健康づくり推進

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要（健康づくりを取り巻く環境）

• 自治体が健康づくりを推進する意義は「住民の健康寿命の延伸と生活の質の向上」と「社会保障制度の持続可能性の確保」にあります。
• 超高齢社会が深化する東京都特別区において、健康づくりは個人の幸福追求にとどまらず、増大する医療・介護給付費を抑制し、地域社会の活力を維持するための最重要政策課題の一つです。
• 本記事では、最新のデータに基づき現状と課題を分析し、実効性のある行政支援策を提案します。

意義

住民にとっての意義

生活の質（QOL）の向上

• 健康は、一人ひとりが自分らしい人生を送り、社会と関わるための基盤です。
• 生活習慣病の発症予防や重症化予防を通じて、生涯にわたり活動的な生活を送ることが可能になります。
  • （出典）厚生労働省「「データヘルス計画」のための保健事業事例集等について」平成26年度

経済的負担の軽減

• 健康を維持することで、医療費や介護サービスの自己負担が減少し、経済的な安定につながります。
• 健康増進への取り組みは、将来の医療・介護費用の増大という、住民、自治体、国全体の負担増に対する有効な対策となります。
  • （出典）全国市長会「都市とガバナンス 第51号」令和6年度

地域社会にとっての意義

社会経済的活力の向上

• 健康な高齢者や現役世代が増えることは、就労やボランティアなどの社会参加を促進します。
• これにより、地域経済の活性化やコミュニティの担い手確保に繋がり、活力ある地域社会が維持されます。
  • （出典）厚生労働省「「データヘルス計画」のための保健事業事例集等について」平成26年度
  • （出典）内閣官房・内閣府「健康・医療・介護のまちづくりの推進（健康・医療戦略）」平成27年度

持続可能な社会の実現

• 健康寿命の延伸は、将来世代の医療・介護負担を軽減し、「誰一人取り残さない」持続可能な社会の基盤を築きます。
• これは、国連の持続可能な開発目標（SDGs）の「すべての人に健康と福祉を」という目標にも合致する取り組みです。
  • （出典）厚生労働省「健康日本21（第三次）の推進について」令和5年度
  • （出典）旭川市「あさひかわ健康プラン21（第3次）」令和6年度

行政にとっての意義

医療費・介護給付費の適正化

• 住民の健康増進は、生活習慣病の有病率低下に直結し、中長期的に社会保障給付費の伸びを抑制する最も効果的な投資です。
• 保健事業は、住民の健康レベルの改善と医療費の適正化を同時に達成しうる重要な事業と位置づけられています。
  • （出典）厚生労働省「「データヘルス計画」のための保健事業事例集等について」平成26年度
  • （出典）m3.com「健康日本21（第三次）はいつから？基本方針や新たな視点を解説」令和5年度

政策効果の最大化

• 健康づくりは、福祉、都市計画、産業振興、環境など、他分野の政策とも連携することで相乗効果を生み出します。
• 限られた行政資源でより大きな成果を上げることを可能にし、全体を俯瞰した戦略的な行政運営に貢献します。
  • （出典）内閣官房・内閣府「健康・医療・介護のまちづくりの推進（健康・医療戦略）」平成27年度
  • （出典）松下資料館「地域における効果的な健康政策立案・実施のための手引」令和4年度

（参考）歴史・経過

明治期～戦前（感染症対策の時代）

• 主な公衆衛生上の課題はコレラや結核などの感染症対策でした。
• 1879年（明治12年）に「虎列刺（コレラ）病予防仮規則」、1897年（明治30年）に「伝染病予防法」が制定されるなど、公衆衛生の法整備が進みました。
• 1937年（昭和12年）には「保健所法」が制定され、公衆衛生行政の拠点としての保健所の体制が始まりました。
  • （出典）厚生労働省「平成26年版 厚生労働白書」平成26年度
  • （出典）三共出版「公衆衛生年表」令和6年度

戦後～1960年代（公衆衛生体制の再構築と国民皆保険）

• 日本国憲法第25条の理念のもと、公衆衛生体制が再構築されました。
• 「保健所法」（1947年）、「医療法」（1948年）、「精神衛生法」（1950年）、「結核予防法」（1951年）などが次々と整備されました。
• 1961年（昭和36年）には国民皆保険が達成され、誰もが医療を受けられる体制が整いました。
  • （出典）日本公衆衛生学会「日本公衆衛生雑誌 第65巻」平成30年度
  • （出典）国際交流センター「日本のグローバルヘルス：歴史的変遷と将来展望」平成25年度

1970年代～1980年代（生活習慣病への着目）

• 疾病構造が感染症からがん、心疾患、脳血管疾患などの成人病（後の生活習慣病）へと大きく変化しました。
• 個人の生活習慣の改善に焦点を当てた健康増進活動が始まり、1982年（昭和57年）には「老人保健法」が制定され、市町村による健康教育、健康診査などの保健事業が全国で本格化しました。
  • （出典）日本公衆衛生学会「日本公衆衛生雑誌 第65巻」平成30年度
  • （出典）厚生労働省「健康日本21企画検討会 第11回議事録」平成12年度

2000年代（健康日本21と健康増進法の制定）

• 2000年（平成12年）から「21世紀における国民健康づくり運動（健康日本21）」が開始されました。
• 2002年（平成14年）には「健康増進法」が制定され、生活習慣病の一次予防が国の重要政策として明確に位置づけられました。
  • （出典）三共出版「公衆衛生年表」令和6年度

2010年代（データヘルスの推進）

• 2008年（平成20年）に特定健診・特定保健指導が始まり、生活習慣病の予防がより具体化しました。
• 2013年（平成25年）からは、医療保険者にレセプトデータ等を活用した「データヘルス計画」の策定・実施が義務付けられ、EBPM（証拠に基づく政策立案）への転換が図られました。
  • （出典）厚生労働省「「データヘルス計画」のための保健事業事例集等について」平成26年度

2020年代（誰一人取り残さない健康づくりへ）

• 2024年（令和6年）から「健康日本21（第三次）」が開始されました。
• 「誰一人取り残さない健康づくり（Inclusion）」と「自然に健康になれる社会環境づくり」が新たな視点として加わりました。
• 健康格差の是正や、行動科学・ICTの活用、女性の健康といった個別課題への対応がより重視されています。
  • （出典）厚生労働省「健康日本21（第三次）の推進について」令和5年度
  • （出典）m3.com「健康日本21（第三次）はいつから？基本方針や新たな視点を解説」令和5年度

健康づくりに関する現状データ

健康寿命と平均寿命の乖離

• 国の状況
  • 令和元年時点で、日本の健康寿命は男性72.68年、女性75.38年です。
  • 平均寿命（男性81.41年、女性87.45年）との差である「不健康な期間」は、男性で8.73年、女性で12.06年存在します。
  • 平成22年からの約10年間で健康寿命は男性で2.26年、女性で1.76年延伸しており、平均寿命の延びを上回っていますが、依然として大きな乖離があります。
    • （出典）内閣府「令和6年版 高齢社会白書」令和6年度
• 東京都の状況
  • 特別区の事例として渋谷区を見ると、令和4年度の平均余命と健康寿命（平均自立期間）の乖離は男性で1.9歳、女性で3.8歳となっています。
  • 全国平均と比較すると乖離は小さい傾向にありますが、特に女性において数年間の支援が必要な期間が存在することを示しています。
    • （出典）渋谷区「第3期渋谷区国民健康保険保健事業実施計画（データヘルス計画）」令和6年度

主要な生活習慣の状況（全国・東京都）

• 肥満とやせ
  • 全国
    • 令和5年調査で、肥満者（BMI≧25）の割合は男性31.5％、女性21.1％です。男性は平成25年から令和元年にかけて有意に増加し、その後は横ばいです。
    • 一方で、20～30代女性の「やせ」（BMI<18.5）の割合は20.2%にのぼり、依然として高い水準です。
      • （出典）厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」令和6年度
      • （出典）日本栄養士会「令和5年「国民健康・栄養調査」の結果」令和6年度
  • 東京都
    • 肥満者の割合は男性31.6％、女性17.2％です。男性は全国と同水準ですが、女性はやや低い傾向にあります。
    • しかし、男性の60歳代では50.0%が肥満であり、年代別の課題が顕著です。
      • （出典）東京都福祉保健局「都民の健康・栄養状況（令和元年国民健康・栄養調査東京都分報告書）」令和4年度
• 野菜摂取量
  • 全国
    • 令和5年の1日あたり平均摂取量は256.0gで、国の目標である350gを約100g下回っています。
    • 男性では直近10年間で、女性では平成27年以降、有意に減少しており、改善が見られていません。
      • （出典）厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」令和6年度
  • 東京都
    • 1日あたり平均摂取量は299.9gと全国平均よりは多いものの、目標には達していません。
    • 目標の350g以上を摂取している者の割合は、男性30.8％、女性32.9％にとどまります。
      • （出典）東京都福祉保健局「都民の健康・栄養状況（令和元年国民健康・栄養調査東京都分報告書）」令和4年度
• 運動習慣（歩数）
  • 全国
    • 令和5年の1日あたり平均歩数は男性6,628歩、女性5,659歩であり、直近10年間で男女とも有意に減少しています。
      • （出典）厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」令和6年度
  • 東京都
    • 1日8000歩以上歩く者の割合は男性42.0％、女性38.3％です。
    • 年代差が大きく、20歳代では男女とも高い（男性63.6%、女性70.0%）一方、中年期以降は低下する傾向にあります。
      • （出典）東京都福祉保健局「都民の健康・栄養状況（令和元年国民健康・栄養調査東京都分報告書）」令和4年度
• 喫煙率
  • 全国
    • 令和5年の習慣的喫煙率は15.7％（男性25.6％、女性6.9％）です。
    • 直近10年間で男女とも有意に減少しており、対策の成果が見られます。
      • （出典）厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」令和6年度

メンタルヘルスの課題

• 患者数の推移
  • 精神疾患を有する総患者数は増加傾向にあり、平成14（2002）年の約258万人から、令和2（2020）年には約615万人へと大幅に増加しています。
  • この増加は主に外来患者によるもので、同期間に外来患者数は約224万人から約586万人へと約2.6倍になっています。一方、入院患者数は約35万人から約29万人へと減少傾向にあります。
    • （出典）厚生労働省「重点分野の現状（精神疾患）」令和4年度
    • （出典）国立精神・神経医療研究センター「精神疾患を有する総患者数の推移」令和4年度
• 疾患別の動向
  • 外来では、気分[感情]障害（うつ病等）が平成14年の約71万人から平成29年には約127万人へ、ストレス関連障害等が約50万人から約83万人へと、それぞれ約1.8倍、約1.7倍に増加しており、現代社会のストレスを反映しています。
  • 入院では、統合失調症は減少傾向にある一方、認知症（アルツハイマー病）の患者数は増加しています。
    • （出典）厚生労働省「重点分野の現状（精神疾患）」令和4年度

高齢化と要介護認定者の増加

• 認定者数の推移
  • 全国の要介護（要支援）認定者数は一貫して増加しており、介護保険制度が開始された平成12（2000）年度の約256万人から、令和5（2023）年3月末には約694万人へと約2.7倍に増加しています。
    • （出典）厚生労働省「介護保険事業状況報告（年報）」
    • （出典）(https://wm-research.jp/blog/3159/)
• 認定率の推移
  • 第1号被保険者（65歳以上）に占める認定者の割合（認定率）も上昇傾向にあり、令和4年3月末の18.9%から、令和5年3月末には19.0%へと上昇しています。
    • （出典）(https://wm-research.jp/blog/3159/)

都内における健康格差

• 地域間・社会経済的格差
  • 特別区内において、平均寿命に最大で3.1年、健康寿命に最大で4.5年の差が存在します。
  • 所得水準と健康状態の関連も顕著で、東京都の調査では、世帯年収300万円未満の層と700万円以上の層で健康寿命に約2.8年の差が見られます。
    • （出典）行政情報ポータル「健康・保健政策」令和6年度
• 特定健診結果に見る格差
  • 渋谷区のデータヘルス計画では、令和4年度の特定健診受診率が、性別（男性33.5%、女性42.8%）や年齢（40～64歳は31.7%に対し65～74歳は50.1%）によって大きな差があることが示されています。
  • このデータは、健康へのアクセスや意識に格差が存在し、アプローチすべきターゲットが明確であることを示唆しています。
    • （出典）渋谷区「第3期渋谷区国民健康保険保健事業実施計画（データヘルス計画）」令和6年度

課題

住民の課題

健康意識と行動のギャップ

• 健康への関心は高いものの、実際の健康行動（運動・食生活改善等）が伴っていない住民、特に働き盛り世代が多いです。
  • 客観的根拠：
    • 東京都の調査では、特別区住民の78.2%が「健康に気をつけている」と回答する一方、「週1回以上の運動習慣がある」人は5割程度、「毎日野菜を350g以上摂取している」人は約3割にとどまっています。特に30～40代の働き盛り世代では、時間的・精神的余裕のなさから健康づくりを後回しにする傾向が強いです。
      • （出典）行政情報ポータル「健康・保健政策」令和6年度
      • （出典）東京都福祉保健局「都民の健康・栄養状況（令和元年国民健康・栄養調査東京都分報告書）」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 将来の生活習慣病有病率の上昇と、それに伴う医療費の増大が避けられなくなります。

健康無関心層へのアプローチ不足

• 従来の画一的な情報提供や啓発活動では、健康への関心が低い層（健康無関心層）に届かず、行動変容を促すことが困難です。
  • 客観的根拠：
    • 全国の自治体で健康づくり事業の参加者が固定化する傾向が見られます。健康無関心層は、健康情報を能動的に求めないため、従来の講演会やパンフレット配布といったプッシュ型の情報提供では効果が限定的であることが指摘されています。
      • （出典）国土交通省「『居心地が良く歩きたくなる』まちなかの創出」令和4年度
      • （出典）(https://business.rizap.jp/column/752/)
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 健康格差がさらに拡大し、社会全体の医療費負担が増加する主要因となります。

メンタルヘルス不調と社会的孤立の増大

• ストレスの多い都市生活や人間関係の希薄化を背景に、メンタルヘルスの不調を抱える住民が増加しており、社会的孤立が問題を深刻化させています。
  • 客観的根拠：
    • 精神疾患の外来患者数は過去20年で倍増以上になっており、特に気分障害やストレス関連障害の増加が著しいです。
      • （出典）厚生労働省「重点分野の現状（精神疾患）」令和4年度
      • （出典）国立精神・神経医療研究センター「精神疾患を有する総患者数の推移」令和4年度
    • また、東京都の調査では、地域の人と「つきあいはない」と回答する住民も一定数存在し、特に若年・中年層でその傾向が見られます。
      • （出典）東京都福祉保健局「令和2年度都民の健康や地域とのつながりに関する意識・活動状況調査」令和3年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 生産性の低下や自殺リスクの増大など、社会経済的な損失が深刻化します。

地域社会の課題

社会経済的要因による健康格差の固定化

• 所得や居住地域、雇用形態といった社会経済的要因が健康状態に大きく影響し、その格差が固定化・再生産される構造的な問題を抱えています。
  • 客観的根拠：
    • 特別区内における健康寿命の格差（最大4.5年）や、所得階層別の健康寿命の差（約2.8年）を示すデータが複数存在します。
      • （出典）行政情報ポータル「健康・保健政策」令和6年度
    • こうした格差は、食生活や運動習慣、健診受診行動の違いとして現れ、その背景には経済的余裕や健康リテラシーの違いがあると考えられます。
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 社会全体の分断が進み、公平性を損なうとともに、特定の地域や層に医療・介護負担が集中します。

行政の課題

構造的な社会保障費の増大

• 高齢化の進展と生活習慣病の蔓延により、医療費・介護給付費は構造的に増大し続けており、区財政を圧迫しています。
  • 客観的根拠：
    • 要介護（要支援）認定者数は令和5年3月末で694万人に達し、制度開始から約2.7倍に増加しています。これは、団塊の世代が後期高齢者になり始める2025年以降、さらに加速することが確実視されています。
      • （出典）(https://wm-research.jp/blog/3159/)
      • （出典）厚生労働省「介護保険事業状況報告（年報）」
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 他の住民サービス（教育、インフラ整備等）への投資が抑制され、行政サービス全体の質の低下を招きます。

従来の画一的なアプローチの限界

• 多様化する住民のライフスタイルや価値観に対し、行政主導の画一的な健康づくり事業では、ニーズに応えきれず効果が頭打ちになっています。
  • 客観的根拠：
    • 国の「健康日本21（第二次）」の最終評価では、多くの目標が未達成に終わり、特に自治体単独では取り組みにくい社会環境整備などの課題が指摘されました。これは、個人の努力だけに頼るアプローチの限界を示しています。
      • （出典）旭川市「あさひかわ健康プラン21（第3次）」令和6年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 費用対効果の低い事業が継続され、限られた行政資源が無駄に使われてしまいます。

分野横断的な連携（健康の社会決定要因への対応）の不足

• 健康は保健医療分野だけの問題ではなく、都市計画、教育、産業、環境など、あらゆる政策が関わる「健康の社会決定要因（SDOH）」に左右されるにもかかわらず、行政の縦割り構造が分野横断的な取り組みを阻害しています。
  • 客観的根拠：
    • 厚生労働省の「健康日本21（第三次）」では、「自然に健康になれる環境づくり」や「他計画との連携」が重点課題として挙げられています。これは、歩きやすいまちづくり（国土交通省）、食育（農林水産省）、健康経営（経済産業省）など、他省庁・他部局との連携が不可欠であることを示唆しています。
      • （出典）厚生労働省「健康日本21（第三次）の推進について」令和5年度
      • （出典）m3.com「健康日本21（第三次）はいつから？基本方針や新たな視点を解説」令和5年度
      • （出典）松下資料館「地域における効果的な健康政策立案・実施のための手引」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 根本的な課題解決に至らず、対症療法的な施策に終始し、持続的な効果が得られません。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

• 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
  • 即効性・波及効果：
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性：
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。
  • 費用対効果：
    • 投入する経営資源（予算・人員・時間等）に対して得られる効果（医療費削減効果、QOL向上など）が大きい施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性：
    • 特定の層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、かつ長期的に継続可能な仕組みを持つ施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無：
    • 先進事例や研究等で有効性が示されている、エビデンスに基づいた施策を最優先します。

支援策の全体像と優先順位

• これまでの課題分析を踏まえ、従来の「情報提供・啓発中心」のアプローチから脱却し、「行動変容の促進」「社会環境の整備」「データに基づく個別化」を3つの柱とする支援策を提案します。
• 優先度【高】：支援策①：行動科学とパーソナライズによる「健康行動の習慣化」支援
  • 最大の課題である「健康無関心層」と「意識と行動のギャップ」に直接アプローチし、既存の健診事業等の効果を底上げする即効性と波及効果が期待できるため、最優先で取り組みます。
• 優先度【中】：支援策②：「自然に健康になれる」社会環境の戦略的整備
  • 個人の意識や努力だけに頼らず、誰もが健康的な選択をしやすい環境を構築するもので、中長期的に最も持続可能で公平性の高い効果が見込めるため、次に優先します。
• 優先度【中】：支援策③：データヘルス改革による「健康格差の是正」
  • 他の2つの施策の基盤となり、施策の効果を最大化し公平性を担保するために不可欠です。①②と並行して着実に進める必要があります。

各支援策の詳細

支援策①：行動科学とパーソナライズによる「健康行動の習慣化」支援

目的

• ナッジ（行動経済学）やインセンティブ設計、ICTを活用し、健康無関心層を含めた全住民の自発的な健康行動を促し、習慣化させることを目的とします。
  • 客観的根拠：
    • ナッジ等を活用した健診・検診受診勧奨により、受診率が2～4倍程度向上した自治体事例があります。
      • （出典）内閣府 経済財政諮問会議「21世紀型の社会保障改革に向けて」平成31年度

主な取組①：ナッジ理論を活用した受診勧奨・行動変容アプローチの導入

• 特定健診やがん検診の案内に、損失回避（例：「このままだと来年度の検査キット自動送付の対象外となります」）や社会的比較（例：「同年代の80%が受診しています」）といったナッジを活用したメッセージを導入し、受診率を向上させます。
• 申込書を「受診するか否か」を問う形式から、「いつ受診するか」を選択させる形式に変更するなど、意思決定の負担を軽減する工夫を取り入れます。
  • 客観的根拠：
    • 東京都八王子市では、損失回避のメッセージを用いた大腸がん検診の受診勧奨で、受診率が7.2ポイント向上しました（22.7%→29.9%）。
      • （出典）株式会社キャンサースキャン「ナッジを活用した大腸がん検診受診率向上事業」
      • （出典）メディカル・プロモーション「医療におけるナッジとは」令和5年度
    • 千葉市では、案内状の工夫で全体の受診率が3.7ポイント上昇した実績があります。
      • （出典）厚生労働省「健診・検診の受診勧奨にナッジを活用した事例」平成30年度

主な取組②：健康ポイント制度のゲーミフィケーション化とインセンティブの強化

• 歩数や健診受診、健康イベント参加などに対してポイントを付与する「東京健康UPlus」等の事業と連携・拡充します。
• 個人だけでなく、友人同士や企業単位でのチーム参加やランキング機能を導入し、楽しみながら継続できるゲーミフィケーション要素を強化します。
• 貯まったポイントは、地域商品券や電子マネー、公共施設利用料割引など、住民にとって魅力的なインセンティブと交換可能にします。
  • 客観的根拠：
    • 健康ポイント制度は、健康に関心を持ちにくい世代への支援に有効です。
      • （出典）ソフトバンクギフト「自治体の健康ポイント制度とは？成功事例や導入メリットを解説」令和5年度
    • インセンティブを抽選ではなく参加者全員に付与した八王子市の事例では、3年間の継続率が80%に達しています。
      • （出典）ジチタイワークス「健康無関心層を動かす！行動経済学ナッジとゲーミフィケーション」令和4年度

主な取組③：習慣化アプリ等を活用したフレイル・生活習慣病予防プログラムの展開

• 民間企業等が開発する習慣化アプリやウェアラブル端末を活用し、高齢者のフレイル予防や現役世代の生活習慣改善を支援します。
• 5人1組のチームで励まし合いながら目標達成を目指すアプリなどを導入し、社会的孤立の解消と健康行動の継続を両立させます。
  • 客観的根拠：
    • 東京都府中市では、習慣化アプリ「みんチャレ」を活用したフレイル予防事業で、180日後の継続率58%、平均歩数1,600歩向上という成果を上げています。
      • （出典）情報通信研究機構「習慣化アプリ『みんチャレ』で高齢者のフレイル予防を支援」令和4年度
      • （出典）(https://prevfrailty.super.site/1)

主な取組④：PHR（パーソナルヘルスレコード）の活用推進と個別化された情報提供

• 住民が自身の健診結果や医療情報をスマートフォン等で一元管理できるPHRの導入を支援します。
• PHRのデータに基づき、「あなたの健康リスクは同年代より高いです」といった個別化された情報や、個人の状態に応じた健康アドバイスを提供します。
  • 客観的根拠：
    • 住民が自らの医療情報や健康データを一元管理し活用するデジタル健康手帳は、セルフケアを促進します。将来の疾病発症リスクを提示することで、特定健診の受診率が6%向上する効果が試算されています。
      • （出典）ジチタイワークス「健康無関心層を動かす！行動経済学ナッジとゲーミフィケーション」令和4年度

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 特定健診・がん検診の受診率：国の目標値（60%）達成
    • データ取得方法： 国保・後期高齢者医療広域連合の健診データ、福祉保健局のがん検診実施状況報告
• KSI（成功要因指標）
  • 健康づくりアプリ・ポイント事業の参加率（40歳以上人口の20%）及び継続率（1年後60%）
    • データ取得方法： 事業委託先からの実績報告、システムログデータ
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 運動習慣者（1日8000歩以上）の割合：10%向上
    • データ取得方法： 住民健康意識調査（定期実施）、健康アプリのデータ
  • メタボリックシンドローム該当者・予備群の割合：5%減少
    • データ取得方法： 特定健診結果データ
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • ナッジ導入受診勧奨の実施回数：全対象者に対し年1回以上
    • データ取得方法： 事業実施記録
  • 健康ポイント事業のインセンティブ交換総額・件数
    • データ取得方法： 事業実績報告

支援策②：「自然に健康になれる」社会環境の戦略的整備

目的

• 個人の意識や努力だけに依存せず、住民が日常生活を送る中で、無意識のうちに健康的な選択ができるような物理的・社会的環境を、分野横断的な連携により構築します。
  • 客観的根拠：
    • 厚生労働省の「健康日本21（第三次）」では、「自然に健康になれる環境づくり」が主要な柱の一つとして位置づけられています。
      • （出典）厚生労働省「健康日本21（第三次）の推進について」令和5年度
      • （出典）m3.com「健康日本21（第三次）はいつから？基本方針や新たな視点を解説」令和5年度

主な取組①：「歩きたくなるまちづくり」の推進

• 都市計画・道路・公園等の担当部局と連携し、歩道や緑道の整備、ベンチの増設、ウォーキングコースの設定、公共交通機関へのアクセス改善などを通じて、住民の身体活動量を自然に増やすまちづくりを推進します。
  • 客観的根拠：
    • 「居心地が良く歩きたくなる」まちなかづくりは、国の健康増進計画においても重要な取り組みとされています。外出や交流の促進は、健康寿命の延伸に寄与します。
      • （出典）内閣官房・内閣府「健康・医療・介護のまちづくりの推進（健康・医療戦略）」平成27年度
      • （出典）旭川市「あさひかわ健康プラン21（第3次）」令和6年度

主な取組②：食環境づくりのための地域連携強化

• 地域の飲食店、スーパー、コンビニ、社員食堂等と連携し、野菜摂取量を増やせるメニュー（ベジ増し）や減塩メニューの提供を促進します。「健康づくり協力店」として認証し、マップ作成や広報支援を行います。
  • 客観的根拠：
    • 足立区の「あだちベジタベライフ」では、協力店の拡大等の取り組みを通じて区民の推定野菜摂取量が増加（平成22年217g→令和4年233g）し、健康寿命の延伸にも寄与しています。
      • （出典）足立区議会「厚生委員会報告書」令和6年度
      • （出典）(https://www.wellnesscity.jp/post/2025/20250613_01.html)

主な取組③：職場における健康経営の普及促進

• 地域の中小企業に対し、健康経営の導入メリット（生産性向上、人材確保等）に関するセミナーやコンサルティング支援を実施します。
• 健康経営優良法人の認定取得を支援し、特に働き盛り世代の健康づくりを企業連携で推進します。
  • 客観的根拠：
    • 「健康経営」は、従業員の健康改善と企業の生産性向上を両立させる投資として位置づけられており、国の健康増進計画でも重要な担い手として期待されています。
      • （出典）厚生労働省「「データヘルス計画」のための保健事業事例集等について」平成26年度
      • （出典）マイナビ「健康経営とは？」令和5年度

主な取組④：受動喫煙防止対策の徹底

• 飲食店や商業施設、公共施設等における受動喫煙防止対策の遵守を徹底するための指導・啓発を強化します。
• 特に子供や妊婦が利用する施設周辺での対策を強化し、望まない受動喫煙の機会をゼロにすることを目指します。
  • 客観的根拠：
    • 受動喫煙のない職場の実現は「健康日本21」の目標であり、望まない受動喫煙の機会を有する者の割合は国全体で減少傾向にありますが、さらなる徹底が求められます。
      • （出典）厚生労働省「「データヘルス計画」のための保健事業事例集等について」平成26年度
      • （出典）旭川市「あさひかわ健康プラン21（第3次）」令和6年度

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 区民の平均歩数：1,000歩/日 増加
    • データ取得方法： 住民健康意識調査、健康アプリのデータ
  • 区民の平均野菜摂取量：50g/日 増加
    • データ取得方法： 住民健康意識調査、給食データ等
• KSI（成功要因指標）
  • 健康づくり協力店（飲食店・販売店）の登録数：各区300店舗以上
    • データ取得方法： 保健所・担当課による登録管理
  • 健康経営優良法人認定企業数：50%増加
    • データ取得方法： 経済産業省の公表データ、商工会議所等との連携調査
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • ウォーキングコースの利用者数：対前年比20%増
    • データ取得方法： 定点カメラやカウンターでの計測、イベント参加者数
  • 協力店における健康メニューの注文割合：10%向上
    • データ取得方法： 協力店へのアンケート調査、POSデータ提供協力依頼
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • ウォーキングコースの整備距離：年間10km延伸
    • データ取得方法： 土木・公園担当部署の事業実績
  • 健康づくり協力店への広報支援回数：年4回以上（広報誌、Webサイト等）
    • データ取得方法： 広報担当部署の実施記録

支援策③：データヘルス改革による「健康格差の是正」

目的

• 健診データ、医療レセプト、介護レセプト等のデータを統合・分析し、地域や個人の健康課題を科学的に「見える化」します。
• そのエビデンスに基づき、ハイリスク層への重点的アプローチや施策の最適化を行い、健康格差の是正を図ります。
  • 客観的根拠：
    • データヘルス計画は、保健事業をPDCAサイクルで効果的・効率的に実施するための事業計画であり、その推進が国から求められています。
      • （出典）厚生労働省「「データヘルス計画」のための保健事業事例集等について」平成26年度

主な取組①：保健医療介護データの統合分析基盤の構築

• 国保、後期高齢者、介護保険の各データを個人単位で連結・分析できるセキュアな基盤を構築します。
• GIS（地理情報システム）と連携させ、地域ごとの疾病有病率や医療費、生活習慣リスク等を地図上で可視化し、地域診断に活用します。
  • 客観的根拠：
    • 自治体におけるデータ利活用は、より効果的に住民の行動変容を促すための保健事業を可能にします。
      • （出典）厚生労働省「健康日本21（第三次）の推進について」令和5年度

主な取組②：ハイリスクアプローチの高度化

• データ分析に基づき、生活習慣病の重症化リスクが高い層（例：血糖値や血圧が基準値を大幅に超えている未治療者）や、特定の疾病リスクが集中している地域を特定します。
• 保健師や管理栄養士による訪問指導や受診勧奨、専門プログラムへの誘導など、資源を集中投下するハイリスクアプローチを重点的に実施します。
  • 客観的根拠：
    • 渋谷区では、各種データを統合分析し、地域別・年齢別のニーズに基づいた支援策を展開することで、子育て支援施策の利用率向上等の成果を上げています。この手法は健康づくりにも応用可能です。
      • （出典）渋谷区「第3期渋谷区国民健康保険保健事業実施計画（データヘルス計画）」令和6年度

主な取組③：政策効果の客観的評価（EBPM）の徹底

• 全ての健康づくり事業に明確なアウトカム指標を設定し、実施前後での健康指標や医療費の変化をデータに基づき評価します。
• 効果の低い事業は抜本的に見直すか廃止し、効果の高い事業に資源を再配分するPDCAサイクルを確立します。
  • 客観的根拠：
    • 自治体において、目標の評価が難しいことや、健康部門単独では取り組みにくいことが、施策の偏りを生む一因と指摘されており、客観的評価は不可欠です。
      • （出典）旭川市「あさひかわ健康プラン21（第3次）」令和6年度

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 区内の健康寿命の地域間格差：20%縮小
    • データ取得方法： 介護保険事業状況報告等から算出される市区町村別健康寿命の比較分析
  • 糖尿病・高血圧の重症化による新規透析導入患者数：10%減少
    • データ取得方法： 医療レセプトデータの分析
• KSI（成功要因指標）
  • ハイリスク者に対する保健指導実施率：80%以上
    • データ取得方法： 特定保健指導の実施データ
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 特定健診結果における有所見率の地域間格差：30%縮小
    • データ取得方法： 特定健診結果データのGIS分析
  • ハイリスク者の医療費適正化効果：対照群比で一人当たり年間5%の医療費抑制
    • データ取得方法： 介入群と非介入群のレセプトデータ比較分析
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • データ分析に基づく地域診断レポートの作成・公表：年1回
    • データ取得方法： 担当部署の業務実績
  • ハイリスク者への個別介入（電話・訪問等）件数：年間目標値を設定
    • データ取得方法： 保健師等の活動記録

先進事例

東京都特別区の先進事例

足立区「あだちベジタベライフ～野菜からはじめる健康づくり～」

• 区民の健康指標が都内で低い状況から脱却するため、「野菜摂取」に焦点を当てた包括的なキャンペーンを展開しました。飲食店やスーパーと連携した「ベジタベライフ協力店」の拡大、小中学校での食育、イベント等での普及啓発を多角的に実施しました。
• 成功要因は、課題を「野菜」というシンプルで分かりやすいテーマに絞ったこと、行政の多様な部署（保健、教育、産業振興）と地域事業者が一体となった推進体制を構築したことです。
  • 客観的根拠：
    • この取り組みにより、区民の推定野菜摂取量は平成22年の217gから令和4年には233gに増加しました。また、健康寿命も約2歳延伸し、OECD報告書で「世界最高水準に近い」と評価されるなど、国内外で高く評価されています。
      • （出典）足立区議会「厚生委員会報告書」令和6年度
      • （出典）(https://www.wellnesscity.jp/post/2025/20250613_01.html)

渋谷区「データヘルス計画に基づく健康格差対策」

• 国保、後期高齢者、介護保険データを連携させ、地域ごとの健康課題を詳細に分析しました。これにより、特定健診の受診率に性別・年齢で大きな差があることや、特定の地域で医療費が高い傾向にあることなどを「見える化」しました。
• 成功要因は、データという客観的根拠に基づき、取り組むべき健康課題とターゲット層を明確にした点です。これにより、限られた行政資源を効果的に配分し、エビデンスに基づいた保健事業を展開することが可能になりました。
  • 客観的根拠：
    • 計画では、令和4年度の特定健診受診率が40歳～64歳で31.7％と低いこと、男性の受診率が女性より約10%低いことなどを明確な課題として特定し、これらの層へのアプローチ強化を打ち出しています。
      • （出典）渋谷区「第3期渋谷区国民健康保険保健事業実施計画（データヘルス計画）」令和6年度

世田谷区「せたがや Pay を活用した健康ポイント事業」

• 国民健康保険加入者を対象に、ウォーキングや健診受診、自身で設定した健康目標の実践などに対してポイントを付与し、貯まったポイントに応じて地域通貨「せたがや Pay」のポイントが当たる抽選に参加できる事業を実施しています。
• 成功要因は、地域で広く普及しているキャッシュレス決済サービスをインセンティブとして活用することで、参加への動機付けを高めている点です。また、歩数だけでなく多様な健康行動をポイント対象とすることで、個々の状況に応じた参加を促しています。
  • 客観的根拠：
    • 参加者は取組結果を電子申請で報告する仕組みとなっており、デジタルを活用した効率的な事業運営が行われています。最低1000ポイントから抽選申込が可能で、参加のハードルを低く設定しています。
      • （出典）世田谷区「世田谷区国民健康保険健康ポイント事業」令和6年度

全国自治体の先進事例

八王子市「ナッジ理論によるがん検診受診率向上」

• 大腸がん検診の未受診者に対し、「今年度受診しないと、来年度は検査キットを自宅に送付できません」という損失を意識させるメッセージ（損失回避フレーム）のはがきを送付しました。
• 成功要因は、大きなコストをかけずに、人の心理的特性に働きかける「ナッジ」という手法で行動変容を促した点です。メッセージの文言を工夫するだけで、受診率に大きな差が生まれることを実証しました。
  • 客観的根拠：
    • この介入により、受診率が従来のメッセージに比べ7.2ポイント向上（22.7%→29.9%）しました。この成果は、環境省等が主催する「ベストナッジ賞コンテスト」で受賞しています。
      • （出典）株式会社キャンサースキャン「ナッジを活用した大腸がん検診受診率向上事業」
      • （出典）多摩信用金庫「ナッジの活用事例」令和5年度

府中市「習慣化アプリを活用した高齢者のフレイル予防」

• コロナ禍で希薄化した高齢者の社会参加と健康維持のため、民間企業の習慣化アプリ「みんチャレ」を導入しました。5人1組のチームで歩数などを報告し合うことで、孤立を防ぎながら楽しくフレイル予防を継続できる仕組みを構築しました。
• 成功要因は、ICTの活用により、場所を選ばずに参加できる新たな「通いの場」を創出した点、ゲーミフィケーション要素で継続意欲を高めた点、地域包括支援センターが使い方講座を開くなど、デジタルデバイド対策を並行して行った点です。
  • 客観的根拠：
    • 事業参加者の180日後のアプリ継続率は58%に達し、利用10ヶ月後には平均歩数が1,600歩向上しました。この取り組みは厚生労働省の「健康寿命をのばそう！アワード」でも優良賞を受賞しています。
      • （出典）情報通信研究機構「習慣化アプリ『みんチャレ』で高齢者のフレイル予防を支援」令和4年度
      • （出典）(https://prevfrailty.super.site/1)

参考資料［エビデンス検索用］

国（厚生労働省等）の白書・調査

• 内閣府「令和6年版 高齢社会白書」令和6年度
• 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」令和6年度
• 厚生労働省「患者調査」
• 厚生労働省「介護保険事業状況報告」
• 厚生労働省「健康日本21（第三次）」関連資料
• 厚生労働省「精神保健福祉資料（630調査）」

東京都の計画・調査

• 東京都福祉保健局「都民の健康・栄養状況」
• 東京都福祉保健局「都民の健康や地域とのつながりに関する意識・活動状況調査」
• 東京都福祉保健局「健康格差に関する実態調査」
• 東京都保健医療局「東京健康UPlus（とうきょう健康応援事業）」関連資料

特別区・その他自治体の計画・報告書

• 足立区「あだちベジタベライフ」関連報告書
• 渋谷区「国民健康保険データヘルス計画」
• 世田谷区「健康ポイント事業」関連資料
• 府中市「習慣化アプリを活用したフレイル予防事業」関連報告書
• 八王子市「ナッジを活用した大腸がん検診継続受診率の改善」関連報告書

その他研究機関等

• 国土交通省「健康・医療・福祉のまちづくり推進ガイドライン」

まとめ

　東京都特別区における健康づくり推進は、個人の努力を促す段階から、行動科学に基づき無関心層の行動を後押しし、誰もが自然に健康になれる社会環境を整備する新たなステージへと移行すべきです。データヘルス改革を基盤に、健康格差という根本課題に的を絞り、分野横断的な連携の下で施策を展開することが、住民の生活の質向上と、持続可能な社会保障制度の実現の両方を達成する鍵となります。
　本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
　引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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