11 防災

広域医療搬送体制

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(災害時の広域医療搬送体制を取り巻く環境)

  • 自治体が災害時の広域医療搬送体制を整備・強化する意義は、「被災地内では救命できない重症傷病者の救命率を最大化すること」と、「被災地の医療機関への過度な負担を軽減し、地域医療機能の維持を図ること」にあります。
  • 災害時の広域医療搬送体制とは、首都直下地震のような大規模災害によって地域の医療機能が壊滅的な打撃を受けた際、被災地内での治療が困難な重症傷病者を、国が主導し、自衛隊、DMAT(災害派遣医療チーム)等の関係機関が連携して、被災地外の医療機能が維持されている病院へ迅速に搬送し、高度な医療を提供するための体系的な仕組みです 。
  • この体制は、以下の流れで実施されることが想定されています。
    • 1. DMATの派遣・集結: 発災後、被災地外のDMATが航空機等を用いて、被災地内に設置された広域搬送拠点(空港、自衛隊基地等)へ参集します 。
    • 2. SCUの設置・運営: 広域搬送拠点に到着したDMATは、患者を一時的に受け入れ、安定化治療を行うための臨時医療施設(SCU: Staging Care Unit)を設置・運営します 。
    • 3. 域内搬送と再トリアージ: 被災地の災害拠点病院等からヘリコプター等でSCUへ患者を搬送(域内搬送)し、SCUで広域搬送の優先順位を決定するための再トリアージ(傷病者の重症度・緊急度選別)を行います 。
    • 4. 広域医療搬送: トリアージの結果に基づき、自衛隊の大型輸送機等を用いて、SCUから被災地外の受け入れ拠点へ患者を空路で搬送します 。
    • 5. 最終搬送と治療: 被災地外の拠点から救急車等で受け入れ先の病院へ搬送し、本格的な治療を開始します 。

意義

住民にとっての意義

救命率の向上
  • 被災によって機能不全に陥った地域では提供不可能となる手術や集中治療といった高度な医療を受ける機会を確保し、重症傷病者の救命率を直接的に向上させます 。

地域社会にとっての意義

首都機能・社会経済活動の維持
  • 医療システムの完全な崩壊を防ぎ、社会秩序の維持を図ることは、首都東京が担う政府機能や経済活動を早期に回復させるための絶対的な前提条件となります。

行政にとっての意義

医療資源の最適配分
  • 混乱した被災地へ無理に医療資源を投入するのではなく、患者を機能している医療機関へ移動させることで、被災地内外の限られた医療資源(人材、物資、病床)を最も効率的かつ効果的に配分することが可能になります 。

(参考)歴史・経過

  • 日本の災害医療体制、特に広域医療搬送は、過去の大規模災害で露呈した課題への反省から、段階的に構築されてきた歴史を持ちます。
1995年:阪神・淡路大震災
  • 日本の災害医療の原点であり、多くの「防ぎ得た災害死」が発生しました。組織的な医療チームの不在、医療機関自体の被災と機能停止、情報システムの麻痺、そして航空機による患者搬送がわずか1件に留まるなど、体系的な搬送体制の欠如が深刻な課題として浮き彫りになりました 。これが、災害拠点病院やDMAT創設の直接的な契機となりました。
1996年~2004年:体制整備の黎明期
  • 阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、全国に災害拠点病院の整備が開始されました 。また、病院間の情報共有を目的とした広域災害救急医療情報システム(EMIS)が開発されました 。2004年には、国の制度に先駆けて東京都が「東京DMAT」を設置しました 。
2005年:日本DMATの発足
  • 厚生労働省により、全国レベルでの災害派遣医療チーム「日本DMAT」が正式に発足しました 。
2011年:東日本大震災
  • DMATが初めて大規模に展開され、計画に基づいた広域医療搬送が初めて実施されました 。一方で、道路の寸断や燃料不足といったロジスティクスの問題、通信手段の途絶、多数の医療チーム間の連携調整の困難さ、急性期以降の医療ニーズ(慢性疾患管理等)への対応といった新たな課題が顕在化し、日本医師会災害医療チーム(JMAT)創設のきっかけとなりました 。
2016年:熊本地震
  • 急性期を担うDMATから、亜急性期・慢性期を担うJMATへの円滑な活動の引継ぎモデルが実践されました。また、被災地内の二次医療圏単位で指揮調整本部を設置し、より現場に近いレベルで医療チームの活動を調整する体制の有効性が示され、その後の災害医療体制に大きな影響を与えました 。
2024年:能登半島地震
  • 道路網の壊滅的な寸断による被災地の孤立が、搬送を前提とした医療支援モデルの限界を露呈させました。これにより、外部からの支援が到達するまでの間、被災地域が自律的に医療を継続するための体制(籠城支援)の重要性が改めて浮き彫りになりました 。

災害時の広域医療搬送体制に関する現状データ

DMATの整備状況
  • 全国的には、2024年(令和6年)4月1日時点で、DMATチームは1,814隊、養成研修を修了した隊員数は17,674名に達しています 。
  • 東京都内には、2022年(令和4年)4月時点で84のDMAT指定医療機関が存在し、全国でも有数の体制が整備されています 。
  • しかし、この体制は地方で発生する局地的な災害を想定した規模であり、首都直下地震のような未曾有の事態に対応するには、量的に絶対数が不足しているという根本的な問題を抱えています。
災害拠点病院の整備状況
  • 病院建物の耐震化は進んでおり、2023年(令和5年)時点で、全国の災害拠点病院及び救命救急センターの耐震化率は96.0%と高い水準にあります 。
  • 東京都では、重症者を受け入れる「災害拠点病院」、中等症者を受け入れる「災害拠点連携病院」など、病院の役割分担が明確化されています 。例えば、大田区を含む区南部医療圏では、東邦大学医療センター大森病院が医療対策の拠点として指定されています 。
  • ただし、能登半島地震の教訓からも明らかなように、建物が無事でもライフライン(特に電力、水)の長期停止により医療機能が失われるリスクは依然として高く、非常用電源の燃料や水の備蓄(3日分以上)の確実な確保が不可欠です 1
首都直下地震の被害想定(医療関連)
  • 東京都が2022年(令和4年)に公表した最新の被害想定では、医療需要が供給を圧倒的に上回る壊滅的な状況が予測されています。最も被害が大きい「都心南部直下地震(冬・夕方)」のケースでは、以下のような被害が想定されています 。
    • 死者数: 約6,100人
    • 負傷者数: 約93,000人
    • うち重症者数: 約24,000人
    • 建物倒壊等による要救助者: 約72,000人
    • 病院機能の喪失等による転院患者: 約13,000人 2
  • こうした状況下では、医師・看護師、医薬品等の医療資源が絶対的に不足し、道路の寸断や交通渋滞による搬送の遅れが「防ぎ得た災害死」を急増させると警告されています 3

課題

住民の課題

生存機会の喪失

地域社会の課題

医療機能不全による社会機能の麻痺
  • 医療体制の崩壊は、単に負傷者の救命が困難になるだけでなく、救助隊員や都民の士気を著しく低下させ、ライフラインの復旧や経済活動の再開を遅らせるなど、社会全体の回復力に深刻な影響を及ぼします。安定した医療機能は、首都機能維持の根幹をなす要素です。

行政の課題

  • 現在の広域医療搬送計画は、DMAT、SCU、自衛隊機などを活用する高度なものですが、その各要素は「通信が機能する」「道路・空港が使える」「訓練された人員が十分にいる」といった脆弱な前提の上に成り立っています。首都直下地震ではこれらの前提がすべて崩壊するため、計画は理論上は強力でも、現実には極めて脆い「ガラスの砲」と言えます。行政の最大の課題は、この脆いシステムを、機能が低下しても破綻しない、強靭(レジリエント)なシステムへと根本的に再構築することにあります。
指揮命令系統の脆弱性
情報通信・共有体制の課題
  • 病院の被災状況や受け入れ可否情報を共有するための広域災害救急医療情報システム(EMIS)は、操作が煩雑で、災害時に迅速かつ正確な入力が困難であることが指摘されています 6
  • 東日本大震災では、DMATが活動する沿岸部で携帯電話やインターネットが全く機能せず、情報が遮断され孤立する事態が発生しました。全てのDMATが衛星電話等の代替通信手段を保有しているわけではなく、情報共有体制には大きな穴があります 。
搬送オペレーションの困難性
SCU運営の複雑性と訓練不足
ロジスティクス(兵站)の破綻リスク
  • DMATは72時間の自己完結活動を原則としますが、東日本大震災のような広域・長期災害では、活動する医療チーム自身の食料、水、燃料が枯渇する事態が発生しました 。
  • 被災地では医薬品や医療資器材も短時間で枯渇し、補給路も寸断されるため、医療活動の継続が困難になります 8
人材(専門人材・コーディネーター)の不足と疲弊
  • 災害医療全体を俯瞰し、指揮調整を行う災害医療コーディネーターは絶対数が不足しており、派遣された場合も交代要員やサポートスタッフの不足から、極度の疲弊に陥ることが指摘されています 。
  • 前述の通り、現場で活動するDMAT隊員の数も、首都直下地震で想定される膨大な傷病者数に対しては全く足りていません 。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
    • 即効性・波及効果: 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
    • 実現可能性: 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
    • 費用対効果: 投入する経営資源(予算・人員等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。
    • 公平性・持続可能性: 特定の層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
    • 客観的根拠の有無: 政府資料や過去の災害対応の教訓等のエビデンスに基づく効果が示されている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 現行システムの脆弱性を克服し、首都直下地震に実効的に対応するためには、「指揮命令」「インフラ」「人材」の3つの側面から、相互に関連する施策を統合的に推進する必要があります。
  • 最優先で取り組むべきは**「支援策①:首都直下災害に特化した実戦的指揮命令・連携体制の構築」**です。効果的な指揮命令と情報伝達なくして、インフラや人材への投資は活かされず、全ての活動が混乱に陥るため、これを改革の基盤と位置付けます。
  • 次に、物理的な活動基盤を強靭化する**「支援策②:多重化・自己完結型ロジスティクス・情報通信基盤の整備」と、体制を動かす担い手を確保・育成する「支援策③:災害医療オペレーターの高度化と量的拡充」**を並行して進めることが不可欠です。

各支援策の詳細

支援策①:首都直下災害に特化した実戦的指揮命令・連携体制の構築

目的
主な取組①:東京都・特別区合同の災害医療統括本部(仮称)の設置と権限の明確化
  • 平時から東京都と特別区が共同で運営する常設の「災害医療統括本部」を設置します。
  • 災害対策基本法及び東京都地域防災計画に基づき、この統括本部が、被災地で活動する全ての医療資源(DMAT、JMAT、自衛隊医療部隊、地域医師会等)に対して、指揮・調整を行う強力な権限を持つことを条例等で明確に定めます。
主な取組②:医療コーディネーター機能の多層化と専門化
  • 東京都、二次保健医療圏、区市町村という既存の3層のコーディネーター体制を強化します 。
  • 総合調整を行う「統括コーディネーター」の下に、「ロジスティクス担当」「患者搬送担当」「情報管理担当」といった専門コーディネーターを配置し、業務の集中と過負荷を防ぎます 。
  • コーディネーターの交代要員やサポートスタッフを確保するバックアップ体制を構築し、持続的な本部機能を維持します。
    • 客観的根拠:
      • (https://www.bousai.go.jp/oukyu/higashinihon/2/pdf/kourou.pdf)
主な取組③:DMAT・自衛隊・消防・警察による統合実動訓練の定期的実施
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標):
    • 首都直下地震発生後72時間以内の重症患者の域外搬送完了率 80%
    • データ取得方法: 災害時の活動記録、EMISデータ、訓練評価レポートを基に算出
  • KSI(成功要因指標):
    • 統合実動訓練における指揮命令系統の機能評価スコア 90点以上(第三者評価機関による評価)
    • データ取得方法: 訓練後の第三者評価レポート
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標:
    • 訓練における機関間の情報伝達の成功率 95%
    • データ取得方法: 訓練時の通信ログ及び情報授受記録の分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標:
    • DMAT・自衛隊・消防・警察等による統合実動訓練の実施回数 年1回以上
    • データ取得方法: 訓練実施計画及び実施報告書

支援策②:多重化・自己完結型ロジスティクス・情報通信基盤の整備

目的
主な取組①:独立した災害医療用通信ネットワークの構築
  • 全ての災害拠点病院、特別区の災害対策本部、指定SCU候補地に、公共インフラに依存しない衛星通信システムや複数帯域対応の業務用無線機を配備します。
  • 東京都が管轄する全てのDMATチームに、これらの標準化された通信機器を配備し、習熟訓練を義務付けます 。
主な取組②:広域防災拠点への医療用備蓄の分散配置
主な取組③:多様な搬送手段の確保と輸送ルートの多重化計画
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標):
    • 災害発生後72時間以内の災害拠点病院の機能維持率 90%
    • データ取得方法: EMIS及び各病院の事業継続計画(BCP)に基づく状況報告
  • KSI(成功要因指標):
    • 全災害拠点病院における独立通信手段(衛星通信等)の確保率 100%
    • データ取得方法: 東京都による設備査察報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標:
    • 訓練における代替搬送ルート(水路等)を用いた患者搬送の成功率 90%
    • データ取得方法: 訓練評価レポート
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標:
    • 医療用備蓄拠点の整備数 都内に10カ所以上
    • データ取得方法: 整備計画及び完了報告書

支援策③:災害医療オペレーターの高度化と量的拡充

目的
  • 現場で活動するDMAT隊員から、全体の指揮を執るコーディネーターまで、極度の混乱とストレス下で複雑な医療オペレーションを遂行できる、質の高い人材を量的に確保・育成します。
    • 客観的根拠:
      • (https://www.bousai.go.jp/oukyu/higashinihon/2/pdf/kourou.pdf)
主な取組①:SCU運営に特化した実践的訓練プログラムの開発・実施
  • DMAT隊員だけでなく、SCU運営に関わる可能性のある全ての医療従事者(災害拠点病院職員、地域医師会会員等)を対象とした、標準化されたSCU運営訓練を開発し、受講を義務付けます。
  • 訓練では、VR(仮想現実)技術や実物大のシミュレーション施設を活用し、多数の傷病者が殺到する中でのトリアージ、患者情報管理、ロジスティクス調整といった、より実践的なスキルを習得させます 。
主な取組②:地域医療関係者を対象とした災害医療初動研修の義務化
  • 特別区内の全ての医師、看護師、薬剤師等を対象に、災害医療の基礎(トリアージ、応急処置、地域の医療救護計画等)に関する初動対応研修の受講を義務付けます。
  • 練馬区の四師会連携のような先進事例を参考に、地域の医療専門職が発災直後に医療救護所等で初期対応にあたることで、災害拠点病院への患者集中を防ぎ、医療体制全体の負担を軽減します 。
主な取組③:災害医療コーディネーターの認定制度とキャリアパスの確立
  • 「区市町村レベル」「二次医療圏レベル」「ロジスティクス専門」など、役割や専門性に応じた災害医療コーディネーターの公的な認定制度を創設します。
  • この認定を、病院や行政におけるキャリアパス上の評価に結びつけることで、優秀な人材が継続的に災害医療分野で活躍できる環境を整備し、質の高いコーディネーターを安定的に確保します 。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標):
    • 首都直下地震における「防ぎ得た災害死」の割合を、現行の被害想定から50%削減
    • データ取得方法: 発災後の死因究明調査、疫学調査に基づく推計
  • KSI(成功要因指標):
    • 東京都認定の災害医療コーディネーター数 200名以上
    • データ取得方法: 東京都が管理する認定者名簿
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標:
    • SCU運営訓練参加者の習熟度評価スコア 平均80点以上
    • データ取得方法: 訓練後のスキル評価テスト結果
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標:
    • 地域医療関係者向け災害医療初動研修の年間受講者数 5,000人以上
    • データ取得方法: 研修実施機関が管理する受講者記録

先進事例

東京都特別区の先進事例

練馬区「四師会連携とアクションカードによる初動体制」

  • 練馬区は、医師会、歯科医師会、薬剤師会、柔道整復師会の「四師会」と緊密に連携し、災害時の役割分担を定めた極めて詳細な活動マニュアルを整備しています 。
  • 特筆すべきは、震度6弱以上の地震発生時に、各会の要員が命令を待たずに指定の医療救護所へ自動的に参集する「自動参集ルール」です。さらに、救護所の設営から運営までの手順を具体的に記した「アクションカード」を準備することで、混乱の中でも迅速かつ標準化された初動対応を可能にしています。これは、発災直後の最も重要な時間帯に、地域の医療能力を最大化する優れたモデルです 。

葛飾区「ブロック体制による地域完結型医療」

  • 葛飾区は、区内を4つのブロックに分け、それぞれに中心となる災害拠点病院を配置する「面的整備」を進めています。
  • この体制は、中央集権的な指揮に過度に依存するのではなく、各ブロックが地域内で連携し、ある程度の自己完結的な医療対応を行うことを目指すものです。これにより、通信途絶時や一部地域の孤立時にも、医療機能が維持されやすくなるなど、システム全体の強靭性向上に寄与します。

大田区「フェーズに応じた住民・医療機関の役割明確化」

  • 大田区のガイドラインは、発災からの時間経過(フェーズ)に応じて、住民、診療所、病院など、各主体が取るべき行動を具体的に示している点が特徴です。
  • 特に、トリアージ、治療、搬送の「3T」の概念を徹底し、軽症者は地域の医療救護所で対応することで、重症者治療の拠点となる災害拠点病院の機能を守るという原則を明確に打ち出しています。これは、患者の殺到による病院機能の麻痺を防ぐ上で極めて重要です。

全国自治体の先進事例

熊本地震における「DMAT-JMATの円滑な連携と引継ぎ」

  • 2016年の熊本地震では、災害急性期(発災~72時間)を担うDMATから、亜急性期以降(~数週間)の医療を担うJMATへの活動の引継ぎが、大きな課題となりました。
  • この教訓から、DMATのロジスティクス担当チームが現地に残り、後から到着するJMATに対して、患者情報、避難所の状況、必要な支援内容などを直接引き継ぐ体制がとられました。これにより、東日本大震災で懸念された「医療の空白期間」を生じさせることなく、継続的な医療支援を実現した点は、全国的に共有すべき重要な成功事例です。

熊本地震における「二次医療圏単位の指揮系統確立」

  • 熊本地震では、発災当初の混乱に対し、DMATロジチーム等の支援を受けながら、上益城(かみましき)地域など二次医療圏単位で現地の医療調整本部が設置されました。
  • この地域本部は、そのエリア内の医療ニーズを把握し、投入されるDMAT、JMAT、日赤救護班などの各チームの活動場所を割り振るなど、現場に近い場所での司令塔機能を果たしました。広域な被災地において、中央からのトップダウンの指示だけでは対応しきれない状況下で、こうした分散型の指揮系統が有効に機能したことは、首都直下地震を考える上でも大きな示唆を与えます。

参考資料[エビデンス検索用]

国(内閣府・総務省・厚生労働省等)
東京都・特別区

まとめ

 首都直下地震という未曾有の国難において、一人でも多くの命を救うためには、実効性のある広域医療搬送体制の構築が不可欠です。しかし、現状の体制は過去の地方型災害の教訓を基に構築されており、首都の壊滅的な被害想定に対しては脆弱性が否めません。指揮命令の統一、情報通信・ロジスティクスの多重化、そして何よりも現場を担う人材の育成という三位一体の改革を強力に推進することが急務です。本提言が、想定を上回る事態にも対応しうる、真に強靭な災害医療体制の実現に向けた政策立案の一助となることを期待します。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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