11 防災

道路・橋梁等の災害対策

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(道路・橋梁等の災害対策を取り巻く環境)

  • 自治体が道路・橋梁等の災害対策を行う意義は「首都機能の維持と都民の生命・財産保護」及び「持続可能なインフラ管理による将来世代への責任」にあります。
  • 我が国の政治・経済の中枢である東京都特別区は、稠密な道路・橋梁ネットワークによってその都市活動が支えられています。これらの社会資本の多くは戦後の高度経済成長期に集中的に整備され、今日、一斉に高齢化の時代を迎えています。
  • これに、首都直下地震という切迫した脅威や、激甚化・頻発化する風水害が加わり、道路・橋梁という基幹インフラの戦略的な防災対策は、単なる公共事業の枠を超え、首都機能の維持、ひいては国家の持続可能性を左右する喫緊の課題となっています。

意義

住民にとっての意義

安全な日常生活の確保
  • 計画的な維持補修や耐震補強は、橋梁の崩落といった致命的な事故を未然に防ぎ、日々の通勤・通学、買い物など、住民の生命と財産を守る上で最も基本的な要件です。
    • 客観的根拠:
      • 従来の事後保全的な管理では、損傷が大きくなってから対策を行うため、安全性に係る問題が深刻化するリスクがあります。
      • (出典)目黒区「橋梁長寿命化修繕計画」令和4年度 1
災害時の避難路・生活路の確保
  • 地震や洪水などの発災時に、住民が安全な場所へ避難するためのルートを確実に確保します。道路の寸断は、避難の遅れに直結し、人命に関わる問題となります。
    • 客観的根拠:
      • 国の第5次社会資本整備重点計画では、「災害時の救命活動等を支える道路の確保」が重点目標の一つとして明確に位置づけられています。
      • (出典)国土交通省「第5次社会資本整備重点計画」令和3年 2

地域社会にとっての意義

救命・救急・消火活動の生命線確保
  • 災害発生直後における消防車や救急車などの緊急車両の通行路を確保することは、一人でも多くの命を救うための絶対条件です。緊急輸送道路の機能不全は、初期消火や救命活動に致命的な遅れをもたらします。
    • 客観的根拠:
      • 緊急輸送道路は、震災時の救急救命・消火活動、物資の輸送、復旧復興の生命線・大動脈であり、沿道建築物の倒壊による道路閉塞を防ぐことは極めて重要です。
      • (出典)墨田区「一般緊急輸送道路沿道建築物 耐震化促進事業」令和6年 3
復旧・復興活動の基盤
  • 機能する道路ネットワークは、復旧作業に従事する人員や、建設資機材、支援物資を被災地へ送り届けるための基盤であり、迅速な復旧・復興の前提となります。
    • 客観的根拠:
      • 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえた耐震補強対策により、東日本大震災では対策済み橋梁の致命的な被害が回避され、震災後の早期復旧活動に寄与しました。
      • (出典)国土交通省「東日本大震災における橋梁耐震補強の効果」平成24年 4

行政にとっての意義

首都機能の維持
  • 道路・橋梁ネットワークの維持は、行政・経済の中枢機能を麻痺させず、災害後も我が国の社会経済活動を持続させるための根幹です。
    • 客観的根拠:
      • 東京都は「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を促進する条例」を施行し、首都機能の維持に不可欠な道路ネットワークの確保を推進しています。
      • (出典)目黒区「特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化5
ライフサイクルコストの縮減と財政の健全化
  • 損傷が深刻化してから巨額の費用を投じる「事後保全」から、軽微なうちに計画的に対策する「予防保全」へ転換することで、インフラの長寿命化とライフサイクルコスト(LCC)の大幅な縮減が可能となり、持続可能な財政運営に貢献します。
    • 客観的根拠:
      • 予防保全的な対応への転換により、橋梁の長寿命化を図るとともに、中長期的な維持管理費用を抑制し、予算の平準化を図ることを多くの自治体が目的としています。
      • (出典)稲城市「稲城市橋梁等長寿命化修繕計画」令和6年 6

(参考)歴史・経過

1995年:阪神・淡路大震災と耐震設計基準の抜本的見直し
2011年:東日本大震災と津波対策の強化
2013年:社会資本メンテナンス元年と予防保全への転換
  • 平成24年(2012年)の中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故を契機に、国は平成25年(2013年)を「社会資本メンテナンス元年」と位置づけました。
  • これ以降、インフラの老朽化対策が国家的な課題となり、地方自治体においても「インフラ長寿命化計画」の策定が実質的に義務化され、対症療法的な管理から計画的な予防保全へと政策が大きく舵を切りました。
2014年以降:国土強靱化基本計画とアセットマネジメントの推進
  • 大規模自然災害から国民の生命・財産を守り、社会の重要な機能を維持するため、「国土強靱化基本計画」が策定されました。
  • この計画に基づき、各自治体ではアセットマネジメント(資産管理)の手法を導入し、膨大なインフラストックを計画的かつ効率的に管理する取り組みが本格化しました。
2021年以降:第5次社会資本整備重点計画とDXの加速
  • 令和3年(2021年)に閣議決定された「第5次社会資本整備重点計画」では、従来の防災・減災対策に加え、インフラ分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーン化(GX)が新たな目標として追加されました。
  • AIやドローン、BIM/CIMといった先端技術を活用し、インフラメンテナンスの効率化・高度化を図る「防災DX」が強力に推進されています。

道路・橋梁等に関する現状データ

インフラの急速な高齢化

高度経済成長期に集中建設された橋梁
  • 特別区が管理する橋梁の多くは、戦後の高度経済成長期(1950年代後半~1970年代前半)に集中的に建設されました。例えば、中野区では管理する104橋(2023年現在)の多くがこの時期に建設されており、近い将来、一斉に高齢化が進むことが予測されています。
建設後50年超の橋梁割合の急増
  • この建設時期の集中は、膨大な数のインフラが一斉に建設後50年という大規模な修繕・更新が必要となる時期を迎えることを意味します。
  • 全国的に見ても、建設後50年を経過する道路橋の割合は、令和3年(2021年)の約28%から、令和13年(2031年)には約53%へと、わずか10年で倍近くに急増すると予測されています。
    • (出典)南都経済研究所「地域経済」2014年6月号 15
  • この傾向は特別区においても顕著です。江東区では、管理する橋梁のうち建設後50年を超えるものの割合は令和7年(2025年)時点で37.6%ですが、30年後には84.7%に達する見込みです。
  • また、大田区では、管理する158橋のうち、令和2年(2020年)時点ですでに44%が建設後50年を超えており、30年後にはその割合が92%に達すると予測されています。

橋梁の健全性評価

定期点検の義務化と健全度区分
  • 平成26年(2014年)の道路法改正により、全ての道路管理者は5年に一度、管理する橋梁の近接目視による定期点検を行うことが義務付けられました。
  • 点検結果は、橋梁の健全性を4段階で評価します。
    • Ⅰ:健全
    • Ⅱ:予防保全段階(機能に支障はないが、予防的な措置が望ましい)
    • Ⅲ:早期措置段階(機能に支障が生じる可能性があり、早期の措置が必要)
    • Ⅳ:緊急措置段階(機能に支障が生じており、緊急の措置が必要)
    • (出典)江東区「江東区橋梁長寿命化修繕計画」令和7年 16
    • (出典)日の出町「日の出町橋梁長寿命化修繕計画」令和7年 18
特別区における健全性の現状
  • 多くの区では、最も危険な「緊急措置段階(Ⅳ)」の橋梁はないと報告されているものの、「早期措置段階(Ⅲ)」や「予防保全段階(Ⅱ)」と判定される橋梁が多数存在し、対策が必要な状況です。
  • 江東区(令和6年度点検): 対象89橋(上下線別)のうち、判定Ⅳは0橋、判定Ⅲが7橋(7.9%)、判定Ⅱが57橋(64.0%)を占めています。
  • 品川区(令和4年度時点): 管理する66橋のうち、判定Ⅳ・Ⅲは存在しないものの、全体の39%が判定Ⅱ(予防保全段階)にあり、計画的な対策が求められています。
  • 新宿区(令和3年度点検結果): 判定Ⅲが28%と、全国平均を大きく上回る高い割合となっており、喫緊の対策が求められる状況です。判定Ⅱも60%を占めています。

首都直下地震による被害想定

道路閉塞の甚大なリスク
  • 東京都が令和4年に公表した最新の被害想定では、都心南部直下地震(マグニチュード7.3、冬の夕方・風速8m/sのケース)において、建物倒壊による緊急輸送道路の閉塞は約189kmに及ぶと予測されています。一般道を含めると、閉塞延長はさらに甚大なものとなります。
橋梁の被害想定
  • 同一のシナリオにおいて、橋梁の被害は、都内で全壊が49橋、半壊が1,232橋に達すると想定されています。橋梁の損傷は、道路ネットワークを面的に寸断する深刻な事態を引き起こします。
交通機能麻痺と帰宅困難者
  • 道路や鉄道といった交通インフラの広範な機能停止により、都内では約292万人の帰宅困難者が発生すると想定されています。交通網の麻痺は、社会経済活動の停止のみならず、多くの都民を危険な状況に晒すことになります。

緊急輸送道路の整備状況

ネットワークの指定
  • 東京都は、災害応急対策を円滑に実施するため、都内約2,060kmの道路を「緊急輸送道路」として指定しています。これらの道路の機能確保は、防災対策の最重要課題です。
耐震化の進捗
  • 緊急輸送道路上の橋梁の耐震化は優先的に進められており、国の目標では、令和7年度までに耐震化率を84%とすることを目指しています(令和元年度実績79%)。
無電柱化の進捗
  • 電柱の倒壊による道路閉塞を防ぐ無電柱化も重要です。中央区では、令和6年3月末時点で緊急道路障害物除去路線の無電柱化率が約63.4%に達しています。
  • 一方、都道全体で見ると、無電柱化率は46%(区部66%、多摩部23%)にとどまっており、特に市区町村道においては対策が遅れているのが現状です。

課題

住民の課題

災害時の安全確保への不安
  • 住民は首都直下地震のリスクを認識しているものの、日常的に利用する身近な道路や橋梁が具体的にどのような状態にあるかを知る機会は少なく、いざという時の避難路の安全性に漠然とした不安を抱えています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都の被害想定では、橋梁の全壊が49橋、半壊が1,232橋と予測されており、住民の生活道路が寸断される具体的なリスクが示されています。
      • (出典)東京都「首都直下地震等による東京の被害想定」令和4年 21
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 災害時にパニックや避難行動の遅れを引き起こし、二次災害のリスクを高めます。
工事による日常生活への影響と合意形成の困難さ
  • 橋梁の架け替えや大規模な耐震補強工事は、長期にわたる騒音や交通規制を伴い、周辺住民や事業者の日常生活・経済活動に大きな影響を与えます。そのため、対策の必要性は理解されつつも、合意形成に時間を要するケースが少なくありません。
    • 客観的根拠:
      • 橋梁の架け替えや大規模補修には、長期にわたる交通規制や迂回が必要となり、地域経済や住民生活に直接的な影響を及ぼすため、丁寧な調整が不可欠です。
      • (出典)世田谷区「世田谷区橋梁長寿命化修繕計画」令和3年 26
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 必要な対策工事が遅延し、インフラの危険な状態が長引くことになります。

地域社会の課題

緊急輸送道路の機能不全リスク
  • 緊急輸送道路上の橋梁一基の落橋や、沿道建物の倒壊による一箇所の道路閉塞が、広域的な救援・救急ルートを寸断し、地域全体の災害対応を麻痺させる「ボトルネック」となる危険性があります。
    • 客観的根拠:
      • 阪神・淡路大震災では、耐震補強されていなかった橋梁の約30%が甚大な被害を受けた一方、耐震補強済みの橋梁では被害率が3%未満であり、耐震対策の有効性が明確に示されています。
      • (出典)内閣府「防災白書」令和5年 27
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 「助かるはずの命が助からない」という最悪の事態を招き、被害が拡大します。
経済活動の停滞と復興の遅延
  • 道路・橋梁の被災は、サプライチェーンを寸断し、物流を停止させ、従業員の通勤を困難にすることで、経済活動を長期にわたり麻痺させます。これは、地域全体の復旧・復興プロセスを大幅に遅らせる要因となります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域経済の基盤が崩壊し、復興が長期化することで人口流出を招きます。

行政の課題

財政的制約と増大する維持管理コスト
  • 高度経済成長期に建設された膨大なインフラが一斉に更新時期を迎えることで、維持管理・更新費用が急増し、各区の財政を著しく圧迫しています。福祉や教育など、他の行政サービスとの予算配分のバランスを取ることが極めて困難な状況です。
    • 客観的根拠:
      • 新宿区の試算では、事後保全型の管理を続けた場合と比較して、予防保全型へ転換することで50年間で約35.3億円(46%)のコスト縮減が可能とされていますが、それでもなお巨額の投資が必要です。
      • (出典)新宿区「新宿区橋りょう長寿命化修繕計画(令和5年度改定版)」令和5年 20
      • 世田谷区の令和4年度決算では、土木費が都市計画道路用地取得経費の増などにより前年度比11.9%(38億6923万円)増加しており、インフラ関連経費の増大が財政に与える影響の大きさを示しています。
      • (出典)世田谷区「令和4年度 区の決算状況」令和5年 28
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 必要な対策が先送りされ、将来的にさらに高コストな架け替えが必要となり、財政が破綻します。
専門技術職員の不足と技術継承の困難
  • 膨大な数のインフラの点検・診断、補修・更新工事の計画・設計・監督を担うべき土木・建築系の専門技術職員が、多くの自治体で慢性的に不足しています。特に経験豊富な中堅・ベテラン職員の退職が進む一方で、若手への技術継承も大きな課題となっています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • インフラメンテナンスの質の低下や計画の遅延を招き、公共の安全を脅かします。
区ごとの取り組みの格差と連携不足
  • 道路・橋梁の老朽化という課題は特別区共通であるものの、各区の財政力、技術職員の体制、計画策定のノウハウには差が存在します。これにより、区によって防災対策の進捗にばらつきが生じ、「防災力の格差」が生まれる懸念があります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 東京全体として見た場合に、特定の脆弱な区が全体の防災ネットワークの弱点となります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
    • 即効性・波及効果: 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
    • 実現可能性: 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
    • 費用対効果: 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。特にライフサイクルコスト(LCC)の観点を重視します。
    • 公平性・持続可能性: 特定の地域・年齢層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、一時的ではなく長期的に効果が持続する施策を高く評価します。
    • 客観的根拠の有無: 国の計画や白書、先行事例での成功実績があり、効果が実証されている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 道路・橋梁の災害対策は、「①基盤となる管理体制の変革」、「②最重要路線の機能死守」、「③リソース不足を克服する技術革新」の3つの階層で捉え、統合的に推進する必要があります。
  • 最も優先度が高い施策は**「支援策①:予防保全型アセットマネジメントの高度化」**です。これは、全ての対策の質と効率を決定づける土台であり、計画的・効率的な投資を可能にすることで、最も費用対効果と持続可能性に優れるためです。
  • 次に、人命に直結する**「支援策②:緊急輸送機能の徹底強化」**にリソースを集中投下します。これは即効性が高く、住民の安全確保という行政の最大責務を果たすために不可欠です。
  • これら2つの施策を強力に下支えし、かつ長期的な実現可能性を高めるのが**「支援策③:DXと新技術導入によるメンテナンス革命」**です。深刻な人材不足とコスト増という構造的課題を解決する鍵となります。

各支援策の詳細

支援策①:予防保全型アセットマネジメントの高度化

目的
  • 従来の損傷が深刻化してから対応する対症療法的な「事後保全」から、損傷が軽微なうちに対策する「予防保全」へ完全に移行します。
  • これにより、橋梁等の長寿命化を図り、中長期的なライフサイクルコスト(LCC)の縮減と、年度ごとの予算の平準化を実現します。
    • 客観的根拠:
      • 予防保全への転換により、30年後の維持管理・更新費が事後保全に比べ約5割減少するとの試算があります。
      • (出典)国土交通省「今後のメンテナンスのあり方について31
      • 品川区では、長寿命化修繕計画に基づく予防保全への転換により、事後保全型と比較して約273億円のLCC縮減効果を見込んでいます。
      • (出典)品川区「品川区橋梁長寿命化修繕計画」令和4年 19
主な取組①:橋梁長寿命化修繕計画のPDCAサイクル徹底
  • 5年に一度の定期点検結果を確実に計画に反映し、ローリング方式で常に最新の状態に計画を更新するPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを徹底します。
  • 健全性の評価だけでなく、路線の重要度(緊急輸送道路、バス路線、第三者被害の大きさ等)を掛け合わせた客観的な優先順位付けを厳格に適用し、限られた予算を最も効果的な箇所に投じます。
    • 客観的根拠:
      • 全国の自治体で、5年ごとの定期点検結果に基づき長寿命化修繕計画を更新する取り組みが進められています。
      • (出典)中野区「橋梁長寿命化修繕計画」令和5年 14
      • 品川区では、健全性の判定区分と路線の「重要度」から補修順序を定め、計画的に実施する手法を採用しています。
      • (出典)品川区「品川区橋梁長寿命化修繕計画」令和4年 19
主な取組②:アセットマネジメントシステムの導入・活用
  • 橋梁諸元、点検データ、補修履歴、コスト情報等を一元的に管理するデータベース(橋梁台帳システム)を構築・活用します。
  • 将来的には、東京都が導入しているような、道路利用者が受ける便益(Benefit)と対策費用(Cost)を定量的に評価し、投資の優先順位を科学的に最適化する高度なシステムの導入を目指します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都建設局は、道路資産の財務情報と技術情報を統合管理し、最適な中長期計画を立案する「道路アセットマネジメントシステム」を平成18年度から運用しています。
      • (出典)東京都建設局「東京都道路アセットマネジメント13
      • アセットマネジメントは、下水道事業など他のインフラ分野でも、資産を計画的かつ効果的に管理する手法として導入が進んでいます。
      • (出典)東京都下水道局「東京都下水道事業経営計画202132
主な取組③:集約・撤去を含む戦略的ストックマネジメント
  • 利用状況が著しく低い橋梁や、近接して代替可能なルートが存在する橋梁については、維持・更新を前提とせず、「集約・撤去」も選択肢として具体的に検討します。
  • 公共施設等総合管理計画と連携し、道路・橋梁を単体で捉えるのではなく、地域全体のインフラ配置の最適化という視点で戦略的なストックマネジメントを推進します。
    • 客観的根拠:
      • 国の第5次社会資本整備重点計画では、人口減少下における持続可能なインフラメンテナンスの施策として、「集約・再編等によるインフラストックの適正化」が明確に位置付けられています。
      • (出典)国土交通省「第5次社会資本整備重点計画」令和3年 2
      • 大田区の長寿命化修繕計画では、「将来の区の姿を見据えた撤去・集約化を踏まえて老朽化対策に努める」ことが方針として盛り込まれています。
      • (出典)大田区「橋梁長寿命化修繕計画(令和4年度一部改定版)」令和4年 17
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 50年間の橋梁維持管理ライフサイクルコストを30%削減(事後保全型管理との比較)
    • データ取得方法: 長寿命化修繕計画に基づくLCCシミュレーションの定期更新・比較
  • KSI(成功要因指標)
    • 健全性Ⅲ・Ⅳと判定された橋梁の5年以内の措置完了率100%
    • データ取得方法: 橋梁台帳と修繕工事実績の照合
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 健全性Ⅱの橋梁が健全性Ⅲへ劣化する橋梁数の年率を50%低減
    • データ取得方法: 定期点検結果の経年変化分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 長寿命化修繕計画に基づく年間修繕実施橋梁数
    • データ取得方法: 工事発注・完了実績の集計

支援策②:緊急輸送機能の徹底強化

目的
  • 首都直下地震等の発災時において、人命救助と首都機能維持の生命線となる「緊急輸送道路」の通行機能を絶対に確保します。
  • 沿道建築物の倒壊、橋梁の落橋、電柱倒壊といった道路閉塞の3大リスクを徹底的に排除し、強靭な道路ネットワークを構築します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都地域防災計画では、約2,060kmの緊急輸送道路が指定されており、その機能確保が最重要課題とされています。
      • (出典)東京都防災会議「東京都地域防災計画22
      • 国の第5次社会資本整備重点計画においても、「災害時の救命活動等を支える道路の確保」「災害に強い道路ネットワークの構築」が重点目標として掲げられています。
      • (出典)国土交通省「第5次社会資本整備重点計画」令和3年 2
主な取組①:緊急輸送道路沿道建築物の耐震化促進
  • 「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」に基づき、特に重要な「特定緊急輸送道路」沿道建築物の耐震診断義務化の履行を徹底します。
  • 助成制度を拡充し、耐震改修・建替えを強力に推進します。特に、倒壊時に道路を完全に閉塞する可能性の高い建物(高さが道路幅員の概ね1/2を超えるもの等)にターゲットを絞り、個別訪問による働きかけも強化します。
  • 主な取組②:橋梁の耐震補強(ランクアップ)の加速
  • 緊急輸送道路上の橋梁について、現行の道路橋示方書で求められる耐震性能を確保するための耐震補強(落橋防止、変位制限、支承補強等)を最優先で加速させます。
  • 特に、高速道路や国道をまたぐ跨道橋など、被災した場合の影響が極めて大きいネットワーク上の重要橋梁から優先的に実施します。
    • 客観的根拠:
      • 国土交通省は、高速道路・直轄国道やこれらをまたぐ跨道橋等のロッキング橋脚について、2021年度までに約450橋の耐震補強を完了させるなど、重点的に対策を進めています。
      • (出典)国土交通省道路局「道路の防災対策35
      • 耐震補強の優先度評価には、AHP(階層化意思決定法)などを用いて、路線の重要性や社会的影響度を考慮した科学的な手法を用いることが有効です。
      • (出典)土木研究所「既設道路橋の耐震補強の優先度評価手法に関する一考察36
主な取組③:無電柱化の推進
  • 緊急輸送道路における無電柱化を加速します。特に、災害拠点病院へのアクセス路や主要な避難路、復興拠点となる駅周辺などを優先整備エリアとします。
  • 電線共同溝方式だけでなく、工期やコストを縮減できる浅層埋設や小型ボックス活用など、地域の状況に応じた多様な低コスト手法を積極的に採用し、事業スピードを向上させます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都は「東京都無電柱化計画」に基づき、第一次緊急輸送道路の無電柱化率を平成36年度(2024年度)末までに50%に、環状七号線は100%完了させる目標を掲げています。
      • (出典)東京都建設局「東京都無電柱化計画37
      • 市街地の緊急輸送道路約19,380kmのうち、無電柱化着手率は約38%(令和4年時点)にとどまっており、目標達成には一層の加速が必要です。
      • (出典)国土交通省「無電柱化の推進について38
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 都心南部直下地震クラスの地震発生時における、緊急輸送道路の閉塞ゼロ
    • データ取得方法: 災害発生後の実地調査、および被害想定シミュレーションによる評価
  • KSI(成功要因指標)
    • 特定緊急輸送道路沿道建築物の耐震化率100%
    • データ取得方法: 各区の建築指導課等による耐震化状況調査・集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 緊急輸送道路上の橋梁の耐震補強率100%
    • データ取得方法: 橋梁台帳における耐震対策実施状況の集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 年間の無電柱化整備延長(km)
    • データ取得方法: 道路管理部門による事業実績の集計

支援策③:DXと新技術導入によるメンテナンス革命

目的
  • ドローン、AI、IoTセンサー、BIM/CIM等のデジタル技術を全面的に導入し、橋梁の点検・診断から設計・施工、維持管理に至る全プロセスを抜本的に効率化・高度化します。
  • 深刻化する技術者不足という最大のボトルネックを技術で補い、メンテナンスの質を向上させることで、安全性の確保とコスト縮減を両立します。
    • 客観的根拠:
      • 国の「国土強靱化基本計画」や「第5次社会資本整備重点計画」では、防災分野におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進が重点項目として明確に位置づけられています。
      • (出典)内閣官房「国土強靱化基本計画12
      • (出典)国土交通省「第5次社会資本整備重点計画」令和3年 2
      • 大田区では、ドローンや非破壊検査技術の導入を計画に盛り込み、「メンテナンスの新次元」を目指す方針を掲げています。
      • (出典)大田区「橋梁長寿命化修繕計画(令和4年度一部改定版)」令和4年 17
主な取組①:ドローン・AIを活用した点検・診断の自動化・省力化
  • 高所や河川上、鉄道上など、人が容易にアクセスできない箇所の点検にドローンを活用し、足場設置等の仮設コストを削減するとともに、作業の安全性を飛躍的に向上させます。
  • 撮影した高精細画像からAIがひび割れや錆などの変状を自動で検出し、損傷図を作成します。これにより、点検調書作成にかかる内勤作業を大幅に省力化します。
    • 客観的根拠:
      • 国の「インフラメンテナンスにおける新技術導入の手引き」では、AIやロボット技術の活用により、点検業務の効率化・省人化が可能であることが示されています。
      • (出典)国土交通省「インフラメンテナンスにおける新技術導入の手引き(案)」
      • 山口県では、産学官連携で開発したAI診断システムを導入し、点検の総作業時間を約2割削減するとともに、点検者による評価のばらつきを抑制する成果を上げています。
      • (出典)国土交通省「第7回インフラメンテナンス大賞 受賞者一覧」
主な取組②:センサーによる常時遠隔モニタリング
  • 特に重要度が高い橋梁や、変状が進行している橋梁に、傾斜や振動、変位を計測するIoTセンサーを設置し、24時間365日の常時監視体制を構築します。
  • 異常な挙動を早期に検知し、突発的な事故を未然に防ぐとともに、平常時のデータ蓄積により劣化予測の精度を高め、点検の頻度を最適化します。
    • 客観的根拠:
      • 近畿大学と東京都目黒区が協力した実証実験では、IoTセンサーによる遠隔監視が、従来の人的点検を補完する有効な手段であることが示されています。
      • (出典)株式会社パスコ「(https://www.pasco.co.jp/biz/service/infraeye/)」 39
      • 国の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)においても、各種センサーを活用した統合型診断システムが開発・実証されています。
      • (出典)科学技術振興機構「(https://www.jst.go.jp/sip/dl/k07/sip_infra_seika2018.pdf)」 40
主な取組③:BIM/CIMの導入によるライフサイクル管理
  • 橋梁の設計・施工段階から3次元モデル(BIM/CIM)を導入し、維持管理段階での活用を前提としたデジタルツインを構築します。
  • 構造物の形状、部材、材質、点検・補修履歴といったあらゆる情報を3次元モデルに統合することで、関係者間の情報共有を円滑化し、修繕計画や災害シミュレーションの精度を飛躍的に向上させます。
    • 客観的根拠:
      • 国土交通省は直轄工事でのBIM/CIM活用を原則化しており、令和4年度には994件で活用されるなど、公共事業における標準技術となりつつあります。
      • (出典)国土交通省「BIM/CIMポータルサイト」
      • 横浜市など先進自治体では、下水道施設等でBIM/CIM導入を進め、施設情報の一元管理とライフサイクルコストの最適化を目指しています。
      • (出典)横浜市「下水道事業におけるBIM/CIMの活用について」
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 橋梁点検・診断にかかる現場作業および内勤作業時間を全体で50%削減
    • データ取得方法: 従来手法と新技術導入後の業務プロセス分析・作業時間の実績比較
  • KSI(成功要因指標)
    • 新技術(ドローン、AI、センサー等)を導入した点検・管理の割合を全管理橋梁数の50%以上とする
    • データ取得方法: 点検業務発注仕様書と実績報告の集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • AI画像解析による点検調書作成時間を80%削減
    • データ取得方法: AI解析システム等の導入前後での作業時間比較
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • BIM/CIMモデルを導入した橋梁数(新規建設・既存橋梁)
    • データ取得方法: アセットマネジメントシステムにおける導入実績の記録

先進事例

東京都特別区の先進事例

品川区「戦略的維持管理によるLCCの大幅縮減」

  • 品川区は、管理する66橋を対象に、予防保全を基本とした長寿命化修繕計画を策定・運用しています。5年に1度の定期点検結果に基づき計画を更新するPDCAサイクルを確立し、健全性に基づく客観的な優先順位付けとライフサイクルコスト(LCC)の最小化を徹底しています。
  • この計画的な対策により、事後保全型と比較して約273億円ものLCC縮減効果を見込んでおり、財政的にも大きな成果を上げています。

大田区「新技術活用によるメンテナンスの新次元への挑戦」

  • 大田区は、橋梁長寿命化修繕計画において、「新技術の活用方針」を明確に位置づけています。空中・水中ドローンや非破壊検査技術を積極的に導入し、点検の安全性と診断精度を向上させることを目指しています。
  • 「メンテナンスの新次元を切り開く」という先進的なビジョンを掲げ、技術革新を前提としたインフラ管理を推進している点が特徴です。

新宿区「データに基づく財政効果の見える化」

  • 新宿区は、平成23年度からいち早く長寿命化修繕計画を策定し、予防保全型管理への転換を推進しています。特に注目すべきは、データに基づく財政効果の「見える化」です。
  • 予防保全(橋梁寿命を120年と設定)と事後保全(寿命を80年と設定)の2つのシナリオでLCCを詳細にシミュレーションし、予防保全への移行により50年間で約35.3億円(46%)のコスト縮減が可能であることを定量的に示しました。この客観的データは、庁内での予算確保や議会での合意形成を進める上で、極めて強力な根拠となりました。

全国自治体の先進事例

藤枝市(静岡県)「橋梁点検業務のデジタル化実証実験」

  • 藤枝市は、橋梁点検業務の効率化を目指し、デジタル技術を活用した実証実験を実施しました。現場でタブレット端末から写真や損傷状況を直接入力することで、その場で調書作成を完了させるシステムを構築しました。
  • 東北大学や地元の測量設計会社と連携した産学官の体制を構築し、現場の課題解決に直結した技術開発を行った結果、点検業務にかかる時間と労力の大幅な削減を実現し、技術職員の負担軽減に繋げています。
    • 客観的根拠:
      • (出典)藤枝市「橋梁点検業務の効率化に向けて、デジタル化の実証実験を実施」

複数の自治体「市民協働によるインフラ見守り活動」

  • 全国の自治体で、「道守(みちもり)」に代表されるような、研修を受けた市民ボランティアが日常の暮らしの中で道路や橋梁の異常を発見し、行政に通報する仕組みが導入されています。
  • 行政の限られたリソースを補完し、地域全体でインフラの安全を維持する先進的な取り組みです。東京都道路整備保全公社が運営する「東京ブリッジサポーター」も同様の制度であり、令和5年度末時点で310名が認定されています。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区の道路・橋梁は、インフラの集中的な高齢化、激甚化する自然災害、深刻な技術者不足という三重苦に直面しています。この複合的危機を乗り越えるには、対症療法的な修繕から脱却し、「予防保全型アセットマネジメント」を基軸に据えることが不可欠です。最優先で人命を守る「緊急輸送機能の徹底強化」と、リソース不足を克服する「DX・新技術の導入」を両輪で進めることで、安全で強靭、かつ持続可能な首都・東京の基盤を次世代に引き継ぐことができます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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