10 総務

公益通報制度

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(公益通報制度を取り巻く環境)

  • 自治体が公益通報制度を実効的に運用する意義は「行政の自浄作用の強化によるコンプライアンスの徹底」と「不正の早期是正による住民の生命・財産・利益の保護」にあります。
  • 公益通報制度とは、公益通報者保護法に基づき、組織内部の職員等が職務上知り得た法令違反等の不正行為を、組織内外の指定された窓口に通報する仕組みです。この制度は、通報者が通報を理由に解雇や降格といった不利益な取扱いを受けないよう保護することを核としています。
  • 本制度は単に通報者を守るだけでなく、行政組織が自ら不正を発見し是正する「自浄作用」を発揮させるための極めて重要なリスク管理基盤です。不正行為を早期に発見・是正することで、住民の生命や財産への被害を未然に防ぎ、行政に対する信頼を確保する目的があります。
  • 近年、令和4年(2022年)施行の改正法により、常時使用する労働者数が301人以上の事業者(地方公共団体を含む)に対し、内部通報体制の整備が義務化されるなど、その重要性は法制度上も一層高まっています。東京都特別区においても、この制度を形骸化させず、実効的に運用していくことが喫緊の課題となっています。

意義

住民にとっての意義

不正の是正による安全・安心の確保
行政サービスの質の向上と信頼確保
被害の未然防止・拡大防止

地域社会にとっての意義

公正な事業環境の維持
  • 公共事業における入札談合や、特定の事業者への不当な便宜供与といった不正行為が通報・是正されることで、地域内の事業者が公正な条件下で競争できる環境が維持されます。
企業のコンプライアンス意識向上
持続可能な地域社会の構築

行政にとっての意義

自浄作用の強化とリスク管理
  • 報道機関など外部からの指摘によって不正が発覚する前に、内部からの通報によって問題を把握し、自ら是正する機会を得ることができます。これにより、行政組織が受ける社会的な信用の失墜や、事後対応にかかるコストといったダメージを最小化できます。
職員のコンプライアンス意識向上
法令遵守と説明責任の遂行

(参考)歴史・経過

公益通報制度に関する現状データ

課題

住民・職員の課題

不利益な取り扱いへの根強い懸念
  • 通報制度を利用する上での最大の障壁は、通報したことにより解雇、降格、異動、職場での嫌がらせといった不利益な取扱いを受けることへの強い恐怖心です。
制度の認知度不足とアクセスの困難さ
  • 多くの職員が、そもそも自らの職場に公益通報制度が存在することや、どこに通報すればよいのかを知りません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 多大なコストと労力をかけて整備した制度が全く利用されず形骸化し、不正を発見する「早期警戒システム」としての機能が完全に失われます。
通報しても是正されないという不信感
  • 通報したとしても、組織が真摯に受け止め、公正な調査や適切な是正措置を行ってくれないのではないか、という強い不信感が存在します。

地域社会の課題

外部(住民・事業者)からの通報のハードルの高さ
  • 住民や地域事業者が、区の許認可や公共契約などに関する不正を発見した場合でも、どこに、どのように通報すればよいか分からず、また、通報したことで行政から不利益な扱いを受けるのではないかという懸念から、通報に至らないケースが多いと考えられます。

行政の課題

担当部署の専門性・独立性の欠如
  • 多くの自治体では、総務課や人事課の職員が他の業務と兼務で通報窓口を担当しており、法的な分析や高度な調査技術といった専門性が不足しています。また、通報対象が上司や幹部職員である場合に、担当部署が独立性を保って公正な調査を行うことが構造的に困難であるという課題があります。
周知・研修の不足
  • 行政機関自身が、職員に対して制度の存在、目的、そして通報者が法的に保護される権利について、十分な周知や研修を行えていません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 制度が「絵に描いた餅」となり、職員は保護されないという誤解を持ち続け、不正を発見しても見て見ぬふりをする文化が温存されてしまいます。
小規模自治体における体制整備の困難さ
  • 全国の市区町村のデータを見ると、特に小規模な自治体では、予算や人員の制約から実効性のある制度を整備・維持することが困難な状況があります。また、組織が小さいほど人間関係が密接になり、通報者の匿名性を保つことが難しいという問題もあります。
    • 客観的根拠:
      • 市区町村が窓口を設置していない理由として、「人手が足りない」(45.5%)、「(組織の規模から見て)通報者の秘密が守れない」(23.1%)、「どのように設置すればよいか分からない」(18.2%)といった回答が上位を占めています(平成29年度調査)。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 自治体の規模によってコンプライアンス体制の質に格差が生じ、住民が受ける行政サービスの公正性や安全性に不平等が生じる原因となります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、職員や住民の信頼回復に直結し、組織全体のコンプライアンス意識向上に繋がるなど、波及効果の大きい施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現行の法制度や予算、人員体制の中で、比較的速やかに導入・実施が可能な施策を優先します。条例改正や大規模な組織改編を必要としない施策は優先度が高くなります。
  • 費用対効果
    • 投じる予算や人員といった経営資源に対し、不正の未然防止や早期是正によるリスク軽減効果、組織の信頼性向上といった便益が大きい施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の部署や職員だけでなく、全ての職員、さらには住民や事業者にも便益が及び、一時的な取り組みで終わらず、長期的に制度として定着・継続できる施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 政府の調査結果や、他の自治体における成功事例など、効果が客観的なデータや実績によって裏付けられている施策を最優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 公益通報制度の実効性を高めるためには、「①信頼性の確保」「②運用能力の向上」「③組織文化の醸成」という3つの側面から、総合的かつ段階的に取り組むことが不可欠です。
  • **最優先(高)**で取り組むべきは「支援策①:通報体制の抜本的強化と信頼性向上」です。通報者が「安心して通報できる」という信頼の基盤がなければ、他のいかなる施策も効果を発揮しません。特に、組織からの独立性が担保された外部窓口の設置は、信頼醸成の要となります。
  • **優先度(中)**は「支援策②:運用能力の向上と専門人材の育成」です。信頼できる窓口が整備された上で、寄せられた通報を迅速かつ公正に処理する専門的な運用能力を確保することが重要です。マニュアル整備や研修を通じて、属人性を排した標準的な対応プロセスを確立します。
  • **優先度(低・長期的)**は「支援策③:通報を是とする組織文化の醸成」です。これは一朝一夕には実現できない長期的な課題ですが、トップの継続的なメッセージ発信や地道な啓発活動を通じて、公益通報を組織の健全化に貢献するポジティブな行為として捉える文化を育んでいく必要があります。

各支援策の詳細

支援策①:通報体制の抜本的強化と信頼性向上

目的
主な取組①:外部専門家(弁護士等)による独立した外部窓口の設置・拡充
  • 現在の多くの区が設置している内部窓口(例:総務課、コンプライアンス担当課)に加え、区の指揮命令系統から完全に独立した弁護士事務所等を「外部公益通報窓口」として正式に設置または拡充します。
  • 職員等が、内部窓口と外部窓口のいずれかを通報内容や自身の状況に応じて自由に選択できることを、あらゆる機会を通じて明確に周知します。
  • 外部窓口は、匿名での通報にも標準で対応し、通報者と区との間の連絡を仲介する役割も担うことで、通報者の匿名性を徹底的に保護します。
主な取組②:オンライン通報システムの導入と匿名性の技術的担保
  • 24時間365日、時間や場所を問わずに通報が可能な、セキュリティが確保されたオンライン通報プラットフォームを導入します。
  • このシステムには、通報者のIPアドレスを特定不能にする機能や、通信内容を完全に暗号化する機能など、通報者の匿名性を技術的に最大限保護する仕組みを備えたものを採用します。
  • これにより、従来の電話、メール、書面に加え、より安全で利便性の高い通報チャネルを提供します。
    • 客観的根拠:
      • オンラインシステムは、特にデジタルネイティブ世代である若手職員にとって利用のハードルが低く、制度の利用促進に繋がります。また、人的なミスによる情報漏洩リスクを低減し、匿名性をより確実に担保できるという利点があります。
主な取組③:通報者特定に繋がる情報の守秘義務の徹底と罰則の周知
  • 公益通報の受付や調査に関わる全ての職員(「公益通報対応業務従事者」)に対し、法的に課せられた厳格な守秘義務と、それに違反した場合の刑事罰(30万円以下の罰金)について、改めて徹底的に周知し、誓約書を提出させます。
  • 職員研修や庁内広報を通じて、「通報者を探し出す行為」そのものが禁止されており、発覚した場合には厳正な懲戒処分の対象となることを明確に伝えます。
    • 客観的根拠:
      • 改正公益通報者保護法第12条は、公益通報対応業務従事者に対し守秘義務を課し、同法第21条は違反者に30万円以下の罰金を科すことを定めています。この法的根拠を明確に示すことが、通報者の安心感を醸成すると同時に、潜在的な情報漏洩行為を強く抑止します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 通報を理由とした不利益な取り扱いの発生件数:0件
      • データ取得方法: 人事部門における懲戒処分等の記録、通報者への事後フォローアップ調査(匿名アンケート形式)
  • KSI(成功要因指標)
    • 職員意識調査における「公益通報制度を信頼している」との回答率:70%以上
      • データ取得方法: 無記名による全職員意識調査(年1回実施)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 外部窓口を利用した通報の割合:全通報件数の30%以上
      • データ取得方法: 外部窓口からの定期的な運用状況報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 外部窓口及びオンライン通報システムの設置・運用開始
      • データ取得方法: 事業進捗管理表による確認
    • 守秘義務及び罰則に関する周知回数:年4回以上(全職員向けイントラネット掲載、ポスター掲示等)
      • データ取得方法: 広報活動の実施記録

支援策②:運用能力の向上と専門人材の育成

目的
主な取組①:公益通報対応マニュアルの策定と全庁展開
  • 通報の受付方法、初期対応、事実調査の進め方、関係者へのヒアリング要領、是正措置の検討・実施、通報者への適切なフィードバック、関連記録の厳格な保管といった一連のプロセスを詳細に定めた、実践的な「公益通報対応実務マニュアル」を策定します。
  • マニュアルには、調査担当者が通報事案と利益相反の関係にある場合の担当変更ルールや、調査過程における通報者及び被調査者のプライバシー保護に関する具体的な手順を明記します。
主な取組②:全職員を対象とした階層別・体系的な研修の実施
  • 全職員向け基礎研修: 全ての職員を対象に、公益通報制度の目的、通報者の権利、守秘義務の重要性など、制度の根幹を理解するための研修を年1回、eラーニング等で必須受講とします。
  • 管理職向けマネジメント研修: 部下からハラスメント等の相談・通報を受けた際の適切な初期対応、通報者に対する不利益な取扱いの防止策、風通しの良い職場環境づくりなど、管理職に求められる役割に特化した研修を実施します。
  • 通報担当者向け専門研修: 内部・外部窓口の担当者を対象に、弁護士等の外部専門家を講師として招聘し、具体的な調査手法、関係者へのヒアリング技術、証拠の収集・保全方法、関連法令の解釈など、より高度で実践的な専門研修を定期的に実施します。
主な取組③:調査結果及び是正措置の透明性ある公表
  • 通報者のプライバシーや、刑事事件に発展する可能性のある事案の捜査への影響に最大限配慮した上で、受理した通報事案の概要、調査結果、そして講じた是正措置や再発防止策について、区のウェブサイト等で定期的に公表します。
  • この公表は、制度が実際に機能し、不正が正されていることを内外に示すことで、通報を検討している職員や住民の後押しとなるとともに、組織全体に対する強い抑止力として機能します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 通報案件の平均処理期間:受付から通報者への最終報告までを60日以内に完了
      • データ取得方法: 通報案件管理台帳による期間計測
  • KSI(成功要因指標)
    • 職員の制度理解度テスト平均点:80点以上
      • データ取得方法: 全職員向け基礎研修後に実施するオンライン理解度テスト
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 研修受講後の職員による制度認知度:90%以上
      • データ取得方法: 研修後に実施する無記名アンケート調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 公益通報対応実務マニュアルの策定及び全所属への配布完了
      • データ取得方法: マニュアル作成・配布記録の確認
    • 階層別研修の実施回数:全職員向け年1回、管理職向け年1回、担当者向け年2回以上
      • データ取得方法: 研修の実施計画及び実績報告

支援策③:通報を是とする組織文化の醸成

目的
  • 公益通報を、組織への「密告」や「裏切り」といったネガティブな行為としてではなく、組織の不正を正し、より健全な状態へと導くための「貢献」として肯定的に捉える文化を、組織全体に浸透させます。
  • 職員一人ひとりが日常的にコンプライアンスを意識し、問題点や懸念事項をオープンに議論できる、風通しの良い職場環境を構築します。
主な取組①:トップメッセージの継続的な発信
  • 区長、副区長、教育長といった組織のトップが、年頭挨拶、年度初めの訓示、庁内報、幹部会議など、あらゆる機会を捉えて、公益通報制度の重要性を繰り返し強調します。
  • 特に「通報者は組織の功労者であり、断固として守り抜く」という明確で力強い姿勢を、全職員に向けて継続的に発信します。
主な取組②:「コンプライアンス月間」の設定と啓発活動
  • 例えば毎年10月を「コンプライアンス推進月間」と定め、期間中に集中的な啓発活動を実施します。
  • 具体的には、庁舎内の目立つ場所に啓発ポスターを掲示する、イントラネットで公益通報制度の特集記事や実際に是正された事例(個人が特定されない形)を紹介する、コンプライアンスに関する標語を全職員から募集し表彰する、といった多様な取り組みを展開します。
主な取組③:通報者への感謝とインセンティブの検討
  • 組織の重大な損害を未然に防ぐなど、特に是正に大きく貢献した公益通報に対して、通報者を評価する仕組みを検討します。
  • これは金銭的な報奨金ではなく、例えば、通報者が自身の不正行為に関与していた場合に懲戒処分を減免する「リニエンシー(課徴金減免)制度」の考え方を参考に、通報行為が組織への貢献として正当に評価されることを示す象徴的な措置とします。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 職員意識調査における「現在の職場は、問題点を指摘したり、懸念を表明したりしやすい雰囲気だ(風通しが良い)」との肯定的な回答率:60%以上
      • データ取得方法: 無記名による全職員意識調査(年1回実施)
  • KSI(成功要因指標)
    • 職員意識調査における「公益通報は、組織を良くするための貢献活動だと思う」との肯定的な回答率:80%以上
      • データ取得方法: 無記名による全職員意識調査(年1回実施)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 職員による自発的な業務改善提案のうち、コンプライアンス関連の提案件数:年間20件以上
      • データ取得方法: 業務改善提案制度の応募記録の分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 区長等トップマネジメントによる公益通報の重要性に関するメッセージ発信回数:年4回以上
      • データ取得方法: 庁内報、会議議事録、ウェブサイト等の記録
    • コンプライアンス推進月間の実施及び事後報告書の作成
      • データ取得方法: 企画部門による実施報告書の確認

先進事例

東京都特別区の先進事例

千代田区「行政監察員制度による独立性の高い通報体制」

  • 千代田区は、国の公益通報者保護法が施行される前の平成15年という早い段階から、独自の「千代田区職員等公益通報条例」を制定し、先進的な取り組みを行っています。
  • 最大の特徴は、区の組織から完全に独立した外部の弁護士を「行政監察員」として複数名任命している点です。この行政監察員が、通報の受付から調査、事実認定、そして区長への報告や是正勧告までを一貫して担うことで、極めて高い独立性、専門性、そして秘匿性を確保しています。
  • また、通報できる者の範囲を、区職員だけでなく、区の外郭団体である「まちみらいちよだ」の職員や、区の業務を受託・請負している事業者の従業員にまで広げている点も、先進的と言えます。

新宿区「複数の弁護士による外部窓口の明示とアクセス多様化」

  • 新宿区は、外部の通報窓口として、3つの異なる法律事務所に所属する弁護士を「公益保護委員」として選任し、通報者が自由に選択できる体制を構築しています。
  • 区のウェブサイトでは、各弁護士の氏名、所属事務所名、所在地、電話番号、そして専用のメールアドレスまで具体的に公開しており、通報者が心理的なハードルを感じることなく、直接アクセスしやすい環境を整えています。
  • このように複数の選択肢を提示するアプローチは、通報者が自分にとって相談しやすいと感じる専門家を選べるという安心感を与え、制度の利用促進に繋がる効果が期待できます。

板橋区「条例に基づく着実な運用と実績の継続的公表」

  • 板橋区は「東京都板橋区職員の倫理の保持及び公益通報に関する条例」に基づき、内部の通報窓口である「内部保護員(人事課長)」と、外部の通報窓口である「外部保護員(弁護士)」の両方をバランス良く設置しています。
  • 特筆すべきは、平成21年度から現在に至るまで、毎年度の通報件数をウェブサイト上で継続的に公表している点です。これにより、制度の運用実績に関する透明性を確保し、制度が形骸化することなく、長期にわたって機能していることを内外に示しています。
  • このような長期間にわたる実績の公表は、職員に対して「この制度は本当に動いている」という信頼感を与え、いざという時に行動を起こす勇気に繋がります。

全国自治体の先進事例

横浜市「詳細な調査結果の公表と再発防止策の明記」

  • 横浜市は、不正防止内部通報制度に基づき受理した案件について、その調査結果を極めて詳細に公表している点で、全国の自治体の中でも先進的です。
  • 公表内容には、単なる通報概要や調査結果だけでなく、「本市の対応」として、具体的にどのような再発防止策を講じたかが明確に記載されています。例えば「職員の喫煙行為」の事案では「所属の全職員に対して周知・徹底をしていく」、「消耗品の自費購入」の事案では「啓発物品等の適正な管理・使用について徹底するよう注意喚起を行い、再発防止に取り組む」など、具体的なアクションが示されています。
  • この徹底した情報公開と具体的な改善策の明示は、行政としての説明責任を真摯に果たす姿勢を示すとともに、他の職員に対する強力な牽制・啓発効果を持ちます。

札幌市「職員等と外部からの通報制度の明確な分離と整備」

  • 札幌市は、内部職員等を対象とする「札幌市職員等の公益通報等に関する要綱」と、市民や民間事業者の従業員等を対象とする「札幌市行政機関通報に関する取扱指針」を明確に分けて整備し、ウェブサイトで公開しています。
  • これにより、通報者が自身の立場に応じて、適用されるルールや保護の要件、通報先を容易に理解できるよう工夫されています。特に、外部向けの指針では、公益通報の成立要件(通報の主体、内容、目的、通報先など)がQ&A形式で丁寧に解説されており、法律に詳しくない市民や事業者でも利用しやすいよう配慮されています。
  • このような利用者視点に立った明確な制度設計は、利用時の混乱を防ぎ、制度全体の利用促進に大きく貢献します。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 公益通報制度は、単に不正を行った職員を罰するための仕組みではなく、行政の信頼性と健全性を維持するための根幹的なリスク管理基盤です。現状では、制度の認知度不足や報復への根強い懸念から、その機能が十分に発揮されていません。東京都特別区においては、独立した外部窓口の設置による信頼性の確保、体系的な研修による運用能力の向上、そしてトップの強いコミットメントによる組織文化の醸成という三位一体の改革を強力に推進することが不可欠です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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あらゆる行政情報を分野別に構造化
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