日本語指導が必要な児童生徒への支援

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要（日本語指導が必要なこどもを取り巻く環境）

• 自治体が日本語指導が必要な児童生徒への支援を行う意義は、「こどもの学習権を保障し、将来の自立と社会参画を促すこと」及び「多文化共生社会の基盤を構築し、地域全体の持続的発展に繋げること」にあります。
• グローバル化の進展と国内の労働力需要を背景に、外国にルーツを持つこどもは増加の一途をたどっています。それに伴い、公立小中学校において日本語での学習に困難を抱える「日本語指導が必要な児童生徒」が急増しており、これはもはや一部の集住地域の問題ではなく、東京都特別区を含む全国的な教育課題となっています。
• これらのこどもたちが直面する言葉の壁は、単なるコミュニケーションの障壁にとどまらず、教科学習の遅れ、高校進学率の低迷、将来の就労における格差といった深刻な問題に直結します。本稿では、最新の公的データを基に現状と課題を多角的に分析し、東京都特別区が取り組むべき具体的な支援策を提言します。

意義

こどもにとっての意義

学習権の保障と学力向上

• 個々の日本語能力に応じた指導を受けることで、授業内容の理解が深まり、学力の基礎を築くことができます。これにより、全てのこどもが持つ「学ぶ権利」が実質的に保障されます。
• 特に、日常会話能力（BICS: Basic Interpersonal Communicative Skills）は比較的早く身につく一方で、教科学習に必要な思考力や認知能力を伴う言語能力（CALP: Cognitive Academic Language Proficiency）の習得には長期間を要します。この見えにくい言語の壁を乗り越えるために、専門的な支援は不可欠です。
  • 客観的根拠：
    • （出典）呉 尚善「日本における外国にルーツを持つ子どもの二言語能力に関する研究動向」2022年度
    • （出典）(https://www.youtube.com/watch?v=4JWwViyS_K4)

アイデンティティの確立と自己肯定感の向上

• 母語や母文化を尊重される環境で学ぶことは、こどもが自身のルーツに誇りを持ち、健全なアイデンティティを形成する上で極めて重要です。
• 研究によれば、母語の能力が高いことは、第二言語である日本語の習得にも良い影響を与えることが示唆されています。肯定的な自己認識は、学校生活への適応や友人関係の構築を促し、学習意欲の向上にも繋がります。
  • 客観的根拠：
    • （出典）呉 尚善「日本における外国にルーツを持つ子どもの二言語能力に関する研究動向」2022年度
    • （出典）(https://swu.repo.nii.ac.jp/record/2000136/files/%E5%91%89%EF%BC%88%E5%8D%98%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8%EF%BC%89.pdf)

将来の選択肢の拡大

• 適切な教育支援により高校・大学等への進学率が向上し、将来の職業選択の幅が大きく広がります。
• これは、こども自身の人生を豊かにするだけでなく、貧困の連鎖を断ち切る上でも決定的な意味を持ちます。

保護者にとっての意義

学校との円滑な連携

• 通訳支援や多言語での情報提供により、保護者が学校行事やこどもの学習状況を正確に把握し、懇談や連絡帳などを通じて教員と円滑にコミュニケーションを取れるようになります。
• これにより、保護者が抱える育児に関する不安が軽減され、こどもの教育に主体的に関与できるようになります。
  • 客観的根拠：
    • （出典）行知学園株式会社「【外国人の児童・生徒への教育に関する課題】多くの教員が日本語の理解や指導に課題を感じていた 約9割が日本語教育について学びたいと回答」2024年度
    • （出典）東京学芸大学リポジトリ「川崎市における外国人保護者の子育てと教育をめぐる課題と支援―2014 年調査と 2019 年調査の比較から―」2021年度

日本社会への適応促進

• こどもの学校生活を通じて、保護者自身が日本の教育制度や文化、地域社会への理解を深める機会となります。
• 保護者同士のネットワークが形成されることで、情報交換や相互扶助が可能となり、地域における孤立を防ぎます。

学校・教師にとっての意義

指導の質の向上と負担軽減

• 日本語指導員や支援員の配置、専門的な研修の機会により、教員は個々のこどもに最適化された指導を行うことができます。
• 全ての教員が手探りで対応するのではなく、専門人材とのチームティーチングが可能になることで、学級担任の精神的・時間的負担が大幅に軽減されます。教員が本来注力すべき教科指導や学級経営に専念できる環境が整います。
  • 客観的根拠：
    • （出典）行知学園株式会社「【外国人の児童・生徒への教育に関する課題】多くの教員が日本語の理解や指導に課題を感じていた 約9割が日本語教育について学びたいと回答」2024年度
    • （出典）日本経済新聞「日本語指導、教員1人で30人超も 外国籍の子が多い自治体」2021年度

多文化共生教育の推進

• 日本語指導が必要な児童生徒の存在は、他のこどもたちが多様な文化に触れ、国際感覚を養う貴重な機会となります。
• 学校全体でインクルーシブな環境づくりに取り組む文化が醸成され、全ての子どもにとってより豊かな学びの場が創造されます。

地域社会にとっての意義

将来の地域社会の担い手の育成

• 適切な教育を受けたこどもたちは、将来、地域経済や社会活動を支える貴重な人材となります。
• 多様な言語や文化を背景に持つ人材は、地域の国際化や活性化に大きく貢献するポテンシャルを秘めています。

多文化共生社会の実現

• 学校を核として、外国人住民と日本人住民の相互理解が促進されます。
• 地域全体で外国人家庭を支える体制が構築されることで、全ての住民が安心して暮らせる、包摂的で活力あるコミュニティが形成されます。

行政にとっての意義

教育格差の是正と社会的コストの削減

• こどもの段階で教育格差を是正することは、将来の失業や生活保護受給といった社会的なコストを未然に防ぐ、最も効果的な先行投資です。日本語指導が必要な生徒の高校卒業後の非正規就職率が極めて高い現状は、将来的な財政負担のリスクを示唆しています。
  • 客観的根拠：
    • （出典）文部科学省「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果について」2024年度
    • （出典）教職員支援機構「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」2024年度

行政サービスの効率化と信頼性の向上

• 教育、福祉、地域振興など、縦割りになりがちな行政分野の連携を促進するモデルケースとなり得ます。
• 全てのこどもの人権を尊重し、誰一人取り残さないという行政姿勢を示すことで、住民全体の行政への信頼が高まります。

（参考）歴史・経過

• 1980年代
  • 中国残留邦人の帰国やインドシナ難民の定住に伴い、日本語指導が必要なこどもが教育現場に現れ始めます。この時期の支援は、主にボランティアや個々の学校の努力に依存していました。
  • （出典）帝京大学「海外子女教育から見た日本の『国際教育』」2014年度
• 1990年
  • 「出入国管理及び難民認定法」が改正され、日系人の「定住者」としての在留資格が創設されます。これにより南米等からの日系人のこどもが急増し、日本語指導が本格的な教育課題として認識されるようになりました。
  • （出典）兵庫教育大学機関リポジトリ「日本語指導が必要な外国人生徒の高等学校進学支援に関する一考察」2011年度
• 1990年代
  • 文部省（当時）が「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」を開始します。日本語指導教員の加配措置や、JSL（第二言語としての日本語）カリキュラムの開発、教材作成などの国の取り組みが始まります。
  • （出典）九州大学「日本の外国人児童生徒教育政策の変遷」2015年度
• 2000年代
  • リーマンショック（2008年）後の景気後退により、外国人保護者の失業が問題化します。こどもの不就学や教育機会の喪失が懸念され、就学支援の重要性が再認識されました。
  • （出典）九州大学「日本の外国人児童生徒教育政策の変遷」2015年度
• 2014年
  • 学校教育法施行規則が改正され、日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施が可能となりました。これにより、個々のこどもの実態に応じ、一部の授業を取り出して日本語を学ぶなどの柔軟な指導が制度的に認められました。
  • （出典）豊橋市「日本語指導」
  • （出典）(https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/todofuken_kenshu/h29_hokoku/pdf/shisaku03.pdf)
• 2019年
  • 「日本語教育の推進に関する法律」が施行され、国や自治体の責務が明確化されるとともに、地域における日本語教育の体制整備が法的に求められるようになりました。
• 2020年代
  • 在留外国人の増加と多様化、定住化が一層進展します。日本語指導が必要な児童生徒の「集住化」と「散在化」が同時に進行し、これまで課題が顕在化していなかった自治体でも対応が急務となっています。
  • （出典）大和総研「増加する日本語指導が必要な児童生徒と求められる支援」2024年度
  • コロナ禍においては、オンライン学習の遅れや家庭との連絡の困難さなど、外国にルーツを持つ家庭が抱える脆弱性が浮き彫りになりました。
  • （出典）日本財団「コロナ禍の経験を踏まえた今後の教育に関する調査報告書」2021年度
  • （出典）共愛学園前橋国際大学「コロナ禍における外国人児童生徒の現状と課題」2022年度

日本語指導が必要なこどもに関する現状データ

全体数と増加傾向

• 全国の公立小・中・高等学校等に在籍する日本語指導が必要な児童生徒数は、令和5年5月1日時点で69,123人に達し、過去最多を更新しました。これは前回調査（令和3年）から10,816人（18.6%）の大幅な増加です。平成20年（2008年）調査時の34,335人と比較すると、15年間で約2倍に増加しており、この傾向は単なる一時的な現象ではなく、日本の人口構造の構造的変化を示しています。
• （出典）文部科学省「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果について」2024年度
• （出典）株式会社パコラ「日本語指導が必要な児童生徒が69,123人に達し、18.6%増加」2024年度
• （出典）(https://resemom.jp/article/2024/08/13/78416.html)

国籍別の内訳

• 国籍別に見ると、外国籍の児童生徒が57,718人（前回比21.2%増）、日本国籍の児童生徒が11,405人（前回比6.7%増）であり、双方で増加が続いています。日本国籍でありながら支援を必要とするこどもが1万人を超えている事実は、この問題が単なる「外国人」の問題ではなく、国際結婚家庭に育つなど、多様な背景を持つこどもの「言語発達」の課題であることを明確に示しています。
• （出典）文部科学省「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果について」2024年度

東京都の状況

• 令和5年調査において、東京都に在籍する日本語指導が必要な児童生徒数は8,499人で、愛知県（10,652人）に次いで全国で2番目に多くなっています。
• 都内の公立学校に在籍する外国籍の生徒数は21,000人を超え、2022年からの1年間で約1,700人増加しており、支援ニーズが急速に高まっています。
• （出典）文部科学省「令和5年度日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」2024年度
• （出典）多文化共生センター東京「2023年度 事業報告書」2024年度

指導状況と支援のギャップ

• 日本語指導が必要な児童生徒のうち、学校で何らかの特別な指導を受けている割合は、外国籍で90.4%、日本国籍で**86.6%**です。
• しかし、この数字は裏を返せば、外国籍の約1割（約5,500人）、日本国籍の約13%（約1,500人）が、支援が必要とされながらも特別な指導を受けられていない「支援の空白」状態にあることを意味します。これは、教員不足や専門知識の欠如など、学校現場でのリソース不足に起因する深刻な「実施のギャップ」が存在することを示唆しています。
• さらに、制度化された「特別の教育課程」による指導を受けている割合は、特別な指導を受けているこどもの中でも約7割にとどまっており、個別最適化された指導が十分に提供されているとは言えない状況です。
• （出典）文部科学省「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果について」2024年度
• （出典）文部科学省「帰国・外国人児童生徒等教育の推進について」2021年度
• （出典）文化庁「令和5年度 地域日本語教育の推進に向けた地方公共団体との連携事業」2023年度

深刻な進路格差

• この課題がこどもの将来に与える影響は、進路に関するデータに最も顕著に表れています。
  • 日本語指導が必要な中学生の高等学校等への進学率は90.3%であり、全体（99.9%）と比較して約9.6ポイントの著しい格差があります。
  • 日本語指導が必要な高校生の中退率は8.5%で、全体（1.1%）の約7.7倍に達します。
  • 大学等への進学率は**46.6%**と、全体（75.0%）を大幅に下回ります。
  • 就職者における非正規就職率は**38.6%**にものぼり、全体（3.1%）と比べて極めて高い水準です。
• これらのデータは、教育段階における支援の不足が、高校進学、高校生活の継続、高等教育へのアクセス、そして安定した就労という各段階で障壁となり、社会経済的な格差を再生産する「負の連鎖」を生み出していることを明確に示しています。
• （出典）文部科学省「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果について」2024年度
• （出典）教職員支援機構「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」2024年度
• （出典）(https://resemom.jp/article/2024/08/13/78416.html)

集住と散在の同時進行

• 従来、日本語指導が必要な児童生徒は特定の集住地域に集中していましたが、近年は全国的に「散在化」が進んでいます。
• 日本語指導が必要な児童生徒が在籍する市町村は全国の約56%に達しており、これまで課題が顕在化していなかった自治体でも対応が求められています。
• 東京都特別区内においても、新宿区や江戸川区などに集中する傾向と、これまで少なかった区で増加する傾向が同時に見られ、どの区においても支援体制の構築が不可欠です。
• （出典）大和総研「増加する日本語指導が必要な児童生徒と求められる支援」2024年度
• （出典）関西学院大学リポジトリ「日本語指導を必要とする児童生徒の現状と課題」2022年度

課題

こどもの課題

学習言語（CALP）の習得の遅れによる学力不振

• 日常会話（BICS）は比較的早期に習得できるため、一見問題がないように見えます。しかし、抽象的な思考や論理的な表現を要する教科学習のための言語（CALP）の習得には5年以上かかると言われています。この「見えにくい壁」により、授業についていけず、学年が上がるにつれて学力不振が深刻化します。
  • 客観的根拠：
    • 日本生まれ、または幼少期に来日した中国ルーツの児童を対象とした調査では、高学年になっても教科学習への参加に支援が必要な児童が半数以上存在することが示されています。
    • （出典）呉 尚善「日本における外国にルーツを持つ子どもの二言語能力に関する研究動向」2022年度
    • 長期滞在しているにも関わらず、日本語の認知的側面が十分に伸びていないこどもがいることが指摘されています。
    • （出典）呉 尚善「日本における外国にルーツを持つ子どもの二言語能力に関する研究動向」2022年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • こどもの学習意欲が低下し、自己肯定感を損ない、不登校や中退に繋がるリスクが高まります。

アイデンティティ形成の困難と心理的孤立

• 母語や母文化を否定される、あるいは十分に尊重されない環境では、自身のルーツに対する肯定的な意識を持つことが難しくなります。また、家庭と学校で使う言語や文化が異なることによる葛藤を抱えがちです。
  • 客観的根拠：
    • 研究によれば、母語の保持が困難な状況は、第二言語である日本語の習得にもマイナスの影響を与える可能性が指摘されています。
    • （出典）呉 尚善「日本における外国にルーツを持つ子どもの二言語能力に関する研究動向」2022年度
    • 周囲の日本人のこどもたちが変わらない限り、差別はなくならず、外国につながるこどもたちが本当に生き生きとできない、という指摘もあります。
    • （出典）横浜国立大学機関リポジトリ「外国につながる子どもたちの現状と課題」2017年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 自己肯定感の低下や心理的な孤立を招き、精神的な不安定さや社会への不適応を引き起こす可能性があります。

進路情報の不足と将来設計の困難

• 日本の複雑な高校入試制度や大学入試制度、奨学金制度などに関する情報を十分に得られず、自らの学力や興味に合った進路を選択することが困難です。
  • 客観的根拠：
    • 全国調査で、日本語指導が必要な中学生の高校進学率は全体より約10ポイント低く、高校生の大学等進学率は全体より約28ポイントも低いという結果が、この課題を裏付けています。
    • （出典）文部科学省「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果について」2024年度
    • （出典）教職員支援機構「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」2024年度
    • 高校進学率は約70%前後にとどまるのではないかという見方もあります。
    • （出典）(https://syncable.biz/associate/yscgs/business/212)
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 不本意な進路選択や早期離職に繋がり、将来にわたって経済的に不安定な状況に置かれるリスクが高まります。

保護者の課題

学校とのコミュニケーション不全

• 学校から配布されるお便りや連絡事項が日本語のみであるため内容を理解できず、必要な手続きや準備ができない、あるいは懇談会等で教員と十分に意思疎通が図れないといった問題が生じています。
  • 客観的根拠：
    • 教員を対象とした調査では、保護者について「学校からのお知らせが理解できていない」「児童・生徒のことで連携がとれない」といった回答が多く挙がっています。
    • （出典）行知学園株式会社「【外国人の児童・生徒への教育に関する課題】多くの教員が日本語の理解や指導に課題を感じていた 約9割が日本語教育について学びたいと回答」2024年度
    • 外国人保護者を対象とした調査でも、「学校からのお知らせの内容がわからない」という回答が13.1%にのぼります。
    • （出典）東京学芸大学リポジトリ「川崎市における外国人保護者の子育てと教育をめぐる課題と支援―2014 年調査と 2019 年調査の比較から―」2021年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • こどもの教育に主体的に関わることができず、親子ともに学校から孤立する事態を招きます。

日本の教育システムへの無理解と不安

• 自国の教育制度との違い（PTA活動、部活動、進路指導など）に戸惑い、どう対応してよいかわからないケースが多く見られます。こどもの教育や進路について相談したくても、誰に相談すればよいかわからず不安を抱えています。
  • 客観的根拠：
    • 外国人保護者が求める支援として「子育てや子どもの教育について相談する場」が23.7%と高い割合を占めています。
    • （出典）東京学芸大学リポジトリ「川崎市における外国人保護者の子育てと教育をめぐる課題と支援―2014 年調査と 2019 年調査の比較から―」2021年度
    • 教員側も、保護者が「日本の文化や生活になじめていない」と感じているケースが半数近くにのぼります。
    • （出典）行知学園株式会社「【外国人の児童・生徒への教育に関する課題】多くの教員が日本語の理解や指導に課題を感じていた 約9割が日本語教育について学びたいと回答」2024年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 保護者の精神的負担が増大し、家庭内での養育環境にも悪影響を及ぼす可能性があります。

学校・教師の課題

専門知識・指導技術の不足

• 多くの教員は、第二言語としての日本語教育（JSL）に関する専門的な研修を受けておらず、効果的な指導方法がわからないまま手探りで対応しているのが実情です。
  • 客観的根拠：
    • 小学校・中学校・高等学校の教員を対象とした調査で、約9割が「日本語教育について学びたい」と回答しており、専門知識習得への高いニーズがうかがえます。
    • （出典）行知学園株式会社「【外国人の児童・生徒への教育に関する課題】多くの教員が日本語の理解や指導に課題を感じていた 約9割が日本語教育について学びたいと回答」2024年度
    • 教員の約6割以上が、外国人の児童・生徒を教育するために「日本語教育のスキル」が必要だと感じています。
    • （出典）行知学園株式会社「【外国人の児童・生徒への教育に関する課題】多くの教員が日本語の理解や指導に課題を感じていた 約9割が日本語教育について学びたいと回答」2024年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 指導の質にばらつきが生じ、こどもの日本語能力が十分に伸びず、教育格差がさらに拡大します。

担当教員の過重な負担と人材不足

• 日本語指導担当教員は、個別指導計画の作成、教材準備、関係機関との連携、保護者対応など多岐にわたる業務を担い、負担が過重になっています。また、指導担当教員の配置が需要に追いついていません。
  • 客観的根拠：
    • 自治体間で、日本語指導教員1人あたりの担当児童生徒数に最大で3倍の差があるなど、地域間格差が深刻です。
    • （出典）シンロナビ「日本語指導、教員1人で30人超も 外国籍の子が多い自治体」2021年度
    • 教員不足が深刻化する中、日本語指導のような専門性が求められる分野の人材確保はさらに困難になっています。教員不足の学校では、他の教員の業務負担が増加し、メンタル不調に繋がるケースも報告されています。
    • （出典）(https://megaphone.school-voice-pj.org/2024/04/post-4779/)
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 教員の疲弊・離職を招き、学校全体の教育機能が低下する恐れがあります。

多言語対応・教材確保の困難さ

• こどもの母語が多様化しており、全ての言語に対応できる通訳や支援員を確保することは困難です。また、こどもの日本語レベルや年齢に応じた適切な教材が不足しています。
  • 客観的根拠：
    • ある自治体では、市内の学校に26カ国の出身のこどもが在籍し、通訳が身近にいない言語も増えているという課題が報告されています。
    • （出典）国士舘大学「多文化共生社会を担う人材育成」2019年度
    • 日本語指導が必要な外国籍児童生徒の母語は、ポルトガル語、中国語、フィリピノ語、スペイン語、ベトナム語が上位を占めるなど多様化しています。
    • （出典）文部科学省「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果について」2024年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 初期段階での円滑なコミュニケーションが図れず、こどもの不安が増大し、学校への適応を遅らせます。

地域社会の課題

支援リソースの地域間格差と散在化への対応の遅れ

• NPOやボランティア団体による支援活動は、特定の地域に集中している傾向があります。近年、日本語指導が必要なこどもが「散在化」しているため、支援リソースのない地域では学校や行政が孤立無援の状態に陥っています。
  • 客観的根拠：
    • 日本語指導が必要な児童生徒が在籍する市区町村は全国の半数以上にのぼり、もはや集住地域だけの問題ではないことがデータで示されています。
    • （出典）関西学院大学リポジトリ「日本語指導を必要とする児童生徒の現状と課題」2022年度
    • 支援ニーズ調査における課題として、「調査を行う人員が足りない」（39.2%）、「翻訳費用が確保できない」（41.9%）など、特にリソースの少ない自治体での困難が浮き彫りになっています。
    • （出典）文化庁「令和5年度 地域日本語教育の推進に関する意向調査結果」2024年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 居住地域によって受けられる支援の質に大きな格差が生じ、教育機会の不平等を固定化させます。

行政の課題

縦割り行政による連携不足

• こどもへの支援は教育委員会、保護者への生活支援は福祉部局、地域との連携は地域振興部局など、担当が分かれているため、一体的で包括的な支援が提供しにくい構造になっています。
  • 客観的根拠：
    • 浜松市や豊田市などの先進事例では、教育委員会だけでなく、国際交流協会、NPO、福祉部局などが連携した包括的な支援体制を構築しており、その有効性が示唆されています。
    • （出典）浜松市「浜松市多文化共生都市ビジョン」2019年度
    • （出典）文部科学省「令和２年度 帰国・外国人児童生徒等教育の推進支援事業 事業内容報告書（豊田市教育委員会）」2021年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 支援の重複や抜け漏れが発生し、非効率な行政運営となるとともに、複合的な課題を抱える家庭が制度の狭間に置かれます。

実態把握とデータに基づいた政策立案の欠如

• 学齢期でありながら学校に通っていない「不就学」のこどもの実態や、学校外での学習状況、高校中退後の追跡など、支援が必要なこどもの全体像を正確に把握できていません。
  • 客観的根拠：
    • 文部科学省は「外国人の子供の就学状況等調査」を毎年度実施していますが、自治体レベルでのきめ細かな実態把握や、データに基づく効果的な施策立案は依然として課題です。
    • （出典）こども家庭庁「令和7年版 こども白書」2025年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 場当たり的な施策に終始し、限られた予算や人材を効果的に投入できず、問題の根本的な解決が遅れます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

• 即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、こども・保護者・学校など複数のステークホルダーに良い影響を与える施策を高く評価します。
• 実現可能性
  • 現在の法制度や予算、人員体制の中で、比較的速やかに着手できる施策を優先します。既存の仕組みや先進事例を参考にできるものは優先度が高くなります。
• 費用対効果
  • 投入する資源（予算・人員）に対して、教育格差の是正や将来的な社会的コストの削減といった長期的便益が大きい施策を優先します。
• 公平性・持続可能性
  • 特定の地域や国籍のこどものみならず、全ての日本語指導が必要なこどもに公平に機会を提供できる施策を優先します。また、一過性でなく、継続的に実施可能な仕組みづくりを重視します。
• 客観的根拠の有無
  • 国の調査結果や先進自治体の成功事例など、効果が実証されている、あるいは高い確度で見込まれる施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

• 日本語指導が必要な児童生徒への支援は、「入口（初期適応）」から「中（学力保障）」、「出口（進路保障）」までを切れ目なく繋ぎ、学校・家庭・地域が一体となって支える包括的なシステムとして構築する必要があります。
• この考え方に基づき、以下の3つの支援策を提案します。優先順位は、最も緊急性が高く、全ての支援の土台となる①「ワンストップ支援体制」の構築を最優先とします。これがなければ、こどもや家庭が支援にアクセスすることすらできません。次に、教育格差に直結する学力問題を解決する②「個別最適化教育」の推進を位置づけます。そして、これらの支援を地域全体で持続可能なものにするため、③「多文化共生推進ネットワーク」の強化を並行して進めることが重要です。

各支援策の詳細

支援策①：アクセスと初期適応を保障する「ワンストップ支援体制」の構築

目的

• 来日・転入した全てのこどもと保護者が、言葉の壁や情報の不足によって支援から取り残されることなく、安心して学校生活をスタートできる体制を整備します。
• 不就学の発生を未然に防ぎ、初期段階でのつまずきを最小限に抑えます。
  • 客観的根拠：
    • 浜松市では、区役所での住民登録時に就学案内を行い、教育委員会でガイダンスを実施するなど、行政が連携して不就学ゼロを目指す取り組みを行っています。
    • （出典）浜松市「浜松市多文化共生都市ビジョン」2019年度
    • （出典）浜松市子育て情報サイト ぴっぴ「外国人の子どもが就学するときの手続きと支援の流れ」

主な取組①：区役所・教育委員会連携による「就学支援コーディネーター」の配置

• 各特別区の教育委員会に、多言語対応可能な「就学支援コーディネーター」を専任で配置します。
• 区役所の住民登録窓口と連携し、外国籍のこどもがいる世帯の転入情報を即時に把握。コーディネーターが家庭に連絡を取り、就学相談や学校見学、手続きの支援をワンストップで行います。
• こどもの日本語能力や就学歴を把握するためのアセスメント（DLA等を活用）を実施し、受け入れ先の学校と情報を共有します。
  • 客観的根拠：
    • 文部科学省は、日本語能力評価ツールとして「JSL対話型アセスメントDLA」を開発・改訂し、学校での活用を推進しています。
    • （出典）こども家庭庁「令和7年版 こども白書」2025年度

主な取組②：就学前日本語・学校生活適応プログラム「プレスクール」の実施

• 小学校・中学校入学前のこどもを対象に、数週間程度の短期集中型「プレスクール」をNPO等と連携して実施します。
• あいさつ等の基本的な日本語、学校のルールや習慣、給食のシステムなどを学び、入学後のスムーズな適応を促します。保護者向けに、日本の学校制度や準備物に関する説明会も同時に開催します。
  • 客観的根拠：
    • 豊田市では、小学校入学前の外国籍幼児を対象としたプレスクール事業をNPOに委託して実施し、成果を上げています。
    • （出典）文部科学省「令和２年度 帰国・外国人児童生徒等教育の推進支援事業 事業内容報告書（豊田市教育委員会）」2021年度
    • 江戸川区でも、日本語学校と連携した入学前日本語指導プログラムが実施されています。
    • （出典）(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000060187.html)

主な取組③：初期指導に特化した「日本語サポート指導員」の全校配置

• 日本語指導が必要な児童生徒が転入してきた際に、最初の数ヶ月間、集中的に支援を行う「日本語サポート指導員」を各区でプールし、要請に応じて迅速に学校へ派遣する体制を構築します。
• 指導員は、母語話者や日本語教育の有資格者とし、在籍学級での付き添いや、取り出し授業による初期の日本語指導、こどもの心理的ケアを担当します。
  • 客観的根拠：
    • 新宿区では、母語を使って日本語を指導する日本語サポート指導を実施し、こどもの生活適応を支援しています。
    • （出典）新宿区「日本語サポート指導」2023年度

主な取組④：多言語翻訳アプリ・ツールの導入と情報提供の一元化

• 学校から保護者への配布物（お便り、連絡網等）を容易に多言語翻訳できるアプリやソフトウェアを全校に導入し、費用を区が負担します。
• 各区のウェブサイトに「外国籍保護者向けページ」を設け、学校生活、各種手当、相談窓口等の情報を多言語で集約・提供します。
  • 客観的根拠：
    • 文部科学省のポータルサイト「かすたねっと」では、多言語での翻訳文書などが提供されており、こうしたリソースの活用も有効です。
    • （出典）こども家庭庁「令和7年版 こども白書」2025年度

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 学齢期の日本語指導が必要なこどもの不就学率 0%
    • データ取得方法： 住民基本台帳データと就学状況の突合による全数調査（教育委員会）
• KSI（成功要因指標）
  • 就学支援コーディネーターによる初期相談実施率 100%（対象世帯転入後1ヶ月以内）
    • データ取得方法： コーディネーターの活動記録報告（教育委員会）
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 支援を受けた保護者の学校生活への不安軽減度 30%向上
    • データ取得方法： 支援開始時と3ヶ月後の保護者アンケート調査
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • プレスクール参加者数 年間200人（特別区全体目標）
    • データ取得方法： 事業実施団体からの報告
  • 日本語サポート指導員の派遣件数及び待機日数（要請から派遣まで平均3日以内）
    • データ取得方法： 教育委員会の派遣記録

支援策②：学力・アイデンティティ・進路を育む「個別最適化教育」の推進

目的

• 日常会話レベルに留まらない、教科学習を可能にする高度な日本語能力（CALP）の育成を図ります。
• こどものアイデンティティ形成を支援し、高校進学・卒業後の社会的自立に繋がる確かな学力とキャリア意識を育みます。
  • 客観的根拠：
    • 日本語指導が必要な高校生は、中退率が高く（8.5%）、大学等進学率が低い（46.6%）という深刻な課題を抱えており、中学校段階からの継続的な学力・進路支援が不可欠です。
    • （出典）文部科学省「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果について」2024年度
    • （出典）教職員支援機構「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」2024年度
    • （出典）文部科学省「高等学校における日本語指導が必要な生徒の現状と課題」2025年度

主な取組①：「センター校」方式と「巡回指導」方式のハイブリッド型指導体制

• 各区に数カ所、日本語指導の拠点となる「センター校（日本語学習ルーム）」を設置し、来日・転入初期の中学生を集中的に受け入れます。
• センター校では、日本語と教科を統合したカリキュラム（特別の教育課程）を編成し、専門性の高い教員が集中的に指導します。
• センター校への通級が困難な児童や、在籍校での支援を希望する児童生徒に対しては、センター校の専門教員が各学校を巡回して指導を行ったり、在籍校の教員に助言したりします。
  • 客観的根拠：
    • 足立区では「あだち日本語学習ルーム」を3校に設置し、センター校方式で年間最大280時間の日本語指導を実施しています。
    • （出典）(https://www.mext.go.jp/content/20221031-mxt_syoto01-000025693_3.pdf)
    • （出典）足立区「帰国・外国人児童生徒に対する日本語指導」2023年度

主な取組②：日本語指導担当教員の専門性向上研修の体系化

• JSL教育の理論、DLA等のアセスメント手法、教科と統合した指導法、異文化理解、保護者対応など、日本語指導担当教員に求められる専門性を体系的に学べる研修プログラムを東京都・特別区で共同開発・実施します。
• 経験の浅い教員とベテラン教員がペアで研修に参加するなど、OJTを促進する仕組みを取り入れます。
  • 客観的根拠：
    • 教員の約9割が日本語教育について学びたいと回答しており、専門性向上のニーズは非常に高い状況です。
    • （出典）行知学園株式会社「【外国人の児童・生徒への教育に関する課題】多くの教員が日本語の理解や指導に課題を感じていた 約9割が日本語教育について学びたいと回答」2024年度

主な取組③：母語・継承語教育の機会提供

• 地域のNPOや大使館、コミュニティ団体と連携し、放課後や土曜日に母語を学ぶ教室（母語教室）の開催を支援します。
• 学校図書館に多言語の絵本や書籍を配置する「多文化図書コーナー」の設置を推進します。
  • 客観的根拠：
    • 研究により、母語の能力が高い方が第二言語の習得にも良い影響を与えるという「二言語相互依存説」が支持されています。母語の保持は学力形成の土台となります。
    • （出典）呉 尚善「日本における外国にルーツを持つ子どもの二言語能力に関する研究動向」2022年度
    • 浜松市では、市立小中学校で母語教室を開催し、母語でのコミュニケーション力向上を支援しています。
    • （出典）浜松市子育て情報サイト ぴっぴ「母語教室」

主な取組④：多言語対応の「高校進学ガイダンス」とキャリア教育の強化

• 地域のNPO（例：多文化共生センター東京、YSCグローバル・スクール）と連携し、中学3年生とその保護者を対象とした多言語での高校進学ガイダンスを各区で開催します。
• 在留資格や家庭の経済状況に応じた進路（都立高校の在京外国人枠、私立高校の優遇措置、奨学金等）について、具体的な情報を提供します。
• 中学校のキャリア教育において、外国にルーツを持つ社会人をロールモデルとして招き、多様な生き方やキャリアパスに触れる機会を設けます。
  • 客観的根拠：
    • 多文化共生センター東京やYSCグローバル・スクールは、多言語での高校進学ガイダンスや困窮家庭への支援で豊富な実績を持っています。
    • （出典）多文化共生センター東京「2023年度 事業報告書」2024年度
    • （出典）(https://syncable.biz/associate/yscgs/business/212)

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 日本語指導を受けた生徒の高校進学率 98%以上（全体平均との差を解消）
    • データ取得方法： 教育委員会による卒業生の進路追跡調査
• KSI（成功要因指標）
  • 中学校卒業段階で、教科学習に最低限必要な日本語能力（DLAレベル4以上など）を達成した生徒の割合 80%
    • データ取得方法： 中学3年次に行う日本語能力アセスメント結果
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 日本語指導を受けた生徒の高校中退率 2%未満（全体平均と同水準）
    • データ取得方法： 教育委員会と高校の連携による追跡調査
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • センター校における「特別の教育課程」履修者数 年間200人（特別区全体目標）
    • データ取得方法： センター校の指導記録
  • 教員向け専門研修の参加者数及び満足度（満足度90%以上）
    • データ取得方法： 研修実施後のアンケート調査

支援策③：地域全体で支える「多文化共生推進ネットワーク」の強化

目的

• 学校だけで抱え込まず、行政、NPO、地域住民、企業などが連携・協働し、地域全体で日本語指導が必要なこどもと家庭を多角的に支えるエコシステムを構築します。
• 散在地域においても、質の高い支援を安定的に提供できる持続可能な体制を整備します。

主な取組①：「地域日本語教育コーディネーター」の育成と配置

• 地域のNPO職員や、退職教員、日本語教育に関心のある地域住民などを対象に、行政と学校、支援団体を繋ぐ「地域日本語教育コーディネーター」の養成講座を実施します。
• 育成したコーディネーターを、教育委員会や地域の国際交流協会、社会福祉協議会などに配置し、地域の支援リソースの把握、支援が必要な家庭とのマッチング、学校への情報提供などを行います。
  • 客観的根拠：
    • 文部科学省は、地域日本語教育の総合的な体制づくりの核として「地域日本語教育コーディネーター」の役割を重視し、育成を推進しています。
    • （出典）こども家庭庁「令和7年版 こども白書」2025年度

主な取組②：NPO・民間団体との協働による放課後学習支援・居場所づくり

• 放課後や長期休暇中に、日本語や教科学習の補習を行う学習支援教室や、安心して過ごせる居場所づくり事業を、実績のあるNPOや民間団体に委託して実施します。
• 区は、活動場所として公共施設（学校の空き教室、コミュニティセンター等）を無償提供するほか、運営費用を補助します。
  • 客観的根拠：
    • NPOカタリバやYSCグローバル・スクールなどは、外国ルーツのこどもたちのための学習支援や居場所づくりで高い専門性と実績を有しています。
    • （出典）認定NPO法人カタリバ「多文化共生プログラム」
    • （出典）(https://syncable.biz/associate/yscgs/business/212)

主な取組③：地域住民・大学生ボランティアの活用

• 地域の日本語教室や学習支援教室で活動する、地域住民や大学生のボランティアを募集・育成する仕組みを構築します。
• こどもたちにとって、学習支援だけでなく、地域社会と繋がる身近な「お兄さん・お姉さん」的な存在となり、心理的な支えとなります。
  • 客観的根拠：
    • 多文化共生センター東京では、ボランティアや大学生との協働により、学習支援や居場所としての活動を展開しています。
    • （出典）多文化共生センター東京「2022年度 事業報告書」2023年度

主な取組④：区・教育委員会・NPO等による「地域連携協議会」の設置

• 各区に、区の担当課（教育、福祉、国際、地域振興等）、教育委員会、学校代表、地域の主要な支援団体（NPO、国際交流協会等）で構成される「多文化共生教育推進地域連携協議会」を設置します。
• 協議会では、地域内の課題や支援ニーズを共有し、役割分担や連携方策について定期的に協議し、共同で事業を企画・実施します。
  • 客観的根拠：
    • 先進自治体では、行政の各部局や関係機関が連携したネットワークを構築し、包括的な支援を実現しています。
    • （出典）こども家庭庁「令和7年版 こども白書」2025年度
    • （出典）浜松市「浜松市多文化共生都市ビジョン」2019年度

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 日本語指導が必要なこどもと保護者の地域社会における孤立感の解消（アンケート調査で「地域に相談相手がいる」と回答する割合 70%以上）
    • データ取得方法： 年1回の対象者アンケート調査
• KSI（成功要因指標）
  • 学校と地域支援機関（NPO等）との連携件数 前年度比20%増
    • データ取得方法： 地域日本語教育コーディネーターの活動報告
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 放課後学習支援・居場所への参加率（対象児童生徒の50%以上）
    • データ取得方法： 各事業実施団体からの参加者数報告
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 地域日本語教育コーディネーター養成講座の修了者数 年間50人（特別区全体目標）
    • データ取得方法： 講座実施記録
  • 地域連携協議会の開催回数（年4回以上）と、協議に基づく新規連携事業数（年2件以上）
    • データ取得方法： 協議会の議事録及び事業報告

先進事例

東京都特別区の先進事例

新宿区「母語話者を活用した寄り添い型支援モデル」

• 新宿区では、教育委員会が区立幼・小・中学校に編入してきた日本語の分からないこどもに対し、母語話者である「日本語サポート指導員」を派遣しています。指導員は授業中に個別指導を行うだけでなく、教育相談的な役割も担い、来日したこどもの生活への適応を多角的に支援しています。平成28年度には中国語、韓国語、英語、ネパール語など11言語で110名のこどもが指導を受けており、多様な言語的背景に対応している点が特徴です。
  • 成功要因： こどもの母語を尊重し、心理的な安心感を与える「寄り添い型」の支援を初期段階で提供している点。また、指導員が学習面だけでなく生活・心理面の相談相手となることで、こどもの孤立を防いでいる点。
  • 客観的根拠：
    • （出典）新宿区教育委員会「日本語サポート指導」2023年度
    • （出典）新宿区「新宿区教育ビジョン」2017年度

足立区「センター校方式による集中的日本語・教科学習モデル」

• 足立区では、日本語指導が必要な中学生を対象に、区内3カ所に「あだち日本語学習ルーム」というセンター校を設置しています。対象生徒は在籍校からセンター校に通級し、日本語の習熟度に応じて、年間最大280時間の集中的な日本語指導や教科学習支援を受けます。通室初期・中期・後期と段階に応じた指導プロセスが確立されており、最終的には在籍校での学習に円滑に移行することを目指しています。
  • 成功要因： 専門性の高い教員と教材を集約した拠点校を設けることで、指導の質と効率を高めている点。「特別の教育課程」に基づき、集中的な指導時間を確保している点。
  • 客観的根拠：
    • （出典）足立区教育委員会「帰国・外国人児童生徒に対する日本語指導」2023年度
    • （出典）(https://www.mext.go.jp/content/20221031-mxt_syoto01-000025693_3.pdf)

江戸川区「公民連携による柔軟な日本語教育プログラムモデル」

• 江戸川区では、区立学校に在籍する日本語での意思疎通が困難なこどもに対し、日本語指導員を派遣する区独自の事業に加え、民間の日本語学校（TCJ学院）と連携し、入学前のこどもを対象とした日本語指導プログラム「にほんごひろば」を実施しています。これにより、行政だけでは対応が難しい、きめ細かく柔軟な支援を提供しています。
  • 成功要因： 行政と、日本語教育のノウハウを持つ民間機関がそれぞれの強みを活かして連携している点。入学前という早い段階で介入することで、こどものスムーズな学校生活への移行を支援している点。
  • 客観的根拠：
    • （出典）江戸川区「帰国・外国人幼児、児童・生徒のための日本語指導」2023年度
    • （出典）(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000051.000060187.html)

全国自治体の先進事例

浜松市「『不就学ゼロ』を目指す包括的支援と多文化共生都市戦略」

• 浜松市は「多文化共生都市ビジョン」を掲げ、外国人市民を地域社会の重要な構成員と位置づけています。教育分野では、区役所での住民登録から教育委員会の就学ガイダンス、学校での初期適応指導、日本語基礎指導、教科支援までをシステム化し、「不就学ゼロ」を目指しています。さらに、NPOと連携した不就学児のための教室や、母語教室の開催など、ライフステージに応じた切れ目のない支援体制を構築しています。
  • 成功要因： 市長のリーダーシップのもと、教育分野に留まらない都市戦略として多文化共生を位置づけている点。行政の各部署、学校、NPO、地域社会が連携する「オール浜松体制」を構築している点。
  • 客観的根拠：
    • （出典）浜松市「浜松市多文化共生都市ビジョン」2019年度
    • （出典）浜松市子育て情報サイト ぴっぴ「外国人の子どもが就学するときの手続きと支援の流れ」
    • （出典）総務省「定住外国人の子供の就学促進事業（浜松市）」2019年度

豊田市「NPOとの協働による就学前からの切れ目ない支援体制」

• 自動車産業の集積地である豊田市は、外国人児童生徒への支援に早くから取り組んでいます。特筆すべきは、NPO法人「トルシーダ」との強力な連携です。市は、就学前の幼児を対象としたプレスクール事業や、学校生活への適応支援などをNPOに委託。NPOは、行政の手が届きにくい家庭へのアウトリーチや、保護者の相談支援など、きめ細かな活動を展開しています。これにより、就学前から学齢期、さらにその先までを見通した一貫した支援体制を実現しています。
  • 成功要因： 行政と、地域に根差し、当事者との信頼関係が厚いNPOとの明確な役割分担とパートナーシップが確立されている点。プレスクール事業など、早期介入を重視している点。
  • 客観的根拠：
    • （出典）文部科学省「令和２年度 帰国・外国人児童生徒等教育の推進支援事業 事業内容報告書（豊田市教育委員会）」2021年度
    • （出典）豊田市「第２次豊田市国際まちづくり計画 後期まちづくりプラン 令和４年度実績報告書」2023年度

参考資料［エビデンス検索用］

• こども家庭庁
  • 「令和7年版 こども白書」令和7年
• 文部科学省
  • 「令和5年度 日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査結果について」令和6年
  • 「外国人児童生徒等教育の現状と課題」令和3年
  • 「地域日本語教育の推進」関連資料
  • 「帰国・外国人児童生徒等教育の推進」関連資料
• 東京都
  • 多文化共生センター東京「事業報告書」
• 特別区
  • 新宿区教育委員会「日本語サポート指導」
  • 足立区教育委員会「帰国・外国人児童生徒に対する日本語指導」
  • 江戸川区「帰国・外国人幼児、児童・生徒のための日本語指導」
• その他研究機関・調査報告
  • 行知学園株式会社「『外国人児童・生徒への教育』に関する調査」令和6年
  • 呉 尚善（2022）「日本における外国にルーツを持つ子どもの二言語能力に関する研究動向」
  • 山本直子・周燕飛・千年よしみ（2024）「外国ルーツ子育て世帯の仕事、育児と暮らし―『外国ルーツ子育て世帯調査 2024』―」

まとめ

　日本語指導が必要な児童生徒の急増は、東京都特別区が直面する喫緊の課題です。彼らが抱える言葉の壁は、学力不振や進路格差に直結し、放置すれば将来の社会的な孤立や貧困の再生産に繋がりかねません。この課題の解決には、不就学ゼロを目指す「入口」の支援から、学力とアイデンティティを育む「中」の教育、そして社会的自立に繋げる「出口」の進路保障まで、切れ目のない包括的な支援体制の構築が不可欠です。行政がリーダーシップを発揮し、学校、NPO、地域社会が連携するネットワークを強化することで、全てのこどもがその持つ可能性を最大限に発揮できる、真の多文化共生社会を実現することができます。
　本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
　引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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