17 健康・保健

特定保健指導

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要

  • 自治体が特定保健指導を行う意義は「生活習慣病の発症・重症化予防による住民の健康増進」「医療費適正化による持続可能な医療保険制度の維持」にあります。
  • 特定保健指導とは、特定健康診査(特定健診)の結果に基づき、生活習慣病の発症リスクが高い方に対して、専門家(保健師、管理栄養士等)が生活習慣の改善に向けた支援を行うプログラムです。
  • メタボリックシンドロームの該当者・予備群を減少させることで、将来の生活習慣病発症リスクを低減し、医療費の適正化を図ることを目的としています。

意義

住民にとっての意義

健康寿命の延伸
  • 生活習慣の改善により、糖尿病や高血圧などの生活習慣病の発症・重症化を予防することで、健康に過ごせる期間(健康寿命)が延伸します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「特定健診・特定保健指導の効果検証に関する調査・分析結果」によれば、特定保健指導を継続的に受けた者は、未受診者と比較して4年後の糖尿病発症リスクが約29%低下しています。
    • (出典)厚生労働省「特定健診・特定保健指導の効果検証に関する調査・分析結果」令和5年度
医療費負担の軽減
  • 生活習慣病の発症予防により、長期的な医療費負担の軽減が期待できます。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「医療経済実態調査」によれば、糖尿病患者の年間医療費は平均約38万円で、一般の方と比較して約2.3倍高くなっています。
    • 特定保健指導を継続的に受けた者は、未受診者と比較して5年後の一人当たり医療費が年間約3.2万円低いという結果が出ています。
    • (出典)厚生労働省「特定健診・特定保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループ最終取りまとめ」令和4年度
QOL(生活の質)向上
  • 体重減少や生活習慣の改善により、日常生活の活動性が向上し、全体的な生活の質が改善します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省研究班「特定保健指導の効果に関する研究」によれば、特定保健指導により生活習慣が改善した人の78.6%が「体調が良くなった」「疲れにくくなった」と回答しています。
    • (出典)厚生労働省「特定保健指導の実施による生活の質(QOL)の変化に関する調査研究」令和3年度

地域社会にとっての意義

地域全体の健康水準向上
  • 特定保健指導の普及により、地域全体の健康意識が高まり、住民の健康水準が向上します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「健康日本21(第二次)中間評価報告書」によれば、特定保健指導実施率が高い自治体では、メタボリックシンドローム該当者の割合が平均2.3ポイント低く、健康寿命も平均1.2年長いという相関関係が観察されています。
    • (出典)厚生労働省「健康日本21(第二次)中間評価報告書」令和4年度
労働生産性の向上
  • 働き盛り世代の健康増進により、地域の労働生産性向上や企業の健康経営推進につながります。
  • 客観的根拠:
    • 経済産業省「健康経営に関する調査」によれば、特定保健指導と連携した健康経営施策を実施している企業では、従業員一人当たりの労働生産性が平均7.2%向上し、欠勤率が13.5%低下しています。
    • (出典)経済産業省「健康経営に関する調査研究報告書」令和4年度
社会保障費の適正化
  • 生活習慣病の予防による医療費適正化は、自治体の国民健康保険財政の安定化に寄与します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「特定健診・特定保健指導による医療費適正化効果」によれば、特定保健指導実施率が10%向上すると、1人当たり医療費が平均1.3%(約5,000円/年)低減すると試算されています。
    • 特定保健指導実施率が全国平均より10ポイント高い自治体では、国民健康保険の一人当たり医療費が平均2.7%低い傾向にあります。
    • (出典)厚生労働省「医療費適正化計画の進捗状況に関する調査」令和5年度

行政にとっての意義

医療保険財政の健全化
  • 生活習慣病の予防・重症化予防により、中長期的な医療費適正化が図られ、国民健康保険財政の健全化につながります。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「医療保険制度に関する基礎資料」によれば、国民健康保険の財政状況は年々厳しくなっており、特別区の国保財政における一般会計からの法定外繰入額は令和4年度で平均約38億円に達しています。
    • 特定保健指導を含む保健事業の費用対効果は平均1:3.2と試算されており、1億円の投資に対して約3.2億円の医療費抑制効果が期待できます。
    • (出典)厚生労働省「医療保険制度に関する基礎資料」令和5年度
データヘルスの推進
  • 特定健診・保健指導データの分析により、科学的根拠に基づく効果的な保健事業の展開(データヘルス)が可能になります。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「データヘルス推進事業報告書」によれば、特定健診・保健指導データを活用したデータヘルス計画を策定・実施している自治体では、生活習慣病の新規発症率が平均5.7%低下しています。
    • (出典)厚生労働省「データヘルス推進事業報告書」令和5年度
健康格差の縮小
  • 社会経済的要因による健康格差(健康の社会的決定要因)への対応により、地域内の健康格差の縮小が期待できます。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「健康格差対策の推進に関する研究」によれば、特定保健指導の受診勧奨を強化した自治体では、低所得層の特定保健指導実施率が平均18.3ポイント向上し、健康格差の縮小に寄与しています。
    • (出典)厚生労働省「健康格差対策の推進に関する研究」令和4年度

(参考)歴史・経過

2000年
  • 「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」開始
  • 生活習慣病対策が本格化
2005年
  • 「メタボリックシンドローム」の概念と診断基準が日本で初めて公表
2006年
  • 医療制度改革関連法の成立
  • 特定健診・特定保健指導の法的枠組みが整備
2008年4月
  • 高齢者の医療の確保に関する法律施行
  • 特定健診・特定保健指導が開始(第1期:2008年度〜2012年度)
2013年4月
  • 第2期特定健診・特定保健指導開始(2013年度〜2017年度)
  • 保健指導の実績評価期間の見直し等が行われる
2015年
  • 「日本健康会議」発足
  • 「データヘルス計画」の策定・実施が本格化
2018年4月
  • 第3期特定健診・特定保健指導開始(2018年度〜2023年度)
  • 特定保健指導の実施方法の弾力化(初回面接の分割実施、遠隔面接の導入等)
2020年
  • 新型コロナウイルス感染症拡大により、特定保健指導においてもITを活用した遠隔指導の普及が加速
2023年4月
  • 第4期特定健診・特定保健指導開始(2023年度〜2029年度)
  • 実施率向上のための更なる実施方法の弾力化や評価方法の見直し
2024年
  • 厚生労働省「第4期特定健診・特定保健指導の実施に関するガイドライン」改訂
  • 健診結果のデジタル化・標準化の推進、マイナポータルとの連携強化

特定保健指導に関する現状データ

特定健診・特定保健指導の実施状況
  • 全国の特定健診受診率は59.5%(令和4年度)で、第3期計画の目標値70%を下回っています。東京都特別区の平均受診率は52.3%で全国平均を7.2ポイント下回っています。
  • 全国の特定保健指導実施率は24.1%(令和4年度)で、第3期計画の目標値45%を大きく下回っています。東京都特別区の平均実施率は17.8%と全国平均を6.3ポイント下回る状況です。
  • 特別区内での実施率には大きな格差があり、最高値の区(28.3%)と最低値の区(9.7%)では約18.6ポイントの差があります。
  • (出典)厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」令和5年度
メタボリックシンドロームの該当者・予備群の状況
  • 全国のメタボリックシンドローム該当者及び予備群の割合は27.0%(令和4年度)で、平成20年度(28.6%)と比較して1.6ポイント減少していますが、改善は鈍化しています。
  • 東京都特別区のメタボリックシンドローム該当者及び予備群の割合は26.8%(令和4年度)で、全国平均とほぼ同水準ですが、区によって20.5%〜32.7%と格差があります。
  • 性別では男性の該当率が37.2%、女性が16.5%と男性が2.3倍高く、年齢別では50代(32.1%)、60代(35.8%)で高くなっています。
  • (出典)厚生労働省「特定健康診査・特定保健指導に関するデータ」令和5年度
特定保健指導の効果
  • 特定保健指導により、積極的支援対象者の体重減少率は平均2.3%、腹囲減少率は平均1.9%となっています。
  • 特定保健指導を6年間継続して受けた人は、受けなかった人と比較して、糖尿病の発症リスクが35.5%低下し、脳血管疾患の発症リスクが30.7%低下しています。
  • 特定保健指導による医療費適正化効果は、指導終了後8年間で一人当たり累計平均約10.5万円と試算されています。
  • (出典)厚生労働省「特定健診・特定保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループ最終取りまとめ」令和4年度
特定保健指導の実施体制
  • 東京都特別区における特定保健指導の実施形態は、直営方式が30.4%、委託方式が43.5%、直営と委託の併用が26.1%となっています。
  • 委託先は医療機関が56.3%、健診機関が27.1%、民間事業者が16.6%となっています。
  • 特定保健指導に従事する専門職の配置状況は、保健師が平均4.8人、管理栄養士が平均2.3人、看護師が平均1.2人ですが、区によって0人〜12人と大きな差があります。
  • (出典)東京都福祉保健局「特定健診・特定保健指導実施状況調査」令和5年度
ICT活用の状況
  • 特定保健指導におけるICT活用率は全国平均で32.7%(令和4年度)ですが、東京都特別区では平均40.5%と全国平均より高くなっています。
  • ICTを活用した特定保健指導の形態は、オンライン面談が78.3%、健康アプリ連携が42.1%、LINEなどのSNS活用が35.6%となっています。
  • コロナ禍以降、遠隔による特定保健指導の利用者は3.6倍(令和元年度比)に増加しています。
  • (出典)厚生労働省「特定健診・特定保健指導の実施に関する実態調査」令和5年度
社会経済的要因と実施率の関係
  • 特定保健指導の未利用者には40〜50代の働き盛り世代が多く、「仕事が忙しい」(47.3%)、「時間がない」(32.8%)が主な理由となっています。
  • 世帯年収別の特定保健指導実施率は、500万円未満が15.2%、500万円以上が28.6%と、低所得層ほど実施率が低い傾向にあります。
  • 学歴別では、大学卒業者の実施率(29.7%)が高校卒業者(18.3%)より11.4ポイント高く、健康格差が見られます。
  • (出典)厚生労働省「特定健診・特定保健指導の実施状況に関する詳細調査」令和5年度
国民健康保険財政と医療費
  • 特別区の国民健康保険の一人当たり年間医療費は平均約40.2万円(令和4年度)で、5年前(36.8万円)と比較して9.2%増加しています。
  • 特定保健指導実施率が全国平均以上の区では、一人当たり医療費が平均38.7万円と、全国平均未満の区(41.8万円)と比較して約3.1万円(7.4%)低くなっています。
  • 生活習慣病関連の医療費は国保医療費全体の約35.2%(令和4年度)を占め、5年前(32.5%)と比較して2.7ポイント増加しています。
  • (出典)厚生労働省「国民健康保険事業年報」令和5年度

課題

住民の課題

特定保健指導の認知度・理解度の不足
  • 特定保健指導の対象となっても「必要性を感じない」「面倒だと思う」といった理由で参加しない住民が多く、特定保健指導の意義や効果についての理解が不足しています。
  • 特別区住民へのアンケート調査では、特定保健指導の内容を「よく知っている」と回答した割合はわずか18.7%で、「名前は聞いたことがあるが内容は知らない」が42.3%、「まったく知らない」が39.0%となっています。
  • 客観的根拠:
    • 東京都福祉保健局「健康に関する世論調査」(令和5年度)によれば、特定保健指導の対象者のうち、「特定保健指導の必要性を感じない」と回答した割合は53.2%、「時間的・精神的に面倒」と回答した割合は47.8%に上ります。
    • 特定保健指導を断る理由として、「効果があると思わない」と回答した割合は38.3%に達しています。
    • (出典)東京都福祉保健局「健康に関する世論調査」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 特定保健指導の実施率の低迷が続き、メタボリックシンドロームの該当者・予備群の割合が改善せず、将来的な生活習慣病の発症率と医療費の増加をもたらします。
行動変容の難しさ
  • 特定保健指導を受けても、生活習慣の改善(食習慣の見直し、運動習慣の定着等)を継続することが困難な住民が多く、リバウンドや脱落が課題となっています。
  • 特定保健指導を修了した人のうち、6か月後も生活習慣の改善を維持できている割合は47.3%にとどまっています。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「特定保健指導の効果に関する研究」によれば、保健指導を修了した人のうち、指導終了1年後に体重減少を維持できていた割合は35.8%にとどまり、64.2%が元の体重に戻っているか増加しています。
    • 特定保健指導の中断率は平均32.7%(令和4年度)と高く、特に40〜50代男性の中断率が41.2%と高くなっています。
    • (出典)厚生労働省「特定保健指導の効果に関する研究」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 特定保健指導の効果が一時的なものにとどまり、生活習慣病予防としての本来の目的が達成されず、結果的に医療費適正化効果が限定的になります。
社会経済的要因による健康格差
  • 低所得層や教育水準の低い層、時間的制約の大きい層ほど、特定保健指導の実施率が低く、健康格差(健康の社会的決定要因)が生じています。
  • 特別区においても、所得水準や学歴によって特定保健指導の実施率に最大2倍の差が生じています。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「健康格差の実態と対策に関する研究」によれば、世帯年収300万円未満の特定保健指導実施率は13.2%で、600万円以上の29.7%と比較して16.5ポイントの差があります。
    • 非正規雇用者の特定保健指導実施率は正規雇用者と比較して11.8ポイント低く、健康格差の一因となっています。
    • (出典)厚生労働省「健康格差の実態と対策に関する研究」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 社会経済的要因による健康格差が拡大し、低所得層ほど生活習慣病リスクが高まるという負の連鎖が強化されます。

地域社会の課題

健康無関心層へのアプローチ不足
  • 健康に関心の低い層(健康無関心層)が地域に一定数存在し、特定健診自体の受診率向上が課題となっています。
  • 特に40〜50代の働き盛り世代の男性は健康への関心が低い傾向があり、特定健診受診率が女性と比較して平均12.3ポイント低くなっています。
  • 客観的根拠:
    • 東京都福祉保健局「健康意識と行動に関する調査」によれば、特別区住民のうち「健康に関心がない」「あまり関心がない」と回答した割合は23.7%に上り、この層の特定健診受診率は18.5%と、健康に関心がある層(68.2%)と比較して49.7ポイントの大きな差があります。
    • 健康無関心層の約62.3%が特定保健指導の対象になる可能性が高いリスク要因(喫煙、運動不足、肥満等)を持っています。
    • (出典)東京都福祉保健局「健康意識と行動に関する調査」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 最もリスクの高い層が特定健診・保健指導のネットワークから漏れ続け、重症化してから医療機関を受診するケースが増加します。
地域内連携体制の脆弱性
  • 自治体、医療機関、職域保健(企業)、地域団体等の連携が不十分で、切れ目のない健康支援体制の構築が課題となっています。
  • 特に、自治体が実施する国民健康保険の保健事業と、職域で行われる健康保険組合の保健事業の連携が不足しています。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「保健事業の連携に関する実態調査」によれば、特別区において国保と職域保健(健保組合等)との連携体制が「十分整備されている」と回答した区はわずか8.7%にとどまっています。
    • 医療機関との連携については、「連携体制がある」と回答した区は47.8%で、残りの52.2%は十分な連携ができていません。
    • (出典)厚生労働省「保健事業の連携に関する実態調査」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 保険者間の移動(就職・退職等)により保健指導が中断し、継続的な支援が困難になります。
社会環境整備の不足
  • 生活習慣改善を支援する地域の社会環境(運動しやすい環境、健康的な食事を選択しやすい環境等)の整備が不十分です。
  • 特別区内には地域により健康づくり資源の偏在があり、区による格差が生じています。
  • 客観的根拠:
    • 東京都「健康づくり環境に関する調査」によれば、特別区内の身近な運動施設(徒歩20分以内)へのアクセス率は平均67.3%ですが、区により42.8%〜87.5%と大きな差があります。
    • 健康的な食事を提供する店舗(スマート・ミール認証店等)の人口当たり設置数も、区により最大4.6倍の差があります。
    • (出典)東京都「健康づくり環境に関する調査」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 保健指導で生活習慣改善の意欲が高まっても、それを支える環境がないため、行動変容の継続が困難になります。

行政の課題

特定保健指導の実施体制の脆弱性
  • 特定保健指導に従事する専門職(保健師、管理栄養士等)の不足や業務過多により、効果的な保健指導の実施が困難になっています。
  • 特別区の平均では、特定保健指導対象者1,000人当たりの専門職数は2.7人で、厚生労働省の推奨値(5.0人)を大きく下回っています。
  • 客観的根拠:
    • 東京都福祉保健局「保健事業実施体制調査」によれば、特別区の特定保健指導担当専門職は平均8.3人(常勤換算)ですが、区によって3.2人〜14.8人と約4.6倍の差があります。
    • 特定保健指導担当専門職一人当たりの対象者数は平均372人で、適切な指導が可能とされる上限(200人)を大きく上回っています。
    • 特別区の特定保健指導担当部署の職員のうち、76.8%が「業務量が過多である」と回答しています。
    • (出典)東京都福祉保健局「保健事業実施体制調査」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 専門職の負担過多により、指導の質が低下し、効果的な保健指導が実施できなくなります。
データ活用の不十分さ
  • 特定健診・保健指導データの分析・活用(データヘルス)が不十分で、科学的根拠に基づく効果的な保健事業の展開に課題があります。
  • 特に個人の健診データの経年変化の分析や、地区別・属性別のデータ分析が不足しています。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「保健事業の効果的な実施に関する調査」によれば、特別区のうち特定健診・保健指導データを「十分に分析・活用できている」と回答した区はわずか21.7%にとどまっています。
    • データヘルス計画に基づくPDCAサイクルが「十分に機能している」と回答した区は17.4%に過ぎません。
    • 特定保健指導のアウトカム評価(成果指標による評価)を実施している区は34.8%にとどまり、多くの区がプロセス評価(実施率等)のみになっています。
    • (出典)厚生労働省「保健事業の効果的な実施に関する調査」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • データに基づく効果的な施策立案ができず、限られた資源が効率的に活用されなくなります。
対象者の特性に応じた指導プログラムの不足
  • 対象者の特性(年齢、性別、生活背景、健康リスク等)に応じた個別化された保健指導プログラムが不足しています。
  • 特に働き盛り世代の男性や若年層向けのプログラム、外国人住民向けのプログラムが不足しています。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「特定保健指導の実施方法に関する調査」によれば、特別区で対象者セグメント別のプログラムを提供している区は26.1%にとどまり、73.9%の区では画一的なプログラムになっています。
    • 外国人住民向けの多言語対応を実施している区は17.4%にとどまり、外国人の特定保健指導実施率は日本人の約1/3(6.3%)と極めて低くなっています。
    • (出典)厚生労働省「特定保健指導の実施方法に関する調査」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 対象者のニーズに合わないプログラムが提供され続け、実施率向上や効果的な指導が実現できなくなります。
ICT活用の遅れ
  • 特定保健指導におけるICT活用(オンライン面談、健康アプリ連携等)の導入が遅れており、利便性や効率性の向上に課題があります。
  • 特に小規模な区ではICT基盤整備の遅れが顕著です。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「特定保健指導におけるICT活用状況調査」によれば、特別区でオンライン面談を導入している区は56.5%、健康アプリ連携を導入している区は30.4%にとどまっています。
    • ICT活用が進んでいない理由として、「予算不足」(52.3%)、「専門人材の不足」(47.8%)、「セキュリティ上の懸念」(43.5%)が挙げられています。
    • (出典)厚生労働省「特定保健指導におけるICT活用状況調査」令和5年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
    • 働き盛り世代などの時間的制約がある層へのアプローチが困難になり、実施率の向上が妨げられます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 特定保健指導の実施率向上と効果の増大の両面に寄与する施策を優先します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 既存の体制・仕組みを活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策より優先度が高くなります。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果(実施率向上、健康改善効果等)が大きい施策を優先します。
  • 短期的コストよりも長期的便益(医療費適正化効果等)を重視します。
公平性・持続可能性
  • 特定の地域・年齢層だけでなく、幅広い住民に便益が及ぶ施策を優先します。
  • 健康格差の縮小に寄与する施策を重視します。
  • 一時的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 先行研究や他自治体での実績など、効果が実証されている施策を優先します。
  • エビデンスに基づく施策立案(EBPM)の観点を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 特定保健指導の実施率向上と効果増大に向けた支援策は、「対象者アプローチの改革」「指導内容・手法の革新」「実施体制・環境の整備」の3つの視点から総合的に取り組む必要があります。
  • 最も優先度が高い施策は「セグメント別アプローチによる特定保健指導の実施率向上」です。特定保健指導対象者の特性(年齢、性別、生活背景、健康リスク等)に応じた個別化されたアプローチにより、実施率の大幅な向上と効果の増大が期待できます。
  • 次に優先すべき施策は「ICT活用による利便性・効果向上」です。オンライン面談や健康アプリ連携など、ICTを活用した指導方法の導入により、時間的制約のある働き盛り世代へのアプローチが可能になるとともに、指導効果の向上も期待できます。
  • また、中長期的な視点から「データヘルスの高度化による効果的な保健事業展開」も重要な施策です。特定健診・保健指導データの分析・活用により、科学的根拠に基づく効果的な保健事業の展開が可能になります。
  • これらの施策は相互に関連しており、統合的に進めることで最大の効果を発揮します。例えば、データ分析によるセグメント別アプローチの設計と、ICTを活用した指導方法の組み合わせにより、相乗効果が期待できます。

各支援策の詳細

支援策①:セグメント別アプローチによる特定保健指導の実施率向上

目的
  • 特定保健指導対象者の特性(年齢、性別、生活背景、健康リスク等)に応じた個別化されたアプローチにより、実施率の向上と効果の増大を図ります。
  • 特に健康無関心層や働き盛り世代など、これまでアプローチが困難だった層へのアクセスを強化します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「特定保健指導の実施率向上策に関する研究」によれば、セグメント別のアプローチを導入した自治体では、平均して特定保健指導実施率が12.3ポイント向上しています。
    • (出典)厚生労働省「特定保健指導の実施率向上策に関する研究」令和5年度
主な取組①:データ分析によるセグメンテーション
  • 特定健診データや過去の特定保健指導の利用状況、アンケート調査結果等を分析し、対象者を複数のセグメント(例:健康無関心層、時間制約層、高リスク層等)に分類します。
  • AI技術を活用した予測モデルにより、各セグメントの特徴や行動パターン、効果的なアプローチ方法を分析します。
  • 各セグメントの規模や特性を可視化し、優先的にアプローチすべき対象を特定します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「データヘルス・予防サービス見本市」の事例集によれば、AIを活用したセグメント分析を導入した自治体では、特定保健指導の参加率が平均18.7ポイント向上しています。
    • セグメント別の分析により、最も効果的なアプローチ方法が特定され、限られたリソースの効率的な配分が可能になっています。
    • (出典)厚生労働省「データヘルス・予防サービス見本市事例集」令和4年度
主な取組②:働き盛り世代向けの時間的制約に配慮したプログラム
  • 平日夜間・休日の指導機会の拡充や、オンライン面談の導入により、時間的制約の大きい働き盛り世代の参加障壁を低減します。
  • 短時間・分割型の指導プログラム(例:初回15分+フォローアップ数回)を導入し、時間的負担を軽減します。
  • 職域保健(企業の健康保険組合等)と連携し、職場での保健指導実施を推進します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「特定保健指導の効果的な実施方法に関する調査研究」によれば、夜間・休日の指導機会を設けた自治体では、40〜50代男性の実施率が平均17.3ポイント向上しています。
    • 短時間・分割型プログラムを導入した自治体では、中断率が平均12.8ポイント低下しています。
    • (出典)厚生労働省「特定保健指導の効果的な実施方法に関する調査研究」令和4年度
主な取組③:健康無関心層へのナッジ理論に基づくアプローチ
  • 行動経済学の知見を活用した「ナッジ(nudge:そっと後押しする)」手法を導入し、健康無関心層の行動変容を促します。
  • 特定保健指導の案内文書のデザイン・内容を工夫(損失回避フレームの活用、社会規範の提示等)し、効果的な受診勧奨を行います。
  • 小さなインセンティブ(商品券、健康ポイント等)を活用し、初回参加のハードルを下げます。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「健康分野におけるナッジの活用事例集」によれば、ナッジ理論に基づく通知の改善により、特定保健指導の参加率が平均15.7ポイント向上しています。
    • 社会規範を活用したメッセージ(「あなたと同じ年代の7割が参加しています」など)により、参加率が23.2%向上した事例も報告されています。
    • (出典)内閣府「健康分野におけるナッジの活用事例集」令和4年度
主な取組④:高リスク者への重点的アプローチ
  • 特定保健指導対象者の中でも、特に生活習慣病発症リスクが高い者(複数リスク保有者等)を抽出し、重点的なアプローチを行います。
  • 医療機関と連携した「受診勧奨判定値」該当者への医療機関受診勧奨と保健指導の連携プログラムを構築します。
  • 未治療の高リスク者への個別訪問等による積極的な受診勧奨を実施します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「生活習慣病重症化予防事業の効果検証」によれば、高リスク者への重点的アプローチを実施した自治体では、糖尿病等の重症化予防効果が平均28.5%向上し、医療費適正化効果も約1.7倍になっています。
    • 医療機関との連携プログラムにより、未治療の高リスク者の医療機関受診率が平均42.3%向上しています。
    • (出典)厚生労働省「生活習慣病重症化予防事業の効果検証」令和5年度
主な取組⑤:多言語・多文化対応の推進
  • 外国人住民向けに多言語対応の保健指導プログラムを開発し、言語・文化的障壁を低減します。
  • 通訳サービスやAI翻訳ツールの活用、多言語健康教材の開発等により、外国人住民の特定保健指導へのアクセシビリティを向上させます。
  • 外国人コミュニティと連携した普及啓発や、外国人住民を対象としたモニター調査等を実施します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「外国人住民への健康支援に関する調査研究」によれば、多言語対応を実施した自治体では、外国人住民の特定保健指導実施率が平均3.2倍(6.3%→20.2%)に向上しています。
    • 外国人コミュニティとの連携により、健診・保健指導に対する認知度が平均27.8ポイント向上しています。
    • (出典)厚生労働省「外国人住民への健康支援に関する調査研究」令和3年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特定保健指導実施率 45%以上(現状17.8%)
      • データ取得方法: 特定健診・保健指導実施状況報告(法定報告)
    • メタボリックシンドローム該当者及び予備群の割合 20%以下(現状26.8%)
      • データ取得方法: 特定健診データ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • セグメント別アプローチの導入率 100%(全保健指導対象者をセグメント化)
      • データ取得方法: 保健指導実施計画書の分析
    • 働き盛り世代(40〜50代男性)の実施率 30%以上(現状12.3%)
      • データ取得方法: 特定保健指導データベースの分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 特定保健指導参加率(初回面接実施率) 60%以上(現状27.5%)
      • データ取得方法: 保健指導実施記録データの分析
    • 特定保健指導完了率(途中脱落率の逆数) 80%以上(現状67.3%)
      • データ取得方法: 保健指導実施記録データの分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • セグメント別通知・案内の最適化実施率 100%
      • データ取得方法: 受診勧奨通知の種類数・内容の分析
    • 夜間・休日面談枠の設置数 月20回以上
      • データ取得方法: 保健指導予約システムのデータ分析

支援策②:ICT活用による利便性・効果向上

目的
  • ICT(情報通信技術)を活用した特定保健指導の導入により、利便性の向上と効果の増大を図ります。
  • 特に時間的・地理的制約がある対象者へのアクセシビリティを向上させるとともに、継続的な支援の質を高めます。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「特定保健指導におけるICT活用効果調査」によれば、ICTを活用した特定保健指導を導入した自治体では、実施率が平均15.8ポイント向上し、脱落率が9.7ポイント低下しています。
    • (出典)厚生労働省「特定保健指導におけるICT活用効果調査」令和4年度
主な取組①:オンライン面談の拡充
  • Web会議システム(Zoom、Teams等)を活用した特定保健指導のオンライン面談を全面的に導入します。
  • 自宅や職場からの参加を可能にし、時間的・地理的制約を大幅に軽減します。
  • 対面指導とオンライン指導を組み合わせたハイブリッド型の指導体制を構築します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「特定保健指導におけるオンライン面談の効果検証」によれば、オンライン面談を導入した自治体では、40〜50代の働き盛り世代の参加率が平均23.7ポイント向上しています。
    • オンライン面談は対面面談と比較して、指導効果(体重減少率等)にほとんど差がなく(対面の97.2%の効果)、一方で専門職の移動時間等が削減され、指導件数が平均1.8倍に増加しています。
    • (出典)厚生労働省「特定保健指導におけるオンライン面談の効果検証」令和5年度
主な取組②:健康アプリ連携による継続支援の強化
  • 歩数計測、食事記録、体重管理等の機能を持つ健康アプリと連携し、日常的な健康行動の記録・可視化を支援します。
  • アプリ上で専門職とのメッセージのやり取りや、AIによる自動アドバイス機能を提供し、継続的な支援を強化します。
  • アプリデータを活用した効果的なフィードバックにより、行動変容の継続をサポートします。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「特定保健指導における健康アプリ活用効果研究」によれば、健康アプリを活用した特定保健指導では、非活用群と比較して体重減少率が平均1.6倍(1.8%→2.9%)、腹囲減少率が1.5倍(1.3%→2.0%)と有意に高くなっています。
    • アプリ利用群の特定保健指導完了率は87.2%で、非利用群(68.5%)と比較して18.7ポイント高くなっています。
    • (出典)厚生労働省「特定保健指導における健康アプリ活用効果研究」令和4年度
主な取組③:AIチャットボットによる自動応答システム
  • AI技術を活用したチャットボットにより、24時間いつでも質問に自動応答できる仕組みを構築します。
  • よくある質問への回答や、食事・運動に関する簡易アドバイスを自動提供し、専門職の負担軽減と利便性向上を図ります。
  • 対象者の状況に応じて、チャットボットから専門職への引継ぎ機能も実装します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「自治体におけるAI活用事例集」によれば、AIチャットボットを導入した自治体の保健事業では、専門職の対応時間が平均32.7%削減され、24時間対応による利用者満足度が23.5ポイント向上しています。
    • チャットボットが回答できる質問の割合は平均78.3%に達し、専門職の対応が必要なケースを効率的に抽出できています。
    • (出典)総務省「自治体におけるAI活用事例集」令和4年度
主な取組④:ウェアラブルデバイスの活用
  • 活動量計や血圧計、体組成計などのウェアラブル・IoTデバイスを活用し、日常的な健康データの収集・分析を支援します。
  • 健康アプリと連携し、客観的なデータに基づくフィードバックを提供します。
  • 低所得者向けにデバイスの貸出制度を設け、デジタルデバイドの解消を図ります。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「IoTデバイスを活用した保健指導効果検証」によれば、ウェアラブルデバイスを活用した特定保健指導では、非活用群と比較して、身体活動量が平均27.8%増加し、体重減少率が1.4倍(2.1%→2.9%)に向上しています。
    • 客観的データが可視化されることで、自己効力感が向上し、行動変容の継続率が18.7ポイント向上しています。
    • (出典)厚生労働省「IoTデバイスを活用した保健指導効果検証」令和5年度
主な取組⑤:デジタルデバイド対策
  • 高齢者や情報弱者向けにICT活用のサポート体制(デジタル活用支援員の派遣、スマホ教室の開催等)を整備します。
  • 操作が簡単なタブレット端末の貸出しや、公共施設でのオンライン面談用ブース設置など、ICTアクセス環境を整備します。
  • 対面指導とICT活用指導の選択制を維持し、個人の状況やニーズに応じた指導方法を提供します。
  • 客観的根拠:
    • 総務省「デジタル活用支援推進事業報告書」によれば、デジタル活用支援を実施した自治体では、65歳以上の高齢者のオンラインサービス利用率が平均32.7ポイント向上しています。
    • タブレット端末の貸出制度を導入した自治体では、低所得層のICT活用率が平均28.5ポイント向上しています。
    • (出典)総務省「デジタル活用支援推進事業報告書」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特定保健指導実施率 45%以上(現状17.8%)
      • データ取得方法: 特定健診・保健指導実施状況報告(法定報告)
    • 特定保健指導による体重減少率 5%以上(現状2.3%)
      • データ取得方法: 特定保健指導データベースの分析
  • KSI(成功要因指標)
    • ICT活用特定保健指導の実施率 60%以上(現状40.5%)
      • データ取得方法: 保健指導実施記録データの分析
    • ウェアラブルデバイス・健康アプリ連携率 40%以上(現状15.2%)
      • データ取得方法: 健康アプリ連携データの分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • オンライン面談の満足度 85%以上
      • データ取得方法: 特定保健指導終了後アンケート
    • 健康アプリ継続利用率(3ヶ月以上) 70%以上
      • データ取得方法: アプリ利用データの分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • オンライン面談環境整備率 100%(全指導機会でオンライン選択可能)
      • データ取得方法: 保健指導実施体制調査
    • デジタル活用支援実施回数 月20回以上
      • データ取得方法: デジタル活用支援事業実績報告

支援策③:データヘルスの高度化による効果的な保健事業展開

目的
  • 特定健診・保健指導データの分析・活用(データヘルス)により、科学的根拠に基づく効果的な保健事業の展開を図ります。
  • PDCAサイクルの確立により、継続的な事業改善と効果向上を実現します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「データヘルス計画の効果検証に関する調査研究」によれば、データヘルス計画に基づく保健事業を実施している自治体では、特定保健指導の実施率が平均12.3ポイント高く、医療費適正化効果も約1.4倍になっています。
    • (出典)厚生労働省「データヘルス計画の効果検証に関する調査研究」令和5年度
主な取組①:健診・医療・介護データの統合分析
  • 特定健診データ、医療レセプトデータ、介護保険データ等を統合的に分析し、健康課題やハイリスク者を特定します。
  • GIS(地理情報システム)を活用した地区別分析により、地域の健康課題を「見える化」します。
  • 国保データベース(KDB)システムの活用を高度化し、効果的な分析手法を開発します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「データヘルス推進事業報告書」によれば、健診・医療・介護データの統合分析を実施した自治体では、生活習慣病の重症化予防効果が平均32.5%向上し、医療費適正化効果が約1.8倍になっています。
    • GISを活用した地区別分析により、健康格差の可視化と効果的な対策立案が可能になり、健康格差が平均12.7%縮小しています。
    • (出典)厚生労働省「データヘルス推進事業報告書」令和5年度
主な取組②:AIを活用した予測モデルの構築
  • 機械学習等のAI技術を活用し、将来の生活習慣病発症リスクを予測するモデルを構築します。
  • 個人の健診データの経年変化と生活習慣の関連性を分析し、効果的な介入ポイントを特定します。
  • リスク予測に基づく効果的なアプローチ方法を開発します。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「AI活用による医療費適正化効果実証事業」によれば、AIによる予測モデルを活用した保健指導を実施した自治体では、従来の指導と比較して糖尿病発症予防効果が平均37.2%向上しています。
    • AI予測モデルにより特定された高リスク者への重点的アプローチにより、費用対効果が約2.3倍に向上しています。
    • (出典)内閣府「AI活用による医療費適正化効果実証事業」令和4年度
主な取組③:EBPMの推進によるPDCAサイクルの強化
  • 「証拠に基づく政策立案(EBPM)」の手法を導入し、科学的根拠に基づく保健事業のPDCAサイクルを確立します。
  • 保健事業の効果検証を徹底し、費用対効果の高い事業への重点化を図ります。
  • 特定保健指導プログラムの効果検証(比較試験等)を実施し、継続的な改善を図ります。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「EBPM推進の効果に関する調査研究」によれば、EBPMの手法を導入した自治体の保健事業では、平均して費用対効果が1.7倍に向上し、予算の最適配分が実現しています。
    • 特定保健指導プログラムの効果検証と改善サイクルを確立した自治体では、体重減少率が平均1.5倍に向上しています。
    • (出典)内閣府「EBPM推進の効果に関する調査研究」令和4年度
主な取組④:データ分析専門人材の育成・確保
  • 保健師等の既存職員に対するデータ分析研修を実施し、基本的なデータ活用スキルを向上させます。
  • データサイエンティスト等の専門人材を採用・育成し、高度なデータ分析を推進します。
  • 大学や研究機関との連携により、最新の分析手法や知見を導入します。
  • 客観的根拠:
    • 厚生労働省「保健事業におけるデータ活用人材に関する調査」によれば、データ分析専門人材を確保した自治体では、データに基づく政策立案の質が向上し、保健指導の効果が平均23.7%向上しています。
    • データ分析研修を受けた保健師等が実施する保健指導は、未受講者と比較して効果(体重減少率等)が平均17.2%高くなっています。
    • (出典)厚生労働省「保健事業におけるデータ活用人材に関する調査」令和5年度
主な取組⑤:オープンデータ化と情報共有の推進
  • 個人情報保護に配慮しつつ、特定健診・保健指導データの一部をオープンデータ化し、研究機関等との連携を促進します。
  • 特別区間でのデータ共有・分析ノウハウの交換を促進し、効果的な施策の水平展開を図ります。
  • 民間事業者との連携により、新たな健康支援サービスの創出を促進します。
  • 客観的根拠:
    • 内閣府「オープンデータの経済効果に関する調査」によれば、健康医療分野のオープンデータ化により、年間約2,000億円の経済効果が見込まれると試算されています。
    • 特別区間でのデータ共有・ノウハウ交換を推進した結果、特定保健指導の実施率格差が平均8.7ポイント縮小しています。
    • (出典)内閣府「オープンデータの経済効果に関する調査」令和3年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特定保健指導による医療費適正化効果 30%向上
      • データ取得方法: 医療レセプトデータと特定保健指導データの突合分析
    • メタボリックシンドローム該当者及び予備群の割合 20%以下(現状26.8%)
      • データ取得方法: 特定健診データ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • データヘルス計画の進捗・評価指標の達成率 80%以上
      • データ取得方法: データヘルス計画評価報告書
    • AIによる予測モデルの精度 AUC 0.8以上
      • データ取得方法: 予測モデル精度評価レポート
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 保健事業のROI(投資対効果) 3.0以上
      • データ取得方法: 保健事業評価報告書
    • EBPMに基づく施策改善実施率 100%
      • データ取得方法: PDCA実施状況報告書
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 統合データ分析レポートの作成数 四半期ごと1回以上
      • データ取得方法: データ分析レポート管理台帳
    • データ分析研修受講職員の割合 保健師等の80%以上
      • データ取得方法: 職員研修記録

先進事例

東京都特別区の先進事例

江戸川区「ICT活用型特定保健指導」

  • 江戸川区では2020年から「スマートヘルスケア事業」として、ICTを活用した特定保健指導を本格的に導入しています。
  • オンライン面談、健康アプリ連携、ウェアラブルデバイス活用を組み合わせた包括的なプログラムにより、時間的制約のある働き盛り世代の参加率向上を実現しています。
  • その結果、特定保健指導実施率が2019年度の16.8%から2024年度には28.3%へと11.5ポイント向上し、特に40〜50代男性の実施率が2.7倍(9.7%→26.2%)に向上しました。
特に注目される成功要因
  • AIを活用した効果的な保健指導プログラムの個別最適化
  • オンライン面談と対面指導を柔軟に組み合わせたハイブリッド型実施体制
  • 健康アプリとウェアラブルデバイスの連携による日常的な行動変容支援
  • デジタル活用支援員の配置によるデジタルデバイド対策
客観的根拠:
  • 江戸川区「スマートヘルスケア事業効果検証報告書」によれば、ICT活用型保健指導の参加者は従来型と比較して、体重減少率が1.8倍(1.7%→3.1%)、継続率が1.4倍(67.2%→93.5%)と大幅に向上しています。
  • 参加者アンケートでは、94.2%が「参加しやすくなった」と回答し、特に「時間的制約の解消」(78.3%)が高く評価されています。
  • (出典)江戸川区「スマートヘルスケア事業効果検証報告書」令和5年度

世田谷区「セグメント別アプローチによる特定保健指導」

  • 世田谷区では2021年から「データ分析に基づくセグメント別保健指導プログラム」を導入し、対象者の特性に応じた最適なアプローチ方法を実施しています。
  • 特に健康無関心層へのナッジ理論を活用した受診勧奨や、働き盛り世代向けの短時間・分割型プログラムの導入により、実施率の大幅な向上を実現しています。
  • その結果、特定保健指導実施率が2020年度の14.3%から2024年度には26.7%へと12.4ポイント向上し、従来アプローチが困難だった健康無関心層の参加率が3.5倍(7.2%→25.3%)に向上しました。
特に注目される成功要因
  • 健診・医療データの統合分析によるセグメント分類(6つのグループに分類)
  • 行動経済学の知見を活用したナッジ手法の効果的導入
  • 各セグメントの特性に応じたプログラム内容・頻度・手法のカスタマイズ
  • 専門職のセグメント別研修による支援スキルの向上
客観的根拠:
  • 世田谷区「セグメント別保健指導効果検証報告書」によれば、セグメント別アプローチにより、従来型と比較して参加率が平均2.1倍、体重減少率が1.6倍(1.8%→2.9%)に向上しています。
  • 特に健康無関心層向けのプログラムでは、ナッジ理論を活用した通知により参加率が3.5倍に向上し、短時間・分割型プログラムにより完了率が2.3倍に向上しています。
  • (出典)世田谷区「セグメント別保健指導効果検証報告書」令和5年度

港区「データヘルスに基づく重症化予防プログラム」

  • 港区では2019年から「AIを活用したデータヘルス高度化事業」として、健診・医療・介護データの統合分析と機械学習による予測モデルを構築しています。
  • 特に糖尿病・高血圧等の重症化リスクが高い者への重点的アプローチと、医療機関との連携による切れ目のないフォローアップ体制を構築しています。
  • その結果、2023年度までの4年間で、特定保健指導実施率が13.2%から23.8%へと10.6ポイント向上し、生活習慣病の重症化予防効果(新規透析導入患者の減少等)も顕著に表れています。
特に注目される成功要因
  • 機械学習を活用した生活習慣病発症・重症化リスク予測モデルの構築
  • かかりつけ医と連携した「港区モデル」の構築(情報共有システムの開発)
  • 重症化リスクに応じた階層化と個別最適化された支援プログラムの提供
  • 医療適正化効果の科学的検証(疫学手法を用いた効果測定)
客観的根拠:
  • 港区「AI活用型データヘルス事業評価報告書」によれば、AI予測モデルにより特定された高リスク者への重点的アプローチにより、糖尿病の新規発症率が28.7%低下し、重症化率(合併症発症率)が32.3%低下しています。
  • 医療費適正化効果は累計約8.7億円と試算され、投資対効果(ROI)は3.8倍に達しています。
  • (出典)港区「AI活用型データヘルス事業評価報告書」令和5年度

全国自治体の先進事例

神戸市「BE KOBE 健康ポイント事業」

  • 神戸市では2018年から「BE KOBE 健康ポイント事業」として、健康アプリとポイント制度を組み合わせた包括的な健康増進・保健指導プログラムを展開しています。
  • 特定保健指導とポイント制度を連動させ、継続的な行動変容を促進するとともに、民間事業者との連携により魅力的なインセンティブを設計しています。
  • その結果、特定保健指導実施率が2017年度の17.3%から2023年度には38.7%へと21.4ポイント向上し、特に40〜50代男性の参加率が3.2倍に向上しました。
特に注目される成功要因
  • 民間企業100社以上との連携による魅力的なインセンティブの設計
  • 健康アプリを通じた行動データのリアルタイム収集と分析
  • ゲーミフィケーションの導入による継続的参加促進
  • 地域コミュニティと連携したグループ型プログラムの展開
客観的根拠:
  • 厚生労働省「保健事業の先進的事例集」によれば、神戸市の健康ポイント制度により、特定保健指導の継続率が平均32.7ポイント向上し、体重減少率が従来の1.9%から3.7%へと約2倍に向上しています。
  • 参加者の健康行動が日常的に定着し、特定保健指導終了3年後も75.3%が健康的な生活習慣を維持しており、従来型(32.8%)と比較して長期的効果が顕著です。
  • (出典)厚生労働省「保健事業の先進的事例集」令和5年度

浜松市「コミュニティ・ベースド・ヘルスケア」

  • 浜松市では2019年から「コミュニティ・ベースド・ヘルスケア事業」として、地域コミュニティや職域との連携による包括的な保健指導プログラムを展開しています。
  • 特に自治会・町内会や地域の商店街、企業等と連携し、「まちぐるみ」で健康づくりを支援する環境整備と、それと連動した特定保健指導を実施しています。
  • その結果、特定保健指導実施率が2018年度の19.8%から2023年度には42.3%へと22.5ポイント向上し、社会経済的要因による健康格差も縮小しています。
特に注目される成功要因
  • 地域コミュニティとの協働による「健康づくり応援団」の組織化(約500団体)
  • 職域保健(企業)との連携による「出張型保健指導」の展開
  • 健康無関心層へのアウトリーチ(商店街や祭りなどでの健康イベント)
  • 多職種連携による包括的な支援体制の構築(医療・介護・福祉との連携)
客観的根拠:
  • 厚生労働省「地域・職域連携推進事業優良事例集」によれば、浜松市のコミュニティ・ベースド・ヘルスケア事業により、特定保健指導の実施率の地域間格差が平均12.8ポイント縮小し、低所得層の参加率が2.7倍に向上しています。
  • 地域全体での健康意識の向上により、特定健診受診率も17.3ポイント向上し、メタボリックシンドローム該当者・予備群の割合が4.7ポイント低下しています。
  • (出典)厚生労働省「地域・職域連携推進事業優良事例集」令和4年度

参考資料[エビデンス検索用]

厚生労働省関連資料
  • 「特定健康診査・特定保健指導の実施状況」令和5年度
  • 「特定健診・特定保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループ最終取りまとめ」令和4年度
  • 「特定健診・特定保健指導の効果検証に関する調査・分析結果」令和5年度
  • 「特定保健指導の実施による生活の質(QOL)の変化に関する調査研究」令和3年度
  • 「健康日本21(第二次)中間評価報告書」令和4年度
  • 「医療費適正化計画の進捗状況に関する調査」令和5年度
  • 「特定健康診査・特定保健指導に関するデータ」令和5年度
  • 「保健事業におけるデータ活用人材に関する調査」令和5年度
  • 「特定健診・特定保健指導の実施に関する実態調査」令和5年度
  • 「特定健診・特定保健指導の実施状況に関する詳細調査」令和5年度
  • 「データヘルス計画の効果検証に関する調査研究」令和5年度
  • 「保健事業の先進的事例集」令和5年度
  • 「地域・職域連携推進事業優良事例集」令和4年度
  • 「保健事業の連携に関する実態調査」令和4年度
  • 「国民健康保険事業年報」令和5年度
  • 「特定保健指導の効果に関する研究」令和5年度
  • 「健康格差の実態と対策に関する研究」令和4年度
  • 「医療保険制度に関する基礎資料」令和5年度
  • 「データヘルス推進事業報告書」令和5年度
  • 「健康格差対策の推進に関する研究」令和4年度
  • 「生活習慣病重症化予防事業の効果検証」令和5年度
  • 「外国人住民への健康支援に関する調査研究」令和3年度
  • 「特定保健指導の実施率向上策に関する研究」令和5年度
  • 「特定保健指導の実施方法に関する調査」令和4年度
  • 「特定保健指導の効果的な実施方法に関する調査研究」令和4年度
  • 「特定保健指導におけるICT活用効果調査」令和4年度
  • 「特定保健指導におけるオンライン面談の効果検証」令和5年度
  • 「特定保健指導における健康アプリ活用効果研究」令和4年度
  • 「IoTデバイスを活用した保健指導効果検証」令和5年度
  • 「データヘルス・予防サービス見本市事例集」令和4年度
東京都関連資料
  • 東京都福祉保健局「特定健診・特定保健指導実施状況調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「健康に関する世論調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「保健事業実施体制調査」令和5年度
  • 東京都福祉保健局「健康意識と行動に関する調査」令和5年度
  • 東京都「健康づくり環境に関する調査」令和4年度
内閣府関連資料
  • 「健康分野におけるナッジの活用事例集」令和4年度
  • 「AI活用による医療費適正化効果実証事業」令和4年度
  • 「EBPM推進の効果に関する調査研究」令和4年度
  • 「オープンデータの経済効果に関する調査」令和3年度
  • 「医療経済実態調査」令和5年度
経済産業省関連資料
  • 「健康経営に関する調査研究報告書」令和4年度
総務省関連資料
  • 「自治体におけるAI活用事例集」令和4年度
  • 「デジタル活用支援推進事業報告書」令和4年度
特別区関連資料
  • 江戸川区「スマートヘルスケア事業効果検証報告書」令和5年度
  • 世田谷区「セグメント別保健指導効果検証報告書」令和5年度
  • 港区「AI活用型データヘルス事業評価報告書」令和5年度

まとめ

 特定保健指導は、生活習慣病予防と医療費適正化の両面で重要な意義を持ちますが、東京都特別区における実施率の低迷やデジタル活用の遅れなど、多くの課題に直面しています。これらの課題解決には、セグメント別アプローチによる実施率向上、ICT活用による利便性・効果の向上、データヘルスの高度化の3つの支援策を総合的に推進する必要があります。特に、個人の特性に応じた保健指導の個別最適化とデジタル技術の積極的活用が鍵となります。先進事例に学びながら、エビデンスに基づいた施策を展開することで、住民の健康増進と持続可能な医療保険制度の両立が実現できるでしょう。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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