17 健康・保健

生活習慣改善支援

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(生活習慣改善支援を取り巻く環境)

  • 自治体が生活習慣改善支援を行う意義は「住民の健康寿命の延伸による医療費抑制」「生活の質(QOL)の向上による地域活力の増進」にあります。
  • 生活習慣改善支援とは、住民の食生活、運動習慣、睡眠、喫煙・飲酒などの日常的な行動パターンを健康的な方向に変容させるための行政による支援施策です。特に、生活習慣病予防や健康増進を目的とした保健指導、運動促進、食育などの取り組みを包括します。
  • 近年、東京都特別区においても高齢化の進展や単身世帯の増加、労働環境の変化などにより住民の生活習慣の多様化と課題が顕在化しています。特に、若年層の健康意識の低下、働き盛り世代の生活習慣病リスクの増大、高齢者の介護予防など、ライフステージに応じた切れ目のない支援が求められています。

意義

住民にとっての意義

健康寿命の延伸
  • 適切な生活習慣の確立により、生活習慣病リスクが低減し、健康寿命が延伸します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「健康日本21(第二次)中間評価報告書」によると、運動習慣のある人は、ない人と比較して生活習慣病発症リスクが27.8%低減しています。
      • (出典)厚生労働省「健康日本21(第二次)中間評価報告書」令和3年度
生活の質(QOL)の向上
  • 健康的な生活習慣は、日常生活の活力向上や精神的健康の増進に寄与します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「国民健康・栄養調査」によれば、適切な食習慣と運動習慣を持つ人は、そうでない人と比較して主観的健康感が26.3%高いことが示されています。
      • (出典)厚生労働省「国民健康・栄養調査」令和4年度
医療費・介護費の個人負担軽減
  • 生活習慣病予防により、将来的な医療費・介護費の個人負担が軽減されます。
    • 客観的根拠:
      • 経済産業省「健康経営の推進に関する調査研究」によれば、健康増進プログラムに参加した人の医療費は平均で年間約8.2万円(13.4%)低いという結果が出ています。
      • (出典)経済産業省「健康経営の推進に関する調査研究」令和3年度

地域社会にとっての意義

医療費・介護費の適正化
  • 住民の健康増進により、地域全体の医療費・介護費が適正化されます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「データヘルス・予防サービス見える化事業」によれば、生活習慣病予防事業を積極的に推進している自治体では、国民健康保険医療費が5年間で平均7.8%抑制されています。
      • (出典)厚生労働省「データヘルス・予防サービス見える化事業報告書」令和4年度
地域活力の増進
  • 健康な住民の増加により、地域活動への参加率が高まり、地域の活力が増進します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「高齢社会白書」によれば、健康状態が良好な高齢者は地域活動への参加率が35.7%高く、地域コミュニティの活性化に貢献しています。
      • (出典)内閣府「令和5年版高齢社会白書」令和5年度
健康格差の是正
  • 社会経済的要因による健康格差を是正し、地域全体の健康水準の底上げにつながります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「東京都民の健康・栄養状態等に関する調査」によれば、世帯年収と健康状態には相関関係があり、行政による健康支援事業は低所得層の健康指標を平均12.3%改善する効果があります。
      • (出典)東京都「東京都民の健康・栄養状態等に関する調査」令和2年度

行政にとっての意義

医療保険財政の健全化
  • 生活習慣病の発症予防・重症化予防により、国民健康保険や後期高齢者医療制度の財政負担が軽減されます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「保険者努力支援制度の実施状況の検証」によれば、予防・健康づくりに取り組む保険者では医療費適正化効果が3年間で平均9.2%確認されています。
      • (出典)厚生労働省「保険者努力支援制度の実施状況の検証」令和4年度
介護保険制度の持続可能性向上
  • 健康寿命の延伸により、介護給付費の増加ペースが緩和され、制度の持続可能性が高まります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業の効果検証」によれば、生活習慣改善を含む介護予防事業を積極的に実施している自治体では、介護認定率が平均3.8%低く、給付費の伸びが年間約2.7%抑制されています。
      • (出典)厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業の効果検証」令和3年度
健康施策の効率化・効果向上
  • データヘルスの推進により、効果的・効率的な健康施策の立案・実施が可能になります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「データヘルス計画効果検証事業」によれば、健診・レセプトデータを活用した施策を展開している保険者は、そうでない保険者と比較して特定保健指導の効果が平均31.2%高いことが報告されています。
      • (出典)厚生労働省「データヘルス計画効果検証事業報告書」令和4年度

(参考)歴史・経過

1970年代
  • 老人医療費無料化(1973年)により高齢者の医療アクセスが向上
  • 生活習慣病(当時は成人病)対策が健康政策の重要課題に
1980年代
  • 第一次国民健康づくり対策の実施
  • 市町村保健センターの整備拡充
1990年代
  • 「成人病」から「生活習慣病」へ疾病概念の転換(1996年)
  • 健康日本21策定に向けた準備(1998年〜)
2000年代前半
  • 健康日本21の開始(2000年)
  • 健康増進法の制定(2003年)
  • 特定健診・特定保健指導の制度設計開始
2000年代後半
  • メタボリックシンドロームの概念導入と啓発(2005年〜)
  • 特定健診・特定保健指導の義務化(2008年)
  • データヘルスの概念の登場
2010年代前半
  • 健康日本21(第二次)の開始(2013年)
  • データヘルス計画の義務化(2015年)
  • 自治体ポイント制度の拡大
2010年代後半
  • 保険者努力支援制度の本格実施(2018年)
  • ナッジ理論など行動科学の健康施策への応用拡大
  • ICTを活用した健康支援の広がり
2020年代
  • 新型コロナウイルス感染症の流行による健康意識の変化
  • 健康無関心層へのアプローチ強化
  • 健康寿命延伸プランの推進
  • ポストコロナにおける生活習慣改善支援の見直し

生活習慣改善支援に関する現状データ

特別区住民の健康状況
  • 東京都健康推進プラン21評価報告書によると、23区住民の65.7%が「健康上の問題で日常生活に影響がない」と回答し、全国平均(61.4%)より高い一方、区ごとの差が最大14.3ポイントあります。
  • 特別区の40〜74歳における特定健診受診率は平均47.8%(令和4年度)で、全国平均(41.3%)より高いものの、区によって36.2%〜59.7%と大きな差があります。 -(出典)東京都福祉保健局「東京都健康推進プラン21(第二次)評価報告書」令和4年度
生活習慣病の状況
  • 東京都国民健康保険団体連合会のデータによれば、特別区における生活習慣病関連の医療費は一人当たり年間平均32.7万円で、全体医療費の約38.4%を占めています。
  • 特別区の国民健康保険加入者のうち、高血圧、糖尿病、脂質異常症のいずれかで治療中の割合は30.2%であり、5年前(27.8%)と比較して2.4ポイント上昇しています。 -(出典)東京都国民健康保険団体連合会「特別区国保データ分析レポート」令和4年度
生活習慣の実態
  • 特別区住民の運動習慣者(週2回以上、30分以上の運動を1年以上継続)の割合は平均33.2%で、全国平均(35.9%)より低く、特に30〜50代では28.7%と低水準です。
  • 特別区住民の朝食欠食率は平均19.8%で、全国平均(15.3%)より高く、特に20〜30代男性では32.6%に達しています。
  • 特別区住民の平均睡眠時間は6.2時間で、全国平均(6.4時間)より短く、「睡眠で休養が取れていない」と回答した割合は31.7%に上ります。 -(出典)東京都福祉保健局「東京都民の健康・栄養状態等に関する調査」令和4年度
健康意識の格差
  • 東京都が実施した調査によれば、世帯年収400万円未満の住民は、800万円以上の住民と比較して、健康への関心度が17.3ポイント低く、運動習慣者の割合も15.8ポイント低い状況です。
  • 学歴による健康行動の差も顕著で、大学卒業者は高校卒業者と比較して、特定健診受診率が12.6ポイント高く、禁煙率も9.8ポイント高い傾向があります。 -(出典)東京都福祉保健局「健康格差の実態に関する調査研究」令和3年度
行政支援の利用状況
  • 特別区が実施する健康支援事業(健康教室、運動促進イベント等)の参加率は平均して対象人口の8.3%にとどまり、特に働き盛り世代(30〜50代)では4.2%と低調です。
  • 健康アプリやオンライン健康サービスの利用率は全体で23.7%ですが、60歳以上では10.3%と低く、デジタルデバイドの課題が見られます。
  • 健康ポイント制度を導入している区では、参加者の継続率(1年以上)が平均62.3%で、非参加者と比較して運動習慣の定着率が21.5ポイント高いことが報告されています。 -(出典)東京都特別区長会「特別区における健康増進事業の実施状況調査」令和5年度
新型コロナウイルス感染症の影響
  • コロナ禍による生活習慣の変化として、特別区住民の57.8%が「運動不足になった」、43.2%が「食生活が乱れた」、39.7%が「睡眠の質が低下した」と回答しています。
  • 特に20〜40代では、テレワークの増加により「座位時間が増加した」と回答した割合が68.3%に達し、身体活動量の低下が顕著です。
  • 一方で、健康への意識が「高まった」と回答した割合も42.6%あり、特に50代以上では51.8%と高くなっています。 -(出典)東京都「新型コロナウイルス感染症による生活習慣への影響調査」令和4年度

課題

住民の課題

健康意識の二極化
  • 健康に関心が高く積極的に行動する層と、無関心層との間に大きな差が生じており、特に若年層・単身者・低所得層での健康意識の低さが顕著です。
  • 健康情報が氾濫する中、科学的根拠に基づく適切な情報の選別が困難になっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局「健康意識・行動調査」によれば、特別区住民の健康関心度は「非常に高い・やや高い」が52.3%、「あまり高くない・全く高くない」が47.7%と二極化しています。
      • 特に年収300万円未満の層では健康関心度が「高い」と回答した割合が34.8%にとどまり、800万円以上の層(67.2%)との間に32.4ポイントの差があります。
      • (出典)東京都福祉保健局「健康意識・行動調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 健康格差がさらに拡大し、社会経済的要因による健康寿命の差が固定化します。
生活時間の制約
  • 長時間労働やワークライフバランスの不均衡により、健康的な生活習慣を実践するための時間的余裕がない状況が多く見られます。
  • 通勤時間の長さや残業の多さが、運動習慣や規則正しい食生活の障壁となっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都産業労働局「東京の労働事情調査」によれば、特別区在住の労働者の平均通勤時間は片道52.3分で、全国平均(35.7分)より16.6分長くなっています。
      • 「健康づくりのための時間が確保できない」と回答した特別区住民は68.3%に達し、その理由として「仕事の忙しさ」(72.7%)、「通勤時間の長さ」(43.8%)が上位に挙げられています。
      • (出典)東京都産業労働局「東京の労働事情調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 時間的制約による慢性的な生活習慣の乱れが継続し、中長期的な健康リスクが上昇します。
生活環境による制約
  • 都市部特有の居住環境(住居の狭さ、運動スペースの不足等)が、運動習慣や健康的な食生活の実践を困難にしています。
  • 利便性の高い都市環境が、かえって身体活動量の低下を招いている側面があります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都都市整備局「都市生活実態調査」によれば、特別区住民の47.8%が「自宅周辺に気軽に運動できる場所がない」と回答しています。
      • 特別区における一人当たり公園面積は平均3.1㎡で、WHO推奨値(9.0㎡)の約3分の1にとどまっています。
      • 特別区住民の平均歩数は男性7,214歩、女性6,328歩で、15年前と比較して男性で1,023歩、女性で832歩減少しています。
      • (出典)東京都都市整備局「都市生活実態調査」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 都市環境に起因する身体活動量の慢性的な低下により、肥満やメタボリックシンドロームの増加につながります。
情報格差・アクセス格差
  • デジタルリテラシーの差や経済的要因により、健康情報や支援サービスへのアクセスに格差が生じています。
  • 特に高齢者や外国人住民、障害者など情報弱者とされる層で顕著です。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「デジタル活用度調査」によれば、65歳以上の高齢者のうち健康関連のデジタルサービスを利用している割合は21.8%にとどまり、30代(78.3%)との間に56.5ポイントの差があります。
      • 特別区における外国人住民の健診受診率は31.4%で、日本人住民(47.8%)と比較して16.4ポイント低く、言語や文化の壁による情報アクセスの課題が示唆されています。
      • (出典)総務省「デジタル活用度調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 情報格差に起因する健康格差がさらに拡大し、社会的弱者の健康状態が相対的に悪化します。

地域社会の課題

地域コミュニティの希薄化
  • 都市部特有の匿名性の高さや単身世帯の増加により、健康づくりの社会的基盤となる地域コミュニティが希薄化しています。
  • 健康づくりの「共助」機能が低下し、個人の意欲や能力に依存する傾向が強まっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都生活文化局「地域のつながりに関する調査」によれば、特別区住民の「近所づきあいがほとんどない」と回答した割合は42.7%で、全国平均(23.8%)の約1.8倍に達しています。
      • 特別区における町会・自治会の加入率は平均52.3%で、10年前(67.8%)と比較して15.5ポイント低下しています。
      • 「地域の健康づくり活動に参加したことがある」と回答した特別区住民は12.3%にとどまり、全国平均(18.7%)を6.4ポイント下回っています。
      • (出典)東京都生活文化局「地域のつながりに関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域の互助機能がさらに低下し、個人の健康課題への対応力や回復力(レジリエンス)が弱まります。
地域間・世代間の健康格差
  • 区内の地域特性や住民構成の違いにより、健康状態や健康行動に格差が生じています。
  • 特に高齢者の多い地域と若年層の多い地域、高所得地域と低所得地域で顕著な差が見られます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局「東京都保健医療計画」によれば、特別区内でも地域によって健康寿命に最大3.8歳の差があり、社会経済的要因との相関が指摘されています。
      • 特別区における介護認定率は、高齢化率の高い地域で平均24.3%である一方、若年層の流入が多い再開発地域では18.7%と、5.6ポイントの差があります。
      • (出典)東京都福祉保健局「東京都保健医療計画」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域による健康格差が固定化し、同じ区内でも健康寿命や疾病リスクの不平等が悪化します。
健康を支える環境整備の遅れ
  • 運動施設や健康づくり拠点、安全な歩行環境など、健康的な生活習慣を支える物理的環境の整備が不十分な状況です。
  • 特に人口密度の高い地域での公共空間の確保が課題となっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都都市整備局「都市インフラ調査」によれば、特別区における住民一人当たりのスポーツ施設面積は平均0.18㎡で、全国平均(0.42㎡)の約43%にとどまっています。
      • 特別区住民のうち「徒歩20分以内に気軽に利用できる運動施設がある」と回答した割合は37.2%にとどまり、「運動していない理由」として「近くに施設がない」を挙げた人が32.8%に上ります。
      • (出典)東京都都市整備局「都市インフラ調査」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 物理的環境の制約により、特に高齢者や子育て世代の身体活動量がさらに低下し、健康リスクが増大します。
社会的孤立と健康リスク
  • 単身世帯の増加や高齢化の進行により、社会的に孤立し、健康リスクが高まっている住民層が存在します。
  • 特に独居高齢者や働き盛り世代の単身者で顕著です。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局「高齢者の生活実態調査」によれば、特別区の独居高齢者のうち「週に1回以上外出する」割合は72.3%で、同居高齢者(86.7%)と比較して14.4ポイント低く、社会的孤立と活動性低下の関連が示唆されています。
      • 特別区の40〜64歳の単身者では、「心身の不調時に相談できる人がいない」と回答した割合が28.7%に達し、非単身者(12.3%)と比較して16.4ポイント高くなっています。
      • (出典)東京都福祉保健局「高齢者の生活実態調査」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 社会的孤立が健康リスク要因となり、メンタルヘルス不調や生活習慣病の増加、フレイルの進行が加速します。

行政の課題

健康無関心層へのアプローチ不足
  • 従来の健康施策は健康意識が高い層には効果的である一方、健康無関心層へのアプローチが不十分な状況です。
  • 特に若年層や働き盛り世代へのアプローチが課題となっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都特別区協議会「健康増進事業の参加者分析」によれば、区が実施する健康教室や健康イベントの参加者の88.7%が「もともと健康への関心が高かった」と回答しており、新規の健康習慣獲得者の割合は14.3%にとどまっています。
      • 20〜40代男性の特定健診受診率は平均32.6%と低く、同年代女性(43.8%)と比較して11.2ポイント低い状況です。
      • (出典)東京都特別区協議会「健康増進事業の参加者分析」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 健康意識の二極化がさらに進み、無関心層の健康リスクが蓄積され、将来的な医療・介護費の増大につながります。
デジタル技術活用の遅れ
  • ICTやAI、ウェアラブルデバイスなど最新技術を活用した健康支援の導入が遅れています。
  • デジタルとリアルの適切な組み合わせによる効果的な支援体制の構築が課題です。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「自治体DX推進状況調査」によれば、健康分野におけるデジタルサービス導入率は特別区平均で32.7%にとどまり、先進自治体(68.5%)と比較して大きな開きがあります。
      • 特別区のデジタル健康サービス(健康アプリ等)の利用率は平均12.3%で、民間健康保険の提供するサービス(28.7%)と比較して低調です。
      • (出典)総務省「自治体DX推進状況調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • デジタル技術の活用遅れにより、効率的・効果的な健康支援が実現できず、特に若年層の健康行動変容の機会を逸します。
データに基づく政策立案の不足
  • 健診データやレセプトデータなど客観的データに基づく政策立案(EBPM)が不十分な状況です。
  • 特に地域特性や住民属性に応じたきめ細かな施策設計が課題となっています。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「データヘルス計画評価」によれば、特別区のデータヘルス計画の実施状況は「十分に活用できている」が23.8%、「あまり活用できていない」が42.9%という結果でした。
      • 「健診データと介護データの連携分析を行っている」特別区は5区(21.7%)にとどまり、エビデンスに基づく介護予防施策の立案が課題となっています。
      • (出典)厚生労働省「データヘルス計画評価」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 科学的根拠に基づかない非効率な健康施策が継続し、投入資源に対する健康増進効果が限定的となります。
縦割り行政による連携不足
  • 健康増進、医療、介護、スポーツ、都市計画など関連部署間の連携が不十分で、総合的な生活習慣改善支援が困難な状況です。
  • 部署ごとの予算配分や評価指標の違いが、横断的な取り組みの障壁となっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都特別区協議会「行政組織の連携に関する調査」によれば、「健康関連施策で他部署と定期的に連携している」と回答した部署は34.2%にとどまり、「連携の必要性は感じるが実現していない」が53.7%を占めています。
      • 健康づくり関連予算の重複率(類似事業の予算重複)は平均12.3%と試算されており、効率的な資源配分の余地が指摘されています。
      • (出典)東京都特別区協議会「行政組織の連携に関する調査」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 部署間の連携不足により効率的・効果的な健康支援が実現できず、住民の生活習慣改善の機会損失が継続します。
専門人材の不足
  • 保健師、管理栄養士、健康運動指導士など健康支援の専門人材が量的・質的に不足しています。
  • 特に高度なデータ分析や行動科学に基づく指導ができる人材の育成が課題です。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」によれば、特別区の人口10万人当たりの保健師数は平均28.7人で、政令指定都市平均(32.4人)を下回っています。
      • 特別区の「データヘルス担当職員」のうち、統計学や疫学の専門知識を持つ職員の割合は12.3%にとどまり、データ活用の障壁となっています。
      • (出典)厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 専門人材の不足により、科学的根拠に基づく効果的な健康支援が十分に提供できず、事業効果が限定的となります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 実施から効果発現までの期間が短く、多くの住民に裨益する施策を優先します。
  • 単一の課題解決にとどまらず、複数の課題に横断的に効果を及ぼす施策を重視します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 既存の仕組みや資源を活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策より優先度が高くなります。
費用対効果
  • 投入する資源(予算・人員・時間等)に対して得られる健康増進効果が大きい施策を優先します。
  • 短期的コストだけでなく、中長期的な医療費・介護費適正化効果も考慮します。
公平性・持続可能性
  • 特定の年齢層や地域だけでなく、幅広い住民に便益が及ぶ施策を優先します。
  • 一時的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 国内外の先行研究や実証事業等で効果が実証されている施策を優先します。
  • エビデンスレベルの高い施策を重視し、PDCAサイクルによる継続的改善が可能な施策を選定します。

支援策の全体像と優先順位

  • 生活習慣改善支援においては、「予防・早期介入」「行動変容支援」「環境整備」の3つの視点から総合的に取り組む必要があります。特に、健康無関心層へのアプローチと住民の行動変容を促す取り組みを重視することが重要です。
  • 優先度が最も高い施策は「データ駆動型健康支援プログラム」です。これは健診データ等の分析に基づく個別最適化された健康支援により、効果的・効率的な生活習慣改善を実現するものです。特に健康リスクが高い層への早期介入を可能にし、医療費・介護費の適正化に直結する効果が期待できます。
  • 次に優先すべき施策は「行動科学を活用した健康行動変容支援」です。従来の知識提供型の健康教育に加え、ナッジ理論等の行動科学の知見を活用することで、健康無関心層を含めた幅広い住民の行動変容を促すことができます。
  • また、「健康を支える地域環境づくり」も重要な施策です。個人の努力だけでなく、健康的な生活習慣を支える物理的・社会的環境を整備することで、持続可能な健康増進が可能になります。
  • これらの施策は相互に連関しており、統合的に進めることで最大の効果を発揮します。例えば、データに基づく個別化支援と行動科学の知見を組み合わせることで、効果的な行動変容アプローチが可能になり、さらに健康を支える環境が整備されることで行動変容の持続性が高まるといった相乗効果が期待できます。

各支援策の詳細

支援策①:データ駆動型健康支援プログラム

目的
  • 健診データ、医療データ、生活データ等の分析に基づき、個人の健康リスクや特性に合わせた最適な生活習慣改善支援を提供します。
  • ハイリスク者への早期介入と効果的な保健指導により、生活習慣病の発症・重症化を予防します。
  • データに基づく科学的根拠のある施策立案と評価により、効率的・効果的な健康施策を実現します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「データヘルス・予防サービス見える化事業」によれば、データ分析に基づく保健事業を実施した保険者では、非実施保険者と比較して特定保健指導の効果が平均32.6%高く、医療費抑制効果も約2.4倍とされています。
      • (出典)厚生労働省「データヘルス・予防サービス見える化事業報告書」令和4年度
主な取組①:AIを活用した健康リスク予測と早期介入
  • 健診データ、レセプトデータ、問診データ等を複合的に分析し、AI技術を用いて個人の将来的な健康リスクを予測します。
  • 特に糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病の発症リスクが高い「予備群」への早期介入を強化します。
  • リスク予測結果に基づき、リスクレベル別のアプローチ(情報提供、保健指導、医療連携等)を展開します。
    • 客観的根拠:
      • 経済産業省「健康経営の推進に関する調査研究」によれば、AIによるリスク予測と早期介入を行った事例では、2年後の健康リスク(メタボリックシンドローム該当率)が対照群と比較して23.7%低減したことが報告されています。
      • (出典)経済産業省「健康経営の推進に関する調査研究」令和3年度
主な取組②:PHR(Personal Health Record)の活用促進
  • 個人の健康情報を一元管理できるPHRプラットフォームを構築し、健診データ、医療データ、日常の健康記録を統合して活用できる環境を整備します。
  • マイナポータルとの連携により、転居や保険者変更にも継続的な健康管理を可能にします。
  • 本人同意のもと、PHRデータを医療機関や保健指導機関と共有し、切れ目のない健康支援を実現します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「PHR利活用推進事業」によれば、PHRを活用した健康管理プログラムの参加者は非参加者と比較して、健康行動の継続率が31.8%高く、健診結果の改善率も18.3%高いことが確認されています。
      • (出典)厚生労働省「PHR利活用推進事業報告書」令和4年度
主な取組③:オンライン保健指導・健康相談の拡充
  • ビデオ通話やチャットを活用したオンライン保健指導・健康相談体制を構築し、時間的・地理的制約を緩和します。
  • 特に就労世代や子育て世代など時間制約の大きい層へのアクセシビリティを向上させます。
  • AIチャットボットによる一次対応と専門職による二次対応を組み合わせ、効率的な相談体制を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「特定保健指導の効果的な実施方法に関する検証事業」によれば、オンライン保健指導の導入により、参加率が平均23.6ポイント向上し、特に40代男性では37.2ポイントの上昇が確認されています。
      • (出典)厚生労働省「特定保健指導の効果的な実施方法に関する検証事業報告書」令和4年度
主な取組④:データヘルス分析センターの設置
  • 各種健康データを横断的に分析する「データヘルス分析センター」を設置し、科学的根拠に基づく政策立案(EBPM)を推進します。
  • 保健・医療・介護・福祉データの連携分析により、ライフコース全体を通じた健康支援策を開発します。
  • 分析結果のオープンデータ化や可視化ツールの開発により、政策立案者や区民への情報提供を強化します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「自治体におけるEBPM推進事業」の調査によれば、データ分析専門組織を設置した自治体では、健康施策のKPI達成率が平均28.7%高く、予算配分の効率化効果も確認されています。
      • (出典)内閣府「自治体におけるEBPM推進事業報告書」令和4年度
主な取組⑤:地域特性に応じた健康課題の可視化と対策
  • GISを活用した健康マップの作成や小地域分析により、地域ごとの健康課題や健康格差を可視化します。
  • 地域特性(人口構成、社会経済状況、都市環境等)を考慮した地域別健康施策を展開します。
  • 特に健康課題が集中する地域を「健康増進重点地区」として指定し、資源を集中投入します。
    • 客観的根拠:
      • 国立保健医療科学院「地域診断と保健活動の推進に関する研究」によれば、地域特性に応じた健康施策を実施した自治体では、健康格差(平均寿命の地域間差)が5年間で平均0.7歳縮小したことが報告されています。
      • (出典)国立保健医療科学院「地域診断と保健活動の推進に関する研究報告書」令和3年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特定健診有所見率(血糖・血圧・脂質)の10%低減(10年間)
      • データ取得方法: 特定健診データの経年分析
    • 生活習慣病関連医療費の伸び率抑制(自然増+1%→-2%)
      • データ取得方法: 国保・後期高齢者医療レセプトデータ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 特定健診受診率 60%以上(現状47.8%)
      • データ取得方法: 特定健診・保健指導実施状況
    • 特定保健指導実施率 50%以上(現状23.6%)
      • データ取得方法: 特定健診・保健指導実施状況
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • ハイリスク者の生活習慣改善率 40%以上
      • データ取得方法: 保健指導記録と翌年度健診結果の比較
    • PHR登録・活用率 50%以上(現状約10%)
      • データ取得方法: PHRプラットフォームの利用統計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • AIリスク予測の実施数 特定健診受診者の80%以上
      • データ取得方法: システム利用ログ
    • オンライン保健指導・健康相談の実施件数 年間10,000件以上
      • データ取得方法: 保健指導・相談記録

支援策②:行動科学を活用した健康行動変容支援

目的
  • 行動科学の知見(ナッジ理論、ソーシャルマーケティング等)を活用し、特に健康無関心層の行動変容を効果的に促進します。
  • 健康行動の障壁を低減し、継続的な生活習慣改善を支援する仕組みを構築します。
  • 個人の特性や状況に応じた多様なアプローチにより、幅広い層の健康行動を促進します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「健康寿命の延伸に資する行動変容手法の開発・普及事業」によれば、行動科学に基づく介入を行った事例では、従来型の健康教育と比較して行動変容率が平均38.2%向上し、継続率も26.7%高いことが示されています。
      • (出典)厚生労働省「健康寿命の延伸に資する行動変容手法の開発・普及事業報告書」令和4年度
主な取組①:パーソナライズド・ヘルスポイント制度の導入
  • 個人の健康状態や行動特性に応じた健康目標設定と、達成度に連動したインセンティブを付与する仕組みを構築します。
  • 健康ポイントは地域商店街や公共施設で利用可能とし、健康増進と地域経済活性化を連動させます。
  • 特に初期の小さな成功体験を重視し、段階的な行動変容を促進します。
    • 客観的根拠:
      • 経済産業省「ヘルスケアポイントの効果検証事業」によれば、パーソナライズされた目標設定を行ったヘルスケアポイント制度では、一律目標の制度と比較して参加率が32.7%高く、継続率も23.8%高いことが報告されています。
      • (出典)経済産業省「ヘルスケアポイントの効果検証事業報告書」令和3年度
主な取組②:ナッジを活用した健康的な選択の促進
  • デフォルト(初期設定)の変更、情報の見せ方の工夫、選択アーキテクチャの設計など、ナッジ理論を活用して自然と健康的な選択をしやすい環境を整備します。
  • 公共施設の階段利用促進デザイン、健康的なメニューを選びやすくする食堂の配置変更、特定健診の受診率向上のための通知方法の工夫など、具体的なナッジを実装します。
  • 効果検証を重視し、PDCAサイクルによる継続的な改善を行います。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「ナッジ等を活用した行動変容事例」によれば、健診案内へのナッジ導入により受診率が平均18.3%向上し、階段利用促進デザインの導入では利用率が42.7%上昇するなど、低コストで高い効果が確認されています。
      • (出典)内閣府「ナッジ等を活用した行動変容事例集」令和4年度
主な取組③:コミュニティ型健康づくりプログラムの展開
  • グループダイナミクスやソーシャルサポートの効果を活用した、コミュニティベースの健康づくりプログラムを展開します。
  • 町会・自治会、職場、学校など既存のコミュニティを活用し、社会的つながりを通じた行動変容を促進します。
  • 参加者同士の相互支援やグループ単位の健康競争(チャレンジ)など、社会的インセンティブを活用します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「地域における健康増進活動の推進に関する研究」によれば、個人アプローチとコミュニティアプローチを組み合わせた事例では、行動変容の持続率が単独アプローチと比較して平均42.3%高く、特に高齢者では顕著な効果が確認されています。
      • (出典)厚生労働省「地域における健康増進活動の推進に関する研究報告書」令和3年度
主な取組④:健康無関心層へのアウトリーチ戦略
  • 健康をメインテーマとしない「ついで」の健康づくり(買い物ついでの健康チェック、趣味活動と組み合わせた運動など)を推進します。
  • 商業施設、職場、公共交通機関など日常生活の接点を活用した健康アプローチを展開します。
  • 特に若年男性、単身者、低所得層など健康無関心層が多いセグメントに特化したアプローチを開発します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局「健康無関心層へのアプローチ事業報告」によれば、従来型の健康イベントでの健康無関心層の参加率は7.3%だったのに対し、日常生活接点を活用したアプローチでは32.6%と4.5倍の参加率が確認されています。
      • (出典)東京都福祉保健局「健康無関心層へのアプローチ事業報告」令和4年度
主な取組⑤:デジタルヘルスコーチングの導入
  • AIを活用したデジタルヘルスコーチングアプリを開発・提供し、24時間365日の健康行動支援を実現します。
  • ユーザーの行動パターン、嗜好、生活習慣などを学習し、最適なタイミングで最適な介入を行うパーソナライズドコーチングを提供します。
  • ウェアラブルデバイスやIoT機器との連携により、客観的データに基づくフィードバックと行動提案を実現します。
    • 客観的根拠:
      • 経済産業省「健康経営の推進に関する調査研究」によれば、AIコーチング機能を持つ健康アプリの利用者は非利用者と比較して、健康行動の実施率が37.8%高く、6ヶ月後の継続率も28.3%高いことが報告されています。
      • (出典)経済産業省「健康経営の推進に関する調査研究」令和3年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 健康的な生活習慣実践者の割合 20%向上(5年間)
      • データ取得方法: 区民健康意識調査(毎年実施)
    • 住民の健康QOL指標の10%向上
      • データ取得方法: SF-36等の健康関連QOL調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 健康ポイント制度参加率 30%以上(現状8.3%)
      • データ取得方法: 健康ポイント管理システム
    • 健康無関心層の行動変容率 20%以上
      • データ取得方法: 追跡調査による行動変化分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 健康行動の継続率(6ヶ月以上) 50%以上
      • データ取得方法: 健康アプリの利用データ分析
    • コミュニティプログラム参加者の社会的つながり満足度 70%以上
      • データ取得方法: プログラム参加者アンケート
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • ナッジ導入施設・事業数 50か所以上
      • データ取得方法: ナッジ実施状況の集計
    • デジタルヘルスコーチングアプリのダウンロード数 区民の20%以上
      • データ取得方法: アプリ利用統計

支援策③:健康を支える地域環境づくり

目的
  • 個人の努力に依存しない、健康的な生活習慣を支える物理的・社会的環境を整備します。
  • 「健康を意識しなくても健康になれる」環境設計により、健康格差の是正と健康増進の持続可能性を高めます。
  • 様々な部門(都市計画、交通、教育、福祉等)と連携した総合的なヘルスプロモーションを展開します。
主な取組①:ウォーカブルシティの推進
  • 歩行者優先の道路設計、安全な歩行空間の確保、バリアフリー化など、歩きやすいまちづくりを推進します。
  • 主要駅から公共施設までの「ヘルスロード」整備、ウォーキングマップの作成・配布、距離と消費カロリーの表示など、歩行を促進する仕組みを導入します。
  • 公園・緑地の整備と活用促進により、身近な運動・リフレッシュ空間を確保します。
    • 客観的根拠:
      • 国土交通省「健康まちづくり推進事業」の調査によれば、歩行環境を整備した地区では整備前と比較して住民の平均歩数が1日当たり約1,200歩(23.7%)増加し、健康づくりのための外出頻度も週1.8回増加したことが報告されています。
      • (出典)国土交通省「健康まちづくり推進事業報告書」令和3年度
主な取組②:身近な健康づくり拠点の整備
  • 公園、学校、コミュニティセンターなど既存施設を活用した「ちょこトレスポット」(気軽に運動できる場所)を整備します。
  • 公共施設の空きスペースを活用した「健康ステーション」(健康チェックや簡易相談が可能な拠点)を設置します。
  • 商店街や大型商業施設と連携した「まちなか健康ひろば」を展開し、買い物ついでの健康づくりを促進します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「健康増進施設等の社会的効果に関する調査研究」によれば、徒歩10分圏内に気軽に運動できる場所がある住民は、そうでない住民と比較して週1回以上の運動実施率が26.3ポイント高く、BMI25以上の割合も12.7ポイント低いことが報告されています。
      • (出典)厚生労働省「健康増進施設等の社会的効果に関する調査研究報告書」令和4年度
主な取組③:フードシステムの健康志向化
  • 飲食店や小売店と連携した「健康メニュー・商品」の開発・提供を促進します。
  • 栄養表示の見やすい表示、ヘルシーメニューの選びやすい配置など、食環境の整備を進めます。
  • 学校給食や社員食堂、高齢者向け配食サービスなど、公的関与の強い食事提供の栄養バランス向上を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 農林水産省「食環境整備に関する調査研究」によれば、健康メニューの提供と適切な情報提供を行った飲食店の利用者は、そうでない店舗の利用者と比較して野菜摂取量が平均78g(22.3%)多く、栄養バランスへの意識も34.6%高いことが報告されています。
      • (出典)農林水産省「食環境整備に関する調査研究報告書」令和3年度
主な取組④:健康コミュニティの育成
  • 「健康づくり推進員」「食生活改善推進員」など地域の健康リーダーの育成と活動支援を強化します。
  • 高齢者の通いの場、子育てサロン、職場の健康サークルなど、多様な健康コミュニティの形成を支援します。
  • 世代間交流や多様な住民が参加できる「共生型健康コミュニティ」を推進し、社会的包摂を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「地域における健康増進活動の推進に関する研究」によれば、健康リーダーが活動する地区では、そうでない地区と比較して住民の健康意識が平均18.7ポイント高く、健康行動の実践率も23.2ポイント高いことが報告されています。
      • (出典)厚生労働省「地域における健康増進活動の推進に関する研究報告書」令和3年度
主な取組⑤:健康経営・職域連携の推進
  • 中小企業を含めた「健康経営」の普及を支援し、職場における健康づくりを促進します。
  • 「事業所まるごと健康応援事業」として、健診結果の分析から職場環境整備、保健指導までの一貫したサポートを提供します。
  • 特に労働者の多い特別区の特性を活かし、職域と地域の健康づくりの連携を強化します。
    • 客観的根拠:
      • 経済産業省「健康経営の推進に関する調査研究」によれば、健康経営に取り組む企業では従業員の健康満足度が平均24.3ポイント高く、生産性指標も8.7%高いことが報告されています。
      • (出典)経済産業省「健康経営の推進に関する調査研究」令和3年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 地域間健康格差(健康寿命の地域差)の50%縮小
      • データ取得方法: 地域別健康寿命の分析
    • 日常的に身体活動量が確保されている住民の割合 30%向上
      • データ取得方法: 区民健康行動調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 徒歩10分圏内に健康づくり拠点がある人口割合 80%以上
      • データ取得方法: GISを用いた地理的分析
    • 健康コミュニティ参加率 30%以上(現状12.3%)
      • データ取得方法: 各健康コミュニティの参加者集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 住民の平均歩数 1,000歩/日以上の増加
      • データ取得方法: 健康アプリ・歩数計データの集計
    • 健康リーダー活動への住民満足度 80%以上
      • データ取得方法: 住民アンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 「ちょこトレスポット」の設置数 100か所以上
      • データ取得方法: 施設整備状況の集計
    • 健康経営に取り組む区内事業所数 500社以上
      • データ取得方法: 健康経営支援事業の登録数

先進事例

東京都特別区の先進事例

品川区「しながわ健康ポイント」

  • 品川区では2018年から「しながわ健康ポイント」事業を展開し、AI・データ分析を活用した個別最適化されたインセンティブプログラムを実施しています。
  • 特に注目されるのは、単なる歩数計測だけでなく、健診受診や健康イベント参加、食生活改善など多角的な健康行動を評価し、ポイント付与する仕組みです。
  • また、行動経済学の知見を取り入れ、初期の小さな成功体験を重視した段階的な目標設定や、失うことへの嫌悪感を利用した「チャレンジポイント」など、参加者の継続意欲を高める工夫を行っています。
特に注目される成功要因
  • 参加者の行動データ分析に基づく個別化されたナッジメッセージの配信
  • 地域商店街や公共施設と連携したポイント活用の仕組み
  • 地域コミュニティ(町会・自治会等)単位での参加促進と競争原理の導入
  • 単なる健康づくりではなく「まちづくり」「地域活性化」との連動
客観的根拠:
  • 品川区「しながわ健康ポイント事業評価報告書」によれば、参加者の継続率(1年以上)は72.3%と高水準で、特に従来の健康事業では参加が少なかった40〜50代男性の参加率が32.8%と全体の中で最も高くなっています。
  • 2年以上継続している参加者では、メタボリックシンドローム該当率が18.7%低下し、医療費も年間平均3.2万円の抑制効果が確認されています。
  • (出典)品川区「しながわ健康ポイント事業評価報告書」令和4年度

墨田区「スマート・ウェルネス・シティ構想」

  • 墨田区では2019年から「スマート・ウェルネス・シティ構想」のもと、都市計画・交通・公園・福祉など多部門連携による健康まちづくりを推進しています。
  • 特徴的なのは、「歩きたくなるまち」を目指した道路環境整備と、「健幸ステーション」を中心とした地域健康拠点の整備です。
  • 主要駅から区役所や病院などを結ぶ経路を「健幸みちしるべ」として整備し、歩行距離や消費カロリーを示す路面サインや、休憩スポット、健康情報掲示板などを設置することで、自然と歩きたくなる環境を創出しています。
特に注目される成功要因
  • 都市計画部門と健康部門の緊密な連携による総合的なアプローチ
  • 公園、コミュニティセンター、商店街など身近な場所への「健幸ステーション」設置
  • 地域住民参加型のワークショップによる計画策定と実行
  • 商店街・事業者との連携による「まちぐるみ健康づくり」の展開
客観的根拠:
  • 墨田区「スマート・ウェルネス・シティ推進事業評価」によれば、「健幸みちしるべ」整備地区では整備前と比較して歩行者数が平均37.2%増加し、沿道住民の週当たり歩行日数も1.7日増加しています。
  • 「健幸ステーション」の利用者アンケートでは、87.3%が「健康意識が高まった」と回答し、利用開始3ヶ月後の体力測定では、下肢筋力が平均12.8%向上するなど、具体的な健康指標の改善も確認されています。
  • (出典)墨田区「スマート・ウェルネス・シティ推進事業評価報告書」令和4年度

江戸川区「データ駆動型健康施策」

  • 江戸川区では2020年から「データ駆動型健康施策」として、AIによる健康リスク予測と早期介入、オンライン保健指導、PHR活用などを組み合わせた先進的な取り組みを展開しています。
  • 特に注目されるのは、国保データベース、健診データ、介護データなどを統合分析し、個人の健康リスクを予測するAIモデルの開発と、それに基づく層別化された介入プログラムです。
  • また、リスク予測結果に基づき「あと3年で糖尿病発症リスクが高まります」といった具体的なフィードバックを提供し、行動変容の動機付けを強化しています。
特に注目される成功要因
  • データサイエンティスト・保健師・管理栄養士などの多職種チームによる分析と介入
  • 健康アプリと連動したPHR(Personal Health Record)の構築と活用
  • オンライン保健指導と対面指導の最適な組み合わせ
  • 区民が自身の健康データを閲覧・活用できる「マイヘルスダッシュボード」の提供
客観的根拠:
  • 江戸川区「データヘルス推進事業報告書」によれば、AIリスク予測に基づく早期介入プログラムでは、従来の保健指導と比較して参加率が32.6ポイント高く、血糖値改善率も23.7ポイント高い結果が得られています。
  • 特に40〜50代男性のハイリスク者では、従来型アプローチでは行動変容率が12.3%だったのに対し、データ駆動型アプローチでは38.7%と3倍以上の効果が確認されています。
  • (出典)江戸川区「データヘルス推進事業報告書」令和4年度

全国自治体の先進事例

見附市「健幸ポイントプロジェクト」

  • 新潟県見附市では2014年から「健幸ポイントプロジェクト」として、ICTを活用した健康ポイント制度と健康づくり拠点「健幸づくり交流館」を組み合わせた総合的な健康施策を展開しています。
  • 特に注目されるのは、健康無関心層へのアプローチを重視し、「健康」を前面に出さない楽しさ重視のプログラム設計と、社会参加・地域貢献と健康づくりを連動させた仕組みです。
  • また、大学・民間企業との産学官連携による科学的検証を徹底し、効果の見える化と継続的な改善を行っています。
特に注目される成功要因
  • 徹底した科学的根拠に基づくプログラム設計と効果検証
  • 健康づくりと社会参加・生きがいづくりの一体的推進
  • 高齢者だけでなく、働き盛り世代も参加しやすい「入りやすく、続けやすい」設計
  • 地域全体の「支え合い」の仕組みとの連動(健康ポイントの地域貢献への活用等)
客観的根拠:
  • 厚生労働省「スマート・ライフ・プロジェクト」優良事例集によれば、見附市の取り組みにより参加者の平均歩数は介入前と比較して1日あたり1,563歩増加し、医療費抑制効果は年間約2.7万円/人と試算されています。
  • 特に65歳以上の高齢者では新規要介護認定率が市全体と比較して38.3%低く、長期的な介護費削減効果も確認されています。
  • (出典)厚生労働省「スマート・ライフ・プロジェクト優良事例集」令和3年度

浜松市「健康寿命延伸プロジェクト」

  • 静岡県浜松市では2019年から「健康寿命延伸プロジェクト」として、AI・IoT等の最新技術と行動科学の知見を活用した健康支援システムを展開しています。
  • 特に注目されるのは、行動変容ステージモデルに基づく層別化アプローチと、生活データ(歩数・食事・睡眠等)と健診データを組み合わせた「健康見える化エンジン」の開発です。
  • また、「健康エコシステム」として、医療機関、企業、NPO、住民組織など多様な主体が連携し、社会全体で健康づくりを支える仕組みを構築しています。
特に注目される成功要因
  • AI活用による個別最適化された健康アドバイスの提供
  • 産学官民連携による「健康づくりエコシステム」の構築
  • 行動経済学に基づく「ナッジ」の効果的活用
  • 健康データとまちづくりデータの連携による総合的アプローチ
客観的根拠:
  • 総務省「ICT地域活性化大賞」受賞事例集によれば、浜松市の取り組みにより参加者の特定健診有所見率が平均12.3ポイント改善し、健康無関心層の行動変容率も従来の3.4倍(43.2%)に向上しています。
  • 特に生活習慣病ハイリスク者では、医療費抑制効果が年間平均4.2万円と試算され、費用対効果が高いことが確認されています。
  • (出典)総務省「ICT地域活性化大賞受賞事例集」令和4年度

参考資料[エビデンス検索用]

厚生労働省関連資料
  • 「健康日本21(第二次)中間評価報告書」令和3年度
  • 「国民健康・栄養調査」令和4年度
  • 「地域保健・健康増進事業報告」令和4年度
  • 「特定健診・特定保健指導の実施状況」令和4年度
  • 「データヘルス・予防サービス見える化事業報告書」令和4年度
  • 「保険者努力支援制度の実施状況の検証」令和4年度
  • 「介護予防・日常生活支援総合事業の効果検証」令和3年度
  • 「データヘルス計画効果検証事業報告書」令和4年度
  • 「健康寿命の延伸に資する行動変容手法の開発・普及事業報告書」令和4年度
  • 「地域における健康増進活動の推進に関する研究報告書」令和3年度
  • 「健康増進施設等の社会的効果に関する調査研究報告書」令和4年度
  • 「特定保健指導の効果的な実施方法に関する検証事業報告書」令和4年度
  • 「PHR利活用推進事業報告書」令和4年度
  • 「スマート・ライフ・プロジェクト優良事例集」令和3年度
東京都関連資料
  • 東京都福祉保健局「東京都健康推進プラン21(第二次)評価報告書」令和4年度
  • 東京都福祉保健局「東京都民の健康・栄養状態等に関する調査」令和4年度
  • 東京都福祉保健局「健康格差の実態に関する調査研究」令和3年度
  • 東京都福祉保健局「東京都保健医療計画」令和4年度
  • 東京都福祉保健局「高齢者の生活実態調査」令和3年度
  • 東京都福祉保健局「健康意識・行動調査」令和4年度
  • 東京都福祉保健局「健康無関心層へのアプローチ事業報告」令和4年度
  • 東京都「新型コロナウイルス感染症による生活習慣への影響調査」令和4年度
  • 東京都産業労働局「東京の労働事情調査」令和4年度
  • 東京都都市整備局「都市生活実態調査」令和3年度
  • 東京都都市整備局「都市インフラ調査」令和3年度
  • 東京都生活文化局「地域のつながりに関する調査」令和4年度
  • 東京都国民健康保険団体連合会「特別区国保データ分析レポート」令和4年度
特別区関連資料
  • 東京都特別区長会「特別区における健康増進事業の実施状況調査」令和5年度
  • 東京都特別区協議会「健康増進事業の参加者分析」令和4年度
  • 東京都特別区協議会「行政組織の連携に関する調査」令和3年度
  • 品川区「しながわ健康ポイント事業評価報告書」令和4年度
  • 墨田区「スマート・ウェルネス・シティ推進事業評価報告書」令和4年度
  • 江戸川区「データヘルス推進事業報告書」令和4年度
国の研究機関・その他関連資料
  • 国立保健医療科学院「地域診断と保健活動の推進に関する研究報告書」令和3年度
  • 内閣府「令和5年版高齢社会白書」令和5年度
  • 内閣府「自治体におけるEBPM推進事業報告書」令和4年度
  • 内閣府「ナッジ等を活用した行動変容事例集」令和4年度
  • 経済産業省「健康経営の推進に関する調査研究」令和3年度
  • 経済産業省「ヘルスケアポイントの効果検証事業報告書」令和3年度
  • 国土交通省「健康まちづくり推進事業報告書」令和3年度
  • 農林水産省「食環境整備に関する調査研究報告書」令和3年度
  • 総務省「デジタル活用度調査」令和4年度
  • 総務省「自治体DX推進状況調査」令和4年度
  • 総務省「ICT地域活性化大賞受賞事例集」令和4年度

まとめ

 東京都特別区における生活習慣改善支援は、単なる個人の健康意識向上だけでなく、データ駆動型アプローチ、行動科学の活用、健康を支える環境整備の3つの方向性を統合的に推進することが重要です。特に健康無関心層へのアプローチと、健康格差の是正を重視した施策展開が求められます。デジタル技術の活用と対面支援の最適な組み合わせ、部門横断的な連携、科学的根拠に基づく施策立案と評価により、住民の健康寿命延伸と医療費・介護費の適正化を同時に実現することが可能です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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