15 教育

道徳教育の推進

masashi0025
目次
  1. はじめに
  2. 道徳に関する現状データ
  3. 課題
  4. 行政の支援策と優先度の検討
  5. 先進事例
  6. 参考資料［エビデンス検索用］
  7. まとめ

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要（道徳教育を取り巻く環境）

  • 自治体が道徳教育に関する支援を行う意義は、「多様化・複雑化する社会を生き抜くための非認知能力の育成」と「共生社会の実現に向けた規範意識の醸成」にあります。
  • 2018年度（小学校）および2019年度（中学校）から全面実施された「特別の教科 道徳」は、従来の読み物中心の指導から、子どもたちが自ら考え、対話し、多面的・多角的に物事を捉える力を育むことを目指す大きな転換点となりました。
  • しかし、この教育改革は、急速なデジタル化、家族形態や価値観の多様化、社会の複雑化といった現代的な課題の中で、多くの困難に直面しています。本記事では、これらの課題を客観的なデータに基づいて分析し、東京都特別区が実施すべき具体的な行政支援策を提案します。

意義

こどもにとっての意義

多角的な思考力と判断力の育成
  • ひとつの正解がない問題に対して、多様な視点から物事を分析し、自分なりの答えを導き出す訓練を通じて、複雑な実社会の課題に対応する思考力と判断力を養います。
自己肯定感と人間関係形成能力の向上
  • 授業での対話や内省を通じて、自分自身や他者への理解を深めます。これにより、自己肯定感を高め、他者を尊重し、良好な人間関係を築くための基礎を育みます。
いじめ等の問題への主体的な対応力
  • 公平、公正、思いやり、生命の尊重といったテーマについて深く考えることで、いじめなどの不正義を認識し、傍観者にならず主体的に行動しようとする態度を育成します。
情報モラルとデジタル・シティズンシップの涵養
  • ネットいじめやフェイクニュースといった現代的な課題を題材に、デジタル空間における倫理的な行動規範を学び、責任ある情報社会の一員としての態度（デジタル・シティズンシップ）を身につけます。

保護者にとっての意義

家庭での対話のきっかけ創出
  • 道徳の授業で扱われたテーマが、家庭内で親子が価値観や倫理的な問題について話し合うきっかけとなり、相互理解を深める機会を提供します。
学校の教育方針への理解深化
  • 学校が学力だけでなく、子どもの人格的成長をどのように支援しようとしているのかを具体的に知ることができ、学校の教育方針への理解と信頼を深めます。
子どもの悩みを早期に察知する機会
  • 授業の感想などを通じて、子どもが友人関係や倫理的なジレンマで抱えている悩みを早期に察知し、適切にサポートする手がかりを得ることができます。

学校・教師にとっての意義

体系的な道徳教育の実践
  • 学習指導要領に基づいた検定教科書と年間指導計画を用いることで、場当たり的ではない、体系的かつ継続的な道徳教育を実践することが可能になります。
児童生徒の多面的な理解
  • 授業中の発言や記述から、学力テストでは測れない児童生徒の内面的な価値観、悩み、関心事を把握でき、より深い生徒理解に基づいた指導が可能になります。
学級経営の安定化
  • クラス全体で価値観や規範について考える機会を共有することで、互いを尊重し、支え合う雰囲気が醸成され、安定した学級経営につながります。

地域社会にとっての意義

次世代の規範意識の醸成
  • 社会のルールや他者への配慮といった規範意識を身につけた次世代を育成することは、長期的に見て安全で安心な地域社会の維持に不可欠です。
共生社会の基盤構築
  • 多様性を尊重し、異なる背景を持つ人々と共に生きていくための共感力やコミュニケーション能力を育むことは、インクルーシブな共生社会を実現するための基盤となります。

行政にとっての意義

いじめ・不登校等の課題への根源的アプローチ
  • 道徳教育への支援は、いじめや不登校といった問題行動の背景にある自己肯定感の低さや人間関係の問題に根源的にアプローチする「上流」の施策であり、予防的な効果が期待できます。
教育政策に対する住民の信頼確保
  • 学力向上だけでなく、子どもの全人的な成長を重視する姿勢を示すことで、行政の教育政策に対する保護者や地域住民からの信頼と支持を得ることができます。

（参考）歴史・経過

  • 1947-1958年
    • 第二次世界大戦後、修身科が廃止され、道徳教育は社会科などの教科の中で統合的に扱われました。
  • 1958年
    • 青少年の道徳的荒廃への社会的懸念を背景に、教科以外の領域として「道徳の時間」が特設されました。
  • 2015年
    • 文部科学省が学習指導要領の一部改正を告示し、道徳の時間を「特別の教科 道徳」として位置づけ、教科化を決定しました。
  • 2018年
    • 小学校で「特別の教科 道徳」が全面実施されました。検定教科書の使用と、数値によらない評価の導入が大きな変更点です。
  • 2019年
    • 中学校で全面実施され、小中学校での教科化が完了しました。
  • 2020年代
    • 教科化後の課題である、教員の指導力・評価力向上、デジタル社会に対応した内容の充実、家庭・地域との連携強化などが、喫緊の政策課題となっています。

道徳に関する現状データ

いじめの認知件数と態様の変化
  • 全国の小中高等学校におけるいじめの認知件数は、令和4年度に681,948件と過去最多を更新しました。これは、いじめを積極的に認知するよう方針転換した成果である一方、問題の深刻化を示唆しています。
    • 客観的根拠：
      • 東京都内の認知件数は令和4年度で66,697件でした。
      • 態様別に見ると、特に「パソコンや携帯電話等での誹謗・中傷」いわゆるネットいじめが全国で23,921件に達し、5年前（平成29年度：12,632件）からほぼ倍増しています。この傾向は、教員から見えにくく、24時間継続する深刻な被害につながりやすい特徴があります。
      • （出典）文部科学省「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」令和5年 1
小・中学校の不登校児童生徒数
  • 病気や経済的理由を除き年間30日以上欠席した不登校児童生徒数は、令和4年度に全国で299,048人（前年度比22.1%増）と過去最多となり、10年連続で増加しています。
    • 客観的根拠：
      • 東京都の小中学校における不登校児童生徒数も、令和4年度に26,134人と過去最多を記録しました。
      • 不登校の要因として最も多いのは、小中学校ともに「無気力・不安」であり、いじめや友人関係をめぐる問題も依然として高い割合を占めています。これは、学校生活における人間関係や自己肯定感の問題が、不登校の大きな引き金となっていることを示しています。
      • （出典）文部科学省「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」令和5年 1
児童生徒の自己肯定感
  • 日本の子どもたちの自己肯定感の低さは、国際比較でも長年の課題です。
    • 客観的根拠：
      • 内閣府の調査によると、「自分は価値のある人間だと思う」と回答した日本の若者（13～29歳）は45.9%にとどまり、米国（84.1%）、韓国（73.6%）、英国（79.0%）など他国を大きく下回っています。
      • 自己肯定感の低さは、他者への共感や、困難な状況で倫理的な判断を下す自信の欠如につながる可能性があり、道徳性の基盤を揺るがす深刻な課題です。
      • （出典）内閣府「令和4年度 子供・若者の意識に関する調査」令和5年 4
教員の多忙化と道徳教育への意識
  • 教員の長時間労働は依然として深刻であり、これが道徳教育の質を確保する上での大きな障壁となっています。
    • 客観的根拠：
      • 文部科学省の調査では、中学校教員の1日の在校時間は平日で平均10時間45分に及びます。
      • 一方、国立教育政策研究所の調査では、9割以上の教員が道徳教育の重要性を認識しているにもかかわらず、「考え、議論する道徳」の授業計画・実践に自信があると回答した中学校教員は約4割にとどまっています。この「重要性認識と実践自信度のギャップ」は、教員が理想的な授業を行うための準備時間や研修機会が不足していることを浮き彫りにしています。
      • （出典）文部科学省「教員勤務実態調査（令和４年度）」令和5年 7
      • （出典）国立教育政策研究所「『特別の教科 道徳』の実施状況に関する調査」令和4年 9

課題

こどもの課題

複雑化するいじめと人間関係
  • いじめが、物理的・言語的なものから、SNSなどを介した精神的・関係性的なものへとシフトし、より陰湿化・不可視化しています。子どもたちは、冗談や仲間内のやり取りとの境界が曖昧な中で、加害者にも被害者にも傍観者にもなり得る複雑な人間関係に直面しています。
    • 客観的根拠：
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 深刻な精神的苦痛による不登校や自殺リスクの増大、他者への不信感が固定化します。
情報社会における道徳的判断の困難さ
  • 子どもたちは日常的にインターネットを通じて、真偽不明の情報、偏った意見、ヘイトスピーチ、加工された自己イメージなどに晒されています。このような情報過多の環境で、何が正しく、何を信じるべきかという道徳的な判断軸を自ら確立することが極めて困難になっています。
    • 客観的根拠：
      • 総務省「令和4年通信利用動向調査」によると、13～19歳のインターネット利用率は98.2%に達し、小学生の利用も急増しています。しかし、同省の別調査では、フェイクニュースを見抜く自信がないと答えた若年層は6割を超えています。
      • （出典）総務省「令和4年通信利用動向調査」令和5年 10
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 誤情報に扇動されたり、無自覚にネット上の加害行為に加担したりするリスクが高まります。
自己肯定感の低さと同調圧力
  • 自己肯定感の低さは、自分の意見や判断に自信が持てない状況を生み出し、周囲の意見や場の空気に流されやすくなる「同調圧力」への脆弱性につながります。これにより、いじめを見て見ぬふりをするなど、本心とは異なる不本意な行動をとってしまうことがあります。
    • 客観的根拠：
      • 内閣府「令和4年度 子供・若者の意識に関する調査」で、「自分には長所がある」と感じている日本の若者は62.3%で、米国（92.9%）やドイツ（93.4%）と比べて著しく低い水準です。
      • （出典）内閣府「令和4年度 子供・若者の意識に関する調査」令和5年 4
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 主体的な意思決定を避け、いじめの傍観者になったり、安易に不正行為に同調したりする傾向が強まります。

保護者の課題

家庭における道徳教育の困難さ
  • 共働き世帯の増加や長時間労働により、親子がじっくり対話する時間が物理的に減っています。また、ネットトラブルなど新たな課題に対して、保護者自身が知識や経験不足から、子どもにどう指導すればよいか分からず悩んでいるケースが増えています。
    • 客観的根拠：
      • 内閣府「令和元年版 子供・若者白書」によると、「子育てについて悩みや不安を感じる」保護者は61.7%に上り、その内容として「しつけの仕方がわからない」が上位に挙げられています。
      • （出典）内閣府「令和元年版 子供・若者白書」令和元年 12
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 学校と家庭の価値観に乖離が生じ、子どもが混乱するだけでなく、道徳教育の効果が減殺されます。
学校への過度な期待と責任転嫁
  • 家庭でのしつけが困難になる中、子どもの道徳性育成の役割を学校に過度に期待し、責任を委ねてしまう傾向が見られます。これにより、問題が発生した際に、学校の指導を一方的に非難するなど、建設的な連携が困難になることがあります。
    • 客観的根拠：
      • ベネッセ教育総合研究所の調査では、保護者の約7割が「子どものしつけや道徳観の育成は、学校にもっと力を入れてほしい」と回答しており、家庭の役割と学校の役割の境界が曖昧になっています。
      • （出典）ベネッセ教育総合研究所「第6回学習基本調査」平成30年 14
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 学校と保護者の連携が困難になり、問題発生時に協力体制が築けず、子どもの不利益につながります。

学校・教師の課題

「特別の教科 道徳」の質の担保
  • 教科化に伴い導入された「考え、議論する道徳」の実践には、高度なファシリテーション能力や、多様な意見を引き出し、まとめる指導技術が求められます。しかし、多くの教員がそのための専門的な研修を十分に受けておらず、授業の質の確保に苦慮しています。また、数値化できない道徳性をどのように評価し、児童生徒にフィードバックするかは、現場の大きな悩みです。
    • 客観的根拠：
      • 国立教育政策研究所の調査では、「道徳科の評価」に困難を感じている教師は小学校で68.3%、中学校で75.1%に上ります。特に「多面的・多角的な見方ができているか」の評価が難しいとされています。
      • （出典）国立教育政策研究所「『特別の教科 道徳』の実施状況に関する調査」令和4年 9
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 道徳の授業が形骸化し、本来の目的である思考力や判断力の育成が達成されません。
教員の多忙化による準備不足
  • 道徳の授業は、他の教科以上に教材研究や発問の精選、児童生徒の実態に合わせた展開の工夫など、入念な準備が必要です。しかし、教員の過重な業務負担が、そのための時間を奪い、結果として質の高い授業実践を困難にしています。
    • 客観的根拠：
      • 文部科学省「教員勤務実態調査（令和４年度）」によると、中学校教員の1週間の学内総勤務時間は平均53時間47分で、このうち授業準備時間は平均3時間45分にとどまっています。
      • （出典）文部科学省「教員勤務実態調査（令和４年度）」令和5年 7
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 授業の質が低下し、子どもの知的好奇心や探究心を引き出せず、道徳が「退屈な科目」と認識されます。
多様な背景を持つ児童生徒への対応
  • 外国にルーツを持つ児童生徒や、多様な家庭環境で育つ児童生徒が増加する中、特定の文化や価値観を前提とした授業展開は困難になっています。全ての児童生徒が安心して参加できる、インクルーシブな道徳教育を実践するための知見や教材が不足しています。
    • 客観的根拠：
      • 文部科学省の調査では、公立学校に在籍する日本語指導が必要な児童生徒数は、令和4年度に67,693人（外国人児童生徒）と過去最高を更新しています。東京都特別区にも多く在籍しています。
      • （出典）文部科学省「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査（令和4年度）」令和5年
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 特定の価値観の押し付けになり、多様性を尊重する教育の理念と逆行する可能性があります。

行政の課題

研修・支援体制の不十分さ
  • 道徳が教科化され、指導内容が大きく変化したにもかかわらず、教員を支える行政の研修・支援体制がその変化に追いついていません。集合研修が中心で、各学校の個別の課題に対応した実践的な支援や、授業改善に直結する専門的なアドバイスを受けられる機会が限られています。
    • 客観的根拠：
      • 東京都教育委員会の調査では、教員研修について「多忙で参加が難しい」「内容が実践的でない」といった意見が依然として多く、特に道徳科の授業づくりに直結する研修へのニーズが高いことが示されています。
      • （出典）東京都教育委員会「教員育成指標に関する調査報告書」令和4年度 17
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 教員のスキルアップが停滞し、教育の質の地域間・学校間格差が拡大します。
施策効果の客観的な評価指標の欠如
  • 道徳教育に関する行政施策の効果は、いじめの件数や不登校者数の増減など、様々な要因が絡むため、直接的に測定することが困難です。そのため、施策の評価が「研修の実施回数」といったアウトプット指標に偏りがちで、EBPM（証拠に基づく政策立案）の観点から施策の有効性を証明し、予算を確保することが難しい状況にあります。
    • 客観的根拠：
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 効果の低い施策が継続され、限られた予算が非効率的に使われる可能性があります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、教員の負担軽減や授業の質の向上など、複数の課題解決に横断的に貢献する施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現行の法制度や予算、人員体制の中で、比較的速やかに着手でき、持続可能な運営が見込める施策を優先します。
  • 費用対効果
    • 投じる予算や人員に対して、いじめや不登校の減少に伴う社会的コストの削減など、長期的かつ大きな便益が見込める施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の学校や教員だけでなく、区内全ての児童生徒が恩恵を受けられる公平な施策であり、一過性でなく長期的に継続できる制度設計を持つ施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 先進自治体での成功事例や、各種調査研究によって効果が示唆されている、エビデンスに基づいた施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 提案する支援策は、「教員のエンパワーメント」「協働的なエコシステムの構築」「デジタル変革への対応」という3つの柱で構成されます。
  • **最優先（優先度：高）**と位置づけるのは、支援策①「道徳教育推進コア・ティーチャー」制度の創設と全校配置です。教育の質は最終的に教員の質に依存するため、学校現場で直接教員を支え、専門性を高めるこの施策は、最も即効性と波及効果が期待できる中核的な取り組みです。
  • **次点（優先度：中）**は、支援策②家庭・地域・専門機関と連携する「スクール・モラル・エコシステム」の構築です。道徳教育は学校だけで完結するものではなく、社会全体で子どもを育む体制を築くことが不可欠であり、教員の負担軽減にも繋がります。
  • **（優先度：中）**として、支援策③デジタル・シティズンシップ教育の体系化と教材プラットフォームの開発も同様に重要です。これは、現代社会で最も喫緊かつ深刻化している情報モラルの課題に直接対応するものであり、他の施策と並行して早急に進めるべきです。

各支援策の詳細

支援策①：「道徳教育推進コア・ティーチャー」制度の創設と全校配置

目的
  • 各学校に道徳教育の専門家を配置し、教員の授業力向上と負担軽減を同時に実現します。
  • 道徳科の授業が形骸化することを防ぎ、本来の「考える道徳、議論する道徳」を全校で実践します。
    • 客観的根拠：
      • 国立教育政策研究所の調査で、道徳教育の推進役となる教員が校内にいる学校では、授業改善の取り組みが活発であると報告されています。
      • （出典）国立教育政策研究所「『特別の教科 道徳』の実施状況に関する調査」令和4年 9
主な取組①：コア・ティーチャーの選定と専門研修
  • 各小中学校から、道徳教育に意欲と適性のある教員を1～2名選出します。
  • 選出された教員を対象に、区教育委員会が主催する高度な専門研修（年間100時間程度を想定）を実施します。
  • 研修内容は、授業設計論、ファシリテーション技術、形成的評価の手法、児童生徒の心に寄り添うカウンセリングマインド、最新の情報モラル指導法など、理論と実践を往還するものとします。
    • 客観的根拠：
      • 教員研修の効果測定に関する研究では、長期的かつ実践的な研修（OJT連動型）が、短期的な座学研修よりも授業実践の改善に2.8倍効果的であることが示されています。
      • （出典）大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構「教育効果測定に関するメタ分析」令和3年
主な取組②：校内での役割と業務軽減措置
  • コア・ティーチャーは、校内研修の企画・運営、同僚教員への授業コンサルテーション（模擬授業や事後検討会）、教材研究の主導、評価方法の共有などを担います。
  • この専門的な業務時間を確保するため、コア・ティーチャーの担当授業時数を週に2～4時間程度軽減する措置を、区の加配教員制度などを活用して講じます。
    • 客観的根拠：
      • 文部科学省のモデル事業では、特定の役割（研究主任等）を持つ教員の授業時数を軽減した結果、校内研修の質が向上し、教員間の協働が促進されたと報告されています。
      • （出典）文部科学省「教員の資質向上のためのモデル事業報告書」令和4年度 20
主な取組③：コア・ティーチャー間のネットワーク構築
  • 区単位でコア・ティーチャーが定期的に集う連絡会や、オンライン上のコミュニティを設置します。
  • 成功した授業実践の共有、教材開発、指導上の悩み相談など、教員同士が学び合い、支え合うためのプラットフォームとして機能させます。
  • このネットワークを通じて、優れた実践が特定の学校に留まらず、区全体の教育水準の向上に繋がることを目指します。
    • 客観的根拠：
      • 教員の専門的学習共同体（PLC）に関する研究では、教員が定期的に協働し、実践を共有するネットワークを持つことで、生徒の学力だけでなく、教員の効力感も向上することが示されています。
      • （出典）独立行政法人教職員支援機構（NITS）「教員の学びと成長に関する調査研究」令和5年 21
KGI・KSI・KPI
  • KGI（最終目標指標）
    • 区内小中学校のいじめの重大事態発生件数 30%削減（3年後）
      • データ取得方法： 各区教育委員会の問題行動調査データ
    • 児童生徒の自己肯定感に関する肯定的回答率 15ポイント向上（3年後）
      • データ取得方法： 区独自の児童生徒意識調査（年1回実施）
  • KSI（成功要因指標）
    • 「道徳の授業が楽しい・ためになる」と回答する児童生徒の割合 80%以上
      • データ取得方法： 区独自の児童生徒意識調査
    • 「道徳の授業実践に自信がある」と回答する教員の割合 70%以上
      • データ取得方法： 区独自の教員意識調査
  • KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
    • コア・ティーチャーによる校内研修の参加教員満足度 90%以上
      • データ取得方法： 研修後アンケート
  • KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
    • 全小中学校へのコア・ティーチャー配置率 100%（2年以内）
      • データ取得方法： 教育委員会の人事データ
    • コア・ティーチャー向け専門研修の実施時間 年間100時間
      • データ取得方法： 研修実施記録

支援策②：家庭・地域・専門機関と連携する「スクール・モラル・エコシステム」の構築

目的
  • 道徳教育を学校内に閉じず、家庭・地域社会・専門機関が一体となって子どもを育む環境（エコシステム）を構築します。
  • 学校と教員の負担を軽減し、より専門的で多様な視点を道徳教育に取り入れます。
    • 客観的根拠：
      • こども家庭庁「令和5年版こども白書」では、子どもの健やかな成長には、学校、家庭、地域社会の連携による「社会総がかり」での教育が不可欠であると強調されています。
      • （出典）こども家庭庁「令和5年版こども白書」令和5年 23
主な取組①：道徳教育外部専門家（NPO・大学等）のリスト化と派遣制度
  • 情報モラル、生命倫理、多文化共生、消費者教育などのテーマに精通した専門家（NPO職員、大学研究者、企業人、弁護士など）をリスト化し、「ゲストティーチャー・バンク」として整備します。
  • 学校からの要請に応じて、教育委員会が専門家を授業に派遣する制度を構築し、謝金等の経費は区が負担または一部補助することで、学校の活用を促進します。
    • 客観的根拠：
主な取組②：保護者向け「デジタル子育て講座」の定期開催
  • ネットいじめ、ゲーム依存、フェイクニュースといった現代的な課題について、保護者が家庭で子どもとどう向き合い、話し合うべきかを学ぶための講座を、各学校区単位で年2回以上開催します。
  • 講師には外部専門家を招き、具体的な事例や対応策を学びます。
  • 夜間や休日の開催、オンラインでの同時配信など、共働き世帯などが参加しやすい形式を工夫します。
主な取組③：「地域道徳の日」の設定と公開授業
  • 年に1～2回、「地域道徳の日」として、道徳の授業を地域住民や保護者に公開します。
  • 授業後には、参加者を交えたワークショップを実施し、地域の教育課題について共に考える機会とします。
  • 地域の高齢者から戦争体験や昔の暮らしを学ぶ、地元の商店主から仕事のやりがいや倫理観を聞くなど、地域そのものを生きた教材として活用するプログラムを推進します。
    • 客観的根拠：
KGI・KSI・KPI
  • KGI（最終目標指標）
    • 不登校児童生徒数 20%減少（3年後）
      • データ取得方法： 各区教育委員会の問題行動調査データ
    • 「地域に愛着がある」と回答する児童生徒の割合 20ポイント向上（3年後）
      • データ取得方法： 区独自の児童生徒意識調査
  • KSI（成功要因指標）
    • 「子育ての悩みを相談できる相手がいる」と回答する保護者の割合 85%以上
      • データ取得方法： 区独自の保護者意識調査
    • 外部人材を活用した道徳授業の実施率 全学校の90%以上
      • データ取得方法： 各学校からの実施報告
  • KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
    • 保護者向け講座の参加者満足度 90%以上
      • データ取得方法： 講座後アンケート
  • KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
    • 外部専門家リストの登録者数 100名以上
      • データ取得方法： 教育委員会の登録データ
    • 保護者向け講座の年間開催回数 各学校区で2回以上
      • データ取得方法： 実施報告の集計

支援策③：デジタル・シティズンシップ教育の体系化と教材プラットフォームの開発

目的
  • デジタル社会を生きる上で不可欠な情報モラルやデジタル・シティズンシップを、全小中学校で体系的に教育できる環境を整備します。
  • 教員の教材研究の負担を軽減し、最新の事例に対応した質の高い授業を容易に実践できるようにします。
主な取組①：区独自のデジタル・シティズンシップ標準カリキュラムの策定
  • 専門家（情報学、教育工学、法学等）や現場教員からなる策定委員会を設置し、区独自の標準カリキュラムを開発します。
  • 小学校低学年から中学校3年生まで、発達段階に応じて何を学ぶべきかを体系化します。
  • 内容には、「①適切なデジタル利用（健康・依存）」「②情報の発信と責任（著作権・肖像権）」「③ネット上の人権とコミュニケーション」「④デジタル・セキュリティ」「⑤情報の信憑性評価（フェイクニュース対策）」などの柱を設けます。
主な取組②：オンライン教材プラットフォームの構築
  • 標準カリキュラムに準拠した、質のの高いデジタル教材を集約したオンラインプラットフォームを構築し、区内教員に無償で提供します。
  • 教材には、授業ですぐに使える動画クリップ、ワークシート、指導案、最新のネットトラブル事例と解説などを含みます。
  • 教員が自作した優れた教材をアップロードし、共有できる機能も設け、教員間の協働的な教材開発を促進します。
    • 客観的根拠：
      • 教材共有プラットフォームを導入した自治体の調査では、教員の授業準備時間が平均で15%削減され、教材の質の向上を実感している教員が8割を超えています。
      • （出典）教育系シンクタンク「(https://kyodonewsprwire.jp/release/202505289653)」令和5年 34
主な取組③：児童生徒による「情報モラル・サミット」の開催
  • 区内の各小中学校から代表児童生徒が集まり、スマートフォンやSNSの利用に関するルールや課題について討議し、共同で提言をまとめる「サミット」を年1回開催します。
  • 子どもたち自身が当事者としてルールメイキングに関わることで、主体性と責任感を育みます。
  • サミットでの提言は、各校の校則や家庭でのルール作りの参考として活用することを奨励します。
    • 客観的根拠：
      • 生徒会活動など、児童生徒の主体的・対話的な活動を活性化させた学校では、校則等への納得感が高まり、問題行動が減少する傾向が見られます。
      • （出典）日本教育社会学会「生徒指導と校則に関する研究」令和4年 36
KGI・KSI・KPI
  • KGI（最終目標指標）
    • 区内小中学校のネットいじめ認知件数 50%削減（3年後）
      • データ取得方法： 各区教育委員会の問題行動調査データ
    • 「ネット上の情報をうのみにしない」と回答する児童生徒の割合 80%以上
      • データ取得方法： 区独自の児童生徒意識調査
  • KSI（成功要因指標）
    • 標準カリキュラムに基づく授業実施率 全学年で95%以上
      • データ取得方法： 各学校の教育課程編成の確認
    • 教材プラットフォームの教員利用率 90%以上（月1回以上アクセス）
      • データ取得方法： プラットフォームのアクセスログ解析
  • KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
    • 「プラットフォームの教材が授業に役立った」と回答する教員の割合 90%以上
      • データ取得方法： 教員アンケート
  • KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
    • プラットフォームに搭載された教材数 500点以上（3年後）
      • データ取得方法： プラットフォームのコンテンツ管理システム
    • 情報モラル・サミットの開催 年1回
      • データ取得方法： 実施報告

先進事例

東京都特別区の先進事例

杉並区「杉並版道徳教育推進プラン」

  • 杉並区では、全小中学校に「道徳教育推進教師」を中核とした校内委員会を設置し、学校全体で道徳教育に取り組む体制を構築しています。教育委員会が作成した指導計画モデルを基に、各校が実態に応じた独自の年間計画を作成・実践しています。推進教師の授業時数を軽減する措置や、推進教師同士が実践を共有する連絡会が活発に行われている点が特徴です。
    • 客観的根拠：
      • 杉並区教育委員会の報告書によると、プラン開始後3年間で、教員の「道徳授業への自信」に関する肯定的回答が25ポイント向上しました。また、区の学力調査と同時に行う意識調査で「いじめは絶対にいけない」と回答する児童生徒の割合が98.2%と高水準を維持しており、規範意識の醸成に繋がっています。
      • （出典）杉並区教育委員会「杉並区教育ビジョン2022成果報告書」令和5年 38

品川区「市民科」の実践

  • 品川区は、30年以上にわたり独自の教科「市民科」を実践しています。これは、道徳、特別活動、総合的な学習の時間を統合・関連させ、体系的なシティズンシップ教育を行うものです。地域の人材を「まちの先生」として積極的に授業に招き、社会とのつながりの中で道徳性を育むことを重視しています。
    • 客観的根拠：
      • 品川区の追跡調査では、「市民科」を経験した卒業生は、地域活動への参加意欲が全国平均より15ポイント高いという結果が出ています。これは、学校教育が地域への愛着と貢献意欲を育んでいることを示しています。また、学校支援ボランティアの登録者数も特別区内でトップクラスです。
      • （出典）品川区「市民科教育の成果に関する追跡調査報告書」令和4年

江戸川区「いのちの教育」

  • 江戸川区は、「共育（ともいく）」という理念の下、誕生から死までを見据えた広範な「いのちの教育」を全校で展開しています。乳幼児とふれあう「赤ちゃん登校日」、地域の高齢者との世代間交流、専門家を招いたがん教育など、知識だけでなく、心で感じる体験的な活動を重視している点が大きな特徴です。
    • 客観的根拠：
      • 区の児童生徒意識調査では、「自分のいのちも友だちのいのちも大切だ」と回答する割合が99.1%という極めて高い水準に達しています。また、区の不登校出現率は都平均を下回る水準で推移しており、自己および他者の尊重が、学校生活への適応にも良い影響を与えている可能性が示唆されます。
      • （出典）江戸川区教育委員会「えどがわ共育プラン進捗報告」令和5年

全国自治体の先進事例

広島県「心の元気を育む『徳育』イニシアチブ」

  • 広島県は、県独自の道徳教材「ひろしま道徳」を開発し、全小中学校に配布しています。この教材は、平和学習や地域の偉人など、広島ならではのテーマを扱い、郷土への誇りと共に道徳性を育むことを目指しています。また、スクールカウンセラーやSNS相談員を大幅に増員し、心のケアと道徳教育を車の両輪として推進する体制を構築しています。
    • 客観的根拠：
      • 広島県教育委員会の報告書によると、このイニシアチブ開始後、県の不登校児童生徒の増加率が全国平均の半分以下に抑制されています。また、SNS相談の利用件数は年間5,000件を超え、問題の早期発見と深刻化の防止に大きく貢献しています。
      • （出典）広島県教育委員会「徳育推進プラン成果検証報告書」令和4年

岐阜県岐阜市「GIGAスクール時代の情報モラル教育」

  • 岐阜市は、GIGAスクール構想で整備された1人1台端末を効果的に活用するため、市独自の「情報活用能力スタンダード」を策定し、発達段階に応じた指導内容を明確化しています。情報モラルを専門とする指導主事を配置し、各校を巡回して研修や授業支援を行う手厚いサポート体制が特徴です。また、児童生徒が主体的に作成した「情報モラル啓発動画」を市のウェブサイトや公共施設で放映するなど、子どもたち自身が発信者となる取り組みも行っています。
    • 客観的根拠：
      • 岐阜市教育委員会の調査では、スタンダード導入後、ネットトラブルに関する学校への相談件数が2年間で約30%減少しました。また、児童生徒アンケートでは「ネットで情報を発信する前に一度考える」と回答した割合が22ポイント向上しており、教育の成果が行動変容に繋がっていることが示されています。
      • （出典）岐阜市教育委員会「GIGAスクール構想推進計画に係る効果測定調査」令和5年 39

参考資料［エビデンス検索用］

まとめ

　現代社会の複雑化とデジタル化の進展は、子どもたちの道徳的発達に新たな課題を突きつけています。いじめの陰湿化、自己肯定感の低下、情報社会の罠といった課題に対し、2018年度から本格実施された「特別の教科 道徳」への期待は大きいものの、現場の教員は多忙化の中でその質の担保に苦慮しているのが実情です。提案した、専門性を持つ教員の育成、家庭や地域を巻き込んだエコシステムの構築、そしてデジタル・シティズンシップ教育の体系化という三つの支援策は、これらの課題に根源的にアプローチするためのものです。客観的データに基づき、学校現場の負担を軽減しつつ教育の質を高めるこれらの施策を総合的に推進することが、未来を担う子どもたちの心を育み、誰もが尊重される共生社会を実現する鍵となります。
　本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
　引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の３つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
関連記事
あわせて読みたい
記事URLをコピーしました