15 教育

教職員の長時間勤務是正、業務量適正化

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要

  • 自治体が教職員の長時間勤務是正、業務量適正化を行う意義は、教育の質の維持・向上教職員の心身の健康確保にあります。近年の教育現場では、こどもの多様なニーズへの対応、保護者との連携強化、地域との協働推進など、教職員の業務が質・量ともに増大しています。
  • これに伴い、教職員の長時間勤務が常態化し、精神疾患による休職者数の増加や教員志望者の減少、若手教員の離職といった深刻な問題が顕在化しています。
  • このような状況は、教育の質の低下を招き、ひいては社会全体の持続可能性に影響を及ぼす喫緊の課題です。東京都特別区においても、この問題は例外なく存在し、地域の実情に応じたきめ細やかな支援策が求められています。

意義

こどもにとっての意義

  • 質の高い教育機会の確保
    • 教職員の心身の健康が保たれ、十分な教材研究や授業準備の時間が確保されることで、より質の高い授業や個別指導が実現し、こども一人ひとりの学習意欲と学力向上につながります。
    • 客観的根拠: 文部科学省の教員勤務実態調査(令和4年度)によると、教員は「授業準備」に小学校で1時間15分、中学校で1時間30分を費やしており、この時間が確保されることが教育の質に直結します。
      • (出典)文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(速報値)について」令和5年4月28日 1
  • 安心できる学習環境の提供
    • 教職員に精神的・時間的ゆとりが生まれることで、こどもとの対話や心のケアに時間を割くことができ、いじめや不登校といった問題の早期発見・早期対応につながり、安心できる学校生活を送ることができます。
    • 客観的根拠: 教職員の精神疾患による病気休職者数は令和5年度に7,119人と過去最多を更新しており、教職員の精神的健康がこどもとの関わりに影響を与えている可能性が示唆されます。
      • (出典)文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」令和7年2月28日 2
  • 多様な学びの機会の保障
    • 教職員の負担が軽減され、部活動の地域移行や外部人材の活用が進むことで、こどもは学校の枠を超えた多様なスポーツ・文化活動に触れる機会を得られ、自己の可能性を広げることができます。
    • 客観的根拠: 部活動の地域移行は、教員の負担軽減だけでなく、生徒の選択肢の拡大や地域コミュニティとの連携強化に繋がるとされています。
      • (出典)X-SHIP「部活動の地域移行のメリット」 3

保護者にとっての意義

  • 学校への信頼感の向上
    • 教職員が安定して教育活動に取り組めることで、学校運営が円滑になり、保護者は学校に対してより一層の信頼感を抱くことができます。
  • こどもの教育への安心感
    • 教職員がこども一人ひとりに丁寧に向き合う時間が増えることで、保護者はこどもの学習状況や学校生活への不安が軽減され、安心してこどもを学校に預けることができます。
  • 学校との連携強化
    • 教職員の業務効率化により、保護者との連絡手段がデジタル化されるなど、学校とのコミュニケーションが円滑になり、学校と家庭の連携が強化されます。
    • 客観的根拠: 文部科学省は、学校・保護者間の連絡手段のデジタル化を働き方改革の重要な取り組みとして推進しています。
      • (出典)文部科学省「全国の学校における働き方改革事例集(令和5年3月改訂版)」令和5年3月 4

学校・教師にとっての意義

  • 教職員の心身の健康維持
    • 長時間労働が是正され、業務量が適正化されることで、教職員のストレスが軽減され、精神疾患による休職や離職のリスクが低減し、心身の健康が維持されます。
    • 客観的根拠: 公立学校共済組合のストレスチェックデータ分析結果報告書(2023年度速報値)では、高ストレス者の割合が過去最多の11.7%に達しており、その要因として「事務的な業務量」が挙げられています。
      • (出典)公立学校共済組合「ストレスチェックデータ分析結果報告書」2024年6月27日 5
  • 専門性の発揮と向上
    • 事務作業や雑務が削減され、授業準備や教材研究、こどもとの対話に集中できる時間が増えることで、教員本来の専門性を存分に発揮し、教育実践の質の向上に繋がります。
    • 客観的根拠: 教員勤務実態調査(令和4年度)によると、小学校教諭の平日平均在校等時間10時間45分のうち、授業関連業務が4時間30分、授業準備が1時間15分を占めており、これらの時間確保が重要です。
      • (出典)文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(速報値)について」令和5年4月28日 1
  • 教職の魅力向上と定着率の改善
    • 働きやすい環境が整備されることで、教職の魅力が高まり、教員志望者の増加や若手教員の離職率低下に繋がり、安定した教員配置が実現します。
    • 客観的根拠: 東京都の2024年度新規採用教員の1年以内離職率は5.7%に上り、教職の魅力低下が懸念されています。働き方改革はこれを是正する上で不可欠です。
      • (出典)東京都教育庁「令和6年度条件付採用教員の任用について」2025年4月24日 6

地域社会にとっての意義

  • 地域全体の教育力向上
    • 学校と地域が連携し、部活動の地域移行や外部人材の活用が進むことで、地域全体でこどもを育む体制が強化され、地域全体の教育力の向上に貢献します。
    • 客観的根拠: コミュニティ・スクールや地域学校協働活動の推進は、学校運営に地域住民が参画し、地域全体でこどもを育む環境を構築する上で有効とされています。
      • (出典)文部科学省「3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための 各主体による「対応策の例」」2025年 7
  • 地域コミュニティの活性化
    • 学校が地域との接点を増やすことで、地域住民が教育活動に参画する機会が創出され、世代間交流が促進されるなど、地域コミュニティの活性化に繋がります。
    • 客観的根拠: 地域連携の取り組みによって、「地域住民等との人間関係が構築しやすくなった」と答えた教職員の割合が小学校で82.1%、中学校で78.6%に達しています。
      • (出典)岡山県「地域連携に関する教職員アンケート調査結果」 8

行政にとっての意義

  • 持続可能な教育システムの構築
    • 教職員の過重労働を解消し、教員不足を緩和することで、将来にわたって安定的に質の高い教育を提供できる持続可能な教育システムを構築します。
    • 客観的根拠: 文部科学省は、教師の長時間労働の是正を喫緊の課題とし、持続可能な教育環境の構築を目指しています。
      • (出典)文部科学省「学校における働き方改革」 4
  • 行政サービスの効率化と質の向上
    • ICT活用による校務効率化や学校徴収金の公会計化など、行政が主導する業務改革により、教育行政サービスの効率化と質の向上を図ります。
    • 客観的根拠: 練馬区では、出退勤管理システム導入後、時間外在校時間が短くなる傾向が見られ、ICT活用が業務効率化に寄与しています。
      • (出典)練馬区教育委員会「練馬区立学校(園)における教員の働き方改革推進プラン(改定)案」令和6年 9
  • 財政の健全化
    • 教職員の離職や休職に伴う代替教員確保コストや、過労死等による補償リスクを低減し、中長期的な財政負担の健全化に貢献します。
    • 客観的根拠: 精神疾患による病気休職者数は増加傾向にあり、これに伴う代替教員の確保は財政的負担となります。
      • (出典)文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」令和7年2月28日 2

(参考)歴史・経過

  • 平成29年(2017年)
    • 4月: 文部科学省が教員勤務実態調査速報値を公表し、小学校で月約59時間、中学校で月約81時間もの時間外勤務が推計され、教員の厳しい勤務実態が明らかになりました。
    • 6月: 中央教育審議会が「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」を取りまとめました。
    • (出典)文部科学省「学校における働き方改革に関するこれまでの経緯 詳細」2023年11月 10
  • 平成31年(2019年)1月
    • 文部科学省が「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を策定し、1か月の時間外在校等時間を45時間以内、1年間を360時間以内と定めました。これは「超勤4項目」以外の業務も含む勤務時間管理の徹底を目的としています。
    • (出典)文部科学省「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン 策定趣旨」令和5年12月 11
  • 令和元年(2019年)12月
    • 給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)が改正され、上記ガイドラインが「指針」へと格上げされ、休日の「まとめ取り」のための1年単位の変形労働時間制の活用が可能になりました。
    • (出典)文部科学省「学校における働き方改革に関するこれまでの経緯 詳細」2023年11月 10
  • 令和4年(2022年)
    • 文部科学省が教員勤務実態調査(令和4年度)を実施し、平日・土日共に全ての職種で在校等時間が減少したものの、依然として長時間勤務の教員が多い状況が明らかになりました。
    • (出典)文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)【速報値】について」令和5年4月28日 1
  • 令和5年(2023年)
    • 4月: 文部科学省が令和4年度教員勤務実態調査の速報値を公表し、小学校で月約41時間、中学校で月約58時間程度と推計され、一定の改善が見られたものの、引き続き取り組み加速の必要性が示されました。
    • 6月: 経済財政運営と改革の基本方針2023において、教職の魅力向上、働き方改革の更なる加速化、処遇改善、指導・運営体制の充実、育成支援の一体的推進が明記されました。
    • 8月28日: 中央教育審議会質の高い教師の確保特別部会が「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策(提言)」を取りまとめ、教師の専門性向上と持続可能な教育環境の構築を目指す方針が示されました。
    • (出典)文部科学省「学校における働き方改革に関するこれまでの経緯 詳細」2023年11月 10
    • 11月: GIGAスクール構想の推進等に関する経済対策が閣議決定され、教育DXフロンティア戦略の推進が盛り込まれました。
    • (出典)文部科学省「学校における働き方改革に関するこれまでの経緯 詳細」2023年11月 10
  • 令和6年(2024年)
    • 東京都教育委員会が3月7日に「教員の働き方改革を進めるための集中的に取り組むべき具体策を盛り込んだ計画」を発表し、2026年度までに45時間を超える時間外勤務をゼロにする目標を掲げました。
    • (出典)TOKYO MX+「東京都教育委員会 教員の働き方改革に向け計画を発表」2024年3月8日 12
    • 文部科学省の概算要求では、小学校における高学年の教科担任制の強化や35人学級の計画的な整備、教師の処遇改善、支援スタッフの充実、教師人材の確保強化が重点項目として挙げられました。
    • (出典)勤怠打刻ファースト「【学校の働き方改革】文部科学省概算要求から読み解く、2024年度「教員の働き方改革」加速化プラン」2024年2月7日 13
  • 令和7年(2025年)
    • 東京都教育委員会は、2025年度に新たに学校業務の外部委託(小中150校)、TEPRO人材バンク機能強化、スマホ貸与・教務手帳の電子化など8つの取り組みを進めることを公表しました。
    • (出典)リシード「東京都「働き方改革」小中150校の業務を外部委託…25年度」2025年2月5日 14
    • 給特法改正により、教職調整額が基本給の4%から5%へ増額される予定です。
    • (出典)すらら「教員の働き方改革はなぜ進まない?|改革推進に向けてできること」2023年4月18日 15

教職員の長時間勤務是正、業務量適正化に関する現状データ

教職員の長時間勤務は依然として深刻な状況にあります。文部科学省の教員勤務実態調査(令和4年度)によると、教諭の週当たりの平均在校等時間は、小学校で55時間56分、中学校で61時間13分でした。これは、正規の勤務時間(週38時間45分)を大幅に上回っています 1, 16

このデータは、教員の勤務時間が法定労働時間を大幅に超過しており、特に中学校教諭は過労死ライン(週60時間)に近い水準で勤務していることが常態化している状況を示しています。2016年の前回調査と比較して、在校等時間は減少傾向にあるものの、これは「持ち帰り残業」の増加によって相殺されている可能性があります。令和4年度調査では、平日の「持ち帰り時間」の増加が明らかになっており、学校内での勤務時間を短縮するための「帰宅圧力」が、実質的な業務量削減には繋がっていないことを示唆しています 13。結果として、教員の総労働時間は依然として長く、見かけ上の改善に留まっている可能性があります。この「隠れた残業」は、教員の心身の健康をさらに蝕むリスクを内包しています。

さらに、長時間勤務が常態化することで、教員の心身の健康が損なわれ、精神疾患による休職者数の増加や教職の魅力低下、ひいては教員不足の深刻化に直結していると考えられます。公立学校教職員の精神疾患による病気休職者数は、令和3年度の5,897人から令和5年度には7,119人へと増加し、過去最多を更新しています 2。また、公立学校共済組合のストレスチェックデータ分析結果報告書(2023年度速報値)では、高ストレス者の割合が過去最多の11.7%に達し、その要因として「事務的な業務量」が挙げられています 5。これらのデータは、長時間勤務が教員の健康を害し、教職の魅力を低下させ、結果として教員不足を加速させるという負の連鎖を示しています。東京都の2024年度新規採用教員の1年以内離職率は5.7%に上り、教職の魅力低下が懸念されています 6

教員の勤務時間の実態と推移(平日・土日別平均在校等時間)

職種小学校 (平成28年度)小学校 (令和4年度)変化量中学校 (平成28年度)中学校 (令和4年度)変化量高等学校 (令和4年度) (参考値)
平日平均在校等時間 (時間:分)
校長10:3710:23-0:1410:3710:10-0:279:37
副校長・教頭12:1211:45-0:2712:0611:42-0:2410:56
教諭11:1510:45-0:3011:3211:01-0:3110:06
講師10:5410:18-0:3611:1610:27-0:499:53
養護教諭10:079:53-0:1410:189:53-0:259:19
週末平均在校等時間 (時間:分)
校長1:290:49-0:401:591:07-0:521:37
副校長・教頭1:490:59-0:502:061:16-0:501:18
教諭1:070:36-0:313:222:18-1:042:14
講師0:570:20-0:373:101:53-1:172:10
養護教諭0:460:22-0:241:100:29-0:410:34
(出典)文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(速報値)について」令和5年4月28日 1

この表は、教職員の長時間勤務の現状を職種別、学校種別、曜日別に詳細に示し、過去の調査(平成28年度)との比較を通じて、働き方改革の進捗状況を客観的に把握するために極めて重要です。特に「変化量」を明示することで、どの職種や学校種で改善が見られ、どこに課題が残るのかを一目で理解できます。これにより、政策立案者は具体的なターゲットを設定しやすくなります。

教員の週当たり総在校等時間の分布(教諭)

週当たり総在校等時間区分小学校教諭の割合 (%)中学校教諭の割合 (%)
40時間未満2.42.5
40時間以上45時間未満10.710.4
45時間以上50時間未満22.410.0
50時間以上55時間未満30.320.2
55時間以上60時間未満18.720.3
60時間以上15.536.6
(出典)文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(速報値)について」令和5年4月28日 1

この表は、教員の長時間勤務が一部の教員に集中しているのではなく、広範な問題であることを明確に示しています。特に、労働基準法上の上限である週40時間、残業上限である週45時間、そして過労死ラインである週60時間を超過する教員の割合を示すことで、問題の深刻度を直感的に理解させることができます。例えば、中学校教諭の36.6%が週60時間以上勤務しているという事実は、緊急性の高い対応が求められることを強く訴えかけます。これにより、政策の緊急性と対象範囲の広さを訴える上で説得力が増します。

課題

こどもの課題

  • 教員の多忙による教育の質の低下
    • 教員が長時間勤務や過剰な業務に追われることで、授業準備や教材研究に十分な時間を割けず、授業の質が低下する可能性があります。特に専科教員が不足している場合、専門外の教員が代行することで、専門的な指導が不十分になるリスクがあります。
    • 客観的根拠: 教員不足が生じると、特に数学、理科、英語などの専門科目の授業の質が低下するリスクが指摘されています。
      • (出典)Education Career「教員不足の現状と課題 – 原因・影響・取り組みを解説」2025年4月25日 17
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: こどもの学習意欲が低下し、学力格差が拡大する可能性があります。
  • 個別指導や心のケアの不足
    • 教員が多忙であると、こども一人ひとりの学習進度や特性に応じたきめ細やかな個別指導の機会が減少します。また、こどもの心の変化やSOSを見逃しやすくなり、いじめや不登校などの問題の早期発見・早期対応が困難になる可能性があります。
    • 客観的根拠: 教員不足により、教員一人当たりの業務量が増加し、学習に遅れを感じているこどもや特別な支援が必要なこどもへの個別指導の機会が減少する傾向にあります。
      • (出典)Education Career「教員不足の現状と課題 – 原因・影響・取り組みを解説」2025年4月25日 17
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: こどもの学習遅延や精神的健康問題が深刻化し、学校生活への適応が困難になる可能性があります。
  • 多様な体験活動機会の減少
    • 教員の業務負担が大きく、特に部活動指導が過重であると、学校行事や課外活動の実施が縮小されたり、教員が新しい活動を企画する余裕がなくなったりします。これにより、こどもが学校生活で得られる多様な体験活動の機会が減少します。
    • 客観的根拠: 教員不足は学校全体の運営にも影響を与え、学校行事やクラブ活動の縮小が避けられないケースがあると指摘されています。
      • (出典)Education Career「教員不足の現状と課題 – 原因・影響・取り組みを解説」2025年4月25日 17
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: こどもの自主性や協調性、社会性を育む機会が失われ、全人的な成長が阻害される可能性があります。

保護者の課題

  • 学校とのコミュニケーション不足と不安の増大
    • 教員が多忙であると、保護者からの問い合わせ対応や面談に十分な時間を割くことが難しくなり、学校と保護者間のコミュニケーションが希薄になる傾向があります。これにより、保護者はこどもの学校生活や学習状況に関する情報が得にくくなり、不安を抱えやすくなります。
    • 客観的根拠: 教員の7割が保護者対応に負担感を感じており、特に「保護者・地域からの要望・苦情等への対応」に小学校で71.4%、中学校で71.1%の教員が負担を感じています。
      • (出典)ベネッセ教育情報サイト「保護者対応が先生を忙しくさせる? 教員の7割が負担感」2015年9月7日 18
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: 学校と保護者間の信頼関係が損なわれ、こどもの教育環境に対する不満や不信感が増大する可能性があります。
  • 学校への過度な期待と負担転嫁
    • 教員が多忙であるにも関わらず、保護者の中には学校に対して過度なサービスを期待したり、家庭で担うべき役割まで学校に求めるケースが見られます。これは、教員のさらなる負担増につながり、悪循環を生み出します。
    • 客観的根拠: 教員の仕事負担で最も負担に感じる業務は「保護者や地域住民からのクレーム対応」であると報告されています。
      • (出典)パーソル総合研究所「教員の仕事負担の状況 最も負担に感じる業務は「クレーム対応」」 19
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: 教職員と保護者の関係性が悪化し、学校運営の円滑性が損なわれる可能性があります。
  • 共働き家庭・ひとり親家庭への影響
    • 教員の働き方改革に伴い、学校の開門時間が遅くなったり、放課後のこどもの居場所が減少したりする新たな課題が生じる可能性があります。これは、特に共働き家庭やひとり親家庭にとって、こどもの預け先や生活リズムの調整に大きな影響を与え、負担が増大します。
    • 客観的根拠: 台東区の教育改革に関する報告で、働き方改革に伴う新たな課題として「学校の開門時間が遅くなり子どもが一人で朝を過ごす」「放課後の子どもの居場所が減少する」などが指摘されています。
      • (出典)本目さよ「台東区 教育改革の最前線!台東区の教員働き方改革で子どもたちの未来が変わる」2025年7月9日 20
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: 家庭の教育力が低下し、こどもの健全な育成環境が損なわれる可能性があります。

学校・教師の課題

  • 長時間勤務の常態化と持ち帰り残業の増加
    • 教員は、正規の勤務時間(週38時間45分)を大幅に超える長時間勤務が常態化しており、特に中学校教諭の週平均在校等時間は61時間13分に達しています。さらに、学校での勤務時間を短縮する「帰宅圧力」により、平日の「持ち帰り時間」が増加する傾向が見られ、実質的な業務量削減には繋がっていません。
    • 客観的根拠: 文部科学省の教員勤務実態調査(令和4年度)によると、小学校教諭の64.5%、中学校教諭の77.1%が週50時間以上勤務しており、平日の持ち帰り時間も増加しています。
      • (出典)文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(速報値)について」令和5年4月28日 1
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: 教員の健康状態が悪化し、精神疾患による休職や離職がさらに増加する可能性があります。
  • 精神疾患による休職者の増加と若手教員の離職
    • 教員の長時間勤務と過重な業務負担は、精神的なストレスを増大させ、精神疾患による病気休職者の増加に直結しています。特に若手教員の増加率が高く、東京都では新規採用教員の1年以内離職率が上昇傾向にあります。
    • 客観的根拠: 公立学校教職員の精神疾患による病気休職者数は、令和3年度の5,897人から令和5年度には7,119人へと増加し、過去最多を更新しています。東京都の2024年度新規採用教員の1年以内離職率は5.7%に達しています。
      • (出典)文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」令和7年2月28日 2、東京都教育庁「令和6年度条件付採用教員の任用について」2025年4月24日 6
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: 教員不足がさらに深刻化し、教育現場の不安定化と教育の質の低下を招く可能性があります。
  • 多岐にわたる業務と専門性以外の負担
    • 教員は、授業や生徒指導といった本来の専門業務に加え、調査・統計への回答、学校徴収金の管理、保護者対応、部活動指導、研修準備など、多岐にわたる業務を担っています。これらの業務は、教員の専門性とは直接関係のないものが多く、大きな負担となっています。
    • 客観的根拠: 教員が最も負担に感じる業務は「保護者や地域住民からのクレーム対応」であり、次いで「国や教育委員会・自治体等からの調査・統計への回答」が高い割合を占めています。
      • (出典)パーソル総合研究所「教員の仕事負担の状況 最も負担に感じる業務は「クレーム対応」」 19
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: 教員が本来の教育活動に集中できなくなり、教育の質の低下や教員のモチベーション低下を招く可能性があります。
  • ICT活用への対応と研修負担
    • GIGAスクール構想の推進により、ICT環境の整備は進んでいますが、教員のICTリテラシーには個人差があり、新たなツールの導入や活用方法の習得が新たな負担となる場合があります。また、研修に費やす時間も増加傾向にあり、研修と業務のバランスに困難を感じる教員が多いです。
    • 客観的根拠: 研修に費やす時間は月平均6.8時間で、5年前(5.2時間)と比較して増加傾向にあり、「研修と業務のバランスに困難を感じる」と回答した教員は68.7%に上ります。
      • (出典)文部科学省「教員勤務実態調査」令和4年度、東京都教職員研修センター「教員の研修ニーズ調査」令和5年度 21
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: ICT環境の整備が進んでも、その効果が十分に発揮されず、教員の業務負担が軽減されない可能性があります。

地域社会の課題

  • 学校への協力体制の未整備
    • 教員の働き方改革には地域社会の協力が不可欠ですが、登下校の見守りや放課後のこどもの居場所づくり、学校行事への参画など、学校を支える地域全体の協力体制が十分に整備されていない場合があります。
    • 客観的根拠: 登下校に関する対応について、約45%の教員が負担軽減の必要性を感じつつも、地域や保護者の理解が必要であると回答しています。
      • (出典)文部科学省「3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための 各主体による「対応策の例」」2025年 7
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: 教員の業務負担が軽減されず、学校が地域から孤立し、地域全体の教育力向上が停滞する可能性があります。
  • 部活動の地域移行における課題
    • 部活動の地域移行は教員の負担軽減に繋がりますが、地域における指導者の確保、活動場所の確保、費用負担、安全管理、地域間の活動格差といった課題が存在します。特に専門的な指導ができる人材や、ボランティアとして継続的に関われる人材の確保が難しい場合があります。
    • 客観的根拠: 部活動の地域移行は教員の負担軽減にメリットがある一方で、「教員の業務負担軽減につながっていない」「地域格差で不平等」などの問題も浮上しています。
      • (出典)NIJIN「部活動の地域移行のメリット・デメリット」2024年7月25日 22
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: こどもの多様なスポーツ・文化活動の機会が失われたり、地域間の教育格差が拡大したりする可能性があります。

行政の課題

  • 教員不足の深刻化と代替教員の確保困難
    • 全国の公立小中学校における教員不足は、令和3年度始業日時点で2,086人(不足率0.35%)に上り、特に中学校で不足率が高い状況です。東京都においても、2024年度の公立小学校教員が始業日時点で20人不足するなど、教員不足が深刻化しており、産休・育休や病休者の増加に伴う臨時的任用教員の確保が困難になっています。
    • 客観的根拠: 文部科学省「教員不足の現状と課題 – 原因・影響・取り組みを解説」2025年4月25日 1723、日本教育新聞電子版「都内公立小、教員20人不足」2024年4月22日 24
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: 授業の質の低下、個別指導の不足、学校運営の混乱を招き、教育全体に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
  • 教職員の精神疾患による休職者数の増加
    • 全国的に教職員の精神疾患による病気休職者数は増加の一途を辿り、令和5年度には7,119人と過去最多を更新しました。これは、教職員の心身の健康が危機的な状況にあることを示しており、行政として早急な対策が求められています。
    • 客観的根拠: 文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」令和7年2月28日 2
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: 教職員の健康被害が拡大し、教育現場の士気低下や教育活動の停滞を招く可能性があります。
  • 働き方改革の進捗の地域差と実効性の確保
    • 国や都が働き方改革のガイドラインや計画を策定しているものの、実際の取り組み状況には自治体間や学校間で差が見られます。特に、民間企業等で進むDX化や柔軟な働き方と比較すると、教育現場での改革は遅れている側面があり、実効性の確保が課題となっています。
    • 客観的根拠: 文部科学省の調査では、全国で働き方改革の取組の実施が着実に進んでいるとの結果が出ている一方で、自治体・学校間の取組状況に差が見られ、さらに取組を加速する必要があることも明らかになっています。
      • (出典)文部科学省「学校における働き方改革」 4
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: 改革の恩恵を受けられない教職員が残り、不公平感や不満が増大し、改革全体の推進力が失われる可能性があります。
  • 財源確保と制度設計の課題
    • 教職員定数の改善、支援スタッフの配置拡充、ICT環境整備、部活動の地域移行など、働き方改革を推進するための施策には多大な財源が必要です。また、給特法をはじめとする教職員の給与制度の見直しなど、法制度的な枠組みを含めた具体的な制度設計も大きな課題です。
    • 客観的根拠: 文部科学省の2024年度概算要求では、教職員定数の改善に128億円(5,910人増)が要求されており、財源確保の重要性が示されています。
      • (出典)文部科学省「学校における働き方改革に関するこれまでの経緯 詳細」2023年11月 10
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察: 必要な施策が十分に実施されず、働き方改革が停滞し、教職員の負担が解消されない可能性があります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 短期間で効果が発現し、他の課題や関係者に良い影響を広げられるか。
  • 実現可能性
    • 既存の資源や法制度、予算内で実現可能か、または実現に向けた道筋が明確か。
  • 費用対効果
    • 投入するコストに対して、得られる効果が大きいか。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の教職員や学校に偏らず、公平に恩恵が行き渡るか。また、中長期的に継続可能な仕組みであるか。
  • 客観的根拠の有無
    • 過去のデータや先行事例から、効果が客観的に裏付けられているか。

支援策の全体像と優先順位

教職員の長時間勤務是正と業務量適正化は、単一の施策で解決できる問題ではなく、多角的かつ継続的な取り組みが必要です。本報告書では、以下の3つの支援策を柱とし、それぞれの施策内で具体的な取組を提案します。これらの支援策は相互に関連し、相乗効果を生み出すことで、より大きな成果が期待できます。

優先順位の考え方に基づいて検討した「行政の支援策の全体像」について、それぞれの位置づけ(どのような考え方でまとめたのか)をまとめます。

  • 最優先事項:支援策①:教職員の業務負担軽減と専門性強化」と「支援策②:ICT活用による校務効率化と教育の質向上」を最優先と位置づけます。これらは教職員の直接的な業務負担を軽減し、教育の質を高める上で即効性と高い波及効果が期待できるためです。特に、ICT活用は、教職員の意識改革を促し、業務の標準化・自動化に繋がる基盤となるため、先行して取り組むべきです。
  • 次点:支援策③:外部人材活用と地域連携の強化」を次点とします。これは、教職員の負担軽減に大きく貢献し、学校を社会全体で支える体制を構築する上で不可欠ですが、地域との調整や人材確保に時間を要するため、中長期的な視点で継続的に推進する必要があります。ただし、部活動の地域移行など、喫緊の課題については先行して取り組むべきです。
  • 全体的な考え方: 各支援策は、教職員の「時間創出」と「質の向上」という二つの目標に貢献します。時間創出によって生まれたゆとりを、こどもと向き合う時間や自己研鑽に充てることで、教育の質が向上し、教職の魅力が高まるという好循環を目指します。

各支援策の詳細

支援策①:教職員の業務負担軽減と専門性強化

目的
  • 教職員の過重な業務負担を軽減し、心身の健康を確保するとともに、教員が本来担うべき教育活動に集中できる環境を整備することで、教育の質の向上を図ります。
  • 客観的根拠: 教員の長時間勤務は、精神疾患による休職者数の増加や若手教員の離職率上昇に直結しており、これを是正することは教員の健康維持に不可欠です。
    • (出典)文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」令和7年2月28日 2、東京都教育庁「令和6年度条件付採用教員の任用について」2025年4月24日 6
主な取組①:業務の明確化と適正な役割分担
  • 教職員の業務を「教師でなければできない業務」「教師でなくてもできる業務」「学校以外が担うべき業務」の3つに明確に分類し、それぞれの業務について最適な担い手を検討します。
    • 客観的根拠: 文部科学省は、学校・教師が担う業務を3分類し、業務の適正化を推進しています。
      • (出典)文部科学省「3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための 各主体による「対応策の例」」2025年 7
  • 事務職員や学校栄養職員など、教員以外の職員との役割分担を明確化し、校務分掌を見直すことで、特定の教員への業務集中を解消し、業務の平準化を図ります。
    • 客観的根拠: 葛飾区では、職種別の標準的な役割分担表を策定し、周知徹底することで、教員が本来担うべき業務に専念できる環境を整備しています。
      • (出典)葛飾区教育委員会「葛飾区立学校における働き方改革推進プラン」2019年1月25日 25
主な取組②:支援人材の拡充と効果的配置
  • 教員業務支援員(スクール・サポート・スタッフ)、副校長補佐、学校生活支援員、ICT支援員などの支援スタッフを計画的に増員し、各学校の状況に応じて効果的に配置します。
    • 客観的根拠: 教員業務支援員が継続配置された学校では、教員1人当たり週4.89時間の勤務時間が減少したという効果が報告されています。また、副校長・教頭マネジメント支援員の配置率は全国で4.5%に留まっており、拡充の余地が大きいです。
      • (出典)文部科学省「学校における働き方改革に関するこれまでの経緯 詳細」2023年11月 10、リシード「副校長・教頭マネジメント支援員の配置4.5%」2024年11月27日 26
  • 支援スタッフの業務内容や活用方法に関するガイドラインを策定し、学校管理職や教員への研修を実施することで、支援スタッフの効果的な活用を促進します。
    • 客観的根拠: 千葉市立加曽利中学校では、教員業務支援員の活用により、教員の負担軽減に成功しており、その活用には教育委員会によるガイドラインが役立っています。
      • (出典)文部科学省「全国学校における働き方改革事例集 令和5年3月改訂版 Part1」令和5年3月 27
主な取組③:研修制度の見直しと負担軽減
  • 教職員研修のオンライン化やオンデマンド化を推進し、時間や場所の制約を軽減することで、研修参加の負担を軽減します。
    • 客観的根拠: 研修に費やす時間は月平均6.8時間と増加傾向にあり、約7割の教員が研修と業務のバランスに困難を感じています。オンライン化は、この負担を軽減する有効な手段です。
      • (出典)文部科学省「教員勤務実態調査」令和4年度、東京都教職員研修センター「教員の研修ニーズ調査」令和5年度 21
  • 若手教員向けの研修においては、メンター制度の強化や、経験豊富な教員によるOJT(On-the-Job Training)を充実させ、精神的負担の軽減を図ります。
    • 客観的根拠: 新任教員が精神疾患に陥る要因として、「理想と現実のギャップ」「自己責任感」「過度な業務負担」「SOSを出せない態度」などが挙げられており、メンターによる効果的な指導・支援が不足していることが示唆されています。
      • (出典)東京都教職員研修センター「教員不足 メンタルヘルス不調 教育行政 指」 28
主な取組④:勤務時間管理の徹底と意識改革
  • タイムカードやICカードを活用した客観的な出退勤管理システムを全ての学校に導入し、教職員の在校等時間を正確に把握します。
    • 客観的根拠: 練馬区では、出退勤管理システム導入後、小中学校ともに時間外在校時間が短くなる傾向が認められています。
      • (出典)練馬区教育委員会「練馬区立学校(園)における教員の働き方改革推進プラン(改定)案」令和6年 9
  • 管理職が教職員の勤務状況を定期的に把握し、長時間勤務が常態化している教職員に対しては、個別の面談や業務内容の見直しを通じて改善を促します。
    • 客観的根拠: 東京都教育委員会は、2026年度までに45時間を超える時間外勤務をゼロにする目標を掲げ、コンサルタントを活用した教員の業務見直しなどを進めています。
      • (出典)TOKYO MX+「東京都教育委員会 教員の働き方改革に向け計画を発表」2024年3月8日 12
主な取組⑤:学校行事・会議等の精選と効率化
  • 学校行事の目的や内容を再検討し、教育的意義の薄いものや負担の大きいものを削減または簡素化します。特に、コロナ禍で中止・縮小された行事について、安易に以前の形に戻すのではなく、精選した上で実施を検討します。
    • 客観的根拠: 熊本市では、運動会の開会式簡素化や音楽会の選曲見直しにより、練習時間や準備時間の削減に成功しています。
      • (出典)文部科学省「3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための 各主体による「対応策の例」」2025年 7
  • 校内会議や打ち合わせの回数・時間を削減するため、議題の精選、参加者の限定、オンライン会議の活用、資料のペーパーレス化を徹底します。
    • 客観的根拠: 岐阜市立岐阜中央中学校では、ICTを活用したペーパーレス会議の導入により、会議資料の印刷・製本の手間が削減され、効率的な会議運営が可能になりました。
      • (出典)文部科学省「全国学校における働き方改革事例集 令和5年3月改訂版 Part1」令和5年3月 27
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 教職員の月当たり時間外在校等時間45時間以内の達成率
      • 具体例: 小学校教諭の月当たり時間外在校等時間が45時間以内の割合を2023年度の59.20%から2027年度までに100%にする。
      • データ取得方法: 出退勤管理システムからのデータ集計、教員勤務実態調査(特別区独自調査)
  • KSI(成功要因指標)
    • 教職員の業務負担感の軽減度
      • 具体例: 「事務的な業務量」に対する負担感を「非常に感じる」「やや感じる」と回答する教職員の割合を、2023年度のストレスチェック結果から毎年5%削減する。
      • データ取得方法: 教職員ストレスチェック結果、教職員向け業務負担感アンケート
    • 支援スタッフの学校への配置率
      • 具体例: 教員業務支援員、副校長補佐、ICT支援員の学校への配置率を2025年度までに100%にする。
      • データ取得方法: 各学校からの配置状況報告、教育委員会による配置計画進捗状況
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 教職員の精神疾患による休職者数の減少率
      • 具体例: 精神疾患による病気休職者数を、令和5年度の7,119人から毎年10%削減する。
      • データ取得方法: 文部科学省「公立学校教職員の人事行政状況調査」特別区内のデータ抽出
    • 新規採用教員の1年以内離職率の改善
      • 具体例: 新規採用教員の1年以内離職率を、2024年度の5.7%から2027年度までに2.0%以下に改善する。
      • データ取得方法: 東京都教育庁による新規採用教員の離職状況調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 学校行事・会議の平均削減時間
      • 具体例: 各学校における年間総会議時間を2024年度比で10%削減する。
      • データ取得方法: 各学校の会議議事録、教職員の自己申告による会議時間記録
    • 業務分担表の策定・運用状況
      • 具体例: 全ての学校で業務分担表を策定し、年1回以上見直しを実施する学校の割合を100%にする。
      • データ取得方法: 教育委員会による学校へのヒアリング、業務分担表の提出状況確認

支援策②:ICT活用による校務効率化と教育の質向上

目的
  • ICTツールを積極的に活用し、教職員の校務負担を大幅に軽減するとともに、教育活動の質を高め、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を推進します。
  • 客観的根拠: 文部科学省は、校務DXを「個別最適な学び」と「協働的な学び」の一体的な充実を支える基盤であり、教員の働きやすさにもつながると位置づけています。
    • (出典)デジタル庁「校務DXの取組に関するダッシュボード」2025年6月13日 29
主な取組①:校務支援システムの導入・活用促進
  • 統合型校務支援システムを全ての小中学校に導入し、教務、学務、保健、施設管理など、多岐にわたる校務のデジタル化・一元化を推進します。
    • 客観的根拠: 練馬区では、統合型校務支援システム導入後、諸表簿の電子化や各種会議・研修のオンライン活用が進められています。
      • (出典)練馬区教育委員会「練馬区立学校(園)における教員の働き方改革推進プラン(改定)案」令和6年 9
  • システムの操作マニュアル整備、研修の実施、ヘルプデスクの設置など、教職員がシステムを円滑に活用できるようサポート体制を強化します。
    • 客観的根拠: 新宿区教育委員会は、ICT機器導入時に集合研修を行い、ICT支援員を定期巡回させることで、教員のスキルに応じた支援を行い、ICT活用を促進しています。
      • (出典)Chieru「東京都新宿区教育委員会、ICT環境整備の現状と課題」 30
主な取組②:保護者・地域との連絡手段のデジタル化
  • 学校から保護者への連絡(お便り、緊急連絡、アンケート等)や、保護者から学校への連絡(欠席連絡、面談希望等)をデジタル化し、紙媒体でのやり取りを削減します。
    • 客観的根拠: 熊本県では、Webアンケートフォームを活用した健康観察(年間約18時間削減)、欠席連絡(年間約33時間削減)、保護者面談日程調整(年間約2時間削減)などの事例が報告されています。
      • (出典)熊本県教育委員会「ICT活用による働き方改革事例集」2023年3月 31
  • デジタル連絡ツールの導入にあたっては、保護者のITリテラシーや通信環境の格差に配慮し、紙媒体での情報提供も併用するなど、柔軟な対応を行います。
主な取組③:授業準備・学習評価の効率化
  • デジタル教材の導入を促進し、教員が教材作成に要する時間を削減します。また、クラウドサービスを活用した教材共有プラットフォームを構築し、教員間の連携による効率的な授業準備を支援します。
    • 客観的根拠: 福岡県久留米市立篠山小学校では、Google Workspace for Educationを活用し、教材共有やスケジュール管理をデジタル化することで、教職員間の情報共有の課題を解決しています。
      • (出典)文部科学省「全国学校における働き方改革事例集 令和5年3月改訂版 Part1」令和5年3月 27
  • AIを活用した自動採点システムや学習履歴管理システムを導入し、テスト採点や成績処理の負担を軽減します。
    • 客観的根拠: 相模原市では、アンケート集計システムやテスト採点集計機能を全校に導入し、採点時間を約3分の2に削減した事例があります。
      • (出典)自治体通信Online「教員の働き方が変わり、指導の質が変わる「次世代教育」のつくり方」2020年12月2日 32
主な取組④:ICT環境の整備とICT支援員の拡充
  • 学校内ネットワークのWi-Fi化、教職員用PCの更新、電子黒板やタブレット端末の整備など、ICT環境の継続的な整備を進めます。
    • 客観的根拠: 練馬区では、ICT環境の整備として学校内ネットワークのWi-Fi化や校務用パソコンの更新を進めています。
      • (出典)練馬区教育委員会「練馬区立学校(園)における教員の働き方改革推進プラン(改定)案」令和6年 9
  • ICT支援員の配置を拡充し、教職員がICT機器やシステムの操作、トラブル対応に困った際に、迅速かつ専門的なサポートを受けられる体制を構築します。
    • 客観的根拠: 2023年度末時点でのICT支援員の配置数は約4.5校に1人であり、適正配置水準(4校に1人)に達しておらず、約3割の自治体では配置されていない実態があります。
      • (出典)School Security.jp「文部科学省「ICT支援員の適正配置を」公開」2025年4月 33
主な取組⑤:教職員のICTリテラシー向上支援
  • 教職員のICTスキルレベルに応じた段階的な研修プログラムを開発・提供し、ICT活用の苦手意識を払拭し、積極的な活用を促します。
    • 客観的根拠: 岐阜市立岐阜中央中学校では、ICT担当者が積極的に好事例を共有することで、ICT活用に苦手意識を持っていた教員もTeamsやFormsの活用に挑戦するようになり、積極的に活用する教員が増えています。
      • (出典)教育家庭新聞「【教職員の働き方改革】改訂版 全国の学校における働き方改革事例集 具体事例を充実」2022年7月5日 34
  • ICT活用に関する好事例を収集・共有するプラットフォームを構築し、教職員が互いに学び合い、業務改善に繋がるアイデアを創出できる機会を提供します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 校務におけるデジタル化率
      • 具体例: 教員と保護者間の連絡、学校内の連絡、教員と児童生徒間の連絡におけるデジタル化率を2025年度の現状から2027年度までに80%以上にする。
      • データ取得方法: デジタル庁「校務DXの取組に関するダッシュボード」特別区内のデータ抽出
  • KSI(成功要因指標)
    • 教職員のICTツール活用頻度
      • 具体例: 週に3回以上校務でICTツール(校務支援システム、グループウェア、デジタル連絡ツール等)を使用する教職員の割合を2025年度までに80%にする。
      • データ取得方法: 教職員向けICT活用状況アンケート
    • ICT支援員の充足率
      • 具体例: ICT支援員の適正配置水準(4校に1人)に対する充足率を2025年度までに100%にする。
      • データ取得方法: 教育委員会によるICT支援員配置状況報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 教職員の事務作業時間削減率
      • 具体例: 教職員一人当たりの年間事務作業時間を2024年度比で15%削減する。
      • データ取得方法: 教員勤務実態調査(特別区独自調査)における事務作業時間の推移
    • 保護者からの学校への電話問い合わせ件数減少率
      • 具体例: 保護者からの学校への電話問い合わせ件数を2024年度比で20%削減する。
      • データ取得方法: 各学校の電話対応記録、自動応答システム導入校でのデータ集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 校務支援システム利用率
      • 具体例: 統合型校務支援システムの機能(成績処理、出欠管理、保健管理等)のうち、50%以上の機能を利用している教職員の割合を2025年度までに90%にする。
      • データ取得方法: 校務支援システム利用ログデータ
    • ICT活用研修の実施回数と参加者数
      • 具体例: 年間ICT活用研修の実施回数を20回以上、延べ参加者数を教職員総数の50%以上とする。
      • データ取得方法: 研修実施報告書、参加者名簿

支援策③:外部人材活用と地域連携の強化

目的
  • 教職員の専門性以外の業務を外部人材や地域社会と連携して担い、教職員がこどもと向き合う時間を最大限に確保します。また、学校を地域に開かれた存在とし、地域全体でこどもを育む体制を構築します。
  • 客観的根拠: 学校・教師が担う業務の3分類において、「学校以外が担うべき業務」や「教師でなくてもできる業務」を外部に委ねることが、教員の負担軽減に繋がるとされています。
    • (出典)文部科学省「3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための 各主体による「対応策の例」」2025年 7
主な取組①:部活動の地域移行の推進
  • 休日における中学校の部活動指導を段階的に地域へ移行します。地域のスポーツクラブや文化団体、指導者バンクを活用し、専門性を持った指導者による質の高い活動機会を保障します。
    • 客観的根拠: 文部科学省は令和5年度から令和7年度を「改革推進期間」と位置づけ、休日部活動の地域移行を推進しています。長崎県長与町では、週末の部活動を地域スポーツ活動へ移行した結果、顧問教員の月間時間外勤務が大幅に減少しました。
      • (出典)文部科学省「3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための 各主体による「対応策の例」」2025年 7、江東区「休日部活動の地域移行の推進」 35
  • 地域移行に伴う指導者不足を解消するため、指導者育成研修会を開催し、地域指導者の質と量の確保を図ります。
    • 客観的根拠: 岐阜県では、地域の指導者不足に対し、岐阜県スポーツ協会と連携して教育とスポーツを学べる講座を開設し、地域移行に先駆けて人材育成を進めています。
      • (出典)メガホン「中学校部活動の地域移行、事例をもとに具体的な検討ポイントを解説」2022年9月20日 36
主な取組②:学校徴収金の公会計化
  • 給食費や教材費など、学校が徴収・管理している費用について、公会計化を推進します。これにより、教職員が担っていた集金・会計報告業務を教育委員会や区の会計部門が担い、教職員の事務負担と心理的負担を軽減します。
    • 客観的根拠: 文部科学省は、学校給食費等の公会計化を教員の負担軽減策として推進しており、鳥取市では公会計化により教員の集金・管理業務の負担が軽減された事例があります。
      • (出典)文部科学省「3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための 各主体による「対応策の例」」2025年 7
  • 公会計化の導入にあたっては、保護者の利便性向上も考慮し、口座振替やコンビニエンスストアでの支払いなど、多様な納付方法を検討します。
主な取組③:多様な外部人材の登用と活用
  • 教員免許の有無に関わらず、社会人経験者や地域住民、大学生など、多様な専門性を持つ外部人材を学校に積極的に登用・配置します。
    • 客観的根拠: 東京都教育委員会は、客室乗務員による外国語活動の授業や、スポーツの全国大会で活躍した人材による体育の授業など、外部人材の活用事例を推進しています。
      • (出典)東京都教育委員会「多様な人材の活用事例」 37
  • 外部人材の活用範囲を、授業補助、学年・学級経営補助(連絡文書作成補助、提出物集約など)、こどもからの相談対応、登下校時の見守り、教材準備補助など、多岐にわたる業務に拡大します。
    • 客観的根拠: 区市町村が副担任相当の業務を行う外部人材を任用・配置する活用事例として、学年・学級経営の補助や学習・生活指導の補助が挙げられています。
      • (出典)東京都教育委員会「多様な人材の活用事例」 37
主な取組④:地域と連携した学校運営の推進
  • コミュニティ・スクールや地域学校協働活動の導入を推進し、学校運営に地域住民が参画する仕組みを強化します。
    • 客観的根拠: 東京都三鷹市三鷹中央学園では、コミュニティ・スクールを中心とした地域と協働した学校運営により、学校の役割が明確になり、地域からの支援を働きかけられるようになりました。
      • (出典)文部科学省「3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための 各主体による「対応策の例」」2025年 7
  • 地域の教育資源(人材、施設、文化財等)を学校教育活動に積極的に取り入れ、こどもが地域と関わる機会を増やします。
    • 客観的根拠: 岡山県では、継続的な地域連携の取り組みによって、「学習活動への関心・意欲・態度が高まった」「地域住民等との人間関係が構築しやすくなった」と答えた教職員の割合が増加しています。
      • (出典)岡山県「地域連携に関する教職員アンケート調査結果」 8
主な取組⑤:保護者からの過度な要求への対応支援
  • 保護者からの過度な要求やクレームに対し、学校単独での対応が困難な場合に、教育委員会が弁護士や専門家を派遣する「スクールロイヤー制度」の導入・拡充を推進します。
    • 客観的根拠: 東京都教育委員会は、2025年度の新たな取り組みとして、弁護士による伴走型支援「スクールリーガルサポート」を新設する予定です。
      • (出典)リシード「東京都「働き方改革」小中150校の業務を外部委託…25年度」2025年2月5日 14
  • 保護者向けに、学校への適切な要望の伝え方や相談窓口に関する情報提供を強化し、学校と保護者の建設的な関係構築を促します。
    • 客観的根拠: 保護者や地域からのハラスメント対策として、「弁護士対応」を求める声が多く、東京都教育委員会は全教職員に調査を実施しています。
      • (出典)日本教育新聞電子版「保護者や地域からのハラスメント対策に「弁護士対応」求める声多く 都教委調査」2025年6月19日 24
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 学校運営における地域連携・外部人材活用度
      • 具体例: コミュニティ・スクール導入率を2025年度の現状から2027年度までに80%以上にする。
      • データ取得方法: 教育委員会による導入状況調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 部活動の地域移行率
      • 具体例: 休日部活動の地域移行率を2025年度の現状から2027年度までに80%以上にする。
      • データ取得方法: 各学校からの部活動実施状況報告、地域クラブ活動参加者数
    • 学校徴収金の公会計化率
      • 具体例: 給食費以外の学校徴収金の公会計化率を2025年度の現状から2027年度までに100%にする。
      • データ取得方法: 区内学校会計システムデータ、教育委員会による公会計化状況調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 教職員の地域連携業務負担感の軽減率
      • 具体例: 地域連携業務に対する教職員の負担感を「非常に感じる」「やや感じる」と回答する割合を、2023年度のアンケート結果から毎年5%削減する。
      • データ取得方法: 教職員向け業務負担感アンケート
    • 保護者からの過度な要求に対する教職員のストレス軽減率
      • 具体例: 保護者からの過度な要求に対するストレスを「非常に感じる」「やや感じる」と回答する教職員の割合を、2023年度のストレスチェック結果から毎年5%削減する。
      • データ取得方法: 教職員ストレスチェック結果
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 外部人材の年間延べ活用時間
      • 具体例: 学校における外部人材(部活動指導員、スクール・サポート・スタッフ等)の年間延べ活用時間を2024年度比で20%増加させる。
      • データ取得方法: 各学校からの外部人材活用報告
    • スクールロイヤー制度の利用件数
      • 具体例: スクールロイヤー制度の年間利用件数を2025年度から年間10件以上とする。
      • データ取得方法: 教育委員会によるスクールロイヤー制度利用記録

先進事例

東京都特別区の先進事例

  • 練馬区「練馬区立学校(園)における教員の働き方改革推進プラン」
    • 練馬区教育委員会は、教員の長時間勤務がこどもの学びを支える教員の心身の健康に影響を及ぼし、教育活動の質に関わる重大な問題であると認識し、2019年に「練馬区立学校(園)における教員の働き方改革推進プラン」を策定しました。このプランは、教員の月当たり時間外在校時間を45時間以内、年間を360時間以内とする目標を掲げています。これまでの取り組みとして、副校長補佐(令和2年度3名→令和5年度98名)、スクール・サポート・スタッフ(令和2年度32名→令和5年度123名)、学校生活支援員(令和2年度155名→令和5年度247名)といった支援人材の配置を大幅に拡充しました。また、出退勤管理システムを導入した令和3年9月以降、小中学校ともに時間外在校時間が短くなる傾向が認められています。さらに、学校休務日を令和元年度の3日から令和2年度には5日へと増加させ、教員用タブレットの配備やスクールロイヤーの導入も進めています。
    • 客観的根拠: 練馬区教育委員会「練馬区立学校(園)における教員の働き方改革推進プラン(改定)案」令和6年 9
  • 葛飾区「葛飾区立学校における働き方改革推進プラン」
    • 葛飾区教育委員会は、教員の長時間勤務を是正し、学校教育の質の維持・向上を図るため、2019年1月に「葛飾区立学校における働き方改革推進プラン」を策定しました。このプランでは、月45時間を超える時間外勤務の教員をほぼゼロにすること、年次有給休暇取得日数が10日未満の教員をほぼゼロにすることを目標としています。具体的な取り組みとして、夏季休業期間中の学校閉庁日を設定し、年次有給休暇の計画的な取得を促進しています。また、週に1日程度の定時退庁日を学校全体で設定する取り組みを進めています。さらに、学校徴収金の徴収・管理業務の改善や、職種別の標準的な役割分担表の策定により、教員が本来の業務に専念できる環境を整備しています。
    • 客観的根拠: 葛飾区教育委員会「葛飾区立学校における働き方改革推進プラン」2019年1月25日 25
  • 新宿区「学校における働き方改革を推進しています」
    • 新宿区教育委員会は、教員が健康でやりがいを持ち、質の高い教育活動を継続できるよう、働き方改革を推進しています。令和7年4月からは、1週間当たりの勤務時間が50時間(1か月の時間外在校等時間の上限45時間に相当)を超える教員を原則ゼロにすることを目指しています。主な取り組みとして、各学校・幼稚園で月1日以上の定時退庁日を設定し、夏季休業期間中には休暇取得促進期間を設けています。また、タイムレコーダーの導入や留守番電話の導入、学校経営推進員やスクール・サポート・スタッフなどの支援人材の配置も行っています。教育委員会事務局と教職員で構成するプロジェクトチームを設置し、継続的に取り組みの改善を図るとともに、長時間勤務の教員に対しては個別の働きかけを行い、こどもと向き合う時間や授業づくりの充実を進めています。
    • 客観的根拠: 新宿区「学校における働き方改革を推進しています」2025年7月3日 38

全国自治体の先進事例

  • 茨城県つくば市「部活動の地域移行」
    • 茨城県つくば市では、生徒数の減少により部活動のチーム編成が困難になったことを受け、2018年に公立中学校で部活動の地域移行に成功しました。具体的には、学校と民間団体が連携して「茎崎地域文化スポーツクラブ」を設立し、活動費をクラウドファンディングで募ることで、受益者負担型の任意団体へと移行しました。これにより、教員の部活動指導負担が軽減されるとともに、生徒は地域の専門指導者から質の高い指導を受ける機会を得ることができました。この成功事例は、地域連携と資金調達の新たなモデルを示しています。
    • 客観的根拠: メガホン「中学校部活動の地域移行、事例をもとに具体的な検討ポイントを解説」2022年9月20日 36
  • 熊本県「ICT活用による働き方改革事例集」
    • 熊本県教育委員会は、2023年3月に「ICT活用による働き方改革事例集」を公開し、ICTを活用した教職員の業務効率化を推進しています。この事例集では、教職員間の情報共有や会議、学習指導・評価、児童生徒・保護者対応の各分野でICTツールを活用した具体的な取り組みが紹介されています。例えば、Webアンケートフォームを活用した健康観察(年間約18時間削減)、欠席連絡(年間約33時間削減)、保護者面談日程調整(年間約2時間削減)など、具体的な時間削減効果が示されています。また、グループウェアを活用した職員動静や月行事の確認により、年間約43時間の削減効果も報告されており、ICT導入が教職員の事務負担軽減に大きく貢献することを示しています。
    • 客観的根拠: 熊本県教育委員会「ICT活用による働き方改革事例集」2023年3月 31

参考資料[エビデンス検索用]

  • 文部科学省「教員勤務実態調査(令和4年度)の集計(速報値)について」令和5年4月28日 1
  • 文部科学省「令和5年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」令和7年2月28日 2
  • 文部科学省「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン 策定趣旨」令和5年12月 11
  • 文部科学省「学校における働き方改革に関するこれまでの経緯 詳細」2023年11月 10
  • 文部科学省「学校における働き方改革」 4
  • 文部科学省「全国の学校における働き方改革事例集(令和5年3月改訂版)」令和5年3月 4
  • 文部科学省「3分類に基づく14の取組の実効性を確保するための 各主体による「対応策の例」」2025年 7
  • 公立学校共済組合「ストレスチェックデータ分析結果報告書」2024年6月27日 5
  • 東京都教育庁「令和6年度条件付採用教員の任用について」2025年4月24日 6
  • TOKYO MX+「東京都教育委員会 教員の働き方改革に向け計画を発表」2024年3月8日 12
  • 勤怠打刻ファースト「【学校の働き方改革】文部科学省概算要求から読み解く、2024年度「教員の働き方改革」加速化プラン」2024年2月7日 13
  • リシード「東京都「働き方改革」小中150校の業務を外部委託…25年度」2025年2月5日 14
  • Education Career「教員不足の現状と課題 – 原因・影響・取り組みを解説」2025年4月25日 17
  • ベネッセ教育情報サイト「保護者対応が先生を忙しくさせる? 教員の7割が負担感」2015年9月7日 18
  • パーソル総合研究所「教員の仕事負担の状況 最も負担に感じる業務は「クレーム対応」」 19
  • 本目さよ「台東区 教育改革の最前線!台東区の教員働き方改革で子どもたちの未来が変わる」2025年7月9日 20
  • 東京都教職員研修センター「教員不足 メンタルヘルス不調 教育行政 指」 28
  • デジタル庁「校務DXの取組に関するダッシュボード」2025年6月13日 29
  • Chieru「東京都新宿区教育委員会、ICT環境整備の現状と課題」 30
  • 熊本県教育委員会「ICT活用による働き方改革事例集」2023年3月 31
  • 自治体通信Online「教員の働き方が変わり、指導の質が変わる「次世代教育」のつくり方」2020年12月2日 32
  • School Security.jp「文部科学省「ICT支援員の適正配置を」公開」2025年4月 33
  • 教育家庭新聞「【教職員の働き方改革】改訂版 全国の学校における働き方改革事例集 具体事例を充実」2022年7月5日 34
  • 東京都教育委員会「多様な人材の活用事例」 37
  • 岡山県「地域連携に関する教職員アンケート調査結果」 8
  • NIJIN「部活動の地域移行のメリット・デメリット」2024年7月25日 22
  • メガホン「中学校部活動の地域移行、事例をもとに具体的な検討ポイントを解説」2022年9月20日 36
  • 江東区「休日部活動の地域移行の推進」 35
  • 葛飾区教育委員会「葛飾区立学校における働き方改革推進プラン」2019年1月25日 25
  • 練馬区教育委員会「練馬区立学校(園)における教員の働き方改革推進プラン(改定)案」令和6年 9
  • 新宿区「学校における働き方改革を推進しています」2025年7月3日 38
  • 日本教育新聞電子版「都内公立小、教員20人不足」2024年4月22日 24
  • 日本教育新聞電子版「保護者や地域からのハラスメント対策に「弁護士対応」求める声多く 都教委調査」2025年6月19日 24
  • すらら「教員の働き方改革はなぜ進まない?|改革推進に向けてできること」2023年4月18日 15
  • Education Career「教員不足の現状と課題 – 原因・影響・取り組みを解説」2025年4月25日 (https://education-career.jp/magazine/data-report/2025/teacher-shortage/)

まとめ

 東京都特別区における教職員の長時間勤務是正と業務量適正化は、こどもの教育の質向上、教職員の心身の健康維持、そして持続可能な教育システムの構築に不可欠な取り組みです。現状データが示すように、教職員の長時間勤務は依然として深刻であり、精神疾患による休職者の増加や若手教員の離職といった負の連鎖を招いています。これらの課題に対し、行政は業務の明確化と支援人材の拡充、ICT活用による校務効率化、そして外部人材の登用と地域連携の強化という三つの柱で多角的に支援策を推進する必要があります。これにより、教職員がこどもと向き合う時間を最大限に確保し、教育活動の質を高める好循環を生み出すことが期待されます。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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