16 福祉

移動支援

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

はじめに

概要(移動支援を取り巻く環境)

  • 自治体が移動支援(障害者自立・生活支援)を行う意義は「障害者の社会参加と自己実現の権利を保障すること」と「共生社会の実現に向けた物理的・心理的障壁を除去すること」にあります。
  • 移動支援は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」)に基づく地域生活支援事業の核心的なサービスです。これは、屋外での移動が困難な障害のある人々に対し、ガイドヘルパーが外出を支援することで、地域における自立した生活と社会参加を促進することを目的としています。
  • この支援は、単なる物理的な移動の補助に留まりません。金融機関での手続きや日用品の買い物といった「社会生活上必要不可欠な外出」から、文化芸術活動やスポーツ、地域行事への参加といった「社会参加のための外出」まで、幅広い活動を支えることで、障害者のQOL(生活の質)向上に直結します。
  • 令和6年4月1日に施行された改正障害者差別解消法により、事業者による「合理的配慮の提供」が義務化されたことで、社会全体のバリアフリー化への要請は一層高まっています。移動支援は、この法理念を具現化する上で不可欠な行政サービスと位置づけられます。

意義

住民にとっての意義

自己実現と社会参加の促進
  • 移動の自由が確保されることで、就労、学習、文化・スポーツ活動など、個人の可能性を追求する機会が拡大します。
  • これは、障害者の自己肯定感や生きがいの向上に繋がります。
社会的孤立の防止
  • 外出機会の増加は、他者との交流を促し、地域社会からの孤立を防ぎます。
  • 特に、自由時間の過ごし方が「テレビ・ラジオ・新聞」(31.4%)や「心身の疲労回復、休息」(20.6%)に偏りがちな現状を改善し、心身の健康維持に寄与します。
    • 客観的根拠:
      • (出典)(https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/jiritsu-report-DB/db/20/089/report/report04.html) 2
生活の質の向上
  • 通院、買い物、行政手続きといった日常生活に不可欠な活動を円滑に行えるようになり、生活の安定と安心感が向上します。

地域社会にとっての意義

共生社会の実現
  • 障害のある人々が当たり前に街に出て活動する風景は、多様性を受け入れる「共生社会」の理念を可視化し、地域住民の障害に対する理解を促進します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都の障害者施策の基本理念は「ノーマライゼーション」であり、移動支援は「すべての都民がともに暮らす地域社会の実現」という目標に直接的に貢献します。
地域経済の活性化
  • 障害者が消費者として外出・活動しやすくなることで、地域の商業施設や文化施設等の利用が促進され、地域経済に貢献します。
地域コミュニティの強化
  • 障害者を含む多様な住民が地域のイベントや活動に参加することで、新たな交流が生まれ、地域コミュニティ全体の結束力が高まります。

行政にとっての意義

法的責務の履行
  • 障害者基本法や障害者差別解消法に定められた、差別の解消と社会参加支援という行政の責務を具体的に履行するものです。
将来的な社会保障コストの抑制
  • 社会参加や就労を通じて障害者の自立を促すことは、長期的に見て、他の福祉サービスへの依存度を低減させ、社会保障コスト全体の最適化に繋がる可能性があります。
インクルーシブなまちづくりの推進

(参考)歴史・経過

1970年代
1980年代
  • 支援対象が脳性麻痺者等にも拡大され、制度が徐々に拡充されました。
    • (出典)(https://flatkita-2000.jp/pdf/help_0401.pdf) 11
1990年代
2003年
  • 支援費制度が導入され、行政による「措置」から利用者と事業者の「契約」へと転換しました。「外出介護」として位置づけられ、利用者のサービス選択権が重視されるようになりました。
    • (出典)(https://flatkita-2000.jp/pdf/help_0401.pdf) 11
2006年
  • 障害者自立支援法が施行され、国の個別給付(居宅介護、同行援護等)と、市町村の裁量で実施する地域生活支援事業(移動支援)に再編されました。これにより、市町村ごとの実情に応じた柔軟なサービス提供が可能になった一方、自治体間でのサービス格差が生じる素地が生まれました。
  • また、道路運送法が改正され、NPO等による福祉有償運送が「自家用有償運送」として法律上に位置づけられました。
2013年
  • 障害者総合支援法が施行され、視覚障害者の移動支援が個別給付の「同行援護」に移行するなど、制度の再整理が進みました。難病患者も対象に含まれるようになりました。
    • (出典)(https://flatkita-2000.jp/pdf/help_0401.pdf) 11
2016年
  • 障害者差別解消法が施行され、「不当な差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供(行政は義務、事業者は努力義務)」が定められ、移動における障壁除去が社会全体の課題として明確化されました。
2024年

移動支援に関する現状データ

障害者数の増加と構造変化

全国的な障害者数の増加
精神障害者の顕著な増加
東京都特別区の状況
  • 東京都においても障害者数は増加傾向にあります。例えば、府中市では愛の手帳(知的障害)所持者数が平成25年度の1,900人から令和2年度には2,155人へと増加しています。
  • 特別区内での障害者手帳所持者数には、区の人口規模を反映して大きな差が見られます。令和4年度末の統計によると、身体障害者手帳所持者数は世田谷区が19,165人と最も多く、次いで練馬区(17,212人)、大田区(16,843人)と続きます。一方、最も少ないのは千代田区の1,400人です。
  • 知的障害者(児)「愛の手帳」所持者数も同様に、世田谷区が6,610人と最も多く、練馬区(6,231人)、江戸川区(5,958人)が続きます。最も少ないのは千代田区の258人です。これらのデータは、各区が抱える障害福祉ニーズの規模や特性の違いを示しており、一律ではない地域の実情に応じた政策立案の必要性を示しています。

移動支援サービスの利用状況

主要サービスとしての位置づけ
  • 移動支援事業は、障害福祉サービスの中でも利用者が多い主要なサービスの一つです。全国調査では、生活介護、居宅介護に次いで3番目に利用実人数が多く、約9万人が利用しています。
  • ほとんどの市区町村で実施されており、実施率は95.6%に達しています。
深刻な供給不足
  • 高いニーズがある一方で、サービス供給が追いついていない実態が浮き彫りになっています。
  • 厚生労働省の調査によると、行動援護事業所の41.2%が、サービス利用の照会があったにもかかわらず受け入れできなかった経験があると回答しています。その最大の理由は「職員数が不足していた」で、91.6%を占めています。
  • 横浜市の調査でも、事業者が利用依頼を断った理由として「人手不足」が最も多く挙げられており、担い手不足が利用者のサービス利用機会を直接的に奪っている深刻な状況がうかがえます。

公共交通機関のバリアフリー化の進捗

ハード面の着実な進展と「完成」
ソフト面の遅れと「パラドックス」
  • しかし、ハード面の進展とは裏腹に、ソフト面では課題が山積しています。全国の鉄軌道駅における視覚障害者誘導用ブロック(点字ブロック)の設置率は46.6%と、目標の100%には程遠い状況です。
  • この状況は、「立派な器(ハード)はできたが、それを活かすための中身(ソフト・人材)が伴っていない」という構造的な矛盾、いわば「進捗のパラドックス」を示しています。せっかく整備されたバリアフリー設備が、ヘルパー不足や情報提供の不備によって十分に活用されず、投資効果が限定的になっている可能性があります。
  • 政策的には、ハード整備予算と、それを運用する人材の確保・育成や情報提供システム構築といったソフト面の予算を一体的に計画し、連携させていく視点が不可欠であることを強く示唆しています。

課題

住民の課題

物理的・心理的な外出の困難さ
  • 多くの障害当事者が、日常生活における外出に物理的・心理的な困難を抱えています。調査によれば、障害のある人の53.8%が外出を困難に感じており、その具体的な理由として「道路に段差が多い」(19.5%)、「駅に段差が多い」(14.6%)といった物理的な障壁が依然として多く挙げられています。
  • 特に深刻なのがトイレの問題です。外出先で利用可能なトイレが見つかるかという不安から、外出前に水分摂取を控える人が33%にものぼるという調査結果もあり、これは健康上のリスクにも繋がりかねない重大な課題です。
  • さらに、困難さは障害特性によって多様です。車椅子利用者にとっては「多機能トイレの不足」や「左手用の手すりの少なさ」、視覚障害者にとっては「飲食店の券売機やタッチパネルの操作困難」や「盲導犬の入店拒否」、聴覚障害者にとっては「災害時の情報不足」など、個々の状況に応じた様々なバリアが存在し、外出への意欲を削いでいます。
サービスの利用困難と情報格差
  • 移動支援における最大の課題は、サービスを利用したくても利用できない「担い手不足」です。厚生労働省の調査では、行動援護事業所の41.2%が、ヘルパー不足等を理由にサービスの受け入れを断った経験があると回答しており、需要に対して供給が全く追いついていない実態があります。
  • また、移動支援制度は障害者総合支援法に基づき市町村が実施主体となっているため、サービス内容や対象者、支給量などが自治体ごとに異なっています。この制度の複雑さが、利用者にとっての「情報格差」を生んでいます。どのサービスが利用できるのか、どこに申請すればよいのかが分かりにくく、特に複数の区にまたがって活動する際には大きな不便が生じています。

地域社会の課題

担い手(ガイドヘルパー)の深刻な不足
  • 地域社会全体で、移動支援を支える人材が危機的な状況にあります。独立行政法人福祉医療機構の最新調査によると、障害福祉サービス事業所の半数以上(52.6%)が職員の「不足」を感じています。特に不足している職種として「生活支援員」(56.9%)が挙げられており、これは移動支援を直接担うガイドヘルパーの不足を明確に示しています。
  • 人員確保が困難な最大の要因は「他産業より低い賃金水準」であり、実に68.0%の事業所がこれを挙げています。魅力的な労働条件を提示できず、人材獲得競争で他産業に太刀打ちできていない現状が浮き彫りになっています。
NPO等による移動サービスの持続可能性の危機
  • 公的サービスを補完する重要な役割を担ってきたNPO等による福祉有償運送も、持続可能性の岐路に立たされています。総務省の調査では、福祉有償運送事業で生じた赤字を、介護保険事業等の他事業の収益や補助金で補填している団体が多数存在することが明らかになっています。
  • さらに、新規参入や事業拡大の障壁も高いのが実情です。道路運送法に基づく運営協議会において、既存のタクシー事業者等との合意形成が必要となりますが、タクシー業界への遠慮や、自治体側の調整ノウハウ不足から協議会が形骸化し、結果としてNPO等の活動が制限されるケースが報告されています。

行政の課題

断片化されたサービス提供体制
  • 障害者の移動を支える制度は、複数の法律と所管省庁にまたがっており、著しく断片化しています。例えば、ガイドヘルパーによる「移動支援」は障害者総合支援法(厚生労働省)、NPO等による「福祉有償運送」は道路運送法(国土交通省)、駅やバスの「バリアフリー化」は交通バリアフリー法(国土交通省)と、それぞれが別の体系で運用されています。
  • この「制度のサイロ化」は、利用者にとって深刻なバリアとなっています。利用者が自宅から目的地まで移動するという一連の行動の中で、複数の制度を理解し、異なる窓口で別々の手続きを行うという高い「行政的・認知的コスト」を強いられているのです。これは、施策の連携や一体的な推進を阻害し、行政資源の非効率な配分にも繋がっています。
特別区間におけるサービス格差
  • 移動支援は市町村が主体となる地域生活支援事業であるため、その内容は各区の判断に委ねられています。その結果、対象者の範囲、支給量の上限、利用者負担の割合、利用できる外出の目的などが区ごとに異なり、大きなサービス格差が生じています。
  • 具体的には、1ヶ月あたりの支給時間の上限が、千代田区では原則60時間であるのに対し、渋谷区では原則25時間、世田谷区では障害種別に応じて40時間から93時間と、区によって数倍の開きがあります。これは、どの区に住んでいるかによって受けられる支援の量と質が大きく変わる「居住地による不平等」を意味します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。単一の課題解決よりも、複数の課題に横断的に効果を及ぼす施策を優先します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の体制・仕組みを活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策より優先度が高くなります。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。短期的コストよりも長期的便益を重視し、将来的な財政負担軽減効果も考慮します。
公平性・持続可能性
  • 特定の地域・年齢層だけでなく、幅広い住民に便益が及ぶ施策を優先します。一時的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 政府資料や学術研究等のエビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。先行事例での成功実績があり、効果測定が明確にできる施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 移動支援の課題は「担い手不足」「制度の分断」「物理的・情報的バリア」という3つの層に大別できます。これらを解決するため、「人材基盤の強化」「ハード・ソフト両面の環境整備」「DXによる連携強化」を3つの柱として施策を体系化します。
  • 優先度が最も高い施策は**「支援策①:移動支援人材の確保・育成とサービス提供体制の強化」**です。担い手がいなければ、どのような制度やインフラも機能しないため、全てのサービスの根幹を揺るがしているこの課題への対応が最も緊急性が高いと判断します。
  • 次に優先すべきは、ハード面の進展とソフト面の遅れという「パラドックス」を解消するための**「支援策②:物理的・情報的バリアフリーの統合的推進」**です。これは、既存のインフラを最大限に活用し、利用者の利便性を直接的に向上させる効果が期待できます。
  • そして、中長期的な視点でサービスの質と効率を抜本的に向上させるため、**「支援策③:多様な移動手段の確保とDXによる連携強化」**を推進します。これは、将来の社会変化に対応し、持続可能な移動支援システムを構築するための基盤となります。
  • これら3つの施策は相互に関連しており、統合的に進めることで最大の効果を発揮します。例えば、人材育成(支援策①)が情報的バリアフリー(支援策②)の担い手を育て、DXによる連携強化(支援策③)が人材の効率的な活用を可能にします。

各支援策の詳細

支援策①:移動支援人材の確保・育成とサービス提供体制の強化

目的
主な取組①:処遇改善による人材確保・定着の促進
  • 特別区が連携し、共通の処遇改善加算制度を創設または既存制度を拡充します。国の加算制度に上乗せ支給を行うことで、移動支援ヘルパーの賃金水準を、他産業や他の介護サービス(例:介護保険の訪問介護)と遜色のない魅力的なレベルまで引き上げます。
  • 勤続年数や保有資格(介護福祉士、行動援護従業者養成研修修了者、精神・発達障害支援に関する専門研修修了者等)に応じたキャリアアップ加算の仕組みを導入し、専門性を評価するとともに、長期的な就労へのインセンティブを高めます。
主な取組②:多様な人材の参入促進と資格取得支援
  • 学生(福祉系学部等)、子育て世代の主婦(主夫)、アクティブシニア等をターゲットとし、短時間勤務(例:週1回、2時間から)や副業・兼業を前提とした柔軟な働き方を推進するモデル事業を実施し、その成果を全区的に共有します。
  • 移動支援従業者養成研修の受講費用を全額補助する制度を創設します。さらに、研修期間中の時給を支払う、または研修修了後に奨励金を支給するなど、資格取得に伴う経済的負担と機会損失を徹底的に軽減します。
主な取組③:専門性向上のための研修体系の強化
  • 近年急増している精神障害・発達障害のある利用者のニーズに対応するため、これらの障害特性、コミュニケーション手法、パニック時の対応等を学ぶ専門研修を新設し、全ての移動支援従業者に受講を義務付けます(既存従業者には経過措置を設ける)。
  • 視覚障害者への同行援護(白杖利用者のナビゲーション技術等)、強度行動障害のある利用者への対応、医療的ケアが必要な利用者の支援など、より高度なスキルを要する支援に対応するための上位研修コースを設置します。これらの研修修了者には、処遇改善加算と連動した資格手当を支給し、専門性の向上を評価します。
主な取組④:福祉有償運送団体への運営支援強化
  • NPO等が実施する福祉有償運送に対し、車両購入・維持費(車検、保険料等)、運転手の人件費、事務経費等に対する運営費補助金を拡充します。特に、リフト付き車両などバリアフリー対応車両の導入には重点的に助成します。
  • 区が主体となり、地域のタクシー事業者、バス事業者、福祉有償運送団体、利用者代表などが参加する「地域移動サービス運営協議会」を定期的に開催(年2回以上)します。これにより、形骸化を防ぎ、地域全体の輸送資源の最適配分や役割分担について実質的な協議を進め、協力体制の構築と円滑な事業運営を支援します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 移動支援サービスの利用者満足度: 90%以上
      • データ取得方法: 年1回の利用者アンケート調査
    • サービス提供の未然防止率(希望日時にサービスを受けられた割合): 95%以上
      • データ取得方法: 主要事業者へのヒアリング調査、利用者アンケート
  • KSI(成功要因指標)
    • 移動支援従業者数(実人数): 対前年比5%増
      • データ取得方法: 各区の事業者登録情報に基づく集計
    • 従業者の平均勤続年数: 5年以上
      • データ取得方法: 各区を通じた事業者への労働実態調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • サービス利用の断り件数(ヘルパー不足を理由とするもの): 対前年比30%減
      • データ取得方法: 主要事業者へのヒアリング調査
    • 移動支援ヘルパーの離職率: 10%以下
      • データ取得方法: 各区を通じた事業者への労働実態調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 特別区独自の処遇改善加算の受給事業所率: 90%以上
      • データ取得方法: 各区の加算申請・支給実績の集計
    • 資格取得支援制度の利用者数: 各区平均で年間20人以上
      • データ取得方法: 各区の制度利用申請・実績の集計
    • 専門研修(精神・発達障害等)の修了者率(全従業者中): 80%以上
      • データ取得方法: 各区の研修実施記録と事業者登録情報

支援策②:物理的・情報的バリアフリーの統合的推進

目的
  • 進展するハード面のバリアフリー化と遅れがちなソフト面のバリアフリー化を統合的に推進し、誰もがストレスなく情報を得て、安全に移動できる環境を実現します。
主な取組①:デジタル障害者手帳「ミライロID」の導入・活用促進
  • 区役所、区立の文化・スポーツ施設、図書館、地域センター等において、ミライロIDを本人確認及び障害者割引の適用に全面的に導入し、窓口での掲示やウェブサイトでの周知を徹底します。
  • 地域の商店街振興組合や商工会議所と連携し、加盟店向けにミライロID導入のメリット(顧客層拡大、スムーズな接客等)に関する説明会を実施します。さらに、導入に必要なタブレット端末等の費用の一部を補助する制度を創設し、地域ぐるみでの導入を促進します。
    • 客観的根拠:
      • ミライロIDは、手帳を提示する際の心理的負担を軽減し、多様な様式の手帳を判別する事業者側の負担も軽減するため、ソフト面のバリアフリー化に大きく貢献します。
主な取組②:「心のバリアフリー」教育・啓発の強化
  • 区内の全小中学校の授業カリキュラムに、「心のバリアフリー」教育を位置づけます。障害当事者を講師として招いた出前授業や、車椅子・アイマスク等を用いたバリアフリー体験学習を、総合的な学習の時間等を活用して必修化します。
  • 地域の交通事業者(バス、タクシー等)や商業施設(スーパー、デパート等)の従業員を対象とした、障害特性の理解と具体的なサポート方法(例:聴覚障害者への筆談対応、視覚障害者への声かけと誘導方法)を学ぶ実践的な研修会を、区が主催または助成金を出して実施します。
主な取組③:公共交通機関におけるラストワンマイルの解消
  • 東京都交通局や各鉄道事業者と連携し、区内の駅構内における案内表示や誘導ブロックの総点検を実施します。特に、複数の路線が乗り入れる複雑な駅での乗り換え経路や、バス停・タクシー乗り場までの地上出口への経路が、初めて訪れる人や視覚障害者にも分かりやすいよう、サイン計画の改善を共同で進めます。
  • バリアフリー法で遵守が義務化されたソフト基準に基づき、駅員やバス運転手への接遇研修が徹底されるよう、事業者と定期的な意見交換会を開催します。スロープ板の適切な操作、聴覚障害者への筆談具の常備と対応などを確認し、改善を要請します。
主な取組④:アクセシブルなトイレ環境の整備
  • 区内の公共施設、公園、主要駅の多機能トイレについて、設置場所、設備内容(オストメイト対応、ユニバーサルシート、音声案内等)、現在の空き状況をリアルタイムで確認できるスマートフォンアプリを、民間企業と連携して開発・導入します。
  • 新規に建設される大規模商業施設や公共施設に対し、建築確認申請の際に、基準を超える数の多機能トイレや、より機能性の高いトイレ(例:介助者が複数人入れるスペースの確保)の設置を促すための容積率緩和や固定資産税の減免などのインセンティブ制度を検討します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 障害のある住民の外出頻度: 月平均4回以上
      • データ取得方法: 各区が実施する障害者生活実態調査(3年に1回)
    • 外出時に困難を感じる人の割合: 30%以下(現状53.8%)
      • データ取得方法: 各区が実施する障害者生活実態調査
  • KSI(成功要因指標)
    • ミライロIDの区内登録者数: 区内の障害者手帳所持者の50%以上
      • データ取得方法: 株式会社ミライロとの協定に基づくデータ提供
    • 区民の「心のバリアフリー」認知度・実践意向: 80%以上
      • データ取得方法: 年1回の区民意識調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • ミライロIDが利用可能な区内店舗・施設数: 各区平均で300箇所以上
      • データ取得方法: 区の補助金交付実績、ミライロIDアプリ上の公開データ
    • 公共交通機関の利用満足度(障害のある利用者): 85%以上
      • データ取得方法: 交通事業者と連携した利用者アンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 「心のバリアフリー」出前授業の実施率: 区内全小中学校で100%
      • データ取得方法: 教育委員会との連携による実施状況報告
    • 事業者向け研修会の年間参加者数: 各区平均で300人以上
      • データ取得方法: 研修会申込・参加記録の集計

支援策③:多様な移動手段の確保とDXによる連携強化

目的
  • 既存の移動支援サービスに加え、多様な移動手段を確保・連携させることで、利用者の選択肢を拡大します。また、DX(デジタル・トランスフォーメーション)を活用し、分断されたサービスをシームレスに繋ぎ、利便性を抜本的に向上させます。
主な取組①:特別区版「ユニバーサルMaaS」の構築
  • 区内の「移動支援事業」、「福祉有償運送」、「福祉タクシー」、そして「都営交通」や「コミュニティバス」等の公共交通機関の情報を一元化し、単一のスマートフォンアプリで最適な経路検索から予約、決済までをワンストップで完結できるプラットフォームを、特別区が連携して構築します。
  • 利用者はアプリに自身の障害特性(例:車椅子利用、白杖利用、聴覚障害)や希望するサポート内容(例:乗降時の介助、筆談でのコミュニケーション)を事前に登録できます。予約時にこの情報が各交通事業者に安全に共有されることで、個々のニーズに合った合理的配慮を円滑に提供できる仕組みを導入します。
主な取組②:オンデマンド交通の実証実験
  • 鉄道駅やバス停から離れているなど、公共交通が手薄な地域や、早朝・深夜など利用者が少ない時間帯において、AI活用型のオンデマンド乗合交通サービス(AIデマンドバス等)の実証実験を行います。
  • 障害者手帳やミライロIDを提示することによる運賃割引を適用し、移動支援の利用者も気軽に利用できる制度設計とします。これにより、移動支援ヘルパーの稼働が難しい時間帯の移動ニーズにも応えます。
    • 客観的根拠:
      • 全国のMaaS事例では、オンデマンド交通が地方の交通課題解決に有効であることが示されています。このモデルは、大都市である特別区内にも存在する「交通空白地帯」や「時間的空白」の解消に応用可能です。
        • (出典)(https://miraicolabo.willsmart.co.jp/article/7936/) 42
主な取組③:特別区間の移動支援サービスの広域連携
  • 特別区長会が主体となり、23区共通の移動支援サービスに関する情報連携システムを構築します。このシステムを通じて、利用者の支給決定情報や登録事業者情報を、個人情報保護に配慮した上で区間で共有できるようにします。
  • 利用者が居住区で受けた支給決定の範囲内であれば、改めての申請や手続きをすることなく、目的地の区に登録されている事業者サービスを利用できる広域連携協定を、まずは隣接する区から順次締結していきます。
主な取組④:通学・通所支援の柔軟化
  • 通学・通所時の移動支援の利用要件を、保護者の就労や病気といった従来からの理由に加え、障害のある兄弟姉妹のケア、保護者の高齢化など、現代の多様な家庭の事情を考慮して柔軟に認定するよう、各区でガイドラインを見直します。
  • 自宅から学校(または事業所)への単純な往復だけでなく、放課後等デイサービスへの送迎や、複数の目的地を経由する利用など、利用者の生活実態に即した、より柔軟なサービス利用を認める運用改善を図ります。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 利用者の移動における総所要時間(情報収集・予約・待機・移動): 20%短縮
      • データ取得方法: MaaSプラットフォームの利用ログ分析、利用者アンケート調査
    • 新たな移動需要の創出(MaaS利用による新規外出件数): 年間1,000件以上
      • データ取得方法: MaaSプラットフォームの利用データ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 特別区版MaaSプラットフォームの利用登録者数: 1万人
      • データ取得方法: プラットフォームのユーザー登録数
    • プラットフォームに参加する交通事業者数: 50事業者以上
      • データ取得方法: 事業者登録数
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • アプリ経由での移動支援・福祉有償運送の予約率: 50%以上
      • データ取得方法: MaaSプラットフォームの予約データ
    • 区をまたぐ移動支援サービスの利用件数: 対前年比2倍
      • データ取得方法: 広域連携システムの実績データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • MaaSプラットフォームの構築・リリース
      • データ取得方法: 事業進捗管理表に基づく完了報告
    • オンデマンド交通実証実験の実施回数: 年間3地区以上
      • データ取得方法: 実証実験の事業報告書
    • 特別区間の広域連携協定の締結区数: 5区以上
      • データ取得方法: 協定締結実績の確認

先進事例

東京都特別区の先進事例

墨田区「ミライロID導入による利便性向上と心理的負担の軽減」

  • 墨田区は、障害者手帳をスマートフォンアプリで表示できる「ミライロID」を早期に導入し、区の施設等での利用を積極的に推進しています。
  • この取り組みにより、利用者は物理的な手帳を持ち歩く手間や紛失・劣化のリスクから解放されました。それ以上に重要な効果として、人前で手帳を取り出す際の心理的な負担が軽減され、より気軽に割引や配慮を求められるようになった点が挙げられます。また、事業者側にとっても、200種類以上あるとされる手帳の様式を目視で確認する手間が省け、窓口業務の円滑化に繋がっています。
  • 成功要因: 利用者と事業者の双方にメリットがある点を的確に捉え、導入を促したこと。物理的なバリアだけでなく、デジタル技術を活用して「心理的なバリア」という見えにくい障壁の解消に着目した点が先進的です。

世田谷区「利用者の実態に即した包括的な移動支援ガイドライン」

  • 世田谷区は、障害種別ごとに詳細な支給基準時間を設定するなど、利用者の多様な実態に即した、きめ細やかで包括的な移動支援ガイドラインを整備・公開しています。
  • 例えば、支給量基準は全身性障害者が月93時間、知的障害者等が月50時間などと具体的に定められています。特に、通学支援の必要性や、高次脳機能障害者への専門的な支援(移動後の内容の「振り返り」もサービスに含め、時間を30分延長して算定可能とする)など、他の自治体では見過ごされがちな多様なニーズに具体的に対応している点が特徴です。
  • 成功要因: 障害当事者の特性や生活実態を深く理解し、それを具体的な制度設計に反映させていること。事業者向けに詳細な「手引き」を作成・公開し、Q&Aを充実させることで、サービスの質の標準化と円滑な事業運営を図っていることが挙げられます。

杉並区「地域に根差したガイドヘルパーによる移動支援事業」

  • 杉並区は、地域生活支援事業の中核として「ガイドヘルパーによる移動支援事業」を積極的に展開し、地域に根差したサービス提供体制を構築しています。
  • 区のウェブサイト等で事業概要や利用方法を明確に示し、住民の利用を促進しています。サービス提供を地域の実情をよく知る事業者に委ねることで、利用者の細かなニーズや突発的な要望にも柔軟に対応しやすい体制を維持しています。
  • 成功要因: 行政が制度の周知・広報に努め、住民の制度理解を深めている点。また、地域に密着した事業者を活用することで、画一的ではない、利用者一人ひとりの状況に合わせた柔軟なサービス提供を可能にしている点が評価できます。

全国自治体の先進事例

富山市「公共交通を軸としたコンパクトシティにおける移動権の保障」

  • 富山市は、人口減少・超高齢社会を見据え、「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」を全国に先駆けて推進しています。LRT(次世代型路面電車)の整備・延伸を核として、その沿線に居住、商業、医療、福祉等の都市機能を集約させることで、持続可能な都市経営を目指しています。
  • この政策により、高齢者や障害者など、自家用車に依存できない住民でも、利便性の高い公共交通を使って容易に移動できる「移動権」が保障されています。全車両への低床車両導入や、全ての電停のバリアフリー化といったハード面の整備に加え、過去にはアテンダントを配置して乗降介助を行うなど、ソフト面での支援も一体的に行い、全ての市民が安心して暮らせるまちづくりを実現しています。
  • 成功要因: 都市計画、交通政策、福祉政策をバラバラに進めるのではなく、一つの明確なビジョン(コンパクトシティ)のもとに統合し、一体的に推進したこと。LRTという象徴的なインフラを核に、まちづくり全体の方向性を市民や事業者に分かりやすく示したことが挙げられます。

明石市「利用者本位のきめ細やかな外出支援制度」

  • 兵庫県明石市は、「こどもを核としたまちづくり」を掲げ、障害のある子どもやその家族への支援に特に力を入れています。移動支援においても、利用者本位の柔軟な運用を可能にする詳細なガイドラインを策定・公開しています。 1
  • ガイドラインでは、利用できる外出(社会参加、余暇活動等)と利用できない外出(通勤・通学、経済活動等)の例を具体的に明記し、利用者の混乱を防いでいます。特に、保護者の同行が困難な場合の児童の外出支援や、身体介助の要否を具体的な状況に応じて判断する基準を示すなど、当事者の視点に立った丁寧な制度設計が特徴です。 1
  • 成功要因: 制度の運用にあたり、常に当事者の視点を中心に据えていること。「できること」と「できないこと」をガイドラインで明確に提示することで、利用者と事業者の双方にとっての予見可能性を高め、円滑なサービス利用を促進している点が評価されます。 1

参考資料[エビデンス検索用]

政府(省庁)関連資料
東京都・特別区関連資料
その他機関・団体資料

まとめ

 東京都特別区における障害者の移動支援は、障害者の社会参加と自立生活を支える上で不可欠な施策です。しかし、障害者人口、特に精神・発達障害者の急増という構造変化に対し、現行のサービス提供体制は「担い手不足」という深刻な課題に直面しています。公共交通機関のハード面のバリアフリー化が進展する一方で、それを活かすための人的・制度的基盤(ソフト面)が追いついていないのが現状です。本稿で提案した、処遇改善を核とする人材基盤の強化、物理的・情報的バリアの統合的推進、そしてDXによるサービス連携の強化という3つの柱を総合的に進めることで、誰もが移動をあきらめることのない、真の共生社会の実現が期待されます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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