15 教育

公務員のお仕事図鑑(学校施設整備・保全課)

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※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。

はじめに

  学校施設整備・保全課。庁内では「営繕(えいぜん)」などと呼ばれ、どちらかといえば地味で、縁の下の力持ち的な存在と見なされがちです。日々、学校からの修繕依頼に追われ、夏休みは工事の現場監督に明け暮れる。そんなイメージが先行し、華やかな企画部門や財政部門に比べて、キャリアパスが見えにくいと感じる方もいるかもしれません。しかし、その認識は、この仕事が持つ本質的な価値を見誤っています。

 実は、この部署での経験こそが、現代の官民両方の労働市場で極めて高く評価される「キャリア資産」の宝庫なのです。老朽化する膨大なインフラ、限られた予算、そして子供たちの安全という絶対的な使命。この三重苦ともいえる極限のプレッシャーの中でプロジェクトを完遂する経験は、他の部署では決して得られない、強靭な専門性とポータブルスキルをあなたに刻み込みます。この記事では、その「逆説的な価値」を解き明かし、あなたの仕事が持つ真の市場価値と、未来のキャリアの可能性を明らかにします。

仕事概要

  学校施設整備・保全課の仕事を一言で定義するならば、それは「未来の学び舎を創造する、戦略的アセットマネージャー」です。単なる施設の維持管理に留まらず、教育という営みの「器」を、財政的・技術的・社会的な視点から最適化し、次世代へとつないでいく極めて重要な役割を担っています。子供たちの安全を守る最前線の守護者であると同時に、数十年先を見据えた投資判断を下す経営者でもあるのです。

学校施設の長寿命化計画策定・推進

 全国の自治体で学校施設の老朽化は深刻な課題となっており、公立小中学校の校舎の約8割が築25年以上というデータもあります。これらを場当たり的に修繕する「対症療法」では、いずれ財政が破綻してしまいます。そこで、中長期的な視点で計画的に改修を行い、施設の寿命を延ばすことで、ライフサイクルコストの縮減と財政負担の平準化を図る「予防保全」への転換が求められています。この「長寿命化計画」の策定と推進こそが、部署の根幹をなす業務です。これは、単なる工事計画ではなく、自治体の未来の財政と教育環境を左右する経営戦略そのものです。

新規建設・大規模改修プロジェクトの執行

 老朽化が著しい校舎の建て替えや、現代の教育ニーズに対応するための大規模な改修プロジェクトを執行します。例えば、ICT教育に対応した学習環境の整備、インクルーシブ教育を実現するためのバリアフリー化、多様な学習形態を可能にするオープンスペースの導入など、文部科学省が示す新しい学校施設のあり方を具現化する役割です。数億円から数十億円規模の予算を動かし、設計事務所や建設会社など多くの関係者をまとめ上げ、一つの建物をゼロから創り上げる、極めてダイナミックな仕事です。

日常的な維持管理・緊急修繕対応

 子供たちが日々安全に学校生活を送れるよう、施設の健全性を維持する業務です。雨漏りの修繕、剥がれかかった外壁の補修、故障した空調設備の更新といった計画的な修繕から、台風で窓ガラスが割れた、給水管が破裂したといった緊急事態への即応まで、その範囲は多岐にわたります。特に老朽化が進んだ施設では、いつ重大な不具合が発生してもおかしくない状況であり、迅速かつ的確な判断と対応が、子供たちの安全に直結します。

予算要求・国庫補助金申請・契約事務

 施設の整備や改修には莫大な費用がかかります。その財源を確保するため、財政課に対して次年度の事業予算を要求し、厳しい査定を乗り越えなければなりません。同時に、国が用意する「学校施設環境改善交付金」などの補助金制度を最大限活用するため、国の基準や要綱を熟知し、膨大な申請書類を作成します。予算が確保できれば、工事を発注するための入札公告、業者選定、契約締結といった一連の調達手続きを、法令に基づき厳格に執行します。

学校・地域・業者とのステークホルダー調整

 学校施設は、子供たちが学習している「生きている現場」です。そのため、工事の実施にあたっては、学校運営への影響を最小限に抑えるための綿密な調整が不可欠です。校長や教員との協議はもちろん、工事の騒音や振動、車両の出入りなどで影響を受ける近隣住民への説明も重要な業務となります。また、学校は災害時の避難所など、地域コミュニティの拠点としての役割も担っており、地域住民の意見を計画に反映させることも求められます。これら多様な関係者の利害を調整し、事業を円滑に進める高度なコミュニケーション能力が試されます。

主要業務と一年のサイクル

  学校施設整備・保全課の1年は、学校の稼働スケジュールと予算編成サイクルに大きく規定され、息つく暇もないほどの緊張感が続きます。

 4月~6月は、新年度の始まりと共に、前年度末に契約した小規模な修繕工事が各所でスタートします。同時に、この年の最大の山場である「夏休み期間中の大規模工事」に向けた最終準備に追われます。設計事務所との最終打ち合わせ、学校側との工程調整、近隣住民への説明会など、静かな水面下で膨大な調整業務が進行します。この時期は、来るべき嵐の前の静けさとも言えるでしょう。(想定残業時間:20~30時間/月)

 7月~9月は、まさに戦争です。子供たちがいない夏休みは、普段できない大規模で騒音を伴う工事を実施できる唯一のチャンス。職員はオフィスにいる時間よりも、ヘルメットを被って現場を飛び回る時間の方が圧倒的に長くなります。予期せぬ地中埋設物の発見、ゲリラ豪雨による工程の遅れ、近隣からのクレーム対応など、次から次へと発生するトラブルを解決し、絶対に遅延が許されない工期を守り抜きます。多くの職員にとって、夏休みは存在しないに等しい期間です。(想定残業時間:60~100時間/月)

 10月~12月は、夏の工事の完了報告や検査業務に追われる一方で、次年度の予算要求というもう一つの大きな戦いが始まります。各学校から寄せられた膨大な修繕要望を精査し、優先順位をつけ、老朽化の実態データや費用対効果を積み上げて、財政課を説得するための詳細な資料を作成します。ここでの交渉の成否が、来年度に救える学校の数を直接左右するため、一切の妥協は許されません。(想定残業時間:40~70時間/月)

 1月~3月は、年度末の追い込み期間です。進行中の工事の完成と支払手続きを急ぐと同時に、次年度の予算案の内示を受け、新年度に執行する工事の設計発注や入札準備を開始します。一つの年度を締めくくる業務と、新しい年度を準備する業務が完全にオーバーラップし、頭を切り替えながら膨大な事務処理をこなしていく、多忙な時期が続きます。(想定残業時間:30~50時間/月)

異動可能性

  評価:★★☆☆☆(やや低い)

  学校施設整備・保全課は、建築、電気、機械といった技術職の職員が配属されることが大半を占める専門部署です。一般行政職のように3~4年で様々な部署をローテーションするキャリアパスとは異なり、専門性を深化させるために一つの分野に比較的長く在籍する傾向があります。そのため、他部署への異動の頻度は低いと言わざるを得ません。異動する場合でも、同じ技術職が活躍する都市整備部局や、全庁の公共施設を統括するアセットマネジメント部門など、専門性が活かせる関連部署へのスライドが中心となります。全く畑違いの部署へ異動するケースは稀です。

大変さ

  評価:★★★★★(極めて高い)

  この仕事の大変さは、単なる業務量の多さだけでは測れません。その根底には、常に「子供たちの安全」という、何物にも代えがたい重責が横たわっています。コンクリート片の落下、天井材の崩落、アスベストの飛散といった事故は、即座に子供たちの生命を脅かします。この決して失敗が許されないプレッシャーは、他の行政分野の比ではありません。

 さらに、職員を精神的に追い詰めるのが、「膨大な老朽化施設」と「限られた予算」という構造的なジレンマです。市内全ての学校の危険箇所を把握しながらも、予算の制約から全てに手当てすることは不可能です。どの学校の、どの箇所の改修を優先し、どれを先送りにするのか。その判断は、まさに命のトリアージにも似た苦渋の選択であり、もし先送りにした箇所で事故が起これば…という恐怖と常に隣り合わせです。

 加えて、多様なステークホルダーからの相反する要求調整も大きな負担となります。学校現場からは「最新の教育環境を」、保護者からは「一刻も早い安全対策を」、財政課からは「コスト削減を」、近隣住民からは「工事の騒音をなくせ」といった、それぞれに正当性のある要求が同時に寄せられます。これらの板挟みの中で、最適解を見つけ出し、関係者全員を説得していくプロセスは、心身ともに極めて消耗する仕事です。

大変さ(職員の本音ベース)

  「またか…」。A小学校の雨漏り対応の報告書を書き終えた瞬間、今度はB中学校から「体育館の床が抜けそうだ」と悲鳴のような電話が入る。「だから、去年の予算要求で言ったじゃないか。もう耐用年数なんてとっくに超えて、市内の学校全部が危険な状態なんだって」。財政課に何度説明しても伝わらない構造的な問題。目の前の不具合を叩いても、別の場所から新たな不具合が噴出する。この終わりのないモグラ叩きに、心が折れそうになる瞬間は一度や二度ではありません。

 世間がお盆休みで浮かれる8月。我々はヘルメットを被り、汗だくでアスファルトの上を走り回る。「夏休みは、ない」。それがこの部署の不文律です。工期は待ってくれないし、夏にしかできない工事が山積みなのですから。家族との時間を犠牲にしている罪悪感と、炎天下での肉体的な疲労が、じわじわと精神を蝕んでいきます。

 最も精神的にきついのは、予算の制約から危険箇所の修繕を見送る判断を下す時です。「あそこの外壁はいつ剥がれてもおかしくない。こっちのブロック塀は地震が来たら危ない」。市内の学校のウィークポイントは、全て頭に入っています。しかし、予算は一つ分しかない。「神様の視点」で全てを見通しながら、「悪魔の選択」を迫られる。もし自分の判断ミスで子供たちが怪我をしたら…その責任の重圧に、夜も眠れなくなることがあります。

 そして、学校現場からの電話は「教室のドアの立て付けが悪い」から「鳩のフンがひどい」まで、ありとあらゆる内容が寄せられます。こちらは数億円規模の改築工事の図面と格闘している最中なのに、現場にとっては我々が唯一の頼り。「専門家」という名の、究極の便利屋。そのギャップに、時折、虚しさを感じてしまうのも偽らざる本音です。

想定残業時間

  通常期:月間20~40時間程度

  繁忙期:月間60~100時間程度

  繁忙期は、主に大規模工事が集中する7月~8月の夏休み期間と、次年度の予算要求が大詰めを迎える10月~12月です。特に夏休み期間は、土日の出勤も常態化し、肉体的にも精神的にも最も厳しい時期となります。

やりがい

未来を担う子供たちの学習環境を創造する貢献

 この仕事の最大のやりがいは、自分の仕事が目に見える形で、子供たちの学びの場を豊かにしていくことにあります。暗く古びた校舎が、明るく機能的な空間に生まれ変わる。危険だった遊具が安全なものに更新され、子供たちが歓声をあげて遊んでいる。そうした光景を目の当たりにした時、全ての苦労が報われるほどの達成感と、社会への貢献を実感できます。教育の最前線に立つ教員とは違う形で、未来を担う世代を支えているという確かな誇りが、この仕事の原動力です。

数億円規模のプロジェクトを動かすダイナミズム

 一つの学校の建て替えには、数十億円もの予算と、数百人もの関係者が関わります。企画段階のたった一枚の書類から始まり、設計者や施工業者、そして庁内の関係部署と議論を重ね、幾多の困難を乗り越えて巨大な建造物を完成させる。そのプロセス全体をマネジメントする経験は、他では味わえない圧倒的なスケール感とダイナミズムに満ちています。自分の手で街の風景を創り、後世に残る仕事をしているという手触り感は、何物にも代えがたい魅力です。

地域社会の基盤となる重要インフラを支える使命感

 学校は、単に子供たちが学ぶだけの場所ではありません。災害時には地域住民の命を守る避難所となり、平時には生涯学習や地域活動の拠点となる、まさに地域社会の基盤(インフラ)です。その重要な施設を、専門知識を駆使して維持・強化していくことには、大きな使命感が伴います。耐震補強や防災機能の強化といった仕事を通じて、地域全体の安全・安心に貢献しているという自負が、日々の厳しい業務を乗り越える力となります。

やりがい(職員の本音ベース)

  公式なやりがいとは別に、職員が密かに感じている喜びもあります。それは「俺がいないと、この街の学校は回らない」という静かな自負心です。原因不明の雨漏り、複雑な構造計算が必要な補強、前例のない補助金申請。他の誰もが匙を投げた難問が、最終的に自分のところに回ってくる。そして、それを専門知識と経験、そして泥臭い調整力で解決した時の感覚。組織にとって自分は替えの効かない存在なのだと実感できる瞬間は、何よりの報酬です。

 そして、ふとした瞬間に訪れる達成感。10年後、自分の子供と車で街を走っている時に、「あの学校の体育館、お父さんが建てたんだぞ」と胸を張って言える。書類上の計画が、多くの人々を動かし、汗と知恵の結晶として物理的な「形」になる。この「地図に残る仕事」ならではの手触り感は、一度味わうと病みつきになります。

 時には、「この予算で、この工期で、この法的制約の中で、新しい教育理念を実現する施設を造れ」といった、無茶苦茶な要求が来ることもあります。しかし、その一見不可能な要求を、知恵と交渉力を総動員してパズルのように組み上げ、見事に実現できた時の全能感は格別です。困難なパズルを解き明かした時のような、知的な興奮と満足感がこの仕事にはあります。

得られるスキル

専門スキル

公共アセットマネジメント

 「学校施設長寿命化計画」の策定と実行を通じて、公共アセットマネジメントの神髄を体得します。これは、単なる修繕計画ではありません。膨大な数の施設群を一つの資産(アセット)と捉え、一棟ごとの劣化状況、重要度、そしてライフサイクルコストを算出し、限られた予算をどこに投下すれば全体の価値を最大化できるかを見極める、高度な経営スキルです。この経験は、あらゆる公共施設の維持管理に応用可能な、極めて市場価値の高い専門性です。

公共工事のプロジェクトマネジメント

 数億円規模の建設プロジェクトを、発注者として川上から川下まで一貫して管理する経験を積みます。仕様書の作成、設計事務所の選定、入札・契約、現場での工程・品質・安全管理、そして最終的な検査・引き渡しまで、プロジェクトの全工程に責任を持つことで、極めて実践的なマネジメント能力が磨かれます。これは、民間企業のプロジェクトマネージャーとは一線を画す、公共事業特有の法規制や会計ルールを熟知した、希少なスキルセットです。

建築・設備に関する技術的知見

 日々、多種多様な施設の不具合に直面することで、建築、電気、機械、管工事など、幅広い分野の技術的知見が蓄積されます。図面を読み解き、劣化の原因を特定し、業者から提出される工法や見積もりの妥当性を判断する。こうした実践の繰り返しによって、机上の知識ではない、生きた技術力が身につきます。特に、多種多様な年代・構造の建物を横断的に見る経験は、特定の分野しか知らない民間の専門家にはない、広い視野を養います。

公共調達・契約法務

 地方自治法や会計法規に則った、厳格な公共調達プロセスを執行する経験は、専門的な法務知識を養います。入札参加資格の審査、予定価格の積算、低入札価格調査、契約書の作成、そして履行確保。これらの手続きをミスなく遂行する能力は、コンプライアンスが厳しく問われる現代において、官民を問わず高く評価されるスキルです。

ポータブルスキル

超高難易度のステークホルダー・マネジメント

 教育委員会、学校長、教員、保護者、地域住民、財政課、設計事務所、建設業者。それぞれが全く異なる利害と価値観を持つ関係者の間に立ち、一つのゴールに向けて合意形成を図る経験は、究極の調整力を育てます。これは、どんな組織、どんな業界でも通用する、最高レベルの対人交渉能力です。

危機管理・緊急事態対応能力

 台風による施設被害、突発的な設備故障、工事中の事故。こうした予期せぬ危機に際し、冷静に状況を分析し、限られた情報の中で即座に意思決定を下し、関係各所を動かして事態を収拾する。この経験を通じて、極めて高いストレス耐性と、実践的な危機管理能力が鍛えられます。

数億円単位の予算編成・執行能力

 毎年、数億円から数十億円にのぼる事業予算をゼロから積み上げ、財政当局と折衝し、獲得した予算を計画通りに、かつ効率的に執行する。この一連のプロセスは、単なる経理担当者ではない、事業と財務を一体で考える高度な財政マネジメント能力を養います。

長期的視点での戦略立案能力

 40年、50年先を見据えた「長寿命化計画」の策定は、目先の課題解決だけでなく、将来の人口動態、教育制度の変化、財政状況を予測し、持続可能な施設整備の道筋を描く、壮大な戦略立案そのものです。この経験は、あらゆる組織で求められる、大局的な視点と未来を構想する力をあなたに与えます。

キャリアへの活用(庁内・管理職)

  学校施設整備・保全課での経験は、将来、管理職として組織を率いる上で絶大なアドバンテージとなります。自治体が保有する資産(アセット)の中で、学校施設は面積・金額ともに最大の割合を占めることがほとんどです。その巨大アセットの現状、課題、そして将来にわたる更新費用を肌感覚で理解している管理職は、極めて稀有な存在です。

 例えば、全庁的な行財政改革の議論において、他の部署出身の管理職が抽象的な理念や数値を語る中で、あなたは「その計画では、10年後に市内の小学校の3割で雨漏りが放置され、大規模な修繕費が集中発生し財政を圧迫する」といった、具体的かつ長期的なリスクを指摘できます。この「ハードアセット」に対する深い洞察力と、財政への影響を具体的に語れる能力は、組織全体の意思決定の質を格段に高め、他の管理職にはない圧倒的な説得力と信頼をもたらすでしょう。

キャリアへの活用(庁内・一般職員)

  この部署で培ったスキルは、庁内の様々な部署で即戦力として活躍する道を拓きます。特に、全庁の公有財産を統括する「財産管理課」や「公共施設マネジメント担当課」は、まさにうってつけの異動先です。学校施設で培ったアセットマネジメントの手法を、公民館や福祉施設など他の施設にも展開し、自治体全体の財産戦略をリードすることができます。

 また、「財政課」に異動すれば、公共事業の予算査定において、他の職員にはない強みを発揮します。現場の実態と技術的な課題を理解しているため、各部署から上がってくる要求が妥当なものか、過大ではないか、より効率的な方法はないかを的確に見抜くことができます。さらに、業務を通じて構築した設計事務所や建設業者との幅広い人的ネットワークは、異動先で新たな公民連携事業などを立ち上げる際に、非常に価値のある「人的資本」となります。

キャリアへの活用(民間企業への転職)

求められる業界・職種

  • 建設コンサルタント:
    •  特に公共事業を主戦場とする企業では、発注者である行政の内部事情、意思決定プロセス、そして担当者が何に困っているかを熟知した人材は、まさに喉から手が出るほど欲しい存在です。あなたは「元・顧客」として、企業の提案の質を劇的に向上させることができます。
  • PFI/PPP(公民連携)事業を手掛けるデベロッパーやゼネコン:
    •  公共施設の整備・運営に民間活力を導入するこれらの事業では、行政側の論理や手続きを理解し、円滑な官民の橋渡しができる人材が不可欠です。
  • プロパティマネジメント(PM)会社やファシリティマネジメント(FM)会社:
    •  特に、指定管理者制度などで公共施設の運営を受託している企業にとって、公共アセットの維持管理と長寿命化に関するあなたの知見は、直接的な競争力に繋がります。

企業目線での価値

  • 「公共調達プロセスの完全な理解」:
    •  民間企業にとって、行政の入札や契約は複雑で分かりにくいブラックボックスです。あなたは、そのルールと「行間」を全て知っています。どうすれば入札で勝てるのか、どんな提案が行政に響くのかを熟知しているあなたの存在は、企業にとって受注確率を飛躍的に高める切り札となり得ます。
  • 「発注者(行政)側の思考回路の体得」:
    •  あなたは、行政組織が何を重視し、何をリスクと捉え、どのようなプロセスで意思決定を下すのかを、内部の人間として経験してきました。この「インサイト」は、企業が効果的な営業戦略を立て、行政との強固な信頼関係を築く上で、計り知れない価値を持ちます。
  • 「驚異的なストレス耐性とコンプライアンス意識」:
    •  子供の安全という絶対的な使命、厳しい予算制約、そして複雑な法規制という極限の環境で培われた責任感と規律遵守の精神は、民間企業が最も信頼を置く資質です。あなたは、ただ仕事をこなすだけでなく、組織をリスクから守れる人材として評価されるでしょう。

求人例

求人例1:大手建設コンサルタント(公共事業部門)

想定企業: 株式会社建設技術研究所など、官公庁案件を主力とする大手

年収: 700万円~950万円

想定残業時間: 30~45時間/月

働きやすさ: ★★★☆☆

自己PR例

  •  現職では、自治体の学校施設整備担当として、築50年を超える中学校の長寿命化改修プロジェクトを主導しました。課題は、限られた予算内で、耐震補強という安全性の確保と、ICT教育に対応した学習環境の整備という、相反する要求を両立させることでした。私はまず、国の補助金制度を徹底的に調査し、本事業に適用可能な「学校施設環境改善交付金」の活用を提案。これにより約8,000万円の追加財源を確保しました。さらに、教員や保護者と複数回のワークショップを開催し、現場のニーズを設計に反映させると同時に、過剰な仕様を削ぎ落とす合意形成を主導しました。結果として、当初予算内で耐震基準のクリアと全普通教室へのWi-Fi・プロジェクター設置を実現し、発注者として事業を成功に導いた経験は、貴社が自治体へ最適なソリューションを提案する上で必ず貢献できると確信しております。
求人例2:総合デベロッパー(PPP/PFI事業開発担当)

想定企業: PFI/PPP事業に注力する大手不動産デベロッパー

年収: 800万円~1,100万円

想定残業時間: 25~40時間/月

働きやすさ: ★★★☆☆

自己PR例

  •  私は、自治体職員として、人口減少が著しい地域の小学校3校と中学校1校を統合し、小中一貫校を新設するPFI事業の導入可能性調査を担当しました。前例のない事業であったため、庁内には財政負担への懸念から反対意見が根強くありました。そこで私は、各施設の現状の維持管理コストと将来の更新費用を詳細に試算し、PFI方式を導入した場合のVFM(Value For Money)が20%向上するという客観的なデータを提示しました。また、民間事業者の収益性を確保しつつ、公共サービスの質を維持するための仕様書案を作成し、教育委員会、財政課、そして議会といった各ステークホルダーへの説明を粘り強く行いました。この経験を通じて培った、行政内部の意思決定プロセスを熟知した上での事業計画策定能力と、官民双方の言語を理解した調整能力は、貴社が新たなPPP/PFI案件を組成・推進する上で、強力な推進力となると考えております。
求人例3:独立系プロパティマネジメント会社(公共施設担当)

想定企業: 公共施設の指定管理などを手掛ける不動産管理会社

年収: 650万円~850万円

想定残業時間: 20~30時間/月

働きやすさ: ★★★★☆

自己PR例

  •  現職では、約80校にのぼる市立学校の施設ポートフォリオ全体の維持管理計画策定を担当しています。従来は不具合発生後の対症療法的な修繕が中心で、緊急対応費が増加の一途を辿っていました。私はこの状況を改善するため、全施設の劣化状況を5段階で評価する独自のデータベースを構築し、リスクの高さと改修効果に基づいた「予防保全」計画を立案・実行しました。具体的には、漏水リスクが最も高いと評価された10校の屋上防水工事を計画的に前倒しで実施した結果、翌年の雨漏りによる緊急修繕件数を40%削減し、年間約1,500万円のコスト削減を達成しました。このように、膨大な施設群をデータに基づき戦略的に管理し、コストを最適化するアセットマネジメントの実務経験は、貴社が受託する公共施設の運営価値を最大化する上で、即戦力として貢献できるものと自負しております。
求人例4:ゼネコン(官公庁営業・技術支援)

想定企業: 官公庁工事の実績が豊富な大手・準大手ゼネコン

年収: 750万円~1,000万円

想定残業時間: 35~50時間/月

働きやすさ: ★★☆☆☆

自己PR例

  •  私は、発注者側の現場監督として、総工費15億円の小学校新築工事を竣工まで担当しました。工事中、夏場のゲリラ豪雨による浸水や、近隣住民からの騒音に関する厳しいクレームなど、工程の遅延に繋がりかねない複数の予期せぬトラブルが発生しました。私は、施工業者との連日の工程会議で代替工法を協議・決定し、人員と資材の再配置を迅速に行う一方、住民に対しては週次の工事進捗説明会を自主的に開催し、丁寧な対話を通じて理解を求めました。こうした対応により、最終的に2週間の遅れを工期内に吸収し、無事故で引き渡しを完了させることができました。発注者として、施工管理と住民対応の両面から工事を円滑に進めてきた経験は、貴社が受注した公共工事を円滑に遂行し、発注者である自治体からの信頼を勝ち取る上で、必ずやお役に立てると考えております。
求人例5:アセットマネジメント会社(インフラ・公共施設部門)

想定企業: インフラファンドなどを運用する不動産投資顧問会社

年収: 900万円~1,300万円

想定残業時間: 20~35時間/月

働きやすさ: ★★★★☆

自己PR例

  •  私は、自治体全体の公共施設マネジメント計画の一環として、学校施設の50年間にわたる長期修繕計画とキャッシュフロー予測モデルの策定を担当しました。全120施設の構造、延床面積、建築年、過去の修繕履歴といった膨大なデータを一元化し、部位ごとの標準的な更新周期と費用単価を基に、将来発生する更新費用を推計しました。その結果、特定の10年間に更新需要が集中し、年間予算の3倍以上の費用が必要となる「更新費用の崖」が存在することを可視化しました。この分析に基づき、改修の優先順位付けと実施時期の平準化を行う新たな投資戦略を立案し、市長及び議会に提案、承認を得ました。この経験で培った、公共インフラの長期的な価値とリスクを定量的に評価・分析する能力は、貴社がインフラ資産へ投資する際の的確なデューデリジェンスと価値向上(バリューアッド)戦略の立案に貢献できるものと確信しております。

最後はやっぱり公務員がオススメな理由

  これまでの内容で、ご自身の市場価値やキャリアの選択肢の広がりを実感いただけたかと思います。その上で、改めて「公務員として働き続けること」の価値について考えてみましょう。

 確かに、提示された求人例のように、民間企業の中には高い給与水準を提示するところもあります。しかし、その働き方はプロジェクトの状況に大きく左右されることが少なくありません。繁忙期には予測を超える業務量が集中し、プライベートの時間を確保することが難しくなる場面も考えられます。特に、子育てなど、ご自身のライフステージに合わせた働き方を重視したい方にとっては、この予測の難しさが大きな負担となる可能性もあります。

 その点、公務員は、長期的な視点でライフワークバランスを保ちやすい環境が整っており、仕事の負担と処遇のバランスにも優れています。何事も、まずは安定した生活という土台があってこそ、仕事にも集中し、豊かな人生を築くことができます。

 公務員という、社会的に見ても非常に安定した立場で、安心して日々の業務に取り組めること。そして、その安定した基盤の上で、目先の利益のためではなく、純粋に「誰かの幸せのために働く」という大きなやりがいを感じられること。これこそが、公務員という仕事のかけがえのない魅力ではないでしょうか。その価値を再認識し、自信と誇りを持ってキャリアを歩んでいただければ幸いです。

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