16 福祉

在宅医療・介護連携推進事業の強化

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(在宅医療・介護連携推進事業を取り巻く環境)

  • 自治体が在宅医療・介護連携推進事業を行う意義は「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続ける社会の実現」と「持続可能な医療・介護提供体制の構築」にあります。
  • 在宅医療・介護連携推進事業は、医療と介護の両方を必要とする高齢者等が、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域包括ケアシステムの中核をなす取り組みです。
  • この事業は、地域の医療機関(病院、診療所、歯科診療所、薬局など)と介護事業所(訪問介護、訪問看護ステーション、介護施設など)の関係者が緊密に連携し、多職種が協働して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護を一体的に提供できる体制を構築することを目的としています。
  • 2014年の介護保険法改正により地域支援事業に位置づけられ、2018年度までには全国の市区町村で実施が義務化されました。
  • 事業の推進にあたっては、地域の現状分析・課題抽出(Plan)、対応策の実施(Do)、事業評価(Check)、改善(Act)というPDCAサイクルに沿った継続的な取り組みが求められており、地域の実情に応じた柔軟な事業展開が重要となります。

意義

住民にとっての意義

人生の最終段階における意思の尊重
  • 多くの国民が希望する「自宅」での療養や看取りを実現するための社会的な受け皿となります。
切れ目のないケアによる安心感の醸成
  • 日常の療養支援から、入退院時の情報連携、急変時の対応、そして看取りに至るまで、様々な場面で医療と介護が途切れることなく連携するため、利用者本人と家族は安心して在宅生活を送ることができます。
介護者の負担軽減
  • 多職種による専門的なサポート体制が整うことで、家族介護者の身体的・精神的負担が軽減されます。
    • 客観的根拠:
      • 介護者が外部サービスを利用したい理由として「家族の肉体的負担を減らすため」(71.9%)、「家族の精神的負担を減らすため」(61.6%)が上位を占めており、専門職の介入による負担軽減への期待は非常に高いです。
      • (出典)内閣府「高齢者の健康に関する意識調査」平成15年度

地域社会にとっての意義

効率的で質の高いケア提供体制の構築
  • 地域の医療・介護関係者が「顔の見える関係」を構築し、定期的な会議や研修を通じて相互理解を深めることで、役割分担が明確になり、連携の質が向上します。
地域資源の最適活用
  • 自治体が主体となり地域の医療・介護資源(施設、人材、機能)をリストやマップとして「見える化」し、関係者間で共有することで、限りある資源を有効に活用し、サービス提供の重複や空白を防ぎます。
    • 客観的根拠:
      • 事業項目(ア)「地域の医療・介護の資源の把握」は、施策立案の基礎となるだけでなく、関係者が照会先や協力依頼先を適切に選択できるようにすることを目的としています。
      • (出典)[厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業の手引き Ver.2」](https://www.kaigotsuki-home.or.jp/storage/news/%E5%9C%A8%E5%AE%85%E5%8C%BB%E7%99%82%E3%83%BB%E4%BB%8B%E8%AD%B7%E9%80%A3%E6%90%BA%E6%8E%A8%E9%80%B2%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E3%81%AE%E6%89%8B%E5%BC%95%E3%81%8DVer.2(pdf%203.3MB%EF%BC%89.pdf)
専門職のスキルアップとモチベーション向上
  • 多職種連携研修や事例検討会を通じて、介護職員が医療知識を深めたり、医療職が在宅での生活支援の視点を学んだりと、専門職全体のスキルアップにつながります。

行政にとっての意義

地域包括ケアシステムの実現
  • 本事業は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据えた「地域包括ケアシステム」構築の根幹をなす施策であり、その推進は自治体の重要な責務です。
持続可能な医療・介護制度の構築
  • 在宅医療・介護を推進することで、病院での長期入院を減らし、増大し続ける医療・介護給付費の適正化に貢献します。
    • 客観的根拠:
      • 国は、今後見込まれる在宅医療の需要増加に対応するため、第8次医療計画において本事業との連携を明確に位置づけており、制度全体の持続可能性確保を目指しています。
      • (出典)内閣府「令和6年版高齢社会白書」
根拠に基づく政策立案(EBPM)の推進
  • 事業のPDCAサイクルを回す過程で、地域のニーズや資源、課題に関するデータを収集・分析することになり、これが客観的根拠に基づいた効果的な政策立案へと繋がります。

(参考)歴史・経過

  • 1980年代
    • 広島県御調町の公立みつぎ総合病院の山口昇医師らによる「寝たきりゼロ作戦」など、後の地域包括ケアシステムの源流となる実践が各地で始まる。
  • 2000年
    • 介護保険制度が創設され、高齢者介護が社会全体で支える仕組みとして制度化される。
  • 2008年
    • 厚生労働省が「地域包括ケア研究会」を設置し、「医療、介護、予防、住まい、生活支援」を一体的に提供する地域包括ケアシステムのコンセプトが明確化される。
  • 2011年度
    • 厚生労働省医政局のモデル事業として「在宅医療連携拠点事業」が開始される。これが在宅医療・介護連携推進事業の前身となる。
  • 2014年
    • 医療介護総合確保推進法が成立。同年の介護保険法改正により、「在宅医療・介護連携推進事業」が市町村の地域支援事業として法的に位置づけられる。
  • 2015年度
    • 改正介護保険法が施行され、各市町村で本事業が順次開始される。
  • 2018年度
    • 全ての市町村で本事業の実施が義務化される。
  • 2020年
    • 「在宅医療・介護連携推進事業の手引き Ver.3」が公表され、PDCAサイクルの運用や「日常療養支援」「入退院支援」「急変時の対応」「看取り」の4つの場面を意識した考え方が明確化される。
  • 2024年度
    • 第9期介護保険事業計画と第8次医療計画が開始。医療計画に「在宅医療に必要な連携を担う拠点」が位置づけられ、本事業との連携強化が一層重要となる。

在宅医療・介護連携に関する現状データ

高齢化と要介護者数の動向

在宅医療・介護の提供体制

介護人材の需給ギャップ

事業の実施状況

課題

住民の課題

家族介護者の深刻な負担と社会的孤立
  • 高齢者のみの世帯や単身世帯が増加する中、介護の担い手が高齢の配偶者や子どもに集中し、身体的・精神的負担が極限に達しているケースが少なくありません。いわゆる「老老介護」や、仕事と介護を両立させる「ビジネスケアラー」、本来学業に専念すべき子どもがケアを担う「ヤングケアラー」など、問題は複雑化・深刻化しています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 介護を理由とした離職(介護離職)の増加による経済的困窮や、介護者自身の心身の不調、最悪の場合には介護疲れを背景とした虐待や共倒れといった悲劇につながります。
在宅での看取りの希望と現実の大きな乖離
  • 多くの国民が「住み慣れた自宅で最期を迎えたい」と希望しているにもかかわらず、実際には病院で亡くなる方が依然として多数を占めています。このギャップの背景には、「家族に負担をかけたくない」「急変時の対応が不安」といった住民側の強い懸念があります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 本人の尊厳ある最期を迎える権利が損なわれ、望まない延命治療や救急搬送が繰り返されることで、医療資源の不適切な使用にもつながります。
複雑な制度と情報の洪水によるサービス利用の困難さ
  • 在宅医療・介護に関連するサービスは多岐にわたり、制度も複雑なため、住民が必要な情報を自ら探し出し、適切なサービスを選択することは非常に困難です。特に、急に介護が必要になった場合など、混乱の中で最適な判断を下すことは容易ではありません。

地域社会の課題

介護人材の危機的な不足と定着の難しさ
  • 在宅医療・介護サービスの提供基盤そのものである介護人材が、量・質ともに危機的な状況にあります。特に需要が高い訪問介護員の不足は深刻で、サービス提供体制の維持が困難になりつつあります。
多職種連携における実質的な協力関係の構築の壁
  • 医療と介護では専門性や文化、言語が異なり、真の意味での連携は容易ではありません。「顔の見える関係」を構築しても、高い離職率のために担当者が頻繁に変わり、関係性がリセットされてしまうという問題も指摘されています。
訪問看護・介護事業所の経営基盤の脆弱性
  • 在宅サービスを支える小規模な事業所は、人材確保難、利用者獲得競争の激化、報酬改定の影響などにより、常に不安定な経営を強いられています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 地域に根差した事業所が次々と撤退し、サービスの選択肢が減少、特に過疎地域や不採算地域でサービス提供が途絶える「介護の空白地帯」が発生します。

行政の課題

事業評価指標の不在とPDCAサイクルの形骸化
  • 多くの自治体が、事業の成果を客観的に測るための指標(KPI)を設定できずにいます。これにより、実施した取り組みが本当に効果を上げているのかを検証できず、PDCAサイクルが「P→D」だけで止まってしまい、事業の改善や発展につながっていません。
医療と介護を繋ぐコーディネーター人材の不足と専門性の担保
  • 医療と介護という異なる分野を繋ぎ、多職種連携を円滑に進める「コーディネーター」の役割は極めて重要ですが、両分野に精通した人材は非常に少なく、確保・育成が大きな課題となっています。
ICT導入の遅延と地域内での情報共有の分断
  • 多職種間の迅速な情報共有の切り札として期待されるICTですが、導入コスト、関係者のITリテラシーの差、セキュリティへの懸念、そして何より事業者ごとに異なるシステムを導入することによる「システムの乱立」が、円滑な連携をかえって阻害しています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 情報共有が依然として電話やFAXに依存し続け、伝達ミスやタイムラグによる医療・介護事故のリスクがなくならず、業務効率も改善されません。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の課題解決や多くの住民・事業者への便益に繋がる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現行の法制度や予算、人員体制の中で、あるいは現実的な変更を加えることで実現可能な施策を優先します。既存の仕組みや資源を活用できる施策は、優先度を高く設定します。
  • 費用対効果
    • 投下する経営資源(予算・人員等)に対して、得られる効果(住民満足度の向上、将来的な医療・介護費の抑制等)が大きい施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の層だけでなく、幅広い住民や事業者に便益が及び、かつ一時的な対策でなく、長期的に効果が持続する仕組みづくりに繋がる施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 政府の調査報告書や白書、他の自治体での成功事例など、効果を示す客観的なエビデンスが存在する施策を最優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • これまでの分析で明らかになった課題は、大きく「人材の危機」と「連携基盤の脆弱性」の二つに集約されます。この二つの根本課題を解決しない限り、対症療法的な施策は効果を発揮しません。したがって、支援策はこれらの課題に直結するものを優先的に、かつ体系的に実施する必要があります。
  • 最優先(Priority 1):支援策① 人材確保・定着と処遇改善の抜本的強化
    • 在宅医療・介護システムの根幹を揺るがす「人材不足」に直接対処するこの施策は、最も優先度が高いです。担い手がいなければ、いかなる連携の仕組みも絵に描いた餅となります。人材の安定化は、家族の負担軽減、サービスの質向上など、あらゆる課題に好影響を及ぼすため、波及効果が最も大きいと判断します。
  • 優先度2:支援策② 多職種連携を加速するICT基盤と連携拠点の整備
    • 人材基盤を固めた上で、次に彼らが効率的かつ効果的に働くための「道具」と「場所」を整備します。ICT基盤の統一と連携拠点の機能強化は、多職種連携の質を飛躍的に向上させ、業務負担を軽減するために不可欠です。
  • 優先度3:支援策③ 住民・家族を支える包括的支援体制の構築
    • 担い手と連携基盤が整って初めて、住民や家族への直接的な支援が実質的な効果を持ちます。ACPの推進やヤングケアラー支援などは極めて重要ですが、それを支える専門職がいなければ実施できません。したがって、この施策は前の二つを土台として展開します。
  • これら3つの支援策は相互に関連しており、一体的に推進することで、在宅医療・介護連携の強化という最終目標を達成します。

各支援策の詳細

支援策①:人材確保・定着と処遇改善の抜本的強化

目的
主な取組①:特別区独自の処遇改善加算の上乗せ補助制度の創設
  • 国の「介護職員等特定処遇改善加算」を取得している区内事業所に対し、区が独自に財源を確保し、補助金を上乗せ交付します。
  • この上乗se補助は、勤続年数や役職によらず、現場で働く全ての介護職員の給与水準を底上げすることを目的とし、申請手続きも簡素化します。これにより、区内事業所の採用競争力を高めます。
主な取組②:「働きがい改革」認証・支援制度の導入
  • 職員の定着率、有給休暇取得率、研修への投資、ハラスメント対策など、働きやすさに関する客観的な指標に基づき、優良な介護事業所を区が「働きがい改革推進事業所」として認証します。
  • 認証事業所には、区の広報媒体でのPR、補助金申請時の優先採択、人材紹介会社との提携による紹介手数料の割引など、具体的なインセンティブを付与します。これにより、事業所間の健全な競争を促し、職場環境の改善を誘導します。
主な取組③:連携コーディネーターの専門職としての育成と配置
主な取組④:潜在介護福祉士・看護師の復職支援と多様な働き方の推進
  • 資格を持ちながら現場を離れている「潜在介護福祉士」「潜在看護師」を対象に、最新の知識や技術を学ぶための短期集中型の復職支援研修を実施します。
  • 区内の事業所と連携し、週2日、1日4時間からといった短時間・柔軟な勤務形態の求人を集約した「セカンドキャリア・マッチングサイト」を運営し、子育て世代やシニア層の労働参加を促進します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区内介護職の有効求人倍率を全国平均(3.97倍)レベルまで低減させる
      • データ取得方法: ハローワークが公表する職業安定業務統計を分析
    • 区内介護職員の離職率を10%未満に抑制する
      • データ取得方法: 介護労働安定センター「介護労働実態調査」の地域別データ及び区独自の事業者アンケート調査
  • KSI(成功要因指標)
    • 区独自の上乗せ処遇改善補助金の受給事業所率を80%以上にする
      • データ取得方法: 区の補助金交付実績データ
    • 「働きがい改革」認証事業所の割合を区内全事業所の30%以上にする
      • データ取得方法: 区の認証制度登録データベース
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 介護職員の賃金に対する満足度(D.I.値)をプラスに転換させる
      • データ取得方法: 介護労働安定センター調査の区別データ分析、または区独自の職員意識調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 連携コーディネーター養成研修の年間修了者数を20名以上とする
      • データ取得方法: 区の研修事業実施記録
    • 潜在資格者復職支援プログラムの年間参加者数を100名以上とする
      • データ取得方法: プログラムの申込・修了者記録

支援策②:多職種連携を加速するICT基盤と連携拠点の整備

目的
主な取組①:区内統一の医療・介護連携ICTプラットフォーム導入支援
  • 複数のICTベンダーから、セキュリティ、操作性、拡張性に優れたプラットフォームを区が選定(例:カナミッククラウドサービス等)。事業者がこの標準プラットフォームを導入する際の初期費用及び月額利用料を大幅に補助します。
  • これにより、事業者間の「システムの壁」を取り払い、一人の患者に関わる全ての職種が、同一のプラットフォーム上でリアルタイムに情報を共有できる環境を構築します。
主な取組②:ICT活用研修とデジタルサポーターの派遣
  • 上記の導入補助を受ける事業所に対し、プラットフォームの基本操作に関する研修の受講を義務付けます。
  • ITに不慣れな小規模事業所や高齢の医師等を対象に、学生ボランティアや地域の人材を活用した「デジタルサポーター」を派遣し、初期設定や活用の相談に応じる体制を整備します。
主な取組③:地区医師会等と連携した「在宅医療・介護連携支援センター」の機能強化
  • 地域のハブとなる中核病院や、信頼の厚い地区医師会に運営を委託し、「在宅医療・介護連携支援センター」を設置または機能強化します。
  • センターには、育成した専門コーディネーターを配置し、①ICTプラットフォームの管理・運用、②多職種連携会議や研修の企画・運営、③困難事例に関する専門職からの相談対応、④地域の医療・介護資源情報の集約・発信、といった役割を担わせます。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 多職種間での情報共有・調整に要する時間を50%削減する
      • データ取得方法: 連携支援センターを通じ、ケアマネジャーや訪問看護師等を対象とした業務時間調査を定点観測
  • KSI(成功要因指標)
    • 区内統一ICTプラットフォームの利用事業所率を90%以上にする
      • データ取得方法: ICTプラットフォームの管理データから利用事業所数を集計
    • 連携支援センターが関与した退院調整件数を年間200件以上にする
      • データ取得方法: 連携支援センターの業務日報・相談記録
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 退院後48時間以内に在宅サービス(訪問看護等)が開始される割合を80%以上にする
      • データ取得方法: ICTプラットフォーム上の退院日と初回訪問記録のデータを突合分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • ICT活用研修の年間受講者数を500名以上とする
      • データ取得方法: 研修の参加者名簿
    • 多職種連携会議(顔の見える関係会議)の年間開催回数を12回(月1回ペース)以上とする
      • データ取得方法: 会議の開催記録及び議事録

支援策③:住民・家族を支える包括的支援体制の構築

目的
  • 住民一人ひとりが、人生の最終段階における医療やケアについて自ら考え、家族や医療・介護者と話し合う文化(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)を醸成します。
  • 介護を担う家族や、見過ごされがちなヤングケアラーに対する直接的な支援を強化し、家庭内でのケアの負担を軽減し、孤立を防ぎます。
主な取組①:ACP(人生会議)の普及啓発と相談体制の強化
  • 世田谷区の「ガヤガヤ会議」をモデルに、住民向け・専門職向けのACP講座を定期的に開催します。住民向けには自身の生き方を考えるきっかけを、専門職向けには具体的な支援方法を学ぶ機会を提供します。
  • 区独自のACP啓発リーフレットやエンディングノートを作成・配布するとともに、地域包括支援センターの職員等を対象にACPファシリテーター養成研修を実施し、身近な場所での相談体制を整備します。
主な取組②:ヤングケアラー支援パッケージの導入
  • 大田区の事例を参考に、まずは区内の小中高校生を対象とした実態調査を実施し、課題の大きさと内容を正確に把握します。
  • 調査結果に基づき、①専用相談窓口(電話・LINE)の設置、②家事・育児負担を軽減するためのヘルパー派遣、③学習支援(オンライン家庭教師等)、④当事者同士が交流できるオンラインサロンの運営支援、などをパッケージとして提供します。
主な取組③:介護者向けレスパイトケアとピアサポートの拡充
  • 介護者の休息(レスパイト)を確保するため、ショートステイの利用枠を拡充するとともに、緊急時に柔軟に利用できる仕組みを整備します。
  • 介護者同士が悩みを共有し、支え合う「ケアラーズカフェ」の立ち上げを支援する補助金制度を創設します。社会福祉協議会やNPOと連携し、運営ノウハウの提供や場所の確保を支援します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 区内における在宅での看取り率を20%以上に向上させる(2023年全国平均17.0%)
      • データ取得方法: 厚生労働省「人口動態統計」の市区町村別データ、または東京都監察医務院の統計データ
    • 介護者の介護負担感(「大変負担に感じる」と回答する割合)を20%以下に低減させる
      • データ取得方法: 区が実施する介護者実態調査(定期実施)
  • KSI(成功要因指標)
    • 住民のACP(人生会議)認知度を70%以上にする
      • データ取得方法: 区民意識調査
    • ヤングケアラー支援の対象者捕捉率を向上させる(実態調査で把握した推定人数に対する相談・支援開始人数の割合)
      • データ取得方法: ヤングケアラー実態調査結果と相談窓口の利用実績データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 住民の「自宅で最期を迎えたい」希望実現率の向上
      • データ取得方法: 区民意識調査と人口動態統計のクロス分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • ACP普及啓発講座の年間参加者数を延べ1,000名以上とする
      • データ取得方法: 各講座の参加者記録
    • ケアラーズカフェなど介護者支援の拠点を区内に10か所以上設置する
      • データ取得方法: 補助金交付実績及び活動団体からの報告

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「『がやがやネット』とACP推進による住民・専門職の意識改革」

  • 世田谷区は、医療と介護の連携を推進する上で、制度やツールの導入だけでなく、関係者の「意識」の変革に重点を置いています。その象徴的な取り組みが、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)をテーマにした講座「ガヤガヤ会議」です。
  • この会議は、専門職向けと区民向けに分けて開催され、単なる講演会ではなく、ワールドカフェ方式のグループワークなどを通じて、参加者が主体的に「人生の最終段階をどう生きるか」を話し合う場となっています。
  • 専門職向け講座(2025年1月開催)には65名が参加し、アンケートでは参加者の84%が「非常に良かった」、16%が「良かった」と回答するなど、極めて高い満足度を得ています。参加者からは「多様な職種の取組み事例が聴けた」「日々の関わりがACPに繋がっていると気づけた」といった声が上がっており、多職種間の相互理解とACP実践への動機づけに大きく貢献しています。

大田区「ヤングケアラーの実態把握から具体的な支援への迅速な展開」

  • 大田区は、これまで見過ごされがちだったヤングケアラー問題に対し、エビデンスに基づいた支援体制を迅速に構築した点で先進的です。
  • 令和5年度に区内の小・中・高校生世代約3.7万人を対象とした大規模な実態調査を実施し、ヤングケアラーの存在や彼らが抱える課題を具体的に把握しました。
  • この調査結果を踏まえ、令和7年4月から専門の「ヤングケアラー・コーディネーター」を配置。本人や家族からの直接相談はもちろん、学校や地域住民が「気になる子ども」に気づいた際の相談窓口として機能させています。さらに、子ども家庭支援センターや24時間子供SOSダイヤルなど、既存の多様な相談窓口をヤングケアラー支援の観点から改めて周知し、重層的なサポートネットワークを構築しています。

品川区「介護人材確保と介護者支援を計画に明記した総合的アプローチ」

  • 品川区は、在宅医療・介護連携を、単独の事業としてではなく、区の最上位計画である「介護保険事業計画」の中に戦略的に位置づけている点が特徴です。
  • 第九期計画(令和6年度〜)では、「介護・福祉職員の確保・育成」「介護者支援の充実」「医療と介護の連携推進」などを重点プロジェクトとして明確に掲げています。
  • 具体的には、介護職員の不足が顕在化しているという課題認識のもと、離職防止・定着支援策を講じることや、老老介護やヤングケアラーなど困難事例の増加に対応するため、介護者交流の場の提供や総合的なケアマネジメントを推進することを明記しています。このように、連携推進を人材確保や介護者支援といった根本的な課題解決と一体で捉える総合的なアプローチは、他の自治体の参考となります。

全国自治体の先進事例

千葉県柏市「『柏プロジェクト』による官民学連携モデル」

  • 柏市は、全国に先駆けて2010年から在宅医療・介護連携の体制構築に着手したパイオニアです。その特徴は、市、柏市医師会、そして東京大学高齢社会総合研究機構が三位一体となった「官民学連携」の推進体制にあります。
  • 具体的な取り組みは多岐にわたります。多職種情報共有システム「カシワニネット」は令和5年3月末時点でID保有者数が2,048人、利用事業所数は474か所に達しています。また、多職種連携研修会はこれまでに569名の修了者を輩出。さらに、市民向け情報紙「わがや」の発行や出前講座など、市民への普及啓発にも力を入れています。これらの活動を支える中核拠点として「柏地域医療連携センター」が機能しています。
  • このように、ICT、人材育成、市民啓発、拠点整備をパッケージで展開する総合的なアプローチが、柏市の取り組みを成功に導いた要因です。

沖縄県南部地区(6市町)「広域連携による資源の効率的活用」

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区において在宅医療・介護連携推進事業を強化するためには、もはや連携の「手順」を議論する段階を超え、システムを支える「担い手」と「基盤」そのものを再構築するという視点が不可欠です。データが示す通り、介護人材の危機的な不足と処遇問題は、全ての課題の根源にあります。したがって、最優先で取り組むべきは、区独自の処遇改善や働きがい改革による人材の確保・定着です。その上で、標準化されたICT基盤と専門コーディネーターを配置した連携拠点を整備し、多職種が効率的に協働できる環境を整える必要があります。この二つの土台の上に、ACPの推進や介護者支援といった住民本位の施策を展開することで、初めて「住み慣れた地域で最期まで」という理念が実現可能となります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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