08 SDGs・環境

豊かな自然環境の保全

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(豊かな自然環境を取り巻く環境)

  • 自治体が豊かな自然環境の保全を行う意義は「住民のウェルビーイング(心身の健康と幸福)の向上」と「持続可能でレジリエントな都市の構築」にあります。
  • 東京都特別区のような成熟した大都市において、自然環境が持つ役割は、単なる憩いやレクリエーションの場にとどまりません。それは、気候変動の緩和、防災機能の強化、心身の健康増進といった多様な生態系サービスを提供する、都市に不可欠な社会基盤、すなわち「グリーンインフラ」として認識されています。
  • 近年の国の政策、特に令和7年版環境白書でも示されている「新たな成長」や「循環共生型社会」の実現に向けた潮流の中で、都市の自然環境の保全と創出は、経済社会システム全体の変革を導く重要な要素として位置づけられています。

意義

住民にとっての意義

心身の健康増進
  • 緑豊かな空間へのアクセスは、ストレスを軽減し、精神的な安定をもたらします。また、公園や緑道はウォーキングや運動の場となり、身体活動を促進し、生活習慣病の予防に貢献します。
快適で安全な生活環境の確保
  • 樹木は木陰を提供し、水分の蒸散作用によって、都市部で深刻化するヒートアイランド現象を緩和します。
  • 大気中の汚染物質を吸着・浄化する機能も有しています。
  • 災害時には、公園や緑地が避難場所や火災の延焼を防ぐ空間として機能し、住民の安全を守ります。
環境教育と地域への愛着醸成
  • 身近な自然は、子どもたちが生き物や季節の移ろいに触れる貴重な学習の場となります。
  • 自然観察会などの活動を通じて、あらゆる世代の住民が地域の自然環境への理解を深め、地域への愛着と保全への意識を育むことにつながります。

地域社会にとっての意義

コミュニティ形成の促進
  • 公園や緑地は、地域のイベントや祭りの会場となるほか、日常的な散歩や子どもの遊び場として、住民同士の自然な交流を生み出します。
  • このような交流は、地域の社会的なつながりを強め、孤立の防止や防犯機能の向上にも寄与します。
地域固有の魅力と景観の向上
  • 神社仏閣の鎮守の森、歴史ある屋敷林、特徴的な並木道など、地域に根差した緑は、その土地ならではの景観を形成し、地域のアイデンティティを強化します。
  • 魅力的な景観は、地域の誇りを育むとともに、来訪者を惹きつけ、地域の活性化にもつながります。
生物多様性の保全
  • 都市に残された緑地は、多くの野生生物にとって貴重な生息・生育空間(ハビタット)となります。
  • これらの緑地が「点」として孤立するのではなく、街路樹や河川沿いの緑によって「線」として結ばれることで、生物の移動経路(コリドー)となり、広域的な生態系ネットワークを形成します。これは地域全体の生態系の健全性を支える上で不可欠です。

行政にとっての意義

生態系サービスの享受による財政負担の軽減
  • 緑地が持つ雨水貯留・浸透機能は、集中豪雨時の都市型洪水の発生を抑制し、大規模な排水施設の整備コストを削減する効果があります。
  • このように、自然の機能を賢く利用する「自然に根差した解決策(NbS: Nature-based Solutions)」は、コンクリートなどの人工物で構成される「グレーインフラ」を補完し、より効率的で持続可能な都市インフラの構築を可能にします。
都市の魅力と国際競争力の向上
持続可能な開発目標(SDGs)への貢献
  • 豊かな自然環境の保全は、SDGsの複数の目標達成に直接的に貢献します。
  • 具体的には、目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標3「すべての人に健康と福祉を」、目標13「気候変動に具体的な対策を」、目標15「陸の豊かさも守ろう」など、多岐にわたる目標と密接に関連しています。

(参考)歴史・経過

1950年代:復興と基盤整備の時代
  • 戦後復興が最優先される中、都市の健全な発展と公衆の福祉に寄与するため、**1956年(昭和31年)に「都市公園法」**が制定されました。これにより、公園緑地を計画的に確保・整備するための法的な枠組みが初めて確立されました。
1970年代:公害問題と緑の保全意識の高まり
  • 高度経済成長に伴う公害問題や都市のスプロール化が深刻化し、都市に残された貴重な緑を保全する必要性が認識されるようになりました。
  • **1973年(昭和48年)に「都市緑地保全法」(現:都市緑地法)**が制定され、開発圧力から緑地を守るための制度(特別緑地保全地区など)が導入されました。
    • (出典)(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%83%BD%E5%B8%82%E7%B7%91%E5%9C%B0%E6%B3%95) 6
2000年代:環境の質と生物多様性への着目
2010年代:地域戦略と市民参加の推進
2020年代:統合的アプローチとグリーンインフラ

豊かな自然環境に関する現状データ

緑被率の緩やかな減少
  • 東京都が5年ごとに実施している「みどり率」調査の最新結果(令和5年)によると、特別区全体の「みどり率」(緑被地に公園区域や水面を加えた割合)は24.0%でした。
  • これは、5年前の平成30年調査時の24.2%から0.2ポイントの減少であり、都市の緑がわずかながらも減少し続けている実態を示しています。
  • この減少の主な内訳を見ると、「樹林・原野・草地」が0.2ポイント、「農用地」が0.1ポイント減少しています。これは、相続や開発に伴う民有の樹林地や農地の減少が続いていることが背景にあると考えられます。
  • 一方で、「公園・緑地」は0.1ポイント増加しており、行政による公園整備等の努力が見られますが、民有地の減少分を補うには至っていないのが現状です。
人口増に伴う一人当たり公園面積の減少
  • 特別区の公園総面積は微増傾向にあるものの、都心部への人口集中が続いているため、多くの区で住民一人当たりの公園面積は減少傾向にあります。
  • 例えば、中央区では平成16年度に6.24㎡/人だった一人当たり公園面積が、人口増加に伴い、平成29年度には3.98㎡/人まで減少しました。墨田区でも同様に、人口増加率が公園面積の増加率を上回り、一人当たり面積は減少に転じています。
  • 区ごとの格差も極めて大きく、平成26年のデータでは、皇居外苑や北の丸公園といった広大な国民公園を有する千代田区が33.05㎡/人と突出している一方、豊島区は0.74㎡/人となっており、その差は40倍以上に達します。これは、緑の恩恵を享受する機会に著しい地域間格差が存在することを示唆しています。
生物多様性の危機(絶滅危惧種の増加と外来種問題)
  • 東京都が2021年に公表した「東京都レッドリスト(本土部)2020年版」は、都内の生物多様性が深刻な危機にあることを示しています。
  • 過去約20年間で、絶滅の恐れのある野生生物としてリストに掲載された種は約4割増加しました。
  • さらに衝撃的なことに、直近の10年間(2010年版との比較)で、これまで生息が確認されていた植物や昆虫を中心に**80種が絶滅(EX)**に区分されるなど、事態は悪化の一途をたどっています。
  • この危機の背景には、複合的な要因が存在します。
    • 第一の危機「開発等による生息環境の減少」:都市化や埋め立てにより、かつて存在した干潟や草地、雑木林が失われました。
    • 第二の危機「自然への働きかけの縮小」:里山や農地が手入れされなくなり、特定の環境に依存していた生物が姿を消しました。
    • 第三の危機「人間により持ち込まれた外来種」:アライグマやハクビシン、アメリカザリガニなどが在来種を捕食したり、生息場所を奪ったりしています。
    • 第四の危機「地球環境の変化」:地球温暖化による気温上昇は、これまで生息していなかった生物の侵入を許し、生態系のバランスを崩しています。
    • (出典)東京都環境公社「東京の生物多様性の現状と課題」 18
    • (出典)東京都「生物多様性の危機の原因」 17
緑の保全に対する住民の高い意識と行動のギャップ
  • 各区が実施する区民意識調査では、身近な緑の保全を望む声が常に高い割合を占めています。例えば、練馬区の調査では、みどりを守り育てるために必要な取組として、「公園・緑地の整備」(64.3%)や「民有樹林地や農地の所有者を積極的に支援する」(44.5%)といった回答が上位に挙げられています。
  • このように緑の保全に対する意識は高い一方で、実際の保全活動への参加は低調な傾向にあります。国の調査では、ボランティア活動に参加しない理由として「参加するきっかけがないから」や「活動に関する情報が十分にないから」といった回答が多く、住民の意識と行動の間に大きなギャップが存在することが明らかになっています。

課題

住民の課題

身近な自然とのふれあい機会の質的低下
  • 特別区、特に人口が密集する区において、一人当たりの公園面積が減少傾向にあることは、単に量的などんぶり勘定の問題ではありません。これは公園の混雑を招き、住民が求める「静かな休息」「ゆったりとした自然観察」「子どもがのびのびと遊べる空間」といった質の高い体験を阻害する要因となっています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:住民のストレス増加や自然への無関心を招き、長期的には地域の環境保全を支える人材の枯渇につながります。
環境保全活動への参加機会の不足
  • 多くの住民は地域の緑を大切にしたいと考えていますが、その思いを具体的な行動に移すための受け皿が不足しています。公園の清掃や草刈りといったボランティア活動に関心があっても、「どこに申し込めばよいかわからない」「活動内容や頻度が自分のライフスタイルに合わない」といった理由で参加をためらうケースが多く見られます。

地域社会の課題

相続税等の負担による民有緑地の喪失
緑地の断片化による生態系ネットワークの分断
  • 開発によって緑地が失われると、残された緑地は孤立した「島」のようになり、生物の移動が困難になります。これにより、植物の種子を運んだり、花粉を媒介したりする鳥や昆虫の活動範囲が狭まり、生態系全体のつながり(ネットワーク)が分断されます。この断片化は、遺伝的な多様性の低下を招き、地域レベルでの種の絶滅リスクを著しく高めます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:花粉媒介や水質浄化といった生態系サービスが低下し、気候変動への適応力など都市全体のレジリエンスが損なわれます。

行政の課題

新規公園用地取得の困難化と財政的制約
  • 地価が極めて高い東京都特別区において、まとまった規模の公園用地を新規に取得することは、財政的に非常に困難です。国の予算を見ても、公園整備に関する予算は限られており、用地取得によって緑の総量を大幅に増やすという従来型の手法は限界に達しています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:緑の総量確保が行き詰まり、住民のニーズに応えられなくなるとともに、都市環境の質が頭打ちになります。
縦割り行政による統合的アプローチの欠如
  • 自治体組織では、公園の管理は建設・土木部門、生物多様性保全は環境部門、街路樹は道路部門、市民協働は区民・企画部門といったように、所管が分かれているのが一般的です。この「縦割り構造」は、緑地を防災、福祉、教育、景観、生物多様性など多様な機能を持つ「グリーンインフラ」として統合的に捉え、施策の相乗効果を最大化する上での大きな障壁となっています。
    • 客観的根拠:
      • この課題は多くの自治体組織に共通する構造的なものであり、直接的な統計データはないものの、専門的知見として指摘される。横浜市の公園愛護会制度では、土木事務所に専門のコーディネーターを配置することで、この縦割りを乗り越えようとしている。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:施策間の連携不足により、単発的で効果の限定的な事業が続き、非効率な予算執行が改善されません。
既存緑地の管理における担い手不足と質の課題
  • 行政職員だけで区内全ての公園・緑地において、外来種の駆除、生物多様性に配慮した剪定、利用マナーの啓発といった、きめ細やかで質の高い管理を行うことには限界があります。市民や地域のボランティアの協力を得る仕組みがなければ、緑地は単に「存在する」だけで、そのポテンシャルを十分に発揮できず、質の低い空間となってしまいます。
    • 客観的根拠:
      • 公園愛護会制度の先進地である横浜市でさえ、担い手の不足や高齢化が課題として認識されており、これは全国の都市に共通する問題であることを示している。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:公園が生物多様性やコミュニティ形成に貢献しない質の低い空間となり、管理コストだけが増大し続けます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、緑の保全、生物多様性の向上、コミュニティ活性化など、複数の課題解決に横断的に貢献する施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 大規模な法改正や多額の新規予算を必要とせず、現行の法制度や既存の仕組みを活用して、比較的速やかに着手できる施策を優先します。
  • 費用対効果
    • 行政の直接的な財政負担を抑制しつつ、民間の資金やノウハウ、市民の自発的な活動を最大限に活用することで、投じた資源に対して大きな効果が期待できる施策を重視します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の地域や住民だけでなく、区内全域に展開可能であり、一過性のイベントではなく、長期的に継続可能な仕組みを持つ施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 他の自治体での先進事例によって効果が実証されている、または信頼性の高いデータに基づき効果が合理的に期待できる施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • これまでの分析から明らかになった課題は、①止まらない民有緑地の喪失、②緑の生態学的な質の低下と分断、③保全活動を担う市民の力の未活用、という3点に集約されます。これらは相互に関連しており、個別に対処するのではなく、統合的に解決する必要があります。
  • したがって、本報告では、これら3つの課題に直接対応する以下の3つの支援策を、相互補完的なパッケージとして優先的に推進することを提案します。
  • **最優先(支援策①)は、最も緊急性の高い「民有緑地の喪失」を食い止めるための「都市緑地バンク制度」**です。これは、緑の減少という根本的な問題に直接メスを入れる施策です。
  • **次点(支援策②)は、全ての緑化施策の質を高めるための指針となる「グリーンインフラ・ネットワーク」**の構築です。これにより、保全・創出される緑が、生物多様性の観点から最大限の効果を発揮するようになります。
  • その上で(支援策③)、これらの施策を持続可能なものにするための人的基盤として、市民協働による**「公園・緑地マネジメント」**の高度化が不可欠です。
  • この3つの施策を一体的に推進することで、緑の「量」の維持、「質」の向上、そして「管理」の持続可能性を同時に達成する好循環を生み出すことを目指します。

各支援策の詳細

支援策①:民有地緑地の保全・活用を促進する「都市緑地バンク」制度の創設

目的
  • 相続や維持管理の負担を理由に失われつつある民有緑地を、所有権を移転することなく保全・活用する新たな仕組みを構築し、特別区における緑の総量減少に歯止めをかけることを目的とします。
  • 所有者には税制優遇や管理負担の軽減というメリットを、地域住民には新たな憩いや活動の場を提供することで、所有者・住民・行政の三者が利益を享受できる「三方よし」の関係を築きます。
主な取組①:緑地バンクの設立と登録制度の開始
  • 区が事務局となり、保全を希望する民有緑地(300㎡以上のまとまった樹林地、屋敷林、農地、庭園などを想定)の所有者から登録を受け付ける「都市緑地バンク」を創設します。
  • 登録された緑地の情報(所在地、面積、植生、所有者の意向等)をデータベース化し、GIS(地理情報システム)上で地図情報として一元管理・可視化します。これにより、区内の保全すべき緑地の分布状況を正確に把握します。
主な取組②:所有者へのインセンティブ設計
  • 登録緑地の所有者と区が「緑地保全協定」を締結します。この協定に基づき、区独自の条例によって固定資産税・都市計画税の減免措置を講じます。
  • 相続税については、都市緑地法に基づく「特別緑地保全地区」の指定を積極的に活用します。地区指定により、相続税評価額が最大8割減となる国の制度の適用を、区が全面的にサポートします。
  • 税理士や不動産鑑定士などの専門家による無料相談会を定期的に開催し、所有者の税務に関する不安を解消します。
主な取組③:市民・NPOによる管理・活用(アダプト・プログラム)
  • バンクに登録され、所有者が管理の一部委託を希望する緑地について、地域の市民団体、NPO、学校、企業などが「里親(アダプト団体)」として日常的な管理(清掃、下草刈り、見回り等)を担うアダプト制度を導入します。
  • 区は、アダプト団体に対し、活動に必要な経費の一部助成、樹木医や造園の専門家による技術指導、剪定ばさみや草刈機といった管理用具の貸与など、多角的な支援を行います。
主な取組④:限定的な公開と活用ルールの策定
  • 所有者のプライバシー保護を最優先とし、常時全面公開を前提としない柔軟な公開ルールを設定します。
  • 例えば、「月に一度、日曜の午前中のみ自然観察会のために公開」「平日の9時から17時まで、一部エリアのみ散策路として開放」など、土地の状況や所有者の意向に応じて、公開の範囲や時間をきめ細かく設定します。
  • このルールは、所有者、アダプト団体、区の三者協議によって決定し、協定に明記することで、トラブルを未然に防ぎます。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 5年後の民有緑地(300㎡以上の樹林地)の面積減少率をゼロにする。
      • データ取得方法: 5年ごとに実施する航空写真等による緑被率調査データから、民有樹林地の面積の経年変化を抽出・分析する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 制度開始後3年間で、緑地バンクへの登録面積を累計5ヘクタール達成する。
      • データ取得方法: 区が管理する緑地バンク登録台帳の集計。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 緑地保全協定締結による固定資産税等の減免総額(年次評価)。
    • アダプト団体の活動満足度(アンケート調査により年1回測定、5段階評価で平均4.0以上を目指す)。
      • データ取得方法: 税務課の課税データ、アダプト団体への年次アンケート調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 所有者向け制度説明会の開催数(年4回以上)。
    • 新規に結成・活動開始したアダプト団体の数(年間5団体以上)。
      • データ取得方法: 事業実施記録、アダプト団体登録簿。

支援策②:生物多様性保全を核とした「グリーンインフラ・ネットワーク」の構築

目的
  • 区内に点在する緑地(公園、民有緑地、街路樹、学校の校庭、屋上緑化など)を、個別の「点」としてではなく、生き物の移動経路(コリドー)によって結ばれた生態的な「ネットワーク」として総合的に捉え、都市全体の生物多様性の豊かさと気候変動への適応力(レジリエンス)を向上させることを目的とします。
  • あらゆる緑化関連事業において、生物多様性への配慮を標準仕様とすることを目指します。
主な取組①:エコロジカル・ネットワーク計画の策定
  • GIS(地理情報システム)を活用し、区内の生物多様性の核となる緑の拠点(コア・エリア)と、それらを結ぶ緑の回廊(コリドー)を地図上で明確に可視化した「エコロジカル・ネットワーク計画」を策定します。
    • コア・エリアの例: 大規模公園、自然教育園、神社仏閣の森、まとまった民有樹林地(緑地バンク登録地など)。
    • コリドーの例: 河川や水路沿いの緑地、緑道、街路樹が連続する道路、生垣が続く住宅地、線路沿いの緑地帯。
  • この計画は、今後の都市計画や開発指導の基本図として活用します。
主な取組②:公共事業における生物多様性配慮の標準化
  • 公園の新設・改修、道路緑化、河川改修、公共施設の建替えといった全ての公共事業において、生物多様性への配慮を標準化するための「公共事業向け生物多様性配慮ガイドライン」を策定し、その遵守を徹底します。
  • ガイドラインの主な内容:
    • 植栽には、地域の気候風土に適した在来種を原則として使用する。
    • 単一の樹種を植えるのではなく、高木・中木・低木・地被植物を組み合わせた多層的な植栽(多層群落構造)を導入し、多様な生物の住処を創出する。
    • 農薬の使用を極力抑制する。
主な取組③:民間開発における生物多様性認証制度の導入
  • 一定規模以上の民間開発事業に対し、「生物多様性配慮計画書」の提出を条例で義務付けます。
  • 在来種の積極的な採用、雨水を利用したビオトープの設置、鳥や昆虫の誘致に配慮した壁面・屋上緑化など、特に優れた取り組みを行う事業を「(仮称)生物多様性貢献建築物」として区が認証します。
  • 認証を受けた建築物には、総合設計制度などを活用した容積率の緩和や、区のウェブサイト等でのPR支援といったインセンティブを付与し、民間事業者の自発的な取り組みを誘導します。
    • 客観的根拠:
      • 三菱地所による「ホトリア広場」の取り組みが、自然共生サイトとして国際的にも認定(OECM)されている事例は、先進的な企業が生物多様性への貢献を企業価値向上と捉えていることを示している。
        • (出典)(https://mec.disclosure.site/j/sustainability/activities/environment/tnfd/pdf/TNFD_Recommendations_2025.pdf) 32
主な取組④:外来種対策の強化と市民啓発
  • 区内に生息するアライグマ、アメリカザリガニ等の侵略的外来種の分布状況を詳細に調査し、生態系への影響が大きい種と、優先的に対策を講じるべきエリアを特定した「外来種対策マップ」を作成・公開します。
  • 市民が参加できる外来種の駆除イベント(例:ザリガニ釣り大会)を定期的に開催するとともに、学校教育や地域イベントを通じて、ペットを野外に放さない、飼育している外来植物を適切に管理するといった啓発キャンペーンを強化します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 5年後に、区が定めた指標生物(例:アゲハチョウ類、シジュウカラなど、市民が識別しやすく環境の変化を反映する種)の生息が確認される区内メッシュ(500m四方)の数を、現状から20%増加させる。
      • データ取得方法: 市民参加型生物調査アプリ(「いきものコレクション」等)の投稿データ、専門家による定点モニタリング調査。
  • KSI(成功要因指標)
    • エコロジカル・ネットワーク計画で定めたコリドー(緑の回廊)の連結性を、GIS解析により10%向上させる。
      • データ取得方法: 航空写真とGISデータを用いた、緑地パッチ間の最短距離や連結性指数の経年変化分析。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 生物多様性貢献認証を受けた建築物における在来種植栽率(平均80%以上を維持)。
    • 市民参加型の外来種駆除活動への年間延べ参加者数(500人以上)。
      • データ取得方法: 開発事業者に提出を求める緑化完了報告書の審査記録、イベント参加者名簿の集計。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 「公共事業向け生物多様性配慮ガイドライン」の策定・全部署への周知徹底(初年度)。
    • 生物多様性貢献建築物の年間認証件数(年間3件以上)。
      • データ取得方法: ガイドライン策定記録、認証事業台帳。

支援策③:市民協働による「公園・緑地マネジメント」の高度化

目的
  • 住民が持つ「地域の緑を大切にしたい」という高い意識を、具体的な「保全・育成活動への参加」という行動へとつなげ、行政と市民がそれぞれの強みを活かして役割を分担する、持続可能な公園・緑地管理体制を構築することを目的とします。
  • これにより、行政だけでは困難な、きめ細やかで質の高い緑地管理(花壇の手入れ、多様なイベントの開催等)を実現し、公園の魅力を最大限に引き出します。
主な取組①:「公園愛護会(パークサポーター)」制度の全区展開
  • 横浜市の先進事例を参考に、区内全ての区立公園を対象として、地域のボランティア団体を「公園愛護会(愛称:パークサポーター)」として認定・登録する制度を導入します。
  • 参加の裾野を広げるため、従来の自治会・町内会だけでなく、マンションの管理組合、地域のNPO、近隣企業のCSR活動、保護者グループ、学生サークルなど、多様な主体が団体として登録できる柔軟な仕組みとします。
主な取組②:愛護会への多角的な支援メニューの提供
  • 愛護会の活動を継続的に支えるため、実用的な支援メニューを体系的に提供します。
    • 財政支援: 管理する公園の面積に応じて、清掃活動やイベント開催の基礎経費として活用できる報奨金(活動費)を年1回支給します。
    • 物品支援: 日常の清掃活動に必要なゴミ袋、軍手、ほうき、ちりとり等の消耗品を現物で提供します。また、草刈機や高枝切りばさみ等の機材は、区が整備し、愛護会に無料で貸し出します。
    • 技術支援: 「きれいな花壇の作り方」「安全な草刈機の使い方」「子ども向け自然観察会の開き方」など、愛護会のニーズに応じた講習会を、区の職員や外部の専門家(樹木医、造園家等)が講師となって定期的に開催します。
    • 保険加入: 愛護会の活動中の万一の事故に備え、区が一括して市民活動保険に加入し、安心して活動できる環境を保障します。
    • (出典)横浜市「公園愛護会・支援の内容」 26
主な取組③:公園愛護会コーディネーターの配置
  • 各地域を管轄する部署(土木事務所や地区の区民事務所など)に、愛護会活動の支援を専門に担当する「公園愛護会コーディネーター」を配置します。
  • コーディネーターは、新規愛護会の結成支援、活動に関する相談対応、行政内部(道路課、公園課など)との連絡・調整、愛護会同士の情報交換会や交流イベントの企画など、行政と市民をつなぐ「ハブ」としての役割を担います。
主な取組④:活動の自由度を高める規制緩和
  • 愛護会が主体となって公園内で地域コミュニティの活性化に資するイベント(例:花祭り、ミニコンサート、収穫祭、フリーマーケット等)を実施する際、公園の利用許可手続きを大幅に簡素化し、使用料を減免します。
  • 愛護会からの発案による花壇の設置、コミュニティ菜園の開設、ベンチの増設などを柔軟に認める仕組みを設け、市民のアイデアを活かした魅力的な公園づくりを促進します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 5年後に、区民意識調査における「区立公園の魅力や管理に対する満足度」を85%以上にする。
      • データ取得方法: 毎年実施する区民意識調査の設問により測定する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 制度開始後5年間で、区内全ての区立公園の80%以上で公園愛護会を結成する。
      • データ取得方法: 区が管理する公園愛護会登録台帳の集計。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 愛護会による公園管理活動の年間延べ活動時間。
    • 愛護会が主催する公園イベントの年間開催数および延べ参加者数。
      • データ取得方法: 各愛護会から提出される年次活動報告書に基づき集計。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 公園愛護会コーディネーターによる年間相談対応件数。
    • 技術支援講習会の年間開催回数および参加者数。
      • データ取得方法: コーディネーターの業務日誌、事業実施記録。

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「市民緑地制度による民有地の保全」

  • 世田谷区では、都市緑地法に基づく「市民緑地契約制度」を積極的に活用し、所有権を移転することなく民有の貴重な屋敷林や自然地を保全する取り組みを進めています。所有者は土地を区に無償で貸し付ける代わりに、固定資産税・都市計画税の全額免除や相続税の評価額2割減といった税制上の優遇措置を受けられます。区は土地を「市民緑地」として公開し、維持管理は区とボランティア団体が協力して行います。現在、区内には「北烏山九丁目屋敷林市民緑地」など16か所が指定されており、都市部における民有緑地減少という最重要課題に対する、所有者・住民・行政の三者にメリットのある効果的な解決策として全国的に注目されています。

千代田区「企業・行政連携による皇居外苑の生物多様性保全」

  • 千代田区に本社を置く三菱地所は、環境省や専門家と連携し、皇居外苑濠の生態系を保全・復元する「濠プロジェクト」を推進しています。このプロジェクトでは、水質悪化が進む濠から希少な在来水生植物や魚類を採取し、隣接する自社ビル(大手町パークビルディング)の敷地内に造成したビオトープ「ホトリア広場」で一時的に保護・育成(域外保全)しています。実際に、東京都区部では絶滅したとされていた水草「ミゾハコベ」の復元に成功するなど、具体的な成果を上げています。これは、都心部において企業が主体となり、自社の事業拠点と専門知識を活かして本格的な生物多様性保全に取り組む、官民連携の先進モデルです。

江戸川区「豊富な公園資源を活かした環境教育の推進」

  • 江戸川区は、一人当たりの公園面積が23区でトップクラス(令和2年時点で11.3㎡)という恵まれた環境を最大限に活用しています。区内各所の公園や自然動物園、ポニーランドなどで、子どもたちを対象とした自然観察会や生き物とのふれあい体験、環境学習プログラムを年間を通じて多数開催しています。これにより、子どもたちが幼少期から自然に親しみ、環境問題への関心を高める機会を豊富に提供しています。未来の環境保全の担い手を育成するという観点から、ハード(公園)とソフト(教育プログラム)を効果的に組み合わせた優れた取り組みと言えます。

全国自治体の先進事例

横浜市「公園愛護会制度による市民協働の公園管理」

  • 横浜市が1961年(昭和36年)に全国に先駆けて創設した「公園愛護会」は、市民協働による公園管理の最も成功したモデルとして知られています。地域の自治会町内会やボランティア団体が愛護会を結成し、公園の日常的な清掃や除草、花壇の手入れなどを担います。市はこれに対し、活動面積に応じた報奨金の支給、清掃用具等の物品提供、剪定や花壇づくりの技術支援、専門の相談員(コーディネーター)の配置など、手厚い支援策を用意しています。その結果、市内の公園における愛護会の結成率は90%を超えており、行政の管理コストを抑制しつつ、地域に愛される質の高い公園空間を維持する、持続可能な管理モデルを確立しています。

札幌市「さっぽろ生きものさがし」による市民参加型モニタリング

  • 札幌市では、市民がスマートフォンアプリ「さっぽろ生きものさがし」を使って、市内で見つけた動植物の写真を位置情報とともに投稿する「シチズンサイエンス(市民科学)」の取り組みを推進しています。この取り組みにより、行政だけでは困難な、広範囲にわたる詳細な生物生息情報のデータを、低コストで継続的に収集することが可能になります。集められたデータは、市の「生物多様性さっぽろビジョン」の基礎資料として活用されるなど、政策立案にも直接結びついています。さらに、市民にとってはゲーム感覚で地域の自然に触れるきっかけとなり、生物多様性への関心と理解を深める効果的な環境教育ツールとしても機能しています。

参考資料[エビデンス検索用]

国(省庁)関連資料
東京都関連資料
特別区・その他自治体関連資料
法人・その他団体資料

まとめ

 東京都特別区における豊かな自然環境の保全は、もはや単なる緑化事業ではなく、住民のウェルビーイングと都市の持続可能性を支える根幹的な政策です。しかし、民有緑地の減少、生態系ネットワークの分断、市民の力の未活用という深刻な課題に直面しています。本提案の、①民有地を保全する「都市緑地バンク」、②緑の質を高める「グリーンインフラ・ネットワーク」、③管理を持続させる「市民協働マネジメント」という三位一体の支援策は、これらの課題に統合的に対応し、東京を真に豊かでレジリエントな都市へと導くための不可欠な戦略です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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