16 福祉

介護予防・健康づくりの推進

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(介護予防・健康づくりを取り巻く環境)

  • 自治体が介護予防・健康づくりを行う意義は「健康寿命の延伸による住民QOLの向上」と「社会保障制度の持続可能性の確保」にあります。
  • 日本、とりわけ東京都特別区は、世界でも類を見ないスピードで高齢化が進行しています。この人口構造の大きな転換期において、従来の「病気や要介護状態になってから対応する」という事後的な医療・介護モデルから、「要介護状態になることを未然に防ぎ、健康な状態を長く維持する」という予防的なアプローチへと政策の重心を移すことが、喫緊の課題となっています。
  • これは単なる公衆衛生上の目標にとどまらず、増大し続ける社会保障費を抑制し、限られた人的・財政的資源を効果的に配分するための、持続可能な自治体経営に不可欠な戦略的転換です。

意義

住民にとっての意義

心身機能の維持と自立した生活の継続
  • 介護予防活動への参加は、高齢者の身体機能や認知機能の維持・向上に直接的に寄与します。
  • これにより、要介護状態への移行を防ぎ、住み慣れた自宅や地域で自立した生活を長く続けることが可能になります。
  • (出典)内閣府「令和6年版高齢社会白書」令和6年度 1
QOL(生活の質)と生きがいの向上
社会的孤立の解消と精神的健康の維持
  • 都市部で深刻化する社会的孤立は、うつ病や認知症のリスクを高めることが知られています。
  • 介護予防を目的としたグループ活動や地域の集いは、新たな人間関係を築く機会を提供し、孤独感を和らげ、精神的な安定につながります。
  • (出典)内閣府「生活の質に関する調査」平成24年度 3

地域社会にとっての意義

地域コミュニティの活性化と互助の醸成
  • 住民が主体となって運営する「通いの場」などは、希薄化しがちな都市部の地域コミュニティを再構築する核となります。
  • 活動を通じて顔見知りの関係が生まれ、日常的な見守りや災害時の助け合いといった「互助」の精神が育まれます。
  • (出典)厚生労働省「地域包括ケアシステムにおける介護予防」 4
高齢者の社会参加による地域貢献
  • 元気な高齢者が介護予防活動の担い手やボランティアとして活躍することは、高齢者自身の生きがいにつながるだけでなく、地域社会の貴重な資源となります。
  • 高齢者は「支えられる側」から「支える側」へと役割転換し、地域全体の活力を高める原動力となります。
  • (出典)厚生労働省「住民とともに地域づくりをしていく」 4
多世代交流の促進

行政にとっての意義

社会保障費(特に介護給付費)の増大抑制
介護人材不足の緩和
  • 深刻化する介護専門職の人材不足に対し、介護予防によってサービス需要そのものをコントロールすることは、供給側の負担を軽減する上で不可欠です。
  • また、住民主体の支援(サービスB)などを充実させることで、専門職でなければ対応できないサービスへと資源を集中させることができます。
  • (出典)特別区長会調査研究機構「2055年の特別区の姿と自治体経営」令和元年度 8
地域課題の早期発見と対応

(参考)歴史・経過

  • 2000年(平成12年):介護保険制度の施行
  • 2006年(平成18年):介護保険制度改正(「介護予防」重視への転換)
    • 制度の持続可能性への懸念から、「予防重視型システム」への大きな転換が図られました。
    • 要支援者向けの「予防給付」が創設され、市町村の「地域支援事業」として介護予防事業が位置づけられました。
    • 介護予防の拠点として「地域包括支援センター」が全国に設置されました。
    • (出典)(https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/appContents/kaigo-seido-0904.html) 11
  • 2012年(平成24年):地域包括ケアシステムの推進
  • 2015年(平成27年):介護保険制度改正(「介護予防・日常生活支援総合事業」の創設)
    • 予防給付のうち、訪問介護と通所介護が、市町村が地域の実情に応じて多様なサービスを提供できる「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」へ移行しました。
    • これにより、専門職によるサービスだけでなく、NPO、ボランティア、民間企業など多様な主体による、より柔軟なサービス提供が可能となり、市町村の裁量が大幅に拡大しました。
    • (出典)厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業 ガイドライン」平成27年度 5
  • 2020年代:地域共生社会の実現とDXの推進
    • 新型コロナウイルス感染症の流行を契機に、社会的孤立の問題が改めて浮き彫りとなり、人と人とのつながりを重視する「地域共生社会」の実現が政策目標として掲げられました。
    • 同時に、ICTやAIを活用して、より効果的・効率的に健康づくりを支援する「介護予防DX」の取り組みが各地で始まりました。
    • (出典)厚生労働省「「地域共生社会」の実現に向けて」 13

介護予防・健康づくりに関する現状データ

高齢化の現状と将来推計

東京都特別区の特異な高齢化構造
  • 日本の総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は29.1%(令和5年)に達し、世界で最も高い水準にあります。
  • これに対し、東京都全体の高齢化率は22.8%(令和5年)、特別区平均ではさらに低い21.0%(令和6年)となっています。この数字だけを見ると、特別区の高齢化は緩やかに見えます。
  • しかし、これは生産年齢人口の大量流入による「見かけ上」の若さであり、実態は異なります。特別区の高齢者「人口」は311万8千人(令和6年)と過去最多水準にあり、特に医療・介護ニーズが急増する75歳以上人口は前年比で5万4千人(3.1%)も増加しています。
  • この「低い高齢化率」と「急増する後期高齢者数」のねじれは、将来の介護需要の爆発的な増加を示唆しており、政策立案において極めて重要な視点です。

健康寿命と要介護期間

延伸する健康寿命と埋まらない「不健康な期間」
  • 令和元年時点で、日本の健康寿命は男性72.68年、女性75.38年であり、年々延伸しています。
  • しかし、平均寿命との差である「日常生活に制限のある期間」は、男性で8.73年、女性で12.06年依然として存在します。この期間をいかに短縮するかが、個人のQOLと社会保障費用の両面から重要です。
予防可能な要介護原因
  • 介護が必要となった主な原因を見ると、女性では「認知症」(20.7%)、「高齢による衰弱(フレイル)」(17.3%)、「骨折・転倒」(15.7%)が上位を占めています。
  • これらの原因は、いずれも運動、栄養、社会参加といった介護予防の取り組みによって、発症を遅らせたり、重症化を防いだりすることが可能であり、予防策の的を絞る上で重要なデータです。

要介護認定者数の推移

増加し続ける認定者数

健康習慣と社会参加の状況

目標未達の健康指標
  • 国の健康増進計画「健康日本21(第二次)」の最終評価では、「メタボリックシンドロームの該当者・予備群の減少」や「運動習慣者の増加」など多くの目標が未達成に終わりました。
  • これは、国民全体のレベルで生活習慣の改善が十分に進んでいないことを示しています。
低い社会参加率
  • 高齢者の社会参加は介護予防の鍵ですが、実態は芳しくありません。
  • 板橋区の調査では、65歳以上の高齢者のうち、過去1年間に地域活動に「全く参加しなかった」と回答した割合は48.6%に上り、特に男性では55.4%と半数を超えています。
  • このデータは、既存の介護予防事業や地域活動が、住民の半数近く、特に男性層に届いていないという厳しい現実を浮き彫りにしています。

課題

住民の課題

健康への関心が低い「健康無関心層」の存在
  • 特に現役世代や、まだ心身ともに自立している前期高齢者層を中心に、自らの健康問題に関心が薄く、健診受診や予防活動に積極的に参加しない「健康無関心層」が多数存在します。
    • 客観的根拠:
      • ある調査では、国民の約7割が「健康無関心層」に該当すると推計されています。この層は、行政からの画一的な情報提供やイベント案内には反応しにくく、効果的なアプローチが確立されていません。
        • (出典)(https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/201030-1.html) 23
      • 厚生労働省の補助事業として徳島県阿南市で実施された調査では、国保データベース(KDB)を用いて4年以上医療・介護サービスを利用していない高齢者を特定し訪問したところ、その多くが健康への関心が低いことが確認されました。これは、サービス未利用者が必ずしも健康であるとは限らず、潜在的なリスクを抱えたまま放置されている可能性を示唆します。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • この層が生活習慣病やフレイルを発症することで、将来的に医療費・介護費が急増し、個人のQOLと社会保障財政の両方に大きな打撃を与えます。
都市部における社会的孤立と孤独
  • 特別区のような都市部では、単身高齢者世帯の割合が高く、近隣との関係性も希薄になりがちです。これにより、他者との交流が極端に少ない「社会的孤立」状態に陥る高齢者が少なくありません。

地域社会の課題

「通いの場」の担い手不足と活動のマンネリ化
  • 多くの「通いの場」は、少数の熱心なボランティアによって支えられていますが、運営者の高齢化や固定化が進み、新たな担い手の確保が困難になっています。その結果、活動内容がマンネリ化し、新規参加者、特に男性などを惹きつける魅力を失いがちです。
多様なニーズへの対応不足
  • 従来の「通いの場」は、平日の日中に開催されることが多く、比較的元気で時間に余裕のある高齢者が主な参加者層です。そのため、まだ働いているアクティブシニアや、男性、趣味・嗜好が多様な層のニーズには応えきれていません。

行政の課題

増大する社会保障費と介護人材不足
  • 高齢者人口、特に後期高齢者人口の増加に伴い、要介護認定者数は増え続け、介護給付費は国の財政を圧迫する主要因となっています。2000年度に約3.5兆円だった介護費用は、2024年度には14.2兆円と4倍に膨れ上がっています。
縦割り行政によるアプローチの限界
  • 介護予防は高齢福祉部門、健康づくりは保健部門、まちづくりは都市整備部門、地域コミュニティは地域振興部門といったように、関連する施策が部署ごとに縦割りで実施される傾向にあります。これにより、施策間の連携が不足し、総合的な効果が生まれにくい構造になっています。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 施策が断片的で効果が限定的となり、資源の重複や非効率が生じ、複雑化・複合化する住民ニーズに対応できなくなります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
  • 即効性・波及効果:
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
  • 実現可能性:
    • 現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の仕組みを活用できる施策は優先度が高くなります。
  • 費用対効果:
    • 投入する経営資源(予算・人員等)に対して得られる効果が大きい施策を優先します。将来的な財政負担軽減効果も考慮します。
  • 公平性・持続可能性:
    • 特定の層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、長期的・継続的に効果が持続する施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無:
    • 政府資料や学術研究等のエビデンスに基づく効果が実証されている、または先進自治体で成功実績がある施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 介護予防・健康づくりの推進にあたっては、「地域基盤の強化」「参加者の裾野拡大」「持続可能な仕組みの構築」という3つの視点から、総合的に取り組む必要があります。
  • 本報告書では、これらを踏まえ、相互に関連し相乗効果を生む3つの支援策を提案します。
  • 最優先で取り組むべきは**「支援策①:『通いの場』の質的転換と担い手多様化」**です。これは、介護予防の最も基礎となる地域基盤そのものを強化する施策であり、他の施策の効果を高める土台となるためです。
  • 次に優先度が高いのは**「支援策②:「健康無関心層」への戦略的アプローチ」**です。介護予防の最大の障壁である「参加しない層」に直接働きかけることで、施策全体の効果を飛躍的に高めることが期待できます。
  • **「支援策③:介護予防DXの推進」**は、これら2つの施策をより効果的・効率的にし、個別最適化された支援を実現するための、中長期的な視点に立った基盤整備として位置づけられます。

各支援策の詳細

支援策①:地域共生社会の実現に向けた「通いの場」の質的転換と担い手多様化

目的
  • 「通いの場」を、単なる高齢者の集いの場から、多世代が交流し、多様な主体(NPO、企業、大学等)が運営に関わる「地域づくりの拠点」へと進化させること。
  • 持続可能な運営体制を構築するため、担い手の裾野を現役世代や学生、企業等にも広げ、多様な人材の参画を促進すること。
主な取組①:運営主体・活動内容の多様化支援
  • NPO法人、民間企業、社会福祉法人、大学などが「通いの場」を新たに立ち上げ、または運営する場合の初期費用(会場改修費、備品購入費等)や運営費(家賃、消耗品費等)を補助する新たな助成制度を創設します。
  • 将棋、麻雀、園芸、プログラミング、eスポーツといった趣味性の高い活動や、軽易な就労につながる活動など、特に男性や比較的若い高齢者が参加しやすい多様なプログラム開発を支援します。
  • これにより、従来の体操や茶話会中心の活動から脱却し、参加者の選択肢を大幅に増やします。
主な取組②:「地域貢献型」担い手の育成とインセンティブ付与
  • 「介護予防サポーター養成講座」等の担い手育成事業の対象者を、従来の65歳以上に限定せず、定年前後の50代~60代前半の世代や、地域貢献に関心のある企業人、福祉を学ぶ学生にも門戸を広げます。
  • 足立区の「元気応援ポイント事業」を参考に、区が指定する「通いの場」の運営支援や参加者サポート等のボランティア活動時間に応じてポイントを付与し、貯まったポイントを地域の商店街で使える商品券や公共施設の利用券等と交換できるインセンティブ制度を導入します。
主な取組③:専門職によるアウトリーチ支援の強化
  • 地域包括支援センターの専門職(保健師、社会福祉士等)や、区が連携するリハビリテーション専門職団体(理学療法士会、作業療法士会等)に委託し、専門職チームが各「通いの場」を定期的に巡回する体制を構築します。
  • 専門職は、体力測定の実施とフィードバック、個々の状態に応じた運動指導、フレイルや認知機能低下の早期発見、運営者からの相談対応など、活動の質の向上と重度化防止を支援します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 要支援・要介護認定率の上昇抑制(対前年度比で上昇率を0.5ポイント低減)
      • データ取得方法: 介護保険事業状況報告(年報)
  • KSI(成功要因指標)
    • 「通いの場」への年間参加率を20%向上(特に男性、65~74歳層の参加率を重点指標とする)
      • データ取得方法: 高齢者実態調査(隔年実施)、各「通いの場」からの参加者データ報告(四半期毎)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 住民運営以外の主体(NPO・企業等)が運営する「通いの場」の割合を、全登録数の20%まで増加させる
      • データ取得方法: 区の「通いの場」登録データベース
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 介護予防サポーター養成講座の新規受講者数を年間300人(うち65歳未満の割合30%)
    • 専門職による「通いの場」への巡回訪問回数を年間500回
      • データ取得方法: 事業実施報告書、委託事業者からの活動報告

支援策②:データとナッジ理論を活用した「健康無関心層」への戦略的アプローチ

目的
  • これまで行政からのアプローチが届きにくかった「健康無関心層」や「社会的孤立層」を、客観的データに基づき特定すること。
  • 行動科学(ナッジ理論)の知見を活用し、画一的な普及啓発から、個別に最適化された「そっと後押しする」働きかけへと転換し、健康行動や社会参加の最初の「一歩」を促すこと。
主な取組①:KDB等を活用したハイリスク・未接触者の特定
  • 国民健康保険データベース(KDB)や後期高齢者医療広域連合が保有するレセプトデータを分析し、長期間(例:過去2年間)にわたり、特定健診やがん検診の受診記録、医療機関(歯科含む)の受診記録、介護サービスの利用記録が全くない高齢者をリストアップします。
  • これにより、健康状態が不明で、かつ潜在的なリスクを抱えている可能性が高い層を客観的に抽出します。
主な取組②:ナッジを活用した個別通知・アウトリーチ
  • 特定された対象者に対し、行動変容を促す個別通知を送付します。例えば、「〇〇区では、あなたと同じ年代の男性の8割が、年に一度はかかりつけ医に相談しています」といった社会的比較を用いたメッセージや、「この無料クーポンで、お近くの〇〇地域集会所の体力測定に参加できます」といった簡便性を高めるインセンティブを提供します。
  • 地域包括支援センターの職員や保健師が訪問する際には、血圧計や簡易な握力計などを持参し、「記念に測ってみませんか?」と気軽に声をかけることで、健康への関心の入り口を作ります。
主な取組③:オンライン・セルフチェックツールの普及
  • 自宅のPCやスマートフォンで、認知機能(記憶力、注意力など)やフレイル(身体的虚弱)のリスクを簡易的にチェックできるツールを区の公式ウェブサイトやLINE公式アカウントで提供します。
  • チェック結果に応じて、「あなたの結果なら、まずは近所のウォーキングから始めてみませんか?」「少し心配な方は、地域包括支援センターに相談できます」といった形で、具体的な次のアクションへと誘導します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 新規要介護(要支援)認定者数を年間5%削減する
      • データ取得方法: 介護保険事業状況報告(年報)
  • KSI(成功要因指標)
    • ハイリスク・未接触者層の特定健診受診率を20%向上させる
      • データ取得方法: KDBデータと健診受診データの突合分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 個別通知・アウトリーチ対象者のうち、介護予防事業または健診への参加転換率を10%達成する
      • データ取得方法: 対象者リストと事業参加者・受診者リストの照合分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 個別通知の発送数:年間5,000件
    • アウトリーチの訪問件数:年間500件
    • オンライン・セルフチェックツールの利用回数:年間10,000回
      • データ取得方法: 事業実施記録、ウェブサイト及びLINEのアクセスログ分析

支援策③:介護予防DXの推進によるパーソナライズド・ヘルスケアの基盤構築

目的
  • ICTやAI技術を活用し、画一的なサービス提供から、住民一人ひとりの健康状態や生活習慣、興味関心に応じたパーソナライズド・ケア(個別最適化された支援)へと転換する基盤を構築すること。
  • 医療・介護・予防の各領域で分断されている情報を連携させ、切れ目のない支援体制を実現すること。
  • 介護現場の業務効率化を支援し、深刻な人材不足に対応すること。
主な取組①:介護予防・健康管理アプリの導入と活用促進
  • 歩数や活動量、食事、睡眠などを自動または簡易に記録できるスマートフォンアプリを区が選定・推奨し、区民への導入を支援します(初期設定サポート窓口の設置等)。
  • アプリを通じて、個人の活動量に応じた健康アドバイスを配信したり、地域の健康イベント情報や「通いの場」の活動予定をプッシュ通知したりすることで、継続的な利用と行動変容を促します。
主な取組②:多職種情報連携プラットフォームの導入支援
  • 神奈川県相模原市や千葉県柏市の先進事例を参考に、地域の医療機関、薬局、訪問看護ステーション、介護事業所、地域包括支援センターが、本人の同意のもとで必要な情報を安全に共有できるICTプラットフォーム(例:メディカルケアステーション、はち丸ネットワーク)の導入を推進します。
  • 区が導入費用の一部を補助するとともに、導入説明会や操作研修会を開催し、地域全体での活用を促進します。
主な取組③:介護現場へのテクノロジー導入支援(区版DXサポートセンターの設置)
  • 大分県の「介護DXサポートセンター」をモデルに、区内に介護事業所向けの相談窓口を設置します。
  • 見守りセンサー、介護記録ソフト、インカム、介護ロボット等の導入に関する相談対応、ショールームでの体験機会の提供、導入費用に対する補助金制度の創設など、ワンストップで支援します。
    • 客観的根拠:
      • 大分県は、介護現場の生産性向上を支援する「介護DXサポートセンター」を設置し、業務アドバイザーによる伴走支援や機器の試用貸出などを行っています。これは、人材不足という構造的課題に対し、テクノロジー活用で業務効率化を図る有効な一手です。
      • (出典)(https://oita-kaigorobot.com/) 37
      • 国も介護DXを推進しており、大分市や別府市をフィールドに、要介護認定事務の電子化などの先行実証を行っています。
      • (出典)(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001347975.pdf) 38
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 高齢者の在宅生活継続率を95%以上に維持する(施設入所率の抑制)
      • データ取得方法: 介護保険事業状況報告(年報)における在宅・施設サービス利用者数の分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 多職種情報連携プラットフォームへの参加機関数・事業所数を、地域の対象機関の50%まで引き上げる
      • データ取得方法: プラットフォーム運営事業者からの利用状況報告
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • テクノロジーを導入した介護事業所における、職員一人当たりの月間平均残業時間を10%削減する
      • データ取得方法: 協力事業所へのアンケート調査および勤怠データの分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 区が推奨する健康管理アプリのダウンロード数を5万件、月間アクティブユーザー数を2万人にする
    • 介護テクノロジー導入補助金の年間交付件数を50事業所にする
      • データ取得方法: アプリ提供事業者からの報告、補助金交付実績の集計

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「住民主体活動の助成と専門職派遣による重層的支援」

  • 世田谷区は、高齢者グループによる介護予防の自主活動に対し、年間最大24,000円の助成金を交付しています。対象は、健康体操や区が実施する介護予防プログラム修了後の継続活動などで、構成員の半数以上が65歳以上の区民である5人以上の団体です。これは、住民主体の自発的な活動(ボトムアップ)を資金面で力強く支える取り組みです。
  • 一方で、区は要支援認定者などを対象に、専門職が関与する「介護予防筋力アップ教室」や「お口の元気アップ教室」といったプログラムも提供しています。このように、住民の自主性を尊重する支援と、専門的知見に基づく直接的なサービス提供を組み合わせることで、多様なニーズに応える重層的な介護予防体制を構築しています。

品川区「認知症ミーティングセンターによる本人・家族の一体的支援」

  • 品川区は、オランダで生まれた「ミーティングセンター・サポートプログラム」を導入し、その運営を支援しています。このプログラムの最大の特徴は、認知症の「本人」と「介護する家族」を分離せず、一つの単位として一体的に支援する点にあります。
  • 区内の社会福祉法人などが運営主体となり、参加者(本人と家族)が専門職を交えながら、料理、外出、創作活動など、自分たちがやりたいことを一緒に話し合い、計画し、実行します。これにより、本人の不安軽減やQOL向上だけでなく、介護者の孤立感の解消や介護への肯定感を高め、家族関係そのものを良好に保つことを目指します。

足立区「元気応援ポイント事業による高齢者の社会参加と介護予防」

  • 足立区は、高齢者の社会参加と介護予防をユニークなインセンティブで促進する「元気応援ポイント事業」を実施しています。介護保険を利用していない65歳以上の区民が登録し、区が指定する介護施設や子育て施設、あるいは「ご近所ボランティア」としてゴミ出し支援などを行うと、活動時間に応じてポイントが付与されます。
  • 1時間の活動で1スタンプ(100ポイント)がもらえ、貯まったポイントは年間10,000円を上限に活動交付金(1ポイント=1円)として受け取ることができます。この「ささやかなお礼」が、社会貢献への意欲を引き出し、生きがいづくりと健康維持につながる巧みな制度設計となっています。

全国自治体の先進事例

静岡県三島市「スマートウエルネスシティ構想による健幸都市づくり」

  • 三島市は「健幸(けんこう)」をまちづくりの核に据え、「歩いて暮らせるまちづくり」を推進しています。特筆すべきは、健康無関心層へのアプローチを戦略的に行っている点です。住民が住民に健康情報を口コミで伝える「健幸アンバサダー」を養成したり、地域の公民館で誰もが参加しやすい連続運動講座「みしま健幸体育大学」を開講したりするなど、市民を巻き込んだ多角的な取り組みを展開しています。
  • これらの施策は、市民の健康意識と行動に顕著な成果をもたらしました。
    • 客観的根拠:
      • 市の取り組みにより、2011年から2019年にかけて、1日30分以上の身体活動を週1回以上行う市民の割合が44.3%から63.9%へと19.6ポイントも向上しました。
      • また、65歳から自立して生活できる期間を示す県の指標「お達者度」も男女ともに延伸し、市民の幸福感(「幸せと感じる人」の割合)も57.0%から60.1%に上昇しました。これは、本報告書が提言する複数の施策を統合的に実施し、明確なアウトカム(成果)を出した全国のトップランナー事例です。
      • (出典)スポーツ庁「スポーツ・レクリエーションを通じた健康増進事業の推進【静岡県三島市】」 43

大分県「介護DXサポートセンターによる現場の生産性向上支援」

  • 大分県は、全国的に深刻化する介護人材不足と現場の業務負担増に対応するため、全国に先駆けて「大分県介護DXサポートセンター」を設置しました。このセンターは、介護現場の生産性向上を目的とし、介護ロボットやICT機器の導入に関する相談、業務アドバイザーによる現場への伴走支援、機器の試用貸出、導入補助金の案内、DX関連研修などをワンストップで提供しています。
  • 人材不足という構造的な課題に対し、個々の事業所の努力だけに頼るのではなく、行政がプラットフォームとなってテクノロジー活用を強力に後押しすることで、持続可能な介護体制の構築を目指しています。
    • 客観的根拠:
      • 同センターは県の委託事業として明確な支援メニュー(相談、伴走支援、機器貸出、研修)をウェブサイトで公開し、運営されています。
      • (出典)(https://oita-kaigorobot.com/) 37
      • この先進的な取り組みは国からも注目され、大分市・別府市は国の介護DX先行実証事業のフィールドに選定され、要介護認定事務の電子化などを進めています。これは、行政が主導して地域のDXを推進する【支援策③】の先進モデルと言えます。

参考資料[エビデンス検索用]

政府白書・計画等
調査研究報告書
自治体・関連機関資料

まとめ

 東京都特別区における介護予防・健康づくりの推進は、もはや単なる福祉施策の一つではなく、超高齢社会における自治体経営の根幹をなす最重要戦略です。本稿で示したように、増大し続ける社会保障費と深刻な人材不足という構造的課題に直面する中で、求められるのは、従来の画一的なアプローチからの脱却です。具体的には、①多様な主体を巻き込み「通いの場」を質的に転換すること、②データと行動科学に基づき「健康無関心層」へ戦略的にアプローチすること、③DXを推進しパーソナライズされた支援基盤を構築すること、という三位一体の改革が不可欠です。これらの施策は、住民の健康寿命を延伸しQOLを高めると同時に、持続可能な社会保障制度を次世代に引き継ぐための、最も確実で費用対効果の高い投資となります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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