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目次
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
概要（庁内法務相談を取り巻く環境）
- 自治体が庁内法務相談を強化する意義は「適法かつ公正な行政運営の確保による住民の権利利益の保護」と「政策法務の推進による地域課題解決能力の向上」にあります。
- 近年の地方自治体、特に東京都特別区では、住民ニーズの多様化・複雑化、コンプライアンス意識の高まり、そして地方分権の進展に伴い、行政運営における法務の役割が劇的に変化しています。
- 従来の法令遵守を主眼とした受動的な法務（守りの法務）から、地域の実情に即した政策を条例等の形で能動的に形成・実現していく「政策法務」（攻めの法務）への転換が不可欠となっています。この転換は、自己決定・自己責任の原則に基づく自治体経営の根幹をなすものです。
- 本稿では、この重要な行政機能である「庁内法務相談」の現状と課題をデータに基づき分析し、その機能を抜本的に強化するための具体的な支援策を提案します。
意義
住民にとっての意義
公正で信頼できる行政の実現
- 法令に基づいた適正な手続きが担保されることで、行政処分の公平性・透明性が向上し、住民の権利が守られます。
- 行政対象暴力や不当要求といったハラスメント行為に対し、組織として毅然と対応する体制が整うことで、職員が萎縮することなく、全ての住民に公平なサービスを提供できます。
質の高い行政サービスの享受
- 政策法務の推進により、地域の課題や住民ニーズに即した独自の条例や施策が立案・実行され、より質の高い、きめ細やかな行政サービスが提供されます。
- 法的な論点やリスクが事前に整理されることで、事業の遅延や中止が減り、安定したサービス提供が期待できます。
地域社会にとっての意義
地域課題の効果的・創造的な解決
- 空き家問題、防災、福祉など、法律だけでは解決が難しい複雑な地域課題に対し、条例という自治体独自のルールメイキングによって効果的にアプローチできます。
- 法的な裏付けのある政策は、多様な主体（NPO、企業、住民）の協力を得やすくし、地域全体での課題解決を促進します。
持続可能な地域社会の構築
- コンプライアンスが徹底されることで、自治体に対する社会全体の信頼が高まり、企業の誘致や定住人口の増加など、地域の持続的な発展につながります。
- (https://outside.no-limit.careers/whats-compliance/)
- 将来起こりうる法的紛争を未然に防ぐ「予防法務」の機能が強化され、長期的に安定した行政運営の基盤が築かれます。
行政にとっての意義
政策決定の質とスピードの向上
- 政策立案の初期段階から法務担当が関与することで、法的な実現可能性やリスクを早期に洗い出し、手戻りのない迅速な意思決定が可能になります。
- 法務職員が庁内に常駐することで、現場の職員が些細な疑問でも気軽に相談でき、日々の業務における法務リスクを低減できます。
職員の保護と能力向上
- 不当要求やクレーム対応において、法務部門が防波堤となることで、担当職員の精神的負担を軽減し、安全な職場環境を守ります。
- OJTや研修を通じて、一般の行政職員全体のリーガルマインド（法的思考力）が向上し、組織全体の法務能力が底上げされます。
（参考）歴史・経過
1980年代～1990年代：地方分権の胎動
- 国の行財政改革の一環として地方分権の議論が活発化し、国と地方の役割分担の見直しが進められました。
- 1995年に地方分権推進委員会が設置され、機関委任事務の廃止に向けた動きが本格化しました。
2000年：地方分権一括法の施行
- 機関委任事務が廃止され、自治体の条例制定権の範囲が大幅に拡大しました。
- これにより、自治体が自己決定・自己責任で地域独自の政策を法的な形で実現する「政策法務」の重要性が飛躍的に高まりました。
2000年代：政策法務体制の整備
- 先進的な自治体で「政策法務室」などの専門部署の設置が始まりました。
- 2004年（平成16年）時点では常勤の自治体内弁護士は全国でわずか2名でしたが、この頃から徐々に弁護士を職員として任用する動きが広がり始めました。
2010年代：法務需要の高度化と多様化
- 東日本大震災（2011年）では、復旧・復興業務において複雑な権利調整など、高度な法的知見が必要とされ、自治体内弁護士が活躍しました。
- いじめや保護者からの過剰な要求など、教育現場での法的トラブルが深刻化し、スクールロイヤーの配置が進みました。
- 弁護士人口の増加も背景に、自治体内弁護士の数は急増し、2018年（平成30年）には155名に達しました。
2020年代：内部統制とDXの時代
- 地方自治法改正（令和2年4月施行）により、都道府県と政令指定都市に内部統制体制の整備が義務付けられ、コンプライアンス確保の仕組み作りが本格化しました。
- デジタル化の進展に伴い、リーガルテック（AI契約書レビュー等）を行政に導入する動きが出始め、法務機能の効率化・高度化が新たなテーマとなっています。
- (https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=28550)、お名前.com「行政書士が答える！AI契約書レビューは非弁行為？」
庁内法務相談に関する現状データ
自治体内弁護士の配置状況
- 自治体で常勤職員として働く弁護士・法曹有資格者数は、平成16年（2004年）の2名から、平成30年（2018年）には107自治体で155名へと大幅に増加しています。このうち任期付職員が118名を占めており、専門人材として即戦力が求められている状況がうかがえます。
- しかし、全国の自治体総数（約1,700）に対する配置率は約6%にとどまり、特に中小規模の自治体では依然として配置が進んでいないのが現状です。
法務相談体制の整備状況
- 弁護士に相談できる体制は、都道府県・指定都市では100%整備されていますが、市区町村全体では約94%（令和3年度）となっています。
- 特に専門性が高い教育分野（スクールロイヤー）では、令和4年度時点で都道府県の83%、指定都市の80%が専任の相談体制を整備している一方、市町村等（中核市含む）では11.3%にとどまり、自治体の規模による格差が顕著です。
法務相談の主な内容
- 総務・法務部門に寄せられる相談は、職員向けの法律相談、訴訟対応、行政不服審査、条例・規則の制定改廃、債権管理、コンプライアンス、議会・住民対応など多岐にわたります。
- スクールロイヤーへの相談案件では、「保護者等からの過剰な苦情や不当な要求」（指定都市で93.8%）や「いじめに係る対応」（同93.8%）が突出して多く、対人トラブルへの法的支援の需要が非常に高いことが示されています。
債権管理における弁護士活用の実態
- 弁護士への債権回収委託は、回収率向上に効果がある一方で、「委託費用が高い」「福祉的な配慮から強制執行に踏み切れない」といった理由で活用が進まないケースも多く見られます。
- 職員の異動が多いため、弁護士から学んだノウハウが庁内に蓄積されにくいという構造的な課題も指摘されています。
内部統制・コンプライアンスの状況
- 地方自治法に基づき、東京都特別区では各区が内部統制評価報告書を毎年度作成・公表しています（足立区、文京区、墨田区、台東区など）。
- しかし、これらの報告書や包括外部監査では、依然として不備が指摘されています。例えば、令和5年度の文京区の報告書では、契約事務における確認不足を原因とする「重大な不備」が認められました。また、令和4年度の大田区の包括外部監査では、公益通報制度の周知不足や外部窓口の未設置などが指摘されています。これは、制度はあっても形骸化しているリスクを示唆します。
課題
- 庁内法務が直面する課題は、単に人材が足りない、制度が古いといった個別の問題ではありません。これらは相互に深く関連し、一つの悪循環を形成しています。法務人材を戦略的に育成・配置する人事システムが欠けているため、数少ない専門人材は、日々発生するコンプライアンス違反への対応や、深刻化する住民からの過剰要求への対処といった、緊急性の高い「守りの業務」に追われざるを得ません。この結果、本来、問題の根源を断つために必要な条例制定などの「攻めの政策法務」に取り組む時間と余力が奪われます。そして、政策法務が機能不全に陥ることで、不明確なルールや非効率な制度が温存され、それが新たな住民クレームや事務処理ミスを生み出すという、負のスパイラルに陥っているのです。この構造的な問題を断ち切らない限り、場当たり的な対応に終始し、組織全体の法務能力は向上しません。
人材面の課題
法務専門人材の絶対的不足と配置の偏り
- 複雑化する行政課題に対応できる高度な専門知識を持つ法務人材（特に弁護士資格者）の絶対数が不足しています。また、その配置も総務部門に集中しがちで、福祉や教育、まちづくりなど、専門的な法務能力が求められる現場部署への配置が不十分です。
- 客観的根拠：
- 全国の自治体における常勤弁護士の配置率は約6%に過ぎません。
- スクールロイヤーの配置率は市町村レベルでは11.3%と低迷しており、自治体規模による格差が顕著です。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察：
- 法務サポートが一部の部署に限定され、全庁的なリスク管理や政策法務の推進が停滞します。
- 客観的根拠：
キャリアパスの欠如と評価制度の不備
- 法務専門職としての明確なキャリアパスや昇進ルートが確立されておらず、弁護士等の専門人材にとって魅力的な職場になっていません。また、人事評価制度において「法務能力」を適切に評価する仕組みが未整備なため、職員が専門性を高めるインセンティブが働きにくい構造になっています。
- 客観的根拠：
- 弁護士のキャリアプランとして、自治体の任期付職員は主要な選択肢と認識されていません。
- 法務部門の目標設定は定量化が難しく、評価が主観的になりがちで、約4割の企業では「上司からの評価のみ」または「人事評価なし」という調査結果もあります（民間企業のデータだが自治体にも通じる課題）。
- 人事評価制度において法務能力を重視することが、管理職の重要な役割として提言されています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察：
- 優秀な法務人材の獲得・定着が困難になり、組織全体の法務能力が長期的に低下します。
- 客観的根拠：
法務人材の育成システムの形骸化
- 多くの自治体で法務研修は実施されているものの、単発の知識習得に留まり、実践的なスキルやリーガルマインドを組織に根付かせる体系的な育成システム（OJTとの連携、階層別の育成プログラム等）が十分に機能していません。
- 客観的根拠：
- 職員の能力開発には、Off-JT（研修）とOJT（職場内訓練）を相互補完的に組み合わせることが不可欠であると指摘されています。
- 長期的視野に立った法務人材育成システムの構築が、効果的なOJT実施の鍵となります。
- 長崎県の計画では、法務専門職員の計画的養成のために高度な派遣研修等の必要性が示されています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察：
- 研修効果が一時的なものに終わり、組織の課題解決能力が向上せず、同じような法的ミスが繰り返されます。
- 客観的根拠：
組織・制度面の課題
「行政の無謬性神話」と前例踏襲主義
- 「行政は間違えない」という無謬性の意識が根強く、失敗を恐れるあまり、新たな政策への挑戦や、社会情勢の変化に応じた柔軟な政策の見直しをためらう組織風土が存在します。これにより、政策法務の推進が阻害されています。
- 客観的根拠：
- 行政の無謬性にとらわれると、エビデンスが不十分な新規政策に挑戦せず、安易な前例踏襲に陥り、問題を先送りする傾向があると指摘されています。
- 京都市のコンプライアンス推進指針では、「前任者がこうしていたから」という思考停止ではなく、根拠を確認するよう求めています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察：
- 社会の変化から取り残された非効率な行政運営が続き、新たな地域課題に対応できなくなります。
- 客観的根拠：
縦割り組織による連携不足
- 政策法務やコンプライアンスが「法務部門の仕事」と捉えられ、事業を所管する原課との連携が不足しています。これにより、政策の企画段階で法的な視点が欠落したり、全庁的なリスク情報が共有されなかったりする問題が生じます。
- 客観的根拠：
- 政策法務は法務担当の仕事であるという「原課の誤解」が、政策法務推進の妨げになっていると指摘されています。
- 大阪市の事例では、問題発生時にすぐトップに報告せず、部署内で対処方針を決めてから報告する文化があったとされ、リスク管理上の問題点が示されています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察：
- 部署ごとに判断がバラつき、一貫性のない行政対応となるほか、法務リスクの見落としによる訴訟や事業の失敗を招きます。
- 客観的根拠：
職員を保護する仕組みの不備と「カスハラ」の深刻化
- 住民からの過剰な要求や不当なクレーム（カスタマーハラスメント）に対し、職員個人が対応を迫られるケースが多く、組織として職員を守るための体制（対応マニュアル、弁護士等外部専門家との連携、警察との連携）が十分に整備されていません。
- 客観的根拠：
- スクールロイヤーへの相談内容のトップは「保護者等からの過剰な苦情や不当な要求」です。
- 行政対象の不当要求行為が原因で職員が心身を病むケースや、殺害されるという痛ましい事件も過去に発生しています。
- 港区では、カスタマーハラスメントに対し組織として職員を守る方針を明確に打ち出しています。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察：
- 職員の精神的疲弊による休職・離職が増加し、行政サービスの質の低下を招きます。
- 客観的根拠：
住民・地域社会の課題
形骸化する内部統制と住民信頼の低下
- 内部統制制度が導入されても、その運用が形式的なものに留まり、実際に不正や事務処理ミスが防げていない事例が散見されます。これは、行政の透明性や公正性に対する住民の信頼を損なう大きな要因です。
- 客観的根拠：
- 令和5年度文京区内部統制評価報告書では、約3.4万人に誤った子ども医療証を送付する「重大な不備」が発生し、区の信用を大きく失墜させたと結論付けています。
- 令和4年度大田区包括外部監査では、公益通報制度の周知が不十分であることなどが指摘されており、制度の実効性に疑問が呈されています。
- 地方公務員の懲戒処分者数は毎年度4,000人以上、汚職事件も約100件発生しており、不祥事が恒常的に起きている状況がうかがえます。
- この課題が放置された場合の悪影響の推察：
- 行政不信が蔓延し、住民の協力が得られにくくなることで、円滑な地域運営が困難になります。
- 客観的根拠：
行政の支援策と優先度の検討
優先順位の考え方
※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
- 即効性・波及効果：
- 短期間で成果が現れ、かつ、一つの施策が人材、組織、文化といった複数の課題に好影響を与えるものを高く評価します。
- 実現可能性：
- 現行の法制度や予算の範囲内で着手可能であり、大きな組織改編を伴わずにスモールスタートできる施策を優先します。
- 費用対効果：
- 投入するコスト（予算、人員）に対し、将来的な訴訟費用の削減、業務効率化による人件費抑制など、長期的に大きなリターンが見込める施策を重視します。
- 公平性・持続可能性：
- 特定の部署だけでなく全庁的に便益が及び、かつ、一度導入すれば組織の能力として定着し、継続的に効果を発揮する施策を高く評価します。
- 客観的根拠の有無：
- 先進自治体での成功事例や、政府の調査報告書等で効果が示されている、エビデンスに基づいた施策を優先します。
支援策の全体像と優先順位
- 庁内法務機能の強化は、単一の施策では実現できません。「人材育成」「組織改革」「技術活用」の三位一体での改革が不可欠です。
- 最優先（Priority 1）：支援策① 法務人材の戦略的育成・活用体制の構築
- 全ての改革の基盤は「人」です。専門性を持つ人材を計画的に育成し、適正に評価・配置する体制がなければ、他の施策は絵に描いた餅に終わります。これは、前述の「負のスパイラル」を断ち切るための根本的な解決策であり、最も優先度が高いと判断します。
- 優先度2：支援策② コンプライアンスを核とした組織文化・内部統制の抜本改革
- 育成した人材が能力を最大限に発揮するには、失敗を許容し、風通しの良い組織文化が必要です。トップのリーダーシップによる文化改革と、実効性のある内部統制は、人材育成と両輪で進めるべき重要な施策です。
- 優先度3：支援策③ リーガルテック活用による法務機能の高度化・効率化
- 人材不足という現実的な制約の中で、法務機能全体の生産性を向上させるためには、テクノロジーの活用が不可欠です。上記①②の取り組みを加速させるための強力なツールとして位置づけられます。
各支援策の詳細
支援策①：法務人材の戦略的育成・活用体制の構築
目的
- 法務能力を核とした専門性を有する職員を計画的に確保・育成し、組織全体の課題解決能力を向上させることを目的とします。
- 専門人材が意欲と誇りを持って働き続けられる、魅力あるキャリアパスを構築します。
- 客観的根拠：
- 都市自治体の法務人材は、法的専門能力だけでなく、行政運営に関する知識や総合的な課題解決能力をバランス良く有することが望ましいとされています。
- 横浜市では、庁内公募による育成プログラムや他団体への派遣研修を通じて、計画的に法務人材を育成しています。
- 客観的根拠：
主な取組①：法務専門職コース（仮称）の創設とキャリアパスの明示
- 人事制度内に「法務専門職コース」を新設し、法務をキャリアの核としたい職員が専門性を高め続けられる道筋を設けます。
- 法務担当部署での経験を積んだ後、各事業部署の法務担当係長や、政策法務を担う企画部門、内部統制を担う監査部門など、多様なキャリアパスを明示します。
- 足立区の複線型人事制度（法務分野等でスペシャリストを養成）を参考に、専門職としての処遇を確保します。
主な取組②：体系的な法務研修プログラムの構築（OJTとの連動）
- 流山市の事例を参考に、全職員を対象とした階層別の体系的な研修（新採用、係長級、管理職級）を設計します。
- 研修内容を、判例学習や法令解釈といった座学だけでなく、実際の相談事例を用いた演習や、条例立案のシミュレーションなど、より実践的なものへと転換します。
- 研修で学んだことを職場で実践し、その結果をフィードバックするOJTとの連動を強化します。法務担当者と事業所管課の職員がペアで課題解決にあたるなどの仕組みを導入します。
主な取組③：人事評価制度における「法務能力」の明確な位置づけ
- 人事評価シートの能力評価項目に「法務能力（政策法務能力、コンプライアンス意識、リスク管理能力等）」を明確に位置づけ、評価基準を具体化します。
- 目標管理制度（MBO）において、法務部門だけでなく、全部署で法務に関連する目標（例：「〇〇事業における法的課題の整理」「△△条例改正案の作成」）の設定を奨励し、その達成度を評価します。
主な取組④：弁護士等外部専門人材の戦略的任用と活用
- 弁護士の採用を、欠員補充的な場当たりなものではなく、長期的な人材戦略の一環として位置づけます。
- 総務部門だけでなく、明石市のように福祉、教育、市民協働など、特に法務需要の高い部署へ戦略的に配置します。
- 任期付職員として採用した弁護士には、単なる相談対応だけでなく、庁内研修の講師や、若手職員のOJT指導役など、組織全体の能力向上に貢献する役割を明確に担ってもらいます。
主な取組⑤：庁内法務人材ネットワークの構築
- 各部署に配置されている法務担当者（横浜市の「法務担当者」制度参照）や法務に関心の高い職員による自主的な勉強会や、部署横断の情報交換会を設置・支援します。
- 日弁連等が開催する自治体内弁護士の交流会等への参加を奨励し、他自治体とのネットワーク構築を促進します。
KGI・KSI・KPI
- KGI（最終目標指標）
- 法務関連の訴訟における敗訴率の低減（目標：現状比30%減）
- データ取得方法： 訴訟管理台帳による実績管理
- 職員の法務能力に対する自己評価スコアの向上（目標：平均15%向上）
- データ取得方法： 年1回の職員意識調査
- 法務関連の訴訟における敗訴率の低減（目標：現状比30%減）
- KSI（成功要因指標）
- 法務専門職コース登録者数（目標：3年で30名）
- データ取得方法： 人事課の登録データ
- 弁護士資格を持つ常勤職員数（目標：5年で倍増）
- データ取得方法： 人事課の職員データ
- 法務専門職コース登録者数（目標：3年で30名）
- KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
- 人事評価で「法務能力」に関する目標を設定した職員の割合（目標：全職員の50%）
- データ取得方法： 人事評価シートの集計・分析
- 法務研修受講後の理解度テスト平均点（目標：85点以上）
- データ取得方法： 研修後のテスト結果集計
- 人事評価で「法務能力」に関する目標を設定した職員の割合（目標：全職員の50%）
- KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
- 体系的法務研修の実施回数（目標：年20回以上）
- データ取得方法： 研修実施記録
- 他団体（東京都法務課等）への派遣研修者数（目標：年2名以上）
- データ取得方法： 人事課の派遣記録
- 体系的法務研修の実施回数（目標：年20回以上）
支援策②：コンプライアンスを核とした組織文化・内部統制の抜本改革
目的
- 「行政の無謬性神話」から脱却し、挑戦を奨励し、失敗から学ぶことを許容する、風通しの良い組織文化を醸成します。
- 形式的ではない、実効性のある内部統制システムを構築し、職員を守りながら、区政に対する住民の信頼を向上させることを目的とします。
- 客観的根拠：
- コンプライアンス推進には、経営層（首長・幹部職員）の明確なコミットメントとリーダーシップが不可欠です。
- (https://outside.no-limit.careers/whats-compliance/)、PwC Japan「ポジティブなコンプライアンス・カルチャーを醸成する」
- 鎌倉市では、市長・副市長がトップとなる「コンプライアンス推進委員会」や「組織風土改革特別委員会」を設置し、トップダウンで改革を推進しています。
- コンプライアンス推進には、経営層（首長・幹部職員）の明確なコミットメントとリーダーシップが不可欠です。
- 客観的根拠：
主な取組①：トップによるコンプライアンス・メッセージの継続的発信
- 区長や副区長が、年頭訓示や庁内報、動画メッセージ等を通じて、「コンプライアンスは職員を守るためにある」「挑戦と失敗を歓迎する」といったメッセージを繰り返し、明確に発信します。
- 明石市の泉房穂・前市長のように、トップが明確なビジョン（「市民の笑顔が政治の結果」）を掲げ、職員の意識改革を主導します。
- (https://mba.globis.ac.jp/knowledge/detail-24089.html)
主な取組②：実効性のある公益通報（内部通報）制度の再構築
- 大田区の包括外部監査の指摘を踏まえ、通報窓口に外部の弁護士を設置し、職員が安心して相談・通報できる選択肢を確保します。
- 通報者の範囲に退職後1年以内の職員を含め、匿名での通報も実質的に受け付けるなど、利用しやすい制度へと見直します。
- 通報制度の存在や通報者保護が徹底されることを、庁内広報紙等で定期的に周知します。
主な取組③：「行政対象暴力・カスタマーハラスメント」対策の強化
- 対応マニュアルを整備し、不当要求の類型（威圧、土下座要求等）に応じた具体的な対応手順を定めます。
- 対応が困難な案件については、初期段階から法務部門や顧問弁護士が介入する体制を構築します。職員一人で抱え込ませないことを徹底します。
- 警察OBを相談員として配置したり、警察との連携訓練を定期的に実施したりするなど、組織的な防御体制を強化します。
主な取組④：内部統制におけるリスク評価とモニタリングの強化
- 各部署が自らの業務に潜むコンプライアンスリスク（個人情報漏洩、許認可の誤り、公金不適正処理等）を洗い出し、評価する「リスク評価会」を定期的に実施します。
- 内部統制の運用状況について、内部監査部門が定期的にモニタリング（実地検査）を行い、形骸化を防ぎます。評価結果は全庁で共有し、優れた取組は表彰するなど、ポジティブなインセンティブを設けます。
主な取組⑤：失敗事例の共有と再発防止策の水平展開
- 文京区の医療証誤送付のような重大な不備や、他自治体の不祥事事例を教材として、原因分析と再発防止策を検討する「失敗に学ぶ研修」を実施します。
- 単に担当者を処分して終わりにするのではなく、なぜその不備が起きたのかを組織的な問題として捉え、業務プロセスやチェック体制の見直しにつなげ、その内容を全庁的に水平展開します。
KGI・KSI・KPI
- KGI（最終目標指標）
- 内部統制評価報告書における「重大な不備」指摘件数（目標：ゼロ件）
- データ取得方法： 毎年度の内部統制評価報告書の公表内容
- 職員のコンプライアンス意識調査における「風通しの良い職場である」という回答の割合（目標：80%以上）
- データ取得方法： 年1回の職員意識調査
- 内部統制評価報告書における「重大な不備」指摘件数（目標：ゼロ件）
- KSI（成功要因指標）
- 外部弁護士窓口への公益通報件数（目標：過度に多くも少なくもない適正水準での安定推移）
- データ取得方法： 外部窓口からの定期報告
- トップメッセージの職員認知度（目標：95%以上）
- データ取得方法： 職員意識調査
- 外部弁護士窓口への公益通報件数（目標：過度に多くも少なくもない適正水準での安定推移）
- KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
- カスタマーハラスメントを理由とする職員の病気休職者数（目標：現状比50%減）
- データ取得方法： 人事課の休職者データ分析
- 内部監査における指摘事項の改善率（目標：100%）
- データ取得方法： 内部監査のフォローアップ調査
- カスタマーハラスメントを理由とする職員の病気休職者数（目標：現状比50%減）
- KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
- 全職員向けコンプライアンス研修の実施回数（目標：年1回以上）
- データ取得方法： 研修実施記録
- 公益通報制度に関する庁内周知の回数（目標：年4回以上）
- データ取得方法： 庁内広報等の掲載記録
- 全職員向けコンプライアンス研修の実施回数（目標：年1回以上）
支援策③：リーガルテック活用による法務機能の高度化・効率化
目的
- AI等のデジタル技術を活用し、定型的・反復的な法務関連業務を自動化・効率化することで、職員をより創造的・戦略的な業務にシフトさせます。
- 庁内に散在する法務知識やノウハウをデジタル化・集約し、全職員が容易にアクセスできる基盤を構築することで、組織全体の法務能力を底上げします。
- 客観的根拠：
- 徳島県や尼崎市では、AI契約書レビュー支援サービス「LAWGUE」を導入し、行政文書の作成・審査の効率化検証を開始しています。
- AIチャットボットは、住民からの問い合わせに24時間365日対応可能で、職員の負担を軽減し、より高度な問い合わせに注力できる環境を作ります。
- 客観的根拠：
主な取組①：AI契約書・例規レビュー支援ツールの導入
- 契約書や条例・規則の案文について、AIが瞬時にリスクのある条項や過去の類似案件との差分、誤字脱字等をチェックするツールを導入します。
- 弁護士法第72条（非弁行為）に抵触しないよう、AIの役割をあくまで「判断の補助」と位置づけ、最終的な判断は職員（または弁護士）が行う運用を徹底します。ツールの選定にあたっては、法務省のガイドラインを遵守しているサービスを選択します。
主な取組②：庁内法務ナレッジデータベースの構築
- 過去の法律相談の要旨、判例、行政実例、各部署が作成したマニュアル等を一元的に集約したデータベースを構築します。
- 職員がキーワードで必要な情報を簡単に検索できるシステムを整備し、法務部門への単純な問い合わせを削減するとともに、自己解決能力の向上を支援します。
主な取組③：職員向け・住民向けAIチャットボットの活用
- 職員向けには、服務規程や出張旅費の精算ルール、各種手当の申請手続きなど、定型的な問い合わせに自動応答するチャットボットを庁内ポータルに設置します。
- 住民向けには、ゴミの分別方法や各種証明書の発行手続きなど、よくある質問に24時間対応するチャットボットを区のホームページに導入します。
主な取組④：法律相談・不服申立て等のオンライン受付システムの導入
- 住民や事業者が行う法律相談の予約や、行政不服審査の申立てなどをオンラインで完結できるシステムを導入します（GovTechの一環）。
- 行橋市の確定申告相談予約のオンライン化事例のように、電話や窓口での対応業務を削減し、職員の負担を軽減します。
KGI・KSI・KPI
- KGI（最終目標指標）
- 法務関連業務（契約書審査等）の処理時間短縮率（目標：平均30%削減）
- データ取得方法： 対象業務の処理時間の実測（導入前後比較）
- 法務部門への定型的な問い合わせ件数（目標：現状比50%減）
- データ取得方法： 問い合わせ管理システムのログ分析
- 法務関連業務（契約書審査等）の処理時間短縮率（目標：平均30%削減）
- KSI（成功要因指標）
- AIレビューツールの利用職員数（目標：関連部署職員の80%）
- データ取得方法： ツールの利用ログ分析
- 法務ナレッジデータベースへのアクセス数（目標：月間1,000件以上）
- データ取得方法： システムのアクセスログ分析
- AIレビューツールの利用職員数（目標：関連部署職員の80%）
- KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
- 契約書・例規案の差し戻し・修正回数の削減率（目標：平均20%減）
- データ取得方法： 決裁システムの記録分析
- 住民向けチャットボットによる自己解決率（目標：80%以上）
- データ取得方法： チャットボットの利用統計分析
- 契約書・例規案の差し戻し・修正回数の削減率（目標：平均20%減）
- KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
- AIレビューツールの導入（目標：1年以内に導入完了）
- データ取得方法： 事業進捗管理表
- 法務ナレッジデータベースへの登録コンテンツ数（目標：初年度500件）
- データ取得方法： データベースのコンテンツ管理機能
- AIレビューツールの導入（目標：1年以内に導入完了）
先進事例
東京都特別区の先進事例
大田区「専門職の活用と実効性ある制度運用への挑戦」
- 大田区は、令和3年に行政専門職（法務分野）を採用するなど、専門人材の活用に早期から取り組んでいます。また、空き家対策など、法的な知見が求められる分野で具体的な事業を展開しています。
- 特に注目すべきは、包括外部監査での指摘を真摯に受け止め、公益通報制度の要綱を改正した点です。通報者の範囲を退職者に拡大し、匿名通報の取り扱いを明確化するなど、制度の実効性を高めるための具体的な改善を行っています。これは、外部からの指摘を組織改革の機会として活かす姿勢を示す好事例です。
文京区「失敗から学ぶ内部統制の取り組み」
- 文京区は、令和5年度の内部統制評価において、子ども医療証の誤送付という「重大な不備」を自ら認め、その原因と影響、是正措置を詳細に公表しました。
- この事例の先進性は、失敗を隠蔽せず、透明性をもって公表し、担当部署のチェック体制強化に留まらず、全庁的に共有して組織全体の教訓とする姿勢にあります。これは「無謬性の神話」から脱却し、失敗から学ぶ組織文化を構築する上での重要な一歩と言えます。
足立区「債権管理と内部統制の着実な推進」
- 足立区は、区営住宅使用料等の債権管理において、弁護士事務所と連携した取り組みを進めており、地域密着で豊富な相談実績を持つ法律事務所等と協働しています。
- また、令和3年度から着実に内部統制評価報告書を公表し続け、監査委員の意見を付して改善に取り組むPDCAサイクルを回しています。特定の派手な施策ではなく、地道な制度運用を継続している点に、組織として法務・コンプライアンスを定着させようとする堅実な姿勢がうかがえます。
- 客観的根拠：
全国自治体の先進事例
横浜市「体系的な法務人材育成システム」
- 横浜市は、法務人材の育成において全国のモデルとなる体系的なシステムを構築しています。総務局法制課に法曹有資格者を含む専門スタッフを配置するだけでなく、庁内公募による2年間の育成プログラムを設けています。
- このプログラムでは、1年目に法制課で実務を経験し、2年目には東京都法務課へ派遣されるなど、高度な専門性と実践力を兼ね備えた人材を計画的に育成しています。育成後は、訴訟担当係長や各局の法務担当として戦略的に配置され、組織全体の法務能力向上に貢献しています。これは、場当たり的ではない、持続可能な人材育成の仕組みとして極めて高く評価できます。
明石市「トップの強いリーダーシップによる組織・意識改革」
- 前市長・泉房穂氏のリーダーシップの下、明石市は抜本的な組織改革と職員の意識改革を断行しました。当初は職員や議会から強い抵抗を受けながらも、「子どもを核としたまちづくり」という明確なビジョンを掲げ、市民の支持を背景に改革を推進しました。
- (https://playscape.bornelund.co.jp/shop/pages/column_interview_izumi.aspx)、(https://mba.globis.ac.jp/knowledge/detail-24089.html)
- 弁護士を法務部門だけでなく、福祉やこども政策の現場に多数配置し、寄り添い型の行政を法務面から支える体制を構築しました。これは、法務を単なるリスク管理ではなく、価値創造（市民の安心と笑顔）のためのツールとして活用した先進事例であり、トップの強い意志が組織文化を変革しうることを示しています。
参考資料［エビデンス検索用］
日弁連・弁護士会関連資料
- 日本弁護士連合会「自治体内弁護士の御案内」
- 日本弁護士連合会「弁護士の職員任用（常勤・非常勤）に関心のある地方公共団体の皆さまへ」平成27年
- 日本弁護士連合会「自由と正義 Vol.69 No.5 特集1 自治体における弁護士の活動領域の拡大」平成30年
政府関連資料
- 総務省「地方公共団体における弁護士の活用に関する実態調査について」平成28年
- 総務省「地方公共団体のコンプライアンスに係る取組事例集」
- 文部科学省「教育行政に係る法務相談体制の整備等に関する調査（令和4年度）」令和5年
- デジタル庁・総務省「地方公共団体における内部統制制度の導入・実施ガイドライン」平成31年
- 内閣官房「第11回 行政事業レビュー改革に関する有識者検討会 議事概要」令和4年
自治体・関係団体資料
- 公益財団法人日本都市センター「都市とガバナンス 第40号 令和時代の自治体法務とその担い手」令和5年
- 公益財団法人日本都市センター「研究報告書No.197 都市自治体における法務人材の確保・育成と法務に関する組織体制」令和4年
- 東京都特別区各区「内部統制評価報告書」（各年度）
- 大田区「令和4年度包括外部監査結果報告に対する措置状況」令和5年
- 横浜市「法務分野人材育成計画」
その他研究・報告書
まとめ
東京都特別区における庁内法務相談機能の強化は、もはや単なるリスク管理の課題ではなく、持続可能な自治体経営を実現するための戦略的な要請です。本報告書で示した通り、課題は人材育成、組織文化、技術活用と多岐にわたりますが、これらは相互に連関しています。法務人材の戦略的育成を最優先とし、トップのリーダーシップによる組織文化改革、そしてリーガルテックの活用を三位一体で推進することで、受動的な「守りの法務」から、地域課題を解決する能動的な「攻めの法務」への転換が可能です。これにより、職員が誇りを持って働ける職場環境を構築し、区民からの信頼に応える質の高い行政を実現します。
本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。
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