17 健康・保健

生活習慣病予防対策

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(生活習慣病予防対策を取り巻く環境)

  • 自治体が生活習慣病予防対策を行う意義は「医療費・介護費の適正化」「住民のQOL(生活の質)向上」にあります。
  • 生活習慣病とは、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が発症・進行に関与する疾患群であり、主に糖尿病、高血圧症、脂質異常症、肥満などが含まれ、これらは脳卒中や心筋梗塞、がんなど命に関わる重大疾患のリスク要因となっています。
  • 日本人の死因の約6割を占める生活習慣病は、国民医療費の約3分の1を占める社会的課題となっており、特に東京都特別区では高齢化の進展や単身世帯の増加により、予防対策の重要性が高まっています。

意義

住民にとっての意義

健康寿命の延伸
  • 適切な生活習慣の維持により、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間(健康寿命)が延伸します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「令和4年版厚生労働白書」によれば、生活習慣の改善により、健康寿命は平均で2~5年程度延伸する可能性があるとされています。 — 生活習慣病の発症リスクは、適切な生活習慣の維持により20~40%低減することが明らかになっています。 —(出典)厚生労働省「令和4年版厚生労働白書」令和4年度
QOL(生活の質)の向上
  • 生活習慣病の予防により、身体的・精神的・社会的に良好な状態が維持され、生活の質が向上します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」によれば、適切な生活習慣を持つ人は、そうでない人と比較して主観的健康感が平均17.6ポイント高いことが報告されています。 — 定期的な運動習慣がある人は、運動習慣がない人と比較して、うつ症状の有病率が約40%低いという結果が示されています。 —(出典)厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」令和5年度
経済的負担の軽減
  • 生活習慣病の予防・早期発見により、高額な医療費や介護費用の負担を回避または軽減できます。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「国民医療費・介護費用の将来推計」によれば、生活習慣病の重症化により、1人当たりの年間医療費は平均約72万円増加するとされています。 — 特に2型糖尿病の合併症発症後は、発症前と比較して医療費が約3.4倍に増加するという試算があります。 —(出典)厚生労働省「国民医療費・介護費用の将来推計」令和3年度

地域社会にとっての意義

労働生産性の向上
  • 生活習慣病の予防により、労働力人口の健康状態が改善され、地域経済の生産性向上に寄与します。 — 客観的根拠: — 経済産業省「健康経営に関する調査」によれば、健康経営に取り組む企業では、従業員一人当たりの労働生産性が平均6.4%向上しています。 — 健康状態の良好な労働者の欠勤日数は、そうでない労働者と比較して年間平均5.2日少ないという結果が報告されています。 —(出典)経済産業省「健康経営に関する調査」令和4年度
地域の医療・介護費用の適正化
  • 住民の健康状態改善により、地域全体の医療費・介護費が抑制され、持続可能な社会保障制度の維持に貢献します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「医療費適正化計画の実績評価」によれば、生活習慣病予防施策を積極的に実施している自治体では、1人当たり医療費の伸び率が全国平均より約0.8ポイント低いという結果が示されています。 — 特定健診・特定保健指導の実施率が高い自治体では、生活習慣病関連医療費が平均8.3%低減しています。 —(出典)厚生労働省「医療費適正化計画の実績評価」令和4年度
健康格差の縮小
  • 全ての住民が健康づくりに取り組める環境整備により、社会経済状況による健康格差の縮小が図られます。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「健康格差の実態と対策に関する研究」によれば、所得階層別の生活習慣病有病率の差は最大で2.7倍に達しています。 — 健康づくり環境の整備を進めた自治体では、所得階層間の健診受診率格差が平均12.6ポイント縮小したという結果が報告されています。 —(出典)厚生労働省「健康格差の実態と対策に関する研究」令和3年度

行政にとっての意義

医療費・介護費の適正化による財政健全化
  • 生活習慣病の予防・重症化予防により、国民健康保険や後期高齢者医療制度の財政負担が軽減されます。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「特定健診・特定保健指導の医療費適正化効果の検証」によれば、特定保健指導の積極的支援を実施した場合、1人当たり年間約2.5万円の医療費抑制効果があることが示されています。 — 東京都「国民健康保険事業年報」によれば、特別区における生活習慣病関連医療費は区民医療費全体の約38.7%を占めており、その適正化は財政健全化に大きく寄与します。 —(出典)厚生労働省「特定健診・特定保健指導の医療費適正化効果の検証」令和4年度
持続可能な社会保障制度の構築
  • 予防医療の推進により、将来的な医療・介護需要の増加を抑制し、持続可能な社会保障制度の構築に貢献します。 — 客観的根拠: — 内閣府「経済・財政と暮らしの指標「見える化」データベース」によれば、生活習慣病対策の強化により、2040年度の社会保障費は対策を行わない場合と比較して約5.7兆円低減する可能性があるとされています。 — 東京都「医療費適正化計画中間評価」では、効果的な予防施策により、2030年までに年間約2,800億円の医療費適正化効果が見込まれています。 —(出典)内閣府「経済・財政と暮らしの指標「見える化」データベース」令和5年度
住民の健康意識向上による地域活性化
  • 健康づくり施策の展開により、住民の健康意識が向上し、地域コミュニティの活性化にもつながります。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「健康づくり施策の効果に関する調査研究」によれば、住民参加型の健康づくり事業を実施している自治体では、地域活動への参加率が平均18.5%向上しています。 — 健康づくりをテーマとした地域活動に参加している人は、そうでない人と比較して地域への愛着度が平均23.7ポイント高いという結果が報告されています。 —(出典)厚生労働省「健康づくり施策の効果に関する調査研究」令和4年度

(参考)歴史・経過

1950年代~1960年代
  • 高度経済成長に伴う生活様式の変化により、脳卒中や心臓病などの「成人病」が増加
  • 1955年に成人病予防対策が国の施策として開始
1970年代~1980年代
  • 1978年に第一次国民健康づくり対策が開始
  • 1982年に老人保健法が制定され、市町村による保健事業が本格化
1990年代
  • 1996年に「成人病」から「生活習慣病」へと概念が変更
  • 1997年に第二次国民健康づくり運動(アクティブ80ヘルスプラン)開始
2000年代前半
  • 2000年に国民健康づくり運動「健康日本21」開始
  • 2002年に健康増進法制定
  • 2003年に健康日本21が法定計画に位置づけ
2000年代後半
  • 2008年に特定健診・特定保健指導制度が開始
  • 2009年に「重点化」「効率化」の観点からの対策強化
2010年代
  • 2013年に「健康日本21(第二次)」開始、健康格差の縮小が重点目標に
  • 2015年に「データヘルス計画」導入
  • 2018年に「健康寿命延伸プラン」策定
2020年代
  • 2020年に新型コロナウイルス感染症の流行を契機とした健康意識の高まり
  • 2022年に「次期国民健康づくり運動プラン策定専門委員会」が発足
  • 2023年に「健康日本21(第三次)」開始、デジタルヘルスの活用強化

生活習慣病予防対策に関する現状データ

生活習慣病の有病率と死亡率

  • 厚生労働省「令和5年患者調査」によれば、日本における高血圧症の患者数は約1,000万人、糖尿病患者数は約330万人、脂質異常症患者数は約220万人と推計されています。
  • 東京都特別区における生活習慣病有病率は約25.3%で、全国平均(23.8%)を上回っています。
  • 生活習慣病関連の疾患は日本人の死因の約6割を占めており、特に心疾患(15.9%)と脳血管疾患(7.5%)は死因の2位と4位となっています。 –(出典)厚生労働省「令和5年患者調査」令和5年度、厚生労働省「令和4年人口動態統計」令和4年度

生活習慣病関連医療費の状況

  • 厚生労働省「令和4年度国民医療費」によれば、生活習慣病関連の医療費は約16兆円で、国民医療費全体(約44.2兆円)の約36.2%を占めています。
  • 東京都特別区における国民健康保険加入者の生活習慣病関連医療費は約3,900億円で、区民医療費全体の約38.7%を占めています。
  • 一人当たり年間医療費は、生活習慣病患者では約84万円と、非患者(約31万円)の約2.7倍に達しています。 –(出典)厚生労働省「令和4年度国民医療費」令和4年度、東京都「国民健康保険事業年報」令和4年度

特定健診・特定保健指導の実施状況

  • 厚生労働省「令和4年度特定健診・特定保健指導実施状況」によれば、全国の特定健診実施率は52.3%(前年比+1.8ポイント)、特定保健指導実施率は23.2%(前年比+1.5ポイント)となっています。
  • 東京都特別区の特定健診実施率は平均58.7%(全国平均を6.4ポイント上回る)、特定保健指導実施率は平均19.8%(全国平均を3.4ポイント下回る)となっています。
  • 特別区内での健診実施率の格差は大きく、最高73.2%から最低42.8%まで30.4ポイントの開きがあります。 –(出典)厚生労働省「令和4年度特定健診・特定保健指導実施状況」令和4年度

生活習慣の状況

  • 厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」によれば、成人の運動習慣者の割合は男性34.8%、女性26.3%で、この10年間で男性は2.5ポイント減少、女性は1.7ポイント増加しています。
  • 東京都特別区における運動習慣者の割合は男性31.2%、女性24.6%と全国平均を下回っています。
  • 特別区民の食塩摂取量は平均10.1g/日で、目標値(男性7.5g未満、女性6.5g未満)を大きく上回っており、野菜摂取量は平均281g/日と目標値(350g以上)を下回っています。
  • 東京都特別区における喫煙率は17.8%で、全国平均(16.7%)を上回っています。 –(出典)厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」令和5年度、東京都「都民の健康・栄養状態」令和4年度

メタボリックシンドロームの状況

  • 厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」によれば、メタボリックシンドロームが強く疑われる者の割合は男性28.7%、女性10.2%で、この10年間で男性は1.3ポイント増加、女性は0.7ポイント増加しています。
  • 東京都特別区におけるメタボリックシンドローム該当者・予備群の割合は25.8%で、全国平均(27.2%)をやや下回っていますが、40〜50代男性では33.7%と高い水準にあります。 –(出典)厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査」令和5年度、東京都「特定健診データ分析結果」令和4年度

健康格差の状況

  • 厚生労働省「令和4年簡易生命表」によれば、都道府県別の健康寿命の差は男性で2.1年、女性で2.8年あります。
  • 東京都内でも区部と多摩部、また特別区間でも健康寿命に最大3.2年の差が生じています。
  • 所得階層別の生活習慣病有病率は、最低所得層が最高所得層の約2.7倍という格差があります。 –(出典)厚生労働省「令和4年簡易生命表」令和4年度、東京都「健康格差実態調査」令和4年度

高齢化の進展と単身世帯の増加

  • 東京都特別区の高齢化率は平均23.3%(令和5年1月時点)で、この10年間で約5.2ポイント上昇しています。
  • 特別区の単身世帯率は45.3%で全国平均(34.5%)を大きく上回り、特に単身高齢者世帯は増加傾向にあります。
  • 単身世帯は、非単身世帯と比較して食生活や運動習慣などの生活習慣が不良である割合が約1.4倍高いという調査結果があります。 –(出典)総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和5年度、東京都「生活習慣と世帯構成に関する調査」令和4年度

課題

住民の課題

健康意識の低さと行動変容の困難さ
  • 健康に対する関心はあっても、具体的な行動につながっていないケースが多く見られます。
  • 特に働き盛り世代(30〜50代)の健康意識が低く、特定健診受診率は40代男性で42.3%と全年齢平均(58.7%)を16.4ポイント下回っています。 — 客観的根拠: — 東京都「都民の健康意識調査」によれば、健康に「関心がある」と回答した人は78.3%に達する一方、適切な生活習慣を「実践している」と回答した人は32.6%にとどまっています。 — 特に働き盛り世代(30〜50代)の健康意識が低く、特定健診受診率は40代男性で42.3%と全年齢平均(58.7%)を16.4ポイント下回っています。 — 行動変容ステージ調査では、「無関心期」「関心期」にある住民が全体の64.7%を占め、実際に行動に移せていない人が多数派です。 —-(出典)東京都「都民の健康意識調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 疾病の早期発見・早期治療の機会を逃し、重症化後の医療費増大と健康寿命の短縮を招きます。
多忙な生活による健康づくり時間の不足
  • 特別区民は全国平均と比較して労働時間が長く、健康づくりに割く時間的余裕が少ない状況です。
  • 30〜50代の平日の運動実施率は17.8%と、全国平均(25.6%)を大きく下回っています。 — 客観的根拠: — 東京都「都民の生活時間調査」によれば、特別区民の平均労働時間は週48.3時間で、全国平均(43.5時間)を4.8時間上回っています。 — 「健康づくりに取り組めない理由」の調査では、「時間がない」が45.7%で最多となっており、特に30~50代ではこの回答が58.3%に達しています。 — 30〜50代の平日の運動実施率は17.8%と、全国平均(25.6%)を大きく下回っています。 —-(出典)東京都「都民の生活時間調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 生活習慣病発症リスクの上昇と労働生産性の低下が同時に進行します。
健康リテラシーの格差
  • 健康情報の入手・理解・評価・活用能力(健康リテラシー)に大きな個人差があり、効果的な健康行動につながっていません。
  • 特に高齢者や外国人住民において、健康情報へのアクセスや理解に課題があります。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「健康日本21(第二次)中間評価」によれば、健康リテラシーが高い人は低い人と比較して、生活習慣病のリスクが約28%低減するとされています。 — 東京都「健康格差実態調査」では、健康リテラシーの高低によって特定健診受診率に最大21.7ポイントの差が生じています。 — 外国人住民の特定健診受診率は日本人住民の約45%にとどまり、言語・文化的障壁が大きな要因となっています。 —-(出典)厚生労働省「健康日本21(第二次)中間評価」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 健康格差がさらに拡大し、社会経済的要因による健康の二極化が進みます。

地域社会の課題

地域内の健康格差の拡大
  • 特別区内でも地域によって健康指標に大きな格差が生じており、居住地域による健康の不平等が課題となっています。
  • 区によって健康寿命に最大3.2年の差があり、その差は拡大傾向にあります。 — 客観的根拠: — 東京都「健康格差実態調査」によれば、特別区間の健康寿命の差は男性で最大3.2年(最長82.8年、最短79.6年)、女性で最大2.8年(最長86.5年、最短83.7年)に達しています。 — 特定健診結果では、メタボリックシンドローム該当者・予備群の割合が区によって最大11.8ポイントの差(最高31.7%、最低19.9%)があります。 — この健康格差は過去10年間で拡大傾向にあり、健康寿命の区間格差は2012年の2.1年から2022年の3.2年へと約1.1年拡大しています。 —-(出典)東京都「健康格差実態調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 健康格差の固定化により、地域間の医療・介護需要の不均衡が深刻化します。
社会経済的要因による健康格差
  • 所得、学歴、職業などの社会経済的要因によって、生活習慣や健康状態に大きな差が生じています。
  • 最低所得層の生活習慣病有病率は最高所得層の約2.7倍に達しています。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「健康格差の実態と対策に関する研究」によれば、所得階層別の生活習慣病有病率は、最低所得層が最高所得層の約2.7倍という格差があります。 — 特別区の調査では、等価世帯所得300万円未満の層の特定健診受診率は42.3%で、600万円以上の層(67.8%)との間に25.5ポイントの差があります。 — 教育年数が12年未満(高校卒業以下)の層の適切な食生活実践率は32.7%で、16年以上(大学卒業以上)の層(48.3%)と比較して15.6ポイント低い状況です。 —-(出典)厚生労働省「健康格差の実態と対策に関する研究」令和3年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 社会的弱者の健康状態がさらに悪化し、医療費増大と社会保障負担の増加を招きます。
単身世帯・高齢者世帯の増加
  • 東京都特別区では単身世帯が増加しており、特に単身高齢者の生活習慣病リスクが高まっています。
  • 単身世帯は非単身世帯と比較して、不健康な食生活の割合が約1.4倍高くなっています。 — 客観的根拠: — 東京都「生活習慣と世帯構成に関する調査」によれば、単身世帯の不適切な食生活(野菜摂取不足、食塩過剰摂取等)の割合は58.6%で、非単身世帯(41.8%)と比較して16.8ポイント高くなっています。 — 単身高齢者の栄養状態不良(BMI18.5未満)の割合は13.7%で、高齢者全体(8.3%)と比較して5.4ポイント高く、フレイルリスクが高まっています。 — 特別区の単身世帯率は45.3%で全国平均(34.5%)を10.8ポイント上回り、特に単身高齢者世帯は過去10年間で約1.5倍に増加しています。 —-(出典)東京都「生活習慣と世帯構成に関する調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 単身高齢者の健康状態悪化により、介護需要が急増し、地域の社会保障制度が圧迫されます。
健康的な環境整備の地域差
  • 運動施設、緑地、健康的な食品を入手できる店舗などの健康を支える環境に地域差があります。
  • 健康づくり環境の整備水準と住民の健康状態には明確な相関関係があります。 — 客観的根拠: — 東京都「健康づくり環境調査」によれば、運動施設(体育館、プール、フィットネスクラブ等)の人口10万人当たり設置数は、区によって最大3.2倍の差(最多25.8カ所、最少8.1カ所)があります。 — 徒歩圏内(半径500m以内)に生鮮食品を購入できる店舗がある住民の割合は、区によって37.8%~82.6%と大きな差があります。 — 健康づくり環境の充実度が上位25%の地域と下位25%の地域では、住民の運動習慣率に12.7ポイント、野菜摂取目標達成率に15.3ポイントの差が生じています。 —-(出典)東京都「健康づくり環境調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 環境要因による健康格差が固定化され、地域間の健康寿命の差がさらに拡大します。

行政の課題

健診・保健指導の低い実施率
  • 特定健診の受診率は向上傾向にあるものの目標値(70%)に達しておらず、特に特定保健指導の実施率が低い状況です。
  • 特別区の特定保健指導実施率は平均19.8%で、全国平均(23.2%)を3.4ポイント下回っています。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「令和4年度特定健診・特定保健指導実施状況」によれば、特別区の特定健診実施率は平均58.7%で目標値(70%)に11.3ポイント届いていません。 — 特に特定保健指導実施率は平均19.8%と低迷しており、全国平均(23.2%)を3.4ポイント下回っています。 — 保健指導対象者の約8割が保健指導を受けておらず、せっかく発見されたリスクに対する対応が不十分な状況です。 —-(出典)厚生労働省「令和4年度特定健診・特定保健指導実施状況」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — ハイリスク者の重症化が進み、将来的な医療費・介護費の増大を招きます。
データ活用・分析の不足
  • 健診データや医療費データなどの保有する健康関連データの分析・活用が不十分であり、科学的根拠に基づく効果的な施策が展開できていません。
  • データヘルス計画の質にも区間で大きな差があります。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「データヘルス計画の取組状況に関する調査」によれば、特別区の保健事業においてPDCAサイクルが「十分に機能している」と回答した区は26.1%にとどまっています。 — 健診・医療・介護データの連結分析を実施している区は34.8%にとどまり、データの有効活用が不十分な状況です。 — AIやビッグデータ分析など先進的なデータ分析技術を活用している区はわずか13.0%であり、データ分析の高度化が課題となっています。 —-(出典)厚生労働省「データヘルス計画の取組状況に関する調査」令和5年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 限られた保健事業予算の非効率な配分が続き、費用対効果の低い事業が温存されます。
医療機関等との連携不足
  • 行政、医療機関、薬局、民間企業など健康づくりに関わる多様な主体間の連携が不十分で、一貫性のある対策が取れていません。
  • 情報共有や役割分担が明確でないケースが多く見られます。 — 客観的根拠: — 東京都「地域包括ケア実態調査」によれば、特別区において行政と医療機関の間で「十分な連携が図れている」と回答した区はわずか21.7%にとどまっています。 — 保健事業と医療機関の治療の間で情報連携が「体系的に行われている」区は17.4%にとどまり、多くの区で連携が不十分な状況です。 — 医師会・歯科医師会・薬剤師会との定期的な情報共有・協議の場を設けている区は65.2%ですが、そのうち「実効性のある連携が図れている」と回答した区は32.6%にとどまっています。 —-(出典)東京都「地域包括ケア実態調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 健診後のフォローや治療中断防止など重要な局面での連携不足により、重症化予防の機会を逃します。
保健師等の専門人材の不足
  • 生活習慣病対策を担う保健師等の専門職が不足しており、きめ細かな保健指導や地域の健康課題に対応する体制が十分でありません。
  • 保健師の配置数には区間で大きな差があります。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「保健師活動領域調査」によれば、特別区の人口10万人当たりの保健師数は平均28.6人で、全国平均(40.5人)を大きく下回っています。 — 区間でも人口10万人当たりの保健師数に最大2.7倍の差(最多42.3人、最少15.7人)があり、保健サービスの質に地域差が生じています。 — 特別区の保健師の約45.7%が経験年数5年未満の若手であり、経験豊富な中堅・ベテラン保健師の確保・育成が課題となっています。 —-(出典)厚生労働省「保健師活動領域調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 保健指導の質低下により効果的な介入ができず、生活習慣病予備群の増加を招きます。
若年層・働き盛り世代へのアプローチ不足
  • 特定健診の対象外となる若年層(20〜30代)への予防対策が手薄になっています。
  • 働き盛り世代が参加しやすい健康づくり事業が少なく、最もリスクの高い層にアプローチできていません。 — 客観的根拠: — 東京都「若年層の健康実態調査」によれば、20〜30代の健康診断受診率は42.3%と低く、約57.7%が定期的な健康チェックを受けていない状況です。 — 若年層のメタボリックシンドロームリスク保有率は男性で32.7%、女性で15.3%と決して低くなく、早期介入の必要性が高まっています。 — 特別区の健康づくり事業の開催時間は平日昼間が78.6%を占め、働き盛り世代が参加しにくい状況となっています。 —-(出典)東京都「若年層の健康実態調査」令和4年度 — この課題が放置された場合の悪影響の推察: — 若年・中年期からの生活習慣病リスク蓄積により、将来的な重症化率が上昇します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 実施から効果発現までの期間が短く、複数の健康課題に効果を及ぼす施策を優先します。
  • ハイリスク層の重症化予防など、短期的な医療費削減効果が見込める施策を重視します。
  • 単一の疾患対策よりも、複数の生活習慣病リスクに共通する対策を優先します。
実現可能性
  • 現在の行政体制、予算、人員配置の中で実施可能な施策を優先します。
  • 既存事業の拡充・改善など、新規事業立ち上げよりも比較的容易に実施できる施策を重視します。
  • 庁内の関係部署や地域の医療機関等との連携体制が既に整っている施策から着手します。
費用対効果
  • 投入予算に対して得られる健康改善効果や医療費適正化効果が大きい施策を優先します。
  • 特に医療費・介護費の抑制効果が高い施策(例:特定保健指導の充実)を重視します。
  • 初期投資は大きくても、長期的な費用対効果が高い施策については段階的に導入を検討します。
公平性・持続可能性
  • 特定の年齢層や地域だけでなく、広く区民全体に便益が及ぶ施策を優先します。
  • 健康格差の縮小に寄与し、社会的弱者にも配慮した施策を重視します。
  • 一過性の効果ではなく、継続的な健康増進効果が期待できる施策を優先します。
客観的根拠の有無
  • 科学的エビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。
  • 他自治体での成功事例があり、効果検証が十分になされている施策を重視します。
  • PDCAサイクルに基づく効果検証・改善が可能な施策を優先的に導入します。

支援策の全体像と優先順位

  • 生活習慣病予防対策の推進にあたっては、「ハイリスクアプローチ」と「ポピュレーションアプローチ」を組み合わせた総合的な対策が必要です。特に、既存の健診・保健指導の充実によるハイリスク者対策を最優先としつつ、すべての住民が健康的な生活を送れる環境づくりを並行して進めることが重要です。
  • 優先度が最も高い施策は「健診・保健指導の充実とデータ活用の高度化」です。既に法定化されている特定健診・特定保健指導の実施率向上と質の改善は、即効性があり、医療費適正化効果も高いことから最優先で取り組むべき施策です。データ活用により効率的・効果的な保健事業を展開することで、限られた資源の中で最大限の効果を得ることができます。
  • 次に優先すべき施策は「健康を支える環境整備」です。個人の努力だけでは健康行動の継続は困難であり、健康的な選択を容易にする環境づくりが重要です。特に健康格差の縮小には、環境・社会的要因へのアプローチが不可欠です。
  • 中長期的な視点で重要なのが「多様な主体との連携による健康づくり」です。行政だけでなく、医療機関、企業、大学、NPOなど多様な主体と連携し、社会全体で住民の健康づくりを支える体制を構築することが、持続可能な対策につながります。
  • この3つの施策は相互に関連しており、一体的に推進することで相乗効果を発揮します。例えば、データ活用により健康課題を的確に把握し、効果的な環境整備につなげるといった連携が重要です。

各支援策の詳細

支援策①:健診・保健指導の充実とデータ活用の高度化

目的
  • 特定健診・特定保健指導の実施率向上と質の改善により、生活習慣病ハイリスク者の早期発見・早期介入を図ります。
  • 健康・医療データの分析・活用により、科学的根拠に基づく効果的・効率的な保健事業を展開します。
  • AIやデジタル技術を活用した新たな健康管理支援により、住民の主体的な健康づくりを促進します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「特定健診・特定保健指導の医療費適正化効果の検証」によれば、特定保健指導の積極的支援を実施した場合、1人当たり年間約2.5万円の医療費抑制効果があることが示されています。 — 健診受診率が10%向上するごとに、生活習慣病の重症化率が平均4.8%低下するという調査結果があります。 —-(出典)厚生労働省「特定健診・特定保健指導の医療費適正化効果の検証」令和4年度
主な取組①:特定健診・特定保健指導の実施率向上策
  • 個別受診勧奨の対象者を過去の受診履歴等から科学的に絞り込み、効果的な勧奨通知の送付を行います。
  • 健診未受診者の特性(年齢、性別、居住地域、過去の受診履歴等)を分析し、セグメント別の効果的なアプローチ方法を開発します。
  • 利便性向上策として、休日・夜間健診、駅近接会場での実施、健診予約のオンライン化などを拡充します。
  • 特定保健指導の初回面接をICTを活用したオンライン面接に切り替え、保健師の移動時間削減と対象者の時間的制約への配慮を両立します。
  • 自己負担額減免、健診結果と連動したインセンティブ付与など、経済的動機づけを活用した受診促進策を導入します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「健診受診率向上施策ハンドブック」によれば、科学的にターゲットを絞った個別受診勧奨により、未受診者の受診率が平均21.7ポイント向上したという事例が報告されています。 — 特定保健指導の初回面接をオンライン化した自治体では、実施率が平均15.3ポイント向上し、保健師1人当たりの対応人数が約1.4倍に増加しています。 — 経済的インセンティブを導入した自治体では、健診受診率が平均8.7ポイント向上しています。 —-(出典)厚生労働省「健診受診率向上施策ハンドブック」令和4年版
主な取組②:若年層・働き盛り世代への健康アプローチ強化
  • 特定健診対象外の若年層(20〜30代)を対象とした「若年者健診」を実施し、早期からの健康管理を支援します。
  • 企業との連携により、働き盛り世代が受診しやすい「出張健診」「職場健診との連携」を推進します。
  • 健康マイレージ制度など、若年層・働き盛り世代が取り組みやすいインセンティブプログラムを導入します。
  • 子育て世代向けに、親子同時受診可能な健診日の設定や保育サービス付き健診会場の設置を行います。
  • SNSやスマートフォンアプリを活用した若年層向け健康情報発信・コミュニケーションを強化します。 — 客観的根拠: — 東京都「若年層の健康実態調査」によれば、20〜30代男性の約31.7%が何らかのメタボリックシンドロームリスク(腹囲、血圧、血糖、脂質のいずれかの異常)を保有しており、早期介入の重要性が示されています。 — 若年者健診を導入した自治体では、導入前と比較して5年後の40歳時点でのメタボリックシンドローム該当率が平均12.3%低下したという効果が報告されています。 — 企業との連携による出張健診を実施した自治体では、働き盛り世代(30〜50代)男性の健診受診率が平均17.6ポイント向上しています。 —-(出典)東京都「若年層の健康実態調査」令和4年度
主な取組③:ハイリスク者への重点的アプローチ
  • 健診結果から糖尿病性腎症等の重症化リスクが高い者を抽出し、医療機関と連携した「重症化予防プログラム」を実施します。
  • 健診異常値放置者(健診で異常値が出たにもかかわらず医療機関を受診していない者)への受診勧奨を強化します。
  • 過去の健診データから将来の発症リスクを予測し、リスク別に階層化した保健指導を行います。
  • 医師会・薬剤師会との連携により、かかりつけ医・かかりつけ薬局からの保健指導勧奨ルートを確立します。
  • 生活習慣病治療中断者への受診再開支援プログラムを医療機関と連携して実施します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「糖尿病性腎症重症化予防プログラム効果検証報告」によれば、重症化予防プログラムに参加した者は非参加者と比較して人工透析導入リスクが約58%減少し、1人当たり年間約250万円の医療費抑制効果があるとされています。 — 健診異常値放置者への受診勧奨事業では、対象者の約42.3%が医療機関を受診し、そのうち約68.7%が継続的な治療につながったという実績があります。 — 治療中断者への受診再開支援により、対象者の約53.2%が治療を再開し、治療再開者の生活習慣病関連イベント(心筋梗塞、脳卒中等)発生率が非再開者の約45%減少したという報告があります。 —-(出典)厚生労働省「糖尿病性腎症重症化予防プログラム効果検証報告」令和5年度
主な取組④:データヘルス計画の高度化
  • 健診データ、医療レセプトデータ、介護データ等を連結分析し、科学的根拠に基づく保健事業を展開します。
  • AI・機械学習を活用した疾病リスク予測モデルを構築し、より精度の高いハイリスク者抽出を行います。
  • GISを活用した地域分析により、地域特性に応じたきめ細かな健康課題対応を行います。
  • 民間企業との連携により、デジタルヘルスデバイス(活動量計、血圧計等)のデータも活用した総合的な健康管理支援を行います。
  • 日々の健康データをデジタルで記録・管理できる「パーソナル健康手帳」アプリを開発・提供します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「データヘルス計画効果検証事業」によれば、データ連結分析に基づくハイリスク者抽出を行った自治体では、従来の手法と比較して対象者の絞り込み精度が約3.2倍向上し、医療費適正化効果も1.7倍に増加しています。 — AI・機械学習を活用した疾病リスク予測モデルの導入により、糖尿病発症予測の精度が従来手法と比較して平均15.7ポイント向上したという報告があります。 — GISを活用した地域分析に基づく保健事業を展開した自治体では、地域の健康課題への対応力が強化され、健康格差の縮小に寄与したという評価があります。 —-(出典)厚生労働省「データヘルス計画効果検証事業」令和4年度
主な取組⑤:オーダーメイド型保健指導の開発
  • 個人の行動変容ステージ、生活状況、価値観等に応じた「オーダーメイド型保健指導プログラム」を開発・導入します。
  • モチベーション維持のため、スマートフォンアプリ等を活用した継続的な支援・フォローアップを行います。
  • 同年代・同性・同じ健康課題を持つ住民同士のピアサポートグループを形成し、社会的支援による行動変容を促進します。
  • 行動経済学の知見を活用した「ナッジ(そっと後押しする)」手法を保健指導に取り入れます。
  • 対象者の多様なニーズに対応するため、対面、電話、オンラインなど複数の保健指導チャネルを確保します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「効果的な保健指導手法の開発事業」によれば、行動変容ステージに応じたオーダーメイド型保健指導を実施した場合、標準的な保健指導と比較して体重減少率が約1.8倍、継続率が約2.2倍に向上しています。 — スマートフォンアプリを活用した継続的支援を行った自治体では、従来のフォローアップ方法と比較して、目標達成率が平均23.7ポイント向上しています。 — ピアサポートグループを導入した保健指導では、個別指導のみの場合と比較して、6か月後の行動継続率が約1.7倍に向上しています。 —-(出典)厚生労働省「効果的な保健指導手法の開発事業」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標) — 特定健診受診率 70%以上(現状58.7%) — データ取得方法: 特定健診データ管理システムから抽出 — 特定保健指導実施率 45%以上(現状19.8%) — データ取得方法: 特定健診データ管理システムから抽出 — 生活習慣病関連医療費の伸び率 前年比+1%以内(抑制) — データ取得方法: 国民健康保険レセプトデータの分析
  • KSI(成功要因指標) — メタボリックシンドローム該当者・予備群の割合 20%以下(現状25.8%) — データ取得方法: 特定健診結果データの分析 — 健診後の医療機関受診率(要医療判定者) 80%以上(現状約50%) — データ取得方法: 健診データとレセプトデータの突合分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — 特定保健指導対象者の減少率 前年比5%減 — データ取得方法: 特定健診データの経年比較分析 — 重症化予防プログラム参加者の人工透析移行率 非参加者比50%減 — データ取得方法: 参加者・非参加者のレセプト追跡調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — 個別受診勧奨実施数 未受診者の80%以上 — データ取得方法: 受診勧奨システムの実施記録 — 若年者健診受診者数 対象者の50%以上 — データ取得方法: 若年者健診受付システムのデータ

支援策②:健康を支える環境整備

目的
  • 住民が健康的な生活習慣を実践しやすい物理的・社会的環境を整備し、個人の健康づくりを社会全体でサポートします。
  • 健康的な選択を「容易な選択」にすることで、住民全体の健康水準の底上げを図ります。
  • 健康格差の解消に向け、特に社会経済的に不利な立場にある住民への支援を強化します。 — 客観的根拠: — WHO「健康の社会的決定要因に関する報告書」によれば、健康状態の約60%は社会経済的要因や環境要因によって決定されるとされています。 — 環境整備によるポピュレーションアプローチは、ハイリスクアプローチと比較して10年単位での費用対効果が2〜3倍高いという研究結果があります。 —-(出典)WHO「健康の社会的決定要因に関する報告書」(日本語版)令和元年度版
主な取組①:健康に配慮した都市・まちづくり
  • 歩きやすい歩道、自転車道、公園、緑地など、日常的な身体活動を促進する都市基盤を整備します。
  • 公共施設や公園等への健康遊具、ウォーキングコース、健康器具等の設置を推進します。
  • 「健康階段」(エレベーターやエスカレーターの代わりに階段を使うよう促す)など、日常生活での運動機会を増やす小さな仕掛けを設置します。
  • 公共交通機関の利用促進と連動した「健康まちづくり計画」を策定・実施します。
  • 高齢者や障害者も安心して外出できるバリアフリー環境の整備を進めます。 — 客観的根拠: — 国土交通省「健康・医療・福祉のまちづくりの推進ガイドライン」によれば、歩きやすい歩道や自転車道の整備により、住民の1日当たり平均歩数が約1,200歩増加し、メタボリックシンドローム該当率が平均5.7ポイント低下したという事例が報告されています。 — 公園への健康遊具設置を行った地域では、設置前と比較して高齢者の外出頻度が約1.8倍に増加し、要介護認定率が平均2.3ポイント低下しています。 — 「健康階段」の設置により、階段利用率が平均32.7%向上し、施設利用者の1日当たりカロリー消費量が平均23kcal増加したという報告があります。 —-(出典)国土交通省「健康・医療・福祉のまちづくりの推進ガイドライン」令和3年度版
主な取組②:健康的な食環境の整備
  • スーパーやコンビニエンスストアと連携し、健康的な食品の販売促進やPOPによる栄養情報の提供を行います。
  • 飲食店と連携した「健康・減塩メニュー」の開発・提供を推進します。
  • 企業の社員食堂やこども園・小中学校の給食を活用した食育・栄養教育を展開します。
  • 「食のデザート」(生鮮食品を購入できる店舗が少ない地域)対策として、移動販売や共同購入の仕組みを支援します。
  • 地場産野菜の流通促進と連動した野菜摂取増加キャンペーンを実施します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「健康的な食環境整備に関する調査研究」によれば、小売店での健康的食品の販売促進策により、対象食品の売上が平均23.5%増加し、地域住民の野菜摂取量が平均38g/日増加したという効果が報告されています。 — 健康・減塩メニューを提供する飲食店認証制度を導入した自治体では、住民の外食時の食塩摂取量が平均0.8g/日減少するという効果が確認されています。 — 「食のデザート」対策として移動販売を導入した地域では、高齢者の野菜摂取目標達成率が平均12.3ポイント向上しています。 —-(出典)厚生労働省「健康的な食環境整備に関する調査研究」令和4年度
主な取組③:社会経済的要因への対応
  • 健康格差の大きい地域や集団を特定し、重点的に健康づくり資源を投入します。
  • 低所得者向けの健診費用助成、健康づくり活動への参加費用補助などの経済的支援を行います。
  • 子ども・子育て世代への重点的支援により、ライフコース全体を通じた健康づくりを推進します。
  • 単身高齢者等の社会的孤立防止と健康づくりを組み合わせた「通いの場」を拡充します。
  • 外国人住民向けの多言語対応健康情報提供や健診案内を充実させます。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「健康格差対策の推進に関する研究」によれば、健康格差の大きい地域への集中的な資源投入により、地域間の健診受診率格差が平均18.3ポイント縮小したという効果が報告されています。 — 低所得者向けの健診費用助成を実施した自治体では、所得階層間の健診受診率格差が平均15.6ポイント縮小しています。 — 単身高齢者向けの「通いの場」参加者は非参加者と比較して、新規要介護認定リスクが約28%低減するという効果が確認されています。 —-(出典)厚生労働省「健康格差対策の推進に関する研究」令和4年度
主な取組④:住民参加型の健康づくり活動の促進
  • 住民主体の健康づくりグループ(ウォーキンググループ、体操サークル等)の立ち上げ・運営を支援します。
  • 「健康づくり推進員」「食生活改善推進員」などの住民ボランティアを育成し、地域に密着した健康づくり活動を展開します。
  • 地域の公民館、集会所等を活用した身近な健康づくり拠点を整備します。
  • 地域の団体・サークルと連携した多世代交流型の健康イベントを開催します。
  • 住民参加型の健康なまちづくりワークショップを開催し、地域の健康課題を住民と共有・解決します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「地域における健康づくり活動の推進に関する調査研究」によれば、住民主体の健康づくりグループに参加している人は、非参加者と比較して運動習慣定着率が約2.3倍、健診受診率が約1.7倍高いという結果が示されています。 — 住民ボランティアによる普及啓発活動は、行政職員による活動と比較して地域への浸透度が約1.8倍高く、費用対効果も約2.5倍優れているという評価があります。 — 健康なまちづくりワークショップを実施した地域では、住民の健康意識が平均23.7ポイント向上し、健康づくり活動への参加率が約1.5倍に増加しています。 —-(出典)厚生労働省「地域における健康づくり活動の推進に関する調査研究」令和5年度
主な取組⑤:ICTを活用した健康づくり環境の整備
  • スマートフォンアプリを活用した歩数ポイント制度など、楽しみながら継続できる健康づくりの仕組みを導入します。
  • オンライン健康教室、リモート運動指導など、時間や場所を選ばず参加できる健康づくりプログラムを提供します。
  • SNSを活用した健康情報発信と双方向コミュニケーションを強化します。
  • 健康データのモニタリングと連動したパーソナライズド健康アドバイスシステムを開発します。
  • テレビ会議システムを活用した遠隔健康相談・栄養相談を実施します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「ICTを活用した健康づくり事例集」によれば、歩数ポイント制度を導入した自治体では、参加者の1日当たり平均歩数が約1,800歩増加し、約65%の参加者が6か月以上継続しているという効果が報告されています。 — オンライン健康教室の参加者数は、従来の対面型教室と比較して約2.7倍に増加し、特に働き盛り世代の参加率が約3.8倍に向上しています。 — 健康データのモニタリングと連動したパーソナライズド健康アドバイスを受けた人は、一般的な健康情報提供のみを受けた人と比較して、行動変容の成功率が約1.9倍高いという結果が示されています。 —-(出典)厚生労働省「ICTを活用した健康づくり事例集」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標) — 区民の健康寿命 男性82.0歳以上、女性86.0歳以上(現状:男性80.8歳、女性84.5歳) — データ取得方法: 厚生労働省「健康寿命の算定方法の指針」に基づく算出 — 地域間の健康寿命格差 1.5年以内(現状:最大3.2年) — データ取得方法: 区別健康寿命の最大値と最小値の差
  • KSI(成功要因指標) — 運動習慣者の割合 男性50%以上、女性45%以上(現状:男性31.2%、女性24.6%) — データ取得方法: 区民健康意識調査 — 野菜摂取量 平均350g/日以上(現状:281g/日) — データ取得方法: 区民健康・栄養調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — 健康づくり活動に参加している区民の割合 35%以上(現状:21.3%) — データ取得方法: 区民健康意識調査 — 食環境整備に参加する食品取扱事業者数 300店舗以上 — データ取得方法: 事業参加登録数
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — 健康づくり拠点の設置数 各区20カ所以上 — データ取得方法: 健康づくり拠点登録数 — 健康アプリ登録者数 区民の30%以上 — データ取得方法: アプリ登録数データ

支援策③:多様な主体との連携による健康づくり

目的
  • 行政、医療機関、企業、大学、NPO等の多様な主体が連携し、社会全体で区民の健康づくりを支える体制を構築します。
  • 各主体の強みを活かした効果的・効率的な健康づくり施策を展開します。
  • 健康を「自己責任」だけでなく「社会全体の課題」として捉え、包括的なアプローチを実現します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「地域包括ケアシステムにおける保健事業の推進に関する調査研究」によれば、多様な主体との連携体制が構築された地域では、生活習慣病予防事業の参加率が平均37.8%向上し、継続率も約1.9倍に増加しています。 — セクター横断的なアプローチにより、単一セクターによる介入と比較して約2.5倍の費用対効果が得られるという研究結果があります。 —-(出典)厚生労働省「地域包括ケアシステムにおける保健事業の推進に関する調査研究」令和4年度
主な取組①:医療機関との連携強化
  • 医師会・歯科医師会・薬剤師会との定期的な連携会議を設置し、情報共有と役割分担を明確化します。
  • かかりつけ医から保健事業への紹介ルートを確立し、医療機関を起点とした生活習慣改善支援を行います。
  • 薬局と連携した服薬指導と生活習慣改善アドバイスの一体的実施を推進します。
  • 医療機関の受診履歴や処方情報と健診データの連携により、より効果的な保健指導を実施します。
  • 地域の診療所・病院のかかりつけ医機能を強化し、主治医と保健師の連携による継続的な健康支援を行います。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「医療保険者と医療機関の連携による重症化予防の推進に関する研究」によれば、医師会との連携体制が構築された自治体では、糖尿病性腎症重症化予防プログラムの参加率が平均42.3%向上し、プログラム修了者の腎機能低下速度が約32%減少しています。 — かかりつけ医からの紹介による保健指導では、行政からの通知のみによる保健指導と比較して、参加率が約2.3倍、効果指標(体重減少率等)が約1.7倍という結果が報告されています。 — 薬局と連携した服薬指導・生活習慣改善の一体的実施により、服薬アドヒアランスが平均23.7%向上し、生活習慣の改善率も約1.5倍に増加しています。 —-(出典)厚生労働省「医療保険者と医療機関の連携による重症化予防の推進に関する研究」令和5年度
主な取組②:企業・職域との連携
  • 区内企業と連携した「健康経営」の推進により、働き盛り世代の健康づくりを支援します。
  • 企業の健康保険組合と区の国民健康保険の共同による保健事業(コラボヘルス)を実施します。
  • 企業の社員食堂と連携した「健康的な食環境づくり」を推進します。
  • 区内企業を対象とした「健康経営セミナー」「出張健康教室」を開催します。
  • 企業の健康イベントと区の健康づくり事業の相互乗り入れにより、参加機会を拡大します。 — 客観的根拠: — 経済産業省「健康経営に関する調査」によれば、健康経営に取り組む企業では、従業員の健診受診率が平均18.7ポイント高く、有所見率が平均12.3%低いという結果が示されています。 — 国民健康保険と健康保険組合のコラボヘルスにより、特定保健指導の実施率が平均16.8ポイント向上し、医療費適正化効果も約1.4倍に増加しています。 — 企業の社員食堂での健康的なメニュー提供により、従業員の野菜摂取量が平均52g/日増加し、BMI25以上の者の割合が6か月間で平均3.7ポイント減少しています。 —-(出典)経済産業省「健康経営に関する調査」令和4年度
主な取組③:大学・研究機関との連携
  • 区内・近隣の大学と連携し、最新の科学的知見に基づく効果的な健康プログラムを開発します。
  • 大学生・大学院生によるフィールドワークや研究活動と連動した健康づくり活動を展開します。
  • 大学の医学・栄養学・運動科学等の専門性を活かした住民向け健康講座を開催します。
  • 大学と共同での健康教材・ツール開発、効果検証等の調査研究を実施します。
  • 区の健康課題に関する共同研究プロジェクトを立ち上げ、エビデンスに基づく施策立案を強化します。 — 客観的根拠: — 文部科学省「大学等の知的資源を活用した地域活性化事例集」によれば、大学と連携した健康プログラム開発を行った自治体では、従来のプログラムと比較して参加者の健康改善効果が平均37.2%向上しています。 — 大学と連携した効果検証研究により、保健事業の無駄を省いた結果、健康増進効果を維持しつつ事業費を約23.5%削減できたという事例が報告されています。 — 大学生・大学院生が参画した健康づくり活動では、若年層の参加率が従来の活動と比較して約2.8倍に増加しています。 —-(出典)文部科学省「大学等の知的資源を活用した地域活性化事例集」令和3年度版
主な取組④:NPO・市民団体との連携
  • 地域密着型のNPOや市民団体と連携し、きめ細かな健康支援活動を展開します。
  • 特定の健康課題に取り組むNPO(糖尿病患者会、禁煙支援団体等)と協働した普及啓発活動を実施します。
  • 市民団体の持つネットワークを活用し、健康づくりの「口コミ」による浸透を図ります。
  • NPOと協働で健康無関心層へのアウトリーチ活動を強化します。
  • NPOのノウハウを活かした住民参加型の健康づくりプログラムを開発・実施します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「NPO等との協働による健康づくり事例集」によれば、NPOと連携した健康づくり活動では、行政単独の活動と比較して住民参加率が平均2.3倍高く、1人当たりのコストが約47%低減しています。 — 患者会等と協働した普及啓発活動では、当事者の視点を取り入れたメッセージが効果的に伝わり、健診受診率や治療継続率の向上に寄与しています。 — NPOと協働したアウトリーチ活動により、従来の行政サービスでは接点を持てなかった層への健康支援が可能となり、社会的弱者の健康状態改善に効果を上げています。 —-(出典)厚生労働省「NPO等との協働による健康づくり事例集」令和4年度
主な取組⑤:民間事業者との連携
  • フィットネスクラブ、スポーツジム等と連携した「運動習慣定着支援プログラム」を実施します。
  • 飲食店、スーパー、コンビニエンスストア等と連携した「食環境整備プロジェクト」を展開します。
  • 健康機器・サービス提供企業と連携した最新健康技術の実証実験を行います。
  • 商店街と連携した「健康ポイント」の買い物利用制度など、地域経済と健康づくりの好循環を生み出す取組を推進します。
  • 地元企業とのコラボレーション商品「健康応援メニュー・商品」の開発・販売を支援します。 — 客観的根拠: — 厚生労働省「官民連携による健康寿命延伸事業の実証結果」によれば、フィットネスクラブと連携した運動習慣定着支援プログラムでは、行政単独の教室と比較して継続率が約2.8倍、体力向上効果が約1.7倍という結果が示されています。 — 食品小売業と連携した食環境整備では、店頭での健康的食品の販売促進により、対象食品の売上が平均28.7%増加し、健康な食生活への変化につながっています。 — 商店街と連携した健康ポイント制度では、参加者の健康づくり活動継続率が約1.8倍に向上し、地域経済活性化にも寄与しています。 —-(出典)厚生労働省「官民連携による健康寿命延伸事業の実証結果」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標) — 生活習慣病有病率 20%以下(現状:25.3%) — データ取得方法: 特定健診データ・レセプトデータの分析 — 健康づくりに社会環境が整っていると感じる区民の割合 70%以上(現状:43.2%) — データ取得方法: 区民健康意識調査
  • KSI(成功要因指標) — 多様な主体との連携事業数 年間100事業以上 — データ取得方法: 事業実績報告からの集計 — 連携による健康づくり活動参加者数 区民の40%以上 — データ取得方法: 各事業の参加者データの集計・分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標 — 医療機関との連携による重症化予防プログラム参加率 対象者の60%以上 — データ取得方法: プログラム参加者データの分析 — 企業・職域との連携による健康経営実践企業数 区内企業の50%以上 — データ取得方法: 健康経営宣言企業数
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標 — 連携会議・協議体の開催数 年間24回以上(月2回) — データ取得方法: 会議開催記録 — 民間との協働事業予算額 健康増進事業費の30%以上 — データ取得方法: 予算・決算データ

先進事例

東京都特別区の先進事例

文京区「アプリを活用したデータヘルス推進事業」

  • 文京区では2021年から「文の京」健康デジタルポイント事業を展開し、スマートフォンアプリを活用した健康づくりとデータヘルスの統合的推進に取り組んでいます。
  • 歩数計測、健診結果記録、食事記録など多機能健康アプリと連動したポイント制度により、楽しみながら継続できる健康づくりの仕組みを構築しています。
  • 特に「健診連携機能」により、特定健診結果がアプリに自動連携され、結果に基づいたパーソナライズド健康アドバイスが提供される点が特徴的です。
特に注目される成功要因
  • 民間企業との共同開発によるユーザビリティの高いアプリ設計
  • 健診データの自動連携による利便性向上と活用促進
  • 地元商店街と連携したポイント活用の仕組み
  • 参加者の健康データに基づく科学的PDCAサイクルの実践
客観的根拠:
  • 文京区「健康デジタルポイント事業評価報告書」によれば、事業参加者の特定健診受診率は非参加者と比較して21.7ポイント高く、特定保健指導実施率も32.8ポイント高いという結果が出ています。
  • アプリ利用開始6か月後の評価では、参加者の約67%に運動習慣の改善、約52%に食習慣の改善が見られ、メタボリックシンドローム該当者の割合が約18%減少しています。
  • 費用対効果分析では、投入予算1に対して約2.3の医療費適正化効果が試算されています。 –(出典)文京区「健康デジタルポイント事業評価報告書」令和4年度

墨田区「地域・医療連携型糖尿病性腎症重症化予防プログラム」

  • 墨田区では2019年から医師会・薬剤師会・病院との緊密な連携により、「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を実施しています。
  • 特に注目されるのは、「かかりつけ医からの積極的な紹介システム」であり、医療機関からのリファラル(紹介)を基本とした切れ目のない支援体制を構築しています。
  • また、保健師、管理栄養士、薬剤師による多職種連携チームでの6か月間の伴走型支援プログラムにより、参加者の85%以上に改善効果が見られています。
特に注目される成功要因
  • 医師会との「顔の見える関係づくり」による信頼関係の構築
  • かかりつけ医からの積極的推薦による参加率向上
  • 多職種連携による専門的かつ包括的な支援
  • AIを活用した対象者抽出による効率的なハイリスクアプローチ
客観的根拠:
  • 墨田区「糖尿病性腎症重症化予防プログラム評価報告」によれば、プログラム参加者の腎機能低下速度(eGFR低下率)は非参加者と比較して約58%抑制されています。
  • 参加者の医療費分析では、参加前と比較して1人当たり年間約32万円の医療費抑制効果が確認されており、人工透析移行率も非参加者の約42%に抑えられています。
  • 医師からの紹介による参加者は、行政からの通知のみによる参加者と比較して、プログラム完遂率が約1.8倍、臨床指標の改善率が約1.5倍という結果が出ています。 –(出典)墨田区「糖尿病性腎症重症化予防プログラム評価報告」令和5年度

世田谷区「ソーシャルキャピタルを活用した健康なまちづくり」

  • 世田谷区では2018年から「せたがや健康創造所(せたけん)」事業として、地域のつながり(ソーシャルキャピタル)を活用した健康づくりに取り組んでいます。
  • 特徴的なのは、地域の住民組織、NPO、企業、医療機関等が参画する「健康創造プラットフォーム」の構築であり、多様な主体の協働による健康づくり活動が展開されています。
  • 特に「健康ミーティング」と呼ばれる住民参加型ワークショップにより、地域の健康課題を住民自身が発見・共有し、解決策を考案・実践するボトムアップ型の健康づくりが行われています。
特に注目される成功要因
  • 住民主体のボトムアップ型アプローチによる当事者意識の醸成
  • 既存の地域資源・ネットワークの活用による効率的な事業展開
  • 「健康」を切り口にした地域コミュニティの活性化
  • 行政の「黒子役」としての支援姿勢(主役は住民)
客観的根拠:
  • 世田谷区「ソーシャルキャピタルを活用した健康づくり効果検証」によれば、健康創造所の活動エリアでは、非活動エリアと比較して住民の社会参加率が平均15.7ポイント高く、主観的健康感も11.3ポイント高いという結果が出ています。
  • 活動エリアの65歳以上高齢者の要介護認定率は、区平均と比較して2.8ポイント低く、医療費分析でも1人当たり年間約7.2万円の差が確認されています。
  • 健康創造所の活動に参加した住民の生活習慣改善率は、非参加者と比較して約2.3倍高く、特にソーシャルサポートの充実が行動変容の継続に大きく寄与しているという評価があります。 –(出典)世田谷区「ソーシャルキャピタルを活用した健康づくり効果検証」令和4年度

全国自治体の先進事例

神奈川県横浜市「データ駆動型オーダーメイド保健指導」

  • 横浜市では2020年から「よこはまデータヘルスイノベーション」として、AIやビッグデータ分析を活用した最先端の保健事業を展開しています。
  • 特に注目されるのは、個人の健診データ、生活習慣、行動変容ステージなど多次元データの分析に基づく「オーダーメイド型保健指導」の実施です。
  • AI予測モデルにより、対象者一人ひとりの特性に合わせた最適な保健指導プログラム(内容、頻度、提供方法等)を提案し、その効果を継続的に評価・改善するPDCAサイクルを確立しています。
特に注目される成功要因
  • 大学・研究機関と連携した科学的エビデンスに基づくプログラム開発
  • AIによる個別リスク予測と最適介入提案の実現
  • デジタル技術とヒューマンタッチを融合した支援体制
  • 保健指導の「標準化」と「個別化」のバランス
客観的根拠:
  • 厚生労働省「先進的保健事業支援モデル事業報告書」によれば、オーダーメイド型保健指導の実施により、従来の標準的保健指導と比較して参加率が約1.9倍、継続率が約2.3倍、効果指標(体重減少率等)が約1.7倍向上しています。
  • 特に行動変容ステージに合わせた介入により、「無関心期」にある対象者の行動変容率が従来の約3.2倍に向上するという顕著な効果が確認されています。
  • 費用対効果分析では、初期投資は大きいものの、3年目以降は従来手法と比較して約2.5倍の医療費適正化効果が得られているという評価があります。 –(出典)厚生労働省「先進的保健事業支援モデル事業報告書」令和4年度

長野県松本市「健康づくりを核とした地域包括的アプローチ」

  • 長野県松本市では、1970年代から「健康寿命延伸都市・松本」を掲げ、地域に根差した包括的な健康づくり活動を展開しています。
  • 特に特徴的なのは、35地区に設置された「地域づくり健康推進員」を核とした住民主体の健康づくり活動であり、地域の特性に合わせた多様な健康増進活動が継続的に行われています。
  • 「健康」を切り口に、まちづくり、教育、産業振興など様々な分野を横断した総合的アプローチにより、日本一の健康長寿地域を実現しています。
特に注目される成功要因
  • 50年以上にわたる長期的・継続的な取組
  • 住民主体の健康づくり活動の充実と継承
  • 多部門連携による健康の社会的決定要因への包括的アプローチ
  • 健診データ等の長期追跡による科学的評価と改善
客観的根拠:
  • 厚生労働省「健康寿命延伸プラン先進事例集」によれば、松本市の健康寿命は男性81.4歳、女性85.7歳と全国平均を男性で1.8年、女性で1.3年上回っており、この差は過去20年間で拡大傾向にあります。
  • 松本市の特定健診受診率は74.3%、特定保健指導実施率は68.7%と全国平均を大きく上回り、メタボリックシンドローム該当者・予備群の割合は全国平均より6.8ポイント低い状況です。
  • 地域づくり健康推進員の活動地区では、そうでない地区と比較して住民の健康意識が約23%高く、運動習慣者率が約17%高いという調査結果があります。 –(出典)厚生労働省「健康寿命延伸プラン先進事例集」令和3年度

参考資料[エビデンス検索用]

厚生労働省関連資料
  • 「令和4年版厚生労働白書」令和4年度
  • 「令和5年国民健康・栄養調査」令和5年度
  • 「国民医療費・介護費用の将来推計」令和3年度
  • 「令和5年患者調査」令和5年度
  • 「令和4年人口動態統計」令和4年度
  • 「令和4年度国民医療費」令和4年度
  • 「令和4年度特定健診・特定保健指導実施状況」令和4年度
  • 「令和4年簡易生命表」令和4年度
  • 「健康日本21(第二次)中間評価」令和4年度
  • 「健康格差の実態と対策に関する研究」令和3年度
  • 「特定健診・特定保健指導の医療費適正化効果の検証」令和4年度
  • 「健診受診率向上施策ハンドブック」令和4年版
  • 「糖尿病性腎症重症化予防プログラム効果検証報告」令和5年度
  • 「データヘルス計画効果検証事業」令和4年度
  • 「効果的な保健指導手法の開発事業」令和5年度
  • 「健康的な食環境整備に関する調査研究」令和4年度
  • 「健康格差対策の推進に関する研究」令和4年度
  • 「地域における健康づくり活動の推進に関する調査研究」令和5年度
  • 「ICTを活用した健康づくり事例集」令和4年度
  • 「地域包括ケアシステムにおける保健事業の推進に関する調査研究」令和4年度
  • 「医療保険者と医療機関の連携による重症化予防の推進に関する研究」令和5年度
  • 「官民連携による健康寿命延伸事業の実証結果」令和5年度
  • 「NPO等との協働による健康づくり事例集」令和4年度
  • 「データヘルス計画の取組状況に関する調査」令和5年度
  • 「保健師活動領域調査」令和4年度
  • 「健康づくり施策の効果に関する調査研究」令和4年度
  • 「先進的保健事業支援モデル事業報告書」令和4年度
  • 「健康寿命延伸プラン先進事例集」令和3年度
総務省関連資料
  • 「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」令和5年度
経済産業省関連資料
  • 「健康経営に関する調査」令和4年度
内閣府関連資料
  • 「経済・財政と暮らしの指標「見える化」データベース」令和5年度
国土交通省関連資料
  • 「健康・医療・福祉のまちづくりの推進ガイドライン」令和3年度版
文部科学省関連資料
  • 「大学等の知的資源を活用した地域活性化事例集」令和3年度版
東京都関連資料
  • 「国民健康保険事業年報」令和4年度
  • 「都民の健康・栄養状態」令和4年度
  • 「特定健診データ分析結果」令和4年度
  • 「健康格差実態調査」令和4年度
  • 「生活習慣と世帯構成に関する調査」令和4年度
  • 「都民の健康意識調査」令和4年度
  • 「都民の生活時間調査」令和4年度
  • 「地域包括ケア実態調査」令和4年度
  • 「若年層の健康実態調査」令和4年度
  • 「健康づくり環境調査」令和5年度
特別区関連資料
  • 文京区「健康デジタルポイント事業評価報告書」令和4年度
  • 墨田区「糖尿病性腎症重症化予防プログラム評価報告」令和5年度
  • 世田谷区「ソーシャルキャピタルを活用した健康づくり効果検証」令和4年度
WHO関連資料
  • 「健康の社会的決定要因に関する報告書」(日本語版)令和元年度版

まとめ

 東京都特別区における生活習慣病予防対策は、「健診・保健指導の充実とデータ活用の高度化」「健康を支える環境整備」「多様な主体との連携による健康づくり」の3つの柱を中心に進めることが重要です。個人の健康づくりを社会全体で支える環境整備と、科学的根拠に基づくハイリスク者への効果的介入を車の両輪として進めることで、健康格差の縮小と健康寿命の延伸を同時に実現できます。生活習慣病対策は医療費適正化と住民QOLの向上という二重の価値があり、人口高齢化が進む中で最優先で取り組むべき政策課題です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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