11 防災

国・指定公共機関等との支援要請体制

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(国・指定公共機関等との支援要請体制を取り巻く環境)

  • 自治体が国・指定公共機関等との支援要請体制を構築・強化する意義は、「大規模災害時における行政機能の維持と住民の生命・財産の保護」および「多様な支援リソースの効率的活用による迅速な復旧・復興の実現」にあります。
  • この体制は、地震や風水害などの大規模災害が発生し、被災した自治体の能力だけでは対応が困難になった際に、災害対策基本法等に基づき、国、他の地方公共団体、そして指定公共機関(電力・ガス・通信・輸送等のライフライン事業者)に対して、人的・物的・技術的支援を要請し、効果的に受け入れる(受援する)ための包括的な仕組みを指します。
  • 特に東京都特別区は、世界有数の人口・建物の密集地域であり、首都中枢機能が高度に集積しています。首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの大規模災害が発生した場合、その被害は甚大かつ広域にわたり、単一の区はおろか東京都単独での対応も極めて困難になると想定されています。
  • そのため、国や指定公共機関等との支援要請・受援体制は、単なる非常時対応計画ではなく、首都東京のレジリエンスを支える根幹的な機能として位置づけられています。

意義

住民にとっての意義

迅速な人命救助と生活支援の実現
  • 確立された支援要請体制は、発災後72時間の「ゴールデンタイム」における人命救助活動の成否を大きく左右します。
  • 自衛隊、警察、消防(緊急消防援助隊)、DMAT(災害派遣医療チーム)等の専門部隊が迅速に被災地入りすることで、救助・救急活動が強化されます。
  • また、食料、飲料水、医薬品、仮設トイレといった生活必需品が、国のプッシュ型支援や他自治体からの応援によって早期に供給され、避難生活の質を維持し、災害関連死のリスクを低減します。令和6年能登半島地震では、支援の遅れが被災者の生活に深刻な影響を与えたことが報告されており、この体制の重要性が改めて浮き彫りになりました。
多様なニーズへの的確な対応
  • 大規模災害時には、高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦、外国人、ペット同行者など、特別な配慮を要する多様な被災者が生じます。
  • 円滑な受援体制は、これらの要配慮者に対応するための専門職員(福祉、保健、語学等)や専用物資(アレルギー対応食、液体ミルク、介護用品等)を的確に受け入れることを可能にします。
  • 東日本大震災では、避難所における要配慮者支援が大きな課題となり、その後の災害対策基本法改正で、個々の状況に応じたきめ細やかな支援の必要性が明記されました。

地域社会にとっての意義

社会経済活動の早期正常化
  • 電力、ガス、水道、通信、輸送といったライフラインの寸断は、住民生活のみならず地域経済全体を麻痺させます。
  • 指定公共機関との緊密な連携体制は、これらのインフラの迅速な応急復旧を可能にし、事業活動の再開を早め、サプライチェーンの寸断による影響を最小限に食い止めます。
  • 熊本地震では最大で約47万7,000戸が停電するなど、ライフラインの途絶が復旧の大きな足かせとなった教訓から、事業者との連携強化が一層重視されるようになりました。
支援の混乱防止と共助の促進
  • 大規模災害時には、全国から多くの支援物資やボランティアが被災地に集中しますが、受援体制が未整備だと、かえって現場の混乱を招く「支援の渋滞」が発生します。
  • 事前に支援の受付窓口、物資の集積・仕分拠点、ボランティアセンターの運営方法などを定めておくことで、外部からの支援(公助・共助)を円滑に受け入れ、地域住民による自主的な助け合い活動(共助)と効果的に連携させることができます。

行政にとっての意義

被災自治体の機能不全の回避
  • 大規模災害時には、自治体庁舎の被災、職員自身の被災、通信の途絶などにより、行政機能そのものが著しく低下、あるいは完全に麻痺するリスクがあります。
  • 令和6年能登半島地震では、奥能登地域の市町が深刻な機能不全に陥り、国や県による強力なプッシュ型支援が不可欠となりました。
  • 他の自治体からの応援職員派遣や国のリエゾン(連絡調整員)の受け入れは、被災自治体のマンパワー不足を補い、災害対策本部の運営を維持するための生命線となります。
支援リソースの最大効率化

(参考)歴史・経過

1961年 災害対策基本法の制定
1995年 阪神・淡路大震災の教訓
  • 初動対応の遅れ、情報共有の不備、縦割り行政の弊害など、多くの課題が露呈しました。
  • この教訓から災害対策基本法が大幅に改正され、内閣総理大臣の権限強化、現地災害対策本部の法定化、緊急通行車両制度の創設などが行われました。
  • また、全国から駆け付けたボランティアの活躍を機に、ボランティア活動の環境整備が国の責務として位置づけられました。緊急消防援助隊や広域緊急援助隊が創設され、広域応援体制の整備が本格化しました。
2011年 東日本大震災の教訓
2016年 熊本地震の教訓
2024年 令和6年能登半島地震の課題

国・指定公共機関等との支援要請体制に関する現状データ

広域応援協定の締結状況
受援計画の策定と実効性
過去の災害における支援実績(全国)
官民連携・協定の実態

課題

住民の課題

支援の遅延とミスマッチ
  • 全国規模の支援体制が構築されているにもかかわらず、必要な支援が必要な人のもとへ迅速に届かない事態が繰り返されています。特に、道路の寸断などで孤立した地域への支援の遅れは、被災者の生命を直接脅かします。
  • 発災直後のプッシュ型支援では、被災地の具体的なニーズと送られてくる物資が合致しない「支援のミスマッチ」が発生しがちです。これにより、現場では不要な物資が滞留する一方で、本当に必要な物資(アレルギー対応食、常備薬、衛生用品など)が不足する状況が生まれます。
情報の入手困難と混乱
  • 災害時、住民は「どこで支援が受けられるのか」「何が不足しているのか」「復旧の見通しはどうか」といった正確な情報を求めていますが、行政からの情報発信が追いつかず、情報から孤立するケースが多発します。
  • 特に近年は、SNS等で不正確な情報やデマが拡散しやすく、住民の不安を煽り、避難行動や支援活動に混乱をもたらすリスクが高まっています。
    • 客観的根拠:
      • 令和6年版防災白書は、能登半島地震における教訓として、発災直後の迅速な情報収集・共有が行われず、初動対応の遅れにつながったと分析しています。また、インターネット上の偽・誤情報対策が喫緊の課題であると明記しています。
      • (出典)内閣府防災情報のページ「令和6年版 防災白書」令和6年
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 住民の不安を増大させ、不適切な避難行動や支援機会の喪失につながります。

地域社会の課題

物流のボトルネックと「ラストワンマイル」問題
  • 国や他の自治体から大量の支援物資が被災自治体に到着しても、それを各避కిょうてん(避難拠点)や在宅避難者のもとへ届ける「ラストワンマイル」の輸送が最大の難関となります。
  • 道路の損壊、ガソリン不足、輸送車両や運転手の不足、そして物資を仕分ける人員や場所の不足などが複合的に絡み合い、物資が拠点に山積みになる一方で、末端の被災者には届かないという事態が発生します。
    • 客観的根拠:
      • 杉並区の受援計画では、区内の道路事情から大型トラックの進入が困難なことや、物資集積拠点の駐車スペース不足、区職員に物流の専門知識がないことなど、ラストワンマイル問題につながる具体的な課題が平時から認識されています。
      • (出典)杉並区「杉並区救援・支援計画」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 支援物資が拠点に滞留し、最も必要としている被災者に届かない「物資はあるのに飢える」状況が発生します。
支援者(ボランティア・NPO)の受け入れと調整の困難
  • 善意のボランティアやNPOが被災地に殺到すると、その受け入れや活動調整が自治体の大きな負担となり、現場の混乱を増大させることがあります。
  • 活動内容の重複や、支援が届かない地域の発生、宿泊場所や食料の不足など、調整機能の欠如が支援活動全体の効率を低下させる要因となります。

行政の課題

情報の断絶と錯綜
  • 災害対応における最も致命的な課題は、情報の流れが滞ることです。現場の避難所が必要としている物資の情報が災害対策本部に届かず、本部が把握している支援可能リソースの情報が現場に伝わらない「情報の断絶」が常態化しています。
  • 区、都、国、指定公共機関などがそれぞれ異なるシステムで情報を管理しているため、全体の状況を誰もが同じように把握できる「共通作戦状況図(Common Operational Picture)」が存在せず、意思決定の遅れや誤りを誘発します。
受援体制の形骸化と専門人材不足
  • 多くの特別区で「受援計画」は策定されていますが、その計画を実際に運用するための専門部署や専任職員が不足しています。
  • 平時から受援業務を所管し、物流、渉外、情報管理等の専門知識を持つ人材を育成・配置する体制がなければ、いざ災害が発生した際に、計画は機能しません。応援に来た職員をどこに配置し、何をしてもらうのかを的確に指示できず、現場の混乱を増すだけという事態に陥りかねません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 応援に来た職員や物資を有効に活用できず、現場の混乱を増幅させる「支援が負担になる」事態に陥ります。
官民・NPO連携の実効性の欠如
  • 多くの自治体が民間企業やNPOと災害時協力協定を締結していますが、その多くが「いざという時は協力する」という精神的な合意にとどまり、具体的な協力要請の手順、役割分担、情報共有の方法などが定められていないケースが少なくありません。
  • 協定が実効性を持つためには、平時からの共同訓練や具体的なシナリオに基づくシミュレーションを通じて、お互いの能力や限界を理解し、顔の見える関係を構築しておくことが不可欠です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 民間やNPOが持つ貴重なリソース(専門性、物資、人材)が遊休化し、公的支援だけでは対応できない課題が解決されません。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果:
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決にとどまらず、複数の課題解決や多くの住民への便益に横断的につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性:
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の体制や仕組みを活用できる施策は、新たな大規模な体制構築が必要な施策よりも優先度が高くなります。
  • 費用対効果:
    • 投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。短期的なコストだけでなく、将来的な被害軽減や復旧コスト削減といった長期的な便益も考慮します。
  • 公平性・持続可能性:
    • 特定の地域や層だけでなく、高齢者や障害者、外国人を含む幅広い住民に便益が及ぶ施策を優先します。また、一時的な効果ではなく、継続的に効果が持続する仕組みづくりを高く評価します。
  • 客観的根拠の有無:
    • 過去の災害の教訓や、国内外の先進事例、政府の調査報告書等で効果が示されている、エビデンスに基づいた施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • これまでの課題分析から、災害時の支援要請体制における問題は「情報の断絶」を起点とし、「物流の混乱」「受援体制の機能不全」へと連鎖する構造的なものであることが明らかになりました。したがって、支援策は対症療法ではなく、この連鎖を断ち切るための根本的な改革を目指すべきです。
  • この考えに基づき、以下の3つの柱で支援策を体系化し、優先順位を設定します。
    1. 【高優先度】情報と物流の基盤改革: 全ての活動の土台となる情報共有と物流管理の仕組みを最優先で構築します。これがなければ、他の施策は効果を発揮しません。
    2. 【中優先度】実行部隊の専門化と体制強化: 改革された基盤を使いこなし、現場を動かすための専門的な人材と組織体制を整備します。
    3. 【継続的取組】連携ネットワークの実質化: 形式的な協定から、実践的な協働関係へと転換させ、地域全体の災害対応力を底上げします。

各支援策の詳細

支援策①:【高優先度】統合受援・物流調整プラットフォームの構築

目的
  • 区、都、国、指定公共機関、民間事業者、NPOなど、全ての支援関係者が同一の情報をリアルタイムで共有できる「共通作戦状況図」をデジタル上に構築します。
  • これにより、情報の断絶と錯綜を解消し、データに基づいた迅速かつ的確な支援要請と物流調整を実現します。
主な取組①:リアルタイム・ニーズマップの導入
  • GIS(地理情報システム)を活用し、地図上に各避難所や地域のニーズをリアルタイムで可視化するシステムを導入します。
  • 避難所の運営者や地区の担当者がスマートフォン等から「毛布50枚不足」「要介護者用トイレ設置要請」「〇〇道路通行不能」といった情報を入力すると、即座に災害対策本部のマップに反映される仕組みです。
主な取組②:支援リソース・カタログのデジタル化
  • 国、都、他の自治体、民間企業、NPO等が提供可能な支援(人的、物的、専門サービス等)をデータベース化し、「支援リソース・カタログ」としてプラットフォーム上で一覧できるようにします。
  • 「〇〇社:4tトラック5台提供可」「△△市:保健師3名派遣可」といった情報がリアルタイムで更新され、ニーズマップの情報と照合し、最適な支援を迅速に要請・マッチングさせます。
主な取組③:プッシュからプルへの移行プロトコルの実装
  • プラットフォーム上に、災害対応フェーズ(例:「超急性期:プッシュ型支援要請」「急性期:プッシュ・プル併用」「亜急性期:プル型支援中心」)を設定・表示する機能を設けます。
  • 被災区の災害対策本部がこのフェーズを更新することで、全ての支援機関に対して、現在どのような支援が求められているかを明確に伝達し、無秩序な支援の流入を防ぎ、円滑な支援形態の移行を促します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 支援物資の要請から避難所到着までの平均時間 50%短縮
      • データ取得方法: プラットフォーム上の要請時刻と、避難所での受領時刻のログデータを分析。
  • KSI(成功要因指標)
    • プラットフォームへの主要支援機関(国、都、協定企業)の接続率 100%
      • データ取得方法: プラットフォームの利用機関登録状況を確認。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 支援物資のミスマッチ率(要請外物資の受領割合) 80%削減
      • データ取得方法: 避難所での受領物資リストと、プラットフォーム上の要請リストを突合調査。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • プラットフォームの機能に関する合同訓練の実施回数 年2回以上
      • データ取得方法: 訓練実施計画及び報告書により確認。

支援策②:【中優先度】専門職による「特別区広域ロジスティクス・チーム(T-LRT)」の創設

目的
  • 平時から災害時の受援・物流業務を専門に担う常設のプロフェッショナルチームを、特別区が共同で設置・運営します。
  • これにより、各区の専門人材不足という構造的な課題を解決し、高度な計画策定能力と、災害時の即応的な現場指揮能力を確保します。
主な取組①:チームの編成と専門性
  • 特別区長会などが運営主体となり、民間企業(大手物流、商社、コンサルティングファーム等)からサプライチェーン・マネジメント(SCM)、ロジスティクス、データ分析、危機管理広報等の専門知識を持つ人材を、任期付き職員やプロフェッショナル人材として採用・編成します。
  • 自衛隊や消防のOBなど、災害現場での指揮経験が豊富な人材も登用します。
    • 客観的根拠:
      • 行政内部の異動だけでは育成が困難な高度な専門性を、外部から積極的に導入することで、災害対応能力を飛躍的に向上させます。
主な取組②:平時の役割と災害時の権限
  • 平時: T-LRTは、支援策①で構築したプラットフォームの維持管理、全23区の受援計画の標準化・高度化支援、そしてプラットフォームを活用した実践的な合同訓練の企画・実施を主導します。
  • 災害時: 被災した区の要請に基づき、災害対策本部に派遣されます。そこで、区長のもとで受援・物流部門の現場指揮官として、プラットフォームを駆使し、全国から集まる支援(人・物)の受け入れ、管理、配分を一元的にマネジメントします。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 応援職員・物資の受入から現場配備・配分までのリードタイム 70%短縮
      • データ取得方法: T-LRTが関与した災害対応(または大規模訓練)における、応援部隊の到着時刻と活動開始時刻、物資の集積所到着時刻と避難所への配分完了時刻のログを分析。
  • KSI(成功要因指標)
    • 全特別区を対象としたT-LRT主導の受援・物流訓練の実施率 年1回以上
      • データ取得方法: 訓練実施計画及び報告書により確認。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 訓練における物資集積所の滞留率(24時間以上滞留する物資の割合) 30%以下
      • データ取得方法: 訓練時の物資管理タグやシステムのデータから算出。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • T-LRTの常勤専門職数 50名以上確保
      • データ取得方法: 人事発令状況により確認。

支援策③:【継続的取組】実効性重視の官民NPO連携ネットワークの再構築

目的
  • 単に協定の数を増やすのではなく、協定の実効性を高めることに主眼を置き、平時から実践的な連携を行う「真のパートナー」との関係を深化させます。
  • これにより、災害時に官民NPOの各主体が持つリソースを最大限に活用できる、強靭な支援エコシステムを構築します。
主な取組①:協定のティア(階層)化
  • 災害時協力協定を、その重要度や役割に応じて階層化(ティア化)します。
  • ティア1(戦略的パートナー): 大手物流事業者、建設会社、通信事業者など、災害対応の根幹を担う企業。これらの企業とは、プラットフォームへの常時接続、T-LRTとの定期的な合同訓練の実施、詳細な行動計画の共同策定など、深いレベルでの連携を行います。
  • ティア2(協力的パートナー): 食料品提供、専門サービス提供など、特定の分野で協力する企業・団体。標準化された要請手順に基づき、必要な際に協力を要請する関係を構築します。
    • 客観的根拠:
      • 数百件にのぼる協定を効率的に管理し、限られた行政リソースを最も重要なパートナーとの連携強化に集中させるための戦略的アプローチです。
      • (出典)板橋区「防災協定について」令和3年
主な取組②:NPO・ボランティアとの協働プラットフォーム構築
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 災害時における民間・NPOリソースの活用率(協定に基づく要請件数・活動実績) 2倍増
      • データ取得方法: 災害対応報告書やプラットフォームのログに基づき、協定が実際に活用された件数や規模を過去の災害と比較。
  • KSI(成功要因指標)
    • ティア1協定企業との合同実動訓練の実施率 100%(年1回以上)
      • データ取得方法: 訓練実施計画及び報告書により確認。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 協定に基づく支援要請の平均応答時間(要請から協力受諾までの時間) 24時間以内
      • データ取得方法: プラットフォームの通信ログや、訓練時の記録から計測。
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • NPO・ボランティア調整スキームへの登録団体数 200団体以上
      • データ取得方法: 調整プラットフォームの登録団体リストにより確認。

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「せたがや防災NPOアクションによる支援者調整機能」

  • 世田谷区では、災害時に活動する区内のNPO団体が平時からネットワークを構築し、災害発生時には円滑に連携して支援活動を行うための枠組み「せたがや防災NPOアクション」を区との協働で運営しています。
  • この取組は、発災後3日後を目途にアクション本部を立ち上げ、区と連携して被災情報を収集すると同時に、全国から集まる外部支援団体の受け入れ窓口として機能することを定めています。
  • 成功要因は、行政主導ではなく、NPOが主体となったボトムアップ型のアプローチにより、平時から「顔の見える関係」を構築している点にあります。これにより、災害時に頻発する支援の重複や偏り、情報共有の混乱といった課題を未然に防ぎ、効果的な支援者調整を実現することが期待されます。

杉並区「民間事業者の専門性を活用した網羅的協力協定」

  • 杉並区は、物資供給や輸送といった一般的な支援に留まらず、民間事業者の持つ高度な専門性を活用した、非常に広範かつ具体的な協力協定を多数締結しています。
  • 具体例として、語学ボランティアの派遣(杉並区交流協会)、負傷した動物の応急処置(東京都獣医師会杉並支部)、災害時の行政手続き支援(東京都行政書士会杉並支部)、給電車の貸与(トヨタモビリティ東京)など、公的機関だけでは対応が難しいきめ細やかなニーズに応える体制を構築しています。
  • この成功要因は、地域の事業者が持つリソースや専門知識を「防災力」として捉え、多様な分野で積極的に連携を図る姿勢にあります。これにより、災害時における区民の多様な困難に対応する重層的なセーフティネットを形成しています。

板橋区「自治体・民間施設を活用した多層的広域避難体制」

  • 板橋区は、災害時の相互応援について、複数の自治体との広域的なネットワークと、民間施設を活用した具体的な避難先確保という、多層的なアプローチを採っています。
  • 13の自治体と広域的な相互援助協定を結ぶ一方で、首都直下地震等を想定し、協定を結ぶ自治体のホテル等の民間施設を区民の広域避難先として活用する協定改定を行っています。
  • この成功要因は、自治体間の形式的な応援協定に留まらず、被災者の具体的な避難生活の場を確保するという現実的な課題解決を目指している点です。被災時には旅行者のキャンセルが見込まれる協定先自治体の宿泊施設を避難先として活用することは、双方にメリットのある持続可能な連携モデルと言えます。

全国自治体の先進事例

静岡県・浜松市「防災DXによる支援要請・管理の効率化」

  • 静岡県や浜松市では、デジタル技術を活用して災害時の支援要請・管理を効率化する「防災DX」の取組が進められています。
  • 特に、浜松市で実証実験が行われた防災DXプラットフォーム「B-order」は、被災自治体と支援を行う自治体・協定企業等をデジタルでつなぎ、従来は電話やFAXに頼っていた支援要請や状況報告をプラットフォーム上で一元管理するものです。
  • この取組の成功要因は、災害対応における最大のボトルネックである「情報共有」の課題を、テクノロジーで解決しようとする明確なビジョンにあります。リアルタイムでのニーズ把握と支援のマッチングは、支援の迅速化と効率化に直結し、全国の自治体が目指すべき方向性を示しています。

熊本県「災害ケースマネジメントによる被災者本位の支援体制」

  • 熊本県では、2016年の熊本地震の教訓から、被災者一人ひとりの状況に寄り添い、生活再建までを継続的に支援する「災害ケースマネジメント」の取組が全国に先駆けて導入されました。
  • これは、見守りや相談支援を通じて個々の被災者が抱える複雑な課題(住まい、仕事、健康、心のケア等)を把握し、行政やNPO、専門家などの様々な支援メニューを組み合わせて、一人ひとりに最適な支援計画を作成・実行していくアプローチです。
  • この取組の成功要因は、支援を「物資の配分」といった画一的なものから、「個人の生活再建」というゴールに向けたオーダーメイドのものへと転換させた点にあります。これは、支援の「供給側」の論理ではなく、支援の「需要側」である被災者の視点に立った、真に効果的な支援体制のあり方を示唆しています。
    • 客観的根拠:

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区の支援要請体制は、協定締結等で形式的には進展していますが、令和6年能登半島地震は計画と実行の乖離を露呈しました。課題の根源は情報の断絶と物流の混乱、専門人材不足にあります。今後は、情報・物流プラットフォームの構築、専門チームの創設、実効性ある官民NPO連携の再構築という三位一体の改革により、真に機能する強靭な支援体制を確立すべきです。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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