10 総務

行政財産の目的外使用許可

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(行政財産の目的外使用許可を取り巻く環境)

  • 自治体が行政財産の目的外使用許可を戦略的に行う意義は、「未利用・低利用の公有資産を新たな地域価値の源泉へと転換すること」と、「人口構造の変化や公共施設の老朽化が進む時代における財政の持続可能性を向上させること」にあります。
  • 行政財産とは、地方自治法に基づき、庁舎、学校、公民館といった公用または公共用に供される財産のことを指します。
  • これらの財産は、本来の目的以外での使用は原則としてできませんが、地方自治法第238条の4第7項において「その用途又は目的を妨げない限度において」使用を許可することが認められています。この「用途又は目的を妨げない限度」という一文が、全ての判断の基礎となります。
  • 東京都特別区においては、公共施設の老朽化と少子高齢化による住民ニーズの多様化が同時に進行しており、この目的外使用許可制度を単なる受動的な行政手続きとしてではなく、地域課題解決のための能動的な戦略ツールとして活用することが極めて重要になっています。

意義

住民にとっての意義

サービス選択肢の拡大
  • 従来型の公共施設では対応しきれなかった新たなサービスを、身近な場所で享受できるようになります。
  • 例えば、廃校の余裕教室が子育て支援拠点や高齢者の交流サロン、NPOが運営する多文化共生スペースなどに生まれ変わることで、住民の多様なライフステージのニーズに直接応えることが可能となります。
地域コミュニティの活性化
  • 活用されずに閉鎖されていた施設が、新たな人々の集いの場として再生されることで、地域内の交流が活発化します。
  • 世代を超えた交流や新たな活動が生まれることで、地域全体の活気が向上し、コミュニティの絆が強化されます。
    • (出典)(https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000909695.pdf)

地域社会にとっての意義

NPO・公共的団体の活動基盤支援
地域経済への貢献

行政にとっての意義

財政負担の軽減と新たな財源確保
資産の有効活用と価値向上
政策目的の効率的達成

(参考)歴史・経過

  • ##### 昭和22年(1947年)
    • 地方自治法が制定され、行政財産の目的外使用に関する基本的な法的枠組みが設けられました。
  • ##### 昭和30年代~(1950年代~)
    • 高度経済成長期に、全国で学校、庁舎、公民館などの公共施設が大量に建設されました。この時期、目的外使用は災害時の緊急利用など、例外的かつ短期的なものが中心でした。
  • ##### 昭和63年(1988年)
    • 地方自治法施行令が改正され、商工会などが行政財産を貸し付けられる法人の対象に加えられるなど、活用の道が徐々に広がり始めました。
    • (出典)高浜市議会「議会だより」
  • ##### 平成18年(2006年)
    • 地方自治法が改正され、行政財産の「一部」について、民間事業者等への「貸付」が可能となりました。これにより、庁舎の余剰スペースを民間に長期間貸し出すなど、より柔軟で安定的な官民連携の道が開かれました。
    • (出典)総務省「公共施設等の有効活用について」
  • ##### 平成20年代~(2010年代~)
    • 人口減少・少子高齢化の本格化と公共施設の老朽化が全国的な課題となり、国が各自治体に「公共施設等総合管理計画」の策定を要請しました。これにより、場当たり的な対応ではなく、戦略的な資産管理(アセットマネジメント)の視点が不可欠となりました。
    • (出典)小平市「小平市公共施設等総合管理計画(2022-2031)」
    • (出典)(https://www.mlit.go.jp/common/001050344.pdf)
  • ##### 令和時代(2019年~)
    • DX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進と連動し、オンラインでの申請手続きの導入や、GIS等を活用したデータに基づく戦略的な公有財産活用(PRE戦略)が新たな潮流となっています。

行政財産の利活用に関する現状データ

全国の廃校施設・余裕教室の状況
  • 少子化の進行に伴い発生する廃校施設や余裕教室は、行政財産活用の最大のポテンシャルを秘めた資源です。
  • 文部科学省の最新調査によると、施設が現存する廃校7,612校のうち、活用されているのは5,661校(74.4%)に留まり、4分の1にあたる1,951校(25.6%)が未活用のままとなっています。
  • 未活用の主な理由として、「地域などからの要望がない」(41.5%)と「建物が老朽化している」(41.4%)がほぼ同率で挙げられています。これは、資産と潜在的な利用者を結びつけるマッチング機能の不全と、初期投資の壁という二つの大きな課題を示唆しています。
    • (出典)(https://reseed.resemom.jp/article/2025/04/10/10674.html)
  • また、公立小中学校等における余裕教室は全国で73,247教室存在します。その大部分は学校内で特別教室などとして活用されていますが、放課後児童クラブや保育所といった学校施設以外の目的での活用は2,801教室にとどまっており、地域に開かれた活用にはまだ伸びしろがあります。
東京都特別区における公共施設の老朽化
  • 東京都特別区内の公共施設の多くは、高度経済成長期に集中的に整備されており、今後、一斉に大規模改修や建替えの時期を迎えます。
  • この問題は、例えば小平市が策定した「公共施設等総合管理計画」でも指摘されており、将来的な財政負担の増大を見据えた、総合的かつ計画的な管理(統廃合、複合化、有効活用)が不可避となっています。
  • 全国的な試算では、計画的な公共施設マネジメントに取り組むことで、将来の更新費用を約30%削減できるケースも報告されており、戦略的な資産活用は財政健全化に直結する重要なテーマです。
高齢化の進展と変化する住民ニーズ
  • 日本の高齢化は世界で最も高い水準にあり、令和7年(2025年)の高齢社会白書によれば、65歳以上の者がいる世帯は全世帯の約半数を占めています。特に、65歳以上の一人暮らしの者が男女ともに増加傾向にあり、地域における新たな支え合いの仕組みや、孤立を防ぐための身近な居場所の必要性が高まっています。
  • 一方で、高齢者の就業意欲は非常に高く、60歳以上の人のうち「働けるうちはいつまでも働きたい」と考える人が4割を超え、「70歳くらいまで」と合わせると8割以上が就労に意欲的です。これは、高齢者を単なるサービスの受け手としてではなく、地域の担い手として捉え、活動の場を提供していく視点の重要性を示しています。

課題

住民の課題

ニーズと既存施設のミスマッチ
  • 住民が真に必要としている身近な居場所(例:高齢者の交流サロン、子育て世代の支援拠点、多文化交流スペース)と、既存の画一的な大規模施設との間に機能的な乖離が生じています。
    • 客観的根拠:
      • 65歳以上の一人暮らし世帯の増加は、地域における孤立防止や見守りのための、小規模で多機能な拠点の必要性を示唆しています。既存の大規模な公民館などでは、こうしたきめ細やかなニーズに対応しきれない場合があります。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 必要なサービスにアクセスできない住民が増え、社会的孤立や地域コミュニティの活力低下が進行します。

地域社会の課題

未利用・低利用施設の存在による地域の魅力低下
  • 活用されていない廃校や空き施設が地域に放置されることは、景観を損ない、防犯・防災上のリスクを高めるだけでなく、地域全体の魅力や活力を低下させる要因となります。
    • 客観的根拠:
      • 全国で1,951校もの廃校施設が未活用の状態にあり、その理由として「地域からの要望がない」が上位に挙げられていることは、地域側からの有効な活用提案が生まれにくい、あるいは行政とのマッチングが十分に機能していない現状を物語っています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域のイメージが悪化し、人口流出や新たな住民の転入阻害につながる「負のスパイラル」に陥ります。
NPO等の活動基盤の脆弱性
  • 地域の多様な課題解決を担うNPOや市民活動団体が、活動の拠点となる安価なスペースを確保できず、活動の継続や拡大が困難になっているケースが多く見られます。
    • 客観的根拠:
      • 品川区の事例では、NPOが区の施設(児童センター、すまいるスクール等)の運営を受託しており、公有財産がNPOの重要な活動基盤となっていることがわかります。こうした活用機会がなければ、NPOによる地域貢献活動は大きく制約されてしまいます。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 行政サービスを補完する多様な市民活動が停滞し、地域課題の解決力が総合的に低下します。

行政の課題

縦割り行政による非効率な資産管理
  • 教育委員会が所管する学校、福祉保健局が所管する福祉施設など、施設を所管する部署ごとに資産が管理され、全庁的な視点での戦略的な利活用(PRE戦略)が欠如している場合が多く見られます。これにより、部署をまたいだ複合的な活用や、地域全体の最適配置の検討が進みません。
    • 客観的根拠:
      • 国が「まちづくりのための公的不動産(PRE)活用ガイドライン」において、まちづくり部門、管財部門、各施設所管部門の連携の必要性を強調していること自体が、多くの自治体でこうした連携が不足していることの裏返しと言えます。
        • (出典)(https://www.mlit.go.jp/common/001050344.pdf)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 価値ある公有財産が有効活用されないまま塩漬けにされ、機会損失と財政負担の増大を招き続けます。
硬直的な制度運用と手続きの煩雑さ
  • 「前例踏襲」や「リスク回避」の意識が強く、法令(地方自治法第238条の4第7項)の「用途又は目的を妨げない限度」を過度に狭く解釈しがちです。また、申請手続きが煩雑で時間がかかり、民間事業者やNPOの活用意欲を削いでいる実態があります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 革新的なアイデアを持つ民間事業者やNPOが参入を諦め、公有財産活用の可能性が大きく狭まります。
財源・ノウハウ不足による改修の停滞
  • 活用ポテンシャルがある施設でも、老朽化している場合、その改修に必要な財源や、リノベーションに関する専門的ノウハウが行政内部に不足しているため、具体的な活用に踏み出せないケースが少なくありません。
    • 客観的根拠:
      • 廃校が未活用である理由の上位に「建物が老朽化している」(41.4%)が挙げられていることが、この課題の深刻さを物語っています。
        • (出典)(https://reseed.resemom.jp/article/2025/04/10/10674.html)
      • 渋谷区の新庁舎整備や紫波町のオガールプロジェクトのように、民間の資金とノウハウを活用して大規模な施設整備を実現した成功事例は、逆に行政単独での事業展開の困難さを示しています。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 本来は価値ある資産が適切な改修を受けられないまま廃墟化し、最終的に多額の解体費用が発生します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • ##### 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • ##### 実現可能性
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の仕組みや資源を活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策よりも優先度が高くなります。
  • ##### 費用対効果
    • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果(財政的便益・社会的便益)が大きい施策を優先します。短期的なコストだけでなく、将来的な財政負担の軽減効果も考慮します。
  • ##### 公平性・持続可能性
    • 特定の地域や層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、一時的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
  • ##### 客観的根拠の有無
    • 国のガイドラインや先進自治体の成功事例など、効果が実証されている、あるいは高い確度で見込める施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 行政財産の目的外使用許可を活性化し、地域価値の創造につなげるためには、「①戦略的意思決定」「②円滑な実行プロセス」「③多様な担い手との連携」という3つの階層からなる施策を総合的に推進する必要があります。
  • これらのうち、最も優先度が高いのは「支援策①:戦略的アセットマネジメント(PRE戦略)の推進」です。これは、場当たり的な対応から脱却し、全ての施策の土台となる「方針」を確立するための、全ての出発点となる施策です。
  • 次に、確立した方針を円滑に実行に移すための「仕組み」として「支援策②:許可手続きの円滑化とDXの推進」を整備します。
  • そして、これらの基盤の上に、多様な「担い手」との連携を本格化させる「支援策③:官民連携(PPP/PFI)とNPO等との協働強化」を展開します。これら3つの施策は相互に関連しており、一体的に進めることで相乗効果が最大化されます。

各支援策の詳細

支援策①:戦略的アセットマネジメント(PRE戦略)の推進

目的
  • 全庁横断的な視点で公有財産を「経営資源」として捉え直し、その価値を最大化するための中長期的な活用方針を策定します。
  • 個別の施設に対する「維持・活用・再編・処分」の判断基準を明確化し、客観的データに基づく戦略的な意思決定を可能にすることを目指します。
主な取組①:公有財産データベースの一元化・可視化
  • 各部署が個別に管理している施設台帳(所在地、面積、築年数、構造等)を統合し、維持管理コスト、光熱水費、稼働率、耐震性能といった運営データを紐づけた全庁共有のデータベースを構築します。
  • GIS(地理情報システム)を活用し、これらの施設情報を地図上にプロットし、周辺の人口動態(年齢構成、世帯構成)、都市計画情報、近隣の公共施設配置などと重ね合わせることで、地域ごとの資産状況とニーズを「見える化」します。
    • 客観的根拠:
      • 国の「PRE活用ガイドライン」では、PRE戦略の第一歩として、保有する不動産情報の整理・一元化(総量把握・面的把握)が不可欠であるとされています。
        • (出典)(https://www.mlit.go.jp/common/001050344.pdf)
主な取組②:全庁横断的なPRE推進体制の構築
  • 副区長など、部署横断的な調整権限を持つ役職者をトップとする「公有財産活用推進本部(仮称)」を設置します。
  • 構成員は、財産管理、企画、財政、まちづくり、DX推進の各部門に加え、福祉、教育、文化など主要な施設所管部署の実務責任者とし、定期的に会議を開催して、データベースに基づく資産評価や活用方針の決定を行います。
    • 客観的根拠:
      • 国のガイドラインは、効果的なPRE戦略の推進には、庁内各部署(まちづくり部門、企画・管財部門、施設所管部門等)の幅広い連携が不可欠であると明記しています。
        • (出典)(https://www.mlit.go.jp/common/001050344.pdf)
主な取組③:「活用候補施設リスト」の作成と公表
  • 構築したデータベースに基づき、未利用・低利用の施設や、将来的に用途変更が見込まれる施設(例:数年後に統廃合予定の学校)をリストアップし、「活用提案を募集する公共施設リスト」として区のウェブサイト等で積極的に情報発信します。
  • リスト掲載施設について、民間事業者やNPOから自由な活用アイデアを常時受け付ける「サウンディング型市場調査」の専用窓口を設け、対話を通じて潜在的なニーズや事業性を探ります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省は、廃校活用を促進するため、活用を募集している全国の廃校情報をウェブサイトで公表し、自治体と活用希望企業等とのマッチングを支援しています。この手法は廃校以外の公有財産にも応用可能です。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 公有財産からの年間収益(使用料収入増+維持管理費削減額の合計)を5年間で10%向上させる。
      • データ取得方法: 財政課が管理する決算統計データ、及び各施設所管課が管理する維持管理コストデータ(修繕費、光熱水費、委託料等)を比較分析する。
  • KSI(成功要因指標)
    • PRE戦略に基づき、具体的な活用(目的外使用許可、貸付、統廃合等)に至った施設の年間件数を平均5件以上とする。
      • データ取得方法: 公有財産活用推進本部の議事録及び進捗管理表に基づき、財産管理部門が集計する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • サウンディング型市場調査等を通じて、民間事業者やNPOから具体的な活用提案がなされた件数を年間20件以上とする。
      • データ取得方法: 財産管理部門の相談・提案受付記録を基に集計する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 公有財産データベースの構築を1年以内に完了させる(完了率100%)。
      • データ取得方法: システム開発プロジェクトの進捗管理ツールで確認する。
    • 「活用候補施設リスト」として公表する施設数を50施設以上とする。
      • データ取得方法: 区の公式ウェブサイトの掲載情報を確認する。

支援策②:許可手続きの円滑化とDXの推進

目的
  • 民間事業者やNPOが、意欲を削がれることなく円滑に公有財産を活用できるよう、硬直的な制度運用を見直し、手続きの透明化・迅速化・簡素化を図ります。
  • デジタル技術を最大限に活用し、相談から申請、許可、契約、支払いまでのプロセス全体を効率化することを目指します。
主な取組①:目的外使用許可ガイドラインの改定
  • 「用途又は目的を妨げない」の解釈について、単に物理的な支障の有無だけでなく、事業の公益性や地域への貢献度を積極的に評価する視点を盛り込み、解釈の柔軟化を図る方針を明記します。
  • 許可期間について、電柱やガス管といったインフラ設備に限定せず、事業計画の安定性確保に必要と認められる場合には、複数年(例:3~5年)の許可を原則とする規定を設けます。
  • 原状回復義務について、利用者の費用負担によって施設の付加価値が高まる改修(例:バリアフリー化、内装リノベーション)が行われた場合、行政側の判断で原状回復を免除し、そのままの状態で返還を受けることも可能とするなど、柔軟な規定を導入します。
主な取組②:オンライン申請・相談システムの導入
  • 申請書類の作成支援、提出、使用料の支払いまで、一連の手続きをオンラインで完結できるシステムを構築します。
  • 申請前の段階で利用者が抱える疑問を解消するため、よくある質問とその回答をまとめたAIチャットボットや、担当職員とのオンライン相談予約機能を導入し、申請のハードルを下げます。
    • 客観的根拠:
      • 渋谷区の新庁舎における窓口改革の事例に見られるように、行政手続きのオンライン化は住民・行政双方の負担を大幅に軽減します。この考え方は、事業者向けの手続きにも同様に応用可能です。
主な取組③:ワンストップ相談窓口の設置
  • 財産管理部門に「公有財産活用相談窓口」を常設します。
  • この窓口が司令塔となり、申請希望者が施設所管課、都市計画課、消防署など複数の部署を「たらい回し」にされることなく、相談から申請、関係部署との調整までを一貫してサポートする体制を構築します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 目的外使用許可の年間許可件数を3年間で30%増加させる。
      • データ取得方法: 財産管理部門が管理する行政財産使用許可台帳に基づき集計する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 申請受付から許可までの平均処理期間を現状から30%短縮する(例:平均45日から30日以内へ)。
      • データ取得方法: オンライン申請システム上で、申請受付日から許可書発送日までの期間を自動集計し、分析する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 許可を受けた申請者の手続きに対する満足度(分かりやすさ、迅速さ、対応の丁寧さ)を80%以上とする。
      • データ取得方法: 許可手続き完了後に、申請者に対してオンラインアンケートを実施する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 全申請件数に占めるオンライン申請システムの利用率を70%以上とする。
      • データ取得方法: システムのアクセスログおよび申請データを分析する。
    • 改定したガイドラインを区のウェブサイトに掲載し、事業者向け説明会等で年間4回以上周知する。
      • データ取得方法: 広報部門および財産管理部門の活動記録を確認する。

支援策③:官民連携(PPP/PFI)とNPO等との協働強化

目的
  • 行政単独では困難な施設の抜本的な改修や運営、新たな地域サービスの創出を、民間の資金・ノウハウやNPOの専門性を積極的に活用して実現します。
  • 多様な主体とのパートナーシップを構築し、持続可能な施設運営と複合的な地域課題解決を両立させることを目指します。
主な取組①:活用モデルに応じた多様な連携手法の導入
  • 事業の規模や内容に応じて、最適な官民連携手法を選択できるメニューを整備し、柔軟に適用します。
    • 小規模な活用(例:余裕教室の数ヶ月間の利用):従来型の「目的外使用許可」
    • 中規模な活用(例:児童館など施設全体の運営委託):サービスの質向上を目指す「指定管理者制度」
    • 大規模な活用(例:施設の建替えや大規模改修):民間の資金とノウハウを最大限活用する「PFI事業」や「定期借地権設定」
    • 客観的根拠:
主な取組②:NPO等へのインキュベーション支援
  • 公有財産を活用して新たに公益的な事業を始めるNPOや地域団体に対し、事業が軌道に乗るまでの当初数年間(例:3年間)、使用料を減額または免除する制度を創設・拡充します。
  • 地域のNPO支援センターや社会福祉協議会、金融機関と連携し、事業計画の策定や資金調達に関する相談に応じる伴走支援体制を構築します。
主な取組③:改修費補助やクラウドファンディングの活用支援
  • 目的外使用の許可を受けた利用者が、施設の価値向上に資する改修(例:バリアフリー化、省エネルギー化、耐震補強など)を行う際に、区がその費用の一部を補助する制度を創設します。
  • 利用者が改修費用をクラウドファンディングで調達する際に、区がその後援や広報協力(区報やSNSでの発信)を行うことで、市民や企業からの資金調達を支援します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 官民連携(PPP/PFI、指定管理等)やNPO協働による公有財産活用事業の新規契約件数を、5年間で倍増させる。
      • データ取得方法: 財産管理部門及び各施設所管課が保管する事業契約書リストを基に集計する。
  • KSI(成功要因指標)
    • 民間投資やクラウドファンディング等、行政の直接的な財政支出以外から施設改修等に導入された外部資金額を年間1億円以上とする。
      • データ取得方法: 各活用事業の事業者から提出される事業報告書やヒアリングに基づき集計する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 活用された公有財産から生まれた新たなサービスや事業(例:新規開設のカフェ、開始された教室プログラム等)の数を年間10件以上とする。
      • データ取得方法: 活用団体への年次アンケート調査や現地ヒアリングにより把握する。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 官民連携やNPO協働をテーマとした事業者向けの説明会や対話イベントを年2回以上開催する。
      • データ取得方法: 財産管理部門のイベント実施記録を確認する。
    • NPO等を対象とした使用料減免制度の新規適用件数を年間5件以上とする。
      • データ取得方法: 財産管理部門の減免承認記録を基に集計する。

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「IID 世田谷ものづくり学校」

  • 区内初の廃校活用事例として、閉校した旧池尻中学校の校舎を、区が民間企業である株式会社アールプロジェクトに貸し付け、同社が「ものづくり」をテーマとするデザイナーやクリエイター、スタートアップ企業に転貸(サブリース)する形で運営しています。施設内にはオフィス、工房、ギャラリー、カフェなどが入り、デザインを切り口とした創業支援、産業振興、地域交流の拠点として機能しています。
  • 成功要因は、行政が直接運営するのではなく、民間の企画力とネットワークを最大限に活かした点にあります。区は賃料を市場価格より低く設定する代わりに、事業者に対して子ども向けのワークショップ開催などの地域貢献を義務付けました。これにより、区は直接的な財政負担をすることなく、「産業振興」と「地域活性化」という二つの政策目的を同時に達成する、巧みな公民連携モデルを構築しました。

渋谷区「新庁舎整備における官民連携」

  • 老朽化した区役所庁舎と公会堂の建替えにあたり、区の財政負担をゼロにする画期的な手法を導入しました。具体的には、現庁舎敷地の一部に70年間の定期借地権を設定し、公募で選定した民間事業者がその権利金に相当する費用で新庁舎と新公会堂を建設し、区に提供するというスキームです。
  • 成功要因は、公有財産の持つ「土地の価値」を最大限に活用し、民間の資金力と開発ノウハウを巧みに引き出した戦略性にあります。単なる施設の建替えに留まらず、ICT基盤の全面刷新によるワークスタイル改革、窓口業務の一部アウトソーシング、誰でも利用できるフリースペースの設置など、住民サービスの向上と行政の業務効率化を徹底して同時に追求した点が高く評価されます。

品川区「NPO等との協働による施設活用」

  • 品川区は、区内の公共施設の運営において、地域に根差したNPOとの連携を積極的に進めています。例えば、区立の全小学校に設置されている「すまいるスクール(放課後児童クラブ)」や児童センター、学校図書館などの運営を、NPO法人ウーヴをはじめとする地域団体へ委託しています。また、障害の有無に関わらず誰もが利用できる遊びと相談の場「インクルーシブひろば ベル」を、認定NPO法人フローレンスへの委託事業として開設しています。
  • 成功要因は、行政が全てを直接運営する「自前主義」から脱却し、プラットフォームの提供者に徹している点です。行政は財産(施設)と運営費を提供し、現場の運営は高い専門性と地域への深い理解を持つNPOに委ねています。これにより、利用者ニーズに即した質の高いサービスが実現すると同時に、NPOの安定的な活動基盤を支え、地域全体の福祉サービスを厚くすることに成功しています。
    • 客観的根拠:
      • NPO法人ウーヴは、すまいるスクール2施設、児童センター4施設、学校図書館運営支援など、区から複数の事業を受託しています。
      • 「インクルーシブひろば ベル」は品川区の委託事業として運営されており、区民は無料で利用できます。これにより、障害児や医療的ケア児家庭の孤立を防ぎ、インクルーシブな地域交流を促進しています。

全国自治体の先進事例

大阪市生野区「いくのパーク(旧御幸森小学校跡地活用)」

  • 外国籍住民比率が全国一(約22%)である大阪市生野区の旧御幸森小学校跡地を、飲食・不動産事業を手掛ける民間企業(株式会社RETOWN)と、多文化共生支援を行うNPO法人(IKUNO・多文化ふらっと)からなる共同事業体が、市から20年間の長期契約で借り受け、多文化共生のまちづくり拠点として再生した公民連携事業です。
  • 成功要因は、行政が運営に直接関与しない「長期貸付」という手法を選択した点にあります。これにより、民間事業体の自由な発想と迅速な意思決定が可能となりました。施設内には、飲食店やK-POPダンススクールなどの「収益事業」と、私設図書館や学習支援教室、多文化ソーシャルワーク拠点などの「公益事業」が同居しており、収益事業で得た利益を公益事業に再投資する持続可能なモデルを構築しています。行政、民間、NPOのそれぞれの強みを組み合わせた、全国でも極めて先進的な事例です。

岩手県紫波町「オガールプロジェクト」

  • 岩手県紫波町が、紫波中央駅前の約10.7ヘクタールの未利用町有地を核に、PFI(Private Finance Initiative)手法などを駆使して、役場庁舎、図書館、産直マルシェ、ホテル、クリニック、フットボールセンターなどを一体的に整備した、全国的に有名な公民連携まちづくりプロジェクトです。
  • 成功要因は、「補助金に頼らない公民連携」という強い意志のもと、徹底した市場調査(マーケットサウンディング)と緻密な事業計画(テナントの先行確保など)に基づき、民間の投資を最大限に引き出した点にあります。特に、デザイン性の高い図書館や集客力のある産直マルシェといった「稼ぐ公共施設」を核に据え、それが民間テナントの誘致を促進し、エリア全体の価値を高めるという好循環を生み出しました。行政はマスタープランを描き、民間の力を引き出す「触媒」役に徹しています。
    • 客観的根拠:
      • 図書館などの公共施設部分については、民間が建設した施設を町が買い取る手法(PFI-BTO方式)を採用し、町が自ら整備するよりも安価なコストで調達を実現しました。
      • プロジェクトが本格始動した後の平成29年度には、地区全体の年間利用者数が約96万人に達し、図書館、産直マルシェなど全ての施設が単年度黒字を達成しています。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区において行政財産の目的外使用許可は、財産管理の一手法に留まらず、地域課題解決と持続可能な行政経営を実現する戦略的ツールです。人口構造の変化とインフラ老朽化に直面する今、前例踏襲の受動的姿勢から脱却し、PRE戦略に基づき民間やNPOとの連携を強化する能動的アプローチへの転換が不可欠です。未活用の公有財産を、住民福祉の向上と地域の新たな価値を創造する源泉へと変えることが期待されます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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