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公会計システム

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(公会計システムを取り巻く環境)

  • 自治体が公会計システムを導入する意義は、「行政コストと財政状態の『見える化』による住民への説明責任の強化」と、「客観的根拠に基づく持続可能な行政経営の実現」にあります。
  • 公会計システムとは、従来の現金主義・単式簿記による会計制度を補完するため、企業会計で用いられる発生主義・複式簿記の考え方を取り入れた会計制度です。 1
  • 従来の現金主義会計が「その年度にどれだけの現金の出入りがあったか」というフローの情報に限定されるのに対し、公会計システムは、減価償却費のような現金の支出を伴わないコストや、将来支払うべき退職手当引当金など、これまで「見えにくかった」コスト情報を明らかにします。
  • 同時に、貸借対照表(バランスシート)を通じて、自治体が保有するインフラなどの「資産」と、地方債などの「負債」を一覧で示すストック情報を網羅的に把握することが可能になります。
  • 特に、東京都特別区のように、社会保障費の増大や公共施設の老朽化といった構造的な財政課題に直面する大都市自治体にとって、この財政の「見える化」は、単なる会計手法の変更に留まらず、持続可能な行政運営を実現するための不可欠な経営ツールとなっています。

意義

住民にとっての意義

行政の透明性向上と説明責任の強化
  • 単年度の予算・決算情報だけでは分からなかった、自治体の本当の財政状態(ストック情報)や、行政サービスの真のコスト(フルコスト)を理解できるようになります。 3
  • 例えば、図書館の運営に年間どれだけの費用がかかっているかを、建物の減価償却費を含めて把握することで、住民はサービス水準や使用料の妥当性について、より深く、根拠のある議論に参加できます。
  • これにより、行政に対する住民の信頼性が向上し、説明責任がより適切に果たされることになります。 3

地域社会にとっての意義

持続可能な行政サービスの確保
  • 学校や道路、公営住宅といった社会インフラの老朽化状況と、将来必要となる更新費用を「見える化」することで、場当たり的な対応ではなく、計画的な維持管理・更新が可能となります。
  • これにより、現世代が利用するインフラのコストを適切に負担し、将来世代に過大な負担を先送りすることを防ぐ「世代間の公平性」の確保に繋がります。
民間活力の導入促進
  • 固定資産台帳を通じて、自治体が保有する資産(土地、建物等)の詳細な情報が公開されることで、民間事業者が未利用・低利用の公有財産に対するPPP/PFI等の活用提案をしやすくなります。

行政にとっての意義

財政マネジメントの高度化
  • 客観的なデータに基づき、公共施設の計画的な更新・統廃合・長寿命化といった戦略的な資産管理(アセットマネジメント)が可能になります。
  • 施設別や事業別のコスト分析(セグメント分析)を行うことで、非効率な事業の見直しや予算の重点配分など、EBPM(証拠に基づく政策立案)の財務的基盤を構築できます。 5
  • 公会計は、単に過去の財務状況を記録するだけでなく、将来の財政運営を最適化するための羅針盤としての役割を果たします。

(参考)歴史・経過

  • 1980年代~1990年代
    • 英国などで始まったNPM(New Public Management)の潮流を受け、日本でも行政に企業経営的な会計手法を導入する議論が始まります。
  • 2000年
    • 総務省が、既存の決算統計データを活用して貸借対照表を作成する「旧総務省方式」を示します。
  • 2006年
    • 行政改革推進法の成立を契機に、固定資産台帳の整備を前提とする「基準モデル」と、それを簡素化した「総務省方式改訂モデル」が提示されます。しかし、複数のモデルが並立したため、自治体間の比較可能性に課題が残りました。
  • 2015年
    • 総務省が「統一的な基準による地方公会計マニュアル」を公表し、全ての地方公共団体に対して、平成29年度(2017年度)末までにこの基準に基づく財務書類を整備するよう要請します。これが、現在の公会計制度の直接的な基礎となります。
  • 2018年以降
    • 財務書類の「作成」から「活用」へと、政策の重点が移行します。総務省は「地方公会計の活用の促進に関する研究会」などを設置し、活用事例の収集・周知を進めています。
  • 2024年~2025年
    • 「今後の地方公会計のあり方に関する研究会」の報告書(令和6年12月公表予定)を踏まえ、財務情報の充実や固定資産台帳の精緻化などを内容とするマニュアルの改訂が令和7年3月に予定されており、制度の更なる深化が図られています。

公会計システムに関する現状データ

全国の整備状況

東京都特別区の財政状況と公会計

  • ##### 堅調な歳入と増大し続ける歳出圧力
    • 令和5年度決算(速報)において、特別区の区税収入は、雇用・所得環境の改善を背景に13年連続で増加し、全体でも2.5%の増収となりました。
    • 一方で、歳出は、物価高騰対策に係る給付事業や公共施設の整備事業などにより、前年度比3.3%増(約1,512億円増)となっています。
    • 特に、歳出に占める扶助費(社会保障関係経費)は6年連続で増加(令和5年度は4.4%増)、普通建設事業費は28.7%増と、歳出構造の硬直化と将来負担の増大が顕著です。
    • (出典)特別区長会「令和5年度特別区決算の概要(速報)」令和6年11月
  • ##### 公会計が示す、将来の巨大な財政リスク
    • 特別区が抱える公共施設の改築経費は、今後20年間で約7.4兆円に上ると見込まれています。これは固定資産台帳のデータに基づく推計であり、公会計の導入によって初めて具体的に可視化された巨大な将来リスクです。
    • 現在の堅調な税収とは裏腹に、社会保障費の自然増とインフラ更新費用の増大という構造的な課題が、将来の財政を著しく圧迫する可能性を示唆しています。この「現在の好調さが将来のリスクを覆い隠す」状況を客観的に示すことこそ、公会計の重要な役割です。
    • (出典)特別区長会「令和5年度特別区決算の概要(速報)」令和6年11月
  • ##### 財政指標の推移

課題

住民の課題

財務情報の難解さとアクセシビリティの低さ
  • 自治体が公表する貸借対照表や行政コスト計算書は、「減価償却費」や「退職手当引当金」といった専門用語が多く、会計の知識がない住民にとっては理解が困難です。 4
  • 多くの場合、情報はウェブサイトにPDFファイルとして掲載されるだけで、グラフ化や要点解説などの工夫が乏しく、住民が財政状況の核心を掴むことが難しいのが現状です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 住民の行政への関心が低下し、本来の目的である「説明責任の履行」が形骸化します。

地域社会の課題

公共サービスの持続可能性に対するリスクの不可視化
  • 公会計によって「見える化」された公共施設の老朽化(有形固定資産減価償却率の上昇)や、将来の巨額な更新費用といった情報が、具体的な政策に結びついていないケースが多く見られます。
  • 例えば、ある公民館の使用料が安価に設定されていても、その裏で施設の老朽化が進み、更新費用が全く手当てされていないという事実が住民に伝わらなければ、将来突然のサービス停止や大幅な負担増という事態を招きかねません。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 将来的にインフラの破綻や公共サービス水準の急激な低下を招き、次世代に過大な負担を強いることになります。

行政の課題

深刻な「活用ギャップ」:作成はするが、活用されない財務情報
  • 最大の課題は、ほぼ全ての自治体が財務書類を「作成」している一方で、それを予算編成や行政評価、資産管理といった具体的な行政運営に「活用」している団体は少数に留まるという「作成と活用のギャップ」です。
  • 公会計は、多大な労力をかけて作成したにもかかわらず、多くの自治体で「年に一度の報告書」として書庫に眠ってしまっているのが実情です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 公会計システムの導入に費やした多大なコストと労力が無駄になり、行政経営の質が向上しません。
人材不足と組織文化の問題
  • 財務書類を読み解き、分析できる専門知識を持った職員が絶対的に不足しています。 6
  • 地方自治体特有の頻繁な人事異動により、せっかく習得した専門知識が組織内に蓄積されず、担当者が変わるたびにノウハウがリセットされてしまいます。 6
  • 財務書類を作成する「財政部門」と、実際に資産を管理しサービスを提供する「事業所管部門」との間に連携がなく、縦割り構造がデータの活用を阻害しています。 6
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • データに基づかない、旧来の慣習や経験に頼った意思決定が続き、非効率な財政運営が温存されます。
日々の業務プロセスへの未統合
  • 公会計が、日々の業務に組み込まれたマネジメントツールではなく、年度末に財務書類を作成するためだけの特別な作業として扱われています。
  • 例えば、発生主義の仕訳を日々行う「日々仕訳」を導入している団体はごく少数であり、多くの団体では決算後に一括して処理しているため、リアルタイムでの情報活用ができません。
  • 現金主義で編成される予算と、発生主義で作成される決算情報との間に、有機的なフィードバックループが確立されておらず、決算情報が次年度の予算編成に活かされていません。 6
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 公会計情報が意思決定のタイミングに間に合わず、「過去の記録」にとどまり将来の改善に繋がりません。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決に留まらず、複数の部署や課題解決に横断的に貢献する施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現在の法制度や予算、人員体制の中で、大きな障壁なく着手・実行できる施策を優先します。既存の仕組みを活用できる施策は優先度が高くなります。
  • 費用対効果
    • 投入する経営資源(予算・人員等)に対して、財政負担の軽減や住民サービスの向上といった効果が大きく見込める施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の住民層や一過性の効果に終わらず、広く区民全体に、かつ長期的に便益が及ぶ施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 国の調査研究や他の自治体での先進事例によって、その効果が実証されている、エビデンスに基づいた施策を重視します。

支援策の全体像と優先順位

  • 公会計の活用を阻む「ギャップ」を埋めるため、「基盤整備」「戦略的活用」「プロセス統合」の3段階で施策を体系化します。これらは相互に関連しており、統合的に推進することで最大の効果を発揮します。
  • 優先度【高】:支援策① 公会計リテラシーの向上と全庁的な活用基盤の整備
    • 人材と組織という根本的なボトルネックを解消する本施策は、全ての活用の前提となるため最優先です。波及効果が最も高く、他の施策の成功を左右します。
  • 優先度【高】:支援策② 公共施設マネジメントへの戦略的活用
    • 特別区が直面する数兆円規模のインフラ更新リスクに直接対応する、最も緊急性が高く、かつ長期的な財政効果が明確な活用分野です。
  • 優先度【中】:支援策③ 予算編成・行政評価プロセスへの統合
    • 公会計を行政経営のPDCAサイクルに完全に組み込む最終目標です。施策①と②の成功が前提となるため、中長期的な課題として位置付けます。

各支援策の詳細

支援策①:公会計リテラシーの向上と全庁的な活用基盤の整備

目的
  • 全職員の公会計に対する理解度を高め、データを活用する組織文化を醸成する。
  • 部署間の壁を越えて、誰もが公会計情報にアクセスし、分析できる基盤を構築する。
主な取組①:職層・職種別の体系的研修プログラムの実施
  • 管理職向け研修: 財務諸表から自部署が所管する施設のコスト構造や資産の老朽化状況を読み解き、政策決定や議会説明に活かすためのマネジメント研修を実施します。
  • 財政・管財部門向け研修: 財務諸表の作成・分析手法、セグメント分析や指標分析といった高度な専門知識を習得するための研修を実施します。
  • 事業担当者(非会計職)向け研修: 自らが担当する事業(例:保育園運営、道路維持管理)のフルコスト構造を理解するための入門研修を必須化します。
主な取組②:「公会計活用推進担当」の各部局への配置
  • 財政部門だけでなく、都市整備、福祉、教育といった大規模な資産を所管する主要部局に、公会計データの分析と活用を推進する担当者(兼務でも可)を配置します。
  • この担当者は、財政部門が作成したデータを現場の課題解決に繋げる「翻訳者」としての役割を担い、事業部門からの視点でデータ分析のニーズを財政部門にフィードバックします。
主な取組③:BIツール導入によるデータの「見える化」
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 全庁的な行政コスト(純経常費用)を3年間で5%削減
    • データ取得方法: 行政コスト計算書の純経常費用の経年比較
  • KSI(成功要因指標)
    • 予算編成・行政評価において公会計データを活用した部署の割合 80%以上
    • データ取得方法: 政策企画課・財政課による各部署へのヒアリング調査(年1回)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 職員の公会計理解度(研修後のテスト平均点) 80点以上
    • データ取得方法: 研修プログラムに組み込まれた理解度テストの結果
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 公会計研修の年間受講者数 延べ500人
    • データ取得方法: 人事課の研修実施記録

支援策②:公共施設マネジメントへの戦略的活用

目的
  • 公会計データ、特に固定資産台帳を客観的根拠として活用し、公共施設の統廃合や長寿命化を計画的に推進する。
  • 将来の更新費用の爆発的な増大を抑制し、持続可能な公共施設サービスを実現する。
主な取組①:固定資産台帳と公共施設等総合管理計画の完全連動
  • 固定資産台帳の建物情報(取得年度、耐用年数、構造等)を基に、施設の将来更新費用を自動的に算出し、公共施設等総合管理計画に直接反映させるシステムを構築します。
  • 施設ごとの「有形固定資産減価償却率」を老朽化の度合いを示す客観的な指標として用い、改修や更新の優先順位付けに活用します。
    • 客観的根拠:
主な取組②:施設別行政コスト計算書の作成と公表
  • 全ての公共施設について、減価償却費や維持管理費、人件費まで含んだ「施設別行政コスト計算書」を作成し、公表します。
  • このコスト情報と、施設の利用実績データを掛け合わせることで、「利用者一人当たりコスト」を算出し、非効率な施設を特定し、統廃合や機能転換、運営方法見直しの客観的な検討材料とします。
主な取組③:未利用・低利用財産の洗い出しと活用促進
  • 固定資産台帳を用いて、長期間利用されていない、または利用頻度が著しく低い土地・建物を機械的にリストアップします。
  • リストアップされた資産について、財産管理部門が売却、貸付、またはPPP/PFIによる民間活用などを速やかに検討するプロセスを確立します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 公共施設等総合管理計画の見直しにより、今後30年間の公共施設更新費用の総額を20%削減
    • データ取得方法: 公共施設等総合管理計画に基づく長期財政シミュレーション
  • KSI(成功要因指標)
    • 施設統廃合・長寿命化改修の実施件数 年間10件以上
    • データ取得方法: 公共施設マネジメント担当部署の事業実績報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 未利用財産の売却・貸付による年間収益 1億円以上
    • データ取得方法: 財産管理部門の歳入実績データ
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 全公共施設の施設別行政コスト計算書の作成率 100%
    • データ取得方法: 財政課・管財課による作成状況の集計

支援策③:予算編成・行政評価プロセスへの統合

目的
  • 公会計情報を予算編成や行政評価に本格的に組み込み、単年度の現金主義から脱却した、中長期的な視点での意思決定サイクル(PDCA)を確立する。
  • 事業の真のコスト(フルコスト)に基づき、施策の「選択と集中」を断行する。
主な取組①:ライフサイクルコスト(LCC)を考慮した予算要求の義務化
  • 新規の施設建設や大規模な情報システム導入など、初期投資額が大きい事業の予算要求時には、建設費だけでなく、将来の維持管理費や最終的な解体・廃棄費用まで含めたLCC(ライフサイクルコスト)の試算と提出を義務付けます。
  • 複数の事業案を比較検討する際には、LCCが低い事業案を優先的に採択する仕組みを予算査定プロセスに導入します。
    • 客観的根拠:
      • 静岡県浜松市は、ライフサイクルコストを考慮した施設建設の検討に公会計情報を活用しており、長期的な財政負担を抑制する先進的な取り組みとして知られています。
      • (出典)総務省「地方公会計活用事例集」
主な取組②:受益者負担の適正化に向けた客観的根拠の提示
  • 施設別行政コスト計算書を基に、各施設の使用料がフルコストの何%をカバーしているかを示す「受益者負担率」を算定し、公表します。
  • この負担率を基に、客観的な根拠のある使用料改定案を作成し、議会や住民への説明資料として活用することで、円滑な合意形成を図ります。
主な取組③:行政評価指標へのコスト指標の導入
  • 既存の事務事業評価シートに、「事業別行政コスト」「利用者一人当たりコスト」といった公会計由来のコスト指標を必須項目として導入します。
  • 事業の成果(アウトカム)と投入コストを対比させることで、費用対効果の低い事業の改善、見直し、あるいは廃止を促す客観的な判断材料とします。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 事業見直しにより、政策的経費に充当可能な財源を5年間で10%創出
    • データ取得方法: 予算編成結果における事業見直しによる財源確保額の集計
  • KSI(成功要因指標)
    • 行政評価の結果に基づき見直し・廃止された事業の割合 年間5%以上
    • データ取得方法: 行政評価担当部署の評価結果と予算への反映状況の分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 受益者負担率が基準に満たない施設使用料の改定件数 年間20件以上
    • データ取得方法: 各施設所管課からの報告と財政課での集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 予算要求時にLCCが提出された事業の割合 100%(対象事業において)
    • データ取得方法: 財政課による予算要求書類の確認

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「全庁的な新公会計制度の導入と活用の基本方針策定」

  • 世田谷区は、平成30年度から会計処理の段階で複式簿記仕訳を行う「日々仕訳」を導入し、財務会計システムと完全に連携させています。単に財務諸表を作成するだけでなく、「財務分析の精緻化・多機能化」「行政経営への応用拡大」「区民への説明責任の充実」という3つの明確な活用目標を掲げた基本方針を策定し、全庁的に取り組んでいます。
  • 成功要因は、トップダウンによる明確な活用方針の提示、システム導入と並行して計画された全職員向けの体系的な人材育成、そして国の統一基準をベースとしつつも、これまでの取り組みを踏まえた「東京都方式」を採用し、自区の目的に合わせた制度設計を行った点にあります。

品川区「事業別セグメント分析の試行」

  • 品川区では、主要な事業について、事業ごとのフルコストを算定する「事業別セグメント分析」を試行しています。例えば、特定の事業にかかる人件費を関連職員数で按分するなど、事業の真のコストを「見える化」し、事業評価に繋げる取り組みを進めています。
  • 成功要因は、全会計の財務諸表というマクロな視点だけでなく、個別の事業というミクロなレベルまで掘り下げて分析しようとする実践的な姿勢です。財務会計システムの仕様上の制約を、各課での実額算定で補うといった現場の工夫も行われています。

江東区など「公共施設マネジメントへのデータ活用」

全国自治体の先進事例

静岡県浜松市「ライフサイクルコストを考慮した予算編成」

  • 浜松市では、新規の施設建設を検討する際、建設費という初期投資だけでなく、将来の維持管理・更新費用まで含めたライフサイクルコスト(LCC)を算出し、予算編成の重要な判断材料としています。これにより、目先の安さにとらわれず、長期的な視点での財政負担を考慮した、より賢明な意思決定を実現しています。
  • 成功要因は、予算編成という行政の最重要プロセスに、公会計由来のLCCという概念を制度として組み込んだ点です。これにより、公会計が単なる「過去の決算書」から、未来への投資を最適化する「経営判断ツール」へと昇華しています。

千葉県浦安市「セグメント分析に基づく受益者負担の適正化」

  • 浦安市は、施設ごとの行政コスト計算書(セグメント分析)を作成し、そのフルコストに基づいて施設使用料の「あるべき水準」を算定しています。この客観的なデータを基に、受益者(利用者)とその他の納税者との負担の公平性を確保するための使用料改定を行っています。
  • 成功要因は、「使用料はいくらが妥当か」という、住民の関心が高く、ともすれば感情的な議論になりがちなテーマに対し、行政コストという客観的で説得力のある根拠を提示した点です。これにより、住民や議会との円滑な合意形成を可能にしています。

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区をはじめとする地方自治体において、統一的な基準による公会計制度は、その「作成」段階をほぼ終え、本格的な「活用」の時代へと移行しました。本質的な課題は、作成された財務情報をいかにして日々の行政運営に活かし、財政の効率化・適正化に繋げるかという点にあります。特に、社会保障費の増大とインフラの老朽化という構造的な課題に直面する特別区にとって、公会計データは、客観的根拠に基づき将来のリスクを管理し、持続可能な行政を実現するための不可欠な羅針盤です。職員の会計リテラシー向上という基盤を固め、公共施設マネジメントや予算編成といった中核業務へ戦略的に活用していくことが、未来の住民に対する責任を果たす道筋となります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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