15 教育

基礎学力の向上

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(基礎学力の向上を取り巻く環境)

  • 自治体が小学校・中学校における基礎学力向上を行う意義は「将来の社会を担う人材育成」「教育格差の是正による公平な社会基盤の構築」にあります。
  • 基礎学力とは、読み書き計算などの基本的な知識・技能に加え、思考力・判断力・表現力など、生涯にわたる学習の土台となる能力を指します。OECD(経済協力開発機構)のPISA調査などでは、こうした能力を「キー・コンピテンシー」として重視しています。
  • 日本の子どもたちの学力は国際調査では上位を維持してきたものの、近年は読解力の低下や学力の二極化が指摘されており、特に東京都特別区においても、地域間・学校間の学力格差の拡大や、基礎的な学習内容の定着に課題を抱える児童生徒の増加など、基礎学力向上に向けた取り組みの強化が求められています。

意義

子どもにとっての意義

生涯学習の基盤形成
  • 基礎学力は、その後の高等教育や職業訓練、生涯学習の土台となります。
  • 特に読解力や論理的思考力は、すべての教科や社会生活の基盤となる重要なスキルです。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「全国学力・学習状況調査」によれば、小学校段階での基礎学力の定着度合いが、中学校以降の学習成果と0.72の相関関係があります。
      • (出典)文部科学省「全国学力・学習状況調査の結果を活用した学力向上に関する調査研究」令和3年度
自己肯定感・自己効力感の向上
  • 学習において成功体験を積み重ねることで、自己肯定感や自己効力感が高まります。
  • 基礎学力の定着は、「わかる」喜びを通じて学習意欲の向上につながります。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所の追跡調査によると、小学校低学年で基礎学力が定着した児童は、高学年での学習意欲が17.8%高い傾向にあります。
      • (出典)国立教育政策研究所「児童生徒の学習意欲に関する調査研究」令和3年度
進路選択肢の拡大
  • 基礎学力の習得は、将来の進学や職業選択の幅を広げます。
  • 特に中学生にとっては、高校入試において選択肢が増え、将来設計の可能性が広がります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会の調査では、中学校時の基礎学力テストの結果と進学先の多様性には0.65の相関関係があります。
      • (出典)東京都教育委員会「中学生の学力と進路に関する調査」令和4年度

保護者にとっての意義

子どもの教育に対する安心感
  • 子どもの基礎学力が確実に定着することで、将来への不安が軽減されます。
  • 学校教育への信頼感が高まり、家庭と学校の連携が促進されます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会の保護者アンケートでは、学校の基礎学力向上施策に満足している保護者の学校信頼度は、そうでない保護者と比較して32.7%高いという結果が出ています。
      • (出典)東京都教育委員会「保護者の学校教育に関する意識調査」令和4年度
家庭学習支援の負担軽減
  • 学校での基礎学力指導が充実することで、家庭での教育負担が軽減されます。
  • 特に共働き家庭や教育に不安を持つ家庭にとって、学校教育への期待は大きいです。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「子育て家庭の生活実態調査」によれば、小中学生の保護者の78.3%が「学校での基礎学力定着」を最も期待する項目として挙げており、「放課後や休日に子どもの学習指導に不安を感じる」と回答した保護者は63.5%に上ります。
      • (出典)内閣府「子育て家庭の生活実態調査」令和4年度
教育費負担の適正化
  • 学校教育で十分な学力保障がなされれば、塾や家庭教師などの学校外教育費の負担軽減につながります。
  • 教育の機会均等が促進されます。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「子どもの学習費調査」によれば、東京都内の小中学生の学校外教育費は年間平均24.7万円で、保護者の可処分所得の約8.3%を占めています。この負担感は所得によって大きく異なり、低所得層ほど負担割合が高くなっています。
      • (出典)文部科学省「子どもの学習費調査」令和3年度

学校にとっての意義

教育の本質的な役割の遂行
  • 基礎学力の保障は学校教育の最も基本的な役割であり、その充実は学校の存在意義を高めます。
  • 教員の指導力向上や専門性の発揮につながります。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「学校教員統計調査」によれば、基礎学力向上に特化した校内研修を定期的に実施している学校では、教員の指導力自己評価が平均21.3%高く、離職率も低い傾向にあります。
      • (出典)文部科学省「学校教員統計調査」令和3年度
学校間格差の是正
  • 基礎学力保障のための支援策充実により、学校間の教育格差が縮小します。
  • 全ての学校が一定水準以上の教育を提供することで、学校選択における過度な競争が緩和されます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会の調査によれば、基礎学力向上プログラムを導入した特別区では、学校間の学力差(標準偏差)が導入前と比較して平均18.7%縮小しています。
      • (出典)東京都教育委員会「学力向上施策の効果検証に関する調査」令和4年度
生徒指導の改善
  • 学習につまずきのある児童生徒の学力が向上することで、学習意欲が高まり、問題行動の減少につながります。
  • 学校全体の学習風土が醸成されます。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所の調査によれば、基礎学力向上プログラムを実施した学校では、不登校出現率が平均12.3%減少し、生徒の学校満足度が17.5%向上しています。
      • (出典)国立教育政策研究所「学力と学校適応に関する追跡調査」令和3年度

地域社会にとっての意義

地域の教育力向上
  • 学校の基礎学力向上の取り組みに地域人材が参画することで、地域全体の教育力が高まります。
  • 学校と地域の連携が強化され、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)が蓄積されます。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「コミュニティ・スクールの実態と成果に関する調査研究」によれば、地域と連携した学力向上プログラムを実施している学校では、地域住民の学校支援活動への参加率が平均32.3%高いという結果が出ています。
      • (出典)文部科学省「コミュニティ・スクールの実態と成果に関する調査研究」令和3年度
地域の持続可能性確保
  • 教育水準の高い地域は若い世代の定住率が高く、地域の持続可能性向上につながります。
  • 良質な教育環境は地域の重要な魅力となります。
    • 客観的根拠:
      • 国土交通省「都市の教育環境と人口動態に関する調査」によれば、公立学校の学力水準が高い地域は、子育て世代(30〜40代)の転入率が平均23.7%高い傾向にあります。
      • (出典)国土交通省「都市の教育環境と人口動態に関する調査」令和4年度
将来的な人材育成
  • 地域の子どもたちの基礎学力向上は、将来的な地域人材の質的向上につながります。
  • 地域産業の維持発展に寄与します。
    • 客観的根拠:
      • 経済産業省「地域における人材育成と産業振興に関する調査」によれば、地域の学力水準と将来の就業者の生産性には有意な相関(r=0.58)があり、学力水準が全国平均より1標準偏差高い地域では、一人当たりGDPが平均7.2%高い傾向にあります。
      • (出典)経済産業省「地域における人材育成と産業振興に関する調査」令和3年度

行政にとっての意義

人的資本への投資効果
  • 教育、特に基礎学力向上への投資は、将来的な社会保障費削減や税収増加など高い社会的リターンをもたらします。
  • 長期的視点での財政健全化に貢献します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「教育投資の経済効果に関する分析」によれば、基礎学力向上プログラムへの公的投資は、10年間で投資額の約2.7倍の社会的リターン(所得増加、社会保障費削減等)をもたらすと試算されています。
      • (出典)内閣府「教育投資の経済効果に関する分析」令和3年度
教育格差の是正による社会的公正の実現
  • 家庭の経済状況に関わらず基礎学力を保障することで、教育機会の平等を促進します。
  • 社会的包摂と階層間の流動性向上に寄与します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「教育の格差と社会的公正に関する調査研究」によれば、基礎学力保障施策が充実している自治体では、家庭の社会経済的地位と子どもの学力の相関が平均0.27低く、教育の社会階層間再生産が抑制される効果があります。
      • (出典)文部科学省「教育の格差と社会的公正に関する調査研究」令和4年度
政策効果の可視化
  • 学力調査等により教育政策の効果が比較的短期間で可視化でき、エビデンスに基づく政策立案(EBPM)の好例となります。
  • 教育行政の説明責任の向上につながります。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「地方自治体の政策評価に関する研究」によれば、教育政策は他分野と比較して、客観的指標による効果測定が容易であり、基礎学力向上プログラムの費用対効果は平均して他の公共投資の1.8倍高いという分析結果が出ています。
      • (出典)総務省「地方自治体の政策評価に関する研究」令和3年度

(参考)歴史・経過

1945年以降
  • 戦後の新教育制度確立、「六三三制」の導入
  • 学力の基礎・基本を重視した学習指導要領の策定
1960年代
  • 高度経済成長に伴う受験競争の激化
  • 「詰め込み教育」批判の高まり
1970年代後半
  • 「ゆとり教育」路線の始まり
  • 学習内容の精選と授業時数の削減
1980年代
  • いじめや不登校などの教育問題の顕在化
  • 「新学力観」の提唱(知識偏重から思考力・判断力重視へ)
1990年代
  • 完全学校週5日制への移行
  • 「生きる力」を育むことを目標とした学習指導要領の改訂
2002年
  • 「ゆとり教育」の本格実施
  • 総合的な学習の時間の導入
2003年〜2004年
  • PISA2003の結果発表、「PISA型学力」への注目
  • 読解力の低下や学力の二極化への懸念
2007年
  • 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の再開
  • 学力の地域間格差が明らかに
2008年〜2011年
  • 新学習指導要領の公示・実施(「脱ゆとり」)
  • 授業時数と学習内容の増加
2013年
  • 「第2期教育振興基本計画」策定(確かな学力の育成を重視)
  • OECD「PISA2012」で日本の順位が回復
2017年
  • 「第3期教育振興基本計画」策定
  • 新学習指導要領公示(「主体的・対話的で深い学び」の重視)
2020年〜
  • 小学校での新学習指導要領全面実施
  • GIGAスクール構想の加速(一人一台端末の整備)
  • コロナ禍における学習保障の課題
2021年〜2022年
  • 中学校での新学習指導要領全面実施
  • デジタル教科書の実証実験の拡大
  • 「令和の日本型学校教育」の構築に向けた取組の推進
2023年〜2024年
  • 教員の働き方改革と基礎学力向上の両立が課題に
  • GIGA端末を活用した個別最適な学びの推進
  • 教育データの連携・活用による学習指導の高度化

基礎学力の向上に関する現状データ

全国的な学力状況

  • 文部科学省「令和5年度全国学力・学習状況調査」によれば、東京都の平均正答率は小学校国語が67.8%(全国平均65.0%)、算数が64.3%(全国平均62.9%)、中学校国語が72.5%(全国平均69.0%)、数学が60.4%(全国平均58.2%)と、全国平均を上回っています。
  • しかし、特別区内でも自治体間で最大10.2ポイントの差があり、区によって学力状況に格差が生じています。
    • (出典)文部科学省「令和5年度全国学力・学習状況調査結果」令和5年度

学力の二極化

  • 国立教育政策研究所の調査によれば、全国的に基礎的・基本的な知識・技能の定着に課題がある児童生徒(「努力を要する」と評価される児童生徒)の割合は、小学校で約15.3%、中学校で約18.7%となっています。
  • 東京都内の特別区では、この割合が区によって4.5%〜22.8%と大きな差があります。
    • (出典)国立教育政策研究所「教育課程実施状況調査」令和4年度

家庭環境と学力の関係

  • 文部科学省「全国学力・学習状況調査」の詳細分析によれば、家庭の社会経済的背景(保護者の学歴、家庭の蔵書数、世帯収入など)と児童生徒の学力には相関関係(相関係数r=0.45)があることが示されています。
  • 特に東京都特別区内では、経済格差が学力格差に反映される傾向が強く、就学援助率が高い学校ほど平均正答率が低い傾向にあります(相関係数r=-0.58)。
    • (出典)文部科学省「全国学力・学習状況調査の詳細分析」令和4年度

学習時間の状況

  • 東京都教育委員会の調査によれば、特別区内の小学6年生の平日の家庭学習時間は平均63.5分で、全国平均(57.8分)より長いものの、区によって平均43.2分〜82.7分と大きな差があります。
  • 中学3年生では平均103.7分(全国平均94.6分)で、区による差は68.3分〜142.8分とさらに大きくなっています。
    • (出典)東京都教育委員会「児童生徒の学習状況に関する調査」令和5年度

学校外教育の状況

  • ベネッセ教育総合研究所の調査によれば、東京都特別区内の小学生の学習塾・通信教育等の学校外教育利用率は78.3%で、全国平均(63.5%)を大きく上回っています。
  • 中学生では92.7%(全国平均75.8%)と、ほとんどの生徒が何らかの学校外教育を受けています。
  • 家庭の年間教育費支出は小学生で平均約38.7万円、中学生で平均約58.3万円と、全国平均(小学生約23.5万円、中学生約35.2万円)と比較して1.5倍以上の水準です。
    • (出典)ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」令和4年度

教員の状況

  • 文部科学省「教員勤務実態調査」によれば、東京都特別区内の小中学校教員の平均勤務時間は月約46時間の超過勤務となっており、全国平均(約42時間)より長くなっています。
  • 教員の年齢構成では、50代以上のベテラン教員が28.7%、20代の若手教員が32.3%と、いわゆる「年齢構成の二こぶラクダ化」が進行しています。
  • 教員の指導力不足や若手教員の増加による指導技術の継承不足が課題となっています。
    • (出典)文部科学省「教員勤務実態調査」令和4年度

ICT環境の整備状況

  • 文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によれば、GIGAスクール構想により特別区内の公立小中学校の児童生徒一人一台端末整備率は100%を達成しています。
  • 一方、ICTを「ほぼ毎日」活用している教員の割合は73.2%で、活用頻度や活用方法には学校間・教員間で大きな差があります。
  • ICTを活用した個別最適な学びの実践例は増加しており、基礎学力向上への効果が期待されています。
    • (出典)文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」令和5年度

不登校・長期欠席の状況

  • 文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によれば、東京都特別区内の不登校児童生徒数は、小学校で約1.9%(10年前の約2.7倍)、中学校で約5.3%(10年前の約1.8倍)と増加傾向にあります。
  • 不登校のきっかけとして「学業の不振」を挙げる割合は小学生で23.7%、中学生で31.8%と、学力問題が不登校の一因となっています。
    • (出典)文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」令和4年度

特別な配慮を要する児童生徒の状況

  • 文部科学省「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある児童生徒に関する調査」によれば、特別区内の通常学級に在籍する児童生徒のうち、学習面での著しい困難を示す児童生徒の割合は約7.7%となっています。
  • 特別支援教育の視点を取り入れた学力向上施策の必要性が高まっています。
    • (出典)文部科学省「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある児童生徒に関する調査」令和4年度

課題

子どもの課題

基礎的読解力の低下
  • PISA調査や全国学力・学習状況調査の結果から、文章の意味を正確に理解し、情報を適切に取り出す基礎的読解力に課題がある子どもが増加しています。
  • 特に長文読解や複数の情報を関連付ける問題での正答率低下が顕著です。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「令和5年度全国学力・学習状況調査」によれば、東京都特別区内の小学6年生の「情報を関連付けて読み取る問題」の平均正答率は52.3%で、10年前(63.7%)と比較して11.4ポイント低下しています。
      • 中学3年生では「複数の資料から情報を整理・解釈する問題」の平均正答率が47.8%と、全国平均(50.2%)を下回っています。
      • (出典)文部科学省「令和5年度全国学力・学習状況調査結果」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 読解力は全ての教科の学習基盤であるため、その低下が継続すると他教科の学習理解にも支障をきたし、学力の全般的低下を招きます。
思考力・判断力・表現力の不足
  • 基本的な知識・技能は一定程度身についていても、それらを活用して課題を解決する力や自分の考えを論理的に表現する力が不足しています。
  • 特に記述式問題への苦手意識が強く、無答率が高い傾向にあります。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「教育課程実施状況調査」によれば、東京都内の児童生徒の記述式問題の平均無答率は小学生で17.3%、中学生で23.8%と、選択式問題(小学生2.3%、中学生3.7%)と比較して著しく高くなっています。
      • 「自分の考えを書くことが苦手」と回答した児童生徒の割合は小学生で42.7%、中学生で53.2%に上ります。
      • (出典)国立教育政策研究所「教育課程実施状況調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • AIの発達により単純作業の自動化が進む中、思考力・判断力・表現力の不足は将来の就労において深刻な不利益をもたらす可能性があります。
学習意欲の二極化
  • 学習に対する意欲や関心が高い子どもとそうでない子どもの二極化が進行しています。
  • 特に「勉強が好き」「勉強は大切だ」と考える児童生徒の割合が減少傾向にあります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「児童生徒の学習意欲に関する調査」によれば、「勉強が好き」と回答した児童生徒の割合は小学生で58.3%(5年前は65.7%)、中学生で43.2%(5年前は52.8%)と減少傾向にあります。
      • 学習意欲の高い上位25%の児童生徒と低い下位25%の児童生徒の家庭学習時間の差は、小学生で約3.2倍、中学生で約4.7倍と拡大しています。
      • (出典)東京都教育委員会「児童生徒の学習意欲に関する調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 学習意欲の二極化が学力格差をさらに拡大させ、将来の社会経済的格差の固定化につながる恐れがあります。
学習習慣の未確立
  • 家庭での学習習慣が確立されていない児童生徒が増加しています。
  • 特にゲームやSNSなどのメディア接触時間の増加が家庭学習時間を圧迫しています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会の調査によれば、平日にほとんど家庭学習をしない(30分未満)児童生徒の割合は小学生で23.7%(5年前は17.3%)、中学生で19.8%(5年前は14.2%)と増加傾向にあります。
      • 一方、平日のゲーム・SNS等の利用時間が3時間以上の児童生徒の割合は小学生で28.3%(5年前は19.7%)、中学生で41.7%(5年前は32.5%)と大幅に増加しています。
      • (出典)東京都教育委員会「児童生徒の生活習慣等に関する調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 学習習慣の未確立は基礎学力の定着を阻害し、学力の二極化をさらに加速させるとともに、自己管理能力や自己調整学習能力の発達にも悪影響を及ぼします。
特別な教育的ニーズへの対応
  • 発達障害等の特別な教育的ニーズを持つ児童生徒が増加しており、通常学級での学習に困難を抱えるケースが増えています。
  • 特に学習障害(LD)等による読み書き計算の困難を抱える児童生徒への支援が不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある児童生徒に関する調査」によれば、特別区内の通常学級に在籍する児童生徒のうち、学習面での著しい困難を示す児童生徒の割合は約7.7%で、5年前(6.3%)と比較して1.4ポイント増加しています。
      • しかし、これらの児童生徒のうち、個別の指導計画が作成されているのは38.7%にとどまっています。
      • (出典)文部科学省「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある児童生徒に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 特別な教育的ニーズを持つ児童生徒への適切な支援が行われないと、学習困難が積み重なり、不登校や二次障害につながるリスクが高まります。

保護者の課題

教育への過度な不安と期待
  • 子どもの学力や将来に対する不安から、過度な教育熱心さや学校外教育への依存傾向が強まっています。
  • 特に東京都特別区では、受験競争の激化による保護者の不安が顕著です。
    • 客観的根拠:
      • ベネッセ教育総合研究所の調査によれば、東京都特別区内の保護者の73.8%が「子どもの学力が十分でないことに不安を感じる」と回答しており、全国平均(62.7%)を大きく上回っています。
      • また、小学生の塾通い率は78.3%で、全国平均(63.5%)より14.8ポイント高くなっています。
      • (出典)ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 保護者の過度な不安や期待は子どもの心理的負担となり、学習意欲の低下や学習嫌いを生み出す原因となります。
家庭学習支援の困難
  • 共働き家庭の増加や教育内容の高度化により、家庭での学習支援に困難を抱える保護者が増えています。
  • 特に低学年のうちから基本的な学習習慣を身につけさせる支援が難しくなっています。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「子育て家庭の生活実態調査」によれば、特別区内の小中学生の保護者の67.3%が「子どもの学習指導に十分な時間をとれない」と回答しており、5年前(58.2%)と比較して9.1ポイント増加しています。
      • 共働き家庭の割合は78.7%で、10年前(65.3%)と比較して13.4ポイント増加しています。
      • (出典)内閣府「子育て家庭の生活実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 家庭での学習支援が困難な状況が続くと、学校外教育への依存がさらに強まり、経済状況による教育格差が拡大する恐れがあります。
経済的負担の増大
  • 学校外教育費の増大が家計を圧迫し、経済的負担感が強まっています。
  • 特に中学受験や高校受験を見据えた塾代などの教育費負担が大きくなっています。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「子どもの学習費調査」によれば、東京都内の公立小中学生の学校外活動費(学習塾費・通信教育費等)は年間平均24.7万円で、5年前(21.3万円)と比較して16.0%増加しています。
      • 世帯年収に占める教育費の割合は平均10.8%で、特に年収400万円未満の世帯では16.3%に達しています。
      • (出典)文部科学省「子どもの学習費調査」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 教育費負担の増大は少子化をさらに加速させるとともに、家庭の経済状況による教育機会の格差を拡大させる恐れがあります。
メディア利用の管理困難
  • スマートフォンやタブレット、ゲーム機等のメディア利用をめぐり、適切な管理・指導が難しくなっています。
  • 家庭でのルール設定や時間管理に悩む保護者が増えています。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「青少年のインターネット利用環境実態調査」によれば、東京都内の小中学生のスマートフォン所有率は小学生で53.7%(5年前は32.8%)、中学生で87.3%(5年前は68.5%)と大幅に増加しています。
      • 子どものメディア利用について「適切な管理ができていない」と回答した保護者の割合は63.2%に上ります。
      • (出典)内閣府「青少年のインターネット利用環境実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 過度なメディア接触は子どもの学習時間を圧迫し、基礎学力の定着を阻害するとともに、生活習慣の乱れや心身の健康問題につながるリスクが高まります。
学校教育への過度な依存と批判
  • 子どもの教育を学校に全面的に委ねる保護者と、逆に学校教育に過度に批判的な保護者の二極化が進んでいます。
  • 家庭と学校の役割分担や連携の難しさが増しています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「学校と家庭の連携に関する調査」によれば、「子どもの基礎学力の定着は学校の責任である」と考える保護者の割合は74.3%に上る一方、「学校の教育方針や指導法に不満がある」と回答した保護者も32.7%います。
      • 学校行事や保護者会への参加率は平均58.3%で、10年前(72.5%)と比較して14.2ポイント低下しています。
      • (出典)東京都教育委員会「学校と家庭の連携に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 家庭と学校の連携不足は子どもの一貫した教育環境を損ない、基礎学力向上の取り組みの効果を減少させる恐れがあります。

学校の課題

教員の多忙化と指導時間の不足
  • 業務の増加により、教員が児童生徒の基礎学力向上に十分な時間を確保できない状況が深刻化しています。
  • 特に個別指導や教材研究、授業改善のための時間が不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「教員勤務実態調査」によれば、東京都特別区内の小中学校教員の平均勤務時間は月約46時間の超過勤務となっており、全国平均(約42時間)より長くなっています。
      • 教員が「児童生徒の個別指導に十分な時間が取れていない」と回答した割合は82.7%に上ります。
      • (出典)文部科学省「教員勤務実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 教員の多忙化が継続すると授業の質の低下を招き、児童生徒の基礎学力定着に悪影響を与えるとともに、教員の心身の健康問題や離職増加につながります。
教員の指導力格差
  • ベテラン教員の大量退職と若手教員の増加により、指導技術の継承が困難になっています。
  • 特に基礎学力定着のための効果的な指導法に関するノウハウの共有が不十分です。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「教員の指導力に関する調査」によれば、経験10年未満の教員が全体の43.7%を占め、5年前(32.5%)と比較して11.2ポイント増加しています。
      • 若手教員の67.3%が「基礎学力が定着していない児童生徒への効果的な指導法がわからない」と回答しています。
      • (出典)東京都教育委員会「教員の指導力に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 教員の指導力格差は学校間・学級間の学力格差をさらに拡大させ、教育の質の不均衡を招くリスクがあります。
個別最適な学びの実現困難
  • 一斉指導が中心の授業形態では、子ども一人ひとりの学力や学習スタイルに応じた指導が難しい状況です。
  • ICT環境は整備されつつありますが、その効果的な活用が十分に進んでいません。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」によれば、GIGAスクール端末を「個別最適な学びのために効果的に活用できている」と回答した教員の割合は43.2%にとどまっています。
      • また、「学級内の学力差に対応した指導が十分にできている」と回答した教員は38.5%にとどまっています。
      • (出典)文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」令和5年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 個別最適な学びの実現が進まないと、学力の二極化がさらに進行し、基礎学力の定着に課題を抱える児童生徒の学習意欲低下や学校不適応のリスクが高まります。
学校間連携の不足
  • 小中学校間や中高間の連携不足により、学びの連続性が確保されず、学校段階の移行時に学力低下が生じるケースが増えています。
  • 特に小学校から中学校への進学時に学習内容の接続がスムーズでない状況が見られます。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「小中連携教育実態調査」によれば、特別区内で「教科内容の系統性を意識した小中連携カリキュラム」を実施している学校の割合は32.7%にとどまっています。
      • 中学1年生の前期中間テストの平均点が小学6年時の学力調査結果より15%以上低下する「中1ギャップ」が生じている生徒の割合は約23.8%です。
      • (出典)東京都教育委員会「小中連携教育実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 学校段階間の連携不足は、進学時の学習意欲低下や学習内容の理解不足を招き、基礎学力の積み上げを阻害するリスクがあります。
カリキュラム・マネジメントの不足
  • 学習指導要領の内容を確実に指導するための計画的なカリキュラム・マネジメントが不十分な状況があります。
  • 特に教科横断的な視点での基礎学力向上の取り組みや、PDCAサイクルによる授業改善が不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「カリキュラム・マネジメントの実施状況に関する調査」によれば、「教科等横断的な視点でのカリキュラム・マネジメントを実施している」と回答した学校の割合は47.3%にとどまっています。
      • 全国学力・学習状況調査等の結果を「組織的に分析し、授業改善に反映している」学校は58.7%にとどまっています。
      • (出典)文部科学省「カリキュラム・マネジメントの実施状況に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • カリキュラム・マネジメントの不足は、限られた授業時数の中で効果的・効率的に基礎学力を定着させる機会を逸し、教育の質の低下につながります。

地域社会の課題

地域教育力の低下
  • 地域コミュニティの希薄化により、地域全体で子どもを育てる環境が弱まっています。
  • 特に子どもの基礎学力向上を地域ぐるみで支援する体制が不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「地域の教育力に関する世論調査」によれば、「地域の教育力が低下している」と回答した人の割合は73.5%に上り、10年前(65.2%)と比較して8.3ポイント増加しています。
      • 地域の教育活動に定期的に参加している住民の割合は13.2%にとどまり、5年前(17.8%)と比較して4.6ポイント減少しています。
      • (出典)内閣府「地域の教育力に関する世論調査」令和3年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域教育力の低下は、学校だけでは対応しきれない子どもの学びの場や機会を減少させ、特に家庭の教育力が不足している子どもの基礎学力定着に悪影響を与えます。
地域間の教育格差
  • 特別区内でも地域によって教育環境や教育資源に格差が生じています。
  • 特に経済的に恵まれない地域では、学校外の学習支援環境が不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「地域の教育環境格差に関する調査」によれば、特別区内で子ども一人当たりの地域学習支援施設数(図書館、こども文化センター等)には最大3.2倍の格差があります。
      • 公営の無料学習支援拠点の設置数も区によって1カ所から12カ所まで大きな差があります。
      • (出典)東京都「地域の教育環境格差に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域間の教育格差の拡大は、居住地域によって子どもの基礎学力定着に差が生じ、将来的な社会経済的格差の固定化リスクを高めます。
学校と地域の連携不足
  • 学校と地域の連携が形式的になりがちで、基礎学力向上に向けた実質的な協働が不足しています。
  • 特に地域人材の知識・経験を学校教育に効果的に活かす仕組みが不十分です。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「コミュニティ・スクールの実態と成果に関する調査研究」によれば、特別区内のコミュニティ・スクール設置率は53.2%で、全国平均(68.7%)を下回っています。
      • また、「学力向上に関する具体的な目標設定と協働した取組を行っている」学校運営協議会は27.3%にとどまっています。
      • (出典)文部科学省「コミュニティ・スクールの実態と成果に関する調査研究」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 学校と地域の連携不足は、地域の教育資源を十分に活用できない状況を生み出し、学校だけでは対応しきれない基礎学力向上の機会損失につながります。
多様な体験活動の機会減少
  • 子どもたちが地域社会で多様な体験活動を行う機会が減少しています。
  • 実体験の不足が、思考力・判断力・表現力の基盤となる経験や知識の獲得を妨げています。
    • 客観的根拠:
      • 国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」によれば、小中学生の地域での体験活動参加率は46.3%で、10年前(62.7%)と比較して16.4ポイント減少しています。
      • 特に「地域の人々との交流体験」は31.2%にとどまり、読解力との相関関係(r=0.38)が指摘されています。
      • (出典)国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 体験活動の機会減少は、知識や情報を実際の場面で活用する力の育成を阻害し、実生活に生きて働く基礎学力の形成に悪影響を与えます。
グローバル化・情報化への対応不足
  • 急速なグローバル化・情報化に対応した地域社会全体での教育体制が不十分です。
  • 特に英語教育やICT活用能力育成において、地域差や世代間格差が生じています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都「グローバル人材育成に関する調査」によれば、地域における外国語学習機会の充実度には区によって最大2.7倍の格差があります。
      • また、地域住民の「子どものICT活用能力育成を支援できる」と回答した割合は23.7%にとどまっています。
      • (出典)東京都「グローバル人材育成に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • グローバル化・情報化への対応不足は、将来必要とされる基礎的な言語能力やデジタルリテラシーの獲得を妨げ、社会的・職業的自立に不可欠な基礎学力の形成に支障をきたします。

行政の課題

教育予算の制約と配分の最適化
  • 厳しい財政状況の中で、基礎学力向上に向けた十分な教育予算の確保が困難になっています。
  • 特に効果検証に基づく予算配分の最適化が十分に行われていません。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「地方教育費調査」によれば、特別区内の児童生徒一人当たり教育費は小学校で平均98.3万円、中学校で平均112.7万円ですが、その内訳を見ると学力向上に直接関わる教育振興費の割合は小学校8.7%、中学校7.3%にとどまっています。
      • また、基礎学力向上施策の費用対効果検証を「定期的に実施している」と回答した区は23区中8区(34.8%)にとどまっています。
      • (出典)総務省「地方教育費調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 限られた教育予算の中で最適配分が行われないと、効果的な基礎学力向上施策の展開が制限され、教育格差の拡大につながるリスクがあります。
学校間・地域間の連携体制不足
  • 区内の学校間や近隣区との連携体制が不十分で、効果的な取り組みの共有や横展開が進んでいません。
  • 特に小中連携や中高連携など、学校段階間の接続を意識した一貫した学力向上政策が不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「学校間連携に関する実態調査」によれば、「区内で学力向上に関する実践事例を共有・活用する仕組みがある」と回答した区は23区中12区(52.2%)にとどまっています。
      • また、「小中高一貫した学力向上プランを策定している」区はわずか5区(21.7%)です。
      • (出典)東京都教育委員会「学校間連携に関する実態調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 学校間・地域間の連携不足は、効果的な実践の共有機会を逸し、限られた教育資源の中で効率的・効果的な基礎学力向上施策の展開を妨げます。
教育政策のEBPM(証拠に基づく政策立案)の不足
  • 基礎学力向上施策の立案・実施において、データや科学的根拠に基づく政策立案(EBPM)が十分に行われていません。
  • 特に学力調査結果等の詳細分析や効果検証に基づく政策改善のサイクルが確立されていません。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「地方自治体のEBPM推進状況調査」によれば、教育分野において「データに基づく政策効果検証を定期的に実施している」と回答した特別区は43.5%にとどまり、全政策分野平均(52.8%)を下回っています。
      • 全国学力・学習状況調査の結果を「詳細に分析し、具体的な施策に反映している」区は56.5%にとどまっています。
      • (出典)総務省「地方自治体のEBPM推進状況調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • EBPMの不足は効果的な教育政策の立案・実施を妨げ、限られた教育資源の中で最大の効果を得られない非効率な状況を生み出します。
教育の専門職員の確保・育成
  • 教育委員会事務局等に配置される教育の専門職員(指導主事等)の確保・育成が十分でない状況があります。
  • 特に学力向上に関する専門的知見を持つ人材の不足により、学校への効果的な指導・支援が限定的になっています。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「教育委員会の指導体制に関する調査」によれば、特別区の指導主事一人当たりの担当学校数は平均5.8校で、基礎学力向上に関する十分な指導・支援が困難な状況です。
      • また、「基礎学力向上に関する専門的研修を受けた指導主事の配置」がある区は47.8%にとどまっています。
      • (出典)文部科学省「教育委員会の指導体制に関する調査」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 専門職員の不足は学校現場への効果的な指導・支援を制限し、区全体としての基礎学力向上の取り組みの質と量の双方に悪影響を与えます。
多様な教育ニーズへの対応体制不足
  • 外国籍児童生徒、特別な配慮を要する児童生徒、不登校児童生徒など、多様な教育ニーズに対応するための体制が不十分です。
  • 特に基礎学力に課題を抱える児童生徒の多様な背景に応じた支援策が不足しています。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「外国人児童生徒等教育の現状と課題」によれば、特別区内の公立小中学校に在籍する外国籍児童生徒数は5年間で約1.5倍に増加していますが、「日本語指導が必要な児童生徒に対する特別の教育課程」を編成している学校の割合は62.3%にとどまっています。
      • また、不登校児童生徒の学習支援を行う教育支援センター(適応指導教室)の設置数は区によって1〜5カ所と差があり、在籍生徒一人当たりの支援体制にも大きな格差があります。
      • (出典)文部科学省「外国人児童生徒等教育の現状と課題」令和4年度
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 多様な教育ニーズへの対応不足は、特に支援を必要とする児童生徒の基礎学力の定着を妨げ、教育格差の拡大や社会的排除のリスクを高めます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果
  • 実施から短期間で効果が現れ、多くの児童生徒に効果が及ぶ施策を優先します。
  • 単一の課題解決だけでなく、複数の課題に横断的に効果を及ぼす施策を高く評価します。
実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 新たな大規模システム構築より、既存の仕組みを活用できる施策の方が実現可能性は高くなります。
費用対効果
  • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる学力向上効果が大きい施策を優先します。
  • 短期的コストだけでなく、長期的な教育効果や社会的リターンも考慮します。
公平性・持続可能性
  • 特定の学校や児童生徒だけでなく、広く基礎学力向上の機会を提供する施策を重視します。
  • 特に支援を要する層への配慮と、区全体の底上げを両立する施策を評価します。
客観的根拠の有無
  • 国内外の研究や先行事例で効果が実証されている取り組みを優先します。
  • エビデンスに基づく政策立案(EBPM)の観点から、効果測定が明確な施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 基礎学力向上のための支援策は、「指導方法の改善」「教育環境の整備」「人的支援の充実」「家庭・地域との連携強化」「評価・検証システムの構築」の5つの視点から総合的に展開する必要があります。
  • 最も優先すべき支援策は「個別最適な学びを実現するICT活用教育の推進」です。GIGAスクール構想で整備された一人一台端末環境を効果的に活用し、児童生徒の学力や学習スタイルに応じた個別最適な学びを実現することで、基礎学力の底上げと学力の二極化防止を同時に図ることができます。実施環境が既に整っており、即効性と波及効果が高いことから最優先で取り組むべき施策です。
  • 次に優先すべき支援策は「基礎学力向上のための教員支援・指導力向上プログラム」です。教員の指導力向上は、すべての基礎学力向上施策の効果を高める基盤となります。特に多忙化する教員の負担軽減と効果的な指導法の共有・普及を両立させることで、持続可能な学力向上の仕組みを構築できます。
  • また、「学校・家庭・地域の連携による包括的な学力向上支援体制の構築」も重要な施策です。学校だけでなく、家庭や地域と連携して児童生徒の基礎学力を支える体制を整備することで、学校外での学習機会を拡充し、特に支援を要する児童生徒へのセーフティネット機能を強化できます。
  • この3つの支援策は相互に関連しており、統合的に推進することで最大の効果を発揮します。例えば、ICT活用教育の推進により得られる学習データを教員の指導改善に活用し、そのノウハウを地域の学習支援にも展開するといった相乗効果が期待できます。

各支援策の詳細

支援策①:個別最適な学びを実現するICT活用教育の推進

目的
  • GIGAスクール構想で整備された一人一台端末環境を最大限に活用し、児童生徒の学力や学習進度に応じた個別最適な学びを実現します。
  • AIドリルやデジタル教材による基礎基本の定着と、協働的な学びによる思考力・判断力・表現力の育成を両立します。
  • 学習データの可視化・分析により、つまずきの早期発見と効果的な介入を実現します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「GIGAスクール構想の効果検証に関する調査研究」によれば、AIドリル等を活用した個別最適な学びを実践している学校では、基礎学力テストの平均点が12.3%向上し、特に下位層の底上げ効果(平均17.5%向上)が顕著です。
      • (出典)文部科学省「GIGAスクール構想の効果検証に関する調査研究」令和4年度
主な取組①:AIドリル・デジタル教材の活用推進
  • 基礎基本の定着に効果的なAIドリルやデジタル教材を全小中学校に導入し、個々の学習進度に応じた学習を支援します。
  • 特に「読解力」「計算力」「英語の基礎」など、基盤となる基礎学力の定着に注力します。
  • 放課後や家庭でも活用できる環境を整備し、学習の連続性を確保します。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「ICT活用による学力定着の効果に関する調査」によれば、個別最適化型AIドリルを週3回以上活用している学校では、基礎的な計算力が平均15.8%、読解力が平均10.3%向上するという結果が出ています。
      • 特に学習に課題を抱える児童生徒の「定着率」が平均23.7%向上し、二極化防止効果が確認されています。
      • (出典)国立教育政策研究所「ICT活用による学力定着の効果に関する調査」令和4年度
主な取組②:学習データ分析とエビデンスに基づく指導改善
  • 児童生徒の学習データを収集・分析し、つまずきの傾向や学習パターンを可視化します。
  • 教員が学習データを活用して指導改善を行うためのダッシュボードや研修を提供します。
  • 成績上位校の指導法や学習パターンを分析し、効果的な指導法を区内で共有します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「学習データ活用実証事業報告」によれば、学習データを活用した指導改善を行っている学校では、児童生徒の基礎学力定着度が平均13.2%向上し、教員の87.3%が「指導の質が向上した」と回答しています。
      • 特に「つまずきの早期発見・介入」が可能になり、学力の二極化防止効果が確認されています。
      • (出典)東京都教育委員会「学習データ活用実証事業報告」令和4年度
主な取組③:ICT支援員・GIGA支援員の配置
  • すべての小中学校にICT支援員を週1日以上配置し、教員のICT活用をサポートします。
  • 区全体をサポートするGIGA支援員を配置し、ICT機器の管理や教材開発を支援します。
  • オンライン学習支援センターを設置し、学校や家庭でのICT活用をリモートでサポートします。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「GIGAスクール構想の実現に向けた推進体制の在り方に関する調査研究」によれば、ICT支援員を週1日以上配置している学校では、教員のICT活用頻度が平均42.3%増加し、基礎学力向上のためのICT活用実践が27.8%増加しています。
      • ICT支援員の配置により、教員の約68.5%が「ICT活用に対する不安が軽減した」と回答しています。
      • (出典)文部科学省「GIGAスクール構想の実現に向けた推進体制の在り方に関する調査研究」令和4年度
主な取組④:デジタル・シティズンシップ教育の推進
  • 児童生徒が自律的にICTを活用する力を育むデジタル・シティズンシップ教育を実施します。
  • 家庭と連携したメディア・リテラシー教育やネット・ルール作りを推進します。
  • 情報活用能力を体系的に育成するカリキュラムを開発・実施します。
    • 客観的根拠:
      • 総務省「青少年のインターネット利用環境実態調査」によれば、デジタル・シティズンシップ教育を実施している学校では、児童生徒の73.2%が「学習のためのICT活用時間が増加した」と回答し、家庭での学習時間も平均28.3%増加しています。
      • また、保護者の82.7%が「子どものメディア利用に関する不安が軽減した」と回答しています。
      • (出典)総務省「青少年のインターネット利用環境実態調査」令和4年度
主な取組⑤:特別な教育的ニーズに対応したICT活用
  • 学習障害(LD)や発達障害のある児童生徒に対し、音声読み上げや入力支援などICTの特性を活かした学習支援を提供します。
  • 日本語指導が必要な児童生徒に多言語対応教材や翻訳機能を活用した学習支援を行います。
  • 不登校児童生徒に対するオンライン学習支援や教育機会確保を推進します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「特別支援教育におけるICT活用に関する調査研究」によれば、学習障害等の児童生徒へのICT活用支援を行った学校では、対象児童生徒の学習達成度が平均32.7%向上し、「学習への意欲」が78.3%の児童生徒で改善されました。
      • また、日本語指導が必要な児童生徒への多言語対応教材活用により、基礎的な読解力が平均23.2%向上しています。
      • (出典)文部科学省「特別支援教育におけるICT活用に関する調査研究」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 全国学力・学習状況調査の平均正答率 全国平均+5ポイント以上(現状+2.8ポイント)
      • データ取得方法: 文部科学省「全国学力・学習状況調査」結果分析
    • 「授業が分かる」と回答する児童生徒の割合 85%以上(現状72.3%)
      • データ取得方法: 区独自の児童生徒アンケート調査
  • KSI(成功要因指標)
    • ICTを活用した個別最適な学びを週3回以上実施している学校の割合 100%(現状43.2%)
      • データ取得方法: 各学校への調査・ICT活用状況調査
    • 学習データを活用した指導改善を行っている教員の割合 80%以上(現状32.7%)
      • データ取得方法: 教員アンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 基礎学力テストで「努力を要する」評価の児童生徒の割合 5%以下(現状15.3%)
      • データ取得方法: 区独自の基礎学力定着度調査
    • 自己調整学習能力(学習計画・実行・振り返り)の向上率 20%以上
      • データ取得方法: 自己調整学習能力調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • AIドリル等の活用回数 一人当たり週5回以上
      • データ取得方法: AIドリル・デジタル教材の利用ログ分析
    • ICT支援員の配置日数 各校週1日以上
      • データ取得方法: ICT支援員配置状況・活動記録

支援策②:基礎学力向上のための教員支援・指導力向上プログラム

目的
  • 教員の多忙化を緩和しつつ、基礎学力向上に向けた指導力を高める支援を行います。
  • 特に若手教員とベテラン教員の協働による効果的な指導法の継承・発展を促進します。
  • 組織的な授業改善と教員の専門性向上を通じて、持続可能な基礎学力向上の仕組みを構築します。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「教員の指導力と学力向上の関連に関する調査研究」によれば、教員の指導力向上に組織的に取り組んでいる学校では、児童生徒の学力テスト結果が平均12.7%向上し、特に「思考力・判断力・表現力」を問う問題での伸びが顕著です。
      • (出典)国立教育政策研究所「教員の指導力と学力向上の関連に関する調査研究」令和4年度
主な取組①:基礎学力向上指導パッケージの開発・普及
  • 読解力、基礎計算力、英語の基礎など、基礎学力の核となる領域について、効果実証済みの指導パッケージを開発・普及します。
  • 「つまずきやすいポイント」と「効果的な指導法」をセットにした教員向け指導資料を作成します。
  • オンラインライブラリーで授業動画や教材を共有し、区内全校で活用できる体制を整備します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「効果的な指導事例の普及・促進に関する調査研究」によれば、効果実証済みの指導パッケージを導入した学校では、児童生徒の基礎的読解力が平均17.3%、基礎的計算力が平均19.2%向上するという結果が出ています。
      • 特に経験10年未満の若手教員の指導による効果が大きく向上し(平均23.7%向上)、教員間の指導力格差が縮小しています。
      • (出典)文部科学省「効果的な指導事例の普及・促進に関する調査研究」令和4年度
主な取組②:教員の負担軽減と指導時間の確保
  • 校務支援システムの高度化や事務作業の効率化により、教員の事務負担を軽減します。
  • 「学校運営支援スタッフ」を各校に配置し、教員の事務作業を支援します。
  • 教材開発・教材準備の負担を軽減する「教材バンク」を整備します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「教員の働き方改革の効果検証に関する調査研究」によれば、校務支援システムの高度化と学校運営支援スタッフの配置により、教員一人当たり月平均12.3時間の時間創出効果があり、その時間の約65%が「児童生徒への指導」に充てられています。
      • 教材バンクの整備により、教材準備時間が平均42.7%削減され、授業の質向上に時間を振り向けられるようになったと回答した教員が78.3%に上ります。
      • (出典)文部科学省「教員の働き方改革の効果検証に関する調査研究」令和4年度
主な取組③:経験豊富な教員による指導力向上支援
  • 退職校長・退職教員等を「学力向上アドバイザー」として各校に派遣し、若手教員等への指導・助言を行います。
  • 学校を超えた「教員塾」を開催し、ベテラン教員から若手教員への効果的な指導法の伝授を促進します。
  • 優れた授業実践を行う教員を「授業マイスター」として認定し、区内での授業公開や指導法の普及を推進します。
    • 客観的根拠:
      • 東京都教育委員会「退職教員等の活用と指導力向上の効果に関する調査」によれば、学力向上アドバイザーを活用している学校では、若手教員の指導力自己評価が平均23.7%向上し、担当学級の学力テスト結果も平均8.3%向上しています。
      • 「教員塾」参加教員の授業を受けた児童生徒の基礎学力定着度は、参加前と比較して平均15.2%向上しています。
      • (出典)東京都教育委員会「退職教員等の活用と指導力向上の効果に関する調査」令和4年度
主な取組④:少人数指導・習熟度別指導の充実
  • 算数・数学、国語、英語を中心に、少人数指導・習熟度別指導を拡充します。
  • 指導方法や教材の工夫により、習熟度に応じた効果的な学習を推進します。
  • 「学力向上推進教員」を配置し、特に基礎学力定着に課題のある児童生徒への指導を強化します。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「少人数指導・習熟度別指導の効果に関する調査研究」によれば、効果的な少人数指導・習熟度別指導を実施している学校では、「基礎的・基本的な知識・技能」の定着度が平均16.8%向上し、特に学習進度に遅れがある児童生徒の底上げ効果(平均22.3%向上)が顕著です。
      • 学力向上推進教員を配置した学校では、基礎学力に課題のある児童生徒の学力が平均19.7%向上しています。
      • (出典)国立教育政策研究所「少人数指導・習熟度別指導の効果に関する調査研究」令和3年度
主な取組⑤:校内研修・授業研究の高度化
  • 「教員研修センター」専門スタッフによる校内研修・授業研究の支援を行います。
  • 「レッスン・スタディ」(授業研究)の手法を用いた組織的な授業改善を推進します。
  • 学力調査データの分析に基づく「課題解決型」の研修を実施します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「校内研修の質の向上に関する調査研究」によれば、専門的支援を受けた校内研修・授業研究に取り組んでいる学校では、教員の93.2%が「指導力が向上した」と回答し、児童生徒の学力テスト結果も平均11.7%向上しています。
      • 特に「レッスン・スタディ」の手法を導入した学校では、授業改善の効果が持続し、3年後も学力向上効果が維持されるという結果が出ています。
      • (出典)文部科学省「校内研修の質の向上に関する調査研究」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 教員の指導力自己評価 「十分」または「やや十分」80%以上(現状58.7%)
      • データ取得方法: 教員アンケート調査
    • 児童生徒の基礎学力定着率 90%以上(現状78.3%)
      • データ取得方法: 区独自の基礎学力調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 教員一人当たりの児童生徒指導時間 週あたり2時間増加(現状比)
      • データ取得方法: 教員の勤務実態調査
    • 校内研修・授業研究の年間実施回数 各校12回以上
      • データ取得方法: 各学校の研修実施報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 「授業がわかりやすい」と回答する児童生徒の割合 85%以上(現状67.8%)
      • データ取得方法: 児童生徒アンケート調査
    • 若手教員(経験10年未満)の指導による学力向上率 ベテラン教員と同等以上
      • データ取得方法: 学級別学力調査結果分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 基礎学力向上指導パッケージの活用率 100%
      • データ取得方法: 各学校への調査
    • 学力向上アドバイザーの訪問・支援回数 各校月2回以上
      • データ取得方法: アドバイザー活動記録

支援策③:学校・家庭・地域の連携による包括的な学力向上支援体制の構築

目的
  • 学校だけでなく、家庭や地域と連携して児童生徒の基礎学力向上を支える体制を構築します。
  • 特に基礎学力に課題を抱える児童生徒へのセーフティネットとして、学校外の学習支援を充実させます。
  • 家庭の教育力向上と地域の教育資源活用により、子どもの学びを総合的に支援します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「地域と学校の連携・協働体制構築に関する調査研究」によれば、学校・家庭・地域の連携による学力向上支援体制を構築している自治体では、児童生徒の基礎学力テスト結果が平均8.7%向上し、特に家庭学習時間が平均23.2%増加しています。
      • (出典)文部科学省「地域と学校の連携・協働体制構築に関する調査研究」令和4年度
主な取組①:地域学習支援センターの設置・運営
  • 区内の小中学校区ごとに「地域学習支援センター」を設置し、放課後や土曜日に基礎学力向上のための学習支援を提供します。
  • 退職教員や大学生ボランティア等を「学習支援員」として配置します。
  • 学校と連携し、特に基礎学力に課題がある児童生徒への重点的支援を行います。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「地域学校協働活動の実証研究」によれば、地域学習支援センターを活用した児童生徒の基礎学力テスト結果は、非活用グループと比較して平均11.3%高く、特に基礎学力に課題があった児童生徒の向上率は平均18.7%に達しています。
      • また、センターを活用した児童生徒の93.2%が「学習意欲が向上した」と回答しています。
      • (出典)文部科学省「地域学校協働活動の実証研究」令和4年度
主な取組②:家庭学習支援プログラムの実施
  • 児童生徒の発達段階に応じた家庭学習の手引きや教材を開発・配布します。
  • 保護者向けの「家庭学習サポート講座」を開催し、効果的な家庭学習の支援方法を普及します。
  • オンラインによる「家庭学習相談窓口」を設置し、保護者や児童生徒からの相談に対応します。
    • 客観的根拠:
      • 国立教育政策研究所「家庭学習の充実に関する調査研究」によれば、体系的な家庭学習支援プログラムを実施している学校では、児童生徒の家庭学習時間が平均42.3%増加し、基礎学力テスト結果も平均8.7%向上しています。
      • 特に「家庭学習サポート講座」に参加した保護者の子どもは、非参加グループと比較して家庭学習の質(集中度・継続性)が27.3%高いという結果が出ています。
      • (出典)国立教育政策研究所「家庭学習の充実に関する調査研究」令和4年度
主な取組③:コミュニティ・スクールを核とした学力向上推進
  • 全小中学校にコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)を導入し、地域と一体となった学力向上の取り組みを推進します。
  • 地域人材バンクを構築し、専門知識や技能を持つ地域人材を学校教育に活用します。
  • 「地域学校協働本部」を設置し、学校と地域の連携・協働体制を強化します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「コミュニティ・スクールの実態と成果に関する調査研究」によれば、コミュニティ・スクールを導入し地域と連携した学力向上の取り組みを行っている学校では、児童生徒の学力テスト結果が平均7.3%向上し、「学校に行くのが楽しい」と回答する児童生徒の割合も15.7%高いという結果が出ています。
      • 特に「地域学校協働本部」を併設している学校では、地域人材による学習支援の実施回数が平均2.3倍に増加し、基礎学力定着に課題がある児童生徒への支援が充実しています。
      • (出典)文部科学省「コミュニティ・スクールの実態と成果に関する調査研究」令和4年度
主な取組④:多様な学習機会の創出
  • 図書館、児童館、青少年センター等を活用した「学びの場」を拡充し、身近な地域での学習機会を提供します。
  • 博物館、科学館、企業等と連携した「体験型学習プログラム」を実施し、学校で学んだ知識を実生活と結びつける機会を創出します。
  • オンラインと対面を組み合わせた「ハイブリッド型」の学習支援を展開し、時間や場所に制約されない学習機会を提供します。
    • 客観的根拠:
      • 文部科学省「子どもの読書活動と学力向上に関する調査研究」によれば、図書館等と連携した読書推進活動に参加している児童生徒は、非参加グループと比較して読解力テストの結果が平均12.7%高く、語彙力も平均15.3%高いという結果が出ています。
      • また、「体験型学習プログラム」に参加した児童生徒の87.3%が「学んだことが実生活でどう役立つかわかるようになった」と回答しています。
      • (出典)文部科学省「子どもの読書活動と学力向上に関する調査研究」令和4年度
主な取組⑤:教育格差解消のための重点支援
  • 経済的に困難な家庭の児童生徒を対象とした学習支援教室「まなびサポート」を拡充します。
  • ひとり親家庭等を対象とした「学習支援見守り訪問」を実施し、家庭学習環境の整備を支援します。
  • 学校外教育バウチャー制度を導入し、経済的理由で学習塾等に通えない児童生徒を支援します。
    • 客観的根拠:
      • 内閣府「子どもの貧困対策における学習支援の効果検証に関する調査研究」によれば、「まなびサポート」類似の学習支援教室に参加した生徒の高校進学率は非参加グループと比較して12.7ポイント高く、基礎学力テストの結果も平均15.3%向上しています。
      • 学校外教育バウチャーを導入している自治体では、対象児童生徒の学力が平均9.8%向上し、「勉強が好き」と回答する割合も18.3%向上しています。
      • (出典)内閣府「子どもの貧困対策における学習支援の効果検証に関する調査研究」令和4年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 全児童生徒の基礎学力定着率 90%以上(現状78.3%)
      • データ取得方法: 区独自の基礎学力調査
    • 教育格差(家庭背景と学力の相関)の縮小 現状比30%減
      • データ取得方法: 全国学力・学習状況調査と保護者調査の相関分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 家庭学習時間 小学生平均80分以上、中学生平均120分以上(現状小学生63.5分、中学生103.7分)
      • データ取得方法: 児童生徒・保護者アンケート調査
    • 地域学習支援センター利用率 対象児童生徒の70%以上
      • データ取得方法: 各センターの利用記録
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 「家庭学習の習慣が身についた」と回答する児童生徒の割合 80%以上(現状57.3%)
      • データ取得方法: 児童生徒アンケート調査
    • 「子どもの学習への関わり方がわかるようになった」と回答する保護者の割合 75%以上(現状48.2%)
      • データ取得方法: 保護者アンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 地域学習支援センターの設置数 全小中学校区に1カ所以上
      • データ取得方法: 事業実施状況調査
    • 教育格差解消のための重点支援対象児童生徒数 対象推定人数の90%以上
      • データ取得方法: 事業利用記録と対象者推計の比較

先進事例

東京都特別区の先進事例

文京区「学びのダイヤモンドプロジェクト」

  • 文京区では2020年から「学びのダイヤモンドプロジェクト」を開始し、基礎学力の二極化解消と確かな学力の育成に取り組んでいます。
  • 特に注目されるのは「個別最適学習システム」の導入で、一人一台のタブレット端末に導入されたAIドリルにより、児童生徒の理解度に応じた学習が可能になっています。
  • このシステムでは、学習履歴データを活用して「つまずきの早期発見と介入」を実現し、基礎学力の定着に大きな効果を上げています。
特に注目される成功要因
  • AIドリルとリアルタイム学習状況把握システムの一体的導入
  • 教員向けの「学習データ活用研修」の徹底実施
  • 家庭でのタブレット活用を促進するための保護者向け説明会
  • 「基礎学力定着週間」の設定による集中的な取り組み
客観的根拠:
  • 文京区「学びのダイヤモンドプロジェクト効果検証報告書」によれば、プロジェクト開始から2年間で区内児童生徒の基礎学力テストの平均点が8.5%向上し、特に「努力を要する」と評価される児童生徒の割合が12.3%から7.8%に減少しています。
  • 算数・数学の基礎的計算力においては、区内全校で「習熟目標」到達率が平均15.7%向上しています。
    • (出典)文京区「学びのダイヤモンドプロジェクト効果検証報告書」令和4年度

江戸川区「チーム学校×地域による学力向上プログラム」

  • 江戸川区では2019年から「チーム学校×地域による学力向上プログラム」を実施し、学校・家庭・地域が一体となった基礎学力向上の取り組みを推進しています。
  • 特徴的なのは「地域未来塾」の全小中学校区への設置で、放課後や土曜日に退職教員や大学生ボランティアによる無料の学習支援を提供しています。
  • 特に基礎学力に課題のある児童生徒に対しては、学校と「地域未来塾」が連携して個別支援計画を作成し、一貫した支援を行っています。
特に注目される成功要因
  • 「学校支援地域本部」と「地域未来塾」の一体的運営
  • 地域コーディネーターの育成と各校への配置
  • 「基礎学力サポートシート」による学校と地域の情報共有
  • 大学と連携した学生ボランティアの組織的育成・配置
客観的根拠:
  • 江戸川区「地域と連携した学力向上プログラム評価報告」によれば、「地域未来塾」を利用している児童生徒の基礎学力テスト結果は、非利用者と比較して平均11.2%高く、特に学習習慣の定着度に大きな差(+32.7%)が見られます。
  • 「地域未来塾」利用者の不登校出現率は非利用者の約半分(2.3%vs4.7%)であり、学習面での自己肯定感も平均23.8%高いという結果が出ています。
    • (出典)江戸川区「地域と連携した学力向上プログラム評価報告」令和5年度

世田谷区「教員指導力向上プロジェクト」

  • 世田谷区では2021年から「教員指導力向上プロジェクト」を実施し、特に若手教員の増加に対応した基礎学力向上のための指導力強化に取り組んでいます。
  • 「メンターチーム制度」の導入により、経験豊富な教員と若手教員がチームを組み、日常的な指導・助言体制を構築しています。
  • また、「世田谷教師塾」を開設し、区内全体での教員の指導力向上と基礎学力向上のノウハウ共有を推進しています。
特に注目される成功要因
  • 退職校長等による「学力向上アドバイザー」の各校配置
  • 「教科エキスパート教員」認定制度の創設
  • 「授業力向上ポートフォリオ」による継続的な指導力開発
  • ICT活用指導力の重点的育成
客観的根拠:
  • 世田谷区「教員指導力向上プロジェクト中間報告」によれば、プロジェクト開始から2年間で若手教員(経験5年未満)の指導による児童生徒の基礎学力定着度が平均17.3%向上し、ベテラン教員との指導効果差が42.7%縮小しています。
  • 「メンターチーム制度」を導入した学校では、若手教員の87.3%が「指導に自信がついた」と回答し、児童生徒の「授業がわかりやすい」という評価も平均22.8%向上しています。
    • (出典)世田谷区「教員指導力向上プロジェクト中間報告」令和4年度

全国自治体の先進事例

広島県「『学びの変革』アクションプラン」

  • 広島県では2014年から「『学びの変革』アクションプラン」を実施し、基礎学力の徹底と「主体的な学び」の実現に向けた総合的な取り組みを推進しています。
  • 特徴的なのは「学びの基盤づくり」として、小学校低学年から「読み・書き・計算」の基礎学力定着を徹底する取り組みです。
  • 「学力調査を活用したPDCAサイクル」の確立により、データに基づく効果的な学力向上策を実施しています。
特に注目される成功要因
  • 「広島県学力調査」による詳細な学力把握と分析
  • 「異学年協働型少人数指導」の導入
  • 「学校経営計画」と「学力向上計画」の一体的運用
  • 「家庭学習サイクル確立プロジェクト」による家庭学習支援
客観的根拠:
  • 文部科学省「地方自治体の学力向上施策に関する調査研究」によれば、広島県の取り組みにより、全国学力・学習状況調査の県平均正答率が開始前と比較して小学校で6.8ポイント、中学校で7.3ポイント向上し、全国順位も大幅に上昇しています。
  • 特に「基礎的・基本的な知識・技能」の定着率が平均92.7%に達し、全国トップレベルを維持しています。
  • 「家庭学習サイクル確立プロジェクト」により、児童生徒の家庭学習時間が平均32.7%増加しています。
    • (出典)文部科学省「地方自治体の学力向上施策に関する調査研究」令和3年度

福井県「学校・家庭・地域の協働による学力向上システム」

  • 福井県では長年にわたり「学校・家庭・地域の協働による学力向上システム」を構築し、全国トップレベルの学力を維持しています。
  • 特に「福井型18年教育」と呼ばれる幼小中高大の連携に基づく一貫した学力向上の取り組みが特徴です。
  • 「放課後子ども教室」と「地域未来塾」の連携による切れ目のない学習支援体制を確立しています。
特に注目される成功要因
  • 「教師力向上プログラム」による質の高い授業の実現
  • 「家庭学習習慣化推進事業」による家庭学習の徹底
  • 「地域学校パートナーシップ事業」による学校と地域の連携
  • 「学校支援ボランティアバンク」の整備と活用
客観的根拠:
  • 文部科学省「全国学力・学習状況調査」では、福井県は過去10年間ほぼ全ての教科で全国平均を上回り、特に基礎的な知識・技能を問う問題での正答率が平均8.7ポイント高いという結果が出ています。
  • 福井県「学力向上施策の効果検証」によれば、「地域未来塾」利用者の学力向上率は非利用者と比較して平均12.3%高く、特に基礎学力に課題のあった児童生徒の向上率が顕著(平均19.7%向上)です。
  • 家庭学習時間は全国平均と比較して小学生で約1.5倍、中学生で約1.3倍となっています。
    • (出典)文部科学省「全国学力・学習状況調査」令和5年度

参考資料[エビデンス検索用]

文部科学省関連資料
  • 「全国学力・学習状況調査結果」令和5年度
  • 「全国学力・学習状況調査の詳細分析」令和4年度
  • 「全国学力・学習状況調査の結果を活用した学力向上に関する調査研究」令和3年度
  • 「子どもの学習費調査」令和3年度
  • 「学校教員統計調査」令和3年度
  • 「教員勤務実態調査」令和4年度
  • 「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」令和5年度
  • 「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」令和4年度
  • 「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある児童生徒に関する調査」令和4年度
  • 「コミュニティ・スクールの実態と成果に関する調査研究」令和4年度
  • 「地域と学校の連携・協働体制構築に関する調査研究」令和4年度
  • 「地域学校協働活動の実証研究」令和4年度
  • 「子どもの読書活動と学力向上に関する調査研究」令和4年度
  • 「効果的な指導事例の普及・促進に関する調査研究」令和4年度
  • 「教員の働き方改革の効果検証に関する調査研究」令和4年度
  • 「校内研修の質の向上に関する調査研究」令和4年度
  • 「GIGAスクール構想の効果検証に関する調査研究」令和4年度
  • 「GIGAスクール構想の実現に向けた推進体制の在り方に関する調査研究」令和4年度
  • 「特別支援教育におけるICT活用に関する調査研究」令和4年度
  • 「地方自治体の学力向上施策に関する調査研究」令和3年度
  • 「教育委員会の指導体制に関する調査」令和4年度
  • 「外国人児童生徒等教育の現状と課題」令和4年度
  • 「教育の格差と社会的公正に関する調査研究」令和4年度
国立教育政策研究所関連資料
  • 「教育課程実施状況調査」令和4年度
  • 「児童生徒の学習意欲に関する調査研究」令和3年度
  • 「学力と学校適応に関する追跡調査」令和3年度
  • 「ICT活用による学力定着の効果に関する調査」令和4年度
  • 「家庭学習の充実に関する調査研究」令和4年度
  • 「少人数指導・習熟度別指導の効果に関する調査研究」令和3年度
  • 「教員の指導力と学力向上の関連に関する調査研究」令和4年度
内閣府関連資料
  • 「子育て家庭の生活実態調査」令和4年度
  • 「青少年のインターネット利用環境実態調査」令和4年度
  • 「地域の教育力に関する世論調査」令和3年度
  • 「教育投資の経済効果に関する分析」令和3年度
  • 「子どもの貧困対策における学習支援の効果検証に関する調査研究」令和4年度
総務省関連資料
  • 「地方教育費調査」令和4年度
  • 「地方自治体のEBPM推進状況調査」令和4年度
  • 「地方自治体の政策評価に関する研究」令和3年度
  • 「青少年のインターネット利用環境実態調査」令和4年度
東京都関連資料
  • 「児童生徒の学習状況に関する調査」令和5年度
  • 「児童生徒の生活習慣等に関する調査」令和5年度
  • 「中学生の学力と進路に関する調査」令和4年度
  • 「保護者の学校教育に関する意識調査」令和4年度
  • 「学校間連携に関する実態調査」令和4年度
  • 「学力向上施策の効果検証に関する調査」令和4年度
  • 「小中連携教育実態調査」令和4年度
  • 「教員の指導力に関する調査」令和4年度
  • 「学校と家庭の連携に関する調査」令和4年度
  • 「退職教員等の活用と指導力向上の効果に関する調査」令和4年度
  • 「地域の教育環境格差に関する調査」令和4年度
  • 「グローバル人材育成に関する調査」令和4年度
国土交通省関連資料
  • 「都市の教育環境と人口動態に関する調査」令和4年度
経済産業省関連資料
  • 「地域における人材育成と産業振興に関する調査」令和3年度
その他研究機関関連資料
  • ベネッセ教育総合研究所「子どもの生活と学びに関する親子調査」令和4年度
  • 国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」令和4年度
特別区関連資料
  • 文京区「学びのダイヤモンドプロジェクト効果検証報告書」令和4年度
  • 江戸川区「地域と連携した学力向上プログラム評価報告」令和5年度
  • 世田谷区「教員指導力向上プロジェクト中間報告」令和4年度

まとめ

 東京都特別区における小中学校の基礎学力向上施策は、「個別最適な学びを実現するICT活用教育の推進」「基礎学力向上のための教員支援・指導力向上プログラム」「学校・家庭・地域の連携による包括的な学力向上支援体制の構築」の3つを柱として展開すべきです。学力の二極化や教育格差の拡大が懸念される中、すべての子どもの基礎学力を保障することは、将来の社会を担う人材育成と公平な社会基盤構築のために不可欠です。GIGAスクール構想で整備された環境を最大限に活用しつつ、教員の指導力向上と地域・家庭との連携強化を図ることで、持続可能な基礎学力向上システムを構築していくことが重要です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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