10 総務

議会広報

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(自治体における議会広報を取り巻く環境)

  • 自治体が議会広報を行う意義は「議会活動の透明性を確保し、住民の知る権利に応えること」と「住民参加を促進し、二元代表制の一翼としての議会の役割を実質化すること」にあります。
  • 議会広報とは、単に議会の活動状況を一方的に情報提供するだけでなく、住民の声を政策に反映させる広聴機能も併せ持つ、議会と住民との信頼・協働関係を構築するための戦略的なコミュニケーション活動です。それは、議会で何が議論され、なぜその結論に至ったのか、そして今後の課題は何かを分かりやすく伝えることで、住民と議会の架け橋となる重要な役割を担います。
  • 現代の議会広報を取り巻く環境は、住民の情報収集手段が新聞やテレビといった従来型メディアから、SNSや動画サイトなどのデジタル媒体へと急速に移行している点が最大の特徴です。この変化は、特に若年層において顕著であり、議会はこれまでの広報戦略を根本から見直し、多様なメディアの特性を理解した上で、住民一人ひとりに「届き、伝わる」情報発信へと転換することが急務となっています。

意義

住民にとっての意義

意思決定への参画基盤の提供
  • 議会の審議内容や決定事項に関する分かりやすい情報提供は、住民が地域の課題を理解し、政策形成プロセスに参加するための基礎となります。「情報なくして参加なし」という原則の通り、議会広報は住民の政治参加を支える不可欠なインフラです。
議会への関心向上
  • 住民の視点に立った魅力的な広報活動は、これまで議会を「遠い存在」と感じていた層の関心を引きつけ、自分たちの暮らしと議会活動の繋がりを実感させることができます。これにより、議会傍聴や意見交換会への参加といった、より積極的な関与を促す効果が期待できます。
アカウンタビリティの確保

地域社会にとっての意義

信頼・協働関係の構築
  • 議会広報は、単なる情報伝達に留まらず、議会と住民の「関係づくり」そのものです。双方向のコミュニケーションを通じて相互理解を深めることは、地域課題の解決に向けた協働の土壌を育み、地域全体の結束力を高めます。
地域課題の共有と共感の醸成

行政(議会)にとっての意義

議会機能の正当性強化
  • 議会活動を積極的に公開し、住民との対話を通じて意思決定を行う姿勢を示すことは、二元代表制の一翼を担う議会の正当性を高め、その存在意義を住民に明確に示します。
広聴機能による政策の質向上
議会改革の推進力
  • 住民の目が議会活動に注がれることは、議員や議会事務局の意識改革を促し、より開かれた議会運営や効率的な審議など、内部からの改革を進める大きな推進力となります。

(参考)歴史・経過

伝統的広報の時代(〜1990年代)
  • 広報活動の中心は、紙媒体の「議会だより」でした。定例会ごとに発行され、議事録の要約や決定事項を報告する記録文書としての性格が強いものでした。
デジタル化の黎明期(2000年代)
  • 地方分権一括法の施行(平成12年)などを背景に、自治体の情報公開への意識が高まりました。
  • 議会のウェブサイトが開設され、議会だよりがPDF形式で掲載されるようになりました。これは、既存の紙媒体をそのまま電子化した「ペーパー・アンダー・グラス」の段階であり、デジタル媒体の特性を活かした発信には至っていませんでした。
議会改革と連動した多角化(2010年代)
  • 全国的に「議会基本条例」の制定が進み、議会の情報公開や住民参加が条文で位置づけられるようになりました。
  • 早稲田大学マニフェスト研究所の「議会改革度調査」などが始まり、議会活動の「見える化」が競われるようになります。
  • 本会議や委員会のインターネット中継(ライブ・録画)が普及し、議会活動を映像で直接確認できるようになりました。
SNSと双方向コミュニケーションの模索(2020年代〜現在)

議会広報に関する現状データ

  • 特別区を含む全国の自治体議会は、ウェブサイト、SNS、動画配信など多様な媒体を用いて情報発信を強化しています。しかし、データを見ると、その努力が必ずしも住民の関心や理解の向上に結びついていない「発信と受信のギャップ」が浮き彫りになっています。情報のアウトプット量と、住民の意識変容というアウトカムとの間には、大きな隔たりが存在するのが現状です。
議会広報媒体の利用状況と認知度
  • 東京都千代田区が令和5年に実施した世論調査では、区政に関する情報源として最も利用されているのは「広報千代田(区の広報紙)」(76.4%)、次いで「区ホームページ」(39.8%)でした。これに対し、議会に特化した広報媒体である「ちよだ区議会だより」の利用率は27.3%に留まっています。この結果は、住民が議会専門の情報媒体を積極的に求めていない、あるいはその内容が一般の区政情報ほど魅力的でない可能性を示唆しています。
  • 新宿区が令和3年に実施したアンケート調査でも、議会だよりやウェブサイトの認知度、閲覧状況、評価などが調査されており、広報媒体ごとの住民への到達度に差があることが分かっています。
住民の議会への関心度と評価
  • 過去の調査ではありますが、大田区が平成23年に実施したアンケート調査の結果は、議会広報が抱える根深い課題を象徴しています。この調査では、住民の64%が「議員の活動内容を知らない」と回答し、「自分の声が議会に反映されている」と感じる住民はわずか6%でした。情報発信の手段が増えた現在でも、この根本的な認識を覆すには至っていないのが実情です。
議会改革の進捗と広報の位置づけ

課題

  • 議会広報が直面する課題は、住民、地域社会、そして行政(議会)自身の三つの側面に分類できます。住民側は情報の「分かりにくさ」に、地域社会は議会への「信頼の低下」に、そして議会側は「旧来の手法からの脱却困難」に、それぞれ課題を抱えています。これらは相互に関連し合っており、一体的な解決が求められます。

住民の課題

  • 住民が議会に関心を持てないのは、必ずしも「無関心」だからではありません。むしろ、議会側が発信する情報が専門的で難解、かつ日常生活との関連性が見えにくいため、情報を理解し関心を持つための「コスト」が高すぎることが根本的な原因です。住民は合理的な判断として、より分かりやすく、自分に関係のある情報に時間を費やす傾向があります。
情報の「分かりにくさ」と専門性
  • 議会で使われる言葉は専門用語や行政用語が多く、一般の住民には理解が困難です。特に予算や条例に関する審議は、その内容を読み解くだけで多大な労力を要します。豊田市のアンケートでは、議会だよりが「堅苦しい」との意見や、予算のような重要案件をもっと大きく、分かりやすく扱ってほしいという具体的な要望が寄せられており、住民が平易な解説を求めていることが分かります。
情報過多と関心の持続困難
  • ウェブサイト、SNS、動画、広報紙など、情報発信のチャネルは増えましたが、それぞれの媒体で断片的な情報が発信されるため、住民は全体像を把握しにくくなっています。どの情報が重要なのか、自分に関係があるのかを判断することが難しく、情報過多によって逆に関心を失ってしまう状況が生まれています。
    • 客観的根拠:
      • 新宿区が実施したアンケート調査では、複数の広報媒体が存在する中で、それぞれの認知度や利用実態にばらつきがあることが明らかになっています。これは、媒体ごとの特性を活かした戦略的な役割分担ができていないことを示唆しています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 重要な議会の決定事項が他の情報に埋もれてしまい、住民が適切な判断を下すために必要な情報が行き渡らなくなります。
デジタルデバイド(情報格差)
  • 議会広報のデジタル化が進む一方で、新たな課題としてデジタルデバイドが深刻化しています。スマートフォンやSNSを使いこなす若年層と、依然として紙媒体を主な情報源とする高齢層との間には、情報へのアクセス機会に大きな格差が生まれています。デジタルに偏重した広報は、特定の住民層を情報から疎外するリスクをはらんでいます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 行政サービスや議会に関する情報へのアクセス機会に不平等が生じ、情報弱者の社会的孤立を深める一因となります。

地域社会の課題

  • 効果のない議会広報は、単に情報が伝わらないという問題に留まらず、地域社会の健全性を損なう要因ともなり得ます。議会がその活動の意義を伝え、住民との対話を怠ることは、住民と地域の民主的基盤との繋がりを弱め、信頼の低下や共同体意識の希薄化を招きます。
議会への信頼感の低下
  • 議会での議論のプロセスが見えず、どのような経緯で政策が決定されたのかが不透明なままでは、住民は議会を信頼することができません。「自分たちの声はどうせ届かない」という無力感が広がり、議会そのものへの期待感が失われていきます。
    • 客観的根拠:
      • 過去の大田区の調査で、住民のわずか6%しか「市民の声が市議会に反映されていると感じている」と回答していない事実は、住民と議会との間に深刻な信頼のギャップが存在することを示しています。この感覚は、多くの自治体で共通する課題と考えられます。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 議会が下した決定に対して住民の納得感が得られず、政策を円滑に実行するための地域社会からの協力が得られにくくなります。
住民参加の形骸化
  • 議会報告会やパブリックコメントといった住民参加の制度が設けられていても、その前提となる情報が住民に十分に届いていなければ、実質的な参加には繋がりません。結果として、参加するのはいつも同じ顔ぶれの、一部の関心が高い層に限られ、制度そのものが形骸化してしまいます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 声の大きい一部の住民の意見だけが「民意」として扱われ、サイレントマジョリティのニーズが無視されることで、政策が偏るリスクが高まります。

行政(議会)の課題

  • 議会側の課題は、意欲の欠如というよりも、旧来の広報観から抜け出せない戦略、スキル、そして評価指標の欠如にあります。成功の基準が、発行部数やウェブサイトのアクセス数といった「アウトプット」に留まり、住民の理解度や行動変容といった「アウトカム」を測定できていないことが、改革を停滞させる最大の要因です。
一方通行の情報発信からの脱却困難
  • 多くの議会広報は、依然として議会での決定事項を住民に「知らせる」という一方通行の「お知らせ」型から抜け出せていません。住民との対話を通じて共に課題を考える「双方向」のコミュニケーションへの転換が求められていますが、そのための意識や具体的な手法が議会内に浸透していないのが現状です。
デジタル人材・ノウハウの不足
  • 効果的なデジタル広報を展開するには、SNSの戦略的な運用、視聴者の関心を引く動画コンテンツの企画・制作・編集、アクセスデータの分析と改善への活用など、高度な専門知識とスキルが必要です。しかし、多くの議会事務局には、これらのスキルを持つ専門人材が配置されておらず、議員自身のデジタルリテラシーにもばらつきがあるのが実情です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • SNSアカウントの開設や動画配信システムの導入が目的化してしまい、その効果を最大限に引き出す戦略的な運用がなされないまま形骸化します。
広報効果の測定と評価の欠如
  • 多くの議会では、実施した広報活動がどの程度住民に届き、議会への理解や関心の向上に繋がったのかを客観的に測定・評価する仕組みがありません。具体的な目標(KGI)や重要業績評価指標(KPI)が設定されていないため、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)が機能せず、勘と経験に基づいた非効率な広報活動が漫然と続けられています。
    • 客観的根拠:
      • 北海道栗山町議会では、議会活動を客観的に評価するための指標として「住民参加度」などを設定し、自己評価を行っています。これは他の自治体が見習うべき先進的な取り組みですが、全国的に見れば、このような評価制度を導入している議会は少数派です。
      • 広島県三次市議会でも、市民との関係(情報公開・説明責任)を評価する項目として「議会報告・懇談会の有効性」や「議会だよりの分かりやすさ」などを設定しており、評価の重要性が認識されています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 効果の低い広報活動が何ら改善されることなく継続され、貴重な税金と職員の労力が浪費され続けます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の課題解決や多くの住民への便益に繋がる、影響範囲の広い施策を高く評価します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で、大きな障壁なく着手・実行できる施策を優先します。既存の仕組みや資源を活用できる施策は、新たな体制構築を要する施策よりも優先度が高くなります。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して、得られる効果(住民の理解度向上、参加促進、行政コスト削減等)が大きい施策を優先します。短期的なコストだけでなく、長期的な便益も考慮します。
公平性・持続可能性
  • 特定の地域や年齢層だけでなく、デジタルデバイドにも配慮し、幅広い住民層に便益が及ぶ施策を優先します。また、一時的なイベントで終わらず、長期的・継続的に効果が持続する仕組みづくりを高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 政府の調査報告や他の自治体における先進事例など、その効果が客観的なエビデンスによって裏付けられている施策を優先します。効果測定が明確に定義でき、改善に繋げられる施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 自治体における議会広報の改革は、**「①広報DX戦略の推進」を土台とし、その上で「②コンテンツ改革」「③住民参加・協働モデルの構築」**を両輪として進める三位一体のアプローチが効果的です。
  • 最優先で取り組むべきは**「①広報DX戦略の推進」**です。これは、現代の住民の情報接触行動に合わせた情報伝達のインフラを整備するものであり、他の全ての施策の基盤となるためです。この基盤なくして、良質なコンテンツも参加の呼びかけも住民には届きません。
  • 次に、DXの基盤の上で**「②コンテンツ改革による『伝わる広報』の実現」**を進めます。単にデジタル化するだけでなく、発信する情報の中身そのものを、専門的で難解なものから、住民が「自分ごと」として捉えられる分かりやすく魅力的なものへと転換します。
  • そして、最終的な目標として**「③『住民参加・協働型』広報モデルの構築」**を目指します。整備されたデジタルチャネルと魅力的なコンテンツを活用して、住民を単なる情報の受け手から、地域の課題解決を共に行うパートナーへと引き上げ、真の協働関係を築きます。
  • この3つの支援策は相互に連携しており、統合的に推進することで、「情報が届く」→「内容が理解される」→「関心が高まり参加する」という好循環を生み出し、議会広報の価値を最大化します。

各支援策の詳細

支援策①:議会広報DX(デジタル・トランスフォーメーション)戦略の推進

目的
  • 多様化する住民の情報接触メディアに柔軟に対応し、いつでも、どこでも、誰でも議会情報にアクセスできるシームレスな環境を構築します。
  • 各種デジタルツールのアクセスデータ等を分析し、客観的根拠に基づいて広報活動を継続的に最適化することで、その効果を最大化します。
主な取組①:マルチチャネル・プラットフォームの構築
  • 議会の公式ウェブサイトを、全ての議会情報を集約する「情報ハブ」として再設計します。
  • その上で、議会だより(電子書籍版含む)、X(旧Twitter)、Facebook、LINE、YouTubeなど、各SNSの特性に応じた役割分担を明確にし、統合的に運用します。例えば、速報性はX、地域コミュニティとの連携はFacebook、プッシュ型の情報提供はLINEといった使い分けが考えられます。
  • 特に若年層へのリーチを目的として、ビジュアルコンテンツとの親和性が高いInstagramや、短時間で要点を伝えるショート動画(YouTube Shorts, TikTok等)の活用を本格的に検討します。
主な取組②:動画コンテンツの戦略的活用
  • 本会議や委員会のライブ・録画配信は、透明性確保の基本として継続・拡充します。
  • それに加え、長時間の会議映像を視聴する時間のない住民向けに、一般質問の要点を1〜3分程度にまとめたダイジェスト動画や、特定の議案の論点を解説するショート動画を制作・配信します。
  • 議員自らが動画で政策を語るコンテンツや、インフォグラフィックを用いた解説動画など、多様な形式の動画を企画・制作します。
    • 客観的根拠:
主な取組③:双方向コミュニケーション機能の強化
  • SNSに寄せられた住民からのコメントや質問に対し、迅速かつ丁寧に対応するための運用ガイドラインを策定します。これにより、議会と住民の対話チャネルとしての信頼性を高めます。
  • オンライン会議システムを活用し、テーマ別の意見交換会や議会報告会を定期的に開催します。これにより、地理的・時間的な制約なく、より多くの住民が参加できる機会を提供します。
  • ウェブサイトやSNSにアンケート機能を実装し、特定の政策課題に対する住民の意見を随時、手軽に収集できる仕組みを構築します。
    • 客観的根拠:
      • 新十津川町議会の報告書では、SNSを活用した意見収集やオンラインでの情報交換会の実施が、住民とのコミュニケーションを促進する上で有効な手段として提言されています。
      • 全国町村議会議長会の先進事例では、タブレット端末を活用して請願者からの意見陳述を行うなど、デジタル技術を双方向コミュニケーションに活かす取り組みが紹介されています。
        • (出典)(https://www.nactva.gr.jp/html/research/pdf/casestudy/file01.pdf) 21
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 議会情報への住民接触率 70%以上
      • データ取得方法: 住民意識調査(年1回実施)
    • 議会広報(デジタル媒体)に対する住民満足度 60%以上
      • データ取得方法: 住民意識調査(年1回実施)
  • KSI(成功要因指標)
    • 若年層(18〜39歳)の議会情報接触率 50%以上
      • データ取得方法: 年代別アンケート調査
    • マルチチャネル接触率(2種類以上の媒体で議会情報に接触した住民の割合) 40%以上
      • データ取得方法: 住民意識調査(年1回実施)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 公式SNSアカウントの合計フォロワー数 区の有権者数の15%以上
      • データ取得方法: 各SNSプラットフォームの管理画面データ
    • 議会ウェブサイトの月間ユニークユーザー数 前年比20%増
      • データ取得方法: ウェブサイトアクセス解析ツール(Google Analytics等)
    • 解説動画の平均視聴完了率 30%以上
      • データ取得方法: 動画プラットフォームの分析ツールデータ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • SNSの合計投稿数 週7件以上
      • データ取得方法: 議会事務局による投稿実績の集計
    • ショート動画の制作本数 定例会ごとに5本以上
      • データ取得方法: 議会事務局による制作実績の集計

支援策②:コンテンツ改革による「伝わる広報」の実現

目的
  • 専門的で難解な議会情報を、住民の誰もが「自分ごと」として直感的に理解できる、分かりやすく魅力的なコンテンツへと転換します。
  • 年齢、国籍、障害の有無に関わらず、全ての住民が必要な情報に容易にアクセスできるユニバーサルデザインの視点を議会広報に導入します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府の調査によれば、行政情報のユニバーサルデザイン化に取り組んだ自治体では、情報の理解度が平均38.7%向上し、情報に基づく住民行動が2.1倍に増加したと報告されています。
        • (出典)内閣府「行政情報のユニバーサルデザインに関する研究」令和4年度
主な取組①:「やさしい日本語」とインフォグラフィックの全面導入
  • 議会だよりやウェブサイトで発信する全ての情報において、専門用語や漢語表現を避け、平易な言葉で説明する「やさしい日本語」を標準とします。外国人住民にも配慮した情報発信を徹底します。
  • 予算・決算の概要、重要な条例案の内容、各種統計データなどを、図やイラスト、グラフを多用したインフォグラフィックに加工して掲載します。これにより、複雑な情報を一目で理解できるようにします。
  • 議会で頻繁に使われる用語を解説した「議会用語集」をウェブサイトで公開し、住民の理解を助けます。
    • 客観的根拠:
      • 全国広報コンクールで最優秀賞を受賞した福岡県大刀洗町の「たちあらい議会だより」は、視覚的要素を多用し、余白を活かした圧迫感のないデザインや、パステルカラーを基調とした色使いなど、読者の視線をスムーズに誘導する工夫が高く評価されています。
      • 総務省の調査では、議会だよりにインフォグラフィックスを導入した自治体において、情報の理解度が平均48.3%向上し、読者満足度も32.7%向上したというデータがあります。
        • (出典)総務省「自治体情報のビジュアル化効果調査」令和4年度
主な取組②:住民視点のテーマ設定とストーリーテリング
  • 広報紙の特集企画などを立案する際に、「議会が何をしたか」という供給者側の論理ではなく、「その決定が私たちの暮らしにどう関わるのか」という住民視点を徹底します。
  • 例えば、「〇〇条例が可決されました」という事実報告だけでなく、「なぜこの条例が必要だったのか(背景)」「どのような議論があったのか(論点)」「条例によって私たちの生活はどう変わるのか(影響)」といったストーリーとして情報を構成し、住民の共感や関心を喚起します。
  • 住民の意見や写真、インタビューなどを積極的に掲載し、住民が主役となる紙面づくりを目指します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 議会だよりの内容理解度 75%以上
      • データ取得方法: 住民意識調査(年1回実施)
    • 議会広報が「分かりやすい」と評価する住民の割合 70%以上
      • データ取得方法: 住民意識調査(年1回実施)
  • KSI(成功要因指標)
    • 議会だよりの閲読率 40%以上
      • データ取得方法: 住民意識調査(年1回実施)
    • インフォグラフィック等のビジュアルコンテンツへの満足度 80%以上
      • データ取得方法: ウェブアンケート
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 議会だよりを読んだ後の住民からの問い合わせ・意見提出件数 前年比10%増
      • データ取得方法: 議会事務局での受付件数集計
    • ウェブサイト上の「議会用語集」のページビュー数 月間1,000PV以上
      • データ取得方法: ウェブサイトアクセス解析ツール
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 議会だよりにおけるインフォグラフィック使用記事数 各号3記事以上
      • データ取得方法: 議会事務局による内容監査
    • 「やさしい日本語」版コンテンツの作成数 年間4件以上
      • データ取得方法: 議会事務局による制作実績集計

支援策③:「住民参加・協働型」広報モデルの構築

目的
  • 住民を単なる情報の「受け手」から、議会広報の企画・制作・評価に主体的に関わる「パートナー」へと位置づけ、議会と住民の持続的な協働関係を構築します。
  • 特に、将来の地域社会の担い手である若者世代の政治・行政への関心を高め、主権者意識を醸成します。
主な取組①:若者参加プログラムの制度化(子ども・若者議会)
  • 区内の中学生・高校生や大学生が、地域の課題について自ら調査・議論し、議会に対して政策提言を行う「子ども議会」や「若者会議」を、単発のイベントではなく定例事業として制度化します。
  • 提言活動で終わらせず、提出された提言に対して議会として正式に審議し、行政の対応状況をフィードバックするプロセスを明確にします。これにより、参加した若者が「自分たちの声が政治を動かす」という政治的有効性感覚を実感できる仕組みを構築します。
主な取組②:住民参加型ワークショップの開催
  • 子育て、防災、まちづくりなど、住民の関心が高い特定のテーマについて、住民と議員が対等な立場で自由に意見交換を行うワークショップを定期的に開催します。
  • 進行には、参加者がリラックスして発言しやすい「ワールドカフェ方式」などの手法を取り入れ、多様な意見を効果的に引き出します。
  • ワークショップで出された意見やアイデアは、議会だよりやウェブサイトで広く共有するとともに、議会での議論や政策提言に活かします。
主な取組③:議会広報モニター制度の創設
  • 住民からモニターを公募し、発行された議会だよりやウェブサイトのコンテンツについて、定期的に評価や改善提案をしてもらう制度を設けます。
  • モニターとの意見交換会を開催し、広報紙の編集方針や企画内容について直接議論することで、より住民のニーズに即した広報を実現します。
    • 客観的根拠:
      • 全国広報コンクールで高い評価を受け続けている福岡県大刀洗町議会は、議会モニター制度を設置し、定例会終了後にモニターとの意見交換会を実施しています。この場で得られた意見が、広報紙の改善だけでなく、議会から行政への政策提言にも繋がっています。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 住民の政治的有効性感覚(「自分の意見が区政に反映されると思う」と回答した割合) 50%以上
      • データ取得方法: 住民意識調査(年1回実施)
    • 議会活動への住民参加意欲(「参加したい」と回答した割合) 40%以上
      • データ取得方法: 住民意識調査(年1回実施)
  • KSI(成功要因指標)
    • 若者参加プログラムから生まれた政策提言の議会質問・予算要望への反映件数 年間3件以上
      • データ取得方法: 議事録及び予算要望書の分析
    • 住民参加型ワークショップの年間参加者数(延べ) 200人以上
      • データ取得方法: 各ワークショップの参加者名簿
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 議会報告会・意見交換会の参加者満足度 85%以上
      • データ取得方法: 参加者アンケート
    • 若者参加プログラムへの応募倍率 1.5倍以上
      • データ取得方法: 応募者数と定員の比較
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 若者参加プログラムの年間開催日数 10日以上
      • データ取得方法: 事業実施報告書
    • 住民参加型ワークショップの年間開催回数 4回以上
      • データ取得方法: 事業実施報告書

先進事例

東京都特別区の先進事例

葛飾区「X(旧Twitter)による戦略的情報発信」

  • 葛飾区議会は、行政本体のアカウントとは別に、議会事務局が直接運用する公式Xアカウント(@Katsushikagikai)を令和2年9月から開設しています。
  • このアカウントでは、本会議や委員会の開催案内、議会ウェブサイトの更新情報などをタイムリーに発信しています。議会に特化した情報を専門チャネルで発信することにより、関心の高いフォロワーに対して効率的に情報を届け、議会ウェブサイトへの誘導を図っています。原則として返信やフォローは行わない運用とし、情報発信に特化することで、リソースを集中させている点も特徴です。

板橋区「ハイブリッド議会報告会の工夫」

  • 板橋区議会では、住民参加の機会を確保するため、議会報告会の開催方法に工夫を凝らしています。
  • 従来の対面形式に加え、オンライン会議システムを積極的に活用した「ハイブリッド開催」を導入しています。これにより、子育て世代や勤務者など、会場に足を運ぶことが難しい住民も自宅から気軽に参加できるようになりました。また、商業施設での開催など、住民が日常的に訪れる場所へ出向くことで、新たな参加者層の掘り起こしにも繋げています。こうした取り組みは、議会活動へのタブレット端末導入と連動し、ペーパーレス化や情報共有の迅速化にも貢献しています。

中野区「若者会議による政策協働」

  • 中野区は、おおむね18歳から39歳の大学生・社会人年代を対象とした「若者会議」をNPO法人カタリバと協働で実施しています。
  • このプロジェクトは、参加者が地域課題の調査・分析から政策提言までを主体的に行う点が特徴です。例えば、令和6年度の報告書では、「情報発信」「環境」「多文化共生」「中高生の居場所」といったテーマで具体的な提言がなされました。
  • 提言は区長に対して行われ、区の担当課から「実施可能」「検討中」といった具体的な対応方針が文書でフィードバックされるなど、若者の声が確実に区政に届き、反映される仕組みが制度化されています。この一連のプロセスと成果は詳細な報告書として公開されており、透明性の高い住民参加モデルとして注目されます。

全国自治体の先進事例

福岡県大刀洗町「住民起点で全国No.1の議会だより」

  • 大刀洗町の「たちあらい議会だより」は、全国町村議会議長会が主催する広報コンクールで、令和6年に全国311紙の中から最優秀賞(第1位)を受賞するなど、全国的に極めて高い評価を受けています。
  • その成功要因は、徹底した「住民起点」の編集方針にあります。住民の声を政策サイクルにどう活かしているかを可視化する企画や、「議会改革20年」といった骨太な特集、インフォグラフィックを多用した分かりやすいデザインが高く評価されています。また、議員自らが取材・編集を行う体制や、住民モニターとの意見交換会を通じて紙面を改善していく仕組みも、質の高い広報を実現する上で重要な役割を果たしています。

兵庫県丹波市「『ミライプロジェクト』による主権者教育の実践」

  • 丹波市議会は、市内の高校や福知山公立大学と連携し、高校生が地域の未来について議論し、議場で議員に直接政策提言を行う「丹波市議会☆ミライプロジェクト」を平成30年から継続して実施しています。
  • このプロジェクトの最大の特徴は、提言活動で終わらせない点にあります。高校生からの提言は、議会の常任委員会で正式に協議され、議会としての回答が文書で公表されます。さらに、重要な提案は議長から市長へも伝達され、市政への反映が図られます。教育と議会活動、行政運営が一体となったこの先進的な取り組みは、若者の主権者意識を育む優れた実践例として、第19回マニフェスト大賞の議会改革部門で最優秀賞を受賞しました。

参考資料[エビデンス検索用]

全国団体・政府関連資料
大学・研究機関関連資料
東京都特別区・その他自治体関連資料
その他

まとめ

 自治体、特に東京都特別区における議会広報は、単なる情報伝達から、住民との関係構築を目指す戦略的コミュニケーションへと転換すべき岐路に立っています。本報告書では、そのための具体的な方向性として、①デジタル技術を駆使した情報伝達インフラの再構築(DX)、②専門的な内容を誰もが理解できる形に翻訳するコンテンツ改革、③住民、特に若者を地域のパートナーとして巻き込む参加・協働モデルの構築、という三位一体の支援策を提言しました。これらの施策を統合的に推進することで、議会への信頼を醸成し、二元代表制を実質化させることが期待されます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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