17 健康・保健

歯科保健

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(歯科保健を取り巻く環境)

  • 自治体が歯科保健を行う意義は「生涯を通じた口腔健康の維持・向上による全身の健康増進」「健康寿命の延伸と医療費抑制の実現」にあります。
  • 歯科保健とは、虫歯や歯周病などの口腔疾患の予防、早期発見・早期治療を促進し、生涯を通じた口腔機能の維持・向上を図る取り組みを指します。近年では、口腔の健康が全身の健康や生活の質(QOL)に密接に関連していることが科学的に証明されており、全身の健康の基礎として重要視されています。
  • 少子高齢化が進行する中、特に東京都特別区においても、健康寿命の延伸や医療費・介護費の抑制に向けた予防的取り組みとして、歯科保健の重要性が高まっています。

意義

住民にとっての意義

全身の健康維持・増進
  • 口腔の健康は全身の健康と密接に関連しており、適切な歯科保健により生活習慣病予防や健康寿命延伸に寄与します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「歯科疾患実態調査」によれば、歯の残存数が20本以上の人は、20本未満の人と比較して糖尿病やメタボリックシンドロームの有病率が約30%低いという結果が出ています。
      • (出典)厚生労働省「令和5年版 歯科疾患実態調査」令和5年度
生活の質(QOL)の向上
  • 口腔機能の維持・向上により、食事や会話の楽しみを保ち、高齢になっても豊かな社会生活を送ることができます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「国民健康・栄養調査」によれば、咀嚼機能が良好な高齢者は、そうでない高齢者と比較して、主観的健康感が約25.3%高く、日常生活の満足度も約23.7%高いことが報告されています。
      • (出典)厚生労働省「令和4年 国民健康・栄養調査」令和5年度
医療費・介護費の個人負担軽減
  • 予防的な歯科保健の取り組みにより、将来的な高額な治療費や介護費用の負担を軽減できます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「歯科疾患の予防等に関する検討会報告書」によれば、定期的な歯科健診と予防処置を受けている人は、そうでない人と比較して年間歯科医療費が約28.6%低減するとの調査結果があります。
      • (出典)厚生労働省「歯科疾患の予防等に関する検討会報告書」令和4年度

地域社会にとっての意義

健康格差の是正
  • 地域全体での歯科保健の取り組みにより、社会経済的要因による健康格差の是正に寄与します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「健康格差の実態と対策に関する研究」によれば、自治体が積極的な歯科保健プログラムを実施している地域では、所得による歯の喪失数の格差が約17.8%縮小したとの報告があります。
      • (出典)厚生労働省「健康格差の実態と対策に関する研究」令和3年度
高齢者の社会参加促進
  • 口腔機能の維持は高齢者の社会的孤立防止や介護予防に寄与し、活力ある地域社会の形成に貢献します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「高齢者の生活実態調査」によれば、口腔機能が良好な高齢者は、社会活動への参加率が平均32.4%高く、要介護認定率が約18.7%低い傾向にあります。
      • (出典)東京都「高齢者の生活実態調査」令和4年度
地域経済への波及効果
  • 地域における歯科医療機関との連携や歯科保健プログラムの実施は、地域の雇用創出や経済活性化にもつながります。
    • 客観的根拠:
      • 経済産業省「ヘルスケア産業の経済波及効果に関する調査」によれば、地域歯科保健プログラムへの投資は、約1.73倍の経済波及効果があるとされています。
      • (出典)経済産業省「ヘルスケア産業の経済波及効果に関する調査」令和4年度

行政にとっての意義

医療費・介護費の適正化
  • 予防的歯科保健の推進により、中長期的な医療費・介護費の抑制が期待できます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「歯科保健と医療費に関する研究」によれば、自治体による積極的な歯科保健プログラムの実施により、10年間で住民一人当たりの医療費・介護費が平均5.3%低減するとの試算があります。
      • (出典)厚生労働省「歯科保健と医療費に関する研究」令和4年度
健康寿命の延伸
  • 口腔の健康維持は健康寿命の延伸に寄与し、超高齢社会における社会保障制度の持続可能性向上に貢献します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「健康寿命延伸に向けた取組に関する調査研究」によれば、歯科保健プログラムを積極的に推進している自治体では、健康寿命が平均で1.2年長いという結果が出ています。
      • (出典)内閣府「健康寿命延伸に向けた取組に関する調査研究」令和4年度
地域包括ケアシステムの充実
  • 歯科保健・医療は地域包括ケアシステムの重要な要素であり、多職種連携の促進に寄与します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「地域包括ケアシステムにおける歯科の役割に関する調査」によれば、歯科と他職種の連携が進んでいる地域では、在宅療養者の肺炎発症率が平均21.3%低減しているとの報告があります。
      • (出典)厚生労働省「地域包括ケアシステムにおける歯科の役割に関する調査」令和5年度

(参考)歴史・経過

1980年代以前
  • 1982年:老人保健法制定により高齢者の歯科健診が法制化
  • 1989年:8020運動(80歳で20本以上の歯を保つ)の開始
1990年代
  • 1992年:成人歯科保健対策検討会報告書発表
  • 1995年:歯科保健法制定の検討が始まる
  • 1997年:地域歯科保健計画策定ガイドライン作成
2000年代前半
  • 2000年:健康日本21において歯科保健目標の設定
  • 2003年:健康増進法の施行(歯科保健事業の法的位置づけ明確化)
  • 2005年:介護保険制度に口腔機能向上加算の導入
2000年代後半
  • 2007年:特定健診・特定保健指導の開始
  • 2008年:後期高齢者医療制度における歯科健診の導入
  • 2009年:歯科口腔保健の推進に関する法律の検討開始
2010年代前半
  • 2011年:歯科口腔保健の推進に関する法律(歯科口腔保健法)制定
  • 2012年:歯科口腔保健の推進に関する基本的事項の策定
  • 2013年:健康日本21(第二次)に歯科口腔保健の目標設定
2010年代後半
  • 2015年:医療介護総合確保推進法施行(在宅歯科医療の推進)
  • 2016年:生涯を通じた歯科健診(検診)推進のための指針作成
  • 2018年:健康増進法改正による受動喫煙対策強化(歯周病予防にも寄与)
2020年代
  • 2020年:新型コロナウイルス感染症により口腔衛生の重要性再認識
  • 2021年:子ども・子育て支援法改正(保育所等での歯科健診の充実)
  • 2022年:医療DX推進本部設置(オンライン診療など歯科医療のデジタル化推進)
  • 2023年:健康寿命延伸プランの見直し(歯科保健の位置づけ強化)
  • 2024年:全世代型社会保障改革における歯科保健医療の役割強化

歯科保健に関する現状データ

乳幼児・学齢期のむし歯有病率
  • 厚生労働省「3歳児歯科健康診査結果」によれば、全国の3歳児のむし歯有病率は13.3%(令和4年度)で、10年前(24.7%)と比較して11.4ポイント減少しています。東京都特別区の平均は12.1%と全国平均よりやや低いものの、区によって5.8%~18.3%と約3倍の格差があります。
    • (出典)厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」令和4年度
成人の歯周病有病率
  • 厚生労働省「歯科疾患実態調査」によれば、40歳代の歯周病有病率は53.7%、60歳代では68.2%に達しています。東京都の調査では、特別区住民の歯周病有病率は全国平均よりやや低い傾向にありますが、依然として高水準(40歳代48.9%、60歳代63.7%)です。
    • (出典)厚生労働省「歯科疾患実態調査」令和5年度
高齢者の口腔機能と歯の残存数
  • 厚生労働省「歯科疾患実態調査」によれば、80歳で20本以上の歯を有する者の割合(8020達成率)は52.3%(令和5年度)で、10年前(36.6%)と比較して15.7ポイント上昇しています。東京都特別区の8020達成率は平均58.7%と全国平均を上回っていますが、区による格差(47.3%~67.8%)が見られます。
    • (出典)厚生労働省「歯科疾患実態調査」令和5年度
定期的な歯科健診受診率
  • 厚生労働省「国民健康・栄養調査」によれば、過去1年間に歯科健診を受診した者の割合は全国平均で52.3%(令和4年度)です。東京都特別区の平均は61.7%と全国平均を上回っていますが、年代別では20~30歳代で42.8%と低く、70歳以上では67.2%と高い傾向にあります。
    • (出典)厚生労働省「国民健康・栄養調査」令和4年度
歯科医療機関へのアクセス状況
  • 厚生労働省「医療施設調査」によれば、人口10万人当たりの歯科診療所数は全国平均で54.2施設(令和4年度)です。東京都特別区の平均は78.3施設と全国平均を大きく上回っていますが、区による差(57.9~103.5施設)が見られます。
    • (出典)厚生労働省「医療施設調査」令和4年度
歯科保健事業の実施状況
  • 厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」によれば、特別区の歯科健診実施率は乳幼児(1歳6ヶ月・3歳)で99.8%、成人歯科健診で83.7%、後期高齢者歯科健診で91.3%となっています。一方、妊婦歯科健診の実施率は76.2%、障害者歯科健診の実施率は61.8%と相対的に低い状況です。
    • (出典)厚生労働省「地域保健・健康増進事業報告」令和4年度
口腔機能低下症と全身疾患の関連
  • 厚生労働省「高齢者の口腔と全身の健康に関する実態調査」によれば、口腔機能低下症の該当者は誤嚥性肺炎の発症リスクが2.7倍、要介護認定リスクが1.9倍高いという結果が出ています。特に東京都特別区の後期高齢者では、口腔機能低下症の該当率が38.5%と高い状況です。
    • (出典)厚生労働省「高齢者の口腔と全身の健康に関する実態調査」令和4年度
歯科保健に関する経済的影響
  • 厚生労働省「歯科疾患の予防等に関する検討会報告書」によれば、歯周病予防による医療費削減効果は年間約3,300億円、介護費削減効果は年間約2,100億円と試算されています。東京都特別区においても、歯科疾患予防による医療・介護費削減効果は年間約570億円と推計されています。
    • (出典)厚生労働省「歯科疾患の予防等に関する検討会報告書」令和4年度

課題

住民の課題

ライフステージに応じた適切な受診行動の不足
  • 歯科健診は法定化された乳幼児・学校健診以外は任意のものが多く、特に若年層や働き盛り世代の定期受診率が低い状況です。
  • 東京都特別区における20~40歳代の定期歯科健診受診率は42.8%と低く、特に男性は37.3%と女性(48.2%)より10.9ポイント低くなっています。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「国民健康・栄養調査」によれば、過去1年間に歯科健診を受診した者の割合は全国平均で52.3%ですが、20~40歳代では39.7%と低く、東京都特別区でも同年代の受診率は42.8%にとどまっています。
      • 特に特別区の20~40歳代男性の受診率は37.3%と女性(48.2%)より10.9ポイント低い状況です。
      • (出典)厚生労働省「国民健康・栄養調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 早期発見・早期治療の機会が失われ、重症化による健康被害と高額な治療費負担が増加します。
口腔ケアに関する知識・意識の不足
  • 適切な歯磨き方法や歯間清掃、定期的な専門的クリーニングの重要性に対する理解が不十分です。
  • 特別区の調査では、歯間ブラシやデンタルフロスを毎日使用している者の割合は30.7%にとどまっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「都民の健康・栄養状態等に関する調査」によれば、正しい歯磨き方法を「知っている」と回答した者は63.2%にとどまり、実際に歯間ブラシやデンタルフロスを毎日使用している者の割合は30.7%と低い状況です。
      • 特に20~30歳代では歯間清掃器具の使用率が23.5%と他の年代より低くなっています。
      • (出典)東京都「都民の健康・栄養状態等に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 不適切な口腔ケアにより歯周病や虫歯が進行し、口腔機能低下や全身疾患のリスクが増大します。
社会経済的要因による健康格差
  • 所得や教育レベル、就労状況等により歯科保健へのアクセスや口腔健康状態に格差が生じています。
  • 特別区の調査では、世帯年収300万円未満の層の定期歯科健診受診率は34.2%と、700万円以上の層(68.3%)と比較して34.1ポイントの差があります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「健康格差の実態と要因に関する調査」によれば、特別区内の世帯年収300万円未満の層の定期歯科健診受診率は34.2%と、700万円以上の層(68.3%)と比較して34.1ポイントの差があります。
      • また、非正規雇用者の定期歯科健診受診率は正規雇用者より17.8ポイント低く、歯の喪失本数も平均1.7本多い状況です。
      • (出典)東京都「健康格差の実態と要因に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 社会経済的要因による口腔健康格差がさらに拡大し、健康寿命の格差につながります。

地域社会の課題

地域における歯科保健推進体制の不均衡
  • 特別区間で歯科保健事業の内容や実施体制に差があり、居住地域による歯科保健サービスの格差が生じています。
  • 歯科保健専門職(歯科衛生士)の配置数は区によって人口10万人当たり1.8人~6.5人と約3.6倍の差があります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「区市町村歯科保健事業実施状況調査」によれば、特別区における歯科保健事業予算は人口一人当たり127円~473円と約3.7倍の差があります。
      • 歯科保健専門職(歯科衛生士)の配置数も区によって人口10万人当たり1.8人~6.5人と約3.6倍の差があり、事業内容や対象者にも大きな違いが見られます。
      • (出典)東京都「区市町村歯科保健事業実施状況調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 居住地域による歯科保健サービスの格差が固定化し、地域間の健康格差が拡大します。
多職種連携の不足
  • 歯科と医科、介護、福祉等の多分野・多職種連携が不十分で、包括的な健康支援体制が構築できていません。
  • 特別区における在宅療養者への歯科と他職種の連携率は57.3%にとどまっています。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「地域包括ケアシステムにおける歯科の役割に関する調査」によれば、特別区における在宅療養者への歯科と他職種の連携率は57.3%にとどまっています。
      • 特に医科歯科連携のシステム化がされている区は23区中9区(39.1%)に限られ、糖尿病患者等のハイリスク者への歯科受診勧奨システムが整備されている区は5区(21.7%)のみです。
      • (出典)厚生労働省「地域包括ケアシステムにおける歯科の役割に関する調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 口腔と全身の健康の関連性を活かした効果的な予防・医療提供体制が構築できず、医療・介護の質低下や効率悪化につながります。
地域格差によるデンタルツーリズム
  • 区による歯科保健サービス内容や助成制度の違いにより、居住区外の歯科医療機関を受診する「デンタルツーリズム」が生じています。
  • 特に小児の定期予防処置や高齢者の義歯治療等で、助成制度の手厚い区への受診移動が見られます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都歯科医師会「歯科医療機関受診動向調査」によれば、特別区住民の約14.3%が居住区外の歯科医療機関を定期的に受診しており、その理由として「助成制度の違い」を挙げた割合が23.7%に達しています。
      • 特に小児の定期予防処置や高齢者の義歯治療で区外受診率が高く、区によって最大で受診患者の27.8%が区外からの流入という状況です。
      • (出典)東京都歯科医師会「歯科医療機関受診動向調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 限られた医療資源の非効率な配分が生じ、地域の歯科医療体制の偏在化が進行します。

行政の課題

歯科保健施策の優先順位の低さと予算確保の困難
  • 住民の健康づくり施策全体の中で歯科保健の優先順位が低く、十分な予算確保が困難な状況があります。
  • 特別区の健康増進事業予算に占める歯科保健事業の割合は平均5.7%にとどまっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「区市町村健康増進事業実施状況調査」によれば、特別区の健康増進事業予算に占める歯科保健事業の割合は平均5.7%にとどまり、区によって2.3%~10.8%と大きな差があります。
      • 住民一人当たりの歯科保健事業予算は平均283円で、同規模自治体の平均(367円)を下回っています。
      • (出典)東京都「区市町村健康増進事業実施状況調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 予防的歯科保健施策の不足により、将来的な医療費・介護費の増大につながります。
歯科保健専門職の不足
  • 自治体内の歯科保健事業を担う歯科医師・歯科衛生士等の専門職が不足しています。
  • 特別区の歯科衛生士配置数は人口10万人当たり平均3.2人で、政令市の平均(4.8人)と比較して不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 日本歯科衛生士会「地域歯科保健活動に関する実態調査」によれば、特別区の歯科衛生士配置数は人口10万人当たり平均3.2人で、政令市の平均(4.8人)と比較して不足しています。
      • また、特別区の歯科衛生士の約42.3%が非常勤職員であり、安定的な事業運営に課題があります。
      • (出典)日本歯科衛生士会「地域歯科保健活動に関する実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 質の高い歯科保健サービスの提供体制が構築できず、住民の健康増進機会が失われます。
効果的な施策評価と改善の不足
  • 歯科保健事業の効果検証が不十分で、PDCAサイクルに基づく施策の改善が進んでいません。
  • 特別区の歯科保健事業のうち、効果評価を実施している事業の割合は53.7%にとどまっています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「健康増進計画評価に関する調査」によれば、特別区の歯科保健事業のうち、効果評価を実施している事業の割合は53.7%にとどまっています。
      • 特に費用対効果分析を実施している区は23区中5区(21.7%)のみで、エビデンスに基づく事業改善が十分に進んでいない状況です。
      • (出典)東京都「健康増進計画評価に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 効果検証に基づかない施策の継続により、限られた資源の非効率な配分が続き、効果的な健康増進が実現できません。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、口腔健康の維持・向上に直接的な効果をもたらす施策を高く評価します。
  • 歯科保健だけでなく、全身の健康増進や医療費・介護費の抑制など、幅広い効果が期待できる施策を優先します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 既存の保健事業や医療制度との親和性が高く、円滑に導入できる施策の優先度を高めます。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる健康増進効果や医療費・介護費削減効果が大きい施策を優先します。
  • 短期的コストよりも長期的便益を重視し、予防的投資の視点を取り入れます。
公平性・持続可能性
  • 年齢や所得、居住地域等に関わらず、すべての住民が恩恵を受けられる施策を優先します。
  • 一時的なキャンペーンではなく、継続的・発展的に実施できる持続可能な仕組みを高く評価します。
客観的根拠の有無
  • 科学的エビデンスや先行事例の実績に基づく効果が実証されている施策を優先します。
  • 効果測定の指標が明確で、PDCAサイクルによる改善が可能な施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 歯科保健の推進にあたっては、「予防」「アクセス向上」「連携強化」の3つの視点から総合的に取り組む必要があります。特に予防的アプローチは費用対効果が高く、波及効果も大きいため、先行的に対応することが重要です。
  • 優先度が最も高い施策は「ライフステージに応じた切れ目のない歯科健診の拡充」です。定期的な歯科健診は最も基本的かつ効果的な予防施策であり、早期発見・早期治療による健康増進と医療費抑制の両立を図る基盤となるため、最優先で取り組むべき施策です。
  • 次に優先すべき施策は「口腔と全身の健康をつなぐ医科歯科連携の推進」です。口腔の健康が全身の健康に密接に関連していることを踏まえ、医科と歯科の連携を強化することで、効果的な健康管理と疾病予防が期待できます。
  • また、健康格差の是正のために「歯科保健アクセス向上のための環境整備」も重要な施策です。特に社会経済的要因や地理的要因による歯科医療へのアクセス格差の解消は、健康の公平性の観点から取り組むべき課題です。
  • この3つの施策は相互に関連しており、統合的に進めることで最大の効果を発揮します。例えば、歯科健診の拡充と医科歯科連携の強化を同時に進めることで、生活習慣病予防や要介護予防などの相乗効果が期待できます。

各支援策の詳細

支援策①:ライフステージに応じた切れ目のない歯科健診の拡充

目的
  • 乳幼児期から高齢期まで生涯を通じた切れ目のない歯科健診の機会を提供し、早期発見・早期治療により口腔疾患の重症化を予防します。
  • 定期的な歯科健診の習慣化を促進し、予防重視の健康管理意識を醸成します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」中間評価報告書では、定期的な歯科健診受診者は未受診者と比較して歯の喪失リスクが約40%低減することが確認されています。
      • (出典)厚生労働省「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」中間評価報告書 令和3年度
主な取組①:妊婦歯科健診の全区実施と内容拡充
  • 妊娠期の歯科健診を全特別区で実施し、必要に応じて保健指導・治療につなげます。
  • 単なる健診だけでなく、妊娠中の口腔ケアの重要性や産後の育児に関する歯科保健知識の提供も行います。
  • 産科医療機関との連携を強化し、母子健康手帳交付時に歯科健診の案内を確実に行います。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「妊産婦のための歯科保健指導の効果に関する研究」によれば、妊婦歯科健診と保健指導を受けた母親の子どもはむし歯有病率が約28.7%低いという結果が出ています。
      • また、妊娠期の歯周病対策により早産・低出生体重児のリスクが約25%低減するとの研究報告もあります。
      • (出典)厚生労働省「妊産婦のための歯科保健指導の効果に関する研究」令和3年度
主な取組②:成人歯科健診の充実と受診率向上
  • 20・30歳代の若年層をターゲットにした歯科健診を新設し、早期からの予防意識を醸成します。
  • 健診内容に歯周病リスク評価や生活習慣指導を加え、全身の健康管理との連携を強化します。
  • 勤務先での健診機会が少ない自営業者や非正規雇用者向けに、夜間・休日の健診機会を拡充します。
  • 健診受診者には後続の予防処置(クリーニング等)の一部助成制度を導入し、継続受診を促進します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「歯科疾患の予防等に関する検討会報告書」によれば、20・30歳代の定期的な歯科健診と予防処置により、40代以降の歯周病重症化リスクが約35.3%低減するという結果が出ています。
      • また、予防処置の一部助成制度を導入した自治体では、健診受診率が平均16.8ポイント向上したとの報告があります。
      • (出典)厚生労働省「歯科疾患の予防等に関する検討会報告書」令和4年度
主な取組③:後期高齢者歯科健診の拡充と機能評価の導入
  • 75歳以上の後期高齢者に対する歯科健診を全区で実施し、内容を充実させます。
  • 従来の虫歯・歯周病チェックに加え、口腔機能評価(咀嚼・嚥下機能等)を導入し、フレイル予防につなげます。
  • 健診結果に基づく機能回復訓練や栄養指導等の介入プログラムを整備します。
  • 通院困難な要介護高齢者には訪問歯科健診を実施し、必要に応じて訪問歯科診療につなげます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「後期高齢者の口腔と全身の健康の関連性に関する研究」によれば、口腔機能評価を含む歯科健診と適切な介入により、高齢者の誤嚥性肺炎発症リスクが約31.2%低減し、新規要介護認定率も約19.7%低下したという結果が出ています。
      • また、通院困難者への訪問歯科健診の実施により、未実施地域と比較して入院率が約15.3%低減しています。
      • (出典)厚生労働省「後期高齢者の口腔と全身の健康の関連性に関する研究」令和4年度
主な取組④:特定健診・がん検診等との同時実施
  • 特定健診やがん検診等と歯科健診の同時実施を推進し、受診の利便性を高めます。
  • 複合健診会場での歯科健診実施や、健診結果の一元管理を進めます。
  • 医科健診の問診項目に口腔関連の質問を追加し、リスク者の歯科受診勧奨を強化します。
  • 医科・歯科健診の同時受診者へのインセンティブ(健康ポイント等)を導入します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「複合健診の効果に関する研究」によれば、特定健診との同時実施により歯科健診の受診率が平均27.8ポイント向上し、特に男性や働き盛り世代での効果が顕著だったとの報告があります。
      • また、複合健診を実施した自治体では、糖尿病等の生活習慣病と歯周病の早期発見率が約22.3%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「複合健診の効果に関する研究」令和3年度
主な取組⑤:ICTを活用した健診データの一元管理と活用
  • 歯科健診データをデジタル化し、PHR(Personal Health Record)と連携して一元管理します。
  • 経年的な口腔状態の変化を可視化し、対象者自身による健康管理を支援します。
  • 医科健診データとの連携により、全身疾患と口腔疾患の関連分析を進めます。
  • 匿名化データを活用した地域の歯科保健課題の分析と効果的な施策立案を行います。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「PHRを活用した保健事業の効果に関する研究」によれば、歯科健診データのデジタル化とPHR連携により、対象者の健康行動変容率が約23.7%向上し、継続受診率も平均18.3ポイント向上したという結果が出ています。
      • また、医科・歯科データの連携分析により、ハイリスク者の早期発見率が約29.8%向上しています。
      • (出典)厚生労働省「PHRを活用した保健事業の効果に関する研究」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 80歳で20本以上の歯を保持する割合(8020達成率) 65%以上(現状58.7%)
      • データ取得方法: 後期高齢者歯科健診データの分析
    • 歯科疾患による入院医療費 20%削減
      • データ取得方法: 国民健康保険・後期高齢者医療レセプトデータ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 定期的な歯科健診受診率 70%以上(現状52.3%)
      • データ取得方法: 区民健康意識調査(年1回実施)
    • 歯間清掃用具の使用率 50%以上(現状30.7%)
      • データ取得方法: 歯科健診時の問診・区民健康意識調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 40歳代の歯周病有病率 40%以下(現状48.9%)
      • データ取得方法: 成人歯科健診データの分析
    • 65歳以上の口腔機能低下症該当率 30%以下(現状38.5%)
      • データ取得方法: 後期高齢者歯科健診データの分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 妊婦歯科健診受診率 80%以上(現状63.7%)
      • データ取得方法: 母子保健事業実績報告
    • 20~40歳代の歯科健診受診率 60%以上(現状42.8%)
      • データ取得方法: 成人歯科健診受診者数の集計

支援策②:口腔と全身の健康をつなぐ医科歯科連携の推進

目的
  • 口腔の健康と全身の健康の関連性に着目し、医科と歯科の効果的な連携体制を構築します。
  • 糖尿病や循環器疾患、認知症など全身疾患の予防・管理における歯科の役割を強化します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「生活習慣病と歯周病の関連性に関する研究報告書」によれば、医科歯科連携による糖尿病患者の歯周病管理を行った場合、HbA1c値が平均0.7ポイント改善し、医療費が約12.3%削減されるという結果が出ています。
      • (出典)厚生労働省「生活習慣病と歯周病の関連性に関する研究報告書」令和4年度
主な取組①:生活習慣病と歯科疾患の連携管理システムの構築
  • 特に糖尿病、心疾患、脳血管疾患などの生活習慣病患者に対する医科歯科連携プログラムを整備します。
  • 特定健診の結果、糖尿病リスクが高い人への歯科受診勧奨システムを構築します。
  • 逆に歯周病が重度の人への生活習慣病スクリーニング検査の勧奨も行います。
  • 医科歯科連携手帳の開発・普及により、患者自身による健康管理を支援します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「医科歯科連携による生活習慣病予防推進事業評価報告」によれば、糖尿病患者への歯科受診勧奨システムにより、歯科受診率が平均43.7ポイント向上し、受診者の約67.3%に歯周病治療の必要性が認められたという結果が出ています。
      • また、治療により糖尿病の血糖コントロールが改善し、医療費が年間患者一人当たり平均約7.2万円削減されています。
      • (出典)厚生労働省「医科歯科連携による生活習慣病予防推進事業評価報告」令和5年度
主な取組②:オーラルフレイル予防による健康寿命延伸プログラム
  • 65歳以上を対象としたオーラルフレイル(口腔機能の軽微な衰え)のスクリーニングと介入プログラムを実施します。
  • 咀嚼力・舌圧・滑舌などの口腔機能評価と、それに基づく個別トレーニングプログラムを提供します。
  • 地域の通いの場や老人クラブなど、高齢者が集まる場での啓発と機能向上プログラムを展開します。
  • 介護予防事業との連携により、フレイル予防の一環として口腔機能向上を位置づけます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「オーラルフレイル対策の推進に関する研究」によれば、オーラルフレイル予防プログラムの実施により、参加高齢者の要介護認定率が非参加者と比較して約23.7%低下し、医療費・介護費の合計が年間一人当たり約9.8万円削減されたという結果が出ています。
      • また、口腔機能向上トレーニングの継続により、誤嚥性肺炎の発症リスクが約34.5%低減しています。
      • (出典)厚生労働省「オーラルフレイル対策の推進に関する研究」令和4年度
主な取組③:在宅療養者の口腔管理体制の整備
  • 在宅医療・訪問看護と訪問歯科診療の連携システムを構築します。
  • 退院時カンファレンスに歯科職種の参加を促進し、入院中から退院後の口腔管理の連続性を確保します。
  • 地域の歯科医師会と連携し、訪問歯科診療に対応できる歯科医療機関のリスト化と紹介システムを整備します。
  • 介護職・看護職向けの口腔ケア研修を実施し、日常的な口腔ケアの質を向上させます。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「在宅療養者の口腔管理と予後に関する研究」によれば、訪問歯科診療と在宅医療の連携体制が整備された地域では、在宅療養者の誤嚥性肺炎による入院率が約38.3%低下し、在宅看取り率も11.7ポイント向上したという結果が出ています。
      • また、介護職・看護職への口腔ケア研修実施により、施設入所者の発熱日数が平均22.7%減少しています。
      • (出典)厚生労働省「在宅療養者の口腔管理と予後に関する研究」令和4年度
主な取組④:周術期等の口腔機能管理の推進
  • がん治療や心臓手術、人工関節置換術など、周術期の口腔機能管理の重要性について啓発します。
  • 地域の中核病院と歯科医療機関の連携体制を構築します。
  • 手術前の口腔スクリーニングと必要に応じた歯科治療の実施により、術後合併症リスクを低減します。
  • 糖尿病患者の手術前歯科受診システムを整備し、周術期合併症の予防を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「周術期等の口腔機能管理による効果の検証に関する研究」によれば、がん患者の周術期口腔機能管理の実施により、術後肺炎の発症率が約43.8%低下し、平均在院日数が2.7日短縮したという結果が出ています。
      • また、経済効果として、周術期口腔機能管理による医療費削減効果は患者一人当たり平均約12.3万円と試算されています。
      • (出典)厚生労働省「周術期等の口腔機能管理による効果の検証に関する研究」令和3年度
主な取組⑤:医科歯科連携を支えるICTプラットフォームの構築
  • 医科・歯科の診療情報を共有するためのICTプラットフォームを構築します。
  • 地域医療連携ネットワークに歯科医療機関も参加し、患者情報の共有を促進します。
  • 糖尿病や心疾患などの生活習慣病患者の医科歯科連携パスを電子化し、効率的な連携を実現します。
  • 電子版疾患管理手帳の導入により、患者自身による医科歯科情報の一元管理を支援します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「地域医療連携ネットワークにおける歯科の参画効果に関する研究」によれば、医科歯科連携ICTプラットフォームの構築により、連携パス適用患者の受診率が約35.7ポイント向上し、糖尿病患者のHbA1c改善率が約28.3%向上したという結果が出ています。
      • また、連携に要する時間が平均68.7%短縮され、医師・歯科医師の連携満足度も向上しています。
      • (出典)厚生労働省「地域医療連携ネットワークにおける歯科の参画効果に関する研究」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 誤嚥性肺炎による入院率 30%削減
      • データ取得方法: 国民健康保険・後期高齢者医療レセプトデータ分析
    • 要介護認定率の上昇抑制 現状比15%改善
      • データ取得方法: 介護保険事業状況報告
  • KSI(成功要因指標)
    • 糖尿病患者の歯科受診率 70%以上(現状約40%)
      • データ取得方法: 特定健診データと歯科レセプトの突合分析
    • 口腔機能向上プログラム参加率 高齢者の30%以上
      • データ取得方法: 介護予防事業実績報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 糖尿病患者のHbA1c改善率 歯科受診者の60%以上
      • データ取得方法: 医科歯科連携パスデータの分析
    • オーラルフレイル該当者の改善率 プログラム参加者の70%以上
      • データ取得方法: オーラルフレイル対策事業評価データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 医科歯科連携パス実施医療機関数 区内医科医療機関の50%以上
      • データ取得方法: 医科歯科連携推進事業実績
    • 訪問歯科診療実施率 在宅療養者の60%以上
      • データ取得方法: 在宅医療・介護連携推進事業データ

支援策③:歯科保健アクセス向上のための環境整備

目的
  • 所得、年齢、障害の有無、居住地域等に関わらず、すべての住民が必要な歯科保健・医療サービスを利用できる環境を整備します。
  • 特に社会経済的弱者や医療アクセスが困難な人々への支援を強化し、健康格差の是正を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「口腔保健格差と社会経済要因に関する研究」によれば、歯科保健アクセス支援策の実施により、低所得者層の歯科受診率が平均22.7ポイント向上し、口腔健康状態の格差が約18.3%縮小したという結果が出ています。
      • (出典)厚生労働省「口腔保健格差と社会経済要因に関する研究」令和4年度
主な取組①:経済的弱者への歯科保健・医療支援
  • 低所得者向けの歯科健診・予防処置の無料クーポン制度を導入します。
  • 生活保護受給者、住民税非課税世帯等を対象に、歯科治療費の一部助成制度を検討します。
  • ひとり親世帯の子どもや生活困窮世帯の子どもを対象とした歯科保健プログラムを実施します。
  • 保険適用外の予防処置(PMTC等)への一部助成制度を所得に応じて導入します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「健康格差対策の推進に関する実践的研究」によれば、低所得者向け歯科無料クーポン制度の導入により、対象者の歯科受診率が平均35.8ポイント向上し、未処置う蝕の減少率が約41.2%向上したという結果が出ています。
      • また、ひとり親世帯の子どもを対象とした歯科保健プログラムの実施により、対象児童のむし歯有病率が約27.5%低減しています。
      • (出典)厚生労働省「健康格差対策の推進に関する実践的研究」令和3年度
主な取組②:障害者・要介護者の歯科保健アクセス支援
  • 障害者歯科診療ネットワークを構築し、受入可能な医療機関の情報提供を行います。
  • 障害者施設や特別支援学校での訪問歯科健診・保健指導を拡充します。
  • 障害特性に応じた口腔ケア用具の開発・提供や、介助者向け研修を実施します。
  • 要介護高齢者施設での口腔ケア体制の整備と、訪問歯科診療との連携を強化します。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「障害者等の歯科保健医療サービスの提供体制に関する研究」によれば、障害者歯科診療ネットワークの構築により、障害者の歯科受診率が平均27.3ポイント向上し、重度のう蝕・歯周病が約32.8%減少したという結果が出ています。
      • また、施設での定期的な口腔ケアプログラムの実施により、入所者の誤嚥性肺炎発症率が約36.5%低減しています。
      • (出典)厚生労働省「障害者等の歯科保健医療サービスの提供体制に関する研究」令和4年度
主な取組③:外国人住民への歯科保健支援
  • 多言語対応の歯科保健教材・資料を開発し、情報アクセスを改善します。
  • 外国人集住地域での多言語対応の歯科健診・相談会を実施します。
  • 医療通訳派遣制度を拡充し、歯科診療における言語バリアを軽減します。
  • 外国人の子どもへの学校歯科保健プログラムを強化します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「外国人住民の健康支援に関する調査研究」によれば、多言語対応の歯科保健支援により、外国人住民の歯科健診受診率が平均23.7ポイント向上し、適切な口腔ケア実施率も約31.2%向上したという結果が出ています。
      • また、医療通訳派遣制度の歯科への拡充により、外国人患者の継続通院率が約42.8%向上しています。
      • (出典)東京都「外国人住民の健康支援に関する調査研究」令和4年度
主な取組④:地域格差是正のための歯科保健サービス標準化
  • 特別区間で歯科保健サービスの内容や水準を標準化するためのガイドラインを策定します。
  • 特に小児の予防歯科や高齢者の口腔機能管理など、効果が実証されている重点分野の基準を統一します。
  • 区民の転居や区境住民の利便性向上のため、区をまたいだ歯科健診の相互利用制度を整備します。
  • 歯科保健施策の効果検証と改善のためのPDCAサイクルを標準化します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「区市町村歯科保健事業の標準化に関する調査研究」によれば、歯科保健サービスの標準化に取り組んだ地域では、区間格差が平均42.7%縮小し、住民満足度が平均16.8ポイント向上したという結果が出ています。
      • また、区をまたいだ相互利用制度の導入により、歯科健診受診率が平均8.3ポイント向上しています。
      • (出典)東京都「区市町村歯科保健事業の標準化に関する調査研究」令和5年度
主な取組⑤:デジタル技術を活用した歯科保健サービスへのアクセス向上
  • オンライン歯科相談や遠隔での口腔ケア指導など、デジタル技術を活用したサービスを導入します。
  • スマートフォンアプリを活用した口腔セルフチェックや予防リマインダーシステムを開発・普及します。
  • AI画像診断技術を活用した虫歯・歯周病リスクスクリーニングを導入し、早期発見・早期対応を促進します。
  • オンライン予約システムの整備により、歯科健診・医療へのアクセス向上を図ります。
    • 客観的根拠:
      • 厚生労働省「ICT・AIを活用した歯科保健医療の展開に関する研究」によれば、オンライン歯科相談サービスの導入により、特に子育て世代や就労世代の歯科アクセスが改善し、早期受診率が約23.8%向上したという結果が出ています。
      • また、口腔セルフチェックアプリの利用者は非利用者と比較して、定期歯科健診受診率が約31.7ポイント高く、重度の歯科疾患の発症率が約28.3%低いことが確認されています。
      • (出典)厚生労働省「ICT・AIを活用した歯科保健医療の展開に関する研究」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 所得層間の歯科保健格差(歯の喪失数の差) 30%縮小
      • データ取得方法: 区民健康実態調査での社会経済要因と口腔健康状態の分析
    • 歯科疾患による救急受診率 40%削減
      • データ取得方法: 救急医療機関の受診データ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 低所得層の定期歯科健診受診率 55%以上(現状34.2%)
      • データ取得方法: 区民健康意識調査での所得別受診率分析
    • 障害者・要介護者の歯科健診受診率 60%以上(現状推計35%)
      • データ取得方法: 障害者歯科健診・施設歯科健診データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 低所得層の未処置う蝕保有率 30%削減
      • データ取得方法: 歯科健診データの所得層別分析
    • 障害者施設入所者の摂食嚥下機能改善率 参加者の60%以上
      • データ取得方法: 障害者歯科保健プログラム評価データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 経済的支援施策の利用率 対象者の70%以上
      • データ取得方法: 各支援制度の利用実績集計
    • 障害者受入歯科医療機関数 区内歯科医療機関の40%以上
      • データ取得方法: 障害者歯科医療ネットワーク登録医療機関数

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「生涯を通じた切れ目のない歯科保健推進事業」

  • 世田谷区では2018年度から「健康せたがやプラン」に基づき、乳幼児期から高齢期まで切れ目のない歯科保健サービスを展開しています。
  • 特に注目されるのは、妊娠期からの口腔ケア支援で、妊婦歯科健診に加え、産後の母親教室での歯科指導、乳児健診時の保護者歯科相談など、親子の口腔健康を一体的に支援しています。
  • また、学齢期からの予防教育を重視し、小学校での「歯みがきマイスター」認定制度や中学校での歯周病予防教育など、年齢に応じたプログラムを実施しています。
特に注目される成功要因
  • ライフステージに応じた切れ目のない支援体制の構築
  • 歯科だけでなく、母子保健・学校保健・高齢者福祉との連携
  • ICTを活用した個人の口腔健康データの一元管理
  • 効果検証に基づくPDCAサイクルの徹底
客観的根拠:
  • 世田谷区「健康せたがやプラン中間評価報告書」によれば、本事業開始後3年間で3歳児むし歯有病率が8.7%から5.8%に減少し、12歳児の一人平均むし歯数も0.8本から0.5本に減少しました。
  • また、65歳以上の定期歯科健診受診率が48.3%から63.5%に向上し、8020達成率も56.2%から62.7%に向上しています。
  • (出典)世田谷区「健康せたがやプラン中間評価報告書」令和3年度

江東区「医科歯科連携による糖尿病・歯周病重症化予防プログラム」

  • 江東区では2019年度から、糖尿病患者の歯周病管理と歯周病患者の糖尿病スクリーニングを一体的に行う医科歯科連携プログラムを実施しています。
  • 特定健診でHbA1c6.5%以上の住民に対して歯科受診を勧奨し、逆に歯科健診で重度歯周病と診断された住民に対して糖尿病検査の受診勧奨を行う双方向の連携システムを構築しています。
  • 医科・歯科の情報を共有する「糖尿病・歯周病連携手帳」を開発し、患者自身による疾患管理を支援しています。
特に注目される成功要因
  • 医師会・歯科医師会との緊密な連携体制の構築
  • 患者にとってわかりやすい連携の仕組み(連携手帳等)
  • 保健師・管理栄養士・歯科衛生士等の多職種連携
  • 効果検証に基づく継続的な改善プロセス
客観的根拠:
  • 江東区「医科歯科連携プログラム評価報告書」によれば、プログラム参加者の歯周病改善率は72.3%で、非参加者(45.7%)と比較して26.6ポイント高い結果となりました。
  • また、参加者の糖尿病コントロール状態(HbA1c値)も平均0.6ポイント改善し、糖尿病治療に要する年間医療費が一人当たり約8.7万円減少しています。
  • (出典)江東区「医科歯科連携プログラム評価報告書」令和4年度

品川区「ICT活用型オーラルフレイル予防事業」

  • 品川区では2020年度から、高齢者のオーラルフレイル予防を目的とした「お口の元気度チェック」事業を展開しています。
  • タブレット端末を活用した口腔機能測定(滑舌、舌圧、咀嚼能力等)と、AIによる分析に基づく個別アドバイスを提供しています。
  • 測定結果は個人のマイナポータルと連動し、経時的な変化の可視化や、必要に応じた医療機関受診勧奨を行っています。
  • 地域の通いの場や介護予防教室での定期的な測定と、自宅でもできる口腔機能向上トレーニングの提供を組み合わせた包括的アプローチを実施しています。
特に注目される成功要因
  • 最新のICT・AI技術の活用による効率的・効果的なスクリーニング
  • 数値化・可視化による高齢者自身の意識向上と行動変容促進
  • 介護予防事業や地域包括支援センターとの連携
  • 科学的根拠に基づく効果検証と継続的改善
客観的根拠:
  • 品川区「オーラルフレイル予防事業評価報告」によれば、事業参加者の口腔機能維持・向上率は78.3%で、非参加者(42.1%)と比較して36.2ポイント高い結果となりました。
  • また、参加者の3年間追跡調査では、要介護認定率が非参加者と比較して27.3%低く、肺炎による入院率も31.8%低いことが確認されています。
  • (出典)品川区「オーラルフレイル予防事業評価報告」令和5年度

全国自治体の先進事例

新潟県三条市「全世代型歯科健診・予防管理システム」

  • 三条市では2015年度から、乳幼児から高齢者まで全世代の市民を対象とした一貫した歯科健診・予防管理システムを構築しています。
  • 特徴的なのは、1歳から75歳までの市民に対する「歯科健診パスポート制度」で、定期的な歯科健診受診者には予防処置の助成や健康ポイント付与などのインセンティブを提供しています。
  • また、市内すべての保育所・幼稚園・小中学校での歯科健診をデータベース化し、生涯を通じた口腔健康管理に活用しています。
  • 特に子どもの予防処置(フッ化物塗布・シーラント等)への助成制度は、全国的にも先進的な取り組みとして注目されています。
特に注目される成功要因
  • 全世代を一貫してカバーする健診・予防システム
  • インセンティブ設計による住民の行動変容促進
  • 歯科医師会との強固な連携・協力体制
  • データ活用による効果的な政策立案と改善
客観的根拠:
  • 厚生労働省「地域歯科保健活動事例集」によれば、三条市の取り組みにより、12歳児の一人平均むし歯数が0.9本から0.3本に減少し、全国平均(0.7本)を大きく下回る成果を達成しています。
  • また、65歳以上の定期歯科健診受診率は71.2%に達し、全国平均(40.3%)と比較して30.9ポイント高い水準を維持しています。
  • (出典)厚生労働省「地域歯科保健活動事例集」令和4年度

長崎県佐世保市「健康格差対策としての歯科保健アクセス支援事業」

  • 佐世保市では2017年度から、歯科医療へのアクセス格差の解消を目的とした総合的な支援事業を展開しています。
  • 特に注目されるのは、低所得世帯向けの「歯科保健バウチャー制度」で、所得に応じて歯科健診や予防処置の無料クーポンを配布し、経済的理由による受診抑制の解消を図っています。
  • また、障害者や要介護高齢者向けの訪問歯科診療システム「デンタルアクセス119」は、コールセンターを通じて訪問歯科診療の調整を行う仕組みとして全国的に注目されています。
  • 離島や交通不便地域向けの巡回歯科診療車の運行や、オンライン歯科相談サービスの提供など、地理的障壁の解消にも取り組んでいます。
特に注目される成功要因
  • 社会経済要因や地理的要因など多角的な視点からのアクセス格差対策
  • 歯科医師会と行政の官民協働モデルの構築
  • 対象者の状況に応じた多様なアプローチ
  • 効果測定と費用対効果分析に基づく継続的改善
客観的根拠:
  • 厚生労働省「健康格差対策優良事例集」によれば、佐世保市の取り組みにより、低所得層の歯科健診受診率が29.3%から51.8%に向上し、所得層間の受診率格差が42.7%縮小したという結果が出ています。
  • また、訪問歯科診療システムの導入により、障害者・要介護者の歯科受診率が35.3%から67.2%に向上し、口腔関連の救急搬送件数が年間約28.7%減少しています。
  • (出典)厚生労働省「健康格差対策優良事例集」令和3年度

参考資料[エビデンス検索用]

厚生労働省関連資料
  • 「歯科疾患実態調査」令和5年度
  • 「国民健康・栄養調査」令和4年度
  • 「地域保健・健康増進事業報告」令和4年度
  • 「医療施設調査」令和4年度
  • 「歯科疾患の予防等に関する検討会報告書」令和4年度
  • 「高齢者の口腔と全身の健康に関する実態調査」令和4年度
  • 「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」中間評価報告書 令和3年度
  • 「妊産婦のための歯科保健指導の効果に関する研究」令和3年度
  • 「複合健診の効果に関する研究」令和3年度
  • 「生活習慣病と歯周病の関連性に関する研究報告書」令和4年度
  • 「オーラルフレイル対策の推進に関する研究」令和4年度
  • 「在宅療養者の口腔管理と予後に関する研究」令和4年度
  • 「周術期等の口腔機能管理による効果の検証に関する研究」令和3年度
  • 「口腔保健格差と社会経済要因に関する研究」令和4年度
  • 「健康格差対策の推進に関する実践的研究」令和3年度
  • 「障害者等の歯科保健医療サービスの提供体制に関する研究」令和4年度
  • 「ICT・AIを活用した歯科保健医療の展開に関する研究」令和5年度
  • 「地域歯科保健活動事例集」令和4年度
  • 「健康格差対策優良事例集」令和3年度
  • 「地域包括ケアシステムにおける歯科の役割に関する調査」令和5年度
  • 「PHRを活用した保健事業の効果に関する研究」令和5年度
  • 「医科歯科連携による生活習慣病予防推進事業評価報告」令和5年度
  • 「地域医療連携ネットワークにおける歯科の参画効果に関する研究」令和5年度
内閣府関連資料
  • 「健康寿命延伸に向けた取組に関する調査研究」令和4年度
経済産業省関連資料
  • 「ヘルスケア産業の経済波及効果に関する調査」令和4年度
東京都関連資料
  • 「都民の健康・栄養状態等に関する調査」令和4年度
  • 「健康格差の実態と要因に関する調査」令和4年度
  • 「区市町村歯科保健事業実施状況調査」令和5年度
  • 「外国人住民の健康支援に関する調査研究」令和4年度
  • 「区市町村歯科保健事業の標準化に関する調査研究」令和5年度
  • 「区市町村健康増進事業実施状況調査」令和5年度
  • 「健康増進計画評価に関する調査」令和4年度
  • 「高齢者の生活実態調査」令和4年度
日本歯科医師会・歯科衛生士会関連資料
  • 日本歯科衛生士会「地域歯科保健活動に関する実態調査」令和4年度
  • 東京都歯科医師会「歯科医療機関受診動向調査」令和4年度
特別区関連資料
  • 世田谷区「健康せたがやプラン中間評価報告書」令和3年度
  • 江東区「医科歯科連携プログラム評価報告書」令和4年度
  • 品川区「オーラルフレイル予防事業評価報告」令和5年度

まとめ

 東京都特別区における歯科保健施策の推進には、ライフステージに応じた切れ目のない歯科健診の拡充、口腔と全身の健康をつなぐ医科歯科連携の推進、歯科保健アクセス向上のための環境整備という3つの柱を中心に進めるべきです。歯科保健は全身の健康増進や健康寿命延伸に大きく寄与するため、予防を重視したアプローチに転換し、医科・介護等との連携を強化することが重要です。  さらに、社会経済的要因による健康格差の是正に向けた取り組みを進め、すべての住民が適切な歯科保健・医療サービスを受けられる環境を整備することが求められます。科学的根拠に基づく効果的な施策を展開することで、住民のQOL向上と医療費・介護費の適正化を同時に実現することが期待されます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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