読書活動の推進

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要（読書活動を取り巻く環境）

• 自治体が読書活動の推進を行う意義は、「こどもの生涯にわたる学習基盤の形成」と「格差のない知のアクセス機会の保障」にあります。
• こどもの読書活動は、言葉を学び、感性を磨き、人生をより深く生きる力を身に付ける上で不可欠なものです。2001年に施行された「子どもの読書活動の推進に関する法律」は、国や地方公共団体にその環境整備を責務として課しており、政策推進の法的根拠となっています。
  • （出典）文部科学省「子どもの読書活動の推進に関する法律の施行について」2001年度 ¹
  • （出典）e-Gov法令検索「子どもの読書活動の推進に関する法律」2001年 ²
• しかし、各種調査からは、特に中学校期における「読書離れ」が深刻な課題として浮かび上がっています。これは、こどもたちが読書から得られる恩恵を享受する機会を失うだけでなく、将来の学力や情報活用能力における格差拡大につながる懸念があります。
• このような状況を踏まえ、国は第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」を策定し、不読率の低減や多様なこどもたちへの機会確保を掲げています。本記事では、この国の基本計画の趣旨を踏まえ、東京都特別区における効果的な支援策を、客観的データに基づき検討・提案します。
  • （出典）文部科学省「第五次『子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画』について」2023年 ³

意義

こどもにとっての意義

認知能力の発達

• 読書を通じて、語彙力、読解力、表現力、創造力といった、あらゆる学習の基礎となる認知能力が育まれます。これは「子どもの読書活動の推進に関する法律」の基本理念にも明記されています。
  • （出典）文部科学省「子どもの読書活動の推進に関する法律の施行について」2001年度 ¹
  • （出典）山梨県「第４次やまなし子どもの読書活動推進実施計画（案）」2023年 ⁴

情緒的・社会的な発達

• 物語を通じて他者の感情や多様な価値観に触れることで、共感する力や他者を理解する力が養われ、豊かな人間関係を築く土台となります。
  • （出典）文部科学省「子どもの読書活動の推進に関する法律の施行について」2001年度 ¹

生涯学習の基盤形成

• こども時代に読書習慣を身に付けることは、生涯にわたって自律的に学び続ける力を育む上で極めて重要です。変化の激しい現代社会を生き抜くための基盤となります。
  • （出典）大阪府教育庁「子どもの読書活動推進のための実践事例」 ⁵

保護者にとっての意義

親子の絆の深化

• 特に乳幼児期における絵本の読み聞かせは、親子のコミュニケーションを促進し、情緒的な絆を深める貴重な機会となります。
  • （出典）特定非営利活動法人ブックスタート「ブックスタートの研究レポート」2021年 ⁶

こどもの発達支援

• ブックスタート事業などの支援を通じて、保護者はこどもの発達段階に応じた本の選び方や関わり方を学び、家庭でこどもの成長を効果的に支援できるようになります。
  • （出典）新潟市立図書館「令和元年度ブックスタートアンケート報告書」2019年 ⁷
  • （出典）豊中市立図書館「第2回豊中市立図書館協議会 資料」2015年 ⁸

学校・教師にとっての意義

学力向上への貢献

• 読書習慣が定着しているこどもは、国語だけでなく、全ての教科において高い学力を示す傾向があります。「朝の読書」活動は、学力向上に直接的な効果があることが多くの実践で報告されています。
  • （出典）朝の読書推進協議会「朝の読書がもたらす効果」 ⁹
  • （出典）大阪府教育庁「子どもの読書活動推進のための実践事例」 ⁵

学習活動の深化

• 学校図書館が「学習センター」「情報センター」として機能することで、調べ学習や探究的な学習活動が活性化し、こどもの主体的な学びを支援します。
  • （出典）滋賀県教育委員会「令和６年度 滋賀県における子どもの読書活動推進のための取組」2024年 ¹⁰

地域社会にとっての意義

文化的な地域づくり

• 地域全体でこどもの読書を推進する気運が高まることで、知識や文化を尊重する豊かな地域社会が形成されます。

未来への人的投資

• 読書を通じて知的好奇心や探究心を育んだこどもたちは、将来、地域の持続的な発展を担う、創造性豊かな人材へと成長することが期待されます。

行政にとっての意義

法的責務の履行

• 「子どもの読書活動の推進に関する法律」に基づき、地域の実情に応じた読書推進施策を策定・実施することは、地方公共団体の重要な責務です。
  • （出典）e-Gov法令検索「子どもの読書活動の推進に関する法律」2001年 ²

教育格差の是正

• 全てのこどもに等しく本と出会う機会を提供することは、家庭環境等による教育格差を是正し、社会全体のWell-being向上に貢献する未来への投資です。

（参考）歴史・経過

2001年

• 議員立法により「子どもの読書活動の推進に関する法律」（平成13年法律第154号）が成立・施行されました。これにより、国・地方公共団体の責務が明確化され、4月23日が「子ども読書の日」と定められました。
  • （出典）衆議院「子どもの読書活動の推進に関する法律」2001年 ¹¹
  • （出典）(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AD%90%E3%81%A9%E3%82%82%E3%81%AE%E8%AA%AD%E6%9B%B8%E6%B4%BB%E5%8B%95%E3%81%AE%E6%8E%A8%E9%80%B2%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%B3%95%E5%BE%8B) ¹²

2002年

• 法律に基づき、初となる「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が閣議決定されました。
• 同時に、学校図書館の蔵書充実を目指す「学校図書館図書整備5か年計画」が開始されました。
  • （出典）文部科学省「『子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画』の閣議決定等について」2002年 ¹³
  • （出典）全国学校図書館協議会「学校図書館図書整備5か年計画について」 ¹⁴

2007年・2012年・2017年

• 学校図書館図書整備5か年計画が継続的に実施され、予算規模が拡充されました。特に2012年度からの計画では、図書購入費に加え、新聞配備や学校司書配置に関する地方財政措置が盛り込まれました。
  • （出典）全国学校図書館協議会「学校図書館図書整備5か年計画について」 ¹⁴
  • （出典）総務省「平成29年度からの学校図書館図書整備等5か年計画の実施について」2017年 ¹⁵

2019年

• 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」（読書バリアフリー法）が施行されました。これにより、障害の有無にかかわらず全てのこどもが読書できる環境整備の重要性が高まり、アクセシブルな電子書籍等の提供が求められるようになりました。
  • （出典）文部科学省「第五次『子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画』」2023年 ¹⁶

2023年

• 第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」（令和5年度～令和9年度）が閣議決定されました。この計画では、以下の4つの基本的方針が掲げられています。
  • 1. 不読率の低減
    2. 多様な子どもたちの読書機会の確保
    3. デジタル社会に対応した読書環境の整備
    4. 子どもの視点に立った読書活動の推進
  • （出典）全国学校図書館協議会「第五次『子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画』が閣議決定」2023年 ¹⁷
  • （出典）文部科学省「第五次『子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画』について」2023年 ³

読書活動に関する現状データ

• 各種調査データは、こどもの読書活動が直面する厳しい現実を浮き彫りにしています。特に、小学校から中学校への移行期に読書習慣が急激に失われる「中1の壁」とも呼べる現象は、極めて深刻な政策課題です。小学生段階での読書推進施策が、多忙化し、興味が多様化する思春期のこどもたちにとって持続的な習慣形成につながっていない現状が示唆されます。この構造的な問題を直視し、移行期を重点的に支援する施策の構築が急務です。

こどもの不読率の推移

• 1か月に1冊も本を読まないこどもの割合（不読率）は、学年が上がるにつれて急増します。
• 客観的根拠：
  • 全国学校図書館協議会（全国SLA）の2024年調査によると、不読率は小学生で8.5％ですが、中学生で23.4％、高校生では48.3％に達します。中学生になると、約4人に1人が全く本を読んでいない状況です。
    • （出典）全国学校図書館協議会「第69回 学校読書調査の結果」2024年 ¹⁸
  • この傾向は東京都でも同様です。2025年に公表された都教育委員会の調査では、小学5年生の不読率が7.4%であるのに対し、中学2年生では11.6%と上昇しています。
    • （出典）新文化「東京都教育委員会『子供読書活動推進』調査、不読率さらに上昇」2025年 ¹⁹
    • （出典）リセマム「本を読まない不読率が上昇、高校生35%以上が不読 東京都」2025年 ²⁰
  • 法律が施行された2001年当時、中学生の不読率は43.7%であり、長年の取り組みにより大幅に改善はしたものの、依然として小学校から中学校への移行期における読書離れの課題は解決されていません。
    • （出典）文部科学省「第五次『子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画』」2023年 ¹⁶

平均読書冊数の推移

• 不読率の上昇と連動し、1か月間の平均読書冊数も学年が上がるにつれて大幅に減少します。
• 客観的根拠：
  • 全国SLAの2024年調査では、1か月の平均読書冊数は小学生が13.8冊であるのに対し、中学生は4.1冊、高校生は1.7冊へと激減しています。
    • （出典）全国学校図書館協議会「第69回 学校読書調査の結果」2024年 ¹⁸
  • このデータは、読書が一部の熱心な層に限られ、多くのこどもが読書から遠ざかっている「読書格差」の存在を示唆しています。

読書をしない理由

• こどもが読書から離れる背景には、時間の制約と興味の多様化という二つの大きな要因があります。
• 客観的根拠：
  • 中学生が本を読まない理由として、「他にしたいことがあったから（スマートフォン、ゲームなど）」「他の活動（部活動、塾など）で時間がなかったから」が上位を占めています。
    • （出典）学研キッズネット「小学生は5割、中高生は6割が本を読まない。その理由は？」2019年 ²¹
    • （出典）岡山県教育委員会「令和４年度 岡山県子どもの読書に関する実態調査 報告書」2023年 ²²
  • 加えて、「読みたいと思う本がないから」も大きな理由として挙げられており、こどもの興味関心と提供される本との間にミスマッチが生じていることがうかがえます。
    • （出典）東京都教育委員会「令和6年度 子供読書活動推進に関する調査集計結果」2025年 ²⁰
    • （出典）板橋区「第３期板橋区子ども読書活動推進計画」2022年 ²³

学校図書館の整備状況

• こどもの読書活動の拠点である学校図書館の環境整備は、依然として道半ばです。
• 客観的根拠：
  • 図書標準達成率： 国が定める蔵書冊数の基準である「学校図書館図書標準」を達成している学校は、令和2年度時点で小学校が66.4%、中学校が55.3%に留まっています。蔵書の量・質ともに不十分な学校が多いのが実情です。
    • （出典）文部科学省「第6次『学校図書館図書整備等5か年計画』の着実な実施について」2022年 ²⁴
    • （出典）総務省「平成29年度からの学校図書館図書整備等5か年計画の実施について」2017年 ¹⁵
  • 図書購入費： 令和5年度の全国の1校あたり平均図書費は、小学校で約46万円、中学校で約61万円です。この予算では、老朽化した蔵書の更新と、こどもの興味を引く新しい本を十分に揃えることは困難です。
    • （出典）(https://reseed.resemom.jp/article/2024/04/10/8534.html) ²⁵
  • 学校司書の配置率： 学校司書の配置は進んでいますが、自治体間の格差が大きく、特に東京都特別区では配置率は7割程度（暫定値）であり、その多くが非正規雇用であるという課題を抱えています。専門性を持つ人材が安定して業務に従事できる環境が整っていません。
    • （出典）東京都議会「令和4年第二回定例会 文教委員会速記録第七号」2022年 ²⁶
    • （出典）学校図書館問題研究会「2023年度『学校図書館担当職員の配置状況』等に関する調査」2024年 ²⁷

課題

• こどもの読書活動が直面する課題は、こども個人、保護者、学校、地域、行政という各主体に存在し、それらが相互に影響し合うことで、読書離れという深刻な状況を生み出す負のスパイラルを形成しています。例えば、教員の多忙化（学校の課題）は、専門職である学校司書との連携を阻害します。司書の不安定な雇用形態も相まって、魅力的な図書館プログラムや蔵書が提供されにくくなります。その結果、こどもは「読みたい本がない」（こどもの課題）と感じ、読書から遠ざかります。これを見た保護者は、読書を特別な活動と捉え、図書館予算の増額などを求める声も上がりにくく（保護者の課題）、結果として行政の支援が手薄になる（行政の課題）という悪循環に陥っています。この連鎖を断ち切るには、各主体の課題に横断的にアプローチする総合的な政策が不可欠です。

こどもの課題

読書離れと不読率の上昇

• 特に中学生になると、部活動や学習塾で多忙になること、また、スマートフォン等のデジタルメディアに費やす時間が増えることにより、読書時間が急激に減少し、不読率が大幅に上昇します。
  • 客観的根拠：
    • 全国学校図書館協議会の調査では、小学生の不読率8.5%に対し、中学生は23.4%と約2.8倍に増加しています。
      • （出典）全国学校図書館協議会「第69回学校読書調査」2024年 ¹⁸
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 基礎的な読解力や語彙力が不足し、全教科の学力低下や将来の学習機会の損失につながります。

スマートフォン等との可処分時間の競合

• こどもたちの可処分時間は、動画視聴、ゲーム、SNSといった即時的な満足感を得やすいデジタルコンテンツとの厳しい競争に晒されており、相対的に時間と集中力を要する読書の優先順位が低下しています。
  • 客観的根拠：
    • 栃木県の調査では、本を読まない理由として全世代で「テレビ・DVD・動画（YouTubeなど）の視聴に時間を使う」が最多でした。
      • （出典）栃木県教育委員会「令和4年度「とちぎの子どもの読書活動に関する実態調査」報告書」2022年 ²⁸
    • 岡山県の調査でも、読書をしない中学生の理由は「他にしたいことがある」が最多となっています。
      • （出典）岡山県教育委員会「令和４年度 岡山県子どもの読書に関する実態調査 報告書」2023年 ²²
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • こどもが深い思考や集中力を要する活動を避け、表層的な情報消費に慣れてしまう恐れがあります。

「読みたい本」との出会いの不足

• 学校図書館や地域の図書館の蔵書が、こどもたちの多様な興味や関心に応えられていない、あるいは、魅力的な本を効果的に紹介する仕組みが不足しているため、「読みたい本が見つからない」ことが読書離れの大きな一因となっています。
  • 客観的根拠：
    • 東京都の調査では、本を読まなかった理由として「読みたい本がなかった」が39.9%、「本を読むことに興味がない」が39.4%と高い割合を占めています。
      • （出典）リセマム「本を読まない不読率が上昇、高校生35%以上が不読 東京都」2025年 ²⁰
    • 板橋区の調査でも、中学生の不読の理由として「読みたい本がなかったから」が61%と最も多くなっています。
      • （出典）板橋区「第３期板橋区子ども読書活動推進計画」2022年 ²³
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 読書への関心が完全に失われ、自発的に本を手に取ることがなくなり、読書習慣が定着しません。

保護者の課題

保護者自身の読書習慣の低下

• こどもの読書習慣は、保護者の読書習慣に大きく影響されます。保護者自身が読書をしない家庭では、こどもも読書に親しむ機会が少なくなる傾向があります。
  • 客観的根拠：
    • ベネッセの追跡調査によると、家庭の蔵書数が多いほど、また、保護者自身が読書をするほど、こどもの読書時間が長くなることが示されています。
      • （出典）ベネッセ教育総合研究所「[データ集]第4回「読書行動」について考えるデータ」2023年 ²⁹
      • （出典）マイナビ子育て「子どもの読書時間、家庭環境が影響する？ 7年間の追跡調査でわかったこと」2023年 ³⁰
    • 厚生労働省の過去の調査でも、親の読書量とこどもの読書量が比例する関係にあることが指摘されています。
      • （出典）厚生労働省調査（いしかわ統計指標ランド引用）2010年 ³¹
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 家庭内での読書文化が失われ、こどもの読書習慣形成が学校任せになり、定着が困難になります。

こどもの読書活動への関与の仕方が不明

• 多くの保護者は読書の重要性を認識しているものの、こどもが成長するにつれて、どのように読書を促せばよいか、具体的な方法が分からなくなるという課題を抱えています。
  • 客観的根拠：
    • ある調査では、約9割の保護者が「読書習慣は学力に影響する」と考えている一方で、こどもの年齢が上がるにつれて読み聞かせなどの直接的な関与が減少し、具体的な工夫に悩む様子がうかがえます。
      • （出典）ママソレ「子どもの読書習慣や読んでいる本」調査 2023年 ³²
      • （出典）KG情報「子どもの読書習慣や読んでいる本」調査 2023年 ³³
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 親子間の読書に関する対話が減少し、こどもの興味や悩みを把握できず、適切なサポートができません。

学校・教師の課題

学校司書の未配置と不安定な雇用形態

• 全ての学校に専門的な知識を持つ学校司書が配置されているわけではなく、配置されていても多くが短時間の非正規雇用です。これにより、学校図書館の専門的な運営や、教員と連携した体系的な読書活動の展開が困難になっています。
  • 客観的根拠：
    • 東京都の公立小中学校における学校司書の配置率は7割程度に留まり、その多くが会計年度任用職員です。
      • （出典）東京都議会「令和4年第二回定例会 文教委員会速記録第七号」2022年 ²⁶
    • 特別区の調査では、非常勤・委託職員が多く、勤務時間も週に数日というケースが散見され、専門性を活かした継続的な活動が難しい状況が示されています。
      • （出典）学校図書館問題研究会「2023年度『学校図書館担当職員の配置状況』等に関する調査」2024年 ²⁷
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 学校図書館が単なる本の貸出場所に留まり、学習・情報センターとしての機能が発揮されず、教育活動への貢献が限定的になります。

図書購入予算の不足と蔵書の陳腐化

• 国の地方財政措置はあるものの、各自治体で必ずしも図書費として予算化されるとは限らず、多くの学校で図書購入予算が不足しています。これにより、蔵書が古くなり、こどもの興味や新しい学習指導要領に対応した資料を十分に提供できていません。
  • 客観的根拠：
    • 全国の多くの学校が、国が定める「学校図書館図書標準」の蔵書冊数を満たしていません。令和2年度時点で小学校の達成率は66.4%です。
      • （出典）文部科学省「第6次『学校図書館図書整備等5か年計画』の着実な実施について」2022年 ²⁴
    • 令和5年度の1校あたり平均図書費（小学校約46万円、中学校約61万円）では、計画的な蔵書更新は困難です。
      • （出典）(https://reseed.resemom.jp/article/2024/04/10/8534.html) ²⁵
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 生徒の読書意欲が削がれ、「図書館には面白い本がない」という認識が広がり、図書館利用率が低下します。

教員の多忙化と図書館活用の余裕のなさ

• 日々の授業準備や校務に追われる教員には、学校図書館を効果的に活用した授業を計画・実施する時間的、精神的な余裕がありません。
  • 客観的根拠：
    • 北海道の調査では、公立図書館との連携における学校側の課題として「教職員が忙しく、打合せの時間や機会がとれない」が上位に挙げられています。
      • （出典）北海道立図書館「令和元年度 公立図書館・学校図書館連携等に関する調査報告書」2020年 ³⁴
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 読書活動が授業と切り離された「おまけ」の活動となり、こどもが読書の学習面での重要性を認識できません。

地域社会の課題

公共図書館と学校図書館の連携不足

• 学校図書館と公共図書館は、それぞれがこどもの読書を支える重要な拠点ですが、両者の連携は十分に進んでいません。連携を推進する専門の担当者が不在であったり、教員の多忙さや学校司書の不安定な身分が障壁となり、組織的・継続的な連携体制が構築できていないのが現状です。
  • 客観的根拠：
    • 連携の課題として、「担当教職員が忙しい」「学校司書が配置されていない」「連携のための専門の人や組織がない」といった点が指摘されています。
      • （出典）北海道立図書館「令和元年度 公立図書館・学校図書館連携等に関する調査報告書」2020年 ³⁴
    • 連携は行われていても、資料支援が中心で、より踏み込んだ連絡会や共同事業の割合は低い状況です。
      • （出典）鎌田和宏「これからの学校図書館のあり方と公共図書館との連携」2015年 ³⁵
    • 連携を効果的に進めるには、担当者の継続的な雇用と待遇改善が不可欠であると指摘されています。
      • （出典）長倉美恵子「公立図書館の学校図書館支援に関する考察」 ³⁶
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 地域全体の蔵書や専門人材という資源が有効活用されず、こどもへのサービスが重複したり、手薄になったりします。

行政の課題

計画の実効性を担保する仕組みの欠如

• 国は「学校図書館図書整備等5か年計画」に基づき、図書購入費等を地方交付税として措置していますが、その使途は各自治体の裁量に委ねられています。そのため、必ずしも図書費として全額が執行されるとは限らず、読書推進計画が実効性を伴わない「絵に描いた餅」になる危険性があります。
  • 客観的根拠：
    • 全国学校図書館協議会は、地方交付税で措置された図書整備費が、他の経費に流用されることなく、確実に図書費として予算化されるよう長年にわたり要請活動を続けています。
      • （出典）全国学校図書館協議会「学校図書館図書整備5か年計画について」 ¹⁴
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 読書推進計画が「絵に描いた餅」となり、現場の状況が改善されず、国や自治体の政策目標が達成されません。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

• 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果

• 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くのこどもへの便益につながる施策を高く評価します。単一の課題解決よりも、複数の課題に横断的に効果を及ぼす施策を優先します。

実現可能性

• 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の体制・仕組みを活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策より優先度が高くなります。

費用対効果

• 投入する経営資源（予算・人員・時間等）に対して得られる効果が大きい施策を優先します。短期的コストよりも長期的便益を重視し、将来的な財政負担軽減効果も考慮します。

公平性・持続可能性

• 特定の地域・年齢層だけでなく、幅広いこどもに便益が及ぶ施策を優先します。一時的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。

客観的根拠の有無

• 政府資料や学術研究等のエビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。先進事例での成功実績があり、効果測定が明確にできる施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

• こどもの読書活動を取り巻く課題は相互に関連しており、単一の施策では効果が限定的です。そこで、「人（専門性）」「本（環境）」「機会（体験）」の3つの要素を一体的に強化する、以下の3つの支援策を優先的に推進することを提案します。
• 最優先は「支援策①：学校図書館の機能強化と司書の専門性向上」です。これは全ての読書活動の基盤となる「人」と「環境」を整備するものであり、他の施策の効果を最大化するための土台となります。学校図書館が魅力的でなければ、どんな読書機会を提供してもこどもは集まりません。
• 次に優先すべきは「支援策②：「読みたい」を引き出す多様な読書機会の創出」です。整備された基盤を活用して、こどもの興味・関心を喚起し、「読みたい」という内発的動機を引き出します。
• 最後に「支援策③：家庭・地域との連携による読書習慣の定着支援」で、学校での取り組みを家庭や地域に広げ、読書を生活の一部として根付かせることで、生涯にわたる習慣化を図ります。これら3つの施策は相互に連携し、相乗効果を生むことで、読書離れの負のスパイラルを断ち切ることを目指します。

各支援策の詳細

支援策①：学校図書館の機能強化と司書の専門性向上

目的

• 学校図書館を単なる図書室から、授業や探究活動を支える「学習・情報センター」へと転換させ、全てのこどもに質の高い読書環境を提供します。
• 学校司書の専門性を高め、安定した身分を保障することで、教員と対等なパートナーとして連携し、持続可能な読書推進体制を構築します。

主な取組①：学校司書の全校配置と処遇改善

• 特別区内の全公立小中学校に、専門職として学校司書を配置します。配置にあたっては、週30時間以上の勤務時間を確保し、会計年度任用職員としての安定した雇用を目指します。
• 司書の専門性や経験年数に応じた研修機会の提供と、それを評価し処遇に反映させる仕組みを検討します。これにより、専門職としてのキャリアパスを明確にし、質の高い人材の確保・定着を図ります。
• 客観的根拠：
  • 学校司書の配置率が高い都道府県は、図書標準達成率や図書購入冊数も多い傾向にあり、司書の存在が図書館環境全体の質を向上させることが示唆されています。
    • （出典）文部科学省「第6次『学校図書館図書整備等5か年計画』の着実な実施について」2022年 ²⁴
  • 東京都の学校司書の多くが非正規雇用であり、専門性を活かした活動を継続する上での課題となっています。安定した雇用は、学校図書館機能の向上のために不可欠です。
    • （出典）東京都議会「令和4年第二回定例会 文教委員会速記録第七号」2022年 ²⁶

主な取組②：「学校図書館図書標準」の達成と計画的な蔵書更新

• 国の「第6次学校図書館図書整備等5か年計画」に基づき措置される地方交付税を、確実に図書購入費として予算化するための区独自の仕組み（例：目的を特定した基金の設置や予算編成方針への明記）を構築します。
• 各学校において、教員と司書が連携し、こどもの興味・関心の動向や学習指導要領の改訂内容を踏まえた「図書資料選定・廃棄基準」を策定します。これに基づき、古く魅力の薄れた本を計画的に廃棄・更新し、常に新鮮で魅力的な蔵書構成を維持します。
• 客観的根拠：
  • 国は、令和4年度からの5年間で全ての小中学校において図書標準の達成を目指す計画を立てており、自治体にはその着実な実施が求められています。
    • （出典）文部科学省「第6次『学校図書館図書整備等5か年計画』の着実な実施について」2022年 ²⁴
    • （出典）current.ndl.go.jp「第6次『学校図書館図書整備等5か年計画』が公表される」2022年 ³⁷

主な取組③：デジタル図書館サービスの導入・拡充

• 区内全小中学校で共通して利用可能な電子図書館プラットフォームを導入し、電子書籍やオーディオブックを提供します。これにより、時間や場所を選ばない読書機会を創出します。
• 特に、「読書バリアフリー法」の趣旨を踏まえ、発達障害等で紙の書籍を読むことが困難なこども向けのマルチメディアDAISY図書や、日本語指導が必要なこども向けの多言語対応コンテンツを重点的に整備します。
• 客観的根拠：
  • 第五次基本計画では、「デジタル社会に対応した読書環境の整備」が基本的方針の一つとして掲げられており、GIGAスクール構想と連携した図書館のDX推進が重要とされています。
    • （出典）文部科学省「第五次『子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画』について」2023年 ³
    • （出典）出版文化産業振興財団「第五次『子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画』の概要」2023年 ³⁸

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 中学校卒業時の不読率を10%未満に低減（現状：都11.6%、全国23.4%）
    • データ取得方法： 区が実施する児童・生徒の読書状況調査（隔年）
• KSI（成功要因指標）
  • 区内小中学校の学校図書館図書標準の達成率100%
    • データ取得方法： 教育委員会による各学校の蔵書数調査（年1回）
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 児童・生徒の学校図書館利用率95%以上
    • データ取得方法： 学校図書館システムの利用ログ分析またはアンケート調査
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 学校司書の配置率100%（週30時間以上勤務）
    • データ取得方法： 教育委員会の人事データ
  • 年間図書購入予算の図書標準達成計画に基づく執行率100%
    • データ取得方法： 教育委員会の予算執行状況データ
  • 電子図書館の導入校率100%
    • データ取得方法： 教育委員会の導入実績報告

支援策②：「読みたい」を引き出す多様な読書機会の創出

目的

• こどもの興味・関心を引き出し、「読まされて読む」のではなく「自ら読みたくて読む」という自発的な読書へとつなげる、多様な「きっかけ」を学校生活の中に意図的に作り出します。
• 読書活動を授業や学校行事と有機的に結びつけ、読書の楽しさや有用性をこども自身が実感できる体験を提供します。

主な取組①：「朝の読書」活動の全校実施と質の向上

• 区内の全小中学校で、始業前の10分から15分間、全校一斉に静かに読書をする「朝の読書」活動を継続的に実施します。
• 「みんなでやる（教員も参加）」「毎日やる」「好きな本でよい」「ただ読むだけ」の4原則を徹底し、こどもが落ち着いて一日の学校生活をスタートできる環境を学校全体でつくります。
• 客観的根拠：
  • 「朝の読書」を導入した学校では、こどもの落ち着き、集中力の向上、遅刻の減少、語彙力の向上など、多岐にわたる教育的効果が報告されています。
    • （出典）朝の読書推進協議会「朝の読書とは」 ⁹
    • （出典）筑波大学「生涯教育 33号」 ³⁹
  • 全校一斉の読書活動は、特に高校段階で実施率が低下する傾向にあり、義務教育段階での習慣化が重要です。
    • （出典）文部科学省「学校図書館の現状に関する調査」 ⁴⁰

主な取組②：江戸川区「読書科」を参考にした探究的な読書活動の導入

• 週に1時間程度、教科の枠を超えて、学校図書館を拠点とした探究的な読書活動の時間を設定します。
• 学校司書と教員が協働し、こどもたちが自ら課題を見つけ、複数の資料を比較・検討しながら情報を収集・整理し、自分の考えをまとめて発表する、といった一連の学習活動を体系的に指導します。
• 客観的根拠：
  • 江戸川区では、全国で初めて「読書科」を設置し、本で学ぶこどもを育てることを目指しています。これにより、読書が単なる娯楽ではなく、学びを深めるための重要なツールであることをこどもたちが認識できます。
    • （出典）特別区協議会「特別区の広報誌」第21回 江戸川区 ⁴¹
    • （出典）江戸川区立第二葛西小学校「読書活動推進の取組」 ⁴²

主な取組③：世田谷区「子ども読書リーダー」を参考にしたピア・リーディングの推進

• 読書に関心のある小学校高学年〜中学生を「子ども読書リーダー（子ども司書）」として育成する講座を実施します。
• 育成されたリーダーが主体となり、全校生徒に向けたおすすめ本の紹介（POP作成、校内放送）、ビブリオバトル、低学年への読み聞かせ会などを企画・運営します。こども同士が本を薦め合う活動は、教員からの指導とは異なる高い訴求力を持ちます。
• 客観的根拠：
  • 世田谷区では「子ども司書講座」を通じて、こども自身が読書の楽しさを広める担い手となる取組を実践しており、こどもの主体性を引き出す有効な手法とされています。
    • （出典）東京都「子供の読書活動推進計画 事例集」 ⁴³
    • （出典）世田谷区「第２次世田谷区子ども読書活動推進計画の取り組み内容」 ⁴⁴

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 「読書が好き・まあ好き」と回答する中学生の割合80%以上
    • データ取得方法： 区が実施する児童・生徒の読書状況調査（隔年）
• KSI（成功要因指標）
  • 児童・生徒1人当たりの年間図書貸出冊数（小学校：50冊以上、中学校：20冊以上）
    • データ取得方法： 学校図書館システムの貸出記録データ
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 「子ども読書リーダー」活動への参加率（対象学年）20%以上
    • データ取得方法： 各学校からの活動報告の集計
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 「朝の読書」の全校実施率100%
    • データ取得方法： 教育委員会による実施状況調査
  • 探究的な読書活動の年間実施時間数（モデル校）年間10時間以上
    • データ取得方法： 各学校の教育課程報告
  • 「子ども読書リーダー」育成講座の年間開催回数（区全体）年2回以上
    • データ取得方法： 教育委員会の事業実施記録

支援策③：家庭・地域との連携による読書習慣の定着支援

目的

• 家庭における読書環境を豊かにし、乳幼児期からの切れ目のない読書習慣の形成を支援します。
• 学校、公共図書館、地域ボランティア等がそれぞれの専門性や資源を活かして連携し、地域全体でこどもの読書を支える重層的なセーフティネットを構築します。

主な取組①：ブックスタート事業の拡充とフォローアップ

• 区内全ての0歳児を対象に、乳幼児健診の機会を活用してブックスタート事業を実施します。絵本2冊と啓発資料の入ったパックを手渡し、ボランティアが読み聞かせの実演を行います。
• 1歳6か月児健診、3歳児健診の機会にも、発達段階に応じたおすすめ絵本リストの提供や、図書館のおはなし会への案内を行うなど、継続的なフォローアップ体制を構築し、一過性のイベントで終わらせないようにします。
• 客観的根拠：
  • 全国の自治体の87.4%が何らかの形で赤ちゃんへの絵本贈呈事業を実施しており、子育て支援の標準的な施策となっています。
    • （出典）ブックスタート「赤ちゃんへの絵本贈呈事業に関する全国調査2024」 ⁴⁵
  • ブックスタート事業は、保護者が読み聞かせを始めるきっかけとして高い効果が認められており、その後の図書館利用にもつながっています。
    • （出典）新潟市立図書館「令和元年度ブックスタートアンケート報告書」2019年 ⁷
    • （出典）南アルプス市立図書館「ブックスタートアンケート結果」 ⁴⁶

主な取組②：保護者向け読書支援講座の開催

• 区立図書館や子育て支援センター、児童館等で、保護者を対象とした読書支援講座を定期的に開催します。
• 内容は、「月齢に合わせた絵本の選び方」「読み聞かせのコツ」「読書嫌いにさせないための関わり方」「デジタル時代の子育てと読書」など、保護者の具体的な悩みに応える実践的なものとします。
• 客観的根拠：
  • 保護者がこどもに読書の大切さを伝えることや、家庭に本を置くといった働きかけは、こどもの読書時間に明確な正の相関があり、保護者への啓発は極めて重要です。
    • （出典）ベネッセ教育総合研究所「[データ集]第4回「読書行動」について考えるデータ」2023年 ²⁹

主な取組③：学校・公共図書館連携コーディネーターの配置

• 区立中央図書館に、区内の学校図書館と公共図書館の連携を専門に担当する「連携コーディネーター」（司書職）を配置します。
• コーディネーターは、学校からの団体貸出の要望を一元的に受け付け、円滑な物流を確保するほか、公共図書館のイベント情報を学校に提供したり、学校の調べ学習のテーマに合わせた資料セットを作成・提供したりするなど、組織的な連携を推進します。
• 客観的根- 拠：
  • 学校と公共図書館の連携における最大の課題は、双方の担当者の多忙さや調整役の不在です。専門のコーディネーターを置くことで、この課題を克服し、連携を質・量ともに向上させることができます。
    • （出典）北海道立図書館「令和元年度 公立図書館・学校図書館連携等に関する調査報告書」2020年 ³⁴
    • （出典）長倉美恵子「公立図書館の学校図書館支援に関する考察」 ³⁶

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 小学校入学前のこどもを持つ保護者の週1回以上の読み聞かせ実施率80%以上
    • データ取得方法： ブックスタートフォローアップ調査、保護者アンケート
• KSI（成功要因指標）
  • 公共図書館における児童向け資料の個人・団体貸出総冊数 前年度比10%増
    • データ取得方法： 公共図書館の貸出統計データ
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 保護者向け講座の参加者満足度90%以上
    • データ取得方法： 講座終了後のアンケート調査
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • ブックスタート事業の対象児へのパック手渡し率100%
    • データ取得方法： 保健センター等での実施記録
  • 保護者向け講座の年間開催回数（区全体）年12回以上
    • データ取得方法： 図書館・子育て支援施設の事業実施記録
  • 学校支援のための団体貸出セット作成数 年間100セット以上
    • データ取得方法： 公共図書館の業務記録

先進事例

東京都特別区の先進事例

江戸川区「読書科の設置による教科横断的な読書活動」

• 江戸川区は、平成24年度から区内の全公立小・中学校で全国初となる「読書科」を設置しました。これは、国語科とは別に、年間を通じて図書館活用能力と読書への関心を育むことを目的とした独自の教科です。
• 「読書科」では、学校司書と教員が連携し、図書館資料を用いた調べ学習、情報の整理・分析、発表といった一連の探究的な活動を体系的に行います。これにより、こどもたちは読書の楽しさだけでなく、「学びの道具」としての本の価値を実感することができます。この取り組みは、読書を教科の枠を超えた全ての学習の基盤と位置づける画期的な事例です。
• 客観的根拠：
  • （出典）特別区協議会「特別区の広報誌 第21号 特集 江戸川区 全国初の試み、豊かな人間形成をめざした『読書科』設置」 ⁴¹
  • （出典）江戸川区「江戸川区立図書館基本計画」2023年 ⁴⁷
  • （出典）江戸川区立第二葛西小学校「読書活動推進の取組」 ⁴²

世田谷区「子ども読書リーダー（子ども司書）の育成」

• 世田谷区立図書館では、こども自身が読書推進の担い手となる「子ども読書リーダー（子ども司書）講座」を夏季休業中に実施しています。対象は小学校高学年で、図書館の仕事や調べ学習、おはなし会の手法などを学びます。
• 講座を修了したこどもたちは、自らの学校や地域で、おすすめ本の紹介やビブリオバトルを企画・運営します。教員や大人から薦められるのとは異なり、同世代の仲間からの働きかけは、本への関心が薄れがちなこどもたちにとって強力な動機づけとなります。こどもの主体性を尊重し、内側から読書活動を盛り上げる優れた事例です。
• 客観的根拠：
  • （出典）東京都「子供の読書活動推進計画 事例集」 ⁴³
  • （出典）世田谷区「第２次世田谷区子ども読書活動推進計画の取り組み内容」 ⁴⁴
  • （出典）公益社団法人読書推進運動協議会「第50回『野間読書推進賞』贈呈式」2020年 ⁴⁸

杉並区「地域ボランティアとの協働による読書支援」

• 杉並区では、中央図書館が主体となり、地域住民を対象とした「図書館子ども読書ボランティア講座」を定期的に開催しています。この講座では、絵本の選び方や読み聞かせの技術、わらべうたなどを学びます。
• 講座修了者はボランティアとして登録され、区内各所の保健センターで実施されるブックスタート事業や、図書館のおはなし会で活動します。行政の力だけでは手の届きにくい、きめ細やかな読書支援を、地域の力で実現している点が特徴です。持続可能な読書推進体制を地域ぐるみで構築するモデルケースと言えます。
• 客観的根拠：
  • （出典）杉並区「図書館子ども読書ボランティア講座」2023年 ⁴⁹
  • （出典）杉並区「杉並区子ども読書活動推進計画（令和6～8年度）」2024年 ⁵⁰

全国自治体の先進事例

福井県「『本のあるまいにち』プロジェクト」

• 福井県教育委員会は、こどもの発達段階に応じた72冊の推奨図書リスト「本のあるまいにち」を作成し、県内の全小学校に配布しています。
• このプロジェクトの特筆すべき点は、リスト配布に留まらず、公共図書館の司書が学校へ出向き、推奨図書を活用したブックトークや読み聞かせを実施していることです。行政（教育委員会）、学校、公共図書館がそれぞれの専門性を持ち寄って連携し、質の高い選書とこどもへの効果的なアプローチを両立させている点が全国の模範となります。
• 客観的根拠：
  • （出典）福井県「令和5年度わくわく読書推進事業（学校での取組）」2024年 ⁵¹
  • （出典）福井県「令和6年度わくわく読書推進事業（学校での取組）」2024年 ⁵²

和歌山県（有田川町等）「給食時間の朗読放送」

• 和歌山県内の一部の自治体では、文部科学省の委託事業として、小学校の給食時間に朗読CDやボランティアによるライブ朗読を放送するユニークな取り組みを行っています。
• こどもたちがリラックスしている食事の時間に、耳から物語に触れる機会を創出します。放送後には、関連図書を学校図書館に設置することで、興味を持ったこどもが自然に本を手に取る流れを作っています。時間がない、本を読むのが苦手といったこどもたちに対する読書の「入り口」として、非常に効果的なアプローチです。
• 客観的根拠：
  • （出典）文部科学省「令和5年度読書活動推進事業（地域の読書活動の推進）事業成果報告書」2024年 ⁵³

参考資料［エビデンス検索用］

法律・基本計画

• 子どもの読書活動の推進に関する法律（平成13年法律第154号） ²
• 第五次「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」（令和5年3月27日閣議決定） ¹⁶
• 第6次「学校図書館図書整備等5か年計画」（令和4年度～令和8年度） ²⁴
• 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律（読書バリアフリー法）（令和元年法律第49号） ¹⁶

全国統計・調査

• 全国学校図書館協議会「学校読書調査」各年度 ¹⁸
• 文部科学省「学校図書館の現状に関する調査」各年度 ⁴⁰
• ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」 ⁵⁴
• ブックスタート「赤ちゃんへの絵本贈呈事業に関する全国調査」 ⁴⁵

東京都・特別区調査

• 東京都教育委員会「子供読書活動推進に関する調査集計結果」各年度 ⁵⁵
• 各特別区「子ども読書活動推進計画」及び関連調査報告書
• 学校図書館問題研究会「学校図書館担当職員の配置状況等に関する調査（東京都版）」 ²⁷

先進事例関連資料

• 文部科学省「読書活動推進事業 事業成果報告書」 ⁵³
• 各自治体・教育委員会のウェブサイト、計画書、報告書等
• 朝の読書推進協議会ウェブサイト ⁹

まとめ

　こどもの読書離れ、特に中学校期における深刻な状況は、単に個人の興味の問題ではなく、学校の人的・物的リソース不足、家庭や地域のサポート体制の脆弱さ、そして行政施策の実効性といった構造的な課題が絡み合った結果です。この負のスパイラルを断ち切るためには、「人（専門性）」「本（環境）」「機会（体験）」の三位一体の改革が不可欠です。具体的には、専門職としての学校司書の全校配置と処遇改善を核とし、魅力的な蔵書とデジタル環境を整備した上で、こどもの主体性を引き出す多様な読書体験を提供し、その活動を家庭・地域連携で支えるという総合的なアプローチが求められます。
　本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
　引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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