依存症対策

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要（アルコール・ニコチン・ギャンブル依存症を取り巻く環境）

• 自治体がアルコール・ニコチン・ギャンブル依存症対策を行う意義は「住民の健康と福祉の向上による生活の質の確保」と「安全で安心な地域社会の実現」にあります。
• 依存症とは、特定の物質（アルコール、ニコチン等）の摂取や特定の行為（ギャンブル等）を「やめたくても、やめられない」状態に陥る、治療が必要な病気です（¹）。本人の意思の弱さや道徳的な問題ではなく、脳の機能不全が原因でコントロールを失う状態であり（³）、専門的な治療と社会的な支援によって回復が可能です。
• アルコール、ニコチン、ギャンブル等への依存は、個人の健康を著しく損なうだけでなく、多重債務、貧困、虐待、犯罪といった深刻な社会問題を引き起こす要因ともなります。日本では、アルコール依存症が約107万人、ギャンブル等依存症が疑われる者が約320万人と推定される一方、実際に治療を受けているのはごく一部であり、多くの当事者や家族が孤立しているのが現状です（）。
• こうした状況を受け、国は「アルコール健康障害対策基本法」（2014年施行）および「ギャンブル等依存症対策基本法」（2018年施行）を制定し、国、地方公共団体、事業者、国民それぞれの責務を定め、総合的な対策を推進しています（⁴）。東京都特別区においても、これらの法制度に基づき、地域の実情に応じたきめ細やかな支援策を講じることが急務となっています。

意義

住民にとっての意義

健康の回復と生命の保護

• 適切な治療と支援により、依存症という病気から回復し、心身の健康を取り戻すことができます。
• アルコール依存症による身体合併症や、喫煙によるがん・循環器疾患のリスク、依存症に関連する自殺などのリスクを低減し、生命を守ることにつながります。
  • （出典）厚生労働省「アルコール健康障害対策推進基本計画（第２期）」2021年度

経済的安定と生活再建

• 依存症からの回復は、安定した就労や経済的自立への第一歩となります。
• 多重債務問題の解決に向けた専門的な相談支援を受けることで、経済的な苦境から脱し、生活を再建することが可能になります。
  • （出典）電子政府の総合窓口 e-Gov「ギャンブル等依存症対策基本法」

家族関係の再構築

• 依存症は「家族の病」とも言われ、家族もまた心身ともに疲弊します。
• 本人への支援と並行して家族への支援（家族相談、家族教室など）を行うことで、家族全体の回復を促し、健全な関係を再構築できます。
  • （出典）国立精神・神経医療研究センター「依存症」

地域社会にとっての意義

社会全体の安全向上

• 依存症対策は、飲酒運転、暴力、虐待、犯罪といった関連問題の発生を未然に防ぎ、地域社会の安全性を高めます。
• 特に、依存症が背景にある児童虐待やドメスティック・バイオレンス（DV）への介入は、被害者の保護と負の連鎖の防止に直結します。
  • （出典）電子政府の総合窓口 e-Gov「アルコール健康障害対策基本法」

社会的コストの削減

• 依存症に関連する医療費、失業給付、生活保護費、司法コストなどは莫大な社会的コストとなります。
• 予防や早期介入に投資することは、長期的に見てこれらの社会的コストを大幅に削減し、社会全体の経済的負担を軽減します。物質依存による年間社会的損失は8.5兆円を超えると推定されています（）。
  • （出典）日本学術会議「提言 アディクション問題克服に向けた学術活動のあり方に関する提言」2020年度

偏見のない包摂的な社会の実現

• 依存症を病気として正しく理解し、回復を支える社会を構築する取組は、スティグマ（偏見・差別）を解消します。
• 誰もが孤立することなく、必要な時に支援を求められるインクルーシブな地域社会の実現に貢献します（⁶）。
  • （出典）日本弁護士連合会「2021年 人権擁護大会シンポジウム 第3分科会 基調報告書」2021年度

行政にとっての意義

法的責務の履行

• アルコール健康障害対策基本法およびギャンブル等依存症対策基本法は、地方公共団体に対して、地域の実情に応じた施策を策定・実施する責務を課しています。
• これらの対策を推進することは、法律に基づき自治体が果たすべき重要な役割です。
  • （出典）電子政府の総合窓口 e-Gov「アルコール健康障害対策基本法」
  • （出典）電子政府の総合窓口 e-Gov「ギャンブル等依存症対策基本法」

行政サービスの効率化

• 依存症問題は、保健、福祉、医療、教育、司法など複数の行政分野にまたがる複合的な課題です。
• 早期に包括的な支援を行うことで、問題が深刻化・複雑化してから対応するよりも、結果的に行政コストを抑制し、効率的な行政運営につながります。

住民からの信頼獲得

• 生命や健康、生活に直結する深刻な課題に対して、実効性のある支援策を講じることは、行政に対する住民の信頼を高めます。
• ニーズに応じたきめ細やかなサービス提供は、住民の受益感を高め、行政運営への理解と協力を促進します（⁶）。
  • （出典）日本弁護士連合会「2021年 人権擁護大会シンポジウム 第3分科会 基調報告書」2021年度

（参考）歴史・経過

• 日本の依存症対策の歴史は、精神保健福祉全体の変遷と深く関連しています。かつての隔離・収容中心の考え方から、人権擁護と地域生活支援へとパラダイムが転換する中で、依存症もまた、個人の責任ではなく治療すべき病気として捉えられるようになりました。

1950年代～：精神保健福祉の黎明期

• 1950年：「精神衛生法」が制定され、精神障害者の私宅監置が禁止され、公立精神病院の設置が義務付けられました。しかし、医療の受け皿は民間病院に大きく依存し、長期入院が社会問題化しました。
• 1961年：「酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」が公布されました（⁷）。
  • （出典）愛知みずほ大学「我が国におけるアルコール関連問題対策の変遷と課題」

1960年代～1980年代：人権意識の高まりと法改正

• 1964年：「ライシャワー事件」が発生。精神障害者に対する医療の不備が社会問題となり、翌年の精神衛生法改正につながりました。この改正で、保健所が精神保健行政の第一線機関と位置づけられ、通院医療費公費負担制度が創設されるなど、地域で支える仕組みの基礎が作られました（）。
• 1984年：「宇都宮病院事件」が発覚。精神科病院における深刻な人権侵害が明らかになり、国内外から強い批判を受けました。これが契機となり、精神衛生法は抜本的に見直されることになります（）。
• 1987年：「精神保健法」が制定。任意入院制度の創設や精神医療審査会の設置など、精神障害者の人権擁護が大きく前進しました（）。

2000年代～：依存症への専門的アプローチの開始

• 2006年：禁煙治療への保険適用が開始され、ニコチン依存症が「治療すべき病気」であるとの認識が広がりました（）。
  • （出典）日本禁煙学会「禁煙保険診療「ニコチン依存症管理料」改定と若年者の禁煙治療」2016年度
  • （出典）同愛記念病院「保険適用禁煙外来」

2010年代～：依存症対策基本法の時代へ

• 2013年：「アルコール健康障害対策基本法」が成立し、翌2014年に施行されました（）。国および地方公共団体に計画策定を義務付ける、初の依存症に特化した包括的な法律です。
• 2018年：カジノを含む統合型リゾート（IR）施設の整備推進を背景に、「ギャンブル等依存症対策基本法」が成立・施行されました（）。アルコール対策と同様の枠組みで、国と自治体の連携による対策を推進しています。

2020年代～：計画の深化と新たな課題への対応

• 2021年：第2期「アルコール健康障害対策推進基本計画」が閣議決定されました（）。
• 2022年：「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」が変更され、オンライン投票の拡大など社会情勢の変化に対応した施策が盛り込まれました（）。
• 2025年：ギャンブル等依存症対策推進基本計画が再変更され、特に違法オンラインカジノへの対策が強化されるなど、デジタル化する依存症問題への対応が喫緊の課題となっています（）。

依存症に関する現状データ

アルコール依存症

高い有病率と治療ギャップ

• アルコール依存症の生涯経験者は約107万人と推定されています（）。これは2003年調査の約80万人という数字と比較しても依然として高い水準です（）。
• 一方で、実際に医療機関で治療を受けている患者数は約10万人にとどまり、推定患者数との間に10倍近い大きな隔たり（治療ギャップ）が存在しています（³）。
  • （出典）厚生労働省科学研究費補助金 総括・分担研究報告書「我が国におけるアルコール関連問題の現状と対策についての研究」2016年度
  • （出典）厚生労働省「アルコール依存症の実態に関する全国調査」2004年度
  • （出典）国立精神・神経医療研究センター「依存症」

生活習慣病リスクを高める飲酒者の割合

• 国の第2期「アルコール健康障害対策推進基本計画」では、「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者」の割合を減少させることが重点目標の一つです。
• 目標値は、男性13.0%、女性6.4%と設定されていますが、現状（2019年）は男性14.9%、女性9.1%であり、特に女性は目標達成が厳しい状況です（）。
  • （出典）厚生労働省「アルコール健康障害対策推進基本計画（第２期）」2021年度
  • （出典）厚生労働省「第２期アルコール健康障害対策推進基本計画の取組状況と今後の推進方策について」2023年度

若者と女性へのリスク

• 同計画では、「20歳未満の飲酒をなくすこと」「妊娠中の飲酒をなくすこと」も重点目標として掲げられています。
• これらの目標は、若年層や女性といった特にアルコールの影響を受けやすい集団への対策が依然として重要な課題であることを示しています（）。
  • （出典）厚生労働省「アルコール健康障害対策推進基本計画（第２期）」2021年度
  • （出典）厚生労働省「第２期アルコール健康障害対策推進基本計画の取組状況と今後の推進方策について」2023年度

ニコチン依存症（喫煙）

喫煙率の着実な減少傾向

• 習慣的に喫煙している者の割合は年々減少傾向にあります。
• 令和5年（2023年）の国民健康・栄養調査によると、全体の喫煙率は15.7%（男性25.6%、女性6.9%）です（）。
• これは、令和元年（2019年）の16.7%（男性27.1%、女性7.6%）からさらに減少しており、対策が一定の効果を上げていることを示唆しています（）。
  • （出典）厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」2024年度
  • （出典）厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」2020年度

依然として高い中高年男性の喫煙率

• 年齢階級別に見ると、喫煙率は40歳代（33.4%）、50歳代（31.5%）の男性で依然として3割を超えており、この世代への集中的なアプローチが引き続き重要です（）。
  • （出典）健康・体力づくり事業財団「最新たばこ情報 統計情報 成人喫煙率」
  • （出典）日本生活習慣病予防協会「厚生労働省 令和5年(2023)「国民健康・栄養調査」の結果より」2024年度

加熱式たばこの急速な普及

• 近年の顕著な変化として、加熱式たばこの利用が拡大しています。
• 令和5年（2023年）調査では、現在喫煙している者のうち、加熱式たばこを使用している割合は男性で38.5%、女性で42.3%に達しています（）。
• 特に20～30歳代の若年層では、喫煙者の約6割～7割が加熱式たばこを使用しており、新たな健康リスクや禁煙支援の課題となっています（）。
  • （出典）国立がん研究センターがん情報サービス「喫煙率・喫煙者数」2024年度

ギャンブル等依存症

数百万人に上る潜在的な当事者

• 2017年の全国調査では、生涯に一度でもギャンブル等依存症が疑われたことのある人の割合は成人の3.6%で、約320万人に相当すると推計されました（）。
• より直近の2021年の調査では、過去1年以内に依存が疑われる者の割合は2.2%（男性3.7%、女性0.7%）と報告されており、依然として多くの当事者がいることが示されています（）。
  • （出典）厚生労働省科学研究費補助金 総括・分担研究報告書「我が国におけるアルコール関連問題の現状と対策についての研究」2016年度
  • (https://www.ask.or.jp/article/314)
  • （出典）厚生労働省「令和３年度 ギャンブル等依存症の実態調査」2022年度

ギャンブルのオンライン化の加速

• コロナ禍を経て、公営競技のオンライン化が急速に進展し、現在では売上の8割から9割がインターネット投票によるものとなっています（）。
• この変化は、物理的なアクセス制限（競馬場等への入場制限やATM撤去）の効果を相対的に低下させ、いつでもどこでもギャンブルが可能な環境を生み出しています。
  • （出典）内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更について①」2022年度

若年層におけるオンラインゲーム問題の深刻化

• 20歳未満の消費生活相談において、「インターネットゲーム（オンラインゲーム）」に関する相談件数が最も多く、増加傾向にあります（）。
• 射幸性の高い「ガチャ」など、ゲームとギャンブルの境界が曖昧になっており、若年層が依存症に至る新たな入り口として懸念されています。
  • （出典）こども家庭庁「令和６年版消費者白書」2024年度

相談件数の高止まり

• ぱちんこ依存問題相談機関である「リカバリーサポート・ネットワーク」の相談件数は、2023年度（令和5年度）に7,897件、2024年度（令和6年度）に7,824件と、高水準で推移しており、支援に対する根強いニーズがあることを示しています（）。
  • （出典）特定非営利活動法人リカバリーサポート・ネットワーク「事業報告書」2024年度

課題

住民の課題

スティグマ（偏見・差別）による相談・治療への障壁

• 依存症は「本人の意思が弱いから」「だらしないから」といった誤った認識が社会に根強く、当事者や家族は助けを求めることに強い躊躇や罪悪感を感じます。
• このスティグマが、推定107万人のアルコール依存症者のうち約10万人しか治療につながっていないという「治療ギャップ」の最大の要因となっています。
  • 客観的根拠：
    • 国立精神・神経医療研究センターの調査では、薬物依存症の当事者が「非難される」ことを恐れて地域の相談機関に行きづらいと感じている実態が報告されており、これは他の依存症にも共通する課題です。
      • （出典）国立精神・神経医療研究センター「薬物依存症者に対するスティグマ軽減のための効果的な介入方法の開発に向けた研究」2022年度
    • アルコール依存症の推定患者数約107万人に対し、治療を受けているのは約10万人というデータが、深刻な治療ギャップを示しています。
      • （出典）国立精神・神経医療研究センター「依存症」
      • （出典）厚生労働省科学研究費補助金 総括・分担研究報告書「我が国におけるアルコール関連問題の現状と対策についての研究」2016年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 症状が重症化し、回復が困難になるとともに、家族を巻き込んだ複合的な問題へと発展します。

依存症の併発と複雑化

• 一つの依存症が他の依存症や精神疾患を併発することは珍しくありません。特にギャンブル依存症者は、他の依存症を併せ持つ割合が高いことが指摘されています。
• 複数の問題を抱えることで、支援の必要性が高まる一方で、どの問題から手をつければよいか分からず、支援が複雑化・長期化する傾向にあります。
  • 客観的根拠：
    • 久里浜医療センターの調査によると、ギャンブル依存症者のうち、ニコチン依存の併発が60%、アルコールや薬物の問題の併発が58%に上ります。
      • （出典）久里浜医療センター「ギャンブル依存」
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 単一の依存症のみを対象とした支援では効果が限定的となり、回復のプロセスが停滞します。

家族への深刻な影響と支援不足

• 依存症は本人だけでなく、家族の心身の健康、経済状況、社会生活にも深刻な影響を及ぼします。家族は借金の肩代わり（イネイブリング）をして問題を長期化させてしまったり、社会から孤立したりすることがあります。
• しかし、支援は本人に向けられることが多く、家族自身が支援を必要としていることへの認識や、家族向けの支援サービスは依然として不足しています。
  • 客観的根拠：
    • 厚生労働省の調査では、国民の14.4%が「家族や重要な他者の中にギャンブル問題がある（あった）」と回答しており、問題の広がりを示唆しています。
      • （出典）厚生労働省「令和３年度 ギャンブル等依存症の実態調査」2022年度
    • 依存症は家族を巻き込む病気であり、家族が心身面・金銭面で疲弊していくと指摘されています。
      • （出典）国立精神・神経医療研究センター「依存症」
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 家庭崩壊、経済的困窮、児童虐待など、次世代にわたる負の連鎖を生み出します。

地域社会の課題

社会的コストの増大

• 依存症がもたらす社会的損失は、医療費や福祉費といった直接的なコストだけでなく、生産性の低下や失業による労働損失、犯罪対応コストなど、多岐にわたります。
• これらのコストは最終的に、税金や社会保険料として社会全体が負担することになります。
  • 客観的根拠：
    • 日本学術会議は、物質依存（アルコール、薬物等）による年間の社会的損失を8.5兆円以上と推定しており、これにギャンブル等の行動嗜癖による損失が加わるとさらに膨大な額になると指摘しています。
      • （出典）日本学術会議「提言 アディクション問題克服に向けた学術活動のあり方に関する提言」2020年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 医療保険や税金など、全住民の負担が増大し、他の重要な公共サービスへの投資が圧迫されます。

関連問題（多重債務・虐待・犯罪）の発生

• 依存症は、それ自体が問題であると同時に、他の深刻な社会問題の温床となります。ギャンブルのための借金が多重債務につながり、返済に行き詰まって窃盗などの犯罪に至るケースは少なくありません。
• また、アルコールの影響下での暴力や、依存行為を優先することによるネグレクト（育児放棄）は、DVや児童虐待の重大なリスク因子です。
  • 客観的根拠：
    • 「ギャンブル等依存症対策基本法」の前文では、依存症が多重債務、貧困、虐待、自殺、犯罪等の重大な社会問題を生じさせていると明記されています。
      • （出典）電子政府の総合窓口 e-Gov「ギャンブル等依存症対策基本法」
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 地域の治安が悪化し、住民の安全・安心な生活が脅かされます。

若年層への影響拡大

• スマートフォンやインターネットの普及により、若年層が依存のリスクに晒される機会が増加しています。特にオンラインゲームの課金問題は深刻で、未成年者からの消費生活相談が急増しています。
• 若いうちからの依存行為は、その後の人生に長期にわたる深刻な影響を及ぼす可能性があります。
  • 客観的根拠：
    • 令和6年版消費者白書では、20歳未満の消費生活相談で「インターネットゲーム」が最多であり、増加傾向にあることが報告されています。
      • （出典）こども家庭庁「令和６年版消費者白書」2024年度
    • 公営競技の売上の大半がインターネット投票に移行しており、若年層にとっての心理的・物理的ハードルが低下しています。
      • （出典）内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更について①」2022年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 将来の労働力人口の健全性が損なわれ、長期的な経済成長の足かせとなります。

行政の課題

相談・医療体制の不足と地域格差

• 国の基本計画に基づき、各都道府県で相談拠点や専門医療機関の整備が進められていますが、その数や機能、専門人材の配置状況には地域によって大きな差があります。
• 特に特別区のような都市部では、人口に対して相談窓口や医療機関が不足していたり、予約が取りにくかったりする状況も考えられます。
  • 客観的根拠：
    • 国の基本計画では、全ての都道府県・政令指定都市における相談拠点や専門医療機関の整備が目標として掲げられていますが、これは裏を返せば、まだ未整備または機能が不十分な地域が存在することを示唆しています。
      • （出典）厚生労働省「第２期アルコール健康障害対策推進基本計画の取組状況と今後の推進方策について」2023年度
      • （出典）内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更について①」2022年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 居住地によって受けられる支援の質に格差が生じ、公平性の原則が損なわれます。

縦割り行政による連携不足

• 依存症当事者や家族は、保健、医療、福祉、消費生活、司法など、複数の分野にまたがる問題を同時に抱えています。
• しかし、行政の組織は分野ごとに縦割りになっているため、相談者が部署間を「たらい回し」にされたり、情報が共有されず一貫した支援が受けられなかったりするケースが生じがちです。
  • 客観的根拠：
    • アルコールおよびギャンブル等の両基本計画において、「関係機関の連携」が繰り返し重点課題として挙げられていること自体が、連携不足が構造的な課題であることの証左です。
      • （出典）厚生労働省「第２期アルコール健康障害対策推進基本計画の取組状況と今後の推進方策について」2023年度
      • （出典）内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」2022年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 支援が断片的になり、当事者や家族が適切な支援から脱落し、問題がさらに深刻化します。

オンライン化への対応の遅れ

• ギャンブルのオンライン化や、オンラインゲームの射幸性の問題など、デジタル社会の進展に伴う新たな依存症リスクに対して、行政の規制や支援策が追いついていないのが現状です。
• 従来の物理的な場所を対象とした対策（ATM撤去など）だけでは不十分であり、オンライン空間に特化した新たなアプローチが求められています。
  • 客観的根拠：
    • 国のギャンブル等依存症対策推進基本計画（令和7年3月変更）では、新たに「オンラインカジノ等違法に行われるギャンブル等への取組」という項目が設けられ、取締強化や決済手段対策が盛り込まれました。これは、従来の対策では対応しきれていない現状認識の表れです。
      • （出典）内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」2025年度
    • 同計画では、インターネット投票データの分析やクレジットカード決済の見直し検討が今後の取組として挙げられており、オンライン対策が緒に就いたばかりであることを示しています。
      • （出典）内閣官房「ギャンブル等依存症対策の推進について（概要）」2024年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 対策が現状に追いつかず、オンラインを起点とする依存症問題が野放し状態で拡大します。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

• 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

即効性・波及効果

• 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の依存症だけでなく複数の依存症や関連問題の解決に横断的に貢献するなど、多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。

実現可能性

• 現在の法制度、予算、人員体制の中で比較的速やかに着手でき、既存の仕組みや資源を活用できるなど、実現可能性の高い施策を優先します。

費用対効果

• 投入する行政資源（予算・人員等）に対して、得られる効果（将来的な医療費や社会保障費の削減、生産性の向上など）が大きい施策を優先します。特に予防や早期介入に関する施策を重視します。

公平性・持続可能性

• 特定の層だけでなく、年齢、性別、地域を問わず、幅広い住民に便益が及ぶ施策を優先します。また、一時的な対応に終わらず、長期的に継続可能な仕組みづくりにつながる施策を高く評価します。

客観的根拠の有無

• 国の基本計画や白書、先進自治体の成功事例、学術研究など、効果に関する客観的なエビデンスが存在する施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

• 依存症対策は、問題の発生を防ぐ「予防」、問題を抱えた人を早期に発見し支援につなぐ「早期介入」、そして回復と社会復帰を支える「支援体制の構築」という3つの段階で総合的に推進する必要があります。
• これらの段階を踏まえ、以下の3つの支援策を提案します。優先順位としては、最も費用対効果が高く、全ての対策の基盤となる**支援策①「予防と早期介入の統合的推進」**を最優先とします。これにより、問題の発生を抑制し、深刻化を防ぎます。
• 次に、既に問題を抱えている当事者と家族を確実に支えるためのセーフティネットである**支援策②「切れ目のない相談・治療・回復支援体制の構築」**を推進します。
• そして、これらの施策を実効性のあるものにし、持続可能なものとするために、**支援策③「社会環境の整備と連携強化」**を並行して進めることが重要です。

各支援策の詳細

支援策①：予防と早期介入の統合的推進

目的

• 依存症に関する正しい知識を普及させ、スティグマ（偏見・差別）を解消することで、住民が問題を抱えた際に早期に相談しやすい社会的な雰囲気（ソーシャル・キャピタル）を醸成します。
• 特にリスクの高い若年層や妊婦等を対象とした予防教育を強化し、将来にわたる依存症の発生を抑制することを目指します。
  • 客観的根拠：
    • 国のアルコール健康障害対策推進基本計画（第２期）およびギャンブル等依存症対策推進基本計画では、ともに「教育の振興」「普及啓発」が基本的施策の筆頭に挙げられており、予防の重要性が強調されています。
      • （出典）厚生労働省「アルコール健康障害対策推進基本計画（第２期）」2021年度
      • （出典）内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」2022年度

主な取組①：全区的な普及啓発キャンペーンの実施

• 「依存症は病気であり、回復できる」という統一メッセージを掲げ、区の広報媒体（広報誌、ウェブサイト、SNS）や公共交通機関の広告、デジタルサイネージ等を活用した多角的なキャンペーンを展開します。
• アルコール関連問題啓発週間（11月10日～16日）やギャンブル等依存症問題啓発週間（5月14日～20日）に合わせ、区民向けの講演会やシンポジウムを地域の医療機関や民間支援団体と連携して開催します。
  • 客観的根拠：
    • アルコール健康障害対策基本法第10条およびギャンブル等依存症対策基本法第10条において、啓発週間の設定と関連事業の実施が国および地方公共団体の努力義務として定められています。
      • （出典）電子政府の総合窓口 e-Gov「アルコール健康障害対策基本法」
      • （出典）電子政府の総合窓口 e-Gov「ギャンブル等依存症対策基本法」

主な取組②：ライフステージに応じた予防教育の強化

• 区内の小・中・高等学校と連携し、発達段階に応じた依存症予防教育プログラム（飲酒、喫煙、ギャンブル、ネット・ゲーム依存等）の導入を支援します。その際、単に危険性を煽るだけでなく、ストレス対処法や自己肯定感を育む内容を重視します。
• 保健センター等で実施する両親学級や乳幼児健診の機会を活用し、保護者に対して妊娠中の飲酒や受動喫煙のリスク、子どものインターネット利用に関する注意点などを啓発します。
• 区内事業者団体と連携し、産業医や衛生管理者、管理職向けの研修会を開催。従業員のメンタルヘルス対策の一環として、依存症問題の早期発見・対応方法について周知します。
  • 客観的根拠：
    • 国の基本計画では、学校教育、家庭、職場など様々な場における教育・学習の振興が求められています。
      • （出典）厚生労働省「アルコール健康障害対策推進基本計画（第２期）」2021年度
      • （出典）内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更について①」2022年度

主な取組③：簡易介入（ブリーフインターベンション）の普及

• かかりつけ医、薬剤師、保健師、ケアマネジャーなど、住民と接する機会の多い専門職を対象に、短時間で依存症のリスクを評価し、専門機関への受診勧奨や情報提供を行う「簡易介入」の研修を実施します。
• これにより、依存症の専門家でなくても早期発見の担い手となる人材を地域に増やし、問題の入り口で対応できる体制を構築します。
  • 客観的根拠：
    • 研究によれば、5分から10分程度の短時間の介入を複数回実施することが、特にアルコールの問題飲酒者に対して減酒効果を持つことが示されています。
      • （出典）厚生労働省「アルコール依存症に関するスクリーニング、介入、治療及び地域連携に関するガイドライン」2024年度

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 区民の依存症に対する意識変化（「本人の意思の問題」ではなく「治療が必要な病気」と回答する割合を5年で20%向上）
    • データ取得方法： 2年に1度実施する区民健康意識調査
• KSI（成功要因指標）
  • 区民の依存症専門相談窓口の認知度 50%以上
    • データ取得方法： 区民健康意識調査
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 依存症関連の初回相談件数（本人・家族） 年率10%増
    • データ取得方法： 区の保健所・精神保健福祉センターの相談統計データ
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 依存症予防教育を実施した学校数（小・中・高合計） 年間30校
  • 簡易介入研修の受講者数 年間100人
  • 普及啓発キャンペーンのウェブサイト・SNSインプレッション数 年間50万回
    • データ取得方法： 各担当課の事業実績報告

支援策②：切れ目のない相談・治療・回復支援体制の構築

目的

• 依存症の当事者や家族が、問題を抱えた際に「どこに相談しても」適切な支援機関に確実につながることができる、多機関連携による「ワンストップ型」の相談支援体制を構築します。
• 医療機関での治療から、回復施設や自助グループでの活動、そして就労や地域生活への復帰まで、一貫した支援が途切れることなく提供される仕組みを整備します。
  • 客観的根拠：
    • 厚生労働省は「依存症対策総合支援事業」を通じて、都道府県・指定都市における相談拠点、専門医療機関、治療拠点機関の整備を推進しており、切れ目のない支援体制の構築を国の重要施策として位置づけています。
      • （出典）厚生労働省「依存症対策総合支援事業実施要綱」

主な取組①：依存症相談拠点（ワンストップ窓口）の機能強化

• 区の保健所または精神保健福祉センターに「依存症総合相談窓口」を明確に位置づけ、精神保健福祉士等の専門相談員を配置します。
• 従来の電話・対面相談に加え、若年層がアクセスしやすいSNSやチャットを活用したオンライン相談窓口を開設します。
• 多重債務問題を抱える相談者に対しては、その場で消費生活センターや法テラス、司法書士会等の専門機関に繋ぐことができるよう、具体的な連携フローを構築し、定期的な連携会議を開催します。
  • 客観的根拠：
    • 国のギャンブル等依存症対策推進基本計画では、地域の相談拠点と司法書士等との連携強化が明記されています。
      • （出典）内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更について①」2022年度
    • 東京都の計画でもSNSを活用した相談体制の構築が盛り込まれています。
      • （出典）東京都福祉局「東京都ギャンブル等依存症対策推進計画（第2期）」2025年度

主な取組②：専門医療機関へのアクセス向上支援

• 東京都が選定する「依存症専門医療機関」「依存症治療拠点機関」のリストや各機関の治療プログラム内容を、区のウェブサイトや相談窓口で分かりやすく情報提供し、受診を促進します。
• ニコチン依存症に対する禁煙外来の治療費の一部を助成する制度を創設します。標準的な治療プログラム（12週間・5回）にかかる自己負担額（約1.3～2万円）に対し、上限1万円程度の助成を行うことで、禁煙へのインセンティブを高めます。
  • 客観的根拠：
    • 品川区、江戸川区、武蔵村山市など、都内多くの自治体で上限1万円の禁煙外来治療費助成が実施されており、有効な施策として定着しています。
      • （出典）品川区「禁煙外来治療費助成金交付事業」
      • （出典）江戸川区「禁煙外来治療費助成金交付事業」
      • （出典）武蔵村山市「武蔵村山市禁煙治療費助成金交付事業のご案内」

主な取組③：回復支援プログラムと社会復帰支援の充実

• 区内で活動する民間回復支援施設（ダルク、マック等）や自助グループ（AA、GA、NA等）に対し、活動場所の確保支援や運営費の一部補助を行います。
• 回復者本人（ピアサポーター）を、区が実施する相談事業の補助員や普及啓発イベントの講師として積極的に活用します。当事者の体験に基づく支援は、他の当事者への動機づけを高めるだけでなく、支援者側のスティグマ軽減にも効果があると報告されています。
• ハローワークや地域の就労移行支援事業所と連携し、回復途上にある人々の特性に配慮した就労支援プログラム（職業訓練、職場定着支援等）を構築します。
  • 客観的根拠：
    • 国の基本計画では、自助グループをはじめとする民間団体への支援が明記されています。
      • （出典）内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」2022年度
    • 研究報告では、回復した当事者と会うことが支援者側のスティグマを低減させる効果があると指摘されています。
      • （出典）国立精神・神経医療研究センター「薬物依存症者に対するスティグマ軽減のための効果的な介入方法の開発に向けた研究」2022年度

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 依存症からの回復継続率（治療プログラム完了後1年間の断酒・禁煙・断ギャンブル等の継続率）を5年で15%向上
    • データ取得方法： 専門医療機関や回復支援施設と連携した追跡調査（同意取得者対象）
• KSI（成功要因指標）
  • 相談から初回治療・支援（医療機関、自助グループ等）への接続率 80%以上
    • データ取得方法： 相談窓口におけるフォローアップ記録の分析
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 依存症専門医療機関における区民の新規受診者数 年率10%増
    • データ取得方法： 東京都の医療統計データ（区市町村別）の分析
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • オンライン相談対応件数 年間200件
  • 禁煙外来治療費助成の利用者数 年間100人
  • 民間団体への補助金交付団体数 年間10団体
    • データ取得方法： 各担当課の事業実績報告

支援策③：社会環境の整備と連携強化

目的

• 行政内の縦割りを排し、保健・医療・福祉・教育・司法等の関係機関が一体となって当事者と家族を支援するための実効性のある連携体制を構築・活性化させます。
• 事業者や地域住民と協働し、不適切な飲酒やギャンブル、喫煙を誘引しない社会環境の整備を推進します。

主な取組①：「（区名）依存症対策地域連携会議」の設置と運営

• 区の保健、福祉、教育委員会、消費生活センター、子ども家庭支援センターの各担当課に加え、地域の医師会、薬剤師会、警察署、ハローワーク、民間支援団体、自助グループ、関連事業者団体（酒類販売、パチンコ業等）の代表者で構成される地域連携会議を設置し、年4回程度定期的に開催します。
• 会議では、各機関の取組状況の共有、支援が困難な事例の検討、地域課題の分析、共同での普及啓発活動の企画などを行い、顔の見える関係を構築します。
  • 客観的根拠：
    • 国のアルコール健康障害対策推進基本計画では、全ての都道府県・政令指定都市における関係者連携会議の設置・定期開催が重点目標とされています。この枠組みを基礎自治体レベルで実践することが重要です。
      • （出典）厚生労働省「第２期アルコール健康障害対策推進基本計画の取組状況と今後の推進方策について」2023年度

主な取組②：オンラインギャンブル・ゲームへの対策強化

• 区立の小中学校を通じて、保護者向けに、子どものスマートフォンやゲーム機の利用に関するルール作りの重要性や、フィルタリングソフトの活用方法についての情報提供を定期的に行います。
• 警察署と連携し、区のウェブサイトや広報板等で、オンラインカジノが賭博罪にあたる違法行為であることを明確に周知する広報活動を展開します。
  • 客観的根拠：
    • 国のギャンブル等依存症対策推進基本計画（令和7年3月変更）では、オンラインカジノの違法性の周知徹底が国および地方公共団体の取組として明記されており、自治体レベルでの実行が求められています。
      • （出典）内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」2025年度

主な取組③：事業者との協働による環境整備

• 地域の酒類販売事業者や飲食店組合に対し、20歳未満への酒類提供・販売防止の徹底や、アルコール度数の表示、適正飲酒を促すポスターの掲示などについて協力を要請します。
• 地域の遊技場組合（パチンコ店等）に対し、自己申告・家族申告による入店制限プログラムの周知徹底や、店内に依存症相談窓口の連絡先を明記したカードやポスターを設置するよう働きかけます。
  • 客観的根拠：
    • 国の基本計画では、酒類関係事業者やぱちんこ事業者に対し、国や地方公共団体の施策への協力や、依存症防止に配慮した事業活動を行う努力義務が課せられています。
      • （出典）厚生労働省「アルコール健康障害対策推進基本計画（第２期）」2021年度
      • （出典）警察庁「ギャンブル等依存症対策推進基本計画の変更について」2022年度

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 依存症に関連する区内の問題発生件数（多重債務相談件数、飲酒が関連する救急搬送件数等）を5年で10%減少
    • データ取得方法： 区の消費生活センター統計、消防庁の救急搬送データ
• KSI（成功要因指標）
  • 地域連携会議における年間共同事業（研修会、イベント等）の実施件数 5件以上
    • データ取得方法： 連携会議の議事録及び事業実績報告
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 保護者による子どものスマートフォン等へのフィルタリングソフト利用率 50%以上
    • データ取得方法： 学校経由で実施する保護者アンケート調査
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 地域連携会議の開催回数 年4回
  • 事業者向け説明会・協力要請の実施回数 年2回
  • オンラインカジノの違法性に関するウェブサイト・SNSでの情報発信回数 年12回以上
    • データ取得方法： 各担当課の事業実績報告

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「身近な相談窓口と専門機関の機能分担・連携」

• 区民にとって最も身近な行政窓口である各総合支所保健福祉センターにおいて、保健師による初期相談から、予約制の精神科医による専門相談まで、一貫した相談体制を構築しています。これにより、住民が相談への第一歩を踏み出しやすい環境を整備しています。
• 成功要因は、アクセシビリティの確保とスムーズな連携にあります。身近な窓口で専門的なアドバイスが受けられる安心感と、より高度な治療が必要な場合には都立松沢病院などの専門医療機関へ適切に繋ぐ機能分担が確立されている点が特徴です。
  • 客観的根拠：
    • 世田谷区は、各総合支所健康づくり課で精神科医と保健師による専門相談を実施しています。
      • （出典）世田谷区「お酒やギャンブル、薬物などの問題について相談したい、勉強したい」
    • 都立松沢病院では、外来・入院患者を対象とした専門的な依存症デイケアプログラム「ルピナス」を提供しており、地域の重要な受け皿となっています。
      • （出典）東京都立病院機構「依存症デイケア（ルピナス） | 松沢病院」

新宿区「民間支援機関の集積を活かした重層的支援ネットワーク」

• 新宿区内には、ギャンブル依存症に特化した回復施設「東京グレイス・ロード」や、薬物・アルコールを含む幅広い依存症に対応する「アパリクリニック」など、専門性の高い民間の支援機関が多数存在します。
• 成功要因は、官民の役割分担と連携です。行政が公的な相談窓口や制度的支援を担う一方、民間機関が当事者ミーティングや家族教室など、より専門的で多様な回復プログラムを提供しています。行政がこれらの豊富な民間リソースをハブとして機能し、相談者に紹介することで、多様なニーズに応える重層的な支援ネットワークを形成しています。
  • 客観的根拠：
    • 「東京グレイス・ロード」は西新宿に拠点を置き、グループミーティングを中心とした回復プログラムや家族相談会を実施しています。
      • （出典）東京グレイス・ロード「ギャンブル依存症回復施設 東京グレイス・ロード」
    • 「アパリクリニック」は依存症の再発予防のためのグループワークなどを提供しています。
      • （出典）アパリクリニック「アパリクリニック」

品川区・江戸川区等「禁煙外来治療費助成による受診促進」

• 品川区、江戸川区、目黒区、武蔵村山市など、多くの特別区や市で、保険適用される禁煙外来治療の自己負担額の一部を助成する制度を導入しています。助成額は上限1万円とする自治体が多く、禁煙に取り組む区民の経済的負担を軽減しています。
• 成功要因は、明確なインセンティブの提供です。禁煙治療は一定の費用がかかるため、助成制度があることで治療開始のハードルが下がります。ニコチン依存症という治療可能な病気に対して、行政が具体的な経済的支援を行うことで、「治療」という選択肢を強力に後押ししています。
  • 客観的根拠：
    • 品川区では、区内在住の20歳以上を対象に、禁煙外来治療費の自己負担額（上限1万円）を助成しています。
      • （出典）品川区「禁煙外来治療費助成金交付事業」
    • 江戸川区でも同様に、治療を完了した区民を対象に自己負担額（上限1万円）を助成する制度を実施しています。
      • （出典）江戸川区「江戸川区禁煙外来治療費助成金交付事業」

全国自治体の先進事例

大阪府「全国初の条例制定と基金による持続可能な対策推進」

• 大阪府は、将来のIR（統合型リゾート）誘致も見据え、2022年に全国で初めて「大阪府ギャンブル等依存症対策基本条例」を制定しました。これにより、府の責務や事業者・府民の役割を明確化し、対策の法的基盤を強化しました。
• さらに、ふるさと納税などを原資とする「ギャンブル等依存症対策基金」を創設し、民間団体が行う回復支援事業などへの安定的な財政支援の仕組みを構築しています。
• 成功要因は、強い政治的意思（リーダーシップ）と持続可能な仕組みの構築です。条例という最も強い形式で対策への姿勢を示し、基金によって単年度の予算に左右されない安定的な支援を可能にした点が、他の自治体にはない先進的な取組です。
  • 客観的根拠：
    • 大阪府は令和4年10月に条例を可決し、令和5年度から7年度までを計画期間とする第2期計画を策定しています。
      • （出典）大阪府「「第2期大阪府ギャンブル等依存症対策推進計画」の策定について」
    • 基金を設置し、医療機関や民間団体が行う医学的支援や就労支援等に活用しています。
      • （出典）大阪府・大阪市・堺市「おおさか依存症ポータルサイト ギャンブル等依存症対策基金」

神奈川県「包括的な計画とポータルサイトによる情報アクセシビリティの確保」

• 神奈川県は、国の基本計画を踏まえつつ、県内の詳細なデータ分析に基づいた「神奈川県アルコール健康障害対策推進計画」を策定しています。計画では「発生の予防」「進行の予防」「再発の予防」「基盤整備」という分かりやすい体系で施策を整理し、関係機関の役割を明確にしています。
• また、「かながわ依存症ポータルサイト」を開設し、県民や支援者が必要な情報（相談窓口、医療機関、自助グループ等）をワンストップで入手できる環境を整備しています。
• 成功要因は、戦略の明確化と情報の集約・提供です。体系的で分かりやすい計画は、多くの関係者が共通認識を持って連携するための羅針盤となります。また、情報が散在しがちな依存症分野において、信頼できる情報を一元化したポータルサイトは、当事者や家族が支援につながるための重要なインフラとなっています。
  • 客観的根拠：
    • 神奈川県の計画は、県内の飲酒状況や相談状況などの詳細なデータ分析に基づき、具体的な数値目標を設定しています。
      • （出典）神奈川県「神奈川県アルコール健康障害対策推進計画」2023年度
    • 県計画では、自助グループや回復支援施設等に関する支援の充実を基本方針の一つに掲げています。
      • （出典）神奈川県「アルコール健康障害対策について」

参考資料［エビデンス検索用］

国の基本計画・白書等

• 内閣官房「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」令和7年3月21日変更
• 厚生労働省「アルコール健康障害対策推進基本計画（第２期）」令和3年3月26日閣議決定
• 厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」令和6年公表
• 厚生労働省「令和6年版 厚生労働白書」令和6年公表
• 消費者庁・こども家庭庁「令和6年版 消費者白書」令和6年公表
• 厚生労働省「令和３年度 ギャンブル等依存症の実態調査」令和4年公表

法律

• 電子政府の総合窓口 e-Gov「アルコール健康障害対策基本法（平成二十五年法律第百九号）」
• 電子政府の総合窓口 e-Gov「ギャンブル等依存症対策基本法（平成三十年法律第七十四号）」

東京都・他自治体の計画等

• 東京都福祉局「東京都ギャンブル等依存症対策推進計画（第2期）」令和7年3月策定
• 東京都福祉保健局「東京都アルコール健康障害対策推進計画」平成31年3月策定
• 大阪府「第2期大阪府ギャンブル等依存症対策推進計画」令和5年策定
• 神奈川県「神奈川県アルコール健康障害対策推進計画」令和5年改定

研究機関・団体等の報告書

• 国立精神・神経医療研究センター「依存症」
• 国立がん研究センターがん情報サービス「喫煙率・喫煙者数」
• 久里浜医療センター「ギャンブル依存」
• 日本学術会議「提言 アディクション問題克服に向けた学術活動のあり方に関する提言」令和2年8月28日
• 特定非営利活動法人リカバリーサポート・ネットワーク「事業報告書」

まとめ

　アルコール・ニコチン・ギャンブル等依存症は、個人の問題ではなく、社会全体で取り組むべき公衆衛生上の重要な課題です。東京都特別区においては、国の基本法に基づき、予防・早期介入から相談、治療、回復支援に至るまで、切れ目のない包括的な支援体制を構築することが求められます。特に、社会に根強いスティグマの解消、急速に進むオンライン化への対応、そして行政の縦割りを越えた実効性のある連携体制の構築が不可欠です。
　本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
　引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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