幼稚園・保育所・認定こども園の連携強化

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要（幼児教育・保育を取り巻く環境）

• 自治体が幼稚園・保育所・認定こども園の連携強化を行う意義は、「質の高い幼児教育・保育の均等な機会提供」と「多様化する保護者のニーズへの柔軟な対応」にあります。
• 日本の就学前教育・保育は、歴史的に文部科学省が所管する「幼稚園」（教育施設）と、こども家庭庁（旧厚生労働省）が所管する「保育所」（児童福祉施設）という異なる制度の下で発展してきました。この「幼保二元体制」は、子どもの育ちや保護者のニーズが多様化する現代において、制度的な障壁やサービスの格差を生む一因となっています。
  • （出典）太宰府市「幼稚園と保育所(園)の違い」 ¹
  • （出典）東京新聞「保育所、幼稚園、認定こども園 複雑化する就学前の保育・教育制度 こども家庭庁発足でどう変わる？」2023年 ²
• この課題に対応するため、2006年に両者の機能を併せ持つ「認定こども園」制度が創設され、2015年の「子ども・子育て支援新制度」施行以降、その数は急速に増加しています。
  • （出典）三菱UFJリサーチ&コンサルティング「保育制度の変遷と保育所の経営」2012年 ³
• 2023年には「こども家庭庁」が発足し、子ども政策の司令塔として保育所や認定こども園の所管が原則として一本化されました。しかし、幼稚園は引き続き文部科学省の所管であり、施設間の連携強化は依然として重要な政策課題です。
  • （出典）こども家庭庁「認定こども園概要」 ⁴
  • （出典）東京新聞「保育所、幼稚園、認定こども園 複雑化する就学前の保育・教育制度 こども家庭庁発足でどう変わる？」2023年 ²

意義

こどもにとっての意義

切れ目のない育ちと学びの保障

• 施設間の連携は、教育・保育内容の基準（幼稚園教育要領、保育所保育指針等）の相互理解を促し、幼児期から児童期への一貫した発達支援を可能にします。
• 特に、保育所や幼稚園から小学校への移行期における環境の変化に適応できない「小1プロブレム」の予防・緩和に繋がります。
  • 客観的根拠：
    • 文部科学省の調査研究協力者会議報告書では、幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続が、子どもの「学びの自立」「生活上の自立」「精神的な自立」を一体的に育む上で極めて重要であると結論付けています。
      • （出典）文部科学省「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議報告書について」平成22年 ⁵

多様な体験機会の拡充

• 幼稚園の教育的プログラムと保育所の多様な年齢の子どもたちが集う環境など、それぞれの施設の強みを活かした合同行事や交流活動が実現します。
• これにより、子どもたちはより多くの友人や大人と関わる機会を得て、社会性や協調性、思いやりの心を育むことができます。
  • 客観的根拠：
    • 幼保小連携に関する調査では、異年齢の児童との交流を通じて、年長者としての自覚や意識、思いやりの気持ちが高まる効果が報告されています。
      • （出典）いわき市「いわき市幼児教育振興アクションプログラム（第二次）策定に係るアンケート調査結果報告書」 ⁶
      • （出典）文部科学省「資料4 保幼小連携の成果と課題（調査研究事業報告書等より）」 ⁷

保護者にとっての意義

多様なニーズに対応した選択肢の確保

• 保護者の就労状況（フルタイム、パートタイム、育児休業中など）や教育方針に応じて、最適な施設やサービスを選択しやすくなります。
• 例えば、幼稚園における預かり保育の充実や、保育所における教育機能の強化が進むことで、これまで施設種別によって限定されていた選択肢が大きく広がります。
  • 客観的根拠：
    • 保護者が施設を選択する理由は多様であり、連携によって各施設が提供できるサービスの幅が広がることは、保護者の多様なニーズに応える上で直接的なメリットとなります。
      • （出典）國學院大學「保育・幼児教育分野への進路選択・就職に関する意識調査報告書」2025年 ⁸

子育てに関する不安の軽減と情報入手の容易化

• 連携する施設群が一体となって子育て相談会や保護者向け講座を実施することで、保護者は身近な場所で専門的な支援を受けやすくなります。
• これにより、特に初めての子育てや地域に知人がいない保護者の育児に関する孤立感や不安が緩和されます。
  • 客観的根拠：
    • 保育参加（一日保育士体験など）を実施した園の調査では、保護者から「子育ての参考になった」「保育者との信頼関係が深まった」という肯定的な回答が多く、園と家庭の連携が保護者の安心感に繋がることが示されています。
      • （出典）このみのき「保育園と家庭の絆を深める 効果的な連携方法とは」 ⁹
      • （出典）梅花女子大学心理こども学部紀要「保護者支援としての保育参加の意義」2014年 ¹⁰

地域社会にとっての意義

地域子育て力の向上

• 各施設が、在園児家庭だけでなく、未就園児家庭や地域住民にも開かれた「地域子育て支援拠点」としての役割を担うようになります。
• これにより、地域全体で子どもを育む意識が醸成され、核家族化や地域関係の希薄化といった社会課題の解決に貢献します。
  • 客観的根拠：
    • 国が推進する「地域子育て支援拠点事業」は、子育て中の親子の孤立を防ぎ、地域全体で育児家庭を支えることを目的としており、利用者からは「子育てを助けてもらえる友人ができた」といった声が寄せられ、その効果が確認されています。
      • （出典）こども家庭庁「地域子育て支援拠点事業」 ¹¹
      • （出典）ジチタイワークス「地域子育て支援拠点とは？事業内容や目的、自治体の取り組み事例を解説」2023年 ¹²

地域資源の有効活用

• 園庭、ホール、プールといった各施設の物理的な設備や、栄養士、看護師、カウンセラーといった専門職の人材を地域内で共有・活用できます。
• これにより、個々の施設が単独で全ての資源を持つ必要がなくなり、地域全体として効率的な資源配分が可能になります。
  • 客観的根拠：
    • 新潟県魚沼市の事例では、小学校と連携した食育活動や、地域の児童館を活用した子育て支援講座など、地域資源を積極的に活用することで教育・保育内容の充実を図っています。
      • （出典）金城大学短期大学部「特色ある教育・保育を実践する認定こども園の取り組み」2020年 ¹³

行政にとっての意義

行政サービスの効率化と質の向上

• 従来、施設種別ごとに縦割りで行われていた職員研修、監査、指導などを一体的に実施できるようになり、行政コストの削減と業務の効率化が図れます。
• デジタル技術を活用した入園申請システムの一元化などは、行政事務の迅速化に大きく貢献します。
  • 客観的根拠：
    • AIを活用した入園マッチングシステムは、自治体の業務効率化により入所決定までの期間を短縮し、利用満足度を向上させる効果が期待されています。
      • （出典）(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/20c04744-1b32-456d-99f1-f510aa191d61/da31434c/20240910_policies_hoiku_hoiku-dx_03.pdf) ¹⁴

待機児童問題の緩和と柔軟な対応

• 幼稚園の空き定員や空き教室を預かり保育や一時預かりに活用するなど、既存ストックを有効活用することで、大規模な施設新設に頼らずとも保育の受け皿を確保できます。
• これにより、特に待機児童が集中する1・2歳児の保育需要に柔軟に対応することが可能となります。
  • 客観的根拠：
    • 東京都練馬区では、区独自の幼保一元化施設「練馬こども園」として私立幼稚園を活用し、大規模な定員増を実現し、待機児童ゼロを達成しました。
      • （出典）練馬区「保育所等利用待機児童数ゼロ “４年連続”達成」令和6年 ¹⁵

（参考）歴史・経過

• 1947年
  • 児童福祉法が制定され、保護者が就労等の理由で「保育に欠ける」乳幼児を対象とする「保育所」制度が法的に位置づけられます。
    • （出典）法政大学大原社会問題研究所「『子ども・子育て支援新制度』と保育制度改革の歴史的文脈」2013年 ¹⁶
• 1960年代～1980年代
  • 高度経済成長期を経て女性の社会進出が進み、保育所の需要が急速に増大します。一方で、文部省（当時）所管の「幼稚園」と厚生省（当時）所管の「保育所」による「幼保二元体制」が定着します。
    • （出典）東京新聞「保育所、幼稚園、認定こども園 複雑化する就学前の保育・教育制度 こども家庭庁発足でどう変わる？」2023年 ²
• 2006年
  • 深刻化する待機児童問題への対応策として、幼稚園と保育所の機能を併せ持つ「認定こども園」制度が創設されます。文部科学省と厚生労働省が共同で「幼保連携推進室」を設置し、連携強化に乗り出します。
    • （出典）文部科学省「幼保連携の推進」平成18年 ¹⁷
• 2012年
  • 「子ども・子育て支援法」が成立。消費税増収分を財源とし、幼児教育・保育の質的・量的拡充を目指す大きな転換点となります。
    • （出典）三菱UFJリサーチ&コンサルティング「保育制度の変遷と保育所の経営」2012年 ³
• 2015年
  • 「子ども・子育て支援新制度」が本格施行。保護者の就労状況等に応じた「保育の必要性」の認定に基づき、施設利用の給付が行われる仕組みに移行します。これにより、認定こども園への移行が加速します。
    • （出典）現代の理論「『子ども・子育て支援新制度』は何をもたらしたか」2022年 ¹⁸
• 2023年
  • 子ども政策の司令塔として「こども家庭庁」が発足。保育所、認定こども園、地域の子育て支援事業などが同庁に一元化されます。ただし、学校教育法に基づく幼稚園は引き続き文部科学省の所管となり、完全な一元化には至っていません。
    • （出典）こども家庭庁「認定こども園概要」 ⁴

幼児教育・保育に関する現状データ

• 認定こども園への移行加速と幼稚園の減少
  • 全国の認定こども園数は、令和6年4月1日時点で10,483園に達し、前年から661園増加しました。特に、幼稚園と保育所の機能を一体的に提供する「幼保連携型」が7,136園と全体の68.1%を占め、制度の主流となっています。
    • （出典）こども家庭庁「認定こども園に関する状況について（令和6年4月1日現在）」2024年 ¹⁹
  • この移行の背景には、多様な保護者のニーズに一つの施設で応えられるという利便性があります。設置主体別に見ると、社会福祉法人が運営する施設の約8割が幼保連携型へ移行している一方、学校法人は約4割が幼稚園の機能を維持しやすい「幼稚園型」を選択しており、元の施設の特性が移行形態に影響を与えています。
    • （出典）こども家庭庁「認定こども園に関する状況について（令和6年4月1日現在）」2024年 ¹⁹
  • 対照的に、伝統的な幼稚園は減少傾向が顕著です。全国の幼稚園の在園児数は、平成のピーク時（昭和60年度：約152万人）から大幅に減少し、令和5年度には84万1,795人と、初めて90万人を下回りました。最新の速報値ではさらに減少し、約76万人となっています。
    • （出典）文部科学省「令和5年度学校基本調査（速報値）」令和5年 ²⁰
    • （出典）ガベージニュース「幼稚園児数は減少中で直近では75万7968人 幼稚園児数などの推移(最新)」2025年 ²¹
• 全国的な待機児童減少と「東京都の逆行現象」
  • 全国の待機児童数は、保育の受け皿拡大により劇的に減少し、令和6年4月1日時点で2,567人となりました。これは、ピークであった平成29年（26,081人）の10分の1以下の水準です。
    • （出典）こども家庭庁「令和6年4月の保育所等利用待機児童数の状況について」令和6年 ²²
  • しかし、東京都ではこの傾向に逆行する現象が見られます。都の待機児童数は、令和5年に286人まで減少した後、令和6年には361人へと7年ぶりに増加に転じました。
    • （出典）東京都福祉局「都内の保育サービスの状況について」令和6年 ²³
  • この背景には、都内の就学前児童人口は減少傾向にあるものの、女性の高い就業率（25～44歳で80.8%）などを背景に保育サービスの利用申込率（58.8%）と利用率（59.1%）が過去最高水準に達していることがあります。需要の伸びが供給の伸びを上回っている状況です。
    • （出典）東京都福祉局「都内の保育サービスの状況について」令和6年 ²³
  • 特に需要が逼迫しているのが低年齢児です。都内の待機児童361人のうち、1歳児が268人、2歳児が71人と、1・2歳児で全体の93.9%を占めており、課題が特定の年齢層に極めて集中していることが分かります。
    • （出典）東京都福祉局「都内の保育サービスの状況について」令和6年 ²³
• 供給（定員）と需要（利用）のミスマッチ拡大
  • 全国的見ると、保育所等の定員充足率（利用児童数÷利用定員）は低下傾向にあり、令和6年4月時点で88.8%となっています。これは、前年（89.1%）から0.3ポイントの減少です。
    • （出典）こども家庭庁「令和6年4月の保育所等利用待機児童数の状況について」令和6年 ²⁴
  • このデータは、少子化の進行により、地方を中心に保育所の定員割れが課題となり始めていることを示唆しています。一方で、東京都特別区のような都市部では依然として高い需要があり、地域によって需給バランスが大きく異なる「ミスマッチ」が深刻化しています。
  • このことは、今後の政策が単なる「量の拡大」から、地域や年齢ごとの詳細なニーズ分析に基づいた「質の転換」と「効率的な資源配分」へとシフトする必要があることを強く示しています。

課題

こどもの課題

施設種別による教育・保育の質の格差

• 幼稚園は学校教育法に基づく「教育施設」、保育所は児童福祉法に基づく「児童福祉施設」と、その根拠法や目的が異なります。このため、職員の配置基準や資格要件、カリキュラムの考え方に違いがあり、どの施設に通うかによって子どもが受ける教育・保育の質にばらつきが生じる可能性があります。
  • 客観的根拠：
    • 幼稚園は文部科学省の「幼稚園教育要領」、保育所はこども家庭庁の「保育所保育指針」をそれぞれ基本としており、両者の理念や内容をすり合わせるための連携が不可欠です。連携が不十分な場合、一貫性のある教育・保育の提供が困難になります。
      • （出典）太宰府市「幼稚園と保育所(園)の違い」 ¹
      • （出典）文部科学省「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議報告書」平成22年 ⁵
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 子どもの発達や学びの連続性が阻害され、小学校への円滑な移行が困難になる「小1プロブレム」を助長する恐れがあります。

特別な配慮を要するこどもへの支援体制の不均衡

• 医療的ケアが必要な子どもや、発達に特性がある子どもなど、特別な支援を必要とする子どもの受け入れ体制は、施設種別や設置主体（公立・私立）によって大きく異なります。専門知識を持つ職員の配置や、施設のバリアフリー化、関係機関との連携体制に差があるのが現状です。
  • 客観的根拠：
    • 保育現場からは、支援を必要とする子どもの増加に対し、職員の専門性やスキル習得が追いついていないという課題が指摘されています。特に、発達障害に関する理解や虐待防止への対応などが急務とされています。
      • （出典）四日市市「平成29年度 第2回 四日市市子ども・子育て会議 資料」平成29年 ²⁵
      • （出典）特別区長会事務局「保育の質の確保・向上に向けた特別区の現状と課題」令和4年 ²⁶
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 支援が必要な子どもが適切なケアや教育の機会から排除され、その後の心身の発達に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

保護者の課題

就労形態と利用可能なサービスのミスマッチ

• 幼稚園は標準教育時間が4時間と短いため、フルタイムで働く保護者が利用しにくいという構造的な課題があります。預かり保育が拡充されつつありますが、その時間や内容は園によって様々です。逆に、保育所は長時間利用が前提ですが、教育内容の選択肢が少ないと感じる保護者もいます。
  • 客観的根拠：
    • 女性の就業率（25～44歳）は年々上昇を続け、令和5年には80.8%に達しています。これに伴い、保育に対するニーズは多様化・長時間化しており、従来の施設類型では対応しきれないケースが増えています。
      • （出典）厚生労働省「保育を取り巻く状況について」令和3年 ²⁷
      • （出典）こども家庭庁「令和6年4月の保育所等利用待機児童数の状況について」令和6年 ²⁴
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 保護者の就労継続やキャリア形成が阻害され、結果として世帯収入の減少や経済的な不安定を招くことにつながります。

複雑な制度と手続きによる負担

• 幼稚園、保育所、認定こども園では、入園・入所の申し込み先（施設へ直接、または自治体へ）や手続き、必要書類が異なります。特に、複数の施設種別を併願する保護者にとっては、情報収集から申請までのプロセスが大きな負担となり、「保活」という言葉に象徴されるような過度なストレスを生んでいます。
  • 客観的根拠：
    • 東京都港区が導入した「みなと母子手帳アプリ」では、保育園入園に関する手続きのデジタル化や保育コンシェルジュへの予約機能を提供した結果、電話での予約問い合わせが半減しました。この事実は、従来のアナログな手続きが保護者と行政の双方にとって大きな負担であったことを示唆しています。
      • （出典）(https://www.nri.com/content/900032503.pdf) ²⁸
      • （出典）デジタル庁「港区：子育て支援アプリ」2022年 ²⁹
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 情報格差によって不利益を被る保護者が現れたり、手続きの煩雑さが保護者の精神的健康を損ない、子育てへの前向きな意欲を削いだりする恐れがあります。

施設・職員の課題

資格・免許の壁と人材不足

• 幼保連携型認定こども園で3歳以上児のクラス担任となるには、原則として幼稚園教諭免許状と保育士資格の両方を持つ「保育教諭」であることが求められます。しかし、歴史的経緯から片方の資格しか持たない職員が多く、両方の資格を持つ人材は慢性的に不足しています。
  • 客観的根拠：
    • 令和5年度の幼稚園免許状取得者のうち、約7割が幼児教育以外の業種に就職しており、そもそも保育分野への人材供給が十分ではありません。
      • （出典）こども家庭庁「幼児教育、保育等の担い手確保・質の向上について」令和6年 ³⁰
    • 令和5年度の有効求人倍率は幼稚園教諭が2.49倍、保育士が2.67倍と極めて高い水準にあり、需要に対して供給が全く追いついていない深刻な人手不足の状況を示しています。
      • （出典）こども家庭庁「幼児教育、保育等の担い手確保・質の向上について」令和6年 ³⁰
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 有資格者の不足が施設の安定的な運営を困難にし、職員一人当たりの負担増、ひいては保育の質の低下や安全管理上のリスク増大を招きます。

処遇（給与・労働環境）の格差

• 施設種別（公立か私立か）や職種（幼稚園教諭か保育士か）によって、給与水準や福利厚生に大きな格差が存在します。特に公立と私立の給与格差は大きく、これが私立施設における人材確保を困難にし、職員の離職の一因となっています。
  • 客観的根拠：
    • 厚生労働省の調査によると、私立保育所の常勤保育士の平均年収が約391万円であるのに対し、公立保育所の保育士（地方公務員）の平均年収は約527万円と、大きな開きがあります（ただし、平均勤続年数の差も影響）。
      • （出典）ManpowerGroup「保育士の給料は安い？公立・私立の違いや今後の収入アップについて解説」 ³¹
    • 国は処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲといった施策を講じていますが、根本的な格差解消には至っておらず、特に経験の浅い若手職員の定着が課題となっています。令和4年度の調査では、30歳未満の幼稚園教諭の離職率は約6割に上ります。
      • （出典）こども家庭庁「幼児教育、保育等の担い手確保・質の向上について」令和6年 ³⁰
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 処遇の低い施設から人材が流出し、施設間の質の格差がさらに拡大します。これは最終的に、子どもたちが受ける教育・保育サービスの質に直接的な影響を及ぼします。

合同研修・連携活動の負担

• 幼稚園と保育所では、勤務時間や夏休みなどの長期休暇の有無といった勤務体系が大きく異なります。そのため、施設間で連携しようとしても、合同研修や打ち合わせの時間を確保することが極めて困難です。
  • 客観的根拠：
    • 園外研修に関する調査では、実施上の課題として「日程の調整が困難である」（57.6%）、「時間の確保が困難である」（56.7%）、「代替職員の確保が困難である」（51.0%）が上位を占めています。
      • （出典）ベネッセ教育総合研究所「園長の専門性とリーダーシップに関する調査 2017」2018年 ³²
    • 認定こども園を対象とした調査でも、「地域との交流と連携」は「取り組みづらい課題」として34.3%の施設が挙げており、連携の理想と現実の間に大きなギャップがあることがうかがえます。
      • （出典）日本総合研究所「幼保連携型認定こども園における評価に関する調査研究 報告書」2023年 ³³
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 連携が形式的な交流イベントに留まり、教育・保育内容の真のすり合わせや、子どもの育ちに関する継続的な情報共有が進まず、連携強化の本来の目的が達成されません。

行政の課題

縦割り行政の弊害

• こども家庭庁の発足により所管の一元化が進んだものの、幼稚園は依然として文部科学省・教育委員会の所管下にあります。このため、財政支援の仕組みや指導・監督の基準が異なり、自治体内で一体的な子ども政策を推進する上での障壁となっています。
  • 客観的根拠：
    • 文部科学省の調査によると、市町村レベルでは教育・保育内容に関する主担当部署を首長部局か教育委員会のいずれかに「一元化」している割合が72.9%に達する一方、都道府県レベルでは34.0%に留まっています。これは、広域的な視点での連携体制の構築が遅れていることを示しています。
      • （出典）文部科学省「幼児教育・保育の無償化後の利用状況等に関する調査研究」令和5年 ³⁴
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 施策の重複や非効率が生じ、限られた行政資源が無駄になるだけでなく、地域や施設への支援に一貫性が欠如し、現場の混乱を招きます。

地域ニーズの正確な把握と資源配分の困難さ

• 「待機児童数」という単一の指標だけでは、地域ごとの多様な保育ニーズ（短時間勤務に対応した保育、リフレッシュのための一時預かり、障害児保育、医療的ケア児への対応など）を正確に捉えることは困難です。結果として、画一的な受け皿整備が進み、真のニーズとの間にミスマッチが生じています。
  • 客観的根拠：
    • 全国的・長期的には待機児童が減少しているにもかかわらず、東京都特別区では令和6年に増加に転じました。特に、待機児童の9割以上が1・2歳児に集中しているという事実は、ニーズが特定の年齢層・地域に極度に偏在していることを示しており、マクロなデータだけでは実態を見誤る危険性を示唆しています。
      • （出典）こども家庭庁「令和6年4月の保育所等利用待機児童数の状況について」令和6年 ²⁴
      • （出典）東京都福祉局「都内の保育サービスの状況について」令和6年 ²³
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • ニーズと供給のミスマッチが解消されず、統計上の待機児童には含まれない「潜在的待機児童」が増加し、保護者の不満と行政への不信感が高まります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

• 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くのこども・保護者・施設への便益につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の仕組みを活用できる施策は、新たな体制構築が必要な施策より優先度が高くなります。
  • 費用対効果
    • 投入する経営資源（予算・人員・時間等）に対して得られる効果が大きい施策を優先します。短期的なコストだけでなく、将来的な財政負担の軽減効果も考慮します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の地域・年齢層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、一時的な効果ではなく、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 政府資料や学術研究、先進自治体の事例等によって効果が実証されている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

• 幼稚園・保育所・認定こども園の連携を実質的に強化するためには、「人材」「情報」「地域」という3つの側面から総合的にアプローチする必要があります。
• 最優先（Priority 1）：支援策① 幼保連携を加速する「人材交流・育成プラットフォーム」の構築
  • 連携の最大の障壁である「人材」の問題（資格・処遇・研修）に直接的にアプローチする本施策は、全ての連携施策の土台となるため、最優先で取り組むべきです。質の高い人材の確保・育成なくして、質の高い連携はあり得ません。
• 優先（Priority 2）：支援策② デジタル技術を活用した「地域こども情報連携基盤」の整備
  • 保護者の「保活」負担の軽減と行政の業務効率化に即効性があり、費用対効果が高い施策です。また、収集されるデータは、より精緻な政策立案（EBPM）を可能にするための不可欠な基盤となります。
• 中長期的視点（Priority 3）：支援策③ 「地域まるごと子育て拠点化」推進事業
  • 全ての施設が地域の子育て拠点となるこの施策は、地域社会全体の課題解決に繋がる根本的なアプローチです。持続可能な支援体制の構築に不可欠ですが、多くの関係者との合意形成や体制構築に時間を要するため、中長期的な視点で着実に進めるべき施策と位置づけます。

各支援策の詳細

支援策①：幼保連携を加速する「人材交流・育成プラットフォーム」の構築

目的

• 幼稚園教諭と保育士の専門性の違いを相互に尊重し、理解を深めることで、円滑な人事交流と協働を促進します。
• 保育教諭（幼稚園教諭免許と保育士資格の両方を持つ職員）の安定的確保・育成を目指し、認定こども園への円滑な移行と質の向上を支援します。
• 職員のキャリアパスを明確にし、処遇改善と結びつけることで、保育人材の定着率向上を図ります。
  • 客観的根拠：
    • 保育人材の確保は喫緊の課題であり、特に若年層の離職率の高さ（30歳未満の幼稚園教諭で約6割）や有効求人倍率の高さ（保育士で2.67倍）を改善するためには、キャリア形成支援と処遇改善が不可欠です。
      • （出典）こども家庭庁「幼児教育、保育等の担い手確保・質の向上について」令和6年 ³⁰

主な取組①：特別区統一の合同研修プログラムの体系化

• 幼稚園教諭と保育士が共に学ぶ合同研修を、区が主体となって体系的に企画・実施します。
• 研修内容は、両者に共通する現代的課題である「発達障害など特別な配慮が必要な子どもへの対応」「虐待防止と早期発見」「保護者支援とカウンセリングマインド」などを中心に据えます。
• 研修の実施にあたっては、代替職員の派遣補助やオンライン研修の導入を組み合わせ、多忙な現場職員が参加しやすい環境を整備します。
  • 客観的根拠：
    • 園外研修の最大の障壁は「日程調整」（57.6%）と「時間確保」（56.7%）です。行政が代替職員の確保を支援するなどの環境整備を行うことが、研修参加率の向上に直結します。
      • （出典）ベネッセ教育総合研究所「園長の専門性とリーダーシップに関する調査 2017」2018年 ³²

主な取組②：保育教諭資格取得支援とキャリアパスの明確化

• 保育士資格を持つ幼稚園教諭、または幼稚園教諭免許を持つ保育士が、もう一方の資格・免許を取得するための費用（受講料等）を助成します。
• e-ラーニング教材の導入支援や、特例制度に関する情報提供を積極的に行い、働きながら資格取得を目指せる環境を整えます。
• 国の「処遇改善等加算Ⅱ」と連動させ、キャリアアップ研修の受講が副主任保育教諭や専門リーダー等の役職と給与（最大月額4万円）に明確に結びつくキャリアパスを、区としてモデルケースを示し、各施設に周知徹底します。
  • 客観的根拠：
    • 「処遇改善等加算Ⅱ」は、職員のキャリアアップと処遇改善を連動させる国の重要な制度です。この制度を最大限に活用し、職員のモチベーション向上と専門性強化を図ることが有効です。
      • （出典）こども家庭庁「処遇改善等加算Ⅱに係る研修受講状況等の調査結果について」2023年 ³⁵
      • （出典）シンプル保育「【最新】保育士の給料は今後どう上がるのか？収入を増やす方法も解説」 ³⁶

主な取組③：人事交流・人材バンク制度の創設

• 区内の幼稚園、保育所、認定こども園の間で、職員が期間限定（例：1ヶ月～半年）で異動し、互いの職場を体験する「人事交流制度」を創設し、参加施設と職員に奨励金を支給します。
• 両方の資格を持つ「保育教諭」や資格取得を目指す意欲のある人材を登録する「特別区版 保育教諭人材バンク」を構築します。
• 人材不足に悩む施設と、多様な経験を積みたい職員とのマッチングを区が支援し、人材の流動性と地域内での定着を促します。
  • 客観的根拠：
    • 相互の職場体験は、異なる施設の文化や指導法を理解する上で非常に効果的ですが、職員が少ない園では代替要員の確保が難しく、実施が困難です。行政が仲介役となり、計画的な人事交流を促進する仕組みが求められています。
      • （出典）文部科学省「資料4 保幼小連携の成果と課題（調査研究事業報告書等より）」 ⁷

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 特別区内の保育教諭（両資格保有者）比率を5年間で20%向上させる。
    • データ取得方法： 区が実施する「区内幼児教育・保育施設における職員の資格保有状況に関する年次調査」
• KSI（成功要因指標）
  • 合同研修への年間延べ参加者数 500人以上。
    • データ取得方法： 研修事業の実施報告書および参加者名簿
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 研修参加者の連携に対する意識改善度（事後アンケートで「他施設の職員との連携の必要性を強く感じた」と回答する割合）を90%以上とする。
    • データ取得方法： 研修参加者への事前・事後アンケート調査
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 資格取得支援制度の年間利用者数 100人。
    • データ取得方法： 制度利用申請数および実績報告数
  • 人材バンクを通じたマッチング成立件数 年間50件。
    • データ取得方法： 人材バンク運営システムの記録

支援策②：デジタル技術を活用した「地域こども情報連携基盤」の整備

目的

• 保護者がスマートフォン一つで、施設探しから見学予約、入園申請、各種手続きまでを完結できる環境を整備し、「保活」の負担を抜本的に軽減します。
• 行政の入所選考や情報管理業務をデジタル化・自動化し、業務効率を飛躍的に向上させ、より創造的な業務へ人材を再配置します。
• 保護者の同意のもと、施設間や関係機関との情報共有を円滑にし、子ども一人ひとりへの切れ目のない支援を実現します。
  • 客観的根拠：
    • デジタルツールの導入は、住民サービスの質向上と行政の業務効率化に直接的な効果をもたらします。
      • （出典）(https://www.nri.com/content/900032503.pdf) ²⁸

主な取組①：「特別区版こども・子育てナビ」アプリの開発・導入

• 東京都港区の「みなと母子手帳アプリ」の成功事例を参考に、区内全ての幼稚園・保育所・認定こども園の情報を地図上で確認でき、施設の特色や空き状況、口コミなどを一元的に閲覧できるアプリを開発・導入します。
• アプリ内でオンライン見学予約、入園申請、必要書類の提出までをワンストップで完結できる機能を実装します。
• 予防接種のスケジュール管理や、地域の親子向けイベント情報の発信など、子育てに役立つ多様な機能も統合します。
  • 客観的根拠：
    • 港区の事例では、アプリ導入により予防接種の間違い接種件数が年間44.1%減少し、保育コンシェルジュへの電話予約が半減するなど、具体的な成果が報告されています。0歳児の保護者の登録率は85.7%に達しており、高いニーズがあることが証明されています。
      • （出典）デジタル庁「港区：子育て支援アプリ」2022年 ²⁹
      • （出典）(https://www.nri.com/content/900032503.pdf) ²⁸

主な取組②：AIを活用したマッチングとEBPMの推進

• 利用希望者の居住地、就労状況、希望する保育時間、教育方針などの個別ニーズと、各施設の空き状況や特色（英語教育、運動指導など）をAIが分析し、最適な施設を複数提案するレコメンド機能を実装します。
• アプリから得られるリアルタイムの需要データ（どの地域の何歳児の申込が多いか等）を分析し、待機児童予測や新たな施設整備計画の策定に活用するEBPM（証拠に基づく政策立案）を推進します。
  • 客観的根拠：
    • AIを活用したマッチングは、保護者の不安やストレスを軽減し、自治体事務を迅速化することで、入所施設への利用満足度を向上させる効果が期待できます。
      • （出典）(https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/20c04744-1b32-456d-99f1-f510aa191d61/da31434c/20240910_policies_hoiku_hoiku-dx_03.pdf) ¹⁴

主な取組③：施設間・関係機関との情報連携機能

• 保護者の明確な同意に基づき、子どものアレルギー情報、既往歴、発達に関する記録など、個別の配慮に必要な情報を、転園や進級時に施設間で安全に引き継げるデジタル連絡票機能を構築します。
• 将来的には、地域の保健センター、かかりつけ医、小学校とも連携し、乳幼児健診の結果や就学時健診の情報をシームレスに共有できる体制を目指し、ライフステージを通じた切れ目のない支援を実現します。
  • 客観的根拠：
    • 障害のある子どもなど、特別な支援が必要な子どもの就学に際しては、家庭や地域の医療、福祉等の関係機関との連携が不可欠であり、安全な情報共有プラットフォームはその連携を強力にサポートします。
      • （出典）文部科学省「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議報告書」平成22年 ⁵

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 保育サービスの利用手続きに関する保護者満足度を5年間で20ポイント向上させる。
    • データ取得方法： アプリ利用者および施設利用保護者を対象とした年次満足度アンケート調査
• KSI（成功要因指標）
  • アプリのダウンロード数およびアクティブユーザー率を、区内の対象年齢の子どもを持つ保護者の80%以上とする。
    • データ取得方法： アプリ管理システムのログデータ分析
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 入園申請のオンライン化率を100%（原則）とする。
    • データ取得方法： 電子申請システムの利用率データ
  • 入園選考および関連事務にかかる行政職員の業務時間を30%削減する。
    • データ取得方法： BPR（業務プロセス改革）前後での業務量調査
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • アプリに登録する施設数を、区内の全ての幼稚園、保育所、認定こども園とする。
    • データ取得方法： アプリ登録施設リストの管理

支援策③：「地域まるごと子育て拠点化」推進事業

目的

• 区内の全ての幼稚園・保育所・認定こども園が、単に在園児を預かるだけでなく、地域に開かれた子育て支援のハブ（拠点）としての機能を持つことを目指します。
• 在園児・未就園児の区別なく、地域に住むすべての子育て家庭の孤立を防ぎ、必要な支援に早期に繋げるセーフティネットを構築します。
• 2026年度から本格実施される「こども誰でも通園制度」の円滑な導入と定着を図り、多様な保育ニーズに応えます。

主な取組①：地域連携コーディネーターの配置支援

• 各施設、または近隣の複数施設からなるエリアごとに、地域連携活動を専門に企画・推進する「地域連携コーディネーター」の配置を支援します（人件費の一部を区が補助）。
• コーディネーターは、施設間の合同イベントの企画、未就園児向け園庭開放の運営、地域ボランティアの受け入れ、近隣の小学校や高齢者施設との連携などを担います。
  • 客観的根拠：
    • 幼小連携等の取り組みにおいて、担当者間の調整が大きな負担となることが課題として挙げられています。専門のコーディネーターを配置することで、属人的な努力に頼らない、組織的かつ継続的な連携が可能になります。
      • （出典）文部科学省「資料4 保幼小連携の成果と課題（調査研究事業報告書等より）」 ⁷

主な取組②：「こども誰でも通園制度」の区内全域展開

• 国が実施したモデル事業を参考に、親の就労要件を問わず、月10時間まで未就園児が定期的に通園できる「こども誰でも通園制度」を、区内全域で実施できるよう支援します。
• 幼稚園の空き教室や保育所の余裕スペースを活用し、受け入れ施設に対して運営費を補助します。
  • 客観的根拠：
    • 国のモデル事業では、利用者から「子どもの社会性や発達が促された」「育児の負担軽減やリフレッシュになり、精神的な支えになった」と非常に高い評価が得られており、制度の有効性が確認されています。
      • （出典）こども家庭庁「こども誰でも通園制度（仮称）の本格実施を見据えた試行的事業の実施状況について（最終報告）」令和6年 ³⁷
      • （出典）千葉市議会「教育未来委員会行政視察報告書」令和6年 ³⁸

主な取組③：施設の多機能化・複合化への支援

• 既存施設が、一時預かり、病児・病後児保育、障害児保育、世代間交流スペースといった多様な機能を付加するための改修費用を補助します。
• 特に、地域の児童館、高齢者施設、図書館など、他の公共施設との連携や複合化を促進し、地域住民の多様なニーズに応える拠点づくりを支援します。
  • 客観的根拠：
    • 地域子育て支援拠点は、複数の機能を併せ持つ「多機能型」となることで、利用者が一つの場所で様々な情報やサービスに触れる機会が増え、必要な支援にアクセスしやすくなる「入口効果」が報告されています。
      • （出典）厚生労働省「地域子育て支援拠点事業における多機能化の推進及び多様な連携の強化に関する調査研究報告書」2017年 ³⁹
      • （出典）特別区長会事務局「保育の質の確保・向上に向けた特別区の現状と課題」令和4年 ²⁶

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 区内の未就園児（0～2歳）を持つ家庭の育児孤立感（アンケートで「子育てについて相談相手がおらず、孤立していると感じる」と回答する割合）を5年間で50%減少させる。
    • データ取得方法： 区が実施する「子育て家庭の生活実態に関する意識調査」
• KSI（成功要因指標）
  • 「こども誰でも通園制度」の年間利用のべ人数を10,000人とする。
    • データ取得方法： 各施設からの事業実施報告に基づく集計
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 各施設が実施する地域連携イベント（園庭開放、子育て相談会等）への年間延べ参加者数を5,000人とする。
    • データ取得方法： 各施設からのイベント実施報告に基づく集計
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 地域連携コーディネーターを配置する施設数を50施設とする。
    • データ取得方法： 補助金交付実績データ
  • 「こども誰でも通園制度」を実施する施設数を100施設とする。
    • データ取得方法： 補助金交付実績データ

先進事例

東京都特別区の先進事例

港区「みなと母子手帳アプリによる情報・手続きの一元化」

• 港区は、妊娠期から就学前までの子育て世代を対象に、多様なサービスを一つのアプリで提供する「みなと母子手帳アプリ」を導入しています。このアプリは、複雑な予防接種のスケジュールをAIが自動管理する機能、乳幼児健診や一時預かりの24時間オンライン予約機能、保育園の空き状況確認から入園申し込みまでを完結できる電子申請機能などを統合しています。
• この取り組みは、保護者の利便性を劇的に向上させると同時に、電話対応や書類管理といった行政の業務負担を大幅に軽減し、官民連携によるデジタル・トランスフォーメーション（DX）の成功モデルとなっています。
  • 客観的根拠：
    • アプリ導入後、小児の定期予防接種における年間の間違い接種件数が44.1%減少し、保育サービスの専門相談員「保育コンシェルジュ」への電話予約件数が半分以下になるなど、定量的にも明確な効果が確認されています。特にニーズの高い0歳児の保護者の登録率は85.7%に達しています。
      • （出典）デジタル庁「港区：子育て支援アプリ」2022年 ²⁹
      • （出典）(https://www.nri.com/content/900032503.pdf) ²⁸

練馬区「区独自の幼保一元化施設『練馬こども園』による待機児童対策」

• 練馬区は、国の認定こども園制度とは別に、区独自の基準で私立幼稚園を認定する「練馬こども園」制度を創設しました。これは、春・夏・冬休みを含む通年で9時間から11時間の預かり保育を実施する私立幼稚園を区が認定し、運営を支援するものです。
• この制度の成功要因は、既存の私立幼稚園の施設や人材というストックを最大限に活用した点にあります。大規模な施設新設に頼ることなく、柔軟な発想で保育の受け皿を大幅に拡大し、深刻だった待機児童問題の解消に成功しました。
  • 客観的根拠：
    • この取り組みにより、平成26年からの10年間で約9,200人という全国トップクラスの定員増を実現し、令和3年から令和6年まで4年連続で国の基準に基づく待機児童数ゼロを達成しました。
      • （出典）練馬区「保育所等利用待機児童数ゼロ “４年連続”達成」令和6年 ¹⁵

世田谷区「多様な主体との連携によるインクルーシブな保育環境の構築」

• 世田谷区は、障害児保育や医療的ケア児の受け入れといったインクルーシブ保育に先進的に取り組んでいます。保育士の配置を手厚くするだけでなく、専門性向上のための研修受講支援やカウンセラー派遣制度を積極的に活用し、質の高い支援体制を構築しています。
• また、同一法人が運営する高齢者施設や放課後児童クラブを同じ敷地内に設置するなど、施設の多機能化・複合化を推進。これにより、子どもたちが日常的に多様な世代と自然に交流できる環境が生まれており、地域コミュニティの核としての役割を果たしています。
  • 客観的根拠：
    • 形式的な交流に陥りがちな園同士の連携において、近隣の2～3園で公開保育と公開後の集合カンファレンスをセットで実施。互いの実践について深く議論し、学び合う仕組みを構築するなど、保育の質の向上に直結する具体的な取り組みを行っている点が評価されています。
      • （出典）特別区長会事務局「保育の質の確保・向上に向けた特別区の現状と課題」令和4年 ²⁶

全国自治体の先進事例

石川県七尾市「マイ保育園制度を活用した継続的な子育て支援」

• 七尾市では、妊娠期から身近な保育園・こども園を「マイ保育園」として登録してもらう制度を導入しています。これにより、保護者は出産前から特定の園の保育士に気軽に相談でき、園が主催するイベントに参加するなど、継続的な関係を築くことができます。
• この取り組みの成功要因は、「かかりつけ医」のように身近で信頼できる相談先を確保することで、保護者の育児に対する不安や孤立感を早期に和らげている点です。施設側も、入園前から子どもの発達や家庭の状況を把握できるため、よりきめ細やかな支援が可能になります。
  • 客観的根拠：
    • この「マイ保育園」制度は、地域における継続的な子育て支援の優れたモデルとして、国の「認定こども園における地域子育て支援活動の事例集」においても優良事例として紹介されています。
      • （出典）こども家庭庁「認定こども園における地域子育て支援活動の事例集」令和3年 ⁴⁰

千葉県松戸市「多様なニーズに応える一時預かり事業の展開」

• 松戸市は、親の就労状況に関わらず、リフレッシュ目的でも利用可能な柔軟性の高い一時預かり事業「おやこDE広場 ほっとるーむ」を市内各所で展開しています。
• この事業の最大の特徴は、利用者の多様なニーズに徹底して応えている点です。月単位の定期利用だけでなく、1時間単位での利用も可能とし、料金も低廉（1時間350円～）に設定。これにより、急な用事や少しだけ休息を取りたいといった保護者の切実なニーズにきめ細かく対応し、子育て負担の軽減に直接的に貢献しています。
  • 客観的根拠：
    • 3歳未満の未就園児を主な対象とし、利用しやすい料金設定と柔軟な利用形態を提供することで、潜在的な保育ニーズを効果的に吸収しています。このモデルは、特に待機児童問題が深刻な都市部において、既存施設の空きスペース活用策として応用可能性が高いと考えられます。
      • （出典）保育is「【2024年最新】こども誰でも通園制度とは？全国の自治体の取り組み事例も紹介」2024年 ⁴¹

参考資料［エビデンス検索用］

• こども家庭庁
  • 「令和7年版 こども白書」令和7年 ⁴²
  • 「保育所等関連状況取りまとめ」各年度 ⁴³
  • 「認定こども園に関する状況について」各年度 ¹⁹
  • 「こども誰でも通園制度（仮称）の本格実施を見据えた試行的事業の実施状況について（最終報告）」令和6年 ³⁷
  • 「処遇改善等加算Ⅱに係る研修受講状況等の調査結果について」2023年 ³⁵
• 文部科学省
  • 「学校基本調査」各年度 ²⁰
  • 「幼児教育・保育の無償化後の利用状況等に関する調査研究」令和5年 ³⁴
  • 「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議報告書」平成22年 ⁵
• 東京都
  • 福祉局「都内の保育サービスの状況について」各年度 ²³
• 特別区
  • 練馬区「保育所等利用待機児童数ゼロ “４年連続”達成」令和6年 ¹⁵
  • 特別区長会事務局「保育の質の確保・向上に向けた特別区の現状と課題」令和4年 ²⁶
• その他-(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/menubook/2022_summer/0041.html) 29
  • 日本総合研究所「幼保連携型認定こども園における評価に関する調査研究 報告書」2023年 ³³
  • ベネッセ教育総合研究所「園長の専門性とリーダーシップに関する調査 2017」2018年 ³²

まとめ

　東京都特別区における幼稚園・保育所・認定こども園の連携強化は、単なる施設間の協力に留まらず、質の高い教育・保育の機会均等と、多様化する保護者ニーズへの的確な対応を実現するための根幹的な政策です。データが示す通り、全国的な待機児童減少傾向とは裏腹に、都心部では依然として深刻な需給ミスマッチが存在し、その課題は「人材不足」「縦割り行政の弊害」「複雑な情報・手続き」に集約されます。これらの複合的な課題を解決するためには、「人材育成プラットフォーム」「デジタル情報基盤」「地域子育て拠点化」という3つの柱を統合的に推進し、全てのこどもたちが健やかに育つ社会基盤を再構築することが不可欠です。
　本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
　引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

行政情報ポータル

あらゆる行政情報を分野別に構造化

行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の３つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。