10 総務

条例・規則等の制定

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(条例・規則の制定を取り巻く環境)

  • 自治体が条例・規則の制定を行う意義は「地域の実情に応じた課題解決(ローカル・ルール形成)」と「住民自治の具現化」にあります。
  • 地方自治体における条例・規則の制定は、国が定める法律とは別に、それぞれの地域が抱える固有の課題に対応し、住民の意思を反映した独自のルールを設けるための根幹的な活動です。
  • 条例とは、地方自治法に基づき、地方公共団体の議会の議決を経て制定される自治立法であり、住民の権利を制限し、または義務を課すことも含みます。一方、規則は、地方公共団体の長(区長など)が、その権限に属する事務に関して、議会の議決を経ずに制定するもので、条例の下位に位置づけられます。
  • 国から地方への権限移譲が進む現代において、条例・規則を戦略的に活用する能力は、自治体が住民福祉を向上させ、持続可能な地域社会を築くための最も重要なツールとなっています。

意義

住民にとっての意義

住民ニーズの的確な反映
権利保障と透明性の向上
  • 情報公開条例やパブリックコメント手続条例などを制定することにより、住民が行政情報を入手し、政策決定過程に参加する権利が制度的に保障されます。
  • これにより、行政運営の透明性が高まり、住民による監視・点検機能が強化され、行政への信頼醸成につながります。

地域社会にとっての意義

自治能力の向上と持続可能な地域づくり
  • 自治基本条例のように、地域の憲法ともいえる条例を住民参加のもとで制定するプロセスは、地域課題を共有し、住民と行政が協働してまちづくりを進める「自治能力」そのものを育みます。
  • このプロセスを通じて、住民と行政の関係性が「お上と民」から「パートナー」へと転換し、持続可能な地域運営の基盤が構築されます。
先進的政策の「実験場」機能
  • 自治体は条例を通じて、国に先駆けた先進的な政策を試みることができます。
  • 例えば、東京都渋谷区のパートナーシップ証明制度のように、一つの自治体で始まった取り組みが全国に広がり、社会全体の意識変革や国の法制度改正のきっかけとなることがあります。

行政にとっての意義

政策の継続性と安定性の担保
自主立法権の行使による自治体機能の最大化
  • 日本国憲法第94条は、地方公共団体に法律の範囲内で条例を制定する権能(自主立法権)を保障しています。
  • この権能を最大限に活用することは、地方自治の本旨である「住民自治」と「団体自治」を実現し、自治体としての存在意義を全うするために不可欠です。

(参考)歴史・経過

  • 明治21年(1888年)
    • 市制・町村制が制定され、市町村に法人格が認められるとともに、初めて条例・規則の制定権が付与されました。ただし、国による強い監督下にありました。
  • 昭和22年(1947年)
  • 1980年代〜1990年代(地方分権改革の胎動)
  • 平成12年(2000年)(地方分権一括法施行)
    • 国が自治体を指揮監督する「機関委任事務」制度が廃止され、国と地方は「対等・協力」の関係と位置づけられました。これにより、自治体が条例で定められる事柄の範囲が飛躍的に拡大し、「法律で禁止されていないことは原則として条例で定められる」という新たな時代が到来しました。
  • 2010年代以降(提案募集方式の導入)
    • 地方から国に対して事務・権限の移譲や規制緩和を提案できる「提案募集方式」が導入され、地方の自主性をさらに尊重する改革が進められています。これにより、地域の実情に応じた条例制定の可能性がさらに広がっています。

条例・規則の制定に関する現状データ

総条例制定数
  • 全国の自治体が制定している条例・規則の総数は膨大です。同志社大学などが運営する「条例Web作成プロジェクト」のデータベースには、令和7年3月時点で1,772自治体から約144万件の例規が収録されており、地方自治における条例・規則の重要性を示しています。
    • (出典)(https://jorei.slis.doshisha.ac.jp/)
  • 鹿児島大学が提供する「eLen条例データベース」にも約100万本の例規が格納されており、法務担当者にとって重要なリソースとなっています。
分野別制定動向
  • 環境・ビジネス分野:分野別の基本条例としては、「環境基本条例」や「中小企業振興基本条例」の制定数が多く、多くの自治体で基幹的な政策課題と位置づけられています。
  • 情報公開・住民参加分野:情報公開条例は、平成19年時点で全都道府県・市区町村の99.4%で制定されており、行政の透明性確保は普遍的な価値として定着しています。また、行政手続法の改正を機に、パブリックコメント手続条例の制定も全国的に進みました。
  • 社会課題対応分野
  • デジタル・トランスフォーメーション(DX)分野:自治体DX推進計画を策定している自治体は令和5年時点で691団体に上る一方、DXの理念や推進体制を法的に位置づける「DX推進条例」の制定は令和7年初頭時点で15件にとどまり、計画と実行の間のギャップを示唆しています。
    • (出典)(https://www.zai-keicho.or.jp/wp-content/themes/zai-keicho/assets/pdf/service/ifn/note2/2025/tankyuu_vol16.pdf)
人口動態と条例制定の関連性
  • 高齢社会への対応:令和7年版高齢社会白書によると、日本の高齢化率(65歳以上人口の割合)は令和6年10月時点で29.3%に達し、令和52年(2070年)には2.6人に1人が65歳以上になると推計されています。また、高齢者の一人暮らし世帯も急増しており、令和32年(2050年)には男性で26.1%、女性で29.3%に達する見込みです。この深刻な人口構造の変化は、地域包括ケアシステムの構築、認知症支援(認知症基本法に基づく施策)、高齢者の社会参加、バリアフリーな生活環境整備などに関する条例制定の強力な動機となっています。
  • 男女共同参画と地域活力:令和7年版男女共同参画白書は、若者、特に女性が「やりたい仕事や就職先が少ない」ことを理由に地方から東京圏へ流出している実態をデータで示しています。また、全ての都道府県で女性の家事関連時間が男性より著しく長いという固定的性別役割分業の現状も浮き彫りにしています。このデータは、特別区が人材を惹きつけ、地域の活力を維持・向上させるためには、男女が共に働きやすく、暮らしやすい環境を整備するための条例(例:ワークライフバランス支援、女性の起業支援など)が不可欠であることを示唆しています。

課題

住民の課題

パブリックコメント制度の形骸化
  • 多くの自治体でパブリックコメント(意見公募手続)制度が条例で定められているものの、実質的な住民参加につながっていないケースが散見されます。
  • 周知期間が短い、条例案の文言が専門的で難解、意見を提出してもどう反映されたか不明確、といった問題から、一部の専門家や団体以外の一般住民にとっては参加のハードルが高くなっています。
    • 客観的根拠:
      • 総務省の調査によると、国レベルでのパブリックコメント手続において、意見が提出された案件のうち、実際に原案の修正に至ったのは22.8%にとどまっています。この低い反映率が、住民の「どうせ意見を言っても変わらない」という無力感につながり、制度の形骸化を助長している可能性があります。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 住民の行政不信が増大し、政策決定プロセスへの参画意欲がさらに低下する悪循環に陥ります。

地域社会の課題

社会の複雑化・多様化への対応の遅れ
  • 外国人住民の増加、単身世帯の一般化、LGBTQ+当事者の権利保障など、地域社会の姿は急速に複雑化・多様化しています。
  • こうした新たな社会的ニーズに対して、画一的な国の法律だけでは対応が追いつかず、自治体独自の条例によるきめ細やかな対応が求められますが、その制定プロセスが社会の変化のスピードに追いついていないのが現状です。
    • 客観的根拠:
      • 令和7年版高齢社会白書によると、65歳以上の一人暮らしの割合は、昭和55年の男性4.3%、女性11.2%から、令和2年には男性15.0%、女性22.1%へと急増し、今後もこの傾向は続くと予測されています。これは、従来の家族モデルを前提とした福祉制度や地域コミュニティのあり方を見直す条例の必要性を示しています。
      • 令和7年版男女共同参画白書は、若年層の女性がキャリアを求めて地方から都市部へ移動する傾向を指摘しています。特別区が活力を維持するためには、こうした層を惹きつけるための、男女間の格差是正や多様な働き方を支援する先進的な条例が不可欠です。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 社会的マイノリティの孤立が深まり、地域コミュニティの分断や活力低下を招きます。

行政の課題

政策法務能力を持つ人材の不足
  • 地方分権一括法以降、自治体の条例制定権は大幅に拡大しましたが、それに伴う職員の専門能力(政策法務能力)の育成が追いついていません。
  • 複雑な社会課題を解決するためには、法解釈や立法技術を駆使して、実効性のある条例を立案できる高度な専門性が必要ですが、多くの自治体でそうした人材が不足しているのが実情です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 実効性の低い条例が乱立したり、法的な不備により政策が頓挫したりするリスクが高まります。
EBPM(証拠に基づく政策立案)の実践の壁
  • 政策効果を最大化するため、客観的なデータ(証拠)に基づいて政策を立案するEBPMの重要性が叫ばれていますが、条例制定の現場での実践には多くの壁が存在します。
  • 根拠となるデータがそもそも存在しない、あるいはデジタル化されておらず活用できない、データを分析できる専門人材がいない、といった課題がEBPMの推進を阻んでいます。
    • 客観的根拠:
      • EBPMを推進する上での課題として、自治体からは「データ利活用のための仕組みの未整備」「データを理解し活用できる人材の不足」「部局横断的なデータ連携の困難さ」などが共通して挙げられています。
        • (出典)(https://www.jt-tsushin.jp/articles/case/casestudy_ebpm)
        • (出典)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000675314.pdf)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 限られた財源が非効率に配分され、政策効果が上がらず住民満足度が低下します。
縦割り行政による立法プロセスの非効率化
  • 少子高齢化、防災、環境問題など、現代の行政課題の多くは、一つの部署だけでは解決できない複合的な性質を持っています。
  • しかし、従来の「縦割り」の組織構造が、部署横断的な視点での包括的な条例立案を困難にし、類似の施策が各部局で重複したり、全体最適が図れなかったりする非効率を生んでいます。
    • 客観的根拠:
      • 多くの自治体で、既存の事業を抜本的に見直す「スクラップ&ビルド」が進まず、新規事業が積み増しされる傾向や、部局横断的な事業提案が行われにくい構造的な課題が指摘されています。
        • (出典)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000675314.pdf)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 複合的な課題への対応が遅れ、住民満足度の低下や行政コストの増大につながります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決にとどまらず、複数の行政分野や多くの住民に良い影響を与える施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現行の法制度や予算、人員体制の中で、大きな障壁なく着手・実行できる施策を優先します。既存の仕組みを活用できるものは、優先度が高くなります。
  • 費用対効果
    • 投入する資源(予算、人員等)に対して、得られる成果(住民サービスの向上、行政コストの削減等)が大きい施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の層だけでなく、広く住民全体に便益が及び、かつ一時的な効果で終わらず、長期的に持続する仕組みとなる施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 国の調査研究や先進自治体の成功事例など、効果が客観的なデータで裏付けられている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 自治体における条例・規則の制定能力を高めるためには、「人材育成」「手法の高度化」「プロセスの民主化」という3つの側面から総合的にアプローチする必要があります。
  • これらを踏まえ、以下の3つの支援策を提案します。
  • 最も優先順位が高いのは**「支援策①:政策法務能力の体系的強化と組織内浸透」**です。高度な専門性を持つ人材こそが、EBPMの実践や住民との共創といった他の施策を実効性あらしめるための絶対的な基盤となるからです。
  • 次に、**「支援策②:EBPMとDXを融合した立法プロセスの確立」「支援策③:住民・多様な主体との『共創』による立法サイクルの推進」**を並行して進めることが重要です。支援策①で育成された人材が、支援策②のツールを駆使し、支援策③のプロセスを通じて住民ニーズを的確に捉えることで、質の高い条例制定が実現します。これら3つの施策は相互に連携し、相乗効果を生み出す関係にあります。

各支援策の詳細

支援策①:政策法務能力の体系的強化と組織内浸透

目的
  • 条例の立案・審査・改正に関する職員の実践的能力を飛躍的に向上させ、政策実現の確度を高めること。
  • 組織全体に法的な思考(リーガルマインド)を浸透させ、全部局が主体的に政策法務を実践できる文化を醸成すること。
主な取組①:法務専門職・キャリアトラックの創設
  • 弁護士資格を持つ者や企業法務経験者などを「法務監」「政策法務専門員」といった専門職として任期付きで採用し、高度な知見を組織内に取り込みます。
  • 意欲と適性のある内部職員を対象に「政策法務キャリアトラック」を新設します。このトラックでは、専門研修の受講、法規担当課や顧問弁護士とのOJT、重要条例の立案プロジェクトへの参加などを通じて、計画的に専門人材を育成し、昇進・昇格とも連動させます。
主な取組②:実践的・階層別研修プログラムの体系化
  • 新規採用職員向けの「法制執務基礎」、係長級職員向けの「条例立案演習」、課長級以上の管理職向けの「政策法務マネジメント」など、職員の階層や職務に応じた研修プログラムを体系化し、受講を必須とします。
  • 実際の行政課題(例:「空き家対策条例の効果的な改正」)をテーマにした演習や、他自治体との合同研修を積極的に導入し、実践的な問題解決能力を養います。
主な取組③:政策部門への法務担当者の配置(埋め込み型支援)
  • 従来のように、全ての条例案を最終段階で法規担当課が審査する体制に加え、福祉、環境、まちづくり等の主要な政策主管部に、法務能力の高い職員を専任または兼任で配置します。
  • この「埋め込み型」の法務担当者が、政策の構想・企画段階から関与し、法的な論点整理や条文案の作成を伴走支援することで、政策意図と法的整合性の両立を図り、後工程での大幅な手戻りを防ぎます。
    • 客観的根拠:
      • 部局横断的な連携の欠如が政策立案の課題として指摘されており、企画段階からの法務関与は、縦割り行政の弊害を克服し、政策の質を高める上で有効な手法と考えられます。
        • (出典)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000675314.pdf)
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 条例制定後の政策目標達成率:80%
      • データ取得方法: 各条例の所管課が実施する効果測定、行政評価結果の分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 政策法務専門職の配置率(主要政策部門における):100%
      • データ取得方法: 人事課の職員配置データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 職員の政策法務能力自己評価スコア(5段階評価):平均4.0以上
      • データ取得方法: 年1回実施する全職員対象の意識調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 階層別法務研修の年間受講者数:対象職員の95%以上
      • データ取得方法: 人事情報システム上の研修受講履歴データ

支援策②:EBPMとDXを融合した立法プロセスの確立

目的
  • データに基づき地域課題を正確に把握し、効果が期待できる政策を条例として立案すること。
  • デジタル技術を活用して立法プロセスを効率化・高度化し、住民や議会に対する説明責任を向上させること。
主な取組①:立法支援ダッシュボードの構築
  • 条例立案に必要な情報を一元的に集約・可視化する庁内向けの「立法支援ダッシュボード」を構築します。
  • このダッシュボードには、国勢調査等の統計データ、住民意識調査の結果、区に寄せられた陳情・相談データ、関連する国内外の先進条例、学術論文などを統合し、地図情報(GIS)と連携させて表示します。
  • AIを活用し、立案中の条例テーマに関連性の高いデータや参照すべき先進事例を自動で推薦する機能を搭載します。
    • 客観的根拠:
      • 自治体DXの推進において、データの一元化と可視化は、業務効率化と質の高い意思決定の基盤と位置づけられています。
        • (出典)(https://www.zai-keicho.or.jp/wp-content/themes/zai-keicho/assets/pdf/service/ifn/note2/2025/tankyuu_vol16.pdf)
主な取組②:「デジタル前提の条例」設計原則の導入
  • 条例を新規制定・改正する際には、原則としてオンラインでの申請・届出、電子データでの添付書類提出、プッシュ型通知による行政からのお知らせなどを前提とした条文設計を義務付けます。
  • 「書面」「押印」「来庁」といったアナログな手続きを求める規定については、その必要性を個別に厳しく審査し、例外的な場合にのみ認めることとします。
    • 客観的根拠:
      • 先行して「デジタルファースト条例」を制定した浜松市などの事例では、行政手続きのオンライン利用率が向上し、住民の利便性向上と行政コスト削減に貢献しています。
        • (出典)(https://www.townnews.co.jp/0301/2024/12/19/764383.html)
        • (出典)(https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/13753.pdf)
主な取組③:政策シミュレーションの導入
  • 条例案の施行がもたらす影響を事前に予測するため、データに基づいた政策シミュレーションを導入します。
  • 例えば、新たな給付金制度を創設する場合、対象者数、必要な予算総額、地域経済への波及効果などを試算します。また、規制を強化する場合の影響(事業者コストの増加、住民行動の変化など)も分析します。
  • このシミュレーション結果を議会やパブリックコメントの際に提示し、客観的根拠に基づいた建設的な議論を促進します。
    • 客観的根拠:
      • EBPMの実践には、政策介入による効果(インパクト)を科学的に予測・検証する手法が不可欠であり、政策シミュレーションはその有効なツールの一つです。
        • (出典)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000675314.pdf)
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • データ根拠のある条例の割合:90%
      • データ取得方法: 政策企画部門が全議案を対象に、データに基づく課題分析や効果予測が行われているかをレビュー
  • KSI(成功要因指標)
    • 立法支援ダッシュボードの利用率(政策立案担当者):月間アクティブユーザー率80%
      • データ取得方法: システムのアクセスログ解析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 条例案の議会審議におけるデータに基づく質疑の割合:50%以上
      • データ取得方法: 議事録のテキストマイニング分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • デジタル前提で設計された条例の新規制定・改正数:年間10本以上
      • データ取得方法: 法規担当課による全条例の集計

支援策③:住民・多様な主体との「共創」による立法サイクルの推進

目的
  • 形式的になりがちなパブリックコメント制度を実質化し、多様な住民の意見を条例案に的確に反映させること。
  • 企画段階から住民、NPO、専門家などが参画する「共創(Co-creation)」の仕組みを導入し、当事者の視点を取り入れた、より実効性の高い条例を創出すること。
主な取組①:「対話型パブリックコメント」の導入
  • 従来のウェブサイトでの意見募集に加え、条例案のテーマに関心のある住民や関係団体と、行政の担当者が直接意見交換を行うワークショップやオンラインミーティングを積極的に開催します。
  • 寄せられた膨大な意見は、AI要約ツールなどを活用して主要な論点を整理・可視化し、「どのような意見があり、それに対して行政はどう考え、どこを修正したか(あるいはしなかったか)」を分かりやすくフィードバックします。
    • 客観的根拠:
      • パブリックコメントの形骸化の要因として、周知不足や一方通行のコミュニケーションが指摘されており、双方向の対話の機会を設けることが参加意欲の向上につながります。
主な取組②:政策課題ごとの「市民ラボ」の設置
  • 「子育て支援」「防災」「多文化共生」といった重要な政策テーマごとに、関心のある市民、NPO、企業、学識経験者などが自由に参加し、継続的に議論する場として「市民ラボ」を設置・運営します。
  • このラボでは、課題の発見から解決策の検討、条例案の素案作成までを、行政と市民が協働で行います。世田谷区の住民参加によるまちづくり協議会などが先進事例として参考になります。
主な取組③:制定後の条例の共同レビュー
  • 条例は制定して終わりではなく、その効果を継続的に検証し、改善していくことが重要です。
  • 条例の施行後、定期的(例:3年後)に、「市民ラボ」や関係団体と行政が共同で、条例が意図した効果を上げているか、新たな課題は生じていないかをレビューする場を設けます。
  • このレビュー結果に基づき、条例の改正や関連施策の改善を検討するPDCAサイクルを制度として確立します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 条例に対する住民満足度:「満足」「やや満足」の合計が80%
      • データ取得方法: 主要条例制定後に実施する住民意識調査
  • KSI(成功要因指標)
    • パブリックコメントにおける意見反映率:40%
      • データ取得方法: 法規担当課が全パブリックコメント案件の意見数と、それに基づき原案を修正した件数を集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • パブリックコメント意見提出者数:前年度比30%増
      • データ取得方法: ウェブサイトや窓口での意見受付システムのデータ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 対話型パブリックコメントの開催回数:主要な条例制定時に必ず1回以上開催
      • データ取得方法: 各条例所管課からの実施報告の集計

先進事例

東京都特別区の先進事例

渋谷区「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」

  • 平成27年(2015年)に制定されたこの条例は、日本で初めて同性カップルを「結婚に相当する関係」と認める「パートナーシップ証明制度」を創設したことで全国的に注目されました。
  • 成功要因
    • 「多様性」をまちの活力の源泉と捉える明確なビジョンを区が示したこと。
    • パブリックコメントや当事者団体との対話を重ね、丁寧な合意形成プロセスを経たこと。
    • 証明書の発行だけでなく、区民や事業者に対して、入居や病院での面会などにおいて配慮する努力義務を課し、実生活上の不利益解消を目指したこと。
  • 効果

世田谷区「住民参加によるまちづくり条例」

  • 昭和57年(1982年)に制定されたこの条例は、住民が主体となって地域のまちづくりを進めるための具体的な仕組みを定めています。特に、住民が設立する「まちづくり協議会」を区が認定し、地区計画の策定などに深く関与できる点が特徴です。
  • 成功要因
    • 住民に計画策定の権限と責任を委譲するという明確な理念。
    • 行政が専門家派遣や活動費助成といった側面支援に徹する姿勢。
    • 長年にわたる活動の積み重ねによって、住民と行政の間に信頼関係が構築されていること。住民提案によって、行政の硬直的な内部ルール(要綱)が改正された事例もあります。
  • 効果
    • 行政主導の画一的な開発ではなく、地域の歴史や文化、住民の意向を反映した、きめ細やかで質の高いまちづくり(例:小さな広場の整備、防災貯水槽の設置、建物のデザイン誘導など)が実現しています。
    • 客観的根拠:

足立区「災害対策条例」及び関連条例

  • 足立区は、平成13年(2001年)に「災害対策条例」を、さらに「震災復興対策及び震災復興事業の推進に関する条例」を制定し、災害の予防から復旧・復興に至るまでの包括的なルールを整備しています。
  • 成功要因
    • 大規模災害の発生を前提とし、発災後の混乱を最小限に抑えるための「事前復興」の視点を条例に盛り込んでいること。
    • 区、区民、事業者の役割と責務を平時から明確にし、連携体制の構築を促していること。
  • 効果
    • 災害時における円滑な応急対策や復興活動の法的基盤を整備するとともに、平時からの地域全体の防災意識の向上に貢献しています。
    • 客観的根拠:

全国自治体の先進事例

明石市「こどもを核としたまちづくり」関連条例群

  • 兵庫県明石市は、「こどもにやさしいまちづくり条例」などを制定し、それを基盤として「高校生までの医療費無料化」「第2子以降の保育料無料化」「中学校の給食費無料化」など、所得制限のない徹底した子育て支援策を展開しています。
  • 成功要因
    • 「こどもに予算を重点配分することが、未来への最大の投資である」という首長の明確な政治哲学と強いリーダーシップ。
    • 弁護士や福祉専門職などを市職員として積極的に採用し、政策をゼロから構築・実現できる組織体制を整備したこと。
    • 公共事業の見直しや職員手当のカットなど、徹底した行財政改革によって子育て施策の財源を捻出したこと。
  • 効果
    • 9年連続の人口増加を達成し、特に子育て世帯の転入が顕著です。人口増に伴い市の税収も32億円増加し、その財源をさらなる住民サービス向上に充てるという「経済の好循環」を生み出しました。合計特殊出生率も全国平均を大きく上回っています。
    • 客観的根拠:
      • 人口増加率は全国の中核市62市の中で1位を記録しました。
      • 子ども関連部署の職員数を約3倍に、関連予算を2倍以上に増額するなど、具体的な資源配分を行っています。
        • (出典)(https://inakagurashiweb.com/archives/15438/)
      • これらの施策は、単なる現金給付ではなく、子育ての基盤となるサービスを無料化することで、全てのこどもに公平な支援を届けることを目指しています。

ニセコ町「景観条例」及び「地下水保全条例」

  • 北海道ニセコ町は、国際的なリゾート地としての価値の源泉である美しい景観と清らかな水資源を守るため、全国でも特に厳しい内容を持つ「景観条例」や、地下水の採取を規制する「地下水保全条例」を制定しています。
  • 成功要因
    • 「豊かな自然環境こそが経済活動の基盤である」という長期的・戦略的な視点。
    • 条例制定にあたり、住民や事業者と徹底的に対話し、時間をかけて合意形成を図ったこと。
    • 厳しい規制を課す一方で、質の高い開発を誘導するためのデザインガイドラインなどを設け、「規制と誘導」を両輪で進めたこと。
  • 効果
    • 無秩序な乱開発を抑制し、「ニセコブランド」の価値を維持・向上させることに成功しました。持続可能な観光地としての国際的な評価を確立し、環境保全と経済振興の両立を実現しています。
    • 客観的根拠:

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 地方分権と社会の複雑化が進む現代において、自治体が条例・規則を戦略的に制定・活用する能力は、もはや選択肢ではなく、行政運営に必須のコアコンピタンスです。しかし、その能力を十分に発揮するには、人材、手法、プロセスの各側面で多くの課題が存在します。
 本稿で提案した、①政策法務能力の体系的強化、②EBPMとDXを融合した立法プロセスの確立、③住民との「共創」による立法サイクルの推進、という三位一体の改革こそが、これらの課題を克服し、質の高い条例制定を実現する鍵となります。先進事例が示すように、優れた条例は、地域課題を解決するだけでなく、新たな価値を創造し、持続可能な地域社会を築くための強力なエンジンとなり得ます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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