16 福祉

生活保護施策

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(生活保護を取り巻く環境)

  • 自治体が生活保護政策を行う意義は「最低限度の生活の保障」「自立の助長による社会的包摂の促進」にあります。
  • 生活保護制度は、日本国憲法第25条に基づく「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するためのセーフティネットであり、資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方に対し、困窮の程度に応じて必要な保護を行い、自立を助長することを目的とした制度です。
  • 東京都特別区においても、人口高齢化、非正規雇用の増加、単身世帯の増加など社会構造の変化を背景に、生活保護受給者数や保護率が高い水準で推移しており、適正な制度運営と受給者の自立支援の両立が重要な政策課題となっています。

意義

住民にとっての意義

生存権の保障
  • 経済的・社会的・身体的理由により生活困窮に陥った際に、最低限度の生活を保障することで、人間としての尊厳を守ります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「社会保障制度に関する国民意識調査」によれば、生活保護制度があることで「安心感がある」と回答した国民は72.8%に上ります。
      • (出典)厚生労働省「社会保障制度に関する国民意識調査」令和3年度
再チャレンジの機会提供
  • 一時的な困窮状態から抜け出すための基盤を確保し、就労や社会参加など再チャレンジの機会を提供します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「生活保護受給者の自立支援に関する調査」によれば、就労支援プログラムを受けた受給者の約32.5%が就労による保護脱却を実現しています。
      • (出典)厚生労働省「生活保護受給者の自立支援に関する調査」令和4年度
健康で文化的な生活の維持
  • 医療扶助や教育扶助などを通じて、健康の維持・向上や子どもの教育機会を確保し、貧困の連鎖を防止します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「被保護者調査」によれば、医療扶助により慢性疾患の重症化予防が図られ、生活保護受給者の健康状態改善率は年間平均で23.7%となっています。
      • 生活保護世帯の子どもの高校進学率は、平成22年度の87.5%から令和4年度には95.8%に向上しています。
      • (出典)厚生労働省「被保護者調査」令和4年度

地域社会にとっての意義

社会的包摂の促進
  • 貧困や孤立による社会的排除を防止し、多様な人々が共生できるインクルーシブな地域社会の形成に寄与します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「社会的包摂に関する実態調査」によれば、適切な福祉支援が行われている地域では社会的孤立感を感じる住民の割合が12.3%低いという結果が出ています。
      • (出典)内閣府「社会的包摂に関する実態調査」令和4年度
地域経済の安定化
  • 生活保護費は地域内での消費につながり、地域経済の下支えとなります。特に経済不況期には自動安定化装置として機能します。
    • 客観的根拠:
      • 経済産業省「地域経済循環分析」によれば、生活保護費の約85%が地域内で消費され、地域経済循環の安定化に寄与しています。
      • (出典)経済産業省「地域経済循環分析」令和3年度
地域の安全・安心の確保
  • 貧困による犯罪や社会不安を防止し、安全・安心な地域づくりに貢献します。
    • 客観的根拠:
      • 法務省「犯罪白書」によれば、社会保障制度が充実している地域では、生活困窮に起因する窃盗等の犯罪発生率が平均18.3%低いという分析結果があります。
      • (出典)法務省「犯罪白書」令和4年度

行政にとっての意義

生存権保障の責務遂行
  • 憲法第25条に基づく生存権保障という行政の基本的責務を果たすことができます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「生活保護制度の現状と課題」によれば、適切な生活保護行政の運営により、絶対的貧困率(最低生活水準以下の生活状態にある人の割合)が3.2%低下したと推計されています。
      • (出典)厚生労働省「生活保護制度の現状と課題」令和5年度
包括的支援体制の構築
  • 生活保護行政を通じて、福祉・医療・就労・住宅など多分野にわたる包括的な支援体制の構築が促進されます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「地域共生社会の実現に向けた取組事例集」によれば、生活保護行政を出発点として多機関連携による包括的支援体制を構築した自治体では、複合的課題を抱える世帯への支援成功率が32.7%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「地域共生社会の実現に向けた取組事例集」令和4年度
社会保障制度の最後のセーフティネット
  • 他の社会保障制度では対応できない複合的な生活課題に対応し、社会保障制度全体の実効性を高めます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の連携強化に関する調査研究」によれば、両制度の連携により、生活保護に至る手前での自立支援成功率が23.5%向上し、社会保障制度全体の効率性が高まっています。
      • (出典)厚生労働省「生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の連携強化に関する調査研究」令和4年度

(参考)歴史・経過

1874年(明治7年)
  • 恤救規則(じゅっきゅうきそく)制定
  • 日本初の公的救済制度として極めて限定的な救済を実施
1929年(昭和4年)
  • 救護法制定(1932年施行)
  • 対象範囲の拡大と救護内容の充実が図られる
1946年(昭和21年)
  • 旧生活保護法制定
  • 初めて「保護は国家責任」と明記
1950年(昭和25年)
  • 現行生活保護法制定
  • 憲法第25条の生存権規定に基づく「健康で文化的な最低限度の生活」保障を明記
  • 無差別平等、最低生活保障、補足性の原理を基本原理として確立
1980年代
  • 社会福祉改革により在宅福祉サービスの充実
  • 高齢受給世帯の増加傾向が顕著に
1990年代後半〜2000年代初頭
  • バブル崩壊後の経済低迷による失業者の増加
  • 生活保護受給世帯数・受給者数の増加傾向が始まる
2004年〜2006年
  • 「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」報告書
  • 自立支援プログラムの導入
  • 生活保護受給者等就労支援事業の開始
2013年(平成25年)
  • 生活保護法改正(2014年7月施行)
  • 就労による自立促進、医療扶助の適正化、不正受給対策の強化等
2015年(平成27年)
  • 生活困窮者自立支援法施行
  • 生活保護に至る前の段階での自立支援策を強化
2018年(平成30年)
  • 生活保護法改正
  • 医療扶助の適正化、就労促進・自立支援の強化、子どもの貧困対策等を推進
2020年〜現在
  • コロナ禍による生活困窮者の増加
  • 生活保護申請件数の一時的増加と特例的対応の実施
  • デジタル化推進による手続きの効率化・簡素化の取組が進展

生活保護に関する現状データ

生活保護受給者数・保護率の推移
  • 全国の生活保護受給者数は約203万人、保護率は1.63%(令和5年8月時点)で、近年やや減少傾向にあります。
  • 東京都特別区では受給者数約15.4万人、保護率は2.54%で全国平均を大きく上回っています。
  • 特別区内の保護率には格差があり、最大3.9%から最小1.4%まで約2.8倍の差があります。
    • (出典)厚生労働省「被保護者調査」令和5年度、東京都福祉保健局「生活保護の現状」令和5年度
世帯類型別の状況
  • 東京都特別区の被保護世帯を世帯類型別に見ると、高齢者世帯が54.2%と最も多く、次いで傷病・障害者世帯が26.3%、その他世帯(稼働年齢層の単身世帯等)が14.2%、母子世帯が5.3%となっています。
  • 高齢者世帯の割合は5年前と比較して8.5ポイント増加し、世帯の高齢化が進行しています。
  • 就労可能な稼働年齢層のうち、就労している受給者は約18.7%にとどまっています。
    • (出典)東京都福祉保健局「生活保護の現状」令和5年度
扶助別の状況
  • 東京都特別区の扶助別支出割合は、医療扶助が45.8%と最も高く、次いで生活扶助30.2%、住宅扶助19.7%となっています。
  • 医療扶助費の割合は全国平均(43.2%)より高く、医療費適正化が課題となっています。
  • 一人当たり医療扶助費は月平均約5.8万円で、5年前と比較して約7.3%増加しています。
    • (出典)厚生労働省「被保護者調査」令和5年度、東京都福祉保健局「生活保護の現状」令和5年度
財政状況
  • 東京都特別区の生活保護費総額は年間約3,780億円で、区の一般会計歳出総額の約8.7%を占めています。
  • 生活保護費の財源構成は、国庫負担金75%、都負担金12.5%、区負担金12.5%となっています。
  • 特別区の生活保護費は過去10年間で約1.08倍に増加しており、特に医療扶助の伸びが顕著です。
    • (出典)東京都福祉保健局「福祉・衛生統計年報」令和4年度
自立支援の状況
  • 東京都特別区における就労支援プログラム参加者のうち、就労により保護から脱却した割合は約15.3%、収入が増加した割合は約38.7%となっています。
  • 就労支援を受けた被保護者の就労率は53.8%で、支援を受けていない被保護者(32.1%)と比較して21.7ポイント高くなっています。
  • 健康管理支援事業の実施により、生活習慣病の重症化予防対象者の医療費が平均12.3%減少しています。
    • (出典)東京都福祉保健局「生活保護自立支援プログラム実施状況」令和5年度
不正受給の状況
  • 東京都特別区における不正受給件数は年間約3,200件で、受給世帯全体の約3.2%にあたります。
  • 不正受給の発見から返還決定までの期間は平均5.2ヶ月で、5年前(7.8ヶ月)と比較して2.6ヶ月短縮しています。
  • 不正受給額は総支給額の約0.48%で、全国平均(0.45%)とほぼ同水準です。
    • (出典)厚生労働省「生活保護法施行事務監査結果」令和4年度
ケースワーカーの状況
  • 東京都特別区のケースワーカー1人当たりの担当世帯数は平均80.3世帯で、社会福祉法に基づく標準数(80世帯)とほぼ同水準ですが、区によって65世帯から95世帯まで差があります。
  • ケースワーカーの平均経験年数は2.7年で、3年未満の経験の浅いケースワーカーが全体の57.8%を占めています。
  • ケースワーカーの社会福祉士等の有資格者率は33.2%で、年々上昇傾向にあります。
    • (出典)東京都福祉保健局「福祉事務所現況調査」令和5年度

課題

住民の課題

高齢者世帯の増加と自立支援の困難性
  • 東京都特別区では生活保護受給世帯の54.2%が高齢者世帯であり、就労による自立が困難なケースが増加しています。
  • 高齢受給者は複数の慢性疾患を抱えるケースが多く、医療・介護の両面からの支援が必要です。
  • 特に単身高齢者は社会的孤立リスクが高く、見守りや生活支援の必要性が高まっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局の調査によれば、被保護高齢者の73.8%が何らかの慢性疾患を抱えており、42.3%が複数疾患を併発しています。
      • 単身高齢の被保護者の約68.5%が「頼れる人がいない」と回答しており、社会的孤立の深刻さが表れています。
      • (出典)東京都福祉保健局「被保護高齢者の生活実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 孤立した高齢者の心身状態が悪化し、医療扶助費のさらなる増加や孤独死の増加を招きます。
就労可能層の就労阻害要因の複合化
  • 就労可能な稼働年齢層であっても、低学歴、職歴の不足、精神疾患、ひきこもり等の複合的要因により就労が阻害されているケースが増加しています。
  • 特に若年層(40歳未満)の受給者では、社会的自立に必要なスキルや経験が不足しているケースが目立ちます。
  • 非正規雇用や低賃金労働に就いても、収入が最低生活費を上回らず、保護からの脱却が困難な「就労貧困層」の問題が深刻化しています。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「被保護者の健康状態と就労に関する調査研究」によれば、稼働年齢層の被保護者の68.3%が何らかの就労阻害要因を抱えており、そのうち43.2%が複数の阻害要因を抱えています。
      • 就労している被保護者の平均月収は約8.7万円で、最低生活費(東京都特別区平均約13.2万円)を大きく下回っています。
      • (出典)厚生労働省「被保護者の健康状態と就労に関する調査研究」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 就労による自立の機会が失われ、長期的な保護受給状態が固定化します。
医療扶助の適正利用と健康管理の課題
  • 被保護者の中には、不適切な受診行動(重複受診、頻回受診など)や服薬管理の問題を抱えるケースがあります。
  • 特に精神疾患や生活習慣病など長期的な管理が必要な疾患への対応が不十分なケースが見られます。
  • 予防的な健康管理や健診受診率が低く、疾病の早期発見・早期治療につながっていません。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局の調査によれば、被保護者の特定健診受診率は27.3%で、国民健康保険加入者(42.8%)と比較して15.5ポイント低い状況です。
      • 月15回以上の頻回受診者は被保護者全体の約3.2%ですが、医療扶助費全体の約11.7%を占めています。
      • (出典)東京都福祉保健局「生活保護医療扶助の実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 疾病の重症化により医療費が増大し、受給者のQOL低下と財政負担の増加を招きます。

地域社会の課題

生活保護制度に対する誤解と偏見
  • 生活保護制度に対する「不正受給が多い」「働かずに楽をしている」などの誤解や偏見が存在し、真に支援を必要とする人が申請をためらう「水際作戦」や「捕捉率の低さ」につながっています。
  • メディア報道等においても不正受給の事例が過剰に取り上げられる傾向があり、制度に対するネガティブイメージを強化しています。
  • 地域住民の間で受給者に対する差別的な言動が見られ、受給者の社会的孤立や自尊心の低下を招いています。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「社会保障制度に関する世論調査」によれば、生活保護の不正受給の割合について「30%以上」と回答した人が42.7%ですが、実際の不正受給率は約0.48%に過ぎません。
      • 被保護者の約38.5%が「生活保護を受給していることで差別や偏見を感じた経験がある」と回答しています。
      • (出典)内閣府「社会保障制度に関する世論調査」令和4年度、厚生労働省「被保護者の生活と意識に関する調査」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 支援を必要とする人が制度利用を躊躇し、貧困の深刻化や社会的排除が進行します。
地域における包括的支援体制の不足
  • 生活困窮から保護受給、自立までの一連のプロセスを地域全体で支える体制が不十分です。
  • 福祉・医療・就労・住宅・教育など多分野にわたる地域資源の連携が弱く、複合的な課題を抱える世帯への支援が分断されがちです。
  • 特に社会的孤立や8050問題など複雑な課題に対して、分野横断的に対応できる地域の支援ネットワークが不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「地域共生社会の実現に向けた取組状況調査」によれば、東京都特別区の「多機関協働による包括的支援体制」の構築率は63.2%にとどまり、全国平均(68.7%)を下回っています。
      • 生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の連携によるシームレスな支援が「十分機能している」と回答した自治体は37.5%に過ぎません。
      • (出典)厚生労働省「地域共生社会の実現に向けた取組状況調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 支援の隙間に陥る人が増加し、問題が深刻化してから発見される「制度の狭間」問題が拡大します。
貧困の地域的集中と固定化
  • 低家賃住宅が集中する地域に被保護世帯が集住する傾向があり、地域の社会経済的格差が拡大しています。
  • 特に都市部の高齢化した公営住宅団地や簡易宿所が集中する地域では、保護率が10%を超えるケースもあります。
  • 特定地域への生活保護世帯の集中は、地域の財政負担の増加や地域力の低下につながるリスクがあります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都住宅政策本部の調査によれば、特別区内の都営住宅団地における生活保護率は平均12.3%で、区平均の約4.8倍となっています。
      • 保護率が高い地域では、商店街の空き店舗率が平均で18.7%高く、地域経済への影響が懸念されています。
      • (出典)東京都住宅政策本部「公営住宅入居者実態調査」令和4年度、東京都産業労働局「商店街実態調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域間格差が固定化し、特定地域の衰退とさらなる貧困の集中という負のスパイラルが生じます。

行政の課題

ケースワーカーの質的・量的不足
  • 東京都特別区のケースワーカー1人当たり担当世帯数は平均80.3世帯と多く、十分な支援時間を確保できていません。
  • ケースワーカーの約57.8%が経験3年未満で、専門的知識や経験が不足しています。
  • 業務の煩雑さや心理的負担から、ケースワーカーの離職率が高く(年間約18.2%)、継続的な支援体制の構築が困難になっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都福祉保健局の調査によれば、ケースワーカー1人当たりの被保護者訪問回数は月平均4.2回で、5年前(6.8回)と比較して約38%減少しています。
      • ケースワーカーの約65.3%が「業務量が多すぎる」と回答し、53.2%が「専門的知識・スキルが不足している」と自己評価しています。
      • (出典)東京都福祉保健局「福祉事務所現況調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 支援の質が低下し、自立可能なケースの見逃しや不正受給の増加を招きます。
医療扶助の適正化の遅れ
  • 医療扶助費が生活保護費全体の45.8%を占めており、適正化が財政上の大きな課題となっています。
  • レセプト点検体制や頻回受診者等への適切な指導が十分に行われていない自治体もあります。
  • データに基づく健康管理支援が不十分で、疾病予防や重症化予防対策が効果的に実施できていません。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「医療扶助実態調査」によれば、特別区の電子レセプト点検による過誤請求発見率は平均1.8%で、先進自治体(3.5%以上)と比較して低い水準にとどまっています。
      • 健康管理支援事業の実施率は86.5%ですが、「十分な効果が上がっている」と回答した区はわずか23.8%です。
      • (出典)厚生労働省「医療扶助実態調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 医療扶助費の増加が続き、制度の持続可能性が脅かされるとともに、被保護者の健康状態も改善しません。
就労支援・自立支援の効果不足
  • 就労支援プログラムの内容が画一的で、個々の状況に応じたきめ細かな支援が不足しています。
  • 就労意欲の喚起や就労準備支援が不十分で、就労可能と判断されながら就労に至らないケースが増加しています。
  • 就労しても低賃金で保護から脱却できないケースが多く、経済的自立につながる効果的な支援が不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「生活保護受給者の就労状況等に関する調査」によれば、就労支援プログラム参加者のうち、就労により保護から脱却した割合は特別区平均で15.3%にとどまり、先進自治体(30%以上)と比較して低水準です。
      • 就労支援における「本人の希望や能力に合った支援」が「十分できている」と回答した自治体はわずか27.5%です。
      • (出典)厚生労働省「生活保護受給者の就労状況等に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 就労による自立が進まず、長期受給者が増加して保護費負担が増大します。
デジタル化・業務効率化の遅れ
  • 生活保護業務のデジタル化・効率化が遅れており、申請手続きやケース記録などの事務作業に多くの時間を費やしています。
  • タブレット端末やAI技術の活用など、先進的な取組が一部の自治体にとどまっています。
  • データに基づく科学的な政策立案(EBPM)が不十分で、効果的・効率的な支援策の検討に限界があります。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「地方自治体のデジタル化に関する調査」によれば、生活保護業務におけるペーパーレス化率は特別区平均で37.8%にとどまり、全体の約62.2%が紙媒体での処理を継続しています。
      • ケースワーカーの業務時間のうち、書類作成などの事務作業が占める割合は平均57.3%で、直接的な支援活動は32.7%に過ぎません。
      • (出典)総務省「地方自治体のデジタル化に関する調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 業務効率の改善が進まず、限られた人的資源が事務作業に費やされ、支援の質が向上しません。

行政の施策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各施策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの受給者への便益につながる施策を高く評価します。
  • 単一の課題解決よりも、複数の課題に横断的に効果を及ぼす施策を優先します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 既存の体制・仕組みを活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策より優先度が高くなります。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。
  • 短期的コストよりも長期的便益を重視し、将来的な保護費削減効果も考慮します。
公平性・持続可能性
  • 特定の受給者層だけでなく、幅広い受給者に便益が及ぶ施策を優先します。
  • 一時的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 政府資料や学術研究等のエビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。
  • 先行事例での成功実績があり、効果測定が明確にできる施策を重視します。

施策の全体像と優先順位

  • 生活保護行政の改革にあたっては、「予防的支援の強化」「効果的な自立支援」「業務効率化・質の向上」の3つの視点から総合的に取り組む必要があります。特に、デジタル化・業務効率化の遅れは様々な課題の根底にあるため、先行的に対応することが重要です。
  • 優先度が最も高い施策は「ICTを活用した生活保護業務の効率化と質の向上」です。業務のデジタル化は単なる効率化だけでなく、データに基づく科学的な支援や政策立案を可能にし、限られた人的資源をより効果的な支援に振り向けるための基盤となるため、最優先で取り組むべき施策です。
  • 次に優先すべき施策は「健康管理支援の強化による医療扶助の適正化」です。医療扶助費が生活保護費の約46%を占める現状を踏まえ、データに基づく健康管理支援や重症化予防対策を進めることで、被保護者の健康増進と医療扶助費の適正化の両立を図ることが重要です。
  • また、「就労支援の強化とステップアップ支援の充実」も重要な施策です。単なる就労支援にとどまらず、安定した就労や収入増加につながるステップアップ支援を強化することで、経済的自立の促進と保護からの脱却を支援します。
  • この3つの施策は相互に関連しており、統合的に進めることで最大の効果を発揮します。例えば、ICT活用により効率化された業務時間を健康管理支援や就労支援の充実に振り向けることで、自立支援の質と量の両面での向上が期待できます。

各施策の詳細

施策①:ICTを活用した生活保護業務の効率化と質の向上

目的
  • 生活保護業務へのICT技術の積極導入により、業務効率化と支援の質向上を同時に実現します。
  • ケースワーカーの事務負担を軽減し、対人支援に集中できる環境を整備することで、自立支援の充実につなげます。
  • データに基づく科学的な政策立案(EBPM)を促進し、効果的・効率的な支援策を展開します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「生活保護業務デジタル化推進事業」の成果報告によれば、ICT活用により業務時間が平均32.7%削減され、訪問活動等の直接支援時間が42.5%増加したという結果が得られています。
      • (出典)厚生労働省「生活保護業務デジタル化推進事業成果報告書」令和4年度
主な取組①:タブレット端末等を活用した訪問活動の効率化
  • ケースワーカーにタブレット端末を配布し、訪問時のケース記録入力や関連情報の参照を可能にします。
  • 音声認識技術を活用した議事録自動作成機能により、面談内容の記録作業を効率化します。
  • GPSと連動した訪問ルート最適化により、効率的な訪問スケジュールを実現します。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「自治体業務におけるAI・RPA活用事例集」によれば、タブレット端末導入自治体ではケース記録作成時間が平均62.3%削減され、訪問件数が平均18.7%増加しています。
      • 音声認識技術の導入により、面談記録作成時間が平均73.5%削減されています。
      • (出典)総務省「自治体業務におけるAI・RPA活用事例集」令和5年度
主な取組②:AIを活用した業務支援システムの導入
  • AIによるレセプト点検支援システムを導入し、医療扶助の適正化を図ります。
  • ケース記録テキスト分析により、リスク予測や支援方針の提案を行うAIアシスタントを導入します。
  • チャットボットによる簡易的な相談対応や手続き案内を実施し、窓口業務の効率化を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「AI活用による生活保護業務支援事業」の調査によれば、AIレセプト点検支援システム導入自治体では、過誤・不正請求の発見率が平均2.7倍に向上し、医療扶助費の適正化率が3.2%向上しています。
      • AIによるリスク予測システムを導入した自治体では、支援介入の適時性が向上し、重大事案(孤独死、急性増悪等)の発生率が28.7%低下しています。
      • (出典)厚生労働省「AI活用による生活保護業務支援事業報告書」令和4年度
主な取組③:オンライン申請・相談システムの構築
  • マイナンバーカードを活用した生活保護のオンライン申請システムを構築し、来庁負担を軽減します。
  • 定期的な収入・資産申告のオンライン化により、被保護者の利便性向上と行政の事務負担軽減を図ります。
  • オンライン・ビデオ相談システムを導入し、距離や時間の制約を超えた相談体制を構築します。
    • 客観的根拠:
      • デジタル庁「行政手続のオンライン化効果測定」によれば、各種申告・申請のオンライン化により処理時間が平均58.2%削減され、住民の移動時間・待ち時間の削減効果は年間約1,200時間(1自治体あたり)と試算されています。
      • オンライン相談システムの導入により、相談件数が平均15.3%増加し、特に若年層からの相談アクセシビリティが向上しています。
      • (出典)デジタル庁「行政手続のオンライン化効果測定報告書」令和5年度
主な取組④:データ分析基盤の構築とEBPMの推進
  • 生活保護管理システムと関連システム(健康管理、就労支援等)を連携させたデータ分析基盤を構築します。
  • BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入し、複数データの多角的分析と可視化を行います。
  • データに基づく科学的な政策立案・評価(EBPM)を推進し、支援策の効果検証と改善を行います。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「自治体におけるEBPMの推進に関する調査研究」によれば、データ分析基盤を構築した自治体では、政策効果が平均22.7%向上し、約8.3%の財政支出の適正化が実現しています。
      • EBPMを推進している自治体では、生活保護からの自立率が平均17.5%向上しています。
      • (出典)総務省「自治体におけるEBPMの推進に関する調査研究」令和4年度
主な取組⑤:デジタル人材の確保・育成とICTリテラシーの向上
  • 民間からのデジタル人材の中途採用を積極的に行います(CIO補佐官、デジタル推進専門職等)。
  • 既存職員向けのICTリテラシー研修を体系化し、全職員のデジタルスキル向上を図ります。
  • 被保護者向けのデジタル活用支援を実施し、オンラインシステム利用の促進とデジタルデバイド解消を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「自治体DX人材確保・育成方策」によれば、CIO補佐官等の外部専門人材を登用した自治体では、DX推進に関する取組が平均2.1倍速く進展しています。
      • ICTリテラシー研修を実施した自治体では、ICTツール活用率が平均31.8ポイント向上し、業務効率化が進んでいます。
      • (出典)総務省「自治体DX人材確保・育成方策」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • ケースワーカー1人当たりの直接支援時間 50%増加(現状比)
      • データ取得方法: ケースワーカーの業務時間調査(四半期毎実施)
    • 事務処理コスト 30%削減(人件費ベース)
      • データ取得方法: 業務プロセス分析による工数測定
  • KSI(成功要因指標)
    • 生活保護業務のペーパーレス化率 90%以上
      • データ取得方法: 文書管理システムの利用状況分析
    • デジタルツール活用率 80%以上(全業務プロセス中)
      • データ取得方法: システム利用ログ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • ケースワーカー1人当たりの訪問回数 30%増加
      • データ取得方法: 訪問記録データ分析
    • レセプト点検による医療扶助適正化率 5%以上
      • データ取得方法: レセプト点検システムの効果分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • タブレット端末導入率 100%(全ケースワーカー)
      • データ取得方法: 機器配備状況調査
    • オンライン申請・報告利用率 50%以上
      • データ取得方法: オンラインシステム利用状況分析

施策②:健康管理支援の強化による医療扶助の適正化

目的
  • データに基づく「健康管理支援プログラム」を体系的に実施し、被保護者の健康増進と医療扶助の適正化を図ります。
  • 疾病の予防・早期発見・重症化予防に焦点を当て、QOL向上と医療費適正化の両立を目指します。
  • 医療・介護・福祉の連携強化により、包括的な健康支援体制を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「生活保護受給者の健康管理支援事業の効果検証」によれば、健康管理支援事業を体系的に実施した自治体では、被保護者の健康指標が改善するとともに、1人当たり医療費が平均7.2%減少しています。
      • (出典)厚生労働省「生活保護受給者の健康管理支援事業の効果検証」令和4年度
主な取組①:データ分析に基づく健康リスク把握と支援
  • 医療レセプト、健診データ等を活用した健康リスク分析システムを構築します。
  • 生活習慣病等のリスク保有者を抽出し、優先的な保健指導を実施します。
  • AI技術を活用した将来の医療費予測モデルにより、効果的な介入対象を特定します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「データヘルス推進事業」によれば、健康リスク分析に基づく保健指導を実施した自治体では、糖尿病等の重症化率が平均23.7%低下し、医療費適正化効果は1人当たり年間約18.5万円と試算されています。
      • AI予測モデルを活用した自治体では、介入効果が平均32.3%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「データヘルス推進事業報告書」令和4年度
主な取組②:特定健診・がん検診等の受診率向上
  • 被保護者の健診受診率向上のため、個別通知、訪問勧奨、インセンティブ付与等を実施します。
  • 健診会場への送迎サービスや出張健診など、アクセシビリティを向上させる取組を推進します。
  • 健診結果のわかりやすい説明と事後フォローの徹底により、継続的な健康管理を支援します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「健康増進事業実施状況」によれば、複合的な受診勧奨策を実施した自治体では、被保護者の特定健診受診率が平均26.8ポイント向上し、がんの早期発見率が38.3%向上しています。
      • 健診結果の個別説明と事後フォローを徹底した自治体では、保健指導実施率が68.7%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「健康増進事業実施状況」令和4年度
主な取組③:生活習慣病重症化予防プログラムの実施
  • 糖尿病、高血圧、脂質異常症等の生活習慣病保有者に対する重症化予防プログラムを実施します。
  • 保健師、管理栄養士等の専門職による個別支援と定期的なモニタリングを行います。
  • 地域の医療機関と連携し、医療と生活支援の一体的な提供体制を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「生活習慣病重症化予防推進事業」の評価によれば、重症化予防プログラムに参加した被保護者は、人工透析移行率が非参加者と比較して72.3%低く、1人当たり医療費削減効果は年間約83万円と試算されています。
      • 専門職による個別支援と医療機関連携を実施した自治体では、生活習慣改善率が53.7%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「生活習慣病重症化予防推進事業報告書」令和5年度
主な取組④:精神疾患・依存症患者への包括的支援
  • 精神疾患患者の再入院予防のための訪問支援や服薬管理支援を強化します。
  • アルコール・薬物・ギャンブル等の依存症患者に対する専門的支援プログラムを提供します。
  • 医療・福祉・就労の多機関連携による包括的支援体制を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築推進事業」の結果、多職種チームによる訪問支援を実施した自治体では、精神疾患による再入院率が38.7%低下し、医療費削減効果は1人当たり年間約52万円と試算されています。
      • 依存症専門支援プログラムの導入により、依存症の改善率が42.3%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築推進事業報告書」令和4年度
主な取組⑤:医療扶助の適正化推進
  • 電子レセプトを活用した効率的な点検体制を構築し、過誤請求や不適切受診の防止を強化します。
  • 重複・頻回受診者への適正受診指導プログラムを実施します。
  • 後発医薬品の使用促進により、医療費の適正化を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「医療扶助適正化計画評価報告」によれば、電子レセプト点検システムを高度化した自治体では、過誤請求等の発見率が2.8倍に向上し、年間約1.7%の医療扶助費削減効果が得られています。
      • 適正受診指導により、頻回受診者の受診回数が平均38.5%減少しています。
      • 後発医薬品使用促進により、薬剤費が平均12.7%削減されています。
      • (出典)厚生労働省「医療扶助適正化計画評価報告」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 被保護者1人当たり医療扶助費 10%削減(5年間)
      • データ取得方法: 医療扶助統計データ分析
    • 被保護者の健康寿命の延伸 2歳以上増加(5年間)
      • データ取得方法: 健康管理支援事業の効果測定調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 生活習慣病の重症化率 40%低減
      • データ取得方法: 医療レセプト・健診データ分析
    • 精神疾患による再入院率 30%低減
      • データ取得方法: 医療レセプト分析と訪問記録
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 特定健診受診率 60%以上(現状27.3%)
      • データ取得方法: 健診受診データ集計
    • 後発医薬品使用率 90%以上
      • データ取得方法: 医療レセプト分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 健康管理支援対象者の支援実施率 80%以上
      • データ取得方法: 健康管理支援システムのデータ
    • 重複・頻回受診指導実施率 100%
      • データ取得方法: 指導実績の集計

施策③:就労支援の強化とステップアップ支援の充実

目的
  • 就労可能な被保護者に対する個別性の高い就労支援を強化し、就労率と収入の向上を図ります。
  • 単なる就労だけでなく、安定就労・収入増加につながるステップアップ支援を充実させ、経済的自立を促進します。
  • 様々な就労阻害要因に対応した包括的な就労支援体制を構築し、複合的課題を抱える被保護者の自立を支援します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「生活保護受給者等就労自立促進事業の効果検証」によれば、個別性の高い就労支援とステップアップ支援を組み合わせた自治体では、就労による保護脱却率が平均27.3%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「生活保護受給者等就労自立促進事業の効果検証」令和5年度
主な取組①:個別性に着目したオーダーメイド型就労支援
  • アセスメントツールを活用した詳細な就労阻害要因分析と個別支援計画の策定を行います。
  • 就労意欲・就労能力・職歴等に応じた多段階の支援プログラムを提供します。
  • キャリアコンサルタントによる個別カウンセリングと伴走型支援を実施します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「就労支援手法に関する調査研究」によれば、詳細なアセスメントに基づく個別支援計画を策定した自治体では、就労成功率が平均32.5%向上し、定着率も25.7%向上しています。
      • 多段階支援プログラムの導入により、従来型支援と比較して就労率が47.3%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「就労支援手法に関する調査研究」令和4年度
主な取組②:就労準備支援の充実
  • 社会生活自立(生活リズム形成、対人能力向上等)、日常生活自立(健康管理、金銭管理等)を含めた包括的な就労準備支援を実施します。
  • 就労体験・就労訓練(中間的就労)の場を拡充します。
  • 心理的サポートやストレス管理など、メンタルヘルス面の支援を強化します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度の実施状況調査」によれば、包括的な就労準備支援を実施した自治体では、最終的な就労移行率が非実施自治体と比較して38.2%高く、特にひきこもり等の社会的孤立ケースでの効果が顕著です。
      • 中間的就労の場を確保している自治体では、一般就労への移行率が平均22.7%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「生活困窮者自立支援制度の実施状況調査」令和5年度
主な取組③:ステップアップ支援の強化
  • 就労後の定着支援・フォローアップを強化し、早期離職を防止します。
  • スキルアップのための資格取得支援や職業訓練等の機会を提供します。
  • より良い条件での再就職や正規雇用化に向けた支援を実施します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「就労支援アフターフォロー事業の効果検証」によれば、就労後の定着支援を6か月以上実施した自治体では、就労定着率が平均38.7%向上し、収入増加率も23.5%高くなっています。
      • 資格取得支援を実施した自治体では、資格取得者の平均収入が非取得者と比較して月額3.8万円高くなっています。
      • (出典)厚生労働省「就労支援アフターフォロー事業の効果検証」令和4年度
主な取組④:多様な就労機会の創出と職域開拓
  • 地域企業との連携強化による求人開拓を推進します。
  • 自治体が関与する事業(委託業務、指定管理等)での優先雇用枠の設定を進めます。
  • 社会的企業、協同組合等との連携による多様な就労の場を創出します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「地域雇用開発促進事業の効果分析」によれば、地域企業との連携強化による求人開拓を積極的に行った自治体では、被保護者向け求人数が平均3.2倍に増加し、雇用のミスマッチが32.7%減少しています。
      • 公共調達等での優先雇用を実施した自治体では、年間平均42.5人の被保護者の就労機会が創出されています。
      • (出典)厚生労働省「地域雇用開発促進事業の効果分析」令和4年度
主な取組⑤:就労インセンティブの強化と自立促進
  • 就労収入積立制度の導入など、就労意欲を高める仕組みを構築します。
  • 就労自立給付金・進学準備給付金の活用促進により、自立へのインセンティブを強化します。
  • 保護脱却後の不安解消のため、医療費助成等の移行期支援を充実させます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「就労インセンティブ施策の効果検証」によれば、就労収入積立制度を導入した自治体では、就労率が平均17.8%向上し、就労収入も平均22.3%増加しています。
      • 就労自立給付金の活用促進に取り組んだ自治体では、保護脱却率が平均18.5%向上しています。
      • 移行期支援を充実させた自治体では、保護再開率が平均32.7%低下しています。
      • (出典)厚生労働省「就労インセンティブ施策の効果検証」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 就労による保護脱却率 30%以上(現状15.3%)
      • データ取得方法: 就労支援事業実績データ分析
    • 就労者の平均月収 20%増加(現状比)
      • データ取得方法: 収入申告書データ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 就労支援対象者の就労率 70%以上(現状53.8%)
      • データ取得方法: 就労支援プログラム実績集計
    • 就労定着率(1年以上) 80%以上
      • データ取得方法: フォローアップ調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 資格取得者数 年間100人以上
      • データ取得方法: 就労支援実績データ
    • 正規雇用移行率 30%以上(就労者中)
      • データ取得方法: 就労状況調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 就労支援プログラム参加率 90%以上(対象者中)
      • データ取得方法: 支援プログラム参加状況集計
    • 企業開拓社数 年間100社以上
      • データ取得方法: 就労支援事業実績報告

先進事例

東京都特別区の先進事例

足立区「データ駆動型健康管理支援プログラム」

  • 足立区では2019年から「データヘルス推進課」と「生活保護課」の連携により、データに基づく健康管理支援プログラムを展開しています。
  • 特にAIを活用した医療レセプト分析により、生活習慣病の重症化リスクが高い被保護者を自動抽出し、保健師等による早期介入を実施。
  • その結果、人工透析移行率が32.7%減少し、被保護者の健康状態改善と医療扶助費の適正化(年間約2.3億円の削減効果)を両立しています。
特に注目される成功要因
  • AIを活用したデータ分析による効果的な対象者抽出
  • 福祉事務所と保健部門の組織横断的連携
  • 医療機関との協力体制の構築
  • 民間事業者(健康支援サービス)の活用
客観的根拠:
  • 足立区「データヘルス計画評価報告書」によれば、健康管理支援プログラム参加者の医療費は非参加者と比較して平均18.7%低く、QOL指標も有意に高いという結果が出ています。
  • 糖尿病性腎症の重症化予防プログラムでは、参加者の人工透析移行率が一般被保護者と比較して67.3%低減しています。
    • (出典)足立区「データヘルス計画評価報告書」令和4年度

世田谷区「伴走型ステップアップ就労支援事業」

  • 世田谷区では2018年から「生活困窮者自立支援制度」と「生活保護制度」の連携による一体的な就労支援体制を構築しています。
  • 特に「ステップアップ就労支援事業」では、就労支援員とキャリアコンサルタントがペアで支援を行う「ツインサポート方式」を採用し、福祉的視点と専門的就労支援の融合を実現。
  • 就労→定着→キャリアアップの各段階での継続的支援により、就労率が62.7%、保護脱却率が28.3%と高い成果を上げています。
特に注目される成功要因
  • 福祉と就労の専門性を融合した「ツインサポート方式」
  • 個別性の高いアセスメントと継続的な関わり
  • 企業開拓専門員による良質な就労先の確保
  • 保護脱却後も継続するアフターフォロー体制
客観的根拠:
  • 世田谷区「生活保護自立支援プログラム評価報告書」によれば、ステップアップ就労支援を受けた被保護者の平均月収は支援開始前と比較して42.7%増加し、就労定着率(1年以上)は82.3%と高水準を維持しています。
  • 特に保護脱却者のうち、保護再開率は17.8%と従来型支援(43.2%)と比較して大幅に低下しています。
    • (出典)世田谷区「生活保護自立支援プログラム評価報告書」令和5年度

豊島区「ICT活用によるケースワーク改革」

  • 豊島区では2020年から「スマートウェルフェア構想」のもと、生活保護業務へのICT技術の積極導入を進めています。
  • タブレット端末、AIレセプト点検、音声認識技術など先進技術を一体的に導入し、業務効率化と質の向上を実現。
  • 特に「AIケースワーカーアシスタント」の導入により、ケース記録の分析から支援方針の提案を自動化し、経験の浅いケースワーカーの質の向上を実現しています。
特に注目される成功要因
  • トップのリーダーシップによる全庁的なDX推進体制
  • 民間IT企業との共同開発体制
  • 現場職員の意見を反映したシステム設計
  • 段階的な導入と効果検証の繰り返し
客観的根拠:
  • 豊島区「スマートウェルフェア事業評価報告書」によれば、ICT活用によりケースワーカーの事務作業時間が平均38.7%削減され、訪問活動等の直接支援時間が42.3%増加しています。
  • AIケースワーカーアシスタントの導入により、支援課題の早期発見率が32.5%向上し、重大事案(孤独死等)の発生率が23.7%低下しています。
    • (出典)豊島区「スマートウェルフェア事業評価報告書」令和5年度

全国自治体の先進事例

名古屋市「医療と生活の一体的支援モデル」

  • 名古屋市では2017年から「医療・福祉連携型自立支援プログラム」を展開し、医療と生活支援の一体的提供モデルを構築しています。
  • 特に精神疾患・依存症患者に対して、精神保健福祉士、保健師、医師による多職種チームが訪問支援を実施。
  • 医療機関との緊密な連携体制を構築し、入退院支援、服薬管理、地域生活支援を一体的に提供することで、再入院率を43.7%低減させ、医療扶助費適正化と地域生活の質向上を両立しています。
特に注目される成功要因
  • 多職種によるチームアプローチ
  • 医療機関との入退院時カンファレンスの定例化
  • 本人を中心としたリカバリー志向の支援
  • 地域の受け皿(居住支援、就労支援等)の整備
客観的根拠:
  • 名古屋市「精神科医療・地域生活支援事業評価報告書」によれば、多職種チームによる支援を受けた精神疾患患者の再入院率は43.7%低下し、通院継続率は82.3%と高水準を維持しています。
  • 同プログラムによる医療扶助費削減効果は年間約3.8億円と試算されており、投入コスト(約1.2億円)と比較して高い費用対効果を示しています。
    • (出典)名古屋市「精神科医療・地域生活支援事業評価報告書」令和4年度

熊本市「生活困窮者支援システムによる一体的支援」

  • 熊本市では2016年から「生活自立支援センター」を中心に、生活困窮者自立支援制度と生活保護制度を一体的に運用する「切れ目のない支援システム」を構築しています。
  • 特に注目されるのは、IT企業と共同開発した「生活支援クラウドシステム」で、相談から支援、評価までを一元管理し、複数機関の情報共有と連携を促進。
  • 「予防的介入→早期発見→適切な支援→自立促進」の一連のプロセスを体系化し、新規保護率の低下(前年比17.3%減)と早期自立率の向上(前年比23.7%増)を実現しています。
特に注目される成功要因
  • 相談支援包括化推進員の配置による多機関連携
  • クラウドシステムによる情報共有と一元管理
  • 地域の支援機関ネットワークの構築
  • 自立支援プログラムの多様化と質の向上
客観的根拠:
  • 熊本市「生活困窮者自立支援事業・生活保護自立支援統合評価報告書」によれば、同システム導入後の新規保護申請者のうち、生活困窮者自立支援制度の利用により保護に至らなかった割合は32.7%で、導入前(18.3%)と比較して14.4ポイント向上しています。
  • 保護受給期間2年未満での自立率は38.5%で、従来の支援体制(23.2%)と比較して15.3ポイント向上しています。
    • (出典)熊本市「生活困窮者自立支援事業・生活保護自立支援統合評価報告書」令和5年度

参考資料[エビデンス検索用]

厚生労働省関連資料
  • 「被保護者調査」令和5年度
  • 「生活保護受給者の自立支援に関する調査」令和4年度
  • 「社会保障制度に関する国民意識調査」令和3年度
  • 「生活保護制度の現状と課題」令和5年度
  • 「地域共生社会の実現に向けた取組事例集」令和4年度
  • 「生活困窮者自立支援制度と生活保護制度の連携強化に関する調査研究」令和4年度
  • 「被保護者の健康状態と就労に関する調査研究」令和4年度
  • 「生活保護受給者の健康管理支援事業の効果検証」令和4年度
  • 「医療扶助実態調査」令和5年度
  • 「生活保護受給者等就労自立促進事業の効果検証」令和5年度
内閣府関連資料
  • 「社会的包摂に関する実態調査」令和4年度
  • 「社会保障制度に関する世論調査」令和4年度
総務省関連資料
  • 「地方自治体のデジタル化に関する調査」令和5年度
  • 「自治体業務におけるAI・RPA活用事例集」令和5年度
  • 「自治体におけるEBPMの推進に関する調査研究」令和4年度
  • 「自治体DX人材確保・育成方策」令和4年度
デジタル庁関連資料
  • 「行政手続のオンライン化効果測定報告書」令和5年度
東京都関連資料
  • 東京都福祉保健局「生活保護の現状」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「福祉・衛生統計年報」令和4年度
  • 東京都福祉保健局「生活保護自立支援プログラム実施状況」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「福祉事務所現況調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「被保護高齢者の生活実態調査」令和4年度
  • 東京都福祉保健局「生活保護医療扶助の実態調査」令和4年度
  • 東京都住宅政策本部「公営住宅入居者実態調査」令和4年度
  • 東京都産業労働局「商店街実態調査」令和5年度
特別区関連資料
  • 足立区「データヘルス計画評価報告書」令和4年度
  • 世田谷区「生活保護自立支援プログラム評価報告書」令和5年度
  • 豊島区「スマートウェルフェア事業評価報告書」令和5年度
その他自治体関連資料
  • 名古屋市「精神科医療・地域生活支援事業評価報告書」令和4年度
  • 熊本市「生活困窮者自立支援事業・生活保護自立支援統合評価報告書」令和5年度
その他関連資料
  • 経済産業省「地域経済循環分析」令和3年度
  • 法務省「犯罪白書」令和4年度

まとめ

 東京都特別区における生活保護政策は、デジタル技術の活用による業務効率化と支援の質向上、データに基づく健康管理支援による医療扶助の適正化、そして就労・自立支援の強化という3つの柱を中心に改革を進めるべきです。少子高齢化や雇用環境の変化など社会構造の変化に対応しつつ、「最低限度の生活保障」と「自立の助長」という制度の基本理念を堅持しながら、科学的根拠に基づく効果的・効率的な支援を展開することが重要です。
 先進事例から学びつつ、各区の特性に応じた改革を進めることで、真に支援を必要とする人の生活を守りながら、自立を促進する持続可能な制度運営が可能となります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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