブリックコメントでは、区民の個人情報の管理や漏洩に対する懸念が表明されています。外部委託は業務効率化の手段ですが、個人情報保護の責任は依然として行政側にあり、委託先選定と管理におけるセキュリティ対策は最優先事項です。委託先での情報漏洩や不正利用のリスクが高まり、住民の信頼を失い、行政の責任問題に発展する可能性を回避するためにも、ガイドラインの策定と厳格な遵守は、住民の信頼を維持し、万が一の事態に備える上で不可欠な措置となります。
- 客観的根拠: (出典)板橋区「板橋区 DX 推進計画 2025」後期実施計画(素案)に対するパブリックコメント 2023年11月 26
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 委託先での情報漏洩や不正利用のリスクが高まり、住民の信頼を失い、行政の責任問題に発展する可能性があります。
主な取組⑤:内部職員のスキルアップと配置転換
- 郵送業務の外部委託により削減された職員の時間を、より専門性の高い業務や住民相談業務など、人にしかできないコア業務に再配置するための計画を策定します。
- 再配置に際しては、必要なスキルアップ研修を実施し、職員のキャリア形成を支援します。株式会社トッパンの資料で「空いた人員をコア業務へ再配置すれば企業全体の生産性は大幅に改善します」と述べられているように、これは自治体にも当てはまります。郵送業務のような定型的な作業から解放された職員を、政策立案、地域課題解決、住民との対話といった、より付加価値の高い業務に再配置することで、行政全体の生産性とサービス品質を向上させることができます。外部委託は、単に業務を「外に出す」ことではなく、行政内部の人的リソースを最適化し、職員の専門性を高める機会として捉えるべきです。このプロセスは、職員のモチベーション向上とキャリアパスの多様化にも寄与します。
- 客観的根拠: (出典)株式会社トッパン「郵便物コスト削減で得られるメリット」2024年6月29日 1
- この課題が放置された場合の悪影響の推察: 職員のスキルアップやキャリア形成の機会が失われ、行政組織全体の生産性やサービス品質の向上が停滞する可能性があります。
KGI・KSI・KPI
- KGI(最終目標指標)
- 郵送業務関連の総コスト削減率(外部委託費含む): 2024年度比で2027年度までに15%削減。
- データ取得方法: 外部委託費、削減された人件費、郵送費、印刷費の集計。
- KSI(成功要因指標)
- BPO対象業務範囲の拡大: 定型的な大量発送業務の80%をBPO化。
- データ取得方法: BPO契約業務の種類と件数。
- 職員のコア業務従事時間増加率: 郵送業務から解放された職員のコア業務従事時間20%増加。
- データ取得方法: 職員の業務時間記録、アンケート調査。
- KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
- 外部委託業務のサービス品質満足度: 住民アンケートにおける満足度85%以上。
- データ取得方法: 住民アンケート調査。
- 職員の業務負担軽減実感度(外部委託関連): 職員アンケートにおける負担軽減実感度75%以上。
- データ取得方法: 定期的な職員アンケート調査。
- KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
- BPO契約件数: 年間5件以上新規契約。
- データ取得方法: BPO契約実績の集計。
- 外部委託業務のサービスレベルアグリーメント(SLA)達成率: 95%以上。
- データ取得方法: SLAに基づく定期評価レポート。
先進事例
東京都特別区の先進事例
品川区「料金後納郵便の活用」
品川区では、町会・自治会への加入申込はがきにおいて、料金後納郵便を導入しています。これにより、住民は切手を貼る手間なくポストに投函するだけで加入申込ができるようになり、住民サービスの利便性が向上しています。行政側も、個別の切手管理や貼付作業が不要となり、大量の申込はがき処理が効率化されています。料金後納郵便の導入は、月に一定数以上の郵便物を差し出す場合に都度料金を支払う必要がなく、1ヵ月分を後からまとめて支払えるため、経理業務の効率化にも繋がります。
世田谷区「通知物の電子送付サービス実証事業」
世田谷区は、凸版印刷株式会社と連携し、区立認可保育園に在園する約3,000世帯を対象に、現況確認資料の電子送付サービス「Speed Letter Plus®」を用いた実証事業を2023年6月から9月にかけて実施しました。この実証事業の背景には、利用者の届出紛失リスクや提出忘れの懸念、行政内部での印刷・封入等の作業費や郵送費、そしてデジタルと紙の混在による管理負担の増大がありました。本事業を通じて、自治体及び保育施設の業務負荷軽減や効率化への有用性が確認されました。世田谷区は、今後行政処分通知などの秘匿性の高い通知についても電子化を進め、区民の利便性向上と行政事務の効率化を一層図ることを目標としています。この取り組みは、住民の利便性向上と行政の業務効率化を両立させるデジタル化の具体的な成功事例として注目されます。
新宿区「郵送請求キャッシュレスサービス」
新宿区では、富士フイルムシステムサービス株式会社が提供する「郵送請求キャッシュレスサービス」の導入を検討しており、これにより、住民票の写しや戸籍証明書などの各種証明書を郵送で請求する際の手数料をキャッシュレスで決済できるようになります。このサービスは、マイナンバーカードを持っていない住民や法人、司法書士、行政書士などが第三者の証明書を入手する際に、手数料分の定額小為替を事前に購入し郵送する手間とコストを解消します。墨田区でのトライアルでは、郵送請求にかかる時間を約40%削減できることが確認されており、海外在住者が定額小為替を購入すること自体が困難であるという課題も解決します。この取り組みは、住民の利便性を大幅に向上させ、行政側の定額小為替管理や手数料確認業務の負担を軽減するものです。
- 客観的根拠: (出典)富士フイルムシステムサービス株式会社「郵送請求キャッシュレスサービス」2024年3月28日 3
全国自治体の先進事例
福島県伊達市「郵便料金計器の導入による業務効率化」
福島県伊達市では、郵便関連業務の効率化のため「郵便料金計器」を導入しました。この機械は郵便物を通すだけで、重量を瞬時に計測し、承認印と郵便料金を自動で印字する機能があります。導入前は、郵便物の集計作業に毎日合計で2〜3時間かかっていましたが、郵便料金計器の導入により、この作業時間は集荷前の1時間程度に短縮されました。さらに、1時間で最大5,400通の処理が可能となり、約3,000通の介護保険給付通知の封入・封かん作業では、従来の5人70時間から2人2.5時間へと大幅な時間短縮を実現しました。機械を通した郵便物は差出票が不要になったため、郵便物の発送にかかる職員の手間が大幅に軽減され、職員がコア業務に専念できる時間が増加しました。伊達市は今後、操作方法の動画制作・周知を通じて、全庁的な活用を推進していく方針です。
- 客観的根拠: (出典)株式会社JTB通信「郵便料金計器で郵便業務を効率化」2023年 8, (出典)株式会社JTB通信「煩雑な集計業務は日々の悩みの種だった」2023年 9, (出典)ピツニーボウズジャパン株式会社「手作業がゼロに!煩雑な発送業務から解放されました」2023年 7, (出典)株式会社JTB通信「福島県伊達市 郵便料金計器 導入効果 業務時間」 (https://www.jt-tsushin.jp/articles/case/jt29_pitneybowes)
鹿児島県奄美市「電子契約システムの導入」
鹿児島県奄美市では、市内の事業者との契約において電子契約システムを導入しました。この導入により、令和4年6月から令和5年2月までの間に、全体の50%を電子契約に移行することに成功しました。その結果、書類や契約書の印刷、製本、印紙貼付、押印、郵送、回収、ファイリングといった業務に関して、発注側と受注側の双方で人件費の削減に貢献したと報告されています。また、印刷代や郵送費の削減にも成功しています。電子契約の導入は、契約締結プロセスの迅速化だけでなく、紙媒体の管理にかかる物理的・人的コストを大幅に削減し、行政の業務効率化と持続可能性に貢献する好事例です。
- 客観的根拠: (出典)WAN-Sign「地方自治体でのDX導入事例」2023年7月26日 21, (出典)WAN-Sign「鹿児島県奄美市 電子契約 導入効果 人件費削減」 (https://wan-sign.wanbishi.co.jp/blog/localgovernment-dx)
参考資料[エビデンス検索用]
- (出典)高知県「平成30年度定期監査結果報告書」2019年3月 1
- (出典)総務省「郵便切手類模造等取締法」 2
- (出典)マネーフォワードビズインボイス「後納郵便の利用条件や利用シーン」2023年 3
- (出典)株式会社マネーフォワード「後納郵便のデメリット」 4
- (出典)日本郵便株式会社「事業一覧」 5
- (出典)Wikipedia「日本郵政公社」 6
- (出典)DHK「自治体の業務効率化が進まない背景」2024年3月6日 7
- (出典)NTTビジネスソリューションズ株式会社「自治体の郵送業務DX事例」2023年7月26日 8
- (出典)WAN-Sign「地方自治体でのDX導入事例」2023年7月26日 9
- (出典)株式会社JTB通信「郵便料金計器で郵便業務を効率化」2023年 10
- (出典)富士電機株式会社「電子決裁率80%超を達成」2022年 11
- (出典)株式会社リクルート「自治体のペーパーレス化事例」2024年3月6日 12
- (出典)株式会社JTB通信「煩雑な集計業務は日々の悩みの種だった」2023年 13
- (出典)ピツニーボウズジャパン株式会社「手作業がゼロに!煩雑な発送業務から解放されました」2023年 14
- (出典)凸版印刷株式会社「世田谷区と凸版印刷、通知物の電子送付に関する実証事業を開始」2023年6月22日 15
- (出典)株式会社クアディエントジャパン「料金後納郵便のメリット」2023年 16
- (出典)株式会社アテナ「「料金後納」で工数&コスト削減!利用条件と活用方法」2023年 17
- (出典)中野区「郵送による各種証明書の請求方法」2017年9月20日 18
- (出典)中野区「郵送申請(戸籍証明)」2025年4月1日 19
- (出典)日本郵便株式会社「後納郵便物等の他局差出制度」2023年 20
- (出典)品川区「町会・自治会長の個人情報照会について(事業者の方へ)」 21
- (出典)インフォマート株式会社「郵送業務の課題に関する調査」2024年6月29日 22
- (出典)株式会社トッパン「郵便物の発送コスト削減がむずかしい理由とは」2024年6月29日 23
- (出典)株式会社JTB通信「封入・封かん機を使って処理した文書の数」2023年 (https://www.jt-tsushin.jp/articles/case/casestudy_postal_shipping)
- (出典)総務省「デジタル活用支援推進事業」2023年
- (出典)NEXWAY「WEB発行の納品書は仕入先から伝票が届いた翌日に発行できるようになり、スピードが格段にアップした。」 (https://b2bform.nexway.co.jp/case/kyubin/01)
- (出典)ユミルリンク株式会社「郵送からSMS送信への切り替え事例」 (https://www.jt-tsushin.jp/articles/service/platform-ymir-20240905)
- (出典)文京区「事務処理誤り等の発生状況」2023年 24
- (出典)板橋区「板橋区 DX 推進計画 2025」後期実施計画(素案)に対するパブリックコメント 2023年11月 25
- (出典)富士フイルムシステムサービス株式会社「郵送請求キャッシュレスサービス」2024年3月28日 2
- (出典)日本郵便株式会社「行政向け郵送代行サービス導入事例」2023年 26
- (出典)デボーノ「自治体BPO導入の成功事例から学ぶポイント」2023年 27
- (出典)note「自治体から住民へのデジタル通知とは」2023年10月2日 4
- (出典)シャチハタ株式会社「自治体が電子契約を導入する5つのメリット」2023年10月2日 28
- (出典)WAN-Sign「鹿児島県奄美市 電子契約 導入効果 人件費削減」 (https://wan-sign.wanbishi.co.jp/blog/localgovernment-dx)
- (出典)WAN-Sign「茨城県笠間市 電子契約 導入効果 郵送費」 (https://wan-sign.wanbishi.co.jp/blog/localgovernment-dx)
- (出典)株式会社JTB通信「福島県伊達市 郵便料金計器 導入効果 業務時間」 (https://www.jt-tsushin.jp/articles/case/jt29_pitneybowes)
まとめ
東京都特別区における郵券管理と後納郵便の活用は、単なる事務効率化に留まらず、迫り来る郵便料金の値上げに対応し、行政コストを削減する喫緊の課題です。デジタル化の遅れやアナログ業務の多さが職員の負担となり、住民の利便性を損ねる現状を打破するため、デジタル通知の導入、電子申請・決裁の拡大、後納郵便・郵便料金計器の活用、さらには外部委託・BPOの推進といった多角的な支援策が不可欠です。これらの取り組みは、住民サービスの向上、地域社会の環境負荷低減、そして行政の財政健全化と生産性向上に大きく貢献します。
本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。