14 子育て・こども

助産支援

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(助産支援を取り巻く環境)

  • 自治体が助産支援を行う意義は、「次世代の心身の健康という持続可能な社会の基盤への投資」と、「産後うつや児童虐待といった母子保健上の危機を未然に防ぎ、長期的な社会コストを削減すること」にあります。
  • 助産支援とは、妊娠期から出産、産後期に至るまで、助産師を中心とする専門職が母子とその家族に対して提供する、切れ目のない包括的なケアシステムを指します。これには、母親の身体的・精神的ケア、乳児のケア、育児技術の指導、そして家族全体の新しい生活への適応支援が含まれます。1
  • 東京都特別区をはじめとする都市部では、深刻な少子化が進行する一方で、晩婚化・晩産化、核家族化の進展、地域社会からの孤立といった要因により、妊産婦が抱える課題はより複雑化・深刻化しています。この結果、出生数は減少しているにもかかわらず、一人ひとりの母子に対する支援の必要性はむしろ増大するという状況にあります。4

意義

住民にとっての意義

心身の健康維持と産後うつの予防
育児スキルの向上と自信の醸成
孤立感の解消と社会的つながりの構築

地域社会にとっての意義

児童虐待の予防
次世代の健全な育成
  • 妊娠期から乳幼児期にかけての母子の健康は、子どものその後の身体的・精神的・知的な発達の基盤を形成するため、この時期への支援は社会全体にとっての未来への投資となります。16
地域における周産期医療・ケア基盤の維持

行政にとっての意義

長期的社会保障費の抑制
少子化対策への貢献
  • 女性が安心して子どもを産み、育てられる社会環境を整備することは、「次元の異なる少子化対策」の根幹をなす要素です。特に、出産・育児に伴う心身の負担や孤立感を軽減する助産支援の充実は、次の子どもを望む意欲にもつながります。22
こども大綱の理念実現
  • 2023年に閣議決定された「こども大綱」が掲げる「こどもの健やかな成長」「妊娠期からの切れ目のない支援」という理念を具現化する上で、助産支援は最も重要な出発点となります。24

(参考)歴史・経過

  • 江戸時代〜明治時代
    • 出産は主に自宅で行われ、地域の経験豊かな「産婆(さんば)」が取り仕切るのが一般的でした。産婆は、地域コミュニティに根差した継続的なケアを提供する存在でした。28
    • 1899年(明治32年)、初めて「産婆規則」が公布され、免許制度が確立。助産業務が専門職として公的に認められました。29
  • 戦後〜昭和後期
    • GHQの指導のもと、日本の医療制度改革が進められ、出産は安全性を重視する観点から病院や診療所で行う「施設分娩」が主流となりました。これにより、地域に根差した産婆の役割は大きく変化しました。28
    • 1948年(昭和23年)、「保健婦助産婦看護婦法」が制定され、「産婆」は「助産婦(じょさんぷ)」に改称。看護師資格を基盤とする専門職として位置づけられました。29
    • 1965年(昭和40年)、「母子保健法」が制定。それまで児童福祉法の一部であった母子保健施策が独立し、妊産婦と乳幼児の健康を守るための行政の役割が明確化されました。16
  • 平成〜令和
    • 2002年(平成14年)、男女共同参画の流れを受け、名称が「助産婦」からジェンダーニュートラルな「助産師(じょさんし)」に改められました。33
    • 核家族化と都市化が進む中で、産後の母親の孤立や育児不安、産後うつが社会問題として顕在化。これに対応するため、行政による支援の必要性が高まりました。
    • 2014年度(平成26年度)、国は「産後ケア事業」を予算事業として創設し、市町村による実施を推進し始めました。17
    • 2019年(令和元年)の母子保健法改正により、市町村が産後ケア事業を行うことが「努力義務」として法的に位置づけられ、全国的な普及が加速しました。6
    • 2023年(令和5年)に策定された「こども大綱」では、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援体制の重要性が改めて強調され、助産支援はその出発点として中核的な役割を担うことが期待されています。24

助産支援に関する現状データ

出生数と合計特殊出生率の急激な低下
  • 日本の出生数は減少の一途をたどり、2023年(令和5年)には72万7,277人と過去最少を更新。合計特殊出生率も1.20と過去最低水準に落ち込み、8年連続の低下となりました。これは、社会の存続基盤を揺るがす危機的な状況を示唆しています。4
  • 特に東京都の状況は深刻で、2023年の合計特殊出生率は0.99と、全国で唯一1.0を下回りました。これは、高い生活コストや核家族化が進む大都市特有の課題が、子どもを持つことを一層困難にしている現状を浮き彫りにしています。4
助産師の就業者数と就業場所の偏り
  • 全国の就業助産師数は緩やかに増加しており、2012年(平成24年)の31,835人から、2022年(令和4年)には38,063人となりました。41
  • しかし、その就業場所は著しく偏在しています。2022年時点で、60.7%が病院、23.0%が診療所に勤務しており、地域に根差したケアを提供する「助産所」での勤務はわずか6.4%に留まっています。これは、助産師の専門性が医療機関内に集中し、地域における継続的な支援体制が脆弱であることを示しています。41
助産所の減少と経営難
産後ケア事業の実施状況と利用率
  • 制度の普及は進んでおり、2020年(令和2年)時点で東京都特別区の87.0%が産後ケア事業を実施しています。45
  • しかし、高いニーズがあるにも関わらず、実際の利用率は低い水準に留まっています。全国調査では、産後ケア事業を「知っていたが利用しなかった」母親のうち、実際に利用したのは約3割という結果も出ています。制度はあっても、住民に届いていない、あるいは利用しにくいという大きな課題が存在します。46
  • ある自治体の調査では、産後ケア事業を「知らなかった」と回答した母親が22%に上り、周知不足が利用の大きな障壁となっていることがわかります。12
産後うつの高い有病率
  • 複数の調査から、日本の産後うつの有病率は10%〜15%程度と推定されています。特に、産後1か月の時点での有病率は14.3%に達するという大規模なメタアナリシス研究の結果があります。7
  • これを東京都の年間出生数(約9万人)に当てはめると、毎年1万2千人以上の母親が産後うつを経験している可能性があり、これは見過ごすことのできない公衆衛生上の課題です。

課題

住民の課題

産後うつ・育児不安の深刻化と支援アクセスの障壁
  • 出産後の母親は、ホルモンバランスの急激な変化に加え、「赤ちゃんの世話がうまくできない」「授乳がうまくいかない」「24時間続く育児からの逃げ場がない」といった強いストレスと孤独感に苛まれます。47
  • こうした心身の不調や不安を抱えながらも、多くの母親が「これくらい普通のことだ」「自分が頑張ればいい」と考え、支援を求めることにためらいを感じます。
  • また、産後ケア事業の存在を知っていても、「手続きが面倒」「知らない人に家に来てもらうのは不安」「自分が対象者だと思わなかった」といった心理的・情報的な障壁により、利用に至らないケースが多数存在します。48
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 母親のメンタルヘルスが悪化し、産後うつが重症化することで、児童虐待やネグレクト、最悪の場合は母子心中といった悲劇につながるリスクが高まります。
経済的負担とサービス利用の躊躇
  • 産後ケア事業には利用者負担があり、例えば宿泊型で1泊数千円から1万円程度の費用がかかります。産休・育休中で収入が減少する家庭にとって、この費用は決して軽微なものではなく、利用を断念する一因となっています。49
  • 自治体によって利用料金や助成制度に大きな格差があり、居住地によって受けられる支援の質と量が異なるという不公平な状況が生まれています。47
多様化するニーズへの対応不足(外国人・高齢出産・多胎児等)
  • 日本語が不自由な外国人妊産婦は、言語の壁により行政サービスの情報にアクセスできず、医療機関での意思疎通も困難なため、極度の孤立状態に陥りがちです。文化や宗教的背景への配慮も不足しています。51
  • 多胎児や上の子がいる家庭では、産後ケア施設が兄姉の同伴を認めていなかったり、多胎児対応のスタッフが不足していたりするため、利用を断られるケースがあります。53
  • 高齢出産など、医学的なリスクを抱える妊産婦は、助産所でのケアを希望しても安全上の理由から受け入れを断られることが多く、ケアの選択肢が狭められています。19

地域社会の課題

助産所・産科医療機関の減少と地域ケア基盤の脆弱化
  • 少子化による分娩数の減少と、それに伴う経営悪化により、地域に根差した助産所や分娩を取り扱う診療所が次々と閉鎖に追い込まれています。5
  • 助産所を開業する上で最大の障壁の一つが、医療法で定められた嘱託医・嘱託医療機関の確保です。緊急時の連携先が見つからず、開業を断念する助産師が後を絶ちません。これは、地域における出産・ケアの選択肢を狭める深刻な問題です。54
助産師の偏在と人材確保・育成の困難
  • 助産師の総数は増加傾向にあるものの、その多くは都市部の大学病院や総合病院に集中しています。一方で、地域の中小病院や助産所、過疎地域では深刻な助産師不足に陥っており、地域間での著しい偏在が生じています。42
  • 分娩取扱施設が減少していることで、助産師を目指す学生が正常分娩の介助など、実践的な臨床実習の機会を十分に確保することが困難になっています。これは、将来の助産師の質の低下やなり手不足につながる悪循環を生み出しています。57

行政の課題

産後ケア事業の低利用率と提供体制のミスマッチ
  • 行政は産後ケア事業の提供体制を確保しようと努めていますが、委託先の医療機関や助産所からは「人員不足」「空きベッドがない」といった理由で受け入れを断られることが多く、需要に応えられていません。47
  • 一方で、住民側から見ると、申請手続きが電話や窓口での紙ベースのアナログなままであり、心身ともに疲弊している産後の母親にとっては、その手続き自体が高いハードルとなっています。この結果、制度があるのに利用されないというミスマッチが生じています。48
母子保健と児童福祉の縦割り構造による支援の分断
  • 現在の行政システムでは、妊産婦の相談に乗り、不調のサインを把握する「母子保健部門(保健師等)」と、虐待対応などを行う「児童福祉部門(ケースワーカー等)」が組織的に分断されています。このため、両者間の情報共有は担当者個人の努力に依存しており、組織的な連携が機能していません。20
  • 国の方針で「こども家庭センター」の設置が進められていますが、多くの自治体では、既存の組織を看板だけ変えた状態に留まり、物理的にも機能的にも一体化が進んでいないのが実情です。これにより、支援が必要な家庭の情報が途中で途切れてしまう「支援の谷間」が生じています。60
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 支援が必要なハイリスク家庭が制度の隙間に落ち、早期介入の機会を逃すことで、防げたはずの児童虐待や母子の精神的危機といった深刻な事態を招きます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果:
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、住民の満足度向上や課題解決に直結する施策を高く評価します。また、一つの施策が複数の課題に好影響を与える波及効果の大きさも重視します。
  • 実現可能性:
    • 現在の法制度や財源、人員体制のもとで、比較的速やかに着手・実行できる施策を優先します。既存の仕組みや資源を活用できる施策は、優先度が高いと判断します。
  • 費用対効果:
    • 投入する予算や人員といった行政コストに対し、得られる社会的便益(長期的な医療費・社会保障費の削減、住民のQOL向上など)が大きい施策を高く評価します。
  • 公平性・持続可能性:
    • 所得や地域、国籍に関わらず、全ての住民が等しく恩恵を受けられる公平性の高い施策を優先します。また、一時的な対応に終わらず、長期的に安定して継続できる制度設計を重視します。
  • 客観的根拠の有無:
    • 国の白書や統計、先進自治体の実績など、効果が客観的なデータで裏付けられている施策を高く評価します。エビデンスに基づき、効果測定が可能な施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 助産支援体制の再構築にあたっては、「住民への直接支援の強化」「支援の担い手である地域基盤の強化」「支援を支える行政システムの改革」という3つの視点から、総合的かつ段階的に取り組むことが不可欠です。
  • 優先度【高】:支援策① 産後ケア事業の抜本的強化とユニバーサルな利用促進
    • 住民が直面する最も切実な課題(産後うつ、育児不安、経済的負担)に直接応える施策であり、即効性と波及効果が最も高いと判断します。住民満足度の向上に直結するため、最優先で取り組むべきです。
  • 優先度【中】:支援策② 地域助産力強化による支援ネットワークの再構築
    • 支援策①を持続可能なものにするための基盤整備であり、中長期的な視点で極めて重要です。地域のケア資源である助産所がなければ、産後ケア事業は成り立ちません。支援の担い手を確保・育成する本施策は、制度の持続可能性を担保します。
  • 優先度【低→高】:支援策③ DXと官民連携による「切れ目のない」相談支援体制の確立
    • 初期投資を要するため短期的な優先度は中に位置づけられますが、長期的には全ての支援の質と効率を飛躍的に向上させるための根幹となる施策です。支援策①と②の効果を最大化するための「イネーブラー(実現化要因)」であり、最終的には最も重要な基盤となります。

各支援策の詳細

支援策①:産後ケア事業の抜本的強化とユニバーサルな利用促進

目的
  • 産後ケアを、一部の人が利用する特別なサービスから、全ての親子が必要な時に当たり前に利用できる「ユニバーサルな社会的インフラ」へと転換します。
  • 情報的・心理的・経済的な障壁を取り除き、誰一人取り残さない支援体制を構築することで、産後うつや児童虐待を予防し、安心して子育てをスタートできる社会を実現します。
主な取組①:利用手続きのDX化とプッシュ型支援の導入
  • 特別区共通のオンライン予約システムを構築し、利用者がスマートフォン一つで24時間365日、管内の産後ケア施設(宿泊・デイサービス・訪問)の空き状況確認から予約までを完結できる仕組みを整備します。62
  • 妊娠届出時に、全ての妊婦を対象に産後ケア利用の仮登録を行い、専用アプリやLINE等を通じて、出産予定日や産後の時期に合わせて利用案内や予約サイトへのリンクを自動で配信する「プッシュ型」の支援に転換します。64
  • これにより、「申請方法が分からない」「利用を忘れていた」といった理由による利用漏れを防ぎます。
主な取組②:利用者負担の軽減と公平性の確保
  • 杉並区の「子育て応援券」のようなバウチャー(利用券)制度を導入します。妊娠届出時や出産時に一定額の応援券を配布し、利用者はそれを区が認定した産後ケアサービス(助産師の乳房ケア、家事支援、ベビーシッター等)に自由に利用できるようにします。これにより、利用者の選択の幅を広げ、多様なニーズに応えます。68
  • 所得に応じた段階的な利用者負担額を設定し、住民税非課税世帯や生活保護受給世帯については、負担を大幅に軽減または免除する制度を全区で統一的に導入し、経済的理由で利用を諦めることがないようにします。13
主な取組③:多様なニーズに対応するサービスメニューの拡充
  • 産後ケア事業の委託契約において、多胎児や兄姉の受け入れ体制(専用の部屋や保育スタッフの配置等)を整備することを仕様に盛り込み、対応可能な施設には追加の補助金を交付します。17
  • 外国人妊産婦支援を専門とするNPO法人(例:Mother’s Tree Japan)等と連携し、多言語対応の相談窓口の設置、医療通訳の派遣、文化・宗教に配慮したケアを提供できる助産師とのマッチングを実施します。74
  • 港区の「みなと母子手帳アプリ」のように、多言語での情報提供やプッシュ通知機能を活用し、外国人住民にも情報が届く体制を構築します。64
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 産後ケア事業の利用率(全出生数に対する利用経験者の割合):80%以上
      • データ取得方法: 各区の母子保健統計、事業実績報告の集計
    • エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)でハイリスク(9点以上)と判定される産婦の割合を5ポイント低減
      • データ取得方法: 1か月児健診等でのEPDS実施結果の集計・分析
  • KSI(成功要因指標)
    • オンライン予約システムの利用率(全予約件数に占めるオンライン予約の割合):90%以上
      • データ取得方法: 予約システムのログデータ分析
    • 産後ケア事業の利用者満足度(「大変満足」「満足」の合計):95%以上
      • データ取得方法: 事業利用者を対象とした定期的なウェブアンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 利用申請から承認までの平均所要日数:1日以内(現状:数日〜1週間)
      • データ取得方法: 予約システムの申請・承認タイムスタンプの分析
    • 「経済的理由」によるサービス未利用者の割合:5%未満
      • データ取得方法: 住民アンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • オンライン予約システム導入区数:23区
      • データ取得方法: 各区の事業実施状況調査
    • 多胎児・兄姉同伴対応可能な提携施設数:現状比50%増
      • データ取得方法: 委託契約内容の集計

支援策②:地域助産力強化による支援ネットワークの再構築

目的
  • 減少・脆弱化している地域の助産所を、母子保健の重要な社会資源として再評価し、その経営基盤と専門性を強化します。
  • 助産師が地域で活躍できる環境を整備することで、住民が身近な場所で質の高い継続的なケアを受けられる、持続可能な支援ネットワークを構築します。
主な取組①:嘱託医・連携医療機関マッチング支援制度の創設
  • 東京都または特別区長会が主体となり、助産所の嘱託医や連携医療機関となることに協力的な医師・病院のリストを作成し、公的に管理・公開します。
  • 新規に開業を目指す助産師や、連携先の確保に困難を抱える既存の助産所に対し、このリストを基に行政が仲介役となってマッチングを支援します。
  • 標準的な連携契約書のひな形を提供し、契約手続きを円滑化することで、開業の最大の障壁となっている問題を解消します。55
主な取組②:助産所運営への継続的な財政支援
  • 開業時の一時的な補助金だけでなく、特に産後ケア事業など行政の委託事業を担う助産所に対して、継続的な運営費補助制度を創設します。
  • 補助額は、産後ケアの受け入れ実績(延べ利用者数など)に応じて算定し、行政サービスを担うほど経営が安定するインセンティブ設計とします。これにより、不採算となっている公的事業の担い手を確保・拡大します。44
主な取組③:助産師の地域定着とスキルアップ支援
  • 東京都看護協会が実施している「助産師出向支援事業」を参考に、助産師が不足している地域の助産所や診療所へ、人材に余裕のある大規模病院から助産師を一定期間派遣する「地域助産師バンク」制度を特別区で共同運営します。57
  • 助産師が、産後うつに関する専門的カウンセリング技術、多胎児ケア、外国人対応など、地域のニーズの高い専門スキルを習得するための研修受講費用を助成し、キャリアアップを支援します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特別区内の分娩取扱助産所数および産後ケア実施助産所数:5年間で20%増加
      • データ取得方法: 保健所への開設届、衛生行政報告例のデータ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 嘱託医未確保による助産所開業断念率:90%削減
      • データ取得方法: 助産師会等と連携した開業希望者へのアンケート調査
    • 産後ケア事業受託助産所の経営黒字化率:60%以上(現状10%未満)
      • データ取得方法: 委託助産所への定期的な経営実態調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 地域助産師バンクを通じたマッチング成立件数:年間20件以上
      • データ取得方法: 事業運営主体による実績集計
    • 助産所における産後ケアサービス提供可能枠(延べ日数):現状比30%増
      • データ取得方法: オンライン予約システム上の提供枠データ集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 嘱託医マッチング支援制度の利用件数:年間10件以上
      • データ取得方法: 制度運営窓口での申請・実績管理
    • 助産所への運営費補助金の総交付額および交付施設数
      • データ取得方法: 各区の予算執行実績
    • 専門スキルアップ研修の助成利用者数:年間50人以上
      • データ取得方法: 助成金申請・実績管理

支援策③:DXと官民連携による「切れ目のない」相談支援体制の確立

目的
  • 行政の縦割り構造を打破し、母子保健と児童福祉の情報を一元化・共有するデジタル基盤を構築します。
  • これにより、支援が必要な家庭を早期に発見し、関係機関が一体となって迅速かつ最適な支援を届ける「真に切れ目のない」相談支援体制を実現します。
主な取組①:母子保健・児童福祉統合情報連携プラットフォームの構築
  • kintoneやSalesforceなどのクラウドサービスを基盤とし、母子保健情報(妊婦健診、産婦健診、乳幼児健診の結果、EPDSスコア等)と児童福祉情報(相談記録、支援履歴等)を、本人の同意に基づき、権限を持つ関係者(保健師、助産師、ケースワーカー、医師等)のみがセキュアに共有できるプラットフォームを構築します。80
  • 例えば、産婦健診でEPDS高値が記録された場合、システムが自動でリスク判定し、地域の保健師とこども家庭センターのケースワーカー双方にアラートを通知。迅速な共同介入を促す、といった活用を目指します。
主な取組②:「こども家庭センター」の機能的統合の推進
  • 現在、多くの区で別々の場所に設置されている母子保健部門(保健センター等)と児童福祉部門(児童相談所や区役所内担当課)の拠点を、物理的に「こども家庭センター」に集約・統合します。
  • 母子保健担当の保健師・助産師と、児童福祉担当のケースワーカーが同じフロアで日常的に顔を合わせ、ハイリスクケースについて即座に情報交換や共同対応方針を協議できる体制(合同ケース会議の定例化など)を構築します。60
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 要支援家庭の特定から初回支援(訪問・面談等)開始までの平均日数:3日以内(現状:1〜2週間)
      • データ取得方法: 統合情報連携プラットフォームの記録分析
    • 児童虐待相談対応件数のうち、母子保健部門からの情報提供が契機となった割合:50%以上
      • データ取得方法: こども家庭センターの相談対応記録の分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 母子保健・児童福祉部門間でのケース情報共有件数(プラットフォーム上):対前年度比300%増
      • データ取得方法: プラットフォームのログデータ分析
    • 職員の「他部門との連携が円滑になった」との回答率:80%以上
      • データ取得方法: こども家庭センター職員への定期アンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 支援の重複や漏れの発生件数:対前年度比80%削減
      • データ取得方法: ケース記録の監査、スーパーバイザーによる評価
    • ハイリスク家庭の産後ケア事業利用率:90%以上
      • データ取得方法: 事業実績報告と要支援家庭リストのマッチング分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 統合情報連携プラットフォームの導入区数:23区
      • データ取得方法: 各区のシステム導入状況調査
    • 部門横断の合同ケース会議の月間開催回数:各区平均4回以上
      • データ取得方法: こども家庭センターの議事録・活動報告
    • プラットフォームの研修を受講した職員の割合:全関連職員の95%以上
      • データ取得方法: 研修実施記録の管理

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「区立産後ケアセンターによる安定的・安価なサービス提供」

  • 世田谷区は、区が直接運営する「産後ケアセンター」を設置し、質の高いサービスを安価で安定的に提供しています。民間施設では1泊3万円以上かかることもある中、区立施設では1泊4,500円(非課税世帯等には減免あり)という低料金を実現しています。50
  • 24時間助産師が常駐し、母体ケアや授乳指導はもちろん、臨床心理士によるカウンセリングも提供。利用者の満足度は極めて高く、「たまった不安を解決できた」「食事が美味しく心身ともに休めた」といった声が多数寄せられています。83
  • 成功要因:
    • 安定的運営: 自治体が直接運営することで、民間事業者の経営状況に左右されない安定したサービス提供を可能にしています。
    • 信頼性と公平性: 「区立」であることの安心感と、所得に応じた公平な料金設定が、住民の利用しやすさに繋がっています。
    • 質の担保: 申し込み受付やクレーム対応を区が一括して行うことで、現場スタッフは専門的なケアに集中できる環境が確保されています。83
    • 客観的根拠:

杉並区「子育て応援券を活用した利用者本位のサービス選択支援」

  • 杉並区は、0歳から2歳の子どもを持つ家庭に「子育て応援券」という独自のバウチャーを配布しています。この応援券は、区が認定した多様な民間事業者のサービスに利用できます。1
  • 利用者は、助産師による乳房ケアや育児相談、産後の骨盤ケア、家事支援、一時保育など、自身のニーズに合ったサービスをカタログから自由に選んで利用することができます。これにより、行政が画一的なサービスを提供するのではなく、利用者が主体的に支援を選択できる仕組みを構築しています。4
  • 成功要因:
    • 利用者本位の柔軟性: 利用者が自身の状況に合わせて必要なサービスを組み合わせられるため、満足度が非常に高いです。
    • 地域経済の活性化: 地域の多様な子育て支援事業者の育成と経営安定に貢献しています。
    • 官民連携の促進: 行政は応援券の発行と事業者認定に徹し、実際のサービス提供は民間の専門性に委ねるという効果的な官民連携モデルを確立しています。
    • 客観的根拠:

港区「多言語・多文化対応による外国人妊産婦支援」

  • 港区は、区内に多くの外国人住民が暮らす実態を踏まえ、多言語・多文化に対応した手厚い助産支援を展開しています。妊娠届出時から「みなとプレママ応援事業」として助産師による全員面談を実施し、必要に応じて通訳を手配します。6
  • NPO法人と連携し、日本語が苦手な方向けにひらがなやフリガナを多用した「やさしい日本語版」の子育て応援メールを配信。また、公式の母子手帳アプリも多言語に対応しており、情報格差の解消に努めています。7
  • 成功要因:

全国自治体の先進事例

兵庫県神戸市「多様なニーズに応える詳細な産後ケアメニューと利用しやすい料金体系」

  • 神戸市は、宿泊型、通所型、訪問型という3つのタイプの産後ケア事業を整備し、利用者が自身の状況に応じて選択できる体制を構築しています。特に、訪問型産後ケアは1回1,000円(非課税世帯等は無料)と非常に安価で、利用のハードルを大幅に下げています。10
  • ケア内容も、母体のケア、授乳指導、育児相談だけでなく、多胎児利用時の追加料金設定や、夫や上の子の宿泊対応(施設による)など、利用者の多様なニーズにきめ細かく応える詳細なメニューと料金体系が定められています。11
  • 成功要因:
    • アクセシビリティの重視: 低廉な料金設定、特に訪問型の安価な提供により、経済状況に関わらず誰もが利用しやすい制度設計となっています。
    • メニューの透明性: 何が含まれ、何が追加料金になるかが明確に示されており、利用者が安心してサービスを選択できます。
    • 柔軟な運用: 原則母子同室としつつも、母親の休息のために一時的に赤ちゃんを預かるなど、現場の判断で柔軟な対応を可能にしています。13
    • 客観的根拠:

神奈川県横須賀市「助産師会との連携とオンライン予約システム導入によるDX推進」

  • 横須賀市は、市内の助産師会と緊密に連携し、助産師会が運営する産後ケアハウスを中核に、地域の助産院や医療機関が一体となった提供体制を構築しています。これにより、住民は身近な場所で専門的なケアを受けることができます。16
  • さらに、2025年度からは、利用者の負担軽減と利便性向上を目指し、民間IT企業と連携してスマートフォンで施設の空き状況確認から予約までを完結できるオンラインシステム「あずかるこちゃん産後ケア」の実証実験を開始しました。これにより、アナログな手続きを抜本的に改革しようとしています。18
  • 成功要因:
    • 地域の専門家集団との強固な連携: 地域の助産師会とのパートナーシップにより、現場の知見を活かした質の高いサービスネットワークを構築しています。
    • 積極的なDX推進: 産後の母親の負担を徹底的に軽減するため、行政手続きのデジタル化に踏み切る先進性があります。
    • 段階的な制度拡充: 当初は産後4か月までだった対象期間を1歳未満に拡大するなど、住民ニーズに応じて継続的に制度を見直しています。18
    • 客観的根拠:

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区が直面する深刻な少子化と産後うつ・児童虐待のリスク増大という課題に対し、助産支援の充実は待ったなしの状況です。しかし、現行の支援は利用のハードルが高く、担い手である地域の助産所は疲弊しており、行政の縦割り構造が効果的な支援を阻んでいます。今求められるのは、単なる予算の追加ではなく、支援のあり方を「申請主義からプッシュ型へ」「分断から統合へ」と転換するシステム全体の再設計です。提案した3つの施策を有機的に連携させ、全ての親子が孤立することなく、安心して子育てを始められる社会基盤を構築することが不可欠です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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