14 子育て・こども

福祉職におけるワークライフバランスの推進

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

はじめに

概要(福祉職を取り巻く環境)

  • 自治体が福祉職におけるワークライフバランスの推進を行う意義は「質の高い福祉サービスの安定的提供による住民福祉の向上」と「持続可能な地域共生社会の実現」にあります。
  • 福祉職のワークライフバランス推進とは、介護、障害、保育等の分野で地域社会を支える専門職が、心身の健康を維持し、私生活と仕事を両立させながら、その専門性を最大限に発揮し続けられる職場環境を、行政と事業者が連携して整備していく一連の取り組みを指します。
  • 超高齢社会の進展と生産年齢人口の減少という構造的課題に直面する東京都特別区において、福祉サービスの需要は増大かつ複雑化の一途をたどっています。この、住民生活に不可欠なサービス(エッセンシャルワーク)を支える人材の確保・定着は、持続可能な行政運営における最重要課題の一つであり、その鍵を握るのがワークライフバランスの実現です。

意義

職員にとっての意義

心身の健康維持と離職防止
  • 長時間労働の是正や休暇取得の促進により、福祉職に多く見られる燃え尽き症候群(バーンアウト)を防ぎ、心身の健康を保ちながら、働きがいを持ってキャリアを継続できます。
専門性の向上
  • 労働時間にゆとりが生まれることで、自己研鑽の時間が確保され、介護福祉士や介護支援専門員などの上位資格の取得、最新のケア技術に関する研修への参加が容易になります。これにより、専門職としてのスキルアップが図られ、提供するサービスの質が向上します。
多様なライフステージへの対応
  • 育児や家族の介護など、個々のライフイベントに応じて、短時間勤務やフレックスタイム、週休3日制といった柔軟な働き方を選択できるようになります。これにより、キャリアを中断することなく、長期的に働き続けることが可能となります。

地域社会にとっての意義

福祉サービスの質の維持・向上
地域包括ケアシステムの基盤強化
  • 安定した福祉人材の基盤は、高齢者が住み慣れた地域で生活を継続できるよう、医療、介護、予防、生活支援、住まいが一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築に不可欠です。人材不足は、このシステムの機能不全に直結します。
多様な人材による地域活力の創出
  • ワークライフバランスが充実した魅力的な職場環境は、若者や子育て世代、さらには就労意欲のある元気な高齢者など、多様な人材を福祉分野に呼び込みます。これにより、地域の支え手が厚くなり、地域全体の活力が向上します。

行政にとっての意義

社会保障制度の持続可能性確保
  • 人材不足によるサービス供給量の低下や事業所の閉鎖を防ぎ、増大・複雑化する福祉ニーズに的確に対応することで、介護保険をはじめとする社会保障制度の安定運営に貢献します。
採用・育成コストの削減
行政への信頼向上
  • 住民生活に不可欠な福祉サービスを安定的かつ高品質に提供し続けることは、基礎自治体としての最も重要な責務の一つです。この責務を果たすことで、行政に対する区民の信頼を高めることができます。

(参考)歴史・経過

1980年代
1990年代
2000年
2000年代前半
2009年以降
  • 深刻化する人材不足に対応するため、2009年の介護報酬改定でプラス改定が実現し、介護職員の処遇改善を目的とした「介護職員処遇改善交付金」(後の処遇改善加算)が創設されました。以降、3年ごとの報酬改定のたびに、処遇改善に関する加算制度の拡充や見直しが継続的に行われています。
2010年代
  • 「働き方改革関連法」(2019年4月施行)の制定に向けた議論が国全体で活発化しました。長時間労働の是正、年次有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金といった原則が福祉分野にも適用され、ワークライフバランスの重要性が法的な側面からも強く認識されるようになりました。
2020年代
  • 新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経て、福祉職が社会を支えるエッセンシャルワーカーであることが再認識されました。一方で、感染リスクや業務負担の増大といった新たな課題も浮上しました。これを受け、国はICTや介護ロボットの活用による業務効率化(介護DX)を強力に推進し、生産性向上と労働負担軽減を両輪で進める方針を明確にしています。

福祉職の労働環境に関する現状データ

深刻な人材不足と高い有効求人倍率
全産業平均を下回る賃金水準
離職率の動向と二極化
労働時間と休暇取得の実態
増大し続ける介護人材の需要
  • 厚生労働省の最新の推計によると、2040年度には全国で約272万人の介護職員が必要になると見込まれています。これは、2022年度の約215万人から約57万人、年間平均で3.2万人の増員が必要となる計算です。
  • 特に高齢者人口の増加が著しい東京都特別区においては、介護サービスの需要は全国を上回るペースで増大することが予測され、人材確保は待ったなしの最重要課題です。

課題

職員の課題

身体的・精神的負担の大きい労働環境
「感情労働」としての特性と人間関係の葛藤
低賃金とキャリアパスの不透明性
  • 全産業平均を月額10万円以上も下回る賃金水準では、経済的な安定を確保し、将来設計を描くことが困難です。「仕事内容のわりに賃金が低い」という不満は、労働者の37.5%が抱えています。
  • 多くの事業所では、経験やスキルに応じた明確な昇給・昇格の仕組み(キャリアパス)が整備されておらず、職員が将来への希望や成長実感を得にくい状況にあります。これにより、特に若手職員の早期離職や、そもそも若年層が介護業界を選択しない一因となっています。

地域社会の課題

介護サービスの供給不足と質の低下
地域包括ケアシステムの形骸化
  • 介護福祉士や介護支援専門員といった福祉専門職は、医療、介護、予防、生活支援を一体的に提供する地域包括ケアシステムの中核を担う存在です。彼らの不足は、システム全体の機能不全を招きます。
  • 特に、退院後の在宅移行支援や、医療ニーズの高い高齢者への対応など、多職種が連携して行うべき支援が困難になり、重度化防止や在宅生活の継続といったシステムの根幹的な目的が達成できなくなります。

行政の課題

複雑な支援制度と事業者の事務負担
  • 国や東京都が実施する処遇改善加算制度は、職員の賃金改善に一定の効果を上げています。しかし、制度が複雑で、加算計画書や実績報告書の作成が煩雑であるため、特に人的資源に乏しい小規模事業者にとっては大きな事務負担となっています。
  • この事務負担が、本来のケア提供や職員のマネジメントに充てるべき時間を圧迫し、結果としてワークライフバランスを阻害する一因ともなっています。
小規模事業所における働き方改革の遅れ
  • 東京都特別区内の介護事業所の多くは、中小・零細規模で運営されています。そのため、ICT機器の導入や、多様な働き方を実現するための制度設計(就業規則改定など)に必要な資金や専門的ノウハウが不足しているのが実情です。
  • 働き方改革を個々の事業所の努力だけに委ねるには限界があり、行政による伴走型のコンサルティング支援や、複数の事業所が連携して改革に取り組む「協働化」の促進が不可欠です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 生産性が向上せず、労働環境が劣悪な事業所が淘汰されることで、地域全体の介護サービス供給量が減少し、住民生活に深刻な影響を及ぼします。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果:
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、長時間労働の是正や休暇取得促進など、多くの職員が直面する課題に直接的に作用する施策を高く評価します。また、一つの施策が他の課題解決にも繋がるような波及効果の大きいものを重視します。
  • 実現可能性:
    • 現行の法制度や予算の枠組みの中で、新たな条例制定などを必要とせず、比較的速やかに実行に移せる施策を優先します。既存の補助金制度の拡充や、相談窓口の設置など、行政が主体的に着手しやすいものを高く評価します。
  • 費用対効果:
    • 投じる予算や人的資源に対して、人材の定着率向上や離職率低下、それに伴う採用・育成コストの削減効果など、測定可能な効果が大きく見込める施策を重視します。
  • 公平性・持続可能性:
    • 特定のサービス種別や大規模法人だけでなく、小規模事業所を含む幅広い福祉分野の事業者が活用できる公平な制度設計を重視します。また、一過性の支援ではなく、長期的に事業所の自律的な改善努力を促すような持続可能な仕組みを目指します。
  • 客観的根拠の有無:
    • 国の白書や調査研究、あるいは他の自治体の先進事例などによって、その有効性が示されているエビデンスに基づいた施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 福祉職のワークライフバランス推進には、「①働き方の柔軟化と労働環境の直接的改善」「②業務負担の軽減」「③専門職としての魅力向上」という3つの柱を統合的に進めることが不可欠です。これらは個別の課題に対応するだけでなく、相互に関連し、「働きやすい職場」→「人材の定着」→「サービスの質向上」→「働きがいの向上」という好循環を生み出すことを目指します。
  • 優先度(高):支援策① 働き方の柔軟化と労働環境の直接的改善
    • **理由:**長時間労働の是正、休暇取得の促進、ハラスメント対策は、職員の心身の健康を守り、離職を防ぐ上で最も緊急性が高い課題です。また、週休3日制などの多様な働き方の導入は、子育て世代やシニア層といった潜在的な労働力の参入を促す即効性のある人材確保策となり得るため、最優先で取り組みます。
  • 優先度(中):支援策② ICT・介護DX導入による業務効率化と負担軽減
    • **理由:**記録業務などの間接業務の削減は、職員が本来の専門性を発揮する直接ケアの時間を創出し、サービスの質向上と働きがいに直結します。ただし、導入には一定のコストと時間を要するため、中長期的な視点で、特に資金力やノウハウに乏しい小規模事業所への支援を中心に据えて着実に推進します。
  • 優先度(中):支援策③ 処遇改善とキャリア支援による専門性の確立
    • **理由:**賃金水準の向上とキャリアパスの明確化は、人材の定着と専門性の向上、ひいては業界全体の魅力を高める上で根幹となる施策です。既存の処遇改善加算制度の活用を徹底的に支援することから着手し、その効果を最大化することで、波及効果を高めます。

各支援策の詳細

支援策①:多様な働き方の実現と労働環境の直接的改善

目的
  • 職員一人ひとりのライフステージや価値観に応じた多様な働き方を可能にすることで、人材の定着を図るとともに、新たな人材の参入を促進する。
  • 休暇を取得しやすく、ハラスメントのない安全な職場環境を整備し、職員の心身の健康を確保し、離職を防止する。
    • 客観的根拠:
主な取組①:選択的週休3日制・短時間正社員制度導入支援
  • 介護・福祉事業所が「選択的週休3日制」や育児・介護等の事情を抱える職員のための「短時間正社員制度」を新たに導入する際に必要となる、就業規則の改定費用や専門家(社会保険労務士等)への相談費用を助成します。
  • 制度導入後の一定期間(例:1年間)、代替職員の確保等にかかる人件費増分の一部を補助することで、導入へのハードルを下げます。これにより、職員は育児、介護、自己研鑽、副業など、プライベートの時間を確保しやすくなり、多様な人材が働き続けられる環境を創出します。
主な取組②:「休み方改革」推進事業
  • 年次有給休暇の計画的付与制度や、夏季・冬季のリフレッシュ休暇、誕生日などのアニバーサリー休暇といった独自の休暇制度を導入した事業所に対し、奨励金を支給します。
  • 近隣の複数の小規模事業所が連携し、職員の急な病欠や研修参加時に相互に職員を派遣し合う「地域連携型・応援職員派遣システム」の構築を支援します。モデル事業に対し、コーディネート費用や応援職員への手当を補助します。
主な取組③:ハラスメント対策強化支援
  • 弁護士や社会保険労務士、臨床心理士等の専門家による「福祉の職場ハラスメント相談窓口」を区が設置・運営し、事業所の管理者と職員の双方から匿名で相談を受け付け、助言や対応策の提案を行います。
  • 事業所がハラスメント防止規程の策定や、全職員を対象とした防止研修を実施する際の費用を全額補助します。特に、利用者・家族からのハラスメント(カスタマーハラスメント)への対応策研修を重点的に支援します。
主な取組④:「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言」取得促進パートナー事業
  • 東京都が実施する「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言」の取得を目指す区内事業所に対し、申請準備のためのコンサルティング費用や、宣言要件を満たすための環境整備(例:休憩室の改修費用など)の一部を区独自に上乗せ助成します。
  • 宣言を取得した事業所を、区の広報誌やウェブサイト、就職相談会等で「ワークライフバランス推進モデル事業所」として積極的にPRし、求職者への認知度向上とイメージアップを支援することで、職場環境改善の好循環を創出します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特別区内福祉事業所の離職率を10%未満に低減(現状13.1%)。
      • データ取得方法: 区が主体となり、区内全福祉事業所を対象とした年1回の労働実態調査を実施。
  • KSI(成功要因指標)
    • 職員のワークライフバランス満足度(「満足」「やや満足」の合計)を70%以上に向上。
      • データ取得方法: 上記調査内の満足度に関する設問(5段階評価)。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 年次有給休暇取得率を70%以上に向上(現状 全国平均53.7%)。
      • データ取得方法: 上記調査。
    • 月間平均残業時間を5時間以内に削減。
      • データ取得方法: 上記調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 多様な働き方(週休3日制・短時間正社員制度)導入支援事業所の数を年間50事業所創出。
      • データ取得方法: 区の補助金交付実績データ。
    • ハラスメント対策研修の実施事業所数を年間100事業所にする。
      • データ取得方法: 区の補助金交付実績データ。

支援策②:ICT・介護DX導入による業務効率化と負担軽減

目的
主な取組①:小規模事業所向け「介護DX導入パッケージ」支援
  • 介護記録ソフト、スマートフォン・インカム、勤怠管理システム、請求ソフト等をセットにした標準的な「DX導入パッケージ」を区が複数のベンダーと連携して選定し、区内小規模事業所が共同購入の形で安価に導入できる仕組みを構築します。
  • 導入費用だけでなく、導入後の運用サポート(月額利用料の一部補助)や、全職員を対象とした操作研修も含めて一体的に支援し、導入の形骸化を防ぎます。
主な取組②:介護ロボット導入効果検証・共有事業
  • 見守り支援センサー、移乗支援ロボット(リフト)、排泄予測支援機器等の導入費用を補助します。その際、導入前後での業務時間(夜間巡回時間、おむつ交換時間等)の削減効果や、職員の身体的負担(腰痛関連の愁訴等)の軽減効果を測定・報告することを条件とします。
  • 区は収集したデータを分析し、費用対効果の高い機器や効果的な活用方法を「モデル事例集」として取りまとめ、セミナー等を通じて区内事業所に広く横展開します。
主な取組③:情報共有プラットフォームの構築支援
  • スマートフォンやタブレットで利用できるビジネスチャットツールやタスク管理アプリ等の導入費用を補助します。これにより、職員間のリアルタイムな情報連携(ヒヤリハット報告、利用者の状態変化等)を促進します。
  • 申し送り時間の短縮や、ペーパーレス化、多職種連携(ケアマネジャー、訪問看護師等との連携)の円滑化を図ります。
主な取組④:「介護DX推進リーダー」育成研修
  • 各事業所においてICT導入や業務プロセスの見直しを主導する中核人材「介護DX推進リーダー」を育成するための研修プログラムを、区が主催または専門機関に委託して実施します。
  • 研修では、各種ICTツールの知識、業務分析手法、プロジェクトマネジメント、現場職員への指導方法などを学び、リーダーが中心となって現場の課題に即したDXを推進できる体制の構築を支援します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 職員一人当たりの間接業務(記録・報告・申し送り等)に要する時間を30%削減する。
      • データ取得方法: 区が選定したモデル事業所における、導入前後の業務時間調査(タイムスタディ法)を実施。
  • KSI(成功要因指標)
    • 区内事業所の介護記録ソフト導入率を80%以上に向上させる。
      • データ取得方法: 年1回の労働実態調査に併せて、ICT機器の導入状況調査を実施。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 職員の「身体的負担が大きい(腰痛や体力に不安がある)」と感じる割合を20%未満に低減させる(現状 全国平均29.3%)。
      • データ取得方法: 年1回の労働実態調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 「介護DX導入パッケージ」支援の実施事業所数を年間50事業所とする。
      • データ取得方法: 区の補助金交付実績データ。
    • 介護ロボット導入補助件数を年間100件以上とする。
      • データ取得方法: 区の補助金交付実績データ。

支援策③:処遇改善とキャリア支援による専門性の確立

目的
  • 介護・福祉職の賃金水準を他産業に見劣りしないレベルまで引き上げ、経済的な理由による離職を防止する。
  • 経験やスキルが正当に評価され、昇進・昇給に繋がる明確なキャリアパスを提示することで、専門職としての働きがいと将来展望を育む。
主な取組①:処遇改善加算「申請・活用」ワンストップ相談窓口の設置
  • 社会保険労務士や中小企業診断士等の専門家が常駐する「処遇改善加算ワンストップ相談窓口」を区が設置します。
  • 窓口では、複雑な加算制度の解説、申請書類の作成支援から、加算金を原資とした賃金規程の改定、職員が納得感を得られる公平な配分ルールの設計、実績報告までを無料で一貫してサポートします。これにより、特に事務職員が不足しがちな小規模事業所の負担を軽減し、加算の取得率向上と適正な運用を強力に支援します。
主な取組②:キャリアパス構築モデルの提示と導入支援
  • 区が、職務内容、能力、資格(介護福祉士、認定介護福祉士等)に応じた等級制度や、それと連動した賃金テーブルなど、複数のキャリアパスモデル(例:「専門職コース」「マネジメントコース」)を作成し、事業所に提示します。
  • 各事業所が、これらのモデルを参考に自らの実情に合ったキャリアパス制度を構築・導入する際に必要となる、コンサルティング費用や就業規則・賃金規程の改定費用を補助します。
主な取組③:資格取得支援の拡充とステップアップ奨励
  • 介護福祉士や介護支援専門員、社会福祉士といった国家資格や、認定介護福祉士などの上位資格の取得にかかる受講料や受験料、登録料等の費用助成を拡充します。
  • 資格取得を職員の昇給や昇格(資格手当の増額等)に明確に連動させることを就業規則や賃金規程に定めた事業所に対し、奨励金を支給することで、個人のスキルアップと事業所の制度改善を同時に促進します。
主な取組④:マネジメント層向け「チームビルディング研修」
  • 施設の管理者やユニットリーダー、サービス提供責任者といった現場のマネジメント層を対象に、職員のモチベーション管理、効果的なコミュニケーション手法、対立解消(コンフリクト・マネジメント)、チームビルディングの手法を学ぶ研修を区が主催または委託で実施します。
  • 「人間関係」という最大の離職理由に直接アプローチするため、管理職のリーダーシップとマネジメント能力の向上を支援し、風通しの良い職場風土の醸成を目指します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 福祉職の平均給与について、全産業平均との賃金格差を現在の約11万円から5万円以内に縮小する。
      • データ取得方法: 区の労働実態調査および国の賃金構造基本統計調査のデータを比較分析。
  • KSI(成功要因指標)
    • 処遇改善加算(新加算)における最上位区分の取得率を、区内事業所の80%以上とする。
      • データ取得方法: 区内事業所を対象とした加算取得状況調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 職員の「賃金」に対する満足度(「満足」「やや満足」の合計)を40%以上に向上させる。
      • データ取得方法: 年1回の労働実態調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • ワンストップ相談窓口の年間利用件数を200件以上とする。
      • データ取得方法: 相談窓口の利用実績記録。
    • キャリアパス導入支援の実施事業所数を年間30事業所とする。
      • データ取得方法: 区の補助金交付実績データ。

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「事業者・職員双方への多角的な人材対策事業」

  • 世田谷区は、介護人材の確保・定着・育成を総合的に推進するため、事業者向け支援と職員個人向け支援の両面から多角的な事業を展開しています。事業者向けには、採用活動経費、職員研修費、腰部サポートウェア等の物品購入費、宿舎借り上げ費用などを幅広く助成しています。一方、職員個人や求職者向けには、介護職員初任者研修や実務者研修の受講料助成、介護福祉士資格取得費用の助成などを実施しています。
  • 成功要因: この取り組みの成功要因は、人材確保のプロセスを「入口(採用支援)」から「内部(定着・育成支援)」まで一貫して捉え、事業者と職員の双方のニーズに応える網羅的な支援メニューを用意している点にあります。これにより、一つの施策だけでは解決できない複合的な課題に対し、総合的にアプローチすることが可能となっています。

板橋区「いたばし good balance 会社賞による意識啓発」

  • 板橋区は、仕事と生活の両立支援や男女がともに働きやすい職場づくりに積極的に取り組む企業を「いたばし good balance 会社賞」として表彰しています。この賞は福祉分野も対象としており、過去には社会福祉法人不二健育会(ケアポート板橋)や社会福祉法人ベテスダ奉仕女母の家(茂呂塾保育園)などが受賞しています。
  • 成功要因: 行政による公的な表彰が、受賞事業所の社会的評価や信頼性を高め、採用活動において有利に働く点です。また、受賞企業の具体的な取り組み(例:茂呂塾保育園の「ノンコンタクトタイム」導入による業務集中時間の確保や、「委員会制」によるチーム力向上など)が、他の区内事業所にとって具体的な改善モデルとなり、地域全体のワークライフバランス推進の機運を醸成する波及効果を生んでいます。

渋谷区「特別養護老人ホームにおける週休3日制の導入」

  • 渋谷区内にある特別養護老人ホームでは、都内でも先進的な取り組みとして、職員が働き方を選択できる「週休3日制」を導入しています。これは、1日の労働時間を10時間にすることで、給与水準を維持しながら休日を増やす制度です。
  • 成功要因: 深刻な人材不足が続く介護業界において、「週休3日」という具体的な働き方の選択肢を提供することで、他施設との差別化を図り、採用における競争力を高めている点です。また、職員は増えた休日を副業や自己研鑽、家族との時間に充てることができ、仕事へのモチベーション向上と長期的な定着に繋がっています。
    • 客観的根拠:-(https://tre-job.com/blog/detail.html&id=77) 36

全国自治体の先進事例

埼玉県「介護職員モデル給与表の作成・公表」

  • 埼玉県では、介護事業所がキャリアパスに応じた給与体系を構築しやすくするため、県独自で「介護職員モデル給与表」を作成し、公表しています。この給与表は、経験年数や役職、保有資格に応じて、どの程度の給与水準が目安となるかを示しており、各事業所が自らの給与規定を策定・見直しする際の具体的な参考資料として活用されています。
  • 成功要因: 職員が自身のキャリアの進展に伴う将来の収入を具体的に見通せるようになることで、仕事へのモチベーションを高め、長期的な勤続意欲を喚起する効果があります。また、事業所にとっては、給与体系の客観性と公平性を担保しやすくなり、職員の納得感を得やすくなる点も重要です。

長野県「介護の入門的研修から入職までの一体的支援モデル」

参考資料[エビデンス検索用]

内閣府関連資料
こども家庭庁関連資料
厚生労働省関連資料
財務省関連資料
公益財団法人介護労働安定センター関連資料
東京都・特別区関連資料
その他研究機関・大学等関連資料

まとめ

 福祉職のワークライフバランス推進は、単なる職員の福利厚生の問題ではなく、地域社会に不可欠な福祉サービスの質と持続可能性を左右する最重要の政策課題です。本報告書で示したように、課題は低賃金、長時間労働、そして「人間関係」という複合的な要因から成り立っています。これに対し、行政は「働き方の柔軟化」「業務負担の軽減」「専門性の確立」の3つの柱を統合した支援策を、客観的データに基づき、優先順位をつけて展開する必要があります。先進事例に学びつつ、各区の実情に応じた施策を力強く推進することが、職員と住民双方にとってより良い未来を築く鍵となります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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