17 健康・保健

健康診査・保健指導の充実と受診促進

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(健康診査・保健指導を取り巻く環境)

  • 自治体が健康診査・保健指導の充実と受診促進を行う意義は「住民の健康寿命の延伸による生活の質の向上」と「社会保障制度の持続可能性の確保」にあります。
  • 特定健康診査(特定健診)・特定保健指導は、生活習慣病の発症を未然に防ぐ「一次予防」の要であり、個人の健康維持のみならず、増大し続ける国民医療費の適正化に不可欠な制度です。
  • しかし、東京都特別区のような大都市圏では、豊富な医療資源が存在する一方で、多忙なライフスタイルや多様な就労形態、希薄な地域コミュニティといった「都市型課題」が受診の障壁となり、制度が十分に活用されていない現状があります。
  • この課題に対し、行政が主体的に環境整備と受診促進策を講じることは、全ての区民が健やかで心豊かな生活を送れる活力ある地域社会を実現するための重要な戦略的投資といえます。

意義

住民にとっての意義

生活習慣病の早期発見・早期対応
  • 特定健診は、糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病やその予備群であるメタボリックシンドロームを自覚症状のない段階で発見する重要な機会です。
  • 早期にリスクを把握し、特定保健指導を通じて生活習慣を改善することで、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病性腎症による人工透析といった深刻な事態を回避できます。
健康リテラシーとQOL(生活の質)の向上
  • 専門家(保健師・管理栄養士等)による個別性の高い特定保健指導は、単なる知識提供に留まらず、住民一人ひとりが自身の健康状態を理解し、主体的に健康管理を行う能力(健康リテラシー)を高めます。
  • 生活習慣の改善は、疾病予防だけでなく、日常的な体調の改善や活力の向上にも繋がり、住民のQOL(生活の質)向上に直接的に寄与します。

地域社会にとっての意義

健康格差の是正
  • 就労形態や所得、地域との関わりの有無によって生じる健康へのアクセス格差は、都市部における深刻な課題です。
  • 行政が主体となり、未受診者や健康無関心層に積極的にアプローチすることで、全ての住民が等しく予防医療の恩恵を受けられる機会を提供し、地域内の健康格差を是正することに繋がります。-(https://www.frontiersin.org/journals/public-health/articles/10.3389/fpubh.2024.1429143/full)
労働生産性の維持・向上

行政にとっての意義

中長期的な医療費の適正化
データに基づく効果的な政策立案(EBPM)の推進
  • 特定健診やレセプト(診療報酬明細書)のデータを統合した国保データベース(KDB)システムは、地域ごとの健康課題を客観的に可視化する宝庫です。
  • これらのデータを分析・活用することで、勘や経験に頼るのではなく、科学的根拠に基づいた効果的な保健事業の企画・立案・評価(EBPM)が可能となり、行政サービスの質を向上させます。

(参考)歴史・経過

  • 平成20年(2008年)
  • 第1期計画期間(平成20年度~平成24年度)
  • 第2期・第3期計画期間(平成25年度~令和5年度)
    • 実施率の向上に加え、保健指導の質の確保が課題となりました。平成27年度からは、保険者(区市町村国保や健保組合等)に対し、レセプト・健診情報を活用したデータヘルス計画の策定・実施が努力義務化され、データに基づいた保健事業の推進が求められるようになりました。
  • 第4期計画期間(令和6年度~)
    • 制度の大きな転換期を迎えました。これまでの実施率等のプロセス評価に加え、「腹囲2cm・体重2kg減」を主要達成目標とするアウトカム評価(成果評価)が本格的に導入されました。これにより、単に指導を実施するだけでなく、実際に成果を出すことが保険者等に強く求められるようになり、より効果的・効率的な保健指導への変革が急務となっています。

健康診査・保健指導に関する現状データ

  • 特定健診受診率の推移と現状
  • 特定保健指導実施率の深刻な低迷
  • 保険者種別による格差(被保険者と被扶養者の壁)
    • 制度の構造的な課題として、保険者種別による実施率の大きな格差が挙げられます。
    • 企業の従業員が加入する健康保険組合(組合健保)では、被保険者(本人)の特定健診実施率は90.4%(令和5年度速報値)と非常に高い水準です。これは、労働安全衛生法に基づく事業者健診が特定健診を兼ねているためです。
    • 一方で、その被扶養者(家族)の実施率は48.1%(令和5年度速報値)と半数以下にまで落ち込みます。これは、事業所を通じた受診勧奨が被扶養者には届きにくいことを示しており、特に専業主婦やパートタイマーの配偶者が制度の恩恵を受けにくい構造となっています。
  • 国民の健康状態の動向(令和5年国民健康・栄養調査より)
    • 低い受診率・実施率は、国民の健康指標にも影響を及ぼしています。
    • 肥満者の増加:20歳以上の男性の肥満者(BMI25以上)の割合は31.5%で、過去10年間で増加傾向にあります。これは特定健診の主要なターゲット層のリスクが高まっていることを示します。
    • 栄養・食生活の課題:野菜摂取量の平均値は256.0gと、目標の350gを大幅に下回り、特に男性では過去10年間で有意に減少しています。食塩摂取量も依然として高い水準です。
    • 運動習慣の低下:20歳以上の歩数の平均値は、男性6,628歩、女性5,659歩であり、過去10年間で男女ともに有意に減少しています。
    • 健康への関心の低さ:食習慣の改善について「関心がない」「改善するつもりはない」と回答する層が一定数存在し、健康無関心層へのアプローチが大きな課題となっています。

課題

住民の課題

働き盛り世代・子育て世代の「時間貧困」による受診機会の逸失
  • 40~50代の働き盛り世代や子育て中の世代は、特定健診・特定保健指導の主な対象でありながら、最も受診率が低い層の一つです。
  • 未受診の最大の理由は「仕事や家事で忙しく、時間がとれない」ことであり、特に長時間通勤が常態化している東京都特別区ではこの傾向が顕著です。この「時間貧困」ともいえる状況が、自身の健康を後回しにさせる大きな要因となっています。
被扶養者・自営業者等へのアプローチ不足
  • 企業の従業員(被保険者)と異なり、その配偶者である被扶養者や、国民健康保険に加入する自営業者・フリーランス等は、事業所を通じた組織的な受診勧奨の対象外となります。
  • 自ら情報を取りに行き、医療機関を探して予約する必要があるため、「手続きが面倒」「どこで受けられるかわからない」といった理由で未受診に繋がることが多く、制度の網からこぼれやすい状況にあります。
    • 客観的根拠
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 制度の網から漏れる層が固定化し、健康格差がさらに拡大・深刻化します。
健康無関心層への動機づけの困難さ

地域社会の課題

都市部特有のコミュニティ希薄化による孤立
  • 単身世帯の割合が高く、近隣住民との交流が少ない東京都特別区では、従来の町会・自治会などを通じた口コミによる健康情報の拡散が期待しにくくなっています。
  • 社会的に孤立している住民は、行政からの情報が届きにくいだけでなく、健康不安を相談する相手もおらず、問題を一人で抱え込みがちです。
    • 客観的根拠
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 孤立した住民の健康問題が発見されず、孤独死やセルフネグレクトのリスクが高まります。
区ごとの受診率・健康指標の格差
  • 特別区内では、特定健診受診率や特定保健指導実施率に大きな格差が存在します。
  • この背景には、各区の人口構成(年齢、就労形態)、社会経済的状況、そして行政の取組内容や熱量の違いなどが複合的に影響していると考えられます。

行政の課題

事業所連携の限界と形骸化
  • 従業員とその家族の健康を確保するためには、行政と事業所との連携が不可欠ですが、特に中小企業では、健康管理を担当する部署や人員が不足しており、連携体制を構築することが困難です。
  • 大企業であっても、連携は従業員本人の健診実施に留まりがちで、被扶養者の受診率向上や就業時間中の保健指導参加への配慮まで踏み込んだ協力は得られにくいのが実情です。
    • 客観的根拠
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 就労人口の大部分を占める中小企業の従業員とその家族が制度の恩恵を受けられず、施策の実効性が著しく低下します。
従来型の一律な情報提供・指導手法の限界
  • 全対象者に対して画一的な案内文書を送付したり、集合形式の健康教室を開催したりする従来の手法は、多様なライフスタイルを持つ都市部の住民のニーズに応えきれていません。
  • 特に、毎年特定保健指導の対象となるものの改善が見られない「リピーター」の存在は、現行の指導方法が行動変容に結びついていないことの証左です。
    • 客観的根拠
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 予算と人員を投じても行動変容に繋がらず、非効率な事業運営が継続されることで行政資源が無駄になります。
データヘルス計画のPDCAサイクルの機能不全
  • 多くの自治体でデータヘルス計画が策定されているものの、計画(Plan)だけで終わり、データ分析に基づく事業実施(Do)、効果検証(Check)、改善(Act)というPDCAサイクルが十分に機能していないケースが散見されます。
  • データの分析・活用が不十分なため、ハイリスク者への効果的なアプローチや、事業の費用対効果の検証が進んでいません。
    • 客観的根拠
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察
      • 勘と経験に基づく非効率な事業が継続され、科学的根拠に基づいた行政運営への転換が遅れます。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の仕組みを活用できる施策は優先度が高くなります。
  • 費用対効果
    • 投入する経営資源(予算・人員等)に対して得られる効果(実施率向上、健康改善、将来の医療費抑制効果等)が大きい施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、健康格差の是正に資する施策を優先します。また、一時的でなく継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 政府資料や先行事例等で効果が実証されているエビデンスに基づく施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • これまでの「待ち」の姿勢で画一的なサービスを提供する体制から、多様な住民のライフスタイルに寄り添い、行動変容を促す「攻め」の姿勢でパーソナライズされたサービスを提供する体制へと、発想を根本から転換する必要があります。
  • そこで、①行動デザインと多様な選択肢による受診・参加の環境整備②ICT活用とパーソナライズ化による保健指導の質の転換③データヘルスと官民連携による重症化予防の強化、の3つを柱とした支援策を提案します。
  • これらは相互に関連しますが、まずは制度の入口である受診・参加のハードルを徹底的に下げることが不可欠であるため、支援策①を最優先とし、全区的な基盤として整備します。
  • 次に、参加者の満足度と成果を高めるために支援策②を強力に推進し、最後に、持続可能で効果的な事業展開の基盤となる支援策③を中長期的な視点で構築します。この3つの施策を一体的に進めることで、相乗効果を最大化します。

各支援策の詳細

支援策①:行動デザインと多様な選択肢による受診・参加の環境整備

目的
  • 住民、特に働き盛り世代や健康無関心層が直面する「時間がない」「面倒」「きっかけがない」といった障壁を取り除き、誰もが自然に健診や保健指導に参加したくなる環境を整備することで、受診率・実施率の底上げを図ります。
主な取組①:行動経済学(ナッジ)を活用した受診勧奨の高度化
  • 単なる「お知らせ」ではなく、人の心理や行動特性に基づいた「ナッジ(そっと後押しする工夫)」を活用した通知を送付します。
  • 具体例
    • 損失回避:「無料(自己負担なし)で受けられる権利を失う前に」といった表現で、機会損失を意識させる。
    • 社会規範:「あなたの地域では〇〇人のうち△△人が受診済みです」と伝え、同調効果を促す。
    • デフォルト設定:健診の日時や場所を仮設定して通知し、変更がなければそのまま予約が完了する「オプトアウト方式」を導入する。
  • 横浜市ではSMS(ショートメッセージ)を活用したナッジによる受診勧奨で、若年層の受診率向上に成功しています。-(https://www.cancerscan.jp/services/case02-2/)
主な取組②:オンライン予約・問診システムの全面導入
  • 24時間365日、スマートフォンやPCから簡単に健診の予約・変更ができるシステムを導入します。
  • 事前にオンラインで問診票を提出できるようにすることで、健診当日の滞在時間を大幅に短縮し、「時間がない」という障壁を解消します。-(https://www.digital.go.jp/policies/municipal-dx-promotion-plan)
主な取組③:「ついで健診」「ながら健診」機会の拡充
  • 住民の生活動線上に健診機会を創出します。
  • 職域連携:企業の定期健診の際に、被扶養者である配偶者も同じ会場で受診できる「家族まるごと健診」を推進します。
  • 地域連携:地域の薬局やスーパーマーケット、駅構内などに簡易な健診ブースを設置し、買い物や通勤の「ついで」に血圧測定や血液検査などが受けられる機会を提供します。
主な取組④:健康ポイント制度の導入・拡充
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特定健診受診率 60%以上(現状 特別区平均 52.3%)
      • データ取得方法:特定健診・保健指導実施状況報告(法定報告)
    • 特定保健指導実施率 45%以上(現状 特別区平均 17.8%)
      • データ取得方法:特定健診・保健指導実施状況報告(法定報告)
  • KSI(成功要因指標)
    • 40~50代男性の特定健診受診率 55%以上
      • データ取得方法:特定健診データ分析
    • 被扶養者の特定健診受診率 55%以上
      • データ取得方法:特定健診データ分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • オンライン予約システムの利用率 50%以上
      • データ取得方法:予約システムのログデータ分析
    • ナッジ介入による対象者の受診率向上幅 前年度比+5ポイント
      • データ取得方法:介入群と非介入群の受診率比較分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 地域連携による「ついで健診」拠点数 各区50ヶ所以上
      • データ取得方法:事業実施報告
    • 健康ポイント事業の参加登録者数 各区5万人以上
      • データ取得方法:事業登録者データ

支援策②:ICT活用とパーソナライズ化による保健指導の質の転換

目的
  • 従来の一律・対面型の保健指導から脱却し、ICTを活用した柔軟で個別性の高い支援を提供することで、参加者の利便性と満足度を高め、途中脱落を防ぎ、行動変容の実効性を最大化します。これは第4期計画で求められるアウトカム評価に対応するための必須の転換です。-(https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000927404.pdf)
主な取組①:遠隔(オンライン)保健指導の標準化
  • スマートフォンやPCのビデオ通話機能を用いたオンライン面談を、対面指導と並ぶ標準的な選択肢として提供します。
  • これにより、多忙な就労者や育児中の親、外出が困難な高齢者などが、自宅や職場から都合の良い時間に参加できるようになり、参加率と継続率の向上が期待できます。品川区などで既に導入が進んでいます。
主な取組②:区公式ヘルスケアアプリの開発・導入
主な取組③:ウェアラブルデバイスの貸与・連携
  • 特に重症化リスクの高い「積極的支援」対象者などには、活動量や睡眠の質を自動で記録するウェアラブルデバイス(スマートウォッチ等)を貸与します。
  • 客観的なデータを基に、より精度の高い個別指導を行うとともに、利用者の健康状態の遠隔モニタリングにも活用します。-(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/index.html)
主な取組④:デジタルデバイド対策(デジタル活用支援員の配置)
  • 高齢者などデジタル機器の操作に不慣れな住民が取り残されないよう、区の施設や地域の集会所、携帯電話ショップ等に「デジタル活用支援員」を配置します。
  • ヘルスケアアプリのインストールや操作方法、オンライン面談の受け方などを丁寧にサポートし、誰もがICTの恩恵を受けられる体制を構築します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 特定保健指導完了率 80%以上(現状 中断率約32.7%)
      • データ取得方法:保健指導実施記録データの分析
    • メタボリックシンドローム該当者及び予備群の減少率(対平成20年度比) 25%以上
      • データ取得方法:特定健診データ分析
  • KSI(成功要因指標)
    • ICT活用型保健指導の利用率 70%以上
      • データ取得方法:保健指導実施記録データの分析
    • ヘルスケアアプリの3ヶ月以上の継続利用率 75%以上
      • データ取得方法:アプリ利用ログデータの分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 指導参加者の平均体重減少率 5%以上(第4期アウトカム目標達成)
      • データ取得方法:保健指導前後データ比較分析
    • 指導参加者の腹囲平均減少幅 3cm以上(第4期アウトカム目標達成)
      • データ取得方法:保健指導前後データ比較分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • オンライン保健指導の提供率 100%(全対象者が選択可能)
      • データ取得方法:保健指導実施体制調査
    • デジタル活用支援講座の年間開催回数 各区100回以上
      • データ取得方法:事業実施報告

支援策③:データヘルスと官民連携による重症化予防の強化

目的
主な取組①:KDBデータを活用したハイリスク者抽出と介入
  • 国保データベース(KDB)システムを用いて、健診データとレセプトデータを突合分析します。
  • これにより、健診結果で血糖値や血圧が著しく高いにもかかわらず医療機関を受診していない「ハイリスク未治療者」や、糖尿病治療を中断している可能性のある者を抽出し、保健師等による個別の電話や訪問で受診勧奨や保健指導を徹底します。足立区の糖尿病性腎症重症化予防事業が優れたモデルです。
主な取組②:かかりつけ医・薬局との連携強化
  • 地域の医師会や薬剤師会と連携協定を締結し、重症化予防のネットワークを構築します。
  • かかりつけ医から、生活習慣の改善が必要な患者を区の保健指導プログラムに紹介してもらう仕組みや、薬局で薬を受け取る際に薬剤師が健診受診を呼びかける「声かけ運動」などを実施します。
主な取組③:地域医療連携推進法人等との協働
  • 地域の基幹病院やクリニック、介護施設等が連携して医療・介護サービスを提供する「地域医療連携推進法人」と協働します。
  • 法人が持つ医療専門性や患者情報を活用し、退院後の生活習慣指導や、地域住民向けの共同健康講座の開催など、予防から治療、在宅ケアまで切れ目のない健康支援体制を構築します。
主な取組④:ヘルスケア分野におけるPPP/PFIの活用
  • 民間の知見や資源を積極的に活用します。
  • 具体例
    • 民間のフィットネスクラブと提携し、保健指導参加者向けの割引プログラムを提供する。
    • 食品メーカーと協力し、地域のスーパーやコンビニで「減塩」「野菜たっぷり」といった健康弁当を共同開発・販売する。
    • IT企業と連携し、支援策②で提案したヘルスケアアプリの開発・運用を委託する。
    • (出典)内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン」令和5年度
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 糖尿病性腎症による新規透析導入患者数の10%削減
      • データ取得方法:レセプトデータ分析
    • 脳・心血管疾患による年齢調整死亡率の5%削減
      • データ取得方法:人口動態統計
  • KSI(成功要因指標)
    • ハイリスク未治療者の医療機関受診率 70%以上
      • データ取得方法:レセプトデータによる追跡調査
    • 官民連携によるヘルスケア事業の実施件数 各区10件以上
      • データ取得方法:事業実施報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 重症化予防プログラム参加者のHbA1c平均改善値 -0.5%
      • データ取得方法:プログラム前後での医療データ比較
    • 医療費適正化効果 年間5億円/区
      • データ取得方法:介入群と非介入群の医療費比較分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • KDBデータ分析に基づく介入対象者の特定数 年間500人/区
      • データ取得方法:KDBシステム抽出データ
    • 連携協定を締結した医療機関数・薬局数 各100ヶ所以上/区
      • データ取得方法:協定締結状況の確認

先進事例

東京都特別区の先進事例

足立区「データヘルスに基づく糖尿病性腎症重症化予防事業」

  • 足立区では、国保データベース(KDB)を活用し、特定健診結果とレセプトデータから糖尿病性腎症のリスクが高い未治療者や治療中断者を抽出し、重症化予防に集中的に取り組んでいます。
  • 成功要因:かかりつけ医と連携し、事業への参加同意を得た上で、区が委託した事業者の保健師・管理栄養士が6ヶ月間にわたる個別支援(面談・電話)を実施。データに基づき、真に支援が必要な層に資源を集中投下している点が特徴です。
  • 効果:プログラム参加者からは「野菜の量を増やせた」「食事量を適正にできた」といった具体的な行動変容が報告されており、将来の人工透析導入者数を抑制し、長期的な医療費適正化に貢献することが期待されています。

八王子市「SIBとナッジ理論を活用したオーダーメイド型受診勧奨」

  • 八王子市は、日本で初めてソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)という成果連動型民間委託契約方式を導入し、大腸がん検診の受診率向上に取り組みました。この手法は特定健診にも応用可能です。
  • 成功要因:民間事業者(株式会社キャンサースキャン)が持つ行動科学の知見を活かし、対象者一人ひとりの過去の健診結果やリスク要因(飲酒、肥満等)を分析。個別に最適化された「オーダーメイド型」の受診勧奨通知を送付することで、自分事として捉えさせ、行動変容を促しました。
  • 効果:リスクを個別に通知するアプローチにより、勧奨対象者の受診率は26.8%に達し、画一的な通知に比べて高い効果を上げています。EBPM(証拠に基づく政策立案)の先進的な取組として全国から注目されています。-(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/2.H28hachiojishi.pdf)-(https://graj.org/gr_ex_ar/%E3%80%90%E4%BD%8F%E6%B0%91%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E5%A2%97%E9%80%B2%E3%80%91sib%E3%82%92%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E6%A4%9C%E8%A8%BA%E5%8F%97%E8%A8%BA%E7%8E%87%E5%90%91%E4%B8%8A/)

品川区「ICT活用と主治医連携による保健指導の推進」

  • 品川区は、多忙な区民のライフスタイルに対応するため、ICTを活用した保健指導の提供に積極的に取り組んでいます。
  • 成功要因:スマートフォン等を利用した遠隔(オンライン)での保健指導を導入し、時間や場所の制約を解消。令和4年度には利用者の約2割がICT面談を利用するなど、着実に利用が拡大しています。また、地域の医師会と連携し、かかりつけ医から保健指導プログラムへ紹介する体制の構築を検討しており、医療と予防のシームレスな連携を目指しています。
  • 効果:ICTの活用により、これまで参加が難しかった若年層や就労層の利用率向上が期待されます。主治医との連携が実現すれば、より質の高い、継続的な健康管理が可能となります。
    • (出典)品川区「第四期品川区国民健康保険データヘルス計画」令和6年度-(https://www.scft.co.jp/healthcare_remote.html)

全国自治体の先進事例

新潟県燕市「つばめ元気かがやきポイント事業」

横浜市「働き盛り世代へのSMS等を活用したデジタル受診勧奨」

  • 横浜市では、特に受診率が低い40~50代の働き盛り世代をターゲットに、ショートメッセージ(SMS)を活用したデジタル受診勧奨を実施しました。
  • 成功要因:単にSMSを送るだけでなく、行動科学(ナッジ理論)に基づきメッセージ内容を最適化。「インセンティブ(特典)」「社会規範(他の人も受けている)」など、複数のパターンのメッセージの効果を比較検証し、最も効果の高いアプローチを科学的に探求しました。
  • 効果:ナッジ理論を用いたメッセージは、標準的なメッセージよりも高い受診率を達成。低コストで実施可能なSMSが、これまでアプローチが難しかった層に情報を届け、行動を促す上で有効であることを実証しました。-(https://www.cancerscan.jp/services/case02-2/)

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区における健康診査・保健指導は、受診率・実施率ともに国の目標を大きく下回り、特に働き盛り世代や被扶養者といった層へのアプローチが喫緊の課題です。本報告書では、従来の一律・画一的な「待ち」の支援から、行動デザインとICTを駆сиし、多様なライフスタイルに寄り添う「攻め」の支援への転換を提言しました。データに基づきハイリスク者を特定し、官民連携で重層的なサポートを提供する体制を構築することで、健康寿命の延伸と社会保障制度の持続可能性確保という二大目標の達成を目指すべきです。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました