結核対策

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要（結核対策を取り巻く環境）

• 自治体が結核対策を行う意義は「公衆衛生の維持による住民の健康保護」と「社会的公平性の確保」にあります。
• 日本は2021年に結核の「低まん延国」（罹患率が人口10万対10未満）の仲間入りを果たしましたが、この全国平均は、東京都特別区のような大都市圏に集中する課題を覆い隠しています。
• 現代の結核対策は、かつての国民病としての画一的な対応から、高齢者や外国出生者といった特定のハイリスク集団に焦点を当てた、より精密でターゲットを絞った戦略へと転換する重大な岐路に立っています。

意義

住民にとっての意義

早期発見・治療による健康被害の最小化

• 早期の発見と適切な治療は、重症化や後遺症を防ぎ、死亡リスクを大幅に低減させます。
  • 客観的根拠：
    • 結核は無治療の場合、約50%が死亡すると言われていますが、適切な化学療法により治癒が可能です。しかし、発見が遅れ結核性髄膜炎などを発症した場合、現在でも死亡率は約30%に達し、治癒しても後遺症が残ることがあります。
      • （出典）厚生労働省「結核について」令和6年度 ¹

経済的・社会的負担の軽減

• 感染症法に基づく公費負担制度により、高額になりがちな治療費の自己負担が軽減され、経済的な理由による治療中断を防ぎます。
• 直接服薬確認支援（DOTS）などのサポートにより、患者は治療を継続しやすくなり、就労や就学など社会生活の維持が可能になります。
  • 客観的根拠：
    • 結核の治療は、複数の薬剤を6か月から9か月間、毎日服用する必要があり、患者の負担は大きいですが、公費負担制度により経済的障壁は大幅に緩和されます。
      • （出典）豊島区「結核」令和6年度 ²
      • （出典）公益財団法人結核予防会「結核の常識2023」令和5年度 ³

地域社会にとっての意義

感染拡大の防止

• 活動性結核の患者一人を治療することは、新たな感染者を生み出さないための最も効果的な公衆衛生上の介入です。
• 特に、咳や痰とともに菌を排出している患者を早期に発見・治療することで、家庭、職場、学校、施設などでの集団感染の発生を防ぎます。
  • 客観的根拠：
    • 結核菌は、治療を受けていない患者の咳やくしゃみによって空気中に広がり、他者に感染します。治療により菌の排出が止まれば、感染リスクはなくなります。
      • （出典）厚生労働省「結核について」令和6年度 ¹
      • （出典）公益財団法人結核予防会「結核はこわくない」令和6年度 ⁴

社会的弱者の保護と格差是正

• 結核は、高齢者、外国出生者、路上生活者など、社会的に脆弱な立場にある人々に偏って発生する傾向があります。
• これらの人々へ重点的に支援を行うことは、健康格差を是正し、誰一人取り残さないインクルーシブな社会を実現する上で不可欠です。
  • 客観的根拠：
    • 日本の結核患者は、高齢者、大都市の居住者、外国出生者に多いという4つの特徴が指摘されています。
      • （出典）公益財団法人結核予防会「日本の結核の現状」令和元年 ⁵

行政にとっての意義

公衆衛生体制の信頼性確保

• 結核という主要な感染症を効果的にコントロールすることは、行政の危機管理能力と公衆衛生体制の信頼性を内外に示すことにつながります。
• 住民からの信頼は、平時・有事を問わず、他の保健医療政策を円滑に進める上での基盤となります。

医療資源の効率的活用

• 予防、早期発見、治療完遂支援への投資は、集団感染の発生や、治療が長期化・高額化する多剤耐性結核への対応に比べて、長期的にはるかに費用対効果が高いと言えます。
  • 客観的根拠：
    • ある研究では、DOTSの導入により、患者一人当たり約65万円の医療費が節約可能であると試算されており、予防的・計画的な介入の経済的合理性を示しています。
      • (https://www.hws-kyokai.or.jp/images/ronbun/all/200405-03.pdf) ⁶

（参考）歴史・経過

• 戦前～1940年代
  • 結核は「亡国病」と恐れられ、死亡原因の第1位でした。人口10万対の死亡率は200を超え、特に若年層の命を奪いました。
  • この状況を憂慮した皇室からの下賜金を元に、官民一体の対策組織として1939年（昭和14年）に「公益財団法人結核予防会」が設立されました。
    • （出典）公益財団法人結核予防会「結核予防会の沿革」令和6年度 ⁷
    • （出典）大阪大学学術情報庫リポジトリ「日本の結核対策の歴史と現状」令和4年度 ⁸
• 1951年（昭和26年）
  • 近代的な「結核予防法」が全面改正・施行され、健康診断、BCG接種、適正医療の普及を三本柱とする戦後日本の結核対策の法的基盤が確立されました。
    • （出典）島根県「日本の結核対策の歴史」令和6年度 ⁹
    • （出典）大阪大学学術情報庫リポジトリ「日本の結核対策の歴史と現状」令和4年度 ⁸
• 1950年代～1980年代
  • ストレプトマイシンやパラアミノサリチル酸（PAS）といった特効薬の登場と、保健所を中心とした強力な公衆衛生体制の整備により、罹患率・死亡率は劇的に減少しました。
    • （出典）大阪大学学術情報庫リポジトリ「日本の結核対策の歴史と現状」令和4年度 ⁸
• 1997年～1999年（平成9年～11年）
  • 長年の減少傾向から一転、罹患率が3年連続で増加する「リバウンド」現象が発生し、政府は「結核緊急事態宣言」を発出しました。これを機に、確実な服薬を支援するDOTS戦略の重要性が再認識され、全国的な推進が始まりました。
    • （出典）島根県「日本の結核対策の歴史」令和6年度 ⁹
• 2007年（平成19年）
  • 結核予防法が廃止され、その機能は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」（感染症法）に統合されました。これにより、結核は多くの感染症の一つとして、より総合的な枠組みの中で管理されることになりました。
    • （出典）島根県「日本の結核対策の歴史」令和6年度 ⁹
    • (https://www.bcg.gr.jp/general/cat1/post_6.html) ¹⁰
• 2021年（令和3年）
  • 日本の結核罹患率が人口10万対9.2となり、WHOが定める「低まん延国」の基準である10.0を初めて下回りました。これは、長年にわたる対策の大きな成果です。
    • （出典）厚生労働省「2022年 結核登録者情報調査年報集計結果について」令和5年度 ¹¹
    • （出典）公益財団法人結核予防会 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²

結核に関する現状データ

全国の動向

• 新登録患者数・罹患率
  • 2023年（令和5年）の全国の新登録結核患者数は10,096人、罹患率（人口10万対）は8.1でした。
  • 2021年に達成した「低まん延国」の水準は維持しているものの、前年からの減少率は1.4%と、前々年の11.1%減から大幅に鈍化しており、減少が停滞しつつある状況がうかがえます。
    • （出典）厚生労働省「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について」令和6年度 ¹³
    • （出典）公益財団法人結核予防会 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²
• 死亡数・死亡率
  • 2023年の結核による死亡者数は1,587人、死亡率（人口10万対）は1.3でした。依然として単一の感染症としては大きな脅威です。
    • （出典）厚生労働省「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について」令和6年度 ¹³

東京都の動向

• 新登録患者数・罹患率
  • 2023年の東京都の新登録患者数は1,190人で、都道府県別では全国最多でした。
  • 2022年の罹患率は8.5で、全国平均（8.2）を上回り、全国でワースト17位となっています。低まん延国の基準はクリアしているものの、依然として全国的に見て結核患者が多い地域です。
    • （出典）厚生労働省「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について」令和6年度 ¹³
    • （出典）東京都健康安全研究センター「東京都における結核の概況 令和4年（2022年）」令和5年度 ¹⁴
    • （出典）東京都保健医療局「インタビュー記事」令和6年度 ¹⁵

年齢構成

• 高齢者の現状
  • 日本の結核患者の最大の特徴は、その年齢構成にあります。2023年の全国の新登録患者のうち、65歳以上が66.8%を占め、さらに80歳以上に至っては42.9%にものぼります。
    • （出典）公益財団法人結核予防会 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²
• 若年層の現状
  • 20歳代にも患者数の小さなピークが見られますが、これは後述する外国出生者の影響によるものです。
    • （出典）公益財団法人結核予防会 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²

外国出生者の動向

• 急増する割合
  • 2023年の外国出生の新登録患者数は1,619人で、前年の1,214人から大幅に増加しました。全患者に占める割合も16.0%に達し、前年の11.9%から急上昇しています。
    • （出典）公益財団法人結核予防会 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²
• 20代における顕著な傾向
  • この傾向は特に若年層で顕著で、20～29歳代の新登録患者のうち、実に84.8%が外国出生者で占められています。
  • 東京都においてもこの傾向は同様で、東南アジア等からの留学生などが大きな割合を占めています。
    • （出典）公益財団法人結核予防会 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²
    • （出典）東京都保健医療局「インタビュー記事」令和6年度 ¹⁵
• これらのデータは、現代日本の結核が「過去に感染した日本人高齢者の再発」と「結核高まん延国から来た若年外国人の発症」という、背景も必要な支援も全く異なる二つの集団によって構成されていることを明確に示しています。したがって、今後の対策は、この二極化した構造を前提とした、きめ細かなアプローチが不可欠です。

課題

住民の課題

高齢者患者特有の課題

• 高齢の結核患者は、糖尿病や慢性腎臓病といった複数の合併症を抱えている場合が多く、治療薬の選択や副作用の管理が複雑化します。
• また、加齢による免疫力の低下が発症の引き金となるため、咳や微熱といった典型的な症状が出にくく、発見が遅れて重症化しやすい傾向にあります。
  • 客観的根拠：
    • 2023年（令和5年）の新登録結核患者のうち、42.9%が80歳以上です。
      • （出典）公益財団法人結核予防会 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²
    • 2022年（令和4年）の治療成績を見ると、死亡した患者の割合は80～89歳で39.9%、90歳以上では58.4%と極めて高く、高齢であることが治療成功の大きな障壁となっています。
      • （出典）厚生労働省「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について」令和6年度 ¹³
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 高齢者施設等での集団感染リスクが増大し、重症化・死亡事例がさらに増加します。

外国出生者患者特有の課題

• 言語の壁によるコミュニケーション不足、日本の医療制度や公費負担制度への不案内、文化・習慣の違い、経済的な不安、在留資格への影響懸念などが複合的に絡み合い、体調不良でも受診をためらったり、治療の継続が困難になったりするケースが後を絶ちません。
  • 客観的根拠：
    • 2023年（令和5年）の20歳代の新登録患者のうち、84.8%が外国出生者であり、この層への効果的なアプローチが急務となっています。
      • （出典）厚生労働省「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について」令和6年度 ¹³
    • 東京都の調査でも、外国出生患者は増加傾向にあり、特に日本語学校の学生が大きな割合を占めていることが指摘されています。
      • （出典）東京都保健医療局「インタビュー記事」令和6年度 ¹⁵
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 若年層内での感染拡大や、治療中断による薬剤耐性菌の発生・まん延リスクが高まります。

治療継続の困難さとスティグマ

• 6か月以上にわたる毎日の服薬は、患者にとって大きな身体的・精神的負担であり、症状が軽快すると自己判断で服薬を中断してしまう「治療脱落」が後を絶ちません。
• また、「結核は過去の病気」「不潔な人がかかる病気」といった根強い偏見（スティグマ）が、受診の遅れや、周囲に病気を隠して孤立を深めることにつながっています。
  • 客観的根拠：
    • 2022年（令和4年）の治療成績における「脱落・中断」率は1.9%でした。この割合は、特に支援の手が届きにくい社会的ハイリスク層で高くなる傾向があります。
      • （出典）厚生労働省「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について」令和6年度 ¹³
    • 同年の治療成功率（治癒＋治療完了）は64.9%と、世界保健機関（WHO）が掲げる目標値の85%を大きく下回っています。
      • （出典）公益財団法人結核予防会 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 治療の失敗は患者本人の再発リスクを高めるだけでなく、最も恐れるべき薬剤耐性結核を生み出す温床となります。

地域社会の課題

都市部における感染リスクと地域内格差

• 東京都特別区のように人口が密集し、人の流動性が高い大都市は、一度感染者が発生すると拡大しやすい環境にあります。
• また、同じ都内でも区によって罹患率に大きな差があり、対策資源をどこに重点的に投下すべきか、戦略的な判断が求められます。
  • 客観的根拠：
    • 2023年（令和5年）の新登録患者数は東京都が1,190人で全国最多であり、日本の結核対策における最重要エリアの一つです。
      • （出典）厚生労働省「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について」令和6年度 ¹³
    • 2022年（令和4年）のデータでは、北区の罹患率が12.4と、東京都平均（8.5）や全国平均（8.2）を大きく上回り都内で5番目に高いなど、区ごとの格差が顕著です。
      • （出典）東京都北区「感染症週報」令和6年度 ¹⁶
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 対策が手薄な高まん延地域が感染の「ホットスポット」となり続け、区全体の対策効果を減じます。

特定の環境下での集団感染リスク

• 学校、事業所、医療機関、高齢者福祉施設など、人が長時間、閉鎖的な空間を共有する環境での集団感染は、依然として大きな脅威です。
• 特に患者の発見が遅れると、気づかないうちに多数の人に感染を広げ、大規模な集団感染に発展する危険性があります。
  • 客観的根拠：
    • 中野区では2024年（令和6年）、入院患者12人に対し、その50倍を超える619人が接触者健診の対象となる事例が発生しており、一人の患者からいかに多くの接触者が生じうるかを示しています。
      • （出典）中野区「結核について」令和6年度 ¹⁷
    • 過去には都内の企業で、一人の社員の受診の遅れから63名（うち発病9名）の感染者が確認された事例もあります。
      • （出典）株式会社ワイズ・インフィニティ「都内で結核の集団感染」平成24年度 ¹⁸
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 一度集団感染が発生すると、その制圧に膨大な行政リソース（人員・予算）が投入され、社会経済活動にも深刻な影響が及びます。

行政の課題

複雑化する患者層への対応

• 前述の通り、「高齢者」と「若年の外国人」という、背景も言語も文化も必要な支援も全く異なる二つの患者層への同時対応が求められ、従来の画一的なアプローチでは効果が上がりません。
• 高齢者には老年医学や介護との連携が、外国人には多言語対応や異文化理解、在留資格等に関する知識が不可欠であり、保健所職員に求められる専門性が高度化・多様化しています。
  • 客観的根拠：
    • 高齢者結核は、過去の感染が数十年を経て再燃する「歴史上の負債」とも言われ、合併症管理など老年医学的アプローチが不可欠です。
      • （出典）結核予防会結核研究所「高齢者結核の現状と課題」平成22年度 ¹⁹
    • 一方で、外国人支援には言語・文化への配慮が欠かせず、東京都もその重要性を認識し、医療通訳事業等で対応を進めています。
      • （出典）東京都保健医療局「インタビュー記事」令和6年度 ¹⁵
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 支援のミスマッチが多発し、治療脱落率の改善が進まず、行政サービスへの信頼が低下します。

資源集約的な接触者健診と服薬支援（DOTS）

• 接触者健診は感染拡大防止の要ですが、対象者の特定、連絡、健診の実施、結果のフォローアップには、保健所職員の多大な時間と労力を要します。
• また、全ての患者に手厚い訪問DOTSを提供することは、限られた保健所の人員的リソースでは物理的に限界に達しつつあります。
  • 客観的根拠：
    • ある調査では、結核指定医療機関の58.9%が過去2年間に結核患者の診療歴がなく、DOTSの認知度も48.8%と低い水準にあり、保健所だけでなく地域医療全体での対応体制が脆弱であることを示唆しています。
      • (https://www.kekkaku.gr.jp/pub/Vol.86(2011)/Vol86_No10/Vol86No10P821-827.pdf) ²⁰
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • リソース不足により接触者の捕捉漏れや不十分な服薬支援が生じ、見えないところで感染の連鎖や治療失敗が進行します。

薬剤耐性結核への対応

• 治療の中断や不規則な服薬は、薬の効かない薬剤耐性結核（MDR-TB）を生み出す最大の原因です。
• 薬剤耐性結核の治療は、感受性結核に比べて治療期間が2年近くと長く、使用する薬剤も高価で副作用も強いため、患者・医療機関・行政のいずれにとっても負担が格段に重くなります。
  • 客観的根拠：
    • 2023年（令和5年）の新登録培養陽性肺結核患者のうち、多剤耐性（MDR）結核は0.8%でした。割合は低いものの、治療の困難さから公衆衛生上の脅威度は極めて高いです。
      • （出典）公益財団法人結核予防会 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²
    • 外国人患者ではMDRの割合が日本人より高い傾向が指摘されており、国際的な人の移動の活発化に伴い、国内への流入リスクは常に存在します。
      • （出典）大阪市「大阪市における外国人結核対策について（結核対策指針）」令和3年度 ²¹
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 治療困難な結核が市中に広がり、将来的な医療費の爆発的な増大と、制御不能な公衆衛生上の危機を招きます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

• 即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
• 実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の仕組みを活用できる施策は優先度が高くなります。
• 費用対効果
  • 投入する経営資源（予算・人員・時間等）に対して得られる効果が大きい施策を優先します。将来的な財政負担軽減効果も考慮します。
• 公平性・持続可能性
  • 特定の層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、一時的ではなく長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
• 客観的根拠の有無
  • 政府資料や学術研究、先進自治体の事例等により、効果が実証または示唆されている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

• 本報告書では、現代の結核対策が直面する「患者層の二極化（高齢者・外国人）」と「治療完遂の困難さ」という2大課題に対応するため、3つの支援策を提案します。
• 最優先（Priority 1）：支援策①「ハイリスク層に特化した早期発見・介入体制の強化」と支援策③「外国人患者支援体制の抜本的拡充」
  • これらは、現在の結核患者の大部分を占める二大グループに直接アプローチするものであり、感染拡大防止の観点から即効性と波及効果が最も高いと考えられます。感染の連鎖を元から断つための最重要施策です。
• 次点（Priority 2）：支援策②「治療完遂率向上のための多角的服薬支援（DOTS）モデルの構築」
  • これは治療成功率という根本的な課題にメスを入れるもので、中長期的な視点で薬剤耐性菌の抑制にも繋がるため、持続可能性が高い施策です。①と③で発見した患者を確実に治癒に導くために不可欠であり、①、③と一体的に推進すべきです。

各支援策の詳細

支援策①：ハイリスク層に特化した早期発見・介入体制の強化

目的

• 結核の二大ハイリスクグループである「高齢者」と「外国人」に焦点を当て、発症を早期に探知し、迅速な治療につなげることで、重症化と地域への感染拡大を未然に防ぎます。
  • 客観的根拠：
    • 新登録患者の約7割が高齢者であり、若年層では外国出生者が大半を占めるという現状データが、この重点的アプローチ（ターゲティング）の妥当性を強く裏付けています。
      • （出典）厚生労働省「結核について」令和6年度 ¹
      • （出典）公益財団法人結核予防会 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²

主な取組①：高齢者施設との連携強化によるスクリーニング徹底

• 介護老人保健施設や特別養護老人ホーム等に対し、感染症法第53条の2に基づき義務付けられている職員・入所者への定期健康診断（胸部X線検査）の実施と、保健所への実施状況報告を徹底するよう指導・支援します。
• 施設の嘱託医や看護師、介護職員向けに、高齢者結核の非典型的な症状（食欲不振、元気がない等）に関するオンライン研修会を実施し、日常業務の中での「気づき」の感度を高めます。
  • 客観的根拠：
    • 高齢者は結核発症リスクが高く、一度発生すると施設内で集団感染につながる危険性が極めて高いため、施設単位での水際対策が重要です。
      • （出典）結核予防会結核研究所「高齢者結核の現状と課題」平成22年度 ¹⁹
      • （出典）国立保健医療科学院「定期健康診断の実施と報告書提出」令和6年度 ²²
      • （出典）練馬区「結核定期健康診断について」令和6年度 ²³

主な取組②：日本語学校・技能実習生監理団体との連携強化

• 管内の日本語学校や技能実習生監理団体と協定を結び、入学・入国後できるだけ早期（例：3ヶ月以内）の結核健診（胸部X線検査）の受診を制度化します。大阪市の事例を参考に、健診費用の一部を区が補助する事業も検討します。
• 健診の機会に、結核の基礎知識、有症状時の相談窓口、医療費助成制度について、多言語で作成したリーフレットを用いて情報提供を行います。
  • 客観的根拠：
    • 東京都では日本語学校の学生が患者として多く報告されており、入国後早期の発症が多いため、この時期のスクリーニングは極めて効果的です。
      • （出典）東京都保健医療局「インタビュー記事」令和6年度 ¹⁵
    • 新宿区では1988年（昭和63年）から日本語学校結核検診を実施している長年の実績があります。
      • （出典）結核予防会結核研究所「新宿区保健所における結核対策」平成20年度 ²⁴
    • 大阪市では、日本語学校健診の患者発見率が一般の住民健診より有意に高いことが示されています。
      • （出典）大阪市健康局「主な事業の実績（令和4年度実績）」令和5年度 ²⁵

主な取組③：地域医療機関との連携による早期診断の促進

• 地域の診療所やクリニックの医師に対し、医師会等を通じて「2週間以上続く咳」だけでなく、「高齢者の原因不明の体調不良」や「外国人の長引く風邪症状」など、結核を疑うべき症候について定期的に情報提供し、鑑別診断に結核を含めるよう啓発します。
• 診断に迷う症例について、保健所が専門医療機関へ迅速に紹介・橋渡しするコンサルテーション体制を強化します。
  • 客観的根拠：
    • 医療機関を受診しても結核と診断されずに発見が遅れる「ドクターズ・ディレイ」は、感染拡大の大きな要因の一つです。プライマリケアを担う医師の意識向上が不可欠です。
      • （出典）公益財団法人結核予防会「日本の結核の現状」令和元年 ⁵

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 区内の結核罹患率を3年間で10%削減する。
    • データ取得方法： 保健所の結核登録者統計データ。
• KSI（成功要因指標）
  • 高齢者施設における定期健診受診率 100%。
    • データ取得方法： 感染症法に基づく施設からの報告書。
  • 対象日本語学校等における入学後3ヶ月以内の健診受診率 95%。
    • データ取得方法： 学校・団体との連携による受診者リストの確認。
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 喀痰塗抹陽性患者の割合を5%減少させる（早期発見により菌排出前に診断する）。
    • データ取得方法： 保健所の結核発生届データ。
  • 患者発見から治療開始までの期間を平均7日短縮する。
    • データ取得方法： 保健所の疫学調査記録。
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 高齢者施設向け研修会の開催回数 年4回。
    • データ取得方法： 事業実施報告。
  • 日本語学校・監理団体との連携協定締結数 10団体。
    • データ取得方法： 協定書管理簿。

支援策②：治療完遂率向上のための多角的服薬支援（DOTS）モデルの構築

目的

• 画一的な保健師訪問によるDOTSから脱却し、患者一人ひとりの生活状況やリスクに応じた多様な服薬支援メニュー（地域連携、ICT活用等）を提供することで、治療脱落を限りなくゼロに近づけ、治療成功率をWHO目標の85%に引き上げます。
  • 客観的根拠：
    • 日本の治療成功率が64.9%（2022年実績）と低いこと、そして画一的なDOTSが患者・提供者双方の負担となっている実態が、本施策の必要性を示しています。
      • （出典）公益財団法人結核予防会 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²
      • (https://www.i-repository.net/contents/osakacu/kiyo/DBo0140001-01.pdf) ²⁶

主な取組①：地域連携DOTSの推進

• 患者の同意のもと、かかりつけ薬局の薬剤師や訪問看護師、高齢者の場合はケアマネジャーなど、患者の生活に密着した専門職に服薬確認の協力を依頼する「地域連携DOTS」体制を構築します。
• 保健所は、協力者への研修実施、服薬手帳の活用方法の共有、副作用発見時の連絡体制の整備など、コーディネーターとしての役割を担います。
  • 客観的根拠：
    • 保健所のリソースには限界があり、地域全体の専門職ネットワークを活用することで、よりきめ細やかで持続可能な支援が可能になります。
      • (https://www.kekkaku.gr.jp/pub/Vol.86(2011)/Vol86_No10/Vol86No10P821-827.pdf) ²⁰
      • (https://jata.or.jp/dl/pdf/outline/support/zaitaku_201705.pdf) ²⁷

主な取組②：ビデオDOTS（VDOTS）の試行的導入

• スマートフォン等を活用し、患者が服薬する様子を録画・送信してもらい、保健師が遠隔で確認する「ビデオDOTS（VDOTS）」を、希望する患者（特に就労・就学中で日中の訪問が難しい若年層など）を対象に試行的に導入します。
• これにより、患者のプライバシー保護と利便性向上を図るとともに、保健師の移動時間やコストを削減します。
  • 客観的根拠：
    • 海外の研究では、VDOTSが患者の利便性を高め、医療提供者側の移動コストや時間を削減できるため、費用対効果が高いとの報告があります。
      • （出典）健栄製薬株式会社「結核対策におけるビデオ直接監視下治療」平成29年度 ²⁸
    • 横浜市では、生活保護受給者等を対象とした先駆的なDOTSを実施しており、ICTの活用はその発展形として期待されます。
      • (https://www.kekkaku.gr.jp/pub/Vol.85(2010)/Vol85_No3/Vol85No3P179-189.pdf) ²⁹

主な取組③：服薬支援インセンティブの導入

• 治療の各段階（例：2ヶ月後の菌陰性化達成、6ヶ月後の治療完了時）をクリアした患者に対し、クオカードや地域の商店で使える商品券等のささやかなインセンティブ（報奨）を提供するプログラムを試行します。
• これは罰則的な管理ではなく、ポジティブな動機付けによって服薬継続のモチベーションを維持することを目的とします。
  • 客観的根拠：
    • カンボジアでの国際協力事例では、結核対策を担うボランティアのモチベーション維持が課題となっており、これは患者にとっても同様と考えられます。行動経済学の知見を活用した小さな「ご褒美」が、長期にわたる治療継続の助けとなる可能性があります。
      • （出典）独立行政法人国際協力機構（JICA）「カンボジア国結核対策プロジェクト」令和6年度 ³⁰

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 結核患者の治療成功率を3年間で75%まで向上させる。
    • データ取得方法： 保健所の治療成績データ。
• KSI（成功要因指標）
  • 治療脱落・中断率を1.0%未満に抑制する。
    • データ取得方法： 保健所の治療成績データ。
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 服薬アドヒアランス（遵守率）95%以上を達成した患者の割合 90%。
    • データ取得方法： 服薬手帳、VDOTSログ、地域連携協力者からの報告。
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 地域連携DOTS協力機関数（薬局・訪問看護ステーション等） 20機関。
    • データ取得方法： 協力機関登録簿。
  • VDOTS利用患者数 年間20人。
    • データ取得方法： VDOTSシステム利用記録。

支援策③：外国人患者支援体制の抜本的拡充

目的

• 言語・文化・制度の壁を取り払い、外国人患者が安心して日本の医療にアクセスし、治療を中断することなく完遂できる包括的な支援環境を整備します。

主な取組①：医療通訳派遣制度の拡充

• 保健所での初回面談や医療機関受診時、公費負担申請手続きなどの重要な場面で、対応言語（フィリピン、ベトナム、ネパール、中国語等、区内の患者の国籍構成に応じて）の専門的な医療通訳を迅速に派遣できる体制を強化します。
• 緊急時や希少言語に対応するため、電話通訳やタブレット端末を用いたオンライン通訳サービスを積極的に活用します。
  • 客観的根拠：
    • 東京都は既に「外国人結核等患者治療服薬支援（医療通訳）事業」を実施しており、その有効性が認められています。
      • （出典）東京都保健医療局「インタビュー記事」令和6年度 ¹⁵
    • 大阪市では、外国人患者への支援において医療通訳の積極的な導入が信頼関係構築と支援の質の向上に不可欠であると結論づけています。
      • （出典）大阪市「大阪市における外国人結核対策について（結核対策指針）」令和3年度 ²¹

主な取組②：多言語情報提供ツールの作成と活用

• 結核の病態、治療の必要性、標準的な治療期間、医療費助成制度、服薬の重要性などを、図やイラストを多用した「やさしい日本語」及び多言語（英語、中国語、ベトナム語、ネパール語等）のパンフレットや動画を作成します。
• 作成したツールは保健所、管内の主要な医療機関、日本語学校、国際交流協会等で配布・活用し、患者本人だけでなく、支援者（学校職員、雇用主等）の理解も促進します。
  • 客観的根拠：
    • 東京都が作成した7言語対応の啓発動画や、大阪市が整備した多言語の啓発資材は、効果的な情報提供ツールとして大いに参考になります。
      • （出典）東京都保健医療局「インタビュー記事」令和6年度 ¹⁵
      • （出典）大阪市「大阪市における外国人結核対策について（結核対策指針）」令和3年度 ²¹

主な取組③：ワンストップ相談窓口の設置

• 地域の国際交流協会や外国人支援NPOと連携し、結核に関する医療相談だけでなく、在留資格の更新、経済的困窮、住居、就労など、患者が抱える複合的な問題にワンストップで対応できる相談窓口を設置します。
• 保健師と、外国人支援の専門家が連携して対応にあたります。
  • 客観的根拠：
    • 外国人患者は医療面だけでなく、生活全般にわたる不安を抱えているため、医療と福祉・生活支援を一体的に提供する包括的なアプローチが治療継続の鍵となります。
      • （出典）神戸大学大学院保健学研究科「技能実習生と日本語学校留学生の結核患者に対する保健師の支援」令和4年度 ³¹
      • （出典）大阪市「大阪市における外国人結核対策について（結核対策指針）」令和3年度 ²¹

主な取組④：帰国時治療継続支援（Bridge TB Care）の徹底

• 治療途中でやむを得ず母国へ帰国せざるを得ない患者に対し、公益財団法人結核予防会の国際医療連携支援サービス等を活用し、帰国後の治療が円滑に継続できるよう支援します。
• 具体的には、帰国先の医療機関への紹介状（英文・多言語）の作成、治療経過のサマリー提供、必要な薬剤情報の伝達などを、主治医や保健所が連携して行います。
  • 客観的根拠：
    • 治療中断は、本人だけでなく、国際的な薬剤耐性菌まん延のリスクにも繋がります。大阪市の指針でも、帰国後の治療中断を防ぐための丁寧な支援の重要性が強調されています。
      • （出典）大阪市「大阪市における外国人結核対策について（結核対策指針）」令和3年度 ²¹

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 外国人患者の治療成功率を日本人患者と同水準まで引き上げる。
    • データ取得方法： 保健所の治療成績データを国籍別に分析。
• KSI（成功要因指標）
  • 外国人患者の治療脱落・中断率を1.5%未満に抑制する。
    • データ取得方法： 保健所の治療成績データを国籍別に分析。
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 医療通訳を利用した外国人患者の「説明への理解度・満足度」 90%以上。
    • データ取得方法： 患者へのアンケート調査（多言語対応）。
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 医療通訳派遣件数 年間100件以上。
    • データ取得方法： 通訳派遣事業の実績報告。
  • 多言語パンフレットの配布部数 年間5,000部。
    • データ取得方法： 配布実績の集計。
  • ワンストップ相談窓口の相談件数 年間50件。
    • データ取得方法： 相談窓口の利用記録。

先進事例

東京都特別区の先進事例

新宿区「ハイリスク者（路上生活者・日本語学校生）への重点的検診事業」

• 新宿区は、結核のハイリスクグループである路上生活者や日本語学校の学生を対象に、長年にわたり公園での出張健診や施設入所時健診を積極的に実施しています。
• 成功要因とその効果：
  • コンピューターX線画像処理装置付検診車（CR車）を導入し、その場で結果を判断し、発見から治療へと確実につなげる連携体制を構築しています。
  • リスクの高い層に直接アプローチする「アウトリーチ型」の介入モデルとして高く評価でき、都市部の結核対策における重要な示唆を与えています。
• 客観的根拠：
  • （出典）結核予防会結核研究所「新宿区保健所における結核対策」平成20年度 ²⁴

豊島区「地域連携による普及啓発と無料健診の実施」

• 豊島区は、65歳以上の高齢者に対する結核健診の受診勧奨を、長寿健診（後期高齢者医療制度）等と連携して体系的に行うほか、広く一般区民や外国人を対象に、駅前等のアクセスしやすい場所で無料の結核健診イベントを実施しています。
• 成功要因とその効果：
  • 既存の健診制度との連携による効率的な受診勧奨と、イベント形式による気軽な受診機会の提供を組み合わせることで、住民の結核への関心を高め、早期発見につなげています。
• 客観的根拠：
  • （出典）豊島区「令和6年度 無料結核健診のお知らせ」令和6年度 ³²
  • （出典）豊島区「結核」令和6年度 ²

中野区「徹底した接触者健診による感染拡大防止」

• 中野区では、一人の患者から多数の接触者が発生した事例において、迅速かつ大規模な接触者健診を実施し、感染拡大の封じ込めに努めています。
• 成功要因とその効果：
  • 患者一人に対して50倍以上の接触者健診を実施したこの事例は、感染症対策の基本である疫学調査と接触者管理の重要性を再認識させます。
  • 保健所の機動的な対応が、地域社会への感染拡大を水際で防いだ好事例と言えます。
• 客観的根拠：
  • （出典）中野区「結核について」令和6年度 ¹⁷

全国自治体の先進事例

大阪市「外国人結核対策における包括的支援モデル」

• 大阪市は、全国に先駆けて「外国人結核対策指針」を策定し、体系的な支援を展開しています。
• 成功要因とその効果：
  • 日本語学校への入学時健診事業、医療通訳派遣制度の積極的な活用、学校職員と連携したDOTS、治療中断を防ぐための帰国支援など、本報告書で提案する施策の多くを既に実践しています。
  • データに基づき課題を分析し、具体的な対策を打ち出すというEBPM（証拠に基づく政策立案）のサイクルが確立されており、特別区が学ぶべき点が非常に多い先進モデルです。
• 客観的根拠：
  • （出典）大阪市「大阪市における外国人結核対策について（結核対策指針）」令和3年度 ²¹
  • （出典）大阪市健康局「主な事業の実績（令和4年度実績）」令和5年度 ²⁵

横浜市「生活保護受給者等を対象とした先駆的DOTSの導入」

• 横浜市は、結核高まん延地区であった中区寿地区のドヤ街に居住する生活保護受給者など、治療中断リスクが特に高い層に対して、2000年（平成12年）から対面式のDOTSを導入した先駆的な事例です。
• 成功要因とその効果：
  • 最も支援を必要とする層に人的資源を集中投下する「選択と集中」の戦略により、治療成功率の向上に貢献しました。
  • ハイリスク層へのDOTS戦略の有効性を示す重要な国内事例です。
• 客観的根拠：
  • (https://www.kekkaku.gr.jp/pub/Vol.85(2010)/Vol85_No3/Vol85No3P179-189.pdf) ²⁹

参考資料［エビデンス検索用］

• 厚生労働省関連資料
  • 「2023年 結核登録者情報調査年報集計結果について」令和6年度 ¹³
  • 「2022年 結核登録者情報調査年報集計結果について」令和5年度 ¹¹
  • 「結核医療の基準の一部を改正する件の施行について（施行通知）」令和7年度 ³³
  • 「結核について」令和6年度 ¹
• 東京都関連資料
  • 東京都健康安全研究センター「東京都における結核の概況 令和4年（2022年）」令和5年度 ¹⁴
  • 東京都保健医療局「外国人結核等患者治療服薬支援（医療通訳）事業に関するインタビュー記事」令和6年度 ¹⁵
  • 東京都北区「感染症週報」令和6年度 ¹⁶
• 特別区関連資料
  • 新宿区「医療機関の皆様へ～結核に関する届出について」令和6年度 ³⁴
  • 豊島区「結核」令和6年度 ²
  • 中野区「結核について」令和6年度 ¹⁷
• 公益財団法人結核予防会関連資料
  • 結核研究所 疫学情報センター「2023年結核年報の概況」令和6年度 ¹²
  • 結核研究所 学術雑誌「結核」各関連論文（平成20年度 ²⁴, 平成22年度 ¹⁹, 平成23年度 ²⁰）
  • 「日本の結核の現状」令和元年 ⁵
  • 「結核の常識2023」令和5年度 ³
• その他自治体・研究機関資料
  • 大阪市「大阪市における外国人結核対策について（結核対策指針）」令和3年度 ²¹
  • 大阪市健康局「主な事業の実績（令和4年度実績）」令和5年度 ²⁵
  • (https://www.hws-kyokai.or.jp/images/ronbun/all/200405-03.pdf) ⁶
  • 神戸大学大学院保健学研究科「技能実習生と日本語学校留学生の結核患者に対する保健師の支援」令和4年度 ³¹

まとめ

　東京都特別区における結核対策は、全国的な低まん延化という成果の陰で、高齢者の再発と若年外国人の新規発症という二極化した課題に直面しています。今後の対策は、画一的なアプローチを脱し、これらハイリスク層に焦点を当てた精密な戦略が不可欠です。本報告書で提案した、①ハイリスク層への特化した早期発見、②多角的な服薬支援（DOTS）モデルの構築、③外国人患者への包括的支援体制の拡充、という三つの柱を統合的に推進することが、まん延防止と社会的格差の是正を実現する鍵となります。
　本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
　引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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