11 防災

災害時医療体制強化

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(災害時医療体制を取り巻く環境)

  • 自治体が災害時医療体制強化を行う意義は「『防ぎうる災害死』の最小化」と「被災者の健康被害の軽減と生活の質の維持」にあります。
  • 災害医療とは、地震、風水害、大規模事故などの発生時に、医療需要が供給を圧倒的に上回る極限状況下で行われる医療活動を指します。平時の救急医療が十分な人員と資機材のもとで個々の患者に最善を尽くすのに対し、災害医療は限られた医療資源を最大限有効に活用し、一人でも多くの命を救うことを目的とします。
  • その活動範囲は、発災直後の救命救急活動にとどまらず、避難所における慢性疾患の管理、感染症対策、精神的ケア(メンタルヘルス)など、公衆衛生の視点を含む包括的なものとなります。特に、首都直下地震のような大規模災害が想定される東京都特別区においては、この体制の強化が喫緊の課題です。

意義

住民にとっての意義

生存率の向上と後遺障害の軽減
  • 発災直後の急性期(概ね48〜72時間以内)に、DMAT(災害派遣医療チーム)など専門的な訓練を受けた医療チームによる迅速な救命処置やトリアージ(治療優先順位の決定)が行われることで、重篤な傷病者の救命率が向上し、後遺障害を最小限に抑えることができます。
避難生活における健康維持
安心感の醸成
  • 目に見える形で医療救護体制が整備・機能していることは、被災した住民に大きな安心感を与え、混乱した社会状況の中での精神的な支えとなり、地域社会の回復力を高めます。

地域社会にとっての意義

社会機能の早期回復
  • 人的被害を最小限に抑え、住民の健康を維持することは、社会活動の担い手を確保することにつながります。これにより、インフラの復旧や経済活動の再開など、地域社会全体の回復を早めることができます。
共助体制の基盤形成
  • 行政や医療機関による公的な医療支援体制(公助)が明確に機能することで、地域の自主防災組織やボランティアによる支援活動(共助)が効果的に連携・機能するための基盤が形成されます。

行政にとっての意義

住民保護という最大責務の遂行
限られた資源の効率的活用
  • 事前に計画された指揮命令系統や情報伝達網に基づき、医療チームや医薬品、搬送手段などを的確に配分することで、混乱状況下での資源の浪費を防ぎ、最大限の効果を発揮させることができます。

(参考)歴史・経過

  • 日本の災害時医療体制は、過去の大規模災害の教訓を乗り越える形で段階的に発展してきました。その歴史は、災害から学び、次への備えを構築してきた軌跡そのものです。
1995年:阪神・淡路大震災
  • 死者6,434名を出したこの震災は、日本の現代災害医療の原点です。初期医療体制の遅れから、平時の救急医療レベルの医療が提供されていれば救命できたと考えられる「防ぎうる災害死(Preventable Disaster Death)」が約500名に上った可能性が指摘され、災害急性期における組織的な医療介入の必要性が初めて社会的に広く認識されました。
1996年:災害拠点病院制度の創設
  • 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、厚生省(当時)は、災害時に多発する重篤な救急患者への対応や医療チームの派遣拠点となる「災害拠点病院」の整備を開始しました。
2004年:東京DMATの発足
  • 全国に先駆け、東京都が独自の災害派遣医療チーム「東京DMAT」を設置しました。これは、首都の危機管理体制の一環として、都市型災害における迅速な初動医療の重要性を認識した先進的な取り組みでした。
2005年:日本DMATの発足
2011年:東日本大震災
  • この未曾有の複合災害は、災害医療のあり方を大きく変えました。津波による甚大な被害により、急性期の外傷医療だけでなく、広域にわたる医療機関の機能停止、慢性疾患患者の治療継続、大規模な患者搬送(広域医療搬送)、避難所での中長期的な医療・健康管理の重要性が浮き彫りになりました。この教訓から、急性期以降を担う日本医師会災害医療チーム(JMAT)が組織されるなど、活動のフェーズに応じた多層的な支援体制へと進化しました。
2016年:熊本地震
  • 東日本大震災の教訓が生かされ、保健所単位で保健・医療・福祉の活動を調整する「保健医療調整本部」が効果的に機能しました。DMATとJMAT、行政、地域の医療機関との連携がより円滑に進み、指揮命令系統の確立の重要性が再確認されました。
2020年以降:新型コロナウイルス感染症対応

災害時医療体制に関する現状データ

  • 東京都特別区における災害時医療体制を検討する上で、想定される被害の規模、現在の医療資源、そして支援を必要とする住民の現状を客観的データで把握することが不可欠です。データは、課題の深刻さと対策の必要性を示しています。
首都直下地震の被害想定(東京都)
医療資源の現状
災害時要配慮者の状況

課題

住民の課題

災害時要配慮者(特に在宅療養者)の生命維持リスク
  • 停電による医療機器の停止、医薬品・衛生材料の供給途絶、介助者の不在など、在宅で高度な医療ケアを受けながら生活する住民は、生命の危機に直結する複合的なリスクに晒されます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 停電や物資不足による直接的な死亡、いわゆる「災害関連死」が多発します。
慢性疾患患者の治療中断による健康悪化
  • 交通網の寸断や医療機関の機能停止により、人工透析やインスリン投与、その他定期的な治療・投薬が必要な患者が治療を継続できなくなるリスクがあります。
情報入手と避難行動の困難による孤立
  • 高齢者、障害者、外国人などは、防災行政無線やスマートフォン等による災害情報の入手が困難であったり、自力での避難が難しかったりするため、避難が遅れ、危険に晒される可能性が高まります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 逃げ遅れによる直接死や、支援から取り残されることによる心身の健康悪化が深刻化します。

地域社会の課題

医療機関への患者集中と機能不全
  • 発災直後、軽症者から重症者までが稼働可能な一部の医療機関、特に災害拠点病院に殺到します。これにより、トリアージや重症者への対応が追いつかず、病院機能が麻痺し、結果として救える命が救えなくなる「クラッシュ・シンドローム」に陥る恐れがあります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 救えるはずの重症患者が適切な手当てを受けられず、「防ぎうる災害死」が大幅に増加します。
医薬品・医療機器サプライチェーンの寸断
避難所における健康・衛生問題の深刻化

行政の課題

情報収集・伝達の遅延と錯綜
  • 発災直後は通信インフラの途絶や報告体制の混乱により、被害の全体像、各医療機関の被災・稼働状況、地域ごとの医療ニーズなどを正確に把握することが極めて困難となり、結果として初動対応の遅れにつながります。
    • 客観的根拠:
      • 東日本大震災では、広域災害救急医療情報システム(EMIS)への入力が徹底されず、またDMATが保有する衛星通信機能にも限界があったため、医療ニーズの正確な把握が困難でした。
      • 阪神・淡路大震災では、県庁の救急医療情報システムがダウンし、医療機関に関する情報が把握できなくなりました。
      • (出典)(https://www.bousai.go.jp/oukyu/higashinihon/2/pdf/kourou.pdf)
      • (出典)内閣府「阪神・淡路大震災教訓情報資料集【02】被災地医療機関」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 医療資源(チーム、物資)の配分が非効率かつ不適切となり、支援が本当に必要な場所に届かない事態が発生します。
医療チームの派遣・調整機能の限界
  • DMAT等の医療チームの派遣調整を行う災害対策本部(保健医療調整本部)のマンパワー不足や、多機関(自衛隊、消防、警察等)との連携不足により、医療チームの投入が遅れたり、活動が非効率になったりする可能性があります。
    • 客観的根拠:
      • 東日本大震災では、都道府県調整本部が非常に少ない要員で24時間体制を強いられ、疲労と非効率化が著しかったと報告されています。
      • DMATのロジスティクス(移動手段、燃料、食料、宿泊場所等)の確保が各チーム任せになっており、医療活動そのものに支障をきたす事例がありました。
      • (出典)(https://www.bousai.go.jp/oukyu/higashinihon/2/pdf/kourou.pdf)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 高度なスキルを持つ医療チームがその能力を最大限に発揮できず、全体の救命率が低下します。
広域医療搬送体制の計画・訓練不足
  • 被災した都内だけでは対応困難な重症患者を、被災地外の医療機関へ航空機等で搬送する「広域医療搬送」は、極めて高度な連携を要します。しかし、搬送拠点臨時医療施設(SCU)の具体的な運営計画や、関係機関を巻き込んだ実践的な訓練が不足しているのが現状です。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
    • 即効性・波及効果
      • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
    • 実現可能性
      • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
    • 費用対効果
      • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。
    • 公平性・持続可能性
      • 特定の地域・年齢層だけでなく、幅広い住民に便益が及ぶ施策を優先し、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
    • 客観的根拠の有無
      • 政府資料や過去の災害対応の教訓など、エビデンスに基づく効果が実証されている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 本報告書で特定された課題は、災害によって「情報」「物資」「人」の流れが寸断・混乱することに起因します。したがって、支援策は「①情報の流れを確保する」「②物資と医療機能の継続性を確保する」「③人の流れを最適化する」という3つの視点から体系化します。
  • 優先度【高】:支援策① ICTを活用した災害時要配慮者支援システムの構築
    • 最も生命の危機に瀕する住民の情報を可視化し、自助・共助・公助を結びつける基盤であり、他の全ての支援策の効果を高めるため、最優先で取り組むべきです。即効性・波及効果が極めて高く、公平性の観点からも重要です。
  • 優先度【中】:支援策② 地域医療継続計画(BCP)の連携強化とサプライチェーンの強靭化
    • 医療サービスそのものが停止しては元も子もないため、医療機能の維持は不可欠です。これは地域社会全体のレジリエンスを高める持続可能性の高い施策であり、支援策①と並行して推進します。
  • 優先度【低】:支援策③ 広域医療搬送・受援体制の高度化
    • 上記①②が機能していることを前提に、さらに救命率を高めるための高度な施策と位置づけられます。実現には大規模な訓練と多機関の調整が必要であり、中長期的な課題として取り組みます。

各支援策の詳細

支援策①:ICTを活用した災害時要配慮者支援システムの構築

目的
  • 在宅療養者など、災害時に最もリスクの高い「要配慮者」の情報を平時から一元的に把握し、災害時には安否確認、救助、物資提供、避難支援を迅速かつ的確に行うことを目的とします。
  • これにより、災害関連死の最大の要因である「孤立」と「医療・ケアの中断」を防ぎます。
主な取組①:パーソナル・データ・ストア(PDS)を活用した情報基盤の整備
  • 要配慮者本人の同意に基づき、氏名、住所、必要な医療ケア(人工呼吸器の有無等)、使用機器の電力要件、備蓄状況、かかりつけ医、緊急連絡先などの情報を、本人が管理するPDS(Personal Data Store)に登録・更新する仕組みを構築します。
  • 災害時には、本人の事前同意の範囲内で、区の対策本部、消防、警察、地域の支援団体(民生委員等)が必要な情報にアクセスできる権限を付与し、プライバシー保護と迅速な支援を両立させます。
主な取組②:リアルタイム安否確認・ニーズ把握システムの導入
  • スマートフォンアプリや、高齢者向けのIoT見守り端末、固定電話への自動音声応答システムなどを活用し、発災時にプッシュ型で安否確認を実施します。
  • 「無事」「要救助」「医薬品不足」「電源不足」など、選択式の回答によってニーズを即座に集約し、対策本部で地図上にマッピングして可視化します。
    • 客観的根拠:
主な取組③:地域支援者(共助)との情報連携
  • 本人の同意を得た上で、登録された地域の支援者(民生委員、町会役員、福祉協力員など)に対し、担当する要配慮者の安否確認状況や支援要請を共有する機能を設けます。
  • 支援者が行った対応(訪問、物資提供等)をシステムに入力することで、公助と共助の活動重複や漏れを防ぎ、効率的な連携を実現します。
主な取組④:電源・物資に関するマッチング支援
  • システム上で「電源必要」と発信した要配慮者に対し、近隣の避難所や公共施設、協力家庭・企業が提供可能な電源情報(ポータブル電源、EVからの給電等)をマッチングさせます。
  • 医薬品や衛生材料等の不足情報に基づき、区の備蓄拠点や移動薬局車(モバイルファーマシー)からの優先的な配送ルートを策定します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 災害関連死(医療・ケア中断に起因するもの)の80%削減
      • データ取得方法: 災害後の死亡診断書、死体検案書に基づく死因分析調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 要配慮者名簿登録率 80%以上
      • データ取得方法: システム登録者数 ÷ 推計対象者数(要介護認定者、障害者手帳所持者等)
    • 発災後24時間以内の安否確認率 90%以上
      • データ取得方法: システムの安否確認応答ログ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 安否確認後の救助・支援要請への平均応答時間 3時間以内
      • データ取得方法: システムの要請受信時刻と対応完了時刻のログ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • システム操作に関する住民・支援者向け説明会の年間開催数 50回以上
      • データ取得方法: 担当部署の事業実施報告
    • 地域支援者(共助)のシステム登録者数 5,000人以上
      • データ取得方法: システムの登録者データベース

支援策②:地域医療継続計画(BCP)の連携強化とサプライチェーンの強靭化

目的
  • 個々の医療機関の事業継続計画(BCP)に留まらず、二次保健医療圏等の地域単位で医療機関、医師会、薬剤師会、医薬品卸売業者などが連携した「地域医療継続計画(地域BCP)」を策定・運用します。
  • これにより、一部の医療機関が機能不全に陥っても、地域全体で医療機能を相互補完し、医薬品等のサプライチェーンを維持することを目指します。
主な取組①:地域BCP策定協議会の設置と共同訓練の実施
  • 二次保健医療圏ごとに、行政(区、保健所)、災害拠点病院、地域の病院・診療所、医師会、歯科医師会、薬剤師会、訪問看護ステーション、医薬品卸売業者等が参加する「地域災害医療BCP協議会」を設置します。
  • 協議会が主体となり、停電、断水、通信途絶、医薬品供給停止など、具体的なシナリオに基づいた共同図上訓練を年1回以上実施し、計画の実効性を検証・改善します。
主な取組②:医療機能の相互補完計画の策定
  • 各医療機関の機能(手術、透析、分娩、専門外来等)をマッピングし、ある病院の機能が停止した場合に、どの病院がその機能を代替するかを事前に具体的に定めます。
  • 患者情報(電子カルテ等)を共有するための標準化されたバックアップ・閲覧システムの導入を検討し、転院や代替診療を円滑に行える体制を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 青森県の「あおもりメディカルネット」のように、平時からICTを活用した診療情報共有ネットワークを構築しておくことで、災害時にも継続的な医療提供が可能となります。
      • (出典)(https://www.jt-tsushin.jp/articles/service/casestudy_chikiiryo-johorenkei-network_case)
主な取組③:医薬品・医療資器材の共同備蓄と融通体制の構築
  • 地域内の複数の医療機関や薬剤師会が連携し、医薬品や医療資器材の共同備蓄倉庫を設置します。これにより、各施設の備蓄負担を軽減しつつ、地域全体の備蓄量を確保します。
  • 災害時には、EMISや薬剤師会のネットワークを活用し、備蓄品や各施設の在庫情報を共有し、不足している施設へ迅速に融通する仕組みを構築します。
主な取組④:地域内物流(ラストワンマイル)の確保
  • 医薬品卸売業者、地域の運送会社、バイク便、ドローン事業者などと災害時協定を締結し、幹線道路が寸断された場合でも、備蓄拠点から各医療機関・避難所へ医薬品を配送する「ラストワンマイル」の輸送手段を確保します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 災害発生後72時間以内の地域医療機能(手術、透析、救急外来)の回復率 80%
      • データ取得方法: EMIS及び各医療機関からの報告に基づく機能稼働状況調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 二次保健医療圏単位での地域BCP策定率 100%
      • データ取得方法: 東京都福祉保健局による策定状況の確認
    • 地域BCPに基づく共同訓練の参加機関数 圏域内対象機関の90%以上
      • データ取得方法: 訓練実施報告書の参加機関リスト
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 災害時における医薬品・医療資器材の地域内融通実績 年間100件以上(訓練含む)
      • データ取得方法: 薬剤師会及び協議会による融通実績の記録
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 地域BCP協議会の年間開催数 各圏域で4回以上
      • データ取得方法: 協議会の議事録
    • 医薬品等のラストワンマイル輸送に関する協定締結数 各圏域で5協定以上
      • データ取得方法: 協定書の管理

支援策③:広域医療搬送・受援体制の高度化

目的
  • 首都直下地震など、東京都単独では対応不可能な大規模災害を想定し、重症患者を被災地外の医療機関へ迅速かつ安全に搬送する「広域医療搬送」体制を確立します。
  • 同時に、全国から派遣される医療チーム(DMAT、JMAT等)を円滑に受け入れ、効果的に活動してもらうための「受援体制」を整備します。
主な取組①:航空搬送拠点臨時医療施設(SCU)の機能強化
  • 広域医療搬送の拠点となる場所(立川飛行場、東京ヘリポート等)に設置されるSCU(Staging Care Unit)について、資機材の事前配備、運営マニュアルの標準化、参集スタッフの事前登録と訓練を徹底します。
  • SCUをサポートする後方支援病院を予め指定し、SCUでの対応が困難な患者の一時受け入れや、資機材・人員の補給を行える体制を構築します。
主な取組②:多機関連携による実践的な広域医療搬送訓練
  • 自衛隊、消防、警察、海上保安庁、民間航空会社など、患者搬送に関わる全ての機関が参加する実践的な合同訓練を年1回以上実施します。
  • 訓練では、実際の航空機(自衛隊機、ドクターヘリ等)を使用し、SCUでの患者安定化から航空機への搭載、被災地外の受け入れ病院への情報伝達まで、一連の流れを検証します。
主な取組③:受援計画の策定とロジスティクス支援体制の構築
  • 全国から参集する医療チームの活動拠点、宿営場所、移動手段(車両、燃料)、通信手段、食料・水の供給計画などを具体的に定めた「受援計画」を策定します。
  • 医療チームの活動支援に特化した「ロジスティクス・チーム」を編成・育成します。チームは行政職員、民間物流業者、アマチュア無線家などで構成し、医療チームが診療活動に専念できる環境を整備します。
    • 客観的根拠:
      • 東日本大震災では、DMATのロジスティクス確保が大きな課題となり、中央直轄のロジスティクス専門要員の必要性が提言されました。
      • (出典)(https://www.bousai.go.jp/oukyu/higashinihon/2/pdf/kourou.pdf)
主な取組④:標準化された情報共有プラットフォームの活用
  • 受け入れ可能な被災地外の病院の空床情報、各医療チームの活動状況、搬送患者の申し送り情報などを、関係機関がリアルタイムで共有できる統一された情報プラットフォーム(EMISの機能強化版など)を導入・活用します。
    • 客観的根拠:
      • 過去の災害では、医療、消防、自衛隊など、異なるセクター(組織)を超えた情報共有システムの必要性が繰り返し指摘されています。
      • (出典)(https://www.bousai.go.jp/oukyu/higashinihon/2/pdf/kourou.pdf)
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 広域医療搬送対象となった重症患者の救命率 95%以上
      • データ取得方法: 搬送患者の転帰追跡調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 発災から広域医療搬送(第一便)開始までの時間 24時間以内
      • データ取得方法: 災害時活動記録、訓練評価記録
    • 受援医療チームの活動満足度 90%以上(ロジスティクス支援等に関するアンケート)
      • データ取得方法: 活動終了後の各医療チームへのアンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • SCUにおける平均滞在時間 4時間以内
      • データ取得方法: SCUでの患者出入管理記録
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 多機関連携による広域医療搬送実動訓練の年間実施回数 1回以上
      • データ取得方法: 訓練計画書及び実施報告書
    • ロジスティクス・チームの登録隊員数 100名以上
      • データ取得方法: チーム隊員登録名簿

先進事例

東京都特別区の先進事例

板橋区「医師会との連携による地域密着型医療救護体制」

  • 板橋区は、東日本大震災の教訓(発災直後に住民は医療救護所ではなく病院に殺到する)を踏まえ、平成26年に板橋区医師会との間で災害時医療救護活動に関する協定を改定しました。
  • 震度6弱以上の地震発生時には、区からの要請を待たずに医師会が自主的に区内15ヵ所の災害拠点病院・災害拠点連携病院に設置される「緊急医療救護所」へ医師を派遣する体制を構築しています。
  • 平時から医師会が派遣医師リストを作成し、区は救護所用の資機材を各病院に配備するなど、具体的な役割分担と計画を策定しており、発災初期の医療機能の混乱を抑制し、地域全体で対応する体制を目指しています。

世田谷区「総合防災情報システムを活用した情報連携」

  • 世田谷区は、災害対応における情報集約・共有の課題を解決するため、NTT東日本と連携し「総合防災情報システム」を導入しました。
  • このシステムは、区内各所の被害状況、避難所の開設状況、ライフライン情報などを地図上にリアルタイムで可視化し、区の災害対策本部と各総合支所、出動中の職員などが同一情報を共有できる体制を構築しています。
  • 電話連絡に依存していた従来の方法から脱却し、迅速な状況把握と的確な意思決定を支援します。将来的には、この情報基盤を活用し、要配慮者の安否確認情報などを連携させることも期待されます。

墨田区「要配慮者個別避難支援プランの策定推進」

  • 墨田区は、災害時に自力での避難が困難な高齢者や障害者などを支援するため、「要配慮者個別避難支援プラン」の作成を推進しています。
  • このプランは、本人や家族の同意のもと、平常時から民生委員や町会・自治会、福祉専門職などが連携し、「どこへ」「誰が」「どのように」避難を支援するかを具体的に定めた個別の計画です。
  • 作成されたプランは本人、支援者、地域、区役所で共有され、平時の見守りから災害時の安否確認、避難誘導まで一貫した支援体制の構築を目指しており、共助の仕組みを具体化する先進的な取り組みです。

全国自治体の先進事例

神戸市「阪神・淡路大震災の教訓を活かした継続的体制改善」

  • 阪神・淡路大震災で医療体制の脆弱性を痛感した神戸市は、その教訓を基に継続的な体制強化を行っています。令和6年度には、市内の全区に「災害対応病院」を指定し、バックアップ支援体制を構築しました。
  • さらに、通信途絶に備え、災害対応病院や区本部に衛星通信「スターリンク」を配備し、情報連絡体制を強化しています。軽症者は救護所、中等症〜重症者は災害対応病院、重篤患者は災害拠点病院と、傷病者の重症度に応じた明確な役割分担と搬送体制を構築しており、大災害の経験を具体的な計画に昇華させている点が特徴です。

熊本市「熊本地震の経験と公民連携による先進技術開発」

  • 熊本地震で基幹災害拠点病院として中心的な役割を果たした熊本赤十字病院は、災害医療の課題解決のため、民間企業と連携して先進的な技術開発に取り組んでいます。
  • 具体的には、トヨタ自動車と共同で水素で稼働する「燃料電池医療車」を開発し、災害時の電源供給と医療活動を両立。また、ドローンによる医薬品の高品質な物流、携帯電話の位置情報を活用した孤立集落の特定、上下水道が不要な「完全自己処理型水洗トイレ」など、現場のニーズから生まれた技術を社会実装しています。行政だけでなく、中核病院がイノベーションの拠点となる公民連携モデルとして全国の参考となります。

参考資料[エビデンス検索用]

白書
国(省庁)関連資料
東京都・特別区関連資料
その他自治体・機関資料

まとめ

 東京都特別区における災害時医療体制の強化は、首都直下地震という未曾有の危機から一人でも多くの命を救うための最重要課題です。過去の大規模災害の教訓は、医療機能の維持だけでなく、情報、物資、人の流れをいかに確保するかが鍵であることを示しています。特に、高齢者や在宅療養者といった要配慮者の急増は、従来型の災害医療体制では対応できない新たな課題を突きつけています。提案した、ICTを活用した要配慮者支援、地域連携によるBCPとサプライチェーンの強靭化、そして広域での搬送・受援体制の高度化は、これらの課題に対応し、「防ぎうる災害死」をゼロに近づけるための具体的な道筋です。平時からの計画的な投資と、行政、医療機関、地域住民が一体となった訓練の継続が不可欠です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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