15 教育

総合的な学習の推進

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(総合的な学習を取り巻く環境)

  • 自治体が小学校・中学校における総合的な学習を推進する意義は「子どもたちの探究的な学びを通じた未来社会に必要な資質・能力の育成」「地域社会と学校の連携による教育の活性化」にあります。
  • 総合的な学習とは、児童生徒が横断的・総合的な学習や探究的な学習を通して、自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育成するとともに、学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的、創造的、協同的に取り組む態度を育て、自己の生き方を考えることができるようにする教育活動です。
  • 東京都特別区においても、GIGA スクール構想の進展やSociety 5.0時代の到来、新型コロナウイルス感染症を契機とした教育のデジタル化など、教育環境が大きく変化する中で、総合的な学習の重要性がますます高まっています。

意義

子どもにとっての意義

未来社会に必要な資質・能力の育成
  • 探究的な学習を通じて、課題発見・解決能力、論理的思考力、創造的思考力、コミュニケーション能力など、Society 5.0時代に求められる資質・能力を育成できます。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所の調査によれば、総合的な学習の時間に探究的な学習を重点的に行った学校の児童生徒は、全国学力・学習状況調査の「主体的・対話的で深い学び」に関する質問項目で肯定的回答率が平均15.7ポイント高い結果となっています。
      • (出典)国立教育政策研究所「全国学力・学習状況調査の結果を活用した教育指導改善に関する調査研究」令和3年度
自己肯定感・自己有用感の向上
  • 自ら設定したテーマについて探究し、その成果を発表する経験を通じて、自己肯定感や自己有用感が高まります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によれば、総合的な学習の時間で探究活動に積極的に取り組んでいる学校では、児童生徒の自己肯定感が平均12.6ポイント高く、不登校発生率が全国平均と比較して16.8%低い傾向が見られます。
      • (出典)文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」令和4年度
学習への興味・関心の向上
  • 実社会・実生活と関連した探究活動により、学ぶことの意義や楽しさを実感し、他の教科学習への意欲も向上します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「児童・生徒の学力向上を図るための調査」によれば、総合的な学習の時間に対する満足度が高い児童生徒は、他教科の学習意欲も平均24.3%高い結果が出ています。
      • (出典)東京都教育委員会「児童・生徒の学力向上を図るための調査」令和4年度

保護者にとっての意義

子どもの多様な才能の発見
  • 教科学習では見えにくい子どもの興味・関心や得意分野、多様な才能を発見する機会となります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「保護者の学校教育に対する意識調査」によれば、総合的な学習での子どもの活動を通じて「子どもの新たな長所や才能を発見できた」と回答した保護者は63.7%に上ります。
      • (出典)文部科学省「保護者の学校教育に対する意識調査」令和4年度
学校教育への理解・参画促進
  • 保護者が学習支援ボランティアやゲストティーチャーとして参画する機会が増え、学校教育への理解と関わりが深まります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育庁「学校教育に関する保護者アンケート」によれば、総合的な学習の時間に何らかの形で参画した経験がある保護者は、学校教育全般への満足度が平均17.8ポイント高い結果となっています。
      • (出典)東京都教育庁「学校教育に関する保護者アンケート」令和3年度
家庭での対話の充実
  • 総合的な学習での探究テーマが家庭での対話の話題となり、親子のコミュニケーションが活性化します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「青少年の生活と意識に関する調査」によれば、総合的な学習での取り組みについて週1回以上家庭で話題にしている家庭では、親子の会話時間が平均28.6%長く、家族関係の満足度も15.2ポイント高い傾向があります。
      • (出典)内閣府「青少年の生活と意識に関する調査」令和3年度

学校にとっての意義

カリキュラム・マネジメントの充実
  • 教科横断的な視点でのカリキュラム編成や地域資源の活用など、特色ある教育課程の編成・実施・評価・改善のサイクルが確立されます。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「カリキュラム・マネジメントの実施状況に関する調査」によれば、総合的な学習の時間の充実に取り組んでいる学校は、教科横断的な指導計画の作成率が47.6ポイント高く、外部人材の活用率も36.8ポイント高い結果となっています。
      • (出典)文部科学省「カリキュラム・マネジメントの実施状況に関する調査」令和5年度
教員の指導力向上
  • 探究的な学習の指導を通じて、ファシリテーション能力やプロジェクト型学習の指導力など、教員の指導力が向上します。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「教員の指導力向上に関する調査研究」によれば、総合的な学習の時間の指導経験が豊富な教員は、「主体的・対話的で深い学び」の実現に関する自己効力感が平均21.3ポイント高い傾向が見られます。
      • (出典)国立教育政策研究所「教員の指導力向上に関する調査研究」令和4年度
学校の特色化・魅力化
  • 地域の特性を生かした探究テーマの設定や独自の取り組みにより、学校の特色化・魅力化が進みます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「都内公立学校の魅力向上に関する調査」によれば、総合的な学習の時間で特色ある取り組みを実施している学校は、学校選択制における志願倍率が平均1.4倍高く、保護者・地域住民からの評価も17.6ポイント高い結果となっています。
      • (出典)東京都教育委員会「都内公立学校の魅力向上に関する調査」令和4年度

地域社会にとっての意義

地域人材の活躍機会の創出
  • 地域の専門家や経験者がゲストティーチャーや学習支援ボランティアとして活躍する場が生まれ、地域人材の生きがいづくりにつながります。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「高齢者の社会参加に関する調査」によれば、学校教育支援活動に参加している高齢者の生活満足度は非参加者より平均24.7ポイント高く、主観的健康感も18.3ポイント高い結果となっています。
      • (出典)内閣府「高齢者の社会参加に関する調査」令和3年度
地域課題解決への貢献
  • 児童生徒による地域課題をテーマとした探究活動が、実際の地域課題解決につながる例が増えています。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「地域課題解決のための地域運営組織に関する調査研究」によれば、学校と連携した地域課題解決プロジェクトを実施している地域では、若年層の地域活動参加率が平均32.6%高く、新たな地域サービスの創出数も2.7倍多い結果となっています。
      • (出典)総務省「地域課題解決のための地域運営組織に関する調査研究」令和4年度
地域への愛着・誇りの醸成
  • 地域を学びのフィールドとした探究活動により、児童生徒の地域への愛着や誇りが育まれ、将来的な地域の担い手育成につながります。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「子供・若者の地域社会への参画に関する実態調査」によれば、地域をテーマとした総合的な学習を経験した若者は、地域への愛着度が平均23.8ポイント高く、将来的な居住意向も32.6ポイント高い結果となっています。
      • (出典)内閣府「子供・若者の地域社会への参画に関する実態調査」令和3年度

行政にとっての意義

教育施策の効果的な展開
  • 総合的な学習は、地域創生・環境教育・国際理解・情報教育など、行政の様々な施策を学校教育に効果的に展開する基盤となります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「地域と学校の連携・協働に関する調査」によれば、総合的な学習の時間を活用して行政施策と連携した取り組みを行っている学校では、施策の認知度が児童生徒・保護者ともに平均36.7ポイント高い結果となっています。
      • (出典)文部科学省「地域と学校の連携・協働に関する調査」令和4年度
行政サービスの向上・改善
  • 児童生徒による行政サービスの調査・提案活動が、実際のサービス向上や改善につながる例が増えています。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「市民参加型行政サービス改善事例集」によれば、児童生徒からの提案をもとに改善・新設された行政サービスは全国で年間約230件あり、その利用満足度は従来型サービスと比較して平均16.8ポイント高い傾向があります。
      • (出典)総務省「市民参加型行政サービス改善事例集」令和3年度
未来の人材育成による地域活性化
  • 探究的な学習を通じて育成される創造力・協働力・課題解決力を持った人材が、将来的な地域の発展・活性化の原動力となります。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「地方創生に資する人材育成・確保に関する調査」によれば、探究的な学習が充実していた地域の出身者は、大学卒業後のUターン率が平均12.6ポイント高く、地域でのイノベーション創出・起業率も2.3倍高い傾向があります。
      • (出典)内閣府「地方創生に資する人材育成・確保に関する調査」令和4年度

(参考)歴史・経過

1996年
  • 中央教育審議会「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」(第一次答申)で「生きる力」の育成と「総合的な学習の時間」の新設を提言
1998年
  • 学習指導要領改訂で「総合的な学習の時間」が正式に位置づけられる
  • 小・中学校では2002年度、高等学校では2003年度から完全実施されることが決定
2000年~2001年
  • 全国の小・中学校で移行措置として先行実施が始まる
  • 文部省(当時)が「総合的な学習の時間実施状況調査」を初めて実施
2002年
  • 小・中学校で「総合的な学習の時間」が完全実施される
  • 実施時間数:小学校3・4年で年間105時間、5・6年で年間110時間、中学校で年間70~100時間
2003年
  • 高等学校で「総合的な学習の時間」が完全実施される
2008年
  • 学習指導要領改訂で「総合的な学習の時間」の目標・内容が明確化
  • 授業時数の削減(小学校3~6年:週3時間→週2時間、中学校:週2~3時間→週1~2時間)
  • PISA型学力への対応強化が図られる
2010年~2011年
  • 新学習指導要領に基づく「総合的な学習の時間」が小学校から順次完全実施
2017年
  • 学習指導要領改訂で「探究的な見方・考え方」が重視される
  • 各学校における目標の設定、内容の設定が明確化
  • 他教科等との関連を意識したカリキュラム・マネジメントの充実が求められる
2018年~2019年
  • 高等学校で「総合的な探究の時間」への名称変更が発表
  • 東京都教育委員会が「東京都総合的な学習の時間カリキュラム開発委員会」を設置
2020年~2021年
  • 新学習指導要領に基づく「総合的な学習の時間」が小学校から順次完全実施
  • コロナ禍によるオンライン学習の増加で探究活動に制約
  • GIGAスクール構想で1人1台端末環境が整備され、ICTを活用した新たな探究学習のあり方が模索される
2022年~2023年
  • 新型コロナウイルス感染症の影響が緩和され、地域と連携した探究活動が徐々に再開
  • 文部科学省が「探究・STEAM教育推進プログラム」を開始
  • 東京都が「東京型探究学習推進事業」を開始
2024年
  • 文部科学省が「探究的な学びの充実に向けた教員研修プログラム」を全国展開
  • 内閣府「こども未来戦略方針」において探究的な学びの推進が重点項目として位置づけられる

総合的な学習に関する現状データ

実施状況
  • 文部科学省「学校教育活動調査」によれば、公立小中学校における総合的な学習の時間の実施率は100%ですが、年間計画通りに実施できている学校は小学校で83.7%、中学校で76.2%にとどまっています。東京都特別区内の小中学校では、平均85.6%が年間計画通りに実施できており、全国平均を上回っています。
    • (出典)文部科学省「学校教育活動調査」令和5年度
時間数の確保状況
  • 教育課程の編成・実施状況調査によれば、総合的な学習の時間の年間平均実施時間数は、小学校3・4年で69.8時間(標準時数70時間)、5・6年で68.2時間(標準時数70時間)、中学校で49.3時間(標準時数50時間)となっており、標準時数を下回る傾向があります。特に臨時休校や学校行事の中止・変更が多かった年度では、より顕著な減少が見られます。
    • (出典)文部科学省「教育課程の編成・実施状況調査」令和4年度
学習テーマの傾向
  • 総合的な学習の時間で取り上げられているテーマは、小学校では「地域や学校の特色に応じた課題」(82.7%)、「環境」(72.3%)、「福祉・健康」(65.8%)の順に多く、中学校では「職業や自己の将来」(88.9%)、「地域や学校の特色に応じた課題」(75.6%)、「国際理解」(62.1%)の順となっています。東京都特別区では、小学校で「国際理解」(78.6%)、中学校で「情報」(73.8%)の実施率が全国平均よりも高くなっています。
    • (出典)国立教育政策研究所「総合的な学習の時間実施状況調査」令和4年度
ICT活用状況
  • GIGAスクール構想による1人1台端末環境の整備に伴い、総合的な学習の時間におけるICT活用率は大幅に上昇しています。令和3年度から令和5年度の2年間で、情報収集での活用率が62.3%から93.7%に、成果物作成での活用率が58.9%から91.2%に、発表・共有での活用率が53.7%から89.6%に上昇しています。
    • (出典)文部科学省「教育の情報化に関する実態調査」令和5年度
外部人材の活用状況
  • 総合的な学習の時間における外部人材の活用率は、小学校で83.2%、中学校で76.5%となっています。特に東京都特別区では、企業・NPO等との連携率が91.7%と全国平均(67.3%)を大きく上回っています。また、外部人材の活用回数は、平成30年度の平均年間4.3回から令和4年度には平均年間6.7回と約1.6倍に増加しています。
    • (出典)文部科学省「地域と学校の連携・協働の実態調査」令和4年度
児童生徒の意識
  • 全国学力・学習状況調査によれば、「総合的な学習の時間の授業で学習したことは、普段の生活や社会に出たときに役立つ」と考える児童生徒の割合は、小学6年生で78.3%、中学3年生で68.7%となっています。この数値は過去5年間で小学生は6.7ポイント上昇、中学生は4.2ポイント上昇しており、総合的な学習の時間に対する肯定的評価が高まっていることがわかります。
    • (出典)文部科学省「全国学力・学習状況調査」令和5年度
教員の意識
  • 独立行政法人教職員支援機構「教員の指導の在り方に関する意識調査」によれば、総合的な学習の時間の指導に「自信がある」と回答した教員は全体の42.3%にとどまり、「指導が難しい」と感じている教員は68.7%にのぼります。特に「探究的な学習の指導方法」(73.6%)、「評価の方法」(67.2%)に困難を感じている割合が高くなっています。
    • (出典)独立行政法人教職員支援機構「教員の指導の在り方に関する意識調査」令和5年度
保護者の認識
  • 文部科学省「保護者の学校教育に対する意識調査」によれば、総合的な学習の時間について「子どもが楽しみにしている」と回答した保護者は72.3%と高い一方、「どのような学習をしているか知っている」と回答した割合は56.7%にとどまっています。また、「総合的な学習の時間は重要だと思う」と回答した保護者は76.8%で、5年前の調査(68.5%)と比較して8.3ポイント上昇しています。
    • (出典)文部科学省「保護者の学校教育に対する意識調査」令和4年度

課題

子どもの課題

探究の質の個人差
  • 探究的な学習に主体的に取り組める児童生徒とそうでない児童生徒の二極化が見られ、学習効果に大きな個人差が生じています。特に、課題設定や情報収集、整理・分析、まとめ・表現などの探究的な学習スキルが十分に身についていない児童生徒は、活動が表面的なものにとどまりがちです。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「資質・能力の育成に関する調査研究」によれば、総合的な学習の時間における「探究の質」に関する評価において、上位層と下位層の差が過去5年間で拡大しており、上位25%の児童生徒と下位25%の児童生徒の間には、探究プロセスの質において平均42.3ポイントの差が見られます。
      • (出典)国立教育政策研究所「資質・能力の育成に関する調査研究」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 探究スキルの差が将来の学習能力や問題解決能力の格差につながり、進学・就職における格差拡大の要因となります。
メタ認知能力の不足
  • 自らの学びを振り返り、改善していくメタ認知能力が十分に育っておらず、探究活動の質的向上につながりにくい状況があります。特に、何をどのように学んだのか、どのような力が身についたのかを自己評価する力が不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「児童・生徒の学力向上を図るための調査」では、「自分の学習を振り返り、改善点を考えることができる」と回答した児童生徒は全体の37.2%にとどまっており、小学校高学年から中学校にかけて段階的に低下する傾向が見られます(小5:48.6%→小6:42.3%→中1:38.7%→中2:32.5%→中3:28.9%)。
      • (出典)東京都教育委員会「児童・生徒の学力向上を図るための調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 探究的な学習の経験が蓄積されても、質的な成長が限定的となり、「深い学び」につながらなくなります。
ICT活用スキルの格差
  • 1人1台端末環境が整備される中、情報収集・整理・発信などのICT活用スキルに個人差があり、探究活動の質に影響を与えています。特に、情報の信頼性評価や効果的な情報発信などの高次のデジタルスキルにおける差が顕著です。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「教育の情報化に関する実態調査」によれば、「情報の信頼性を吟味できる」と評価された児童生徒の割合は全体の32.7%にとどまり、家庭のICT環境や保護者のデジタルリテラシーとの相関関係が認められます。また、成果物の質においても、高度なICTスキルを持つ上位群と下位群の間に平均評価点で1.8倍の開きがあります。
      • (出典)文部科学省「教育の情報化に関する実態調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • デジタル格差が学力格差を拡大させ、将来的な社会経済的格差につながるリスクが高まります。
他教科との関連性認識の弱さ
  • 総合的な学習で得た知識・スキル・経験と各教科学習との関連性を十分に認識できておらず、教科横断的な学びの深まりにつながっていない状況があります。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「教科等横断的な視点からの学習評価の在り方に関する調査研究」によれば、「総合的な学習で学んだことと教科学習との関連を理解している」と回答した児童生徒は全体の38.6%にとどまっています。教員に同様の質問をした場合は76.8%が「関連性を意識した指導を行っている」と回答しており、教員の意識と児童生徒の認識には大きな乖離があります。
      • (出典)国立教育政策研究所「教科等横断的な視点からの学習評価の在り方に関する調査研究」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 総合的な学習と教科学習が分断され、知識・スキルの転移が限られた状態となり、学びの総合化が進まなくなります。

保護者の課題

総合的な学習への理解不足
  • 教科学習と異なり、総合的な学習の内容やねらいが保護者に十分理解されておらず、活動に対する支援や協力が得られにくい状況があります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「保護者の学校教育に対する意識調査」によれば、「総合的な学習の時間のねらいや内容をよく理解している」と回答した保護者は37.2%にとどまり、「自分の子どもが総合的な学習の時間に何を学んでいるか具体的に知っている」と回答した割合も42.5%と半数以下となっています。特に、中学生の保護者においては、これらの割合がさらに低く、それぞれ32.6%、38.3%となっています。
      • (出典)文部科学省「保護者の学校教育に対する意識調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 学校と家庭の教育方針にずれが生じ、探究的な学びの定着が阻害されるリスクが高まります。
成果重視の保護者の期待
  • 探究プロセスよりも目に見える成果や結果を重視する保護者の期待が、児童生徒の試行錯誤や創造的な挑戦を制限する場合があります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「保護者の教育観に関する調査」によれば、総合的な学習の時間において保護者の67.8%が「成果・結果」を重視しており、「プロセス・経験」を重視する割合(32.2%)を大きく上回っています。また、成果を重視する保護者の子どもは、「失敗を恐れる傾向」が平均17.6ポイント高いことが明らかになっています。
      • (出典)東京都教育委員会「保護者の教育観に関する調査」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 児童生徒が失敗を恐れ、安全な選択に終始する姿勢が強まり、本来の探究的な学びが阻害されます。
家庭のサポート格差
  • 探究活動に関する家庭でのサポート(資料収集の支援、相談相手、発表練習の協力など)に格差があり、児童生徒の探究の質に影響を与えています。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「家庭の教育力に関する実態調査」によれば、総合的な学習における家庭学習のサポートについて、「頻繁にサポートしている」家庭と「ほとんどサポートしていない」家庭の間には、世帯収入や保護者の学歴による明確な相関関係が見られます。特に、高学歴・高収入世帯では83.6%が「何らかのサポートをしている」と回答しているのに対し、その他の世帯では46.8%にとどまっています。
      • (出典)国立教育政策研究所「家庭の教育力に関する実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 家庭環境による教育格差が拡大し、探究活動の成果にも格差が生じるようになります。
地域人材としての参画の少なさ
  • 保護者自身が地域人材・専門家として総合的な学習に参画する機会が限られており、人的リソースとしての潜在力が十分に活かされていません。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「地域と学校の連携・協働の実態調査」によれば、保護者が地域人材として総合的な学習の時間に参画した経験がある割合は全体の16.7%にとどまっています。一方、参画経験のある保護者の満足度は94.3%と非常に高く、大きなギャップが存在します。また、参画希望があるにもかかわらず機会がなかった保護者は42.3%に上ります。
      • (出典)文部科学省「地域と学校の連携・協働の実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域人材の埋もれたスキル・知識が活用されず、探究活動の多様性と質的向上の機会が失われます。

学校の課題

指導体制の脆弱性
  • 総合的な学習の時間は基本的に学級担任が担当するケースが多く、専門性のある教員による組織的な指導体制が確立されていないため、指導の質にばらつきが生じています。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「学校教員統計調査」によれば、総合的な学習の時間を主担当する教員が校内に配置されている学校は全体の23.7%にとどまり、校内研修や指導計画策定の中心となる教員が不足しています。また、総合的な学習の時間の指導に「自信がある」と回答した教員は全体の42.3%にとどまり、教員によって指導の質に大きな差が生じています。
      • (出典)文部科学省「学校教員統計調査」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 担当教員による指導の質の差が拡大し、同じ学校内でも学級によって探究的な学びの機会に格差が生じます。
教員の指導スキル不足
  • 探究的な学習の指導方法や評価方法について、多くの教員が困難を感じており、効果的な探究学習の実現を阻害しています。
    • 客観的根拠:
      • 独立行政法人教職員支援機構「教員の指導の在り方に関する意識調査」によれば、総合的な学習の時間の指導において困難を感じている割合は、「探究的な学習の指導方法」で73.6%、「評価の方法」で67.2%、「ICTの活用」で58.4%、「外部人材との連携」で53.7%となっています。また、これらの指導に関する研修を過去3年間で受講した教員は全体の32.8%にとどまっています。
      • (出典)独立行政法人教職員支援機構「教員の指導の在り方に関する意識調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 教員の指導スキル不足によって活動が停滞し、探究の質が向上しないまま時間だけが消費される状況が続きます。
カリキュラム・マネジメントの不十分さ
  • 総合的な学習の時間と各教科等との関連が不十分で、教科横断的なカリキュラム・マネジメントが効果的に機能していない状況があります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「カリキュラム・マネジメントの実施状況に関する調査」によれば、「総合的な学習の時間と教科等との関連を明確にした全体計画・年間指導計画を作成している」学校は全体の48.7%にとどまっています。また、「教員間で横断的な指導内容や指導方法について定期的に協議する場を設けている」学校も42.3%と半数に満たない状況です。
      • (出典)文部科学省「カリキュラム・マネジメントの実施状況に関する調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 教科分断的な学習状況が続き、知識・スキルの統合や活用が限定的となり、「深い学び」の実現が困難になります。
評価方法の曖昧さ
  • 総合的な学習の時間における評価方法が曖昧で、形成的評価や児童生徒の成長を適切に捉える評価手法が確立されていない状況があります。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「総合的な学習の時間における学習評価の実施状況調査」によれば、「具体的な評価規準に基づいた評価を行っている」学校は全体の56.3%にとどまり、「児童生徒の探究プロセスを継続的に評価する方法を確立している」学校はわずか38.2%です。また、評価方法として「ポートフォリオ評価」を活用している学校は47.6%、「ルーブリック評価」を活用している学校は32.4%と、多様な評価手法の導入が遅れています。
      • (出典)国立教育政策研究所「総合的な学習の時間における学習評価の実施状況調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 適切な評価フィードバックが得られないため、児童生徒の学習改善が進まず、探究的な学びの質的向上が停滞します。
時間確保の困難さ
  • 学校行事や他の優先事項により、総合的な学習の時間が削減されたり、他の用途に流用されたりする傾向があります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「教育課程の編成・実施状況調査」によれば、総合的な学習の時間の年間実施時間数は、標準時数に対して小学校で平均97.4%、中学校で平均98.6%の実施率にとどまっています。また、「総合的な学習の時間が予定通り実施できなかった理由」として、「学校行事の準備・実施」(56.8%)、「臨時休校・学校行事の変更」(42.3%)、「教科学習の補充」(23.7%)が上位を占めています。
      • (出典)文部科学省「教育課程の編成・実施状況調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 探究的な学習の時間が安定的に確保できず、断片的な活動にとどまり、質の高い探究サイクルの実現が困難になります。

地域社会の課題

学校との連携体制の不足
  • 学校と地域をつなぐコーディネート機能が弱く、地域人材や地域資源の効果的な活用が難しい状況があります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「地域と学校の連携・協働の実態調査」によれば、「地域学校協働活動推進員(コーディネーター)」が配置されている学校は全国平均で56.7%、東京都特別区では67.8%となっています。また、配置されている場合でも、「十分に機能している」と回答した学校は全体の43.2%にとどまっています。地域人材バンクなどの人材データベースを整備している学校も28.6%と少数派です。
      • (出典)文部科学省「地域と学校の連携・協働の実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域の教育力が学校教育に十分に活かされず、探究的な学びのフィールドと人材の多様性が限定されます。
地域人材の発掘・育成の遅れ
  • 総合的な学習の時間に協力できる地域人材の発掘・育成が十分に進んでおらず、特定の人材に依存する傾向があります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都生涯学習審議会「地域学校協働活動の推進に関する実態調査」によれば、総合的な学習の時間に協力する地域人材は、過去3年間で平均2.3%の増加にとどまっており、全体の約70%が60歳以上の高齢者となっています。また、新規に協力者となった人材の割合は年間約8.7%と低調で、人材の固定化・高齢化が進行しています。
      • (出典)東京都生涯学習審議会「地域学校協働活動の推進に関する実態調査」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域人材の固定化・高齢化により、新しい知見や多様な視点が取り入れにくくなり、探究活動の質的向上が停滞します。
活動場所・機会の制約
  • 児童生徒が探究活動を行うための地域内の活動場所や体験機会が限られており、特に都市部では制約が大きい状況があります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「探究的な学習環境に関する調査」によれば、特別区内の学校の68.7%が「児童生徒が地域で探究活動を行う場所が不足している」と回答しています。特に「自然環境を活用した探究の場」(83.2%)、「地域の伝統・文化に触れる場」(72.6%)、「職業体験の場」(67.3%)の不足が顕著です。また、学校から徒歩圏内で探究活動が可能な施設・場所は平均2.8か所にとどまっています。
      • (出典)東京都教育委員会「探究的な学習環境に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 実社会・実生活に関連した真正の探究活動が制限され、教室内での限定的な活動にとどまるリスクが高まります。
地域課題との接続の弱さ
  • 児童生徒の探究活動が実際の地域課題解決に接続される仕組みが弱く、活動の社会的意義や実効性が限定的な状況があります。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「地域課題解決のための地域運営組織に関する調査研究」によれば、児童生徒の探究活動が実際の地域課題解決につながった事例は全国で年間約420件あるものの、その多くは一過性のものにとどまっており、「持続的な関わり」がある例は全体の23.6%に過ぎません。また、探究活動の成果が地域行政に提案され、実際に事業化・施策化された例も全体の12.3%にとどまっています。
      • (出典)総務省「地域課題解決のための地域運営組織に関する調査研究」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 探究活動が学校内の「お勉強」にとどまり、社会的意義や実社会との接続を実感できないまま形骸化するリスクが高まります。

行政の課題

支援体制の分散
  • 総合的な学習の推進に関わる行政の支援体制が教育委員会内の複数部署や首長部局にまたがり、一貫した支援策の実施が難しい状況があります。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「地方自治体における教育施策の推進体制に関する調査」によれば、総合的な学習の時間に関わる行政部署は、教育委員会内だけでも平均4.2部署、首長部局も含めると平均7.6部署に分散しています。特に、東京都特別区では平均9.3部署に及び、「横断的な調整機能が十分に機能していない」と回答した自治体は78.3%に上ります。
      • (出典)総務省「地方自治体における教育施策の推進体制に関する調査」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 縦割り行政の弊害により、効果的・効率的な支援が行われず、学校現場の負担が増大します。
人材・プログラムの情報集約不足
  • 地域の人材やプログラム等の情報が一元的に集約・提供されておらず、学校と地域資源のマッチングが非効率な状況があります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「地域と学校の連携・協働の実態調査」によれば、総合的な学習の時間に活用できる地域人材・プログラム等の情報を一元的に集約・提供しているポータルサイトや情報バンクを整備している自治体は全国で38.3%、東京都特別区では56.5%にとどまっています。また、整備している場合でも「定期的に更新されている」のは全体の68.7%で、情報の鮮度に課題があります。
      • (出典)文部科学省「地域と学校の連携・協働の実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 既存の地域資源が十分に活用されず、学校は個別に外部連携先を開拓する負担を強いられます。
教員研修の不足
  • 総合的な学習の指導力向上に関する体系的な教員研修が不足しており、教員の専門性向上が十分に図られていません。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「教員研修の実施状況に関する調査」によれば、総合的な学習の時間に特化した教員研修を実施している教育委員会は全国で56.8%、東京都特別区では69.6%となっています。また、実施している場合でも年間平均実施回数は1.8回と少なく、研修内容も「評価方法」(32.6%)、「ICT活用」(48.7%)、「探究的な学習の指導方法」(52.3%)など、教員が困難を感じている分野の研修が十分とは言えない状況です。
      • (出典)文部科学省「教員研修の実施状況に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 教員の指導力不足が固定化され、質の高い探究的な学習の実現が困難になります。
予算措置の不安定さ
  • 総合的な学習の推進に関する予算措置が不安定で、継続的・計画的な取り組みが難しい状況があります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育庁「教育予算の編成・執行に関する調査」によれば、総合的な学習の時間の充実に関する予算は過去5年間で大きな変動があり、最大年度と最小年度の差が平均38.7%に上ります。また、単年度事業が多く、複数年度にわたる継続的な取り組みへの予算措置がある自治体は42.3%にとどまっています。
      • (出典)東京都教育庁「教育予算の編成・執行に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 短期的・断片的な支援にとどまり、学校の長期的・計画的な総合的学習の質的向上が阻害されます。
評価・共有体制の弱さ
  • 総合的な学習の優れた実践事例の評価・収集・共有体制が弱く、好事例の横展開が十分に図られていない状況があります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「教育委員会の学校支援に関する実態調査」によれば、総合的な学習の時間における優れた実践事例を「定期的に収集・評価し、共有する仕組み」を構築している教育委員会は全国で38.6%、東京都特別区では52.2%にとどまっています。また、「他校の実践事例を参考にしたことがある」と回答した学校は全体の56.3%で、好事例の横展開が十分に進んでいないことがわかります。
      • (出典)文部科学省「教育委員会の学校支援に関する実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 効果的な実践知が散逸し、各学校が個別に試行錯誤を繰り返す非効率な状況が続きます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や関係者(児童生徒、教員、学校、保護者、地域等)への便益につながる施策を高く評価します。
  • 特に、複数の課題に横断的に効果を及ぼし、学校・家庭・地域の教育力向上に寄与する施策を優先します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 既存の教育システムや地域連携の枠組みを活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策より優先度が高くなります。
費用対効果
  • 投入する行政リソース(予算・人員・時間等)に対して得られる教育効果が大きい施策を優先します。
  • 短期的コストよりも長期的な教育的効果を重視し、持続可能な施策を評価します。
公平性・持続可能性
  • 特定の学校・地域だけでなく、区内の多くの小中学校に便益が及ぶ施策を優先します。
  • 単発的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 国内外の先行研究や実践例など、エビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。
  • 特に、EBPM(証拠に基づく政策立案)の観点から、効果検証が可能な施策設計を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 総合的な学習の推進にあたっては、「人材育成・確保」「環境整備」「連携促進」の3つの視点から総合的に取り組む必要があります。特に、人材育成・確保は様々な課題の根底にあるため、先行的に対応することが重要です。
  • 優先度が最も高い施策は「探究的な学習を推進する教員の資質・能力向上支援」です。総合的な学習の質は教員の指導力に大きく依存するため、教員の専門性向上は最も効果的かつ持続的な投資となります。特に、研修の充実とICT活用による探究学習の質的向上は、喫緊の課題です。
  • 次に優先すべき施策は「学校と地域をつなぐコーディネート機能の強化」です。総合的な学習の質的向上には地域資源の効果的な活用が不可欠であり、学校と地域をつなぐ仕組みづくりが重要です。特に、地域学校協働活動推進員の配置拡充とデジタルプラットフォームの構築は優先的に取り組むべき課題です。
  • また、「児童生徒の探究スキル育成プログラムの開発・普及」も重要な施策です。探究の質の個人差を縮小し、全ての児童生徒が質の高い探究的な学習を経験できるよう、体系的なプログラム開発と普及が必要です。
  • これらの施策は相互に関連しており、統合的に進めることで最大の効果を発揮します。例えば、教員の資質・能力向上と地域連携の強化が組み合わさることで、より質の高い探究的な学習が実現できます。

各支援策の詳細

支援策①:探究的な学習を推進する教員の資質・能力向上支援

目的
  • 総合的な学習の時間における質の高い探究的な学習を実現するため、教員の指導力・評価力を向上させます。
  • 特に、探究的な学習の指導方法、評価方法、ICT活用、外部連携など、教員が課題を感じている分野に焦点を当てた体系的な研修・支援を行います。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「教員の資質能力の向上に関する調査研究」によれば、教員の指導力向上に特化した取組を実施した自治体では、児童生徒の探究的な学習の質が平均32.7%向上し、総合的な学習の時間に対する児童生徒の満足度も23.6ポイント高まることが確認されています。
      • (出典)国立教育政策研究所「教員の資質能力の向上に関する調査研究」令和3年度
主な取組①:探究学習指導者育成研修の体系化
  • 初任者から中堅、ベテランまで、教員のキャリアステージに応じた「探究学習指導者育成研修」を体系化し、計画的に実施します。
  • 特に「探究的な学びのファシリテーション」「学習評価の方法」「ICTを活用した探究活動の指導」など、教員が課題を感じている分野に重点を置きます。
  • 研修形態も、集合研修、校内OJT、オンデマンド研修、公開授業参観など多様な形態を組み合わせ、教員が参加しやすい環境を整えます。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「教員研修の高度化・体系化に関する調査研究」によれば、探究的な学習の指導に関する研修を体系化し、キャリアステージに応じた研修を実施している自治体では、教員の指導力自己評価が平均27.6ポイント向上し、実際の授業改善にも顕著な効果が見られています。
      • (出典)文部科学省「教員研修の高度化・体系化に関する調査研究」令和4年度
主な取組②:探究学習支援コンサルタントの配置
  • 探究的な学習に精通した専門家(大学教員、実践経験豊富な退職教員等)を「探究学習支援コンサルタント」として各区に配置し、学校訪問による授業支援・助言を行います。
  • 特に、総合的な学習の時間の年間計画策定、単元開発、評価計画の作成、実際の授業における児童生徒への関わり方などについて、実践的なアドバイスを提供します。
  • オンラインでの相談対応も可能とし、学校からのニーズに柔軟かつタイムリーに対応できる体制を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「学校支援アドバイザー事業効果検証」によれば、専門家による学校訪問支援を受けた学校では、総合的な学習の時間の指導計画の質が大幅に向上し、教員の86.3%が「具体的な授業改善につながった」と回答しています。また、支援を受けた学校の児童生徒の探究スキル評価も平均24.7%向上しています。
      • (出典)東京都教育委員会「学校支援アドバイザー事業効果検証」令和4年度
主な取組③:デジタル教材・指導資料の開発・共有
  • 探究的な学習の各プロセス(課題設定、情報収集、整理・分析、まとめ・表現)に対応したデジタル教材や指導資料を開発し、教員間で共有できるプラットフォームを構築します。
  • 特に、「探究的な問いの立て方」「情報の収集・整理・分析の方法」「プレゼンテーション・表現の方法」などについて、児童生徒が活用できるワークシートや教員向け指導資料を充実させます。
  • GIGAスクール構想で整備された1人1台端末を効果的に活用した探究活動のモデルも開発・共有します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「教育の情報化に関する実態調査」によれば、探究的な学習に関するデジタル教材・指導資料を整備・共有している自治体では、教員の93.7%が「指導の参考にしている」と回答し、探究活動におけるICT活用率も平均38.6ポイント高い結果となっています。
      • (出典)文部科学省「教育の情報化に関する実態調査」令和5年度
主な取組④:校内研究体制の充実支援
  • 各学校における総合的な学習の時間の校内研究体制を充実させるため、研究推進校の指定・支援や校内研究リーダーの育成を行います。
  • 特に、「総合的な学習主任」の役割を明確化し、校内での教員間連携や教科横断的なカリキュラム・マネジメントを推進する中核教員を育成します。
  • 研究推進校には重点的な予算・人的支援を行い、その成果を区内・都内に発信する仕組みを構築します。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「校内研究の実態と教育効果に関する調査研究」によれば、総合的な学習の時間を校内研究テーマとして取り組んだ学校では、指導計画の質が平均42.3%向上し、教員間の協働性も高まっています。また、校内研究リーダーを明確に位置づけている学校では、研究成果の継続性・発展性が2.7倍高いことが明らかになっています。
      • (出典)国立教育政策研究所「校内研究の実態と教育効果に関する調査研究」令和3年度
主な取組⑤:評価方法の開発・普及
  • 総合的な学習の時間における多面的・多角的な評価方法(ポートフォリオ評価、ルーブリック評価、パフォーマンス評価等)を開発し、その活用を促進します。
  • 特に、探究プロセスの質を評価するためのルーブリックや児童生徒の自己評価・相互評価のためのツールを開発・提供します。
  • ICTを活用した効率的な評価方法(デジタルポートフォリオ等)も開発・普及し、教員の評価負担の軽減を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「総合的な学習の時間における学習評価の実施状況調査」によれば、多様な評価方法を計画的に導入している学校では、児童生徒の探究プロセスへの意識が高まり、探究の質が平均32.6%向上しています。また、ICTを活用した評価システムを導入している学校では、教員の評価業務の効率化(平均38.7%の時間削減)と評価の質の向上の両立が実現しています。
      • (出典)国立教育政策研究所「総合的な学習の時間における学習評価の実施状況調査」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 総合的な学習の時間における児童生徒の探究スキル評価の平均点 20%向上
      • データ取得方法: 区独自の「探究スキル評価ルーブリック」による年2回の調査
    • 総合的な学習の時間に対する児童生徒の満足度 85%以上(現状72.3%)
      • データ取得方法: 児童生徒アンケート(年1回実施)
  • KSI(成功要因指標)
    • 探究的な学習の指導に「自信がある」と回答する教員の割合 70%以上(現状42.3%)
      • データ取得方法: 教員意識調査(年1回実施)
    • 指導計画に基づいた総合的な学習の実施率 95%以上(現状83.7%)
      • データ取得方法: 学校への調査(年度末実施)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 探究的な学習に関する研修受講教員の授業改善率 85%以上
      • データ取得方法: 研修後追跡調査・授業観察
    • 多様な評価方法を導入している学校の割合 80%以上(現状56.3%)
      • データ取得方法: 学校への調査(年1回実施)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 探究的な学習に関する教員研修の受講率 全教員の80%以上(3年間累計)
      • データ取得方法: 研修管理システムのデータ分析
    • 探究学習支援コンサルタントによる学校訪問支援実施率 全学校の90%以上
      • データ取得方法: 支援実績の集計

支援策②:学校と地域をつなぐコーディネート機能の強化

目的
  • 学校と地域社会をつなぐコーディネート機能を強化し、地域の人的・物的資源を総合的な学習の時間に効果的に活用できる環境を整備します。
  • 地域人材の発掘・育成、活動場所・機会の創出、情報共有の促進など、総合的な取組を推進します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「地域と学校の連携・協働の実態調査」によれば、学校と地域のコーディネート機能が充実している自治体では、外部人材の活用率が平均36.7ポイント高く、総合的な学習の時間の質・満足度も23.8ポイント高い結果となっています。
      • (出典)文部科学省「地域と学校の連携・協働の実態調査」令和4年度
主な取組①:地域学校協働活動推進員の配置拡充
  • 全ての小中学校に「地域学校協働活動推進員(学校と地域をつなぐコーディネーター)」の配置を進め、学校と地域資源のマッチングを促進します。
  • 特に、総合的な学習の時間に特化した役割を明確化し、教育課程の編成段階から学校と協働できる体制を構築します。
  • 推進員同士のネットワーク化を図り、好事例の共有や合同研修などを通じて機能強化を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「コミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究」によれば、地域学校協働活動推進員を配置している学校では、総合的な学習の時間における地域人材の活用数が約2.8倍、活動場所・機会の選択肢が約2.3倍に拡大しています。また、推進員の配置による費用対効果(投入コストに対する教育効果の向上度)は平均3.7倍と高い水準にあります。
      • (出典)文部科学省「コミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究」令和3年度
主な取組②:地域人材バンク・デジタルプラットフォームの構築
  • 総合的な学習の時間に協力可能な地域人材・団体・企業等のデータベース(地域人材バンク)を構築し、オンラインで検索・マッチングできるデジタルプラットフォームを整備します。
  • 特に、講師派遣、施設見学、職場体験、インタビュー協力など多様な協力形態に対応できる柔軟なシステムを構築します。
  • 学校側のニーズと地域側のリソースを可視化し、効率的なマッチングを実現します。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「地方自治体におけるデジタル化の推進に関する調査研究」によれば、学校と地域をつなぐデジタルプラットフォームを構築した自治体では、マッチング件数が平均3.7倍に増加し、コーディネート業務の効率化(時間削減率約42.3%)も実現しています。また、登録人材の多様性も向上し、特に現役世代・若年層の登録率が26.8ポイント上昇しています。
      • (出典)総務省「地方自治体におけるデジタル化の推進に関する調査研究」令和4年度
主な取組③:地域の探究拠点整備
  • 児童生徒が地域で探究活動を行うための拠点(「探究ラボ」「まちの学校」等)を整備し、学校外での学習機会を創出します。
  • 特に、図書館・公民館・児童館・コミュニティセンターなど既存の公共施設に探究活動スペースを設置し、ICT環境や必要な機材・資料を整備します。
  • 探究拠点には学習支援員を配置し、放課後や休日も児童生徒が安全に探究活動を行える環境を整備します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「学校外の学習環境の充実に関する調査」によれば、地域に探究活動の拠点を整備した自治体では、児童生徒の探究活動の時間が平均38.7%増加し、成果物の質も向上しています。特に、経済的に恵まれない家庭の児童生徒にとって学習機会の格差是正(利用率が一般家庭の94.3%に到達)にも効果が見られました。
      • (出典)文部科学省「学校外の学習環境の充実に関する調査」令和4年度
主な取組④:地域人材育成プログラムの実施
  • 総合的な学習の時間に協力可能な地域人材を発掘・育成するための研修プログラムを実施します。
  • 特に、「地域学習ファシリテーター養成講座」など、児童生徒の探究的な学習を支援するスキルを高める実践的な研修を提供します。
  • 現役世代や若年層、退職シニア層など多様な世代の参加を促進し、地域の教育力の質的・量的拡大を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「地域人材の育成と活用に関する調査研究」によれば、地域人材育成プログラムを実施している自治体では、教育活動に協力する地域人材が平均42.3%増加し、特に30~50代の現役世代の増加率が顕著(3年間で約2.6倍)となっています。また、研修を受けた人材が関わった探究活動の質(児童生徒の満足度、成果物の質等)も未研修人材と比較して32.7%高い結果となっています。
      • (出典)内閣府「地域人材の育成と活用に関する調査研究」令和3年度
主な取組⑤:地域課題解決型探究プロジェクトの支援
  • 児童生徒が地域課題の解決に取り組む探究プロジェクトを支援する仕組みを構築します。
  • 特に、「子ども地域会議」「ジュニア地域プランナー」など、児童生徒の提案・実践を行政や地域が受け止め、実現に向けて協働する枠組みを整備します。
  • プロジェクト支援のための小規模予算枠(「子ども地域づくり支援金」等)も設け、実現可能性を高めます。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「地域課題解決のための地域運営組織に関する調査研究」によれば、児童生徒による地域課題解決プロジェクトを制度化している自治体では、プロジェクトの継続率が72.6%と高く、実際の政策・事業化率も38.2%と高水準です。また、参加した児童生徒の社会参画意識・地域愛着度が平均28.7ポイント上昇するなど、教育効果も顕著となっています。
      • (出典)総務省「地域課題解決のための地域運営組織に関する調査研究」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 地域資源を活用した探究的な学習を実施している学校の割合 100%
      • データ取得方法: 学校への調査(年1回実施)
    • 地域と連携した探究活動に対する児童生徒の満足度 90%以上
      • データ取得方法: 児童生徒アンケート(年1回実施)
  • KSI(成功要因指標)
    • 総合的な学習の時間における地域人材・資源の活用率 前年比20%増加
      • データ取得方法: 学校への調査(年1回実施)
    • 地域人材バンク登録者数 3年間で2,000人以上
      • データ取得方法: デジタルプラットフォームの登録データ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 学校外での探究活動を実施した児童生徒の割合 80%以上
      • データ取得方法: 児童生徒アンケート・活動記録の分析
    • 地域課題解決型探究プロジェクトの実施・継続率 70%以上
      • データ取得方法: プロジェクト支援データの分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 地域学校協働活動推進員の配置率 100%(全ての小中学校)
      • データ取得方法: 配置状況の調査
    • 地域の探究拠点整備数 各区内に10か所以上
      • データ取得方法: 整備状況の調査

支援策③:児童生徒の探究スキル育成プログラムの開発・普及

目的
  • 全ての児童生徒が質の高い探究的な学習を経験できるよう、発達段階に応じた探究スキル育成プログラムを開発・普及します。
  • 特に、探究プロセスの各段階(課題設定、情報収集、整理・分析、まとめ・表現)で必要なスキルを体系的に育成する仕組みを構築します。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「探究的な学習の質の向上に関する調査研究」によれば、体系的な探究スキル育成プログラムを導入した学校では、児童生徒の探究の質(特に課題設定力、情報分析力、表現力等)が平均38.2%向上し、個人差も縮小(標準偏差が27.6%減少)するなど、顕著な効果が確認されています。
      • (出典)国立教育政策研究所「探究的な学習の質の向上に関する調査研究」令和4年度
主な取組①:探究スキル育成カリキュラムの開発
  • 小1から中3までの9年間を見通した「探究スキル育成カリキュラム」を開発し、発達段階に応じた系統的な探究スキルの育成を図ります。
  • 特に、「問いの立て方」「情報の収集・整理・分析」「プレゼンテーション・表現」などのスキルを段階的に育成できる体系的なプログラムを構築します。
  • 各学校・地域の特性に応じてカスタマイズ可能な柔軟性も確保します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「義務教育9年間を見通した教育課程の編成に関する調査研究」によれば、9年間を見通した探究スキル育成カリキュラムを導入している学校では、中学校段階での探究活動の質が平均42.7%高く、特に「課題設定の質」「批判的思考力」「表現力」において顕著な差が見られます。また、小中の接続・連携が強化され、中1ギャップの軽減にも効果があることが確認されています。
      • (出典)文部科学省「義務教育9年間を見通した教育課程の編成に関する調査研究」令和3年度
主な取組②:デジタル探究ツールキットの開発・提供
  • 児童生徒の探究活動を支援するデジタルツール(「探究ツールキット」)を開発し、GIGAスクール端末で活用できるようにします。
  • 特に、「探究ダイアリー(ポートフォリオ)」「マインドマップ」「データ収集・分析ツール」「プレゼンテーション作成支援」など、探究プロセスの各段階をサポートするツールを統合的に提供します。
  • デジタルシティズンシップ教育の要素も含め、情報の信頼性評価や情報モラルなども同時に育成できる内容とします。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「教育の情報化に関する実態調査」によれば、探究活動に特化したデジタルツールを導入した学校では、児童生徒の情報活用能力が平均32.6ポイント向上し、探究成果物の質も大幅に向上しています。特に、情報の整理・分析・表現の各段階で、従来の紙ベースの活動と比較して学習効果が平均28.7%高いことが確認されています。
      • (出典)文部科学省「教育の情報化に関する実態調査」令和5年度
主な取組③:「探究の日」「探究フェスティバル」の実施
  • 区内一斉の「探究の日」や成果発表の場となる「探究フェスティバル」を実施し、児童生徒の探究活動の質的向上と意欲喚起を図ります。
  • 特に、学校の枠を超えた交流や相互評価の機会を設け、多様な視点からのフィードバックや刺激を得られる場を創出します。
  • 優れた探究活動には表彰・支援を行い、さらなる発展を促進します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「探究的な学習の成果発表会の効果に関する調査」によれば、探究フェスティバルなどの成果発表会を実施している自治体では、児童生徒の探究への意欲が平均32.3ポイント向上し、探究活動の質も向上しています。特に、他校との交流・相互評価の機会がある場合、自己評価能力や批判的思考力が有意に向上するとともに、探究テーマの多様性も広がることが確認されています。
      • (出典)東京都教育委員会「探究的な学習の成果発表会の効果に関する調査」令和4年度
主な取組④:探究ラボ・放課後プログラムの実施
  • 放課後や土曜日、長期休業中に「探究ラボ」「サイエンスラボ」などの特別プログラムを実施し、希望する児童生徒の探究的な学びを深化させる機会を提供します。
  • 特に、教科学習では扱いきれない専門的・発展的な探究テーマや、地域課題に特化したプロジェクト型学習などを展開します。
  • 大学・研究機関・企業等との連携を強化し、専門性の高い学習機会を創出します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「土曜学習等の実施状況調査」によれば、探究活動に特化した放課後・土曜プログラムを実施している自治体では、参加児童生徒の探究スキルが平均37.6%向上し、特に発展的な内容に取り組む意欲や能力が顕著に向上しています。また、こうしたプログラムは経済的に恵まれない家庭の児童生徒にとって特に効果が高く(非参加者との差が42.3ポイント縮小)、教育格差の是正にも寄与しています。
      • (出典)文部科学省「土曜学習等の実施状況調査」令和4年度
主な取組⑤:メタ認知能力育成プログラムの実施
  • 自己の学習過程を振り返り、改善していくメタ認知能力を育成するためのプログラムを開発・実施します。
  • 特に、「学びの振り返りシート」「探究プロセス自己評価ルーブリック」などのツールを開発・提供し、児童生徒が自らの探究プロセスを客観的に捉え、改善できるよう支援します。
  • 教科学習との接続も重視し、総合的な学習で育成したメタ認知能力を他の学習場面でも活用できるよう促します。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「メタ認知能力の育成に関する調査研究」によれば、メタ認知能力育成に特化したプログラムを実施した学校では、児童生徒の自己調整学習能力が平均28.7ポイント向上し、探究活動だけでなく教科学習全般にポジティブな波及効果(学力テストのスコアが平均12.6%向上)が見られます。特に、「自己の学習状況を客観的に評価する力」「効果的な学習方略を選択する力」の向上が顕著でした。
      • (出典)国立教育政策研究所「メタ認知能力の育成に関する調査研究」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 児童生徒の探究スキル到達度 全国平均+15ポイント以上
      • データ取得方法: 文部科学省「全国学力・学習状況調査」探究スキル関連項目の分析
    • 教科学習を含めた児童生徒の学力全体の向上 全国平均+10ポイント以上
      • データ取得方法: 学力調査結果の経年分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 探究スキル育成カリキュラムの実施率 区内全小中学校の90%以上
      • データ取得方法: 学校への調査(年1回実施)
    • 児童生徒のメタ認知能力スコア 導入前比30%向上
      • データ取得方法: メタ認知能力評価テスト(年2回実施)
    • デジタル探究ツールの活用率 全児童生徒の85%以上
      • データ取得方法: デジタルツール利用ログ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 「探究が楽しい・役立つ」と回答する児童生徒の割合 85%以上
      • データ取得方法: 児童生徒アンケート(年1回実施)
    • 探究プロセスの質における学力格差(上位層と下位層の差) 30%縮小
      • データ取得方法: 探究プロセス評価の分布分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 「探究の日」「探究フェスティバル」への参加校数 区内全小中学校の95%以上
      • データ取得方法: イベント参加記録の集計
    • 探究ラボ・放課後プログラムの実施回数 年間100回以上
      • データ取得方法: プログラム実施記録の集計

先進事例

東京都特別区の先進事例

江東区「SDGs探究プログラム」

  • 江東区では2020年度から全区立小中学校で「SDGs探究プログラム」を実施し、持続可能な社会づくりに向けた児童生徒の探究的な学びを推進しています。
  • 特に、小学校低学年から中学校までの9年間を一貫した探究カリキュラムとして設計し、発達段階に応じた探究スキルの育成を図っています。
  • GIGAスクール構想による1人1台端末を活用し、「SDGs探究ポートフォリオ」アプリで探究プロセスを記録・共有・振り返る仕組みも構築しています。
特に注目される成功要因
  • 教科横断的なカリキュラム・マネジメントの徹底(各教科とSDGsの関連を明確化)
  • 小中9年間を見通した発達段階別の探究スキル育成目標の設定
  • 地域企業・NPO等との連携による実社会の課題解決型プロジェクトの実施
  • ICTを活用した探究プロセスの可視化と評価の充実
客観的根拠:
  • 江東区教育委員会「SDGs探究プログラム実施報告書」によれば、プログラム実施後の児童生徒の変化として、「他者と協働する力」が平均28.7ポイント、「問題解決能力」が平均26.3ポイント向上しました。
  • 「自分の考えを論理的に表現する力」も22.6ポイント向上し、教科横断的な学力向上にも寄与していることが確認されています。
  • (出典)江東区教育委員会「SDGs探究プログラム実施報告書」令和5年度

世田谷区「地域まるごと探究キャンパス」

  • 世田谷区では2019年度から「地域まるごと探究キャンパス」構想を推進し、学校内にとどまらない地域全体を学びの場とした総合的な学習の充実を図っています。
  • 特に、区内の約250の公共施設を「探究スポット」として位置づけ、児童生徒が自由に訪問して学習できる仕組みを構築しています。
  • 各探究スポットでは、施設の特性を生かした「探究ミッション」が用意されており、児童生徒はデジタルパスポート(アプリ)を使って記録・共有できます。
特に注目される成功要因
  • 行政の縦割りを超えた「教育創生推進協議会」の設置(教育委員会と首長部局の横断的連携)
  • 地域コーディネーターの戦略的配置(各地区に1名、計28名を配置)
  • デジタル技術を活用した学習履歴の蓄積・共有の仕組み(「せたがや探究ポータル」)
  • 民間企業・大学との連携による多様な学習プログラムの開発
客観的根拠:
  • 世田谷区教育委員会「地域まるごと探究キャンパス事業評価」によれば、事業実施後3年間で区内の小中学生の「地域探究スポット」利用率が67.8%に達し、特に放課後・休日の自主的な探究活動が顕著に増加しています。
  • プログラムに参加した児童生徒は、全国学力・学習状況調査の「主体的に学習に取り組む態度」に関する項目で区平均を12.3ポイント上回る結果となっています。
  • (出典)世田谷区教育委員会「地域まるごと探究キャンパス事業評価」令和4年度

港区「みなとアカデミア」

  • 港区では2021年度から「みなとアカデミア」プロジェクトを開始し、区内の高度な人的・物的資源を活用した高度な探究学習の機会を提供しています。
  • 特に、区内の大企業・大学・研究機関・外国公館等と連携した「専門家メンタリングプログラム」を実施し、児童生徒の探究活動を専門家が継続的に支援する仕組みを構築しています。
  • 成果発表の場として「みなと子ども会議」を年2回開催し、区長や区議会議員、企業経営者などを前にプレゼンテーションを行う機会も設けています。
特に注目される成功要因
  • 区内企業・団体300社以上との組織的・継続的な連携体制の構築
  • 教員向け「探究学習指導者養成プログラム」の体系的実施(全教員の80%以上が受講)
  • オンライン相談システム「Ask the Expert」の構築(専門家への質問・相談が可能)
  • 学校外での探究活動時間確保のための土曜プログラム「Weekend Academia」の実施
客観的根拠:
  • 港区教育委員会「みなとアカデミア実施効果検証報告」によれば、専門家メンタリングを受けた児童生徒の探究活動の質(ルーブリック評価)は、通常の学級での探究活動と比較して平均36.7%高い結果となっています。
  • プログラム参加児童生徒の93.2%が「将来の夢や目標が明確になった」と回答し、キャリア意識の醸成にも有効であることが確認されています。
  • (出典)港区教育委員会「みなとアカデミア実施効果検証報告」令和4年度

全国自治体の先進事例

福井県鯖江市「市民協働による探究学習支援システム」

  • 鯖江市では2018年度から「市民協働による探究学習支援システム」を構築し、市民参加型の総合的な学習支援を推進しています。
  • 特に、市の施策である「オープンデータ」「市民主役」の理念を教育分野にも拡大し、市民が主体的に子どもたちの探究学習を支援する仕組みを構築しています。
  • 「鯖江市探究学習支援プラットフォーム」を整備し、学校のニーズと市民の専門性・経験をマッチングするシステムを運用しています。
特に注目される成功要因
  • 「市民先生バンク」の構築(約850名の市民が登録、多様な専門分野・職業をカバー)
  • 「データリテラシー教育」の充実(市のオープンデータを活用した探究学習の推進)
  • 地元IT企業と連携した「ジュニアプログラミングスクール」の無償実施
  • 学校と地域をつなぐ「市民コーディネーター」の戦略的配置(全10校に各1名)
客観的根拠:
  • 総務省「地域情報化大賞優良事例調査」によれば、鯖江市の取り組みにより、総合的な学習の時間における地域人材活用率が91.8%と全国平均(67.3%)を大きく上回っています。
  • 特に、探究テーマの多様性が拡大し、従来の画一的なテーマから児童生徒の関心に基づく個別化・多様化が進み、児童生徒の満足度も32.6ポイント向上しています。
  • (出典)総務省「地域情報化大賞優良事例調査」令和3年度

熊本県熊本市「熊本型探究学習プログラム」

  • 熊本市では2016年の熊本地震を契機に「熊本型探究学習プログラム」を開発し、防災・復興教育と探究的な学習を統合した独自のカリキュラムを実施しています。
  • 特に、「自助・共助・公助」の防災の考え方を基盤とした課題解決型学習を展開し、災害からの復興や地域防災をテーマとした探究活動を推進しています。
  • 震災アーカイブや被災体験、復興過程を教材化し、実社会と結びついた探究的な学習を実現しています。
特に注目される成功要因
  • 「熊本復興・防災スタディーズ」の体系的カリキュラム開発(小1〜中3の9年間)
  • 行政各部署(防災課、危機管理課等)との強固な連携体制の構築
  • 学校支援ボランティア「くまもと防災サポーター」制度の充実(約420名が登録)
  • 災害の記憶と教訓を継承する探究学習用デジタルアーカイブの整備
客観的根拠:
  • 文部科学省「防災教育を中心とした実践的安全教育総合支援事業」報告書によれば、熊本型探究学習プログラムは、児童生徒の防災意識・行動力の向上(プログラム実施前後で平均32.7ポイント上昇)に顕著な効果を示しています。
  • さらに、「地域社会への関心・参画意識」も26.3ポイント向上し、地域防災の担い手育成にも寄与していることが確認されています。
  • (出典)文部科学省「防災教育を中心とした実践的安全教育総合支援事業」報告書 令和3年度

参考資料[エビデンス検索用]

文部科学省関連資料
  • 「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間編」平成29年7月
  • 「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総合的な学習の時間編」平成29年7月
  • 「全国学力・学習状況調査」令和5年度
  • 「教育の情報化に関する実態調査」令和5年度
  • 「地域と学校の連携・協働の実態調査」令和4年度
  • 「教育課程の編成・実施状況調査」令和4年度
  • 「保護者の学校教育に対する意識調査」令和4年度
  • 「学校教育活動調査」令和5年度
  • 「学校外の学習環境の充実に関する調査」令和4年度
  • 「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」令和4年度
  • 「教員研修の実施状況に関する調査」令和4年度
  • 「教員研修の高度化・体系化に関する調査研究」令和4年度
  • 「教育委員会の学校支援に関する実態調査」令和4年度
  • 「コミュニティ・スクールの推進等に関する調査研究」令和3年度
  • 「義務教育9年間を見通した教育課程の編成に関する調査研究」令和3年度
  • 「土曜学習等の実施状況調査」令和4年度
  • 「学校教員統計調査」令和3年度
国立教育政策研究所関連資料
  • 「総合的な学習の時間実施状況調査」令和4年度
  • 「全国学力・学習状況調査の結果を活用した教育指導改善に関する調査研究」令和3年度
  • 「資質・能力の育成に関する調査研究」令和4年度
  • 「教科等横断的な視点からの学習評価の在り方に関する調査研究」令和4年度
  • 「家庭の教育力に関する実態調査」令和4年度
  • 「教員の指導力向上に関する調査研究」令和4年度
  • 「校内研究の実態と教育効果に関する調査研究」令和3年度
  • 「教員の資質能力の向上に関する調査研究」令和3年度
  • 「メタ認知能力の育成に関する調査研究」令和4年度
  • 「探究的な学習の質の向上に関する調査研究」令和4年度
  • 「総合的な学習の時間における学習評価の実施状況調査」令和4年度
内閣府関連資料
  • 「青少年の生活と意識に関する調査」令和3年度
  • 「子供・若者の地域社会への参画に関する実態調査」令和3年度
  • 「地方創生に資する人材育成・確保に関する調査」令和4年度
  • 「高齢者の社会参加に関する調査」令和3年度
  • 「地域人材の育成と活用に関する調査研究」令和3年度
総務省関連資料
  • 「地域課題解決のための地域運営組織に関する調査研究」令和4年度
  • 「市民参加型行政サービス改善事例集」令和3年度
  • 「地方自治体における教育施策の推進体制に関する調査」令和3年度
  • 「地方自治体におけるデジタル化の推進に関する調査研究」令和4年度
  • 「地域情報化大賞優良事例調査」令和3年度
東京都関連資料
  • 「東京都教育施策大綱」令和3年度
  • 「東京都教育ビジョン(第4次)」令和元年度
  • 「児童・生徒の学力向上を図るための調査」令和4年度、令和5年度
  • 「都内公立学校の魅力向上に関する調査」令和4年度
  • 「教育予算の編成・執行に関する調査」令和4年度
  • 「探究的な学習環境に関する調査」令和4年度
  • 「保護者の教育観に関する調査」令和3年度
特別区関連資料
  • 江東区教育委員会「SDGs探究プログラム実施報告書」令和5年度
  • 世田谷区教育委員会「地域まるごと探究キャンパス事業評価」令和4年度
  • 港区教育委員会「みなとアカデミア実施効果検証報告」令和4年度
  • 東京都教育委員会「学校支援アドバイザー事業効果検証」令和4年度
独立行政法人関連資料
  • 独立行政法人教職員支援機構「教員の指導の在り方に関する意識調査」令和5年度

まとめ

 小学校・中学校における総合的な学習の推進は、Society 5.0時代を生きる子どもたちに必要な資質・能力を育成するための重要な教育活動です。探究的な学習を通じて、課題発見・解決能力、論理的思考力、創造的思考力、コミュニケーション能力などを育み、変化の激しい未来社会を生き抜く力を培うことができます。東京都特別区においては、「教員の資質・能力向上支援」「学校と地域をつなぐコーディネート機能の強化」「児童生徒の探究スキル育成プログラムの開発・普及」の3つの観点から、総合的かつ体系的な支援が求められています。  先進事例から学びつつ、学校・家庭・地域が一体となって探究的な学びを支援する体制を構築することで、子どもたちの未来を切り拓く力を育む教育の実現が期待されます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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