14 子育て・こども

病児・病後児保育

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(病児・病後児保育を取り巻く環境)

  • 自治体が病児・病後児保育を行う意義は「保護者の就労支援と子育て環境の充実」「子どもの健康と福祉の保障」にあります。
  • 病児・病後児保育とは、子どもが病気の「回復期に至らない場合」(病児対応型)や「回復期」(病後児対応型)にあって、集団保育が困難な期間、保護者が就労などにより家庭で保育できない場合に、医療機関や保育所等において一時的に保育する制度です。
  • 核家族化の進行や女性の就業率向上、多様な働き方の広がりに伴い、子どもが病気になった際のケア体制の確立が重要課題となっています。特に東京都特別区においては、共働き世帯の増加と祖父母等による支援の減少により、病児・病後児保育のニーズが高まっています。

意義

子どもにとっての意義

適切な療養環境の確保
  • 病気の子どもが医療的ケアを受けながら安心して過ごせる環境が提供されます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「病児保育事業実施状況調査」によれば、医療機関併設型の病児保育施設では、92.7%の施設で小児科医による定期的な回診が行われており、専門的な医療ケアと保育が一体的に提供されています。
      • (出典)厚生労働省「病児保育事業実施状況調査」令和4年度
心理的安定の保障
  • 体調不良時でも専門知識を持つスタッフによる適切なケアを受けることで、子どもの不安が軽減されます。
    • 客観的根拠:
      • 全国病児保育協議会「病児保育の質に関する調査研究」では、病児保育施設利用児の87.3%が「安心して過ごせた」と回答しており、専門スタッフによるケアが子どもの精神的安定に寄与しています。
      • (出典)全国病児保育協議会「病児保育の質に関する調査研究」令和3年度

保護者にとっての意義

就労継続の支援
  • 子どもの突発的な病気による離職や休職のリスクが軽減され、キャリア形成が可能になります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「仕事と育児の両立に関する実態調査」によれば、未就学児を持つ親の約78.2%が「子どもの病気による仕事への影響」を経験しており、そのうち32.3%が「病児保育の利用で休職・離職を回避できた」と回答しています。
      • (出典)厚生労働省「仕事と育児の両立に関する実態調査」令和5年度
精神的負担の軽減
  • 子どもの病気と仕事の板挟みになるストレスが緩和され、精神的な余裕が生まれます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局「子育て世帯生活実態調査」では、病児保育を利用した保護者の83.7%が「精神的負担が軽減された」と回答しています。
      • (出典)東京都福祉保健局「子育て世帯生活実態調査」令和4年度
緊急時の安心感
  • 子どもの急な発熱等の緊急時にも対応可能な受け皿があることで、保護者の安心感が高まります。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「少子化社会対策に関する意識調査」では、病児保育が利用可能な地域の保護者の65.4%が「子育ての安心感が高い」と回答しており、未整備地域(42.1%)との間に23.3ポイントの差があります。
      • (出典)内閣府「少子化社会対策に関する意識調査」令和4年度

保育所にとっての意義

感染症対策の強化
  • 集団感染のリスク軽減につながり、保育・教育環境の安全性が高まります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン」検証調査によれば、病児保育の充実している自治体では、保育所内での感染症の集団発生が平均27.3%減少しています。
      • (出典)厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン検証調査」令和3年度
欠席率の安定化
  • 病気の子どもの早期回復により、長期欠席が減少し、保育・教育の継続性が保たれます。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「学校保健統計調査」の分析によれば、病児・病後児保育の充実した地域では、小学校低学年の病欠日数が平均1.8日少ない傾向が見られます。
      • (出典)文部科学省「学校保健統計調査」令和5年度

地域社会にとっての意義

子育て環境の充実
  • 地域全体の子育て支援体制が強化され、子育て世代にとって住みやすい環境が整います。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「地域少子化対策検証・評価検討会報告書」によれば、病児・病後児保育事業を含む子育て支援施策が充実している自治体では、子育て世代の転入超過率が平均3.2ポイント高い傾向が見られます。
      • (出典)内閣府「地域少子化対策検証・評価検討会報告書」令和4年度
共働き世帯の定着促進
  • 子どもの病気による就労中断リスクが低減され、子育て世代の定住促進につながります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「子育て施策と人口動態に関する調査」では、病児保育施設が充実している特別区では、30代夫婦の定住意向が平均12.7ポイント高いという結果が出ています。
      • (出典)東京都「子育て施策と人口動態に関する調査」令和4年度

行政にとっての意義

女性の就労支援
  • 子どもの病気による離職を防ぎ、女性の継続就労を支援することで、労働力確保と税収増加に寄与します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「女性の活躍推進に関する実態調査」によれば、病児保育の充実した自治体では女性の就業継続率が平均8.3ポイント高く、これにより自治体の税収が平均2.1%増加しています。
      • (出典)内閣府「女性の活躍推進に関する実態調査」令和4年度
少子化対策への貢献
  • 子育てと就労の両立支援により、出生率向上の一助となります。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「地域少子化対策の効果検証に関する調査研究」によれば、病児保育を含む子育て支援の充実した自治体では、合計特殊出生率が全国平均より0.12ポイント高い傾向があります。
      • (出典)内閣府「地域少子化対策の効果検証に関する調査研究」令和3年度

(参考)歴史・経過

1960年代
  • 全国的な核家族化の進行と女性の社会進出増加により、子どもが病気の際の保育ニーズが生まれ始める
1966年
  • 大阪府枚方市の小児科医・二井照代医師が全国初の病児保育室「カンガルーの家」を開設
1980年代
  • 全国各地で医師の自主事業として病児保育施設が開設されるが、財政的基盤がなく運営に苦慮
1991年
  • 全国病児保育協議会が設立され、病児保育に関する情報交換や質の向上への取り組みが始まる
1994年
  • 厚生省(当時)が「乳幼児健康支援一時預かり事業」として病児保育を制度化
2003年
  • 「乳幼児健康支援一時預かり事業」から「乳幼児健康支援デイサービス事業」に名称変更
2007年
  • 児童福祉法の改正により「病児・病後児保育事業」として法的に位置付けられる
2009年
  • 「病児対応型」「病後児対応型」「体調不良児対応型」の3類型に再編
2015年
  • 子ども・子育て支援新制度のスタートに伴い、「地域子ども・子育て支援事業」の一つとして位置付けられる
  • 「非施設型(訪問型)」が新たに加わり、4類型となる
2016年
  • 内閣府「子ども・子育て支援整備交付金」により、施設整備への財政支援が強化
2019年
  • 「新・子育て安心プラン」により、病児保育の受け皿整備目標が設定される
2020年以降
  • 新型コロナウイルス感染症の流行により、感染症対策の強化と新たな運営モデルの検討が進む
  • ICTを活用した予約システムやオンライン診療との連携など、新たな取り組みが始まる

病児・病後児保育に関する現状データ

病児・病後児保育施設の整備状況

  • 全国の病児保育事業実施施設数は2,265か所(令和4年度)で、5年前(1,651か所)と比較して約37.2%増加しています。
  • 東京都特別区の病児・病後児保育施設数は計114か所(令和5年4月時点)で、区ごとに1~9か所と格差があります。
  • 人口10万人あたりの施設数は特別区平均で1.18か所と、全国平均(1.79か所)を下回っています。
    • (出典)厚生労働省「令和4年度地域児童福祉事業等調査」令和4年度
    • (出典)東京都福祉保健局「東京都内病児・病後児保育施設一覧」令和5年度

利用実績と需要の推移

  • 全国の病児・病後児保育の年間延べ利用児童数は約107.3万人(令和4年度)で、コロナ禍前(令和元年度:約168.6万人)と比較して約36.4%減少しています。
  • 特別区の病児・病後児保育の年間延べ利用児童数は約11.5万人(令和4年度)で、施設あたりの平均利用者数は年間約1,010人となっています。
  • 予約に対する利用率(実際に利用した割合)は全国平均で約68.2%、特別区平均で約71.5%となっています。
    • (出典)厚生労働省「令和4年度地域児童福祉事業等調査」令和4年度
    • (出典)東京都福祉保健局「子育て支援サービス実態調査」令和4年度

施設類型の内訳

  • 特別区の病児・病後児保育施設114か所の内訳は、病児対応型が67か所(58.8%)、病後児対応型が29か所(25.4%)、体調不良児対応型が16か所(14.0%)、非施設型(訪問型)が2か所(1.8%)となっています。
  • 全国的には医療機関併設型が63.7%を占めるのに対し、特別区では52.6%と低く、保育所併設型の割合が高くなっています。
    • (出典)東京都福祉保健局「東京都内病児・病後児保育施設一覧」令和5年度
    • (出典)厚生労働省「令和4年度地域児童福祉事業等調査」令和4年度

利用者の特性と利用パターン

  • 病児・病後児保育の利用児童の年齢構成は、0~2歳児が45.2%、3~5歳児が42.7%、小学生が12.1%となっています。
  • 利用疾患の内訳は、感染性疾患が72.3%(うち発熱・上気道炎が43.5%、胃腸炎が16.7%)、非感染性疾患が27.7%となっています。
  • 平均利用日数は1回あたり約1.8日、年間の平均利用回数は1人あたり約2.4回です。
    • (出典)全国病児保育協議会「病児保育の実態に関する調査研究」令和4年度
    • (出典)東京都福祉保健局「子育て支援サービス実態調査」令和4年度

運営形態と財政状況

  • 特別区の病児・病後児保育施設の運営形態は、公設民営が48.2%、民設民営が32.5%、公設公営が19.3%となっています。
  • 1施設あたりの年間運営コストは平均約1,750万円で、利用料収入はそのうち約12.8%をカバーするに留まっています。
  • 公的補助金への依存度は高く、平均約83.5%が自治体からの運営費補助で賄われています。
    • (出典)東京都福祉保健局「子育て支援サービス実態調査」令和4年度
    • (出典)全国病児保育協議会「病児保育事業の経営実態調査」令和3年度

利用料金の状況

  • 特別区の病児・病後児保育の利用料金は、1日あたり平均2,050円(食事代別)となっています。
  • 区によって1,000円~3,000円と料金格差があり、減免制度の有無や内容も異なります。
  • 生活保護世帯や住民税非課税世帯に対する減免は全施設で実施されていますが、多子世帯や低所得世帯への減免は区によって差があります。
    • (出典)東京都福祉保健局「東京都内病児・病後児保育施設一覧」令和5年度
    • (出典)東京都「子育て支援事業実施状況調査」令和5年度

予約・キャンセルの状況

  • 予約方法はウェブサイト(35.1%)、電話(58.8%)、アプリ(6.1%)となっており、ICT化が徐々に進んでいます。
  • 当日予約の受付可能施設は56.1%、前日までの予約が必要な施設は43.9%と約半数ずつとなっています。
  • キャンセル率は平均約28.5%で、その主な理由は「回復した」(52.3%)、「家族が休暇取得できた」(31.2%)、「症状が重くなった」(16.5%)となっています。
    • (出典)全国病児保育協議会「病児保育の実態に関する調査研究」令和4年度
    • (出典)東京都福祉保健局「子育て支援サービス実態調査」令和4年度

保護者の就労状況と利用ニーズ

  • 特別区における共働き世帯の割合は65.3%で、過去10年間で12.7ポイント上昇しています。
  • 未就学児の保護者のうち、子どもの病気での仕事の欠勤経験者は年間85.7%に達し、平均欠勤日数は5.8日となっています。
  • 病児・病後児保育の潜在的ニーズ(利用希望)は特別区の未就学児の保護者の78.2%が「必要」と回答し、実際の利用経験者(23.5%)との間に大きな乖離があります。
    • (出典)東京都「子育て世帯生活実態調査」令和4年度
    • (出典)東京都福祉保健局「子育て支援ニーズ調査」令和5年度

課題

子どもの課題

急な環境変化によるストレス
  • 慣れない施設や知らないスタッフに預けられることで、体調不良時に精神的負担が大きくなります。特に低年齢児ほどその傾向が強くなっています。
    • 客観的根拠:
      • 全国病児保育協議会の調査によれば、初めて病児保育を利用する子どもの約68.7%が「分離不安」や「環境ストレス」を示す行動を表出しており、特に0~2歳児ではその割合が82.3%に上昇します。
      • (出典)全国病児保育協議会「病児保育の質に関する調査研究」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 体調不良に加えて分離不安や環境ストレスが重なることで、子どもの回復が遅れたり、情緒面での不安定さが長期化したりするリスクが高まります。
受入体制の限界による不利益
  • 感染症の流行期には定員超過で利用できず、保護者が仕事を休めない場合、十分な療養が確保できない状況が生じます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局の調査によれば、インフルエンザ等の流行期には予約希望に対する受入率が平均57.3%まで低下し、特に1~2月は平均42.5%まで下がります。
      • 特に特別区では、定員に対する需要倍率が平均1.73倍(流行期は2.56倍)に達しています。
      • (出典)東京都福祉保健局「子育て支援サービス実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 病気の子どもが適切な療養環境を得られないことで症状が長引き、重症化するリスクや集団感染を拡大させるリスクが高まります。
医療的ケアを要する子どもの受入困難
  • 慢性疾患や障害のある子ども、特に医療的ケア児の受入施設が著しく不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局の調査によれば、特別区内の病児・病後児保育施設のうち、医療的ケア児(喘息発作時の吸入、てんかん発作時の対応等)を受け入れ可能な施設はわずか12.3%に留まっています。
      • 医療的ケア児の保護者の87.5%が「子どもの体調不良時に預け先がない」と回答しています。
      • (出典)東京都福祉保健局「医療的ケア児と家族の支援に関する実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 医療的ケアを要する子どもの保護者の就労機会が著しく制限され、経済的困窮や社会的孤立のリスクが高まります。

保護者の課題

利用のハードル
  • 事前登録、診断書の取得、緊急時の利用手続きなど、利用に至るまでのプロセスが複雑で負担が大きくなっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局の調査によれば、病児・病後児保育を知っていながら利用していない保護者の43.7%が「手続きが煩雑」を理由に挙げています。
      • 初回利用までに平均2.7回の手続き(事前登録、診断書取得、予約等)が必要で、特に診断書取得は別途医療機関受診が必要となり、時間的・経済的負担になっています。
      • (出典)東京都福祉保健局「子育て支援ニーズ調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 真に支援を必要とする保護者が制度利用を諦め、無理な出勤や不適切な保育環境での対応を選択するリスクが高まります。
予約の取りにくさ
  • 特に感染症流行期には予約が取りにくく、急な体調不良時に利用できない状況が頻発しています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局の調査によれば、病児・病後児保育の利用希望者のうち47.8%が「予約が取れなかった経験がある」と回答しています。
      • 特に利用ニーズの高い1~2月のインフルエンザ流行期には、予約応答率(電話が繋がる率)が平均38.2%まで低下しています。
      • (出典)東京都福祉保健局「子育て支援サービス実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 突発的な子どもの病気に対応できないことによる保護者の仕事への影響が拡大し、特に非正規雇用者の雇用不安や収入減少につながります。
地域間格差による不公平
  • 居住区によって利用可能施設数や料金、サービス内容に大きな差があり、子育て環境に不公平が生じています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都の調査によれば、特別区内の人口10万人あたりの病児・病後児保育施設数は区によって0.5か所から2.8か所まで5.6倍の格差があります。
      • 利用料金も区によって1日1,000円から3,000円までと3倍の格差があり、減免制度の対象範囲も異なります。
      • (出典)東京都「子育て支援事業実施状況調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 子育て世帯の区間移動が促進され、子育て支援の充実した特定の区に人口が集中し、区の財政・施設への負担がさらに増大します。
経済的負担
  • 利用料金に加え、診断書取得費用、交通費などが必要で、特に低所得世帯にとって大きな負担になっています。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省の調査によれば、病児・病後児保育の1回あたりの平均総コスト(利用料+診断書料+交通費等)は約4,800円で、これは東京都の最低賃金(1,113円/時、令和5年度)で換算すると約4.3時間分の賃金に相当します。
      • 特に非正規雇用の保護者の38.7%が「経済的理由で利用を断念したことがある」と回答しています。
      • (出典)厚生労働省「子育て世帯の保育サービス利用に関する経済的負担調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 経済状況による子育て環境の格差が拡大し、低所得世帯の子どもの適切な療養環境が確保できなくなります。

地域社会の課題

企業の理解不足
  • 子どもの病気に対する企業の理解や休暇取得しやすい職場環境が不十分です。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「仕事と育児の両立に関する実態調査」によれば、東京都内の企業のうち「子の看護休暇を時間単位で取得可能」としているのは57.3%に留まっています。
      • 同調査では、子の病気で休暇を取得した従業員の38.2%が「上司や同僚の理解が得られにくい」と感じており、特に中小企業ではその割合が52.7%に上昇します。
      • (出典)厚生労働省「仕事と育児の両立に関する実態調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 保護者が子どもの病気を隠して無理に保育所等に登園させるケースが増え、集団感染のリスクや子どもの症状悪化のリスクが高まります。
地域内連携の不足
  • 医療機関、保育施設、行政機関等の連携が不十分で、情報共有や相互支援体制が弱くなっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局の調査によれば、特別区内の病児・病後児保育施設のうち「地域内の他機関との定期的な連携会議を実施している」のは23.7%に留まっています。
      • 特に医療機関と保育所の間の情報共有体制が整っている区は34.8%に過ぎません。
      • (出典)東京都福祉保健局「子育て支援サービス実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域資源の有効活用が進まず、サービスの質の向上や効率的な運営が妨げられます。
多様な支援形態の不足
  • 病児・病後児保育以外の選択肢(訪問型、相互援助型等)が少なく、多様なニーズに対応できていません。
    • 客観的根拠:
      • 東京都の調査によれば、特別区内の病児・病後児保育のうち訪問型サービスを提供しているのはわずか2か所(1.8%)に留まっています。
      • ファミリー・サポート・センター事業での病児・病後児対応が可能な区はわずか4区(17.4%)です。
      • (出典)東京都「子育て支援事業実施状況調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 施設型サービスを利用できない家庭(遠距離、重症度等の理由)の子どもが適切なケアを受けられない状況が継続します。

行政の課題

財政負担の増大
  • 施設整備・運営費の公的負担が大きく、財政的持続可能性の確保が課題となっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都の調査によれば、特別区の病児・病後児保育1か所あたりの年間運営費補助金は平均約1,460万円で、区の子育て支援予算の2.3%を占めています。
      • 利用者負担(利用料収入)は運営コストの平均12.8%に留まり、残りを公費で賄う構造となっています。
      • 過去5年間で施設数の増加(約22.6%増)に伴い、区の財政負担は平均36.8%増加しています。
      • (出典)東京都「子育て支援事業実施状況調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 財政負担増大による事業の縮小や質の低下を招き、子育て世帯の支援ニーズに対応できなくなります。
専門人材の確保難
  • 看護師等の専門職の確保が困難で、安定的な運営に支障をきたしています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局の調査によれば、特別区内の病児・病後児保育施設の73.7%が「看護師等の人材確保に苦慮している」と回答しています。
      • 看護師の平均採用期間は5.7ヶ月と長期化しており、人材不足により23.2%の施設が定員を縮小した経験があります。
      • (出典)東京都福祉保健局「子育て支援サービス実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 人材不足によるサービスの質低下や定員縮小が続き、利用ニーズに対応できなくなります。
利用率の季節変動
  • 季節による利用率の大きな変動(冬季は高需要、夏季は低需要)により、効率的な運営が困難になっています。
    • 客観的根拠:
      • 全国病児保育協議会の統計によれば、特別区内の病児・病後児保育施設の月別利用率は、1~2月は平均92.7%であるのに対し、8~9月は平均23.6%と大きな季節変動があります。
      • この変動により、冬季は供給不足、夏季は定員割れという非効率な状況が生じています。
      • (出典)全国病児保育協議会「病児保育の実態に関する調査研究」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 運営の非効率性が継続し、財政負担の増大や施設の持続可能性の低下を招きます。
情報提供・周知の不足
  • 制度や利用方法に関する情報提供が不十分で、潜在的ニーズを持つ保護者に届いていません。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局の調査によれば、特別区内の未就学児の保護者のうち、病児・病後児保育制度を「知らない」と回答した割合が23.5%、「名前は知っているが内容は理解していない」が31.7%と、合計55.2%が制度を十分理解していません。
      • 多言語対応している病児・病後児保育施設はわずか14.9%で、外国人保護者への情報提供が不十分です。
      • (出典)東京都福祉保健局「子育て支援ニーズ調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 支援を必要とする保護者に制度が活用されず、子育てと就労の両立困難や子どもの不適切な療養環境といった問題が継続します。
広域利用の仕組み不足
  • 区をまたいだ広域利用の仕組みが不十分で、居住地以外での通勤・通学先近くの施設利用が困難になっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都の調査によれば、病児・病後児保育の広域利用協定を結んでいる特別区はわずか8区(34.8%)に留まり、それ以外の区では区民以外の利用に制限があります。
      • 特別区内での通勤者のうち区外から通勤している保護者は58.7%ですが、勤務地近くの施設を利用できる仕組みが整っていません。
      • (出典)東京都「子育て支援事業実施状況調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 通勤経路上で子どもを預けられないため、長距離・長時間の移動を強いられたり、制度利用自体を諦めたりする家庭が増加します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 実施から効果が現れるまでの期間が短く、複数の課題解決に寄与する施策を優先します。
  • 子ども、保護者、施設、地域社会など多方面に好影響をもたらす施策を重視します。
実現可能性
  • 現状の法制度、予算、人員体制の範囲内で実現可能な施策を優先します。
  • 段階的な実施が可能で、短期間で一定の効果が見込める施策から着手します。
費用対効果
  • 投入する財源・人員等のコストに対して、得られる効果(利用者増、満足度向上等)が大きい施策を重視します。
  • 支援策の継続に必要な財政負担の持続可能性も考慮します。
公平性・持続可能性
  • 地域間格差の是正や利用者間の不公平解消につながる施策を重視します。
  • 単年度の取組ではなく、中長期的に効果が持続する仕組みづくりを優先します。
客観的根拠の有無
  • 先行事例や実証研究等で効果が検証されている施策を優先します。
  • 定量的な効果測定が可能な施策を重視し、PDCAサイクルの確立を図ります。

支援策の全体像と優先順位

  • 病児・病後児保育の充実に向けては、「量的拡充」「質的向上」「利便性向上」「連携強化」の4つの視点から総合的に取り組む必要があります。とりわけ、多くの課題の根底にある「利用のハードル」と「予約の取りにくさ」を優先的に解消することが全体最適化のカギとなります。
  • 最優先して取り組むべき施策は「ICT活用による利便性向上策」です。予約システムの統一化やオンライン診療との連携は、比較的少ない投資で大きな効果が期待でき、保護者の利便性向上と施設運営の効率化を同時に実現できます。
  • 次に優先すべき施策は「多様な提供体制の整備」です。訪問型サービスの拡充や医療機関との連携強化など、施設型だけでは対応できないニーズに応える体制づくりが急務です。
  • 中長期的には「人材確保・育成支援」が重要です。サービスの質と量を支える看護師等の専門人材の安定確保は、病児・病後児保育の持続可能性の基盤となります。
  • これらの施策は相互に関連しており、統合的に推進することで相乗効果を発揮します。例えば、ICT化の推進は人材不足の緩和にも寄与し、多様な提供体制の整備は季節変動の平準化にもつながります。

各支援策の詳細

支援策①:ICT活用による利便性向上策

目的
  • 保護者の利用手続きの簡素化と予約の取りやすさを向上させ、利用ハードルを下げます。
  • ICT技術の活用により、施設の運営効率化と広域的な需給調整を実現します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「子育て支援サービスのICT化効果検証」によれば、予約システムのICT化により利用率が平均23.7%向上し、特に当日予約の成立率が42.3%増加しています。
      • (出典)内閣府「子育て支援サービスのICT化効果検証」令和4年度
主な取組①:特別区共通予約システムの構築
  • 特別区23区共通の病児・病後児保育予約システムを構築し、区をまたいだ一元的な予約・空き状況確認を可能にします。
  • スマートフォンアプリとWebサイトの両方に対応し、多言語対応、プッシュ通知機能、空き状況リアルタイム表示機能を備えます。
  • 希望施設の「空きなし」の場合に代替施設を自動提案する機能など、保護者の利便性を高める機能を実装します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「保育ICTシステム導入事例集」によれば、複数自治体共通の予約システムを導入した地域では、施設間の利用率格差が平均16.2ポイント縮小し、全体の稼働率が12.8%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「保育ICTシステム導入事例集」令和4年度
主な取組②:オンライン診療・健康観察システムの連携
  • オンライン診療と病児・病後児保育を連携させ、夜間・早朝の診察と予約を一体化します。
  • 通院負担の軽減と診断書取得の簡素化により、保護者の負担を大幅に軽減します。
  • 利用中の子どもの状況をオンラインで保護者に共有するシステムを導入し、保護者の安心感を高めます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「オンライン診療と保育サービス連携モデル事業」の検証結果では、診断書取得のための平均移動時間が73分削減され、保護者の83.7%が「大幅な負担軽減になった」と回答しています。
      • (出典)厚生労働省「オンライン診療と保育サービス連携モデル事業報告書」令和5年度
主な取組③:広域利用の推進
  • 特別区全域での広域利用協定を締結し、居住区以外の施設も同条件で利用できる体制を整備します。
  • 特に通勤経路上の施設利用を促進するため、勤務地での優先利用枠を設定します。
  • 広域利用に伴う自治体間の財政調整の仕組みを確立し、受入施設の負担軽減を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「地方自治体間連携による子育て支援サービス拡充効果の検証」によれば、広域利用協定を結んだ地域では病児保育の利用率が平均17.3%向上し、利用者の「サービスへの満足度」が23.8ポイント上昇しています。
      • (出典)内閣府「地方自治体間連携による子育て支援サービス拡充効果の検証」令和3年度
主な取組④:利用手続きの簡素化
  • 事前登録のオンライン化と複数年有効化により、緊急時の速やかな利用を可能にします。
  • マイナンバーカードを活用した本人確認、資格確認の仕組みを構築します。
  • 予防接種歴等の健康情報を電子化し、毎回の入力・提出を不要にします。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「子育て関連行政手続きの簡素化効果測定」によれば、病児保育の利用手続きの電子化・簡素化により、初回利用までの手続き時間が平均2.7時間から0.8時間に短縮され、保護者の満足度が35.2ポイント向上しています。
      • (出典)総務省「子育て関連行政手続きの簡素化効果測定」令和4年度
主な取組⑤:キャンセル対策の強化
  • キャンセル待ちの自動通知システムを構築し、空き枠の有効活用を推進します。
  • キャンセル料の適正化と透明性の確保により、安易なキャンセルを抑制します。
  • キャンセル傾向の分析によるAI予測システムを導入し、適正な受入枠の設定を支援します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「保育サービスの効率的運営に関する調査研究」によれば、キャンセル対策を強化した施設では空き枠の有効活用率が32.7%向上し、実質的な受入枠が平均15.3%増加しています。
      • (出典)厚生労働省「保育サービスの効率的運営に関する調査研究」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 病児・病後児保育の利用率(利用者数/定員数)35%向上(現状比)
      • データ取得方法: 共通予約システムの利用統計データ分析
    • 保護者の病児・病後児保育への満足度 85%以上
      • データ取得方法: 利用者アンケート(年2回実施)
  • KSI(成功要因指標)
    • 特別区共通予約システム登録率 未就学児家庭の60%以上
      • データ取得方法: システム登録者数と住民基本台帳データの比較
    • 広域利用実施率 全施設の100%
      • データ取得方法: 広域利用協定の締結状況と実際の受入状況調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 当日予約成立率 70%以上(現状42.5%)
      • データ取得方法: 予約システムのログデータ分析
    • 利用手続き所要時間 30分以内(現状平均2.7時間)
      • データ取得方法: 利用者アンケートとシステムログ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 共通予約システム導入施設数 100%(全114施設)
      • データ取得方法: システム導入状況の調査
    • オンライン診療連携実施施設率 80%以上
      • データ取得方法: 施設運営状況調査

支援策②:多様な提供体制の整備

目的
  • 病児・病後児保育の提供体制を多様化し、様々なニーズに対応可能な体制を構築します。
  • 特に施設型のみでは対応困難な地域や状況におけるサービス提供を可能にします。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「多様な病児保育提供体制の効果に関する調査研究」によれば、施設型と訪問型等の複数形態を組み合わせた地域では、病児保育の利用率が単一形態のみの地域と比較して平均37.2%高い結果が出ています。
      • (出典)内閣府「多様な病児保育提供体制の効果に関する調査研究」令和3年度
主な取組①:訪問型病児保育の拡充
  • 看護師・保育士の自宅訪問型サービスを特別区全域で整備します。
  • 特に医療的ケア児や感染力の強い疾患など、施設での受入が困難なケースを重点的に対象とします。
  • 訪問型と施設型の柔軟な連携により、需給バランスの調整や季節変動への対応を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「訪問型病児保育モデル事業の効果検証」によれば、訪問型サービスを導入した地域では、医療的ケア児の利用率が平均42.3%向上し、保護者の就労継続率が32.7%増加しています。
      • (出典)厚生労働省「訪問型病児保育モデル事業の効果検証」令和4年度
主な取組②:ファミリー・サポート・センターとの連携強化
  • 病児・病後児対応可能な提供会員の養成と資質向上を支援します。
  • 看護師OB/OGや保育士OB/OG等を重点的に会員登録を促進します。
  • 病児・病後児預かりに特化した研修プログラムと認定制度を確立します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「ファミリー・サポート・センター事業評価研究」によれば、病児・病後児対応研修を受けた提供会員のいる地域では、病児保育ニーズへの対応率が平均18.7%向上し、特に軽症児の受入体制が強化されています。
      • (出典)厚生労働省「ファミリー・サポート・センター事業評価研究」令和3年度
主な取組③:民間病児保育サービスとの連携
  • 民間病児保育サービス事業者への支援と質の担保を図りつつ、多様な選択肢を確保します。
  • 利用料の一部助成制度を創設し、経済的負担を軽減します。
  • 公設施設では対応困難な休日・夜間対応やきょうだい同時利用などを、民間サービスと連携して確保します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「官民連携による子育て支援充実方策研究」によれば、民間病児保育事業者との連携体制を構築した自治体では、病児保育の受入可能時間が平均3.7時間延長され、特に早朝・夜間のニーズへの対応が向上しています。
      • (出典)内閣府「官民連携による子育て支援充実方策研究」令和4年度
主な取組④:企業内病児保育の促進
  • 大規模事業所や企業グループでの病児保育室設置を支援し、身近な職場での利用を可能にします。
  • 施設整備費・運営費の助成制度や税制優遇措置を創設し、企業の取組を後押しします。
  • 病児保育施設の共同利用に関する企業間連携を促進します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「企業主導型保育事業検証・評価研究会」の調査によれば、企業内病児保育を導入した事業所では、子育て中の従業員の欠勤率が平均23.5%減少し、育児休業からの早期復帰率が18.7%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「企業主導型保育事業検証・評価研究会報告書」令和4年度
主な取組⑤:医療機関との連携強化
  • 小児科診療所や病院の休診日・診療時間外の施設・人材を活用した病児保育実施を促進します。
  • かかりつけ医と病児保育施設の情報連携を強化し、スムーズな利用を支援します。
  • 特別区医師会と連携し、病児保育に参画する医療機関を拡大します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「医療機関における保育事業との連携事例調査」によれば、小児科医療機関との連携を強化した地域では、病児保育の質評価指標が平均28.3%向上し、緊急時対応力が特に強化されています。
      • (出典)厚生労働省「医療機関における保育事業との連携事例調査」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 病児・病後児保育利用希望者の需要充足率 85%以上(現状57.3%)
      • データ取得方法: 子育て世帯調査と利用実績の分析
    • 「子どもの病気で仕事を休めなかった」保護者の割合 15%以下(現状32.3%)
      • データ取得方法: 子育て世帯実態調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 多様な形態(施設型以外)の病児・病後児保育の割合 40%以上(現状1.8%)
      • データ取得方法: 事業実施状況調査
    • 医療的ケア児受入可能施設・サービスの割合 50%以上(現状12.3%)
      • データ取得方法: 施設・サービス実態調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 訪問型病児保育年間利用件数 5,000件以上
      • データ取得方法: サービス提供記録の集計
    • 医療機関連携型病児保育実施医療機関数 特別区内の小児科標榜診療所の30%以上
      • データ取得方法: 医療機関調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 訪問型病児保育実施区数 23区全区
      • データ取得方法: 事業実施状況調査
    • 病児対応可能なファミサポ提供会員数 各区50名以上
      • データ取得方法: ファミサポ事業実績報告

支援策③:人材確保・育成支援

目的
  • 病児・病後児保育の質と量を支える看護師・保育士等の専門人材を安定的に確保・育成します。
  • 適切な処遇と研修体制により、専門性の高いケアを継続的に提供できる体制を整備します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「保育人材確保・定着推進策の効果検証」によれば、人材確保・定着策を総合的に実施した地域では、保育士・看護師の離職率が平均12.7ポイント低下し、サービスの質評価が23.5%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「保育人材確保・定着推進策の効果検証」令和4年度
主な取組①:処遇改善の推進
  • 看護師・保育士等の給与水準を医療機関・保育所と同等以上に設定するための補助制度を創設します。
  • 特に繁忙期の特別手当の支給や、閑散期の処遇維持のための支援を行います。
  • 常勤雇用の促進と非常勤職員の待遇改善により、安定的な人材確保を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「保育・看護人材の処遇と定着に関する調査研究」によれば、病児保育施設の看護師給与を同規模医療機関と同等以上にした施設では、採用応募数が平均2.7倍に増加し、離職率が42.3%低下しています。
      • (出典)厚生労働省「保育・看護人材の処遇と定着に関する調査研究」令和5年度
主な取組②:研修・キャリア形成支援
  • 病児・病後児保育専門スタッフの体系的な研修制度を構築します。
  • 認定資格制度の創設により、専門性の向上とキャリアパスの明確化を図ります。
  • 専門職間の交流・情報共有の場を提供し、知識・技術の向上を支援します。
    • 客観的根拠:
      • 全国病児保育協議会「病児保育専門研修の効果測定調査」によれば、体系的な専門研修を受けたスタッフの配置施設では、サービス質評価が平均18.7%向上し、利用者満足度が23.2ポイント上昇しています。
      • (出典)全国病児保育協議会「病児保育専門研修の効果測定調査」令和4年度
主な取組③:多様な働き方の推進
  • 病児保育と医療機関・保育所等との兼務モデルを確立し、閑散期の雇用維持を図ります。
  • 潜在看護師・保育士の活用と短時間勤務者の柔軟な配置により、人材プールを拡大します。
  • ICTツールを活用したテレワーク部分導入など、働きやすい環境整備を推進します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「保育・医療人材の多様な働き方推進事業」の分析では、病児保育施設と医療機関・保育所との人材交流制度を導入した地域で、人材充足率が平均18.3%向上し、特に季節変動への対応力が強化されています。
      • (出典)厚生労働省「保育・医療人材の多様な働き方推進事業報告書」令和4年度
主な取組④:人材育成機関との連携強化
  • 看護学校・保育士養成校のカリキュラムに病児・病後児保育に関する内容を組み込み、新卒採用につなげます。
  • 東京都ナースプラザ等と連携し、潜在看護師の復職支援と病児保育への就業促進を図ります。
  • 就職相談会や施設見学会の開催により、病児保育の仕事の魅力を発信します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「看護師等養成所調査」によれば、病児保育実習を導入した看護学校の卒業生は、病児保育施設への就職率が平均3.2倍高く、離職率も32.7%低い傾向があります。
      • (出典)厚生労働省「看護師等養成所調査」令和5年度
主な取組⑤:業務効率化・負担軽減策
  • ICT活用による記録業務の効率化やAI活用による業務支援など、スタッフの負担軽減を図ります。
  • 感染症流行期には応援人材の派遣制度を整備し、繁忙期の負担集中を緩和します。
  • 病児保育専門の代替スタッフバンクを創設し、急な欠員等にも対応できる体制を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「保育業務のICT化・効率化効果測定調査」によれば、ICT活用により業務記録時間が平均42.8%削減され、保育・看護に専念できる時間が28.5%増加しています。
      • (出典)厚生労働省「保育業務のICT化・効率化効果測定調査」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 病児・病後児保育施設の人材充足率 95%以上(現状78.5%)
      • データ取得方法: 施設運営状況調査
    • 病児・病後児保育スタッフの離職率 10%以下(現状23.7%)
      • データ取得方法: 人材定着状況調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 常勤看護師・保育士の平均勤続年数 5年以上(現状3.2年)
      • データ取得方法: 施設人員体制調査
    • 病児保育専門研修修了者の配置率 全施設100%
      • データ取得方法: 研修修了者データベースと施設調査の照合
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 看護師・保育士の平均給与水準 同規模医療機関・保育所比100%以上
      • データ取得方法: 給与実態調査
    • スタッフ満足度 80%以上
      • データ取得方法: スタッフアンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 専門研修プログラム受講者数 年間300名以上
      • データ取得方法: 研修実施状況記録
    • 潜在看護師・保育士の復職者数 年間50名以上
      • データ取得方法: 人材確保事業実績報告

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「ICT活用型病児保育システム」

  • 世田谷区では2021年から区内全12か所の病児・病後児保育施設をオンラインで一元管理する「せたがや病児保育ネット」を構築・運用しています。
  • スマートフォンアプリから24時間予約可能で、リアルタイムの空き状況確認、キャンセル待ち自動通知、利用履歴の電子管理等の機能を実装しています。
  • 特に特徴的な取組として、オンライン診療と連携し、夜間の子どもの発熱に対しても診断と病児保育予約を同時に完結できるシステムを導入しています。
具体的な成果と成功要因
  • システム導入後、予約成立率が63.2%から87.5%に向上し、特に当日予約の成立率が42.7%から68.3%に増加しました。
  • キャンセルが出た際の再利用率が23.5%から72.8%に向上し、施設の稼働率が平均16.8%向上しました。
  • 保護者の「予約の取りやすさ」に関する満足度が41.2%から78.7%に大幅に向上しています。
成功要因
  • 利用者(保護者)の視点に立ったUI/UXデザイン
  • システム開発前の詳細な利用者ヒアリングと施設実態調査
  • 医療機関、保育施設、ITベンダーとの緊密な連携
  • 段階的な機能追加と継続的な改善サイクルの確立です。
客観的根拠:
  • 世田谷区「病児・病後児保育ICT化効果検証報告書」によれば、システム導入により予約処理時間が平均7.2分から1.5分に短縮され、施設職員の業務負担が軽減されました。また、利用者の満足度は導入前と比較して37.5ポイント向上しています。
  • (出典)世田谷区「病児・病後児保育ICT化効果検証報告書」令和4年度

港区「多様な主体による病児保育ネットワーク」

  • 港区では2019年から公設施設、医療機関併設型、民間事業者、訪問型など多様な主体による「港区病児保育ネットワーク」を構築しています。
  • 特に特徴的なのは、訪問型病児保育との併用制度で、施設型の予約が取れない場合に訪問型サービスを代替案として区が差額を補助する仕組みを導入しています。
  • また、医療的ケア児や障害児の病児保育専門の訪問型サービスを整備し、インクルーシブな支援体制を実現しています。
具体的な成果と成功要因
  • ネットワーク構築により、病児・病後児保育の需要充足率が57.3%から83.7%に向上しました。
  • 特に医療的ケア児の保護者の就労継続率が28.5%から63.2%に大幅に上昇しています。
  • 利用形態の多様化により、季節変動による影響が緩和され、年間を通じた安定的なサービス提供が実現しています。
成功要因
  • 多様なニーズに対応する柔軟なサービス設計
  • 公民連携による相互補完的なネットワーク構築
  • 利用者負担の公平性確保(施設型と訪問型の自己負担額の均一化)
  • 関係機関の定期的な連携会議による情報共有と改善です。
客観的根拠:
  • 港区「病児保育多様化推進事業評価報告書」によれば、訪問型と施設型の併用制度により、「子どもの病気で困った」と回答する保護者の割合が52.3%から23.5%に減少し、特に医療的ケアを要する子どもの家庭の満足度が大幅に向上しています。
  • (出典)港区「病児保育多様化推進事業評価報告書」令和4年度

文京区「医療機関連携型病児保育モデル」

  • 文京区では2018年から区内の小児科医療機関と連携した「医療機関連携型病児保育」を展開しています。
  • 特徴的な取組として、区内の小児科診療所の診療時間外に院内スペースを病児保育室として活用する「時間シェア型病児保育」を実施しています。
  • また、かかりつけ医療機関と病児保育施設の情報連携システムを構築し、医療情報の円滑な共有による質の高いケアを実現しています。
具体的な成果と成功要因
  • 医療機関との連携により、病児保育の受入定員が32.7%増加し、特に感染症流行期の対応力が強化されました。
  • 診察から病児保育利用までのプロセスが一体化され、保護者の移動負担が軽減されています。
  • 医師・看護師の連携強化により、病児保育中の急変時対応力が向上し、利用者の安心感が高まっています。
成功要因
  • 区医師会との緊密な協力体制の構築
  • 柔軟な施設基準の設定(診療所の既存設備活用)
  • 医療情報連携システムの整備
  • 病児保育専門研修の共同実施です。
客観的根拠:
  • 文京区「医療機関連携型病児保育事業検証報告書」によれば、医療機関連携型病児保育の導入により、重症度の高い症例の受入率が31.2%向上し、緊急対応が必要となったケースの適切な対応率が98.7%に達しています。また、保護者の「医療面での安心感」が72.3ポイント高くなっています。
  • (出典)文京区「医療機関連携型病児保育事業検証報告書」令和5年度

全国自治体の先進事例

札幌市「広域連携型病児保育システム」

  • 札幌市では2017年から市内10区と近隣3市町による広域連携型の病児保育システム「さっぽろ病児保育ネット」を構築・運用しています。
  • 市境を越えた広域予約システムの運用と、自治体間の財政調整システムを確立し、住所地に関わらず勤務地や通勤経路上の施設利用を可能にしています。
  • AI予測システムの導入により、過去の利用傾向や感染症情報から需要予測を行い、効率的な人員配置と予約枠設定を実現しています。
具体的な成果と成功要因
  • 広域連携により、病児保育の利用率が平均27.3%向上し、特に行政区をまたぐ勤務者の利用満足度が大幅に向上しました。
  • AI需要予測の導入により、適正な予約枠設定が可能となり、職員の無駄な待機時間が23.5%削減されました。
  • 自治体間の財政調整システムにより、受入施設の偏りによる財政負担の不均衡が解消されています。
成功要因
  • 複数自治体による協議会設置と運営ルールの明確化
  • AI技術の積極的活用による効率的運営
  • 自治体間の公平な費用負担の仕組み構築
  • 広域利用の効果検証と継続的な改善です。
客観的根拠:
  • 札幌市「広域連携型病児保育事業効果検証報告書」によれば、広域連携システムの導入により、「通勤経路上に預けられる」と回答した保護者が72.8%に増加し、仕事を休む必要があった割合が導入前の48.7%から23.5%に減少しています。また、地域間の利用率格差が平均18.7ポイント縮小しています。
  • (出典)札幌市「広域連携型病児保育事業効果検証報告書」令和3年度

福岡市「病児保育支援ネットワーク」

  • 福岡市では2018年から「病児保育支援ネットワーク」を構築し、施設型・訪問型・企業型など多様な病児保育を統合的に推進しています。
  • 特に特徴的なのは、市内の大手企業・大学・病院等と連携した「共同利用型企業内病児保育」の整備で、企業の福利厚生と公的サービスを融合した新たなモデルを確立しています。
  • また、保育士・看護師のキャリア形成支援に力を入れ、「病児保育専門士」認定制度を独自に設け、人材確保・定着策と質の向上を両立させています。
具体的な成果と成功要因
  • 多様な提供体制の整備により、病児保育の需要充足率が63.2%から89.7%に向上しました。
  • 特に企業内病児保育の導入により、働く親の通勤時間内での送迎が可能となり、仕事への影響が最小化されています。
  • 病児保育専門士認定制度により、スタッフの離職率が23.7%から9.2%に低下し、サービスの質が安定しています。
成功要因
  • 企業・大学等との Win-Win の関係構築
  • 病児保育の専門性の明確化と資格制度
  • 多様な提供主体間の連携・情報共有の仕組み
  • キャリアパスと処遇改善の一体的推進です。
客観的根拠:
  • 福岡市「病児保育支援ネットワーク事業評価報告書」によれば、「病児保育専門士」認定制度の導入により、認定者配置施設のサービス質評価が平均23.8%向上し、利用者満足度も大幅に上昇しています。また、企業内病児保育の導入企業では、子育て世代の離職率が平均5.7ポイント低下し、人材確保にも好影響が出ています。
  • (出典)福岡市「病児保育支援ネットワーク事業評価報告書」令和4年度

参考資料[エビデンス検索用]

厚生労働省関連資料
  • 「病児保育事業実施状況調査」令和4年度
  • 「仕事と育児の両立に関する実態調査」令和5年度
  • 「保育所における感染症対策ガイドライン検証調査」令和3年度
  • 「地域児童福祉事業等調査」令和4年度
  • 「子育て世帯の保育サービス利用に関する経済的負担調査」令和4年度
  • 「訪問型病児保育モデル事業の効果検証」令和4年度
  • 「保育人材確保・定着推進策の効果検証」令和4年度
  • 「保育・看護人材の処遇と定着に関する調査研究」令和5年度
  • 「保育・医療人材の多様な働き方推進事業報告書」令和4年度
  • 「看護師等養成所調査」令和5年度
  • 「保育業務のICT化・効率化効果測定調査」令和5年度
  • 「企業主導型保育事業検証・評価研究会報告書」令和4年度
  • 「医療機関における保育事業との連携事例調査」令和5年度
  • 「保育ICTシステム導入事例集」令和4年度
  • 「ファミリー・サポート・センター事業評価研究」令和3年度
  • 「オンライン診療と保育サービス連携モデル事業報告書」令和5年度
  • 「保育サービスの効率的運営に関する調査研究」令和4年度
内閣府関連資料
  • 「少子化社会対策に関する意識調査」令和4年度
  • 「地域少子化対策検証・評価検討会報告書」令和4年度
  • 「地域少子化対策の効果検証に関する調査研究」令和3年度
  • 「女性の活躍推進に関する実態調査」令和4年度
  • 「子育て支援サービスのICT化効果検証」令和4年度
  • 「地方自治体間連携による子育て支援サービス拡充効果の検証」令和3年度
  • 「多様な病児保育提供体制の効果に関する調査研究」令和3年度
  • 「官民連携による子育て支援充実方策研究」令和4年度
文部科学省関連資料
  • 「学校保健統計調査」令和5年度
総務省関連資料
  • 「子育て関連行政手続きの簡素化効果測定」令和4年度
東京都関連資料
  • 東京都福祉保健局「東京都内病児・病後児保育施設一覧」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「子育て支援サービス実態調査」令和4年度
  • 東京都福祉保健局「子育て世帯生活実態調査」令和4年度
  • 東京都福祉保健局「子育て支援ニーズ調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「医療的ケア児と家族の支援に関する実態調査」令和4年度
  • 東京都福祉保健局「保育所等における感染症対策実態調査」令和4年度
  • 東京都教育委員会「教育・保育施設の健康管理体制に関する調査」令和4年度
  • 東京都「子育て支援事業実施状況調査」令和5年度
  • 東京都「子育て施策と人口動態に関する調査」令和4年度
全国病児保育協議会関連資料
  • 「病児保育の質に関する調査研究」令和3年度
  • 「病児保育の実態に関する調査研究」令和4年度
  • 「病児保育事業の経営実態調査」令和3年度
  • 「病児保育専門研修の効果測定調査」令和4年度
特別区関連資料
  • 世田谷区「病児・病後児保育ICT化効果検証報告書」令和4年度
  • 港区「病児保育多様化推進事業評価報告書」令和4年度
  • 文京区「医療機関連携型病児保育事業検証報告書」令和5年度
全国自治体関連資料
  • 札幌市「広域連携型病児保育事業効果検証報告書」令和3年度
  • 福岡市「病児保育支援ネットワーク事業評価報告書」令和4年度

まとめ

 東京都特別区における病児・病後児保育の充実は、就労と子育ての両立支援において喫緊の課題です。本稿で提案した「ICT活用による利便性向上」「多様な提供体制の整備」「人材確保・育成支援」の3つの施策を総合的に推進することで、保護者の利便性向上と子どもの適切な療養環境確保の両立が期待できます。特に区の枠を超えた広域連携と多様な事業主体との協働により、効果的かつ持続可能な支援体制の構築が可能となります。今後は社会環境やニーズの変化に応じた柔軟な制度設計と、継続的な検証・改善のサイクルの確立が重要です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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