ユニバーサルデザイン基本方針の策定・推進

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要（ユニバーサルデザインを取り巻く環境）

• 自治体がユニバーサルデザイン基本方針の策定・推進を行う意義は、「急激な人口動態の変化の中で誰一人取り残さない真の包摂社会を実現すること」と、「将来にわたって持続可能で強靭な都市基盤を構築すること」にあります。
• ユニバーサルデザイン（UD）とは、年齢、性別、国籍、能力の違いなどにかかわらず、できる限り多くの人々が特別な調整や設計を必要とせずに利用できるよう、製品、建築、環境、サービスを計画段階からデザインする考え方です。
  • （出典）ノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンター
• これは、既存の障壁（バリア）に対して事後的に対応する「バリアフリー」の考え方を発展させ、当初から多様な人々が存在することを前提とする、より proactive（積極的）なアプローチです。
  • （出典）環境コミュニケーションズ「ユニバーサル・デザイン」
• 超高齢社会の進展、障害者人口の増加、そして国際化が急速に進む東京都特別区において、ユニバーサルデザインはもはや特定の福祉政策ではなく、持続可能な都市経営の中核をなす基本理念として位置づける必要があります。

意義

住民にとっての意義

安全性と利便性の向上

• ユニバーサルデザインは、障害のある人や高齢者だけでなく、すべての人々の日常生活における安全性と利便性を向上させます。
• 例えば、自動ドアは車いす利用者だけでなく、ベビーカーを押す人、両手に荷物を持つ人にも便益をもたらします。また、滑りにくい床材や直感的に理解できるピクトグラム（絵文字）は、すべての人々の事故防止と円滑な移動に貢献します。
  • （出典）大建工業株式会社「建築にユニバーサルデザインを取り入れるメリット」令和6年度
  • (https://cstation.kodansha.co.jp/sdgs/article/437)

社会参加の促進

• 物理的・情報的な障壁が取り除かれることで、高齢者、障害のある人、子育て中の親子、外国人など、これまで外出や社会活動に困難を感じていた人々が、より自由に社会・経済活動へ参加できるようになります。
• これにより、個人の生きがいや自己実現の機会が拡大します。
  • （出典）culumu「ユニバーサルデザインとは？7原則や身近な事例を解説」令和5年度
  • （出典）株式会社大和リビング研究所「ユニバーサルデザインがもたらす社会・経済的便益」令和5年度

尊厳と自立の尊重

• 特別な手助けを求めることなく、自らの意思で行動できる環境は、個人の尊厳を守り、自立した生活を支えます。
• ユニバーサルデザインは、「してもらう」という受動的な立場から、「自らできる」という主体的な生活への転換を促します。
  • (https://www.reitaku-u.ac.jp/journal/1777091/)
  • （出典）協和キリン株式会社「ユニバーサルデザインとは？7つの原則や注目される背景、企業の取り組み事例も紹介」令和3年度

地域社会にとっての意義

包摂的な共生社会の実現

• ユニバーサルデザインは、多様な人々が共存する包摂的な社会の物理的・情報的基盤となります。
• 誰もが使いやすい環境が整備されることで、人々は互いの違いを自然に認識し、尊重し合う文化が醸成されます。
  • （出典）culumu「ユニバーサルデザインとは？7原則や身近な事例を解説」令和5年度
  • （出典）株式会社大和リビング研究所「ユニバーサルデザインがもたらす社会・経済的便益」令和5年度

地域経済の活性化

• 誰もがアクセスしやすい店舗、観光施設、公共交通機関は、高齢者や障害のある人、外国人観光客など、より幅広い層の来訪者を惹きつけ、消費を喚起します。
• ユニバーサルツーリズムの推進は、新たな観光需要を創出し、地域経済の活性化に直接的に貢献します。
  • （出典）株式会社大和リビング研究所「ユニバーサルデザインがもたらす社会・経済的便益」令和5年度

防災・減災能力の向上

• わかりやすい避難経路の表示、多言語・多形式での災害情報伝達、段差のない避難所など、ユニバーサルデザインの考え方は、災害時要配慮者を含むすべての住民の安全確保に不可欠です。
• これにより、地域全体の防災・減災能力が向上します。
  • （出典）町田市「まちだユニバーサル社会推進計画」令和4年度

行政にとっての意義

法的責務の履行

• 令和6年4月1日に施行された改正障害者差別解消法により、民間事業者を含むすべての主体に「合理的配慮の提供」が義務化されました。
• 行政は、この法律の趣旨を率先して体現し、地域全体での遵守を促進する責務を負っています。ユニバーサルデザインの推進は、この法的責務を果たすための根幹的な取り組みです。
  • （出典）内閣府「リーフレット『令和６年４月１日から合理的配慮の提供が義務化されました』」令和5年度
  • （出典）政府広報オンライン「事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化」令和6年度

効率的かつ公平なサービス提供

• 行政手続きの窓口、ウェブサイト、申請書類などにユニバーサルデザインを導入することで、住民の理解を助け、問い合わせや誤りを減らすことができます。
• これにより、住民と職員双方の負担が軽減され、より効率的で公平な行政サービスの提供が可能になります。
  • （出典）株式会社大和リビング研究所「ユニバーサルデザインがもたらす社会・経済的便益」令和5年度

持続可能な都市開発

• 将来のさらなる高齢化や多様化を見据え、計画段階からユニバーサルデザインを導入することは、将来発生しうる大規模な改修コストを抑制する長期的な投資です。
• これは、SDGs（持続可能な開発目標）の理念とも合致し、持続可能な都市経営に不可欠な要素です。
  • （出典）culumu「ユニバーサルデザインとは？7原則や身近な事例を解説」令和5年度

（参考）歴史・経過

• 1960年代
  • デンマークで、障害のある人を特別視せず、普通の生活が送れる社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念が提唱される。
  • 米国の公民権運動を背景に、すべての人を包摂する社会への希求が高まる。
    • (https://cstation.kodansha.co.jp/sdgs/article/437)
    • （出典）公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会「ユニバーサルデザインの思想的背景」平成28年度
• 1970年代
  • 日本では、福祉環境整備を目的とした法制化が始まり、バリアフリー基準の遵守が求められるようになる。
    • （出典）一般社団法人 家電製品協会「ユニバーサルデザインとは」
• 1980年代
  • 米国の建築家ロナルド・メイス氏が、自身も車いす利用者である経験から、「特別な製品や改造なしで、できるだけ多くの人が利用可能であるように製品、建物、空間をデザインすること」として「ユニバーサルデザイン」を提唱し、7つの原則を確立する。
    • （出典）秋田市「バリアフリーとユニバーサルデザイン」
    • （出典）一般社団法人 家電製品協会「ユニバーサルデザインとは」
• 1990年代
  • 日本では急速な高齢化を見据え、ユニバーサルデザインへの取り組みが本格化。「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律（ハートビル法）」が制定される。
  • JIS（日本産業規格）などでの規格化も進む。
    • （出典）一般社団法人 家電製品協会「ユニバーサルデザインとは」
• 2000年代
  • 「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律（交通バリアフリー法）」が制定される。
  • 平成18年（2006年）、ハートビル法と交通バリアフリー法を統合・拡充した「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律（バリアフリー法）」が施行され、ハード・ソフト両面での一体的なバリアフリー化が推進される。
• 2010年代
  • 平成25年（2013年）、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律（障害者差別解消法）」が成立（平成28年施行）。行政機関等に合理的配慮の提供を義務付け、民間事業者には努力義務を課した。
  • 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催決定を契機に、「ユニバーサルデザイン2020行動計画」が策定され、共生社会の実現に向けた取り組みが加速する。
    • （出典）首相官邸「ユニバーサルデザインの推進について」
• 2020年代
  • 令和3年（2021年）、障害者差別解消法が改正され、民間事業者による合理的配慮の提供が努力義務から法的義務へと変更される。
  • 令和6年（2024年）4月1日、改正障害者差別解消法が施行。これにより、社会全体で障害のある人への配慮を提供することが法的に必須となり、ユニバーサルデザインの重要性が一層高まる。
    • （出典）内閣府「リーフレット『令和６年４月１日から合理的配慮の提供が義務化されました』」令和5年度

ユニバーサルデザインに関する現状データ

• 東京都特別区は、全国平均と比較して高齢化率が低い一方で、生産年齢人口の割合が非常に高く、年少人口の割合が低いという特徴的な人口構造を持っています。これは、現在流入している多数の現役世代が将来的に区内で高齢化することを意味し、将来の高齢者人口の急増に備えたユニバーサルデザインのまちづくりが、他の地域以上に急務であることを示唆しています。

人口動態の変化

• 高齢化率の推移
  • 日本の総人口に占める65歳以上人口の割合（高齢化率）は、令和6年時点で29.3%に達し、過去最高を更新し続けています。将来推計では、令和52年（2070年）には2.6人に1人が65歳以上になると見込まれています。
    • （出典）内閣府「令和7年版 高齢社会白書」令和7年度
  • 一方、東京都特別区全体の高齢化率は令和6年時点で21.0%と、全国平均や東京都平均（23.5%）を大きく下回っています。これは高齢者が少ないのではなく、生産年齢人口（15～64歳）の流入が非常に多いため、相対的に高齢化率が低く抑えられている状況です。
    • (https://fp-research.co.jp/archives/862)
    • （出典）東京都「令和６年『敬老の日にちなんだ東京都の高齢者人口（推計）』」令和6年度
• 障害者数の状況
  • 日本の障害者数（推計）は、身体障害者436万人、知的障害者109.4万人、精神障害者614.8万人であり、国民の約9.2%が何らかの障害を有していることになります。
    • （出典）内閣府「令和6年版 障害者白書」令和6年度
  • 特に在宅の身体障害者のうち、65歳以上の割合は72.6%にのぼり、高齢化と障害が密接に関連していることがわかります。
    • （出典）内閣府「令和6年版 障害者白書」令和6年度
• 外国人住民数の増加
  • 東京都特別区の外国人住民数は近年急増しており、人口増加の主要因となっています。例えば、新宿区、豊島区、北区、足立区などでは、過去7年間で外国人人口が著しく増加しています。
    • (https://www.sompo-ri.co.jp/2023/10/31/10242/)
    • (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000200.000020953.html)

物理的環境（ハード）の整備状況

• 公共交通機関のバリアフリー化
  • 1日平均利用者数3,000人以上の鉄軌道駅における段差解消率は、令和5年度末時点で全国で94.0%に達しています。東京都内では94.3%と全国平均を上回りますが、依然として100%には至っていません。
    • （出典）国土交通省「公共交通機関におけるバリアフリー化の状況について」令和6年度
    • (https://www.dpi-japan.org/blog/workinggroup/traffic/2020-barrier-free-result/)
  • 視覚障害者誘導用ブロックの設置率は全国で46.6%、ホームドアの設置番線数は2,647番線と、整備目標に対して道半ばの状況です。
    • （出典）国土交通省「公共交通機関におけるバリアフリー化の状況について」令和6年度
  • ノンステップバスの導入率は全国で70.5%であり、令和7年度末の目標（約80%）達成には更なる取り組みが必要です。
    • （出典）国土交通省「公共交通機関におけるバリアフリー化の状況について」令和6年度
• 建築物・公共施設のバリアフリー化
  • 令和6年版障害者白書では、ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進が重点項目として挙げられていますが、既存の民間建築物など、対応が遅れている領域も依然として存在します。
    • （出典）内閣府「令和6年版 障害者白書」令和6年度
  • 東京都では「福祉のまちづくり条例」に基づき整備が進められており、多くの特別区でも同条例に準拠、あるいはそれを上回る独自の条例やガイドラインを策定して対応を進めています。
    • （出典）東京都福祉局「東京都福祉のまちづくり条例」
    • （出典）新宿区「新宿区ユニバーサルデザインまちづくり条例と届出について」令和7年度
    • （出典）世田谷区「令和６年 世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例施設整備マニュアル」令和6年度

情報・サービス（ソフト）及び意識（ハート）の状況

• 情報アクセシビリティ
  • 行政サービスのデジタル化が進む一方で、高齢者や障害のある人など、デジタル機器の利用に不慣れな層が情報から取り残される「デジタルデバイド」が新たな社会課題となっています。
    • （出典）内閣府「令和6年版 障害者白書」令和6年度
• ユニバーサルデザインの認知度
  • 市民アンケート調査では、「バリアフリー」という言葉の認知度に比べ、「ユニバーサルデザイン」の認知度は低い傾向にあります。例えば、ある自治体の調査では、「バリアフリー」の内容まで説明できる人が7割を超えたのに対し、「ユニバーサルデザイン」は2割程度にとどまりました。
    • （出典）秋田市「バリアフリーに関するアンケート調査」令和4年度
• 心のバリアフリー
  • 困っている人を見かけた際に「手助けした」と回答する人は7割を超える一方、「手助けしていいか分からなかった」ために行動できなかった人も多く、知識や理解の不足が行動の障壁となっている実態があります。
    • （出典）秋田市「バリアフリーに関するアンケート調査」令和4年度

課題

住民の課題

日常生活における物理的な障壁の残存

• 公共交通機関のバリアフリー化は進展しているものの、駅構内での乗り換え経路が複雑であったり、一部の出入口にエレベーターが未設置であったりするなど、「点」の整備にとどまり、移動の連続性（シームレス化）が確保されていないケースが散見されます。また、歩道が狭い、電柱や違法駐輪・看板などが点字ブロックを塞いでいる、休憩できるベンチが少ないといった身近な問題が、高齢者や障害のある人の自由な外出を阻害しています。
  • 客観的根拠：
    • 国土交通省の調査によれば、1日平均利用者3,000人以上の鉄軌道駅における段差解消率は令和5年度末で94.0%ですが、これは裏を返せば約6%の駅で未だに段差が残っていることを意味します。また、視覚障害者誘導用ブロックの設置率は46.6%と半数以下にとどまっています。
    • （出典）国土交通省「公共交通機関におけるバリアフリー化の状況について」令和6年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 高齢者や障害のある人の行動範囲が限定され、社会参加の機会喪失や心身の健康悪化につながります。

情報・コミュニケーションにおける障壁

• 行政からの通知やウェブサイト、災害時の情報提供などが、日本語の文字情報のみで提供されることが多く、視覚や聴覚に障害のある人、日本語の読解が困難な外国人住民などが必要な情報から疎外されています。また、行政サービスのデジタル化が急速に進む中で、スマートフォンやPCの操作に不慣れな高齢者などが手続きを行えず、必要な支援を受けられない「デジタルデバイド」が深刻化しています。
  • 客観的根拠：
    • 令和6年版障害者白書では、「情報アクセシビリティの向上」と「コミュニケーション支援体制の充実」が重要施策として掲げられており、情報格差の是正が国家的な課題であることが示されています。
    • （出典）内閣府「令和6年版 障害者白書」令和6年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 情報格差が生命や財産の格差に直結し、特に災害時において深刻な事態を招く恐れがあります。

心理的・社会的な障壁（心のバリアフリーの不足）

• 外見からは分かりにくい障害（内部障害、発達障害、精神障害など）への社会の理解が不足しており、当事者が公共の場で心ない言動に傷ついたり、必要な配慮を得られなかったりする場面が後を絶ちません。また、令和6年4月から義務化された「合理的配慮の提供」を民間事業者に求めた際に、対話が円滑に進まず、精神的な負担を感じる住民も少なくありません。
  • 客観的根拠：
    • 国土交通省のアンケート調査では、優先席を譲らなかった理由として「譲るべき相手か判断がつかなかったから」という回答が多く、市民の善意を行動に移すための知識や理解が不足している状況がうかがえます。
    • （出典）国土交通省「『心のバリアフリー』に関するアンケート調査の結果について」令和元年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 当事者が外出や社会参加に萎縮するようになり、多様な人々が共生する社会の実現が阻害されます。

地域社会の課題

民間事業者における対応のばらつきと知識不足

• 令和6年4月から、障害者差別解消法に基づき民間事業者にも「合理的配慮の提供」が法的に義務付けられました。しかし、特に中小事業者においては、この新たな義務の内容や具体的な対応方法に関する認知度が依然として低く、対応に大きなばらつきが生じています。これにより、障害のある住民が店舗への入店を断られたり、適切なサービスを受けられなかったりする事案が発生しています。
  • 客観的根拠：
    • 改正法の施行に伴い、政府はリーフレット等を通じて周知を図っていますが、事業者団体等との連携による更なる啓発が不可欠な状況です。合理的配慮は「建設的対話」を通じて個別に行われるため、その前提となる知識の普及が課題です。
    • （出典）内閣府「リーフレット『令和６年４月１日から合理的配慮の提供が義務化されました』」令和5年度
    • （出典）政府広報オンライン「事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化」令和6年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 障害のある住民の消費機会が奪われるとともに、事業者側も潜在的な顧客を失い、地域経済全体に悪影響を及ぼします。

地域全体での意識共有と協力体制の欠如

• 行政が多額の予算を投じて歩道の点字ブロックやバリアフリートイレを整備しても、その上に商品や自転車が置かれたり、健常者が長時間占有したりすることで、その機能が損なわれるケースが頻発しています。これは、「バリアフリー」を自分事として捉え、地域全体でその価値を維持・向上させていこうという意識が十分に共有されていないことを示しています。
  • 客観的根拠：
    • ある自治体の調査では、「ユニバーサルデザイン」という言葉の意味まで理解している市民は約2割にとどまり、「バリアフリー」と比較して概念の浸透度が低いことが示されています。この理解度の差が、当事者意識の欠如につながっている可能性があります。
    • （出典）秋田市「バリアフリーに関するアンケート調査」令和4年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 公共投資の効果が最大化されず、税金が非効率に使われる結果となり、行政への信頼も損なわれます。

行政の課題

縦割り行政による施策の分断

• ユニバーサルデザインの推進は、福祉、都市計画、建築、土木、教育、産業振興など、複数の部局にまたがる横断的なテーマです。しかし、多くの自治体では、これらの施策が各部局で個別に進められており、全体を統括する司令塔機能が不在です。その結果、例えば、バリアフリー化された公共施設が、アクセス困難な歩道によって孤立してしまうなど、施策間の連携不足による非効率が生じています。
  • 客観的根拠：
    • 多くの特別区でユニバーサルデザイン推進計画が策定されていますが、その実効性を担保するためには、計画を推進する強力な庁内横断組織の設置と権限付与が不可欠です。
    • （出典）中野区「中野区ユニバーサルデザイン推進計画（第2次）」令和7年度
    • （出典）板橋区「板橋区ユニバーサルデザイン推進計画2025」平成29年度
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 施策が「点」の整備に終始し、利用者にとって真に価値のある「面」としての連続性が確保されず、投資効果が限定的になります。

計画・設計段階からのUD視点の欠如

• 多くの取り組みが、既存の施設やサービスに対する事後的な「バリアフリー改修」にとどまっています。本来、ユニバーサルデザインは、すべての公共事業やサービス開発の「計画・設計段階」から組み込まれるべき基本原則です。この上流工程での視点が欠如しているため、新たな公共施設が完成した時点で既に新たなバリアを生み出してしまい、将来的に追加の改修コストが発生する非効率なサイクルが続いています。
  • 客観的根拠：
    • 東京都福祉のまちづくり条例は、建築物等に対する整備基準を定めていますが、これを条例の対象範囲だけでなく、区が実施するあらゆる調達や計画策定の基本原則として位置づける「基本方針」の策定が求められます。
    • （出典）東京都福祉局「東京都福祉のまちづくり条例」
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 将来世代に不要な財政負担を残すとともに、行政サービスが時代のニーズから取り残されていきます。

多様な当事者の意見を反映する仕組みの不備

• 施設整備や計画策定のプロセスにおいて、多様な障害のある人、高齢者、子育て中の親、外国人など、実際の利用者の声が十分に反映されていません。審議会等の委員が特定の属性に偏っていたり、パブリックコメントへの意見提出が少なかったりと、形式的な意見聴取にとどまっているケースが多く見られます。その結果、専門家が良かれと思って設計したものが、実際の利用者にとっては使いにくいというミスマッチが生じています。
  • 客観的根拠：
    • 先進自治体である明石市では、「当事者・市民参画による計画・取組の推進」を基本目標に掲げ、まちづくりのあらゆるプロセスに当事者が参画する仕組みを構築しています。こうした仕組みの導入は、多くの自治体にとっての課題です。
    • (https://www.ecomo.or.jp/barrierfree/benkyo/result/pdf/20210301_002.pdf)
  • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
    • 住民ニーズと乖離した公共サービスが提供され、行政への不信感が高まるとともに、貴重な税資源が無駄になります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

• 即効性・波及効果
  • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、単一の課題解決にとどまらず、複数の課題解決や多くの住民への便益に横断的に貢献する施策を高く評価します。
• 実現可能性
  • 現在の法制度、予算、人員体制の中で、大きな障壁なく着手・実行が可能な施策を優先します。既存の仕組みや資源を活用できる施策は、優先度が高くなります。
• 費用対効果
  • 投入する経営資源（予算・人員・時間等）に対して、得られる社会的便益や将来的なコスト削減効果が大きい施策を優先します。
• 公平性・持続可能性
  • 特定の地域や層だけでなく、幅広い住民に便益が及び、かつ一時的な効果で終わらず、長期的に効果が持続する仕組みとなる施策を高く評価します。
• 客観的根拠の有無
  • 政府の白書や調査、あるいは他の自治体での成功事例など、効果が客観的なエビデンスによって裏付けられている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

• ユニバーサルデザインの推進は、物理的な環境整備（ハード）、情報やサービスの提供方法（ソフト）、そして人々の意識（ハート）の3つの側面から総合的に取り組む必要があります。これらの土台として、まず行政自身の推進体制を確立することが不可欠です。
• したがって、優先度が最も高い施策は**「支援策①：ユニバーサルデザイン基本方針の策定と推進体制の構築」**です。これは、すべての取り組みの方向性を定め、縦割り行政を排して実効性を担保するためのガバナンス改革であり、他の全ての施策の基盤となります。
• 次に優先すべきは**「支援策②：ハード・ソフト両面でのUD実装加速化プロジェクト」**です。基本方針に基づき、住民が日常生活で直接効果を体感できる物理的・情報的環境の改善を加速させます。特に、改正障害者差別解消法への対応として、事業者支援を迅速に開始することが重要です。
• そして、これらの取り組みを地域社会に根付かせ、持続可能なものにするために**「支援策③：『心のバリアフリー』の社会実装と共生文化の醸成」**を中長期的な視点で推進します。ハード・ソフトの整備と人々の意識改革は、車の両輪として機能することで最大の効果を発揮します。

各支援策の詳細

支援策①：ユニバーサルデザイン基本方針の策定と推進体制の構築

目的

• 区のあらゆる施策におけるユニバーサルデザインの基本理念と方向性を明確に定めること。
• 部局横断的な推進体制を構築し、施策の分断を防ぎ、総合的・計画的な実行を担保すること。
• すべての公共事業やサービス設計の初期段階から、多様な当事者の参画を制度的に保証すること。
  • 客観的根拠：
    • 先進自治体の多くは、条例や計画によってユニバーサルデザインの基本理念を明確化し、推進体制を構築しています。
    • （出典）世田谷区「世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例」平成19年度
    • （出典）中野区「中野区ユニバーサルデザイン推進計画（第2次）」令和7年度

主な取組①：ユニバーサルデザイン基本方針の策定

• 区の最上位計画の一つとして「ユニバーサルデザイン基本方針」を策定します。
• この方針には、公共施設の整備、物品の調達、情報提供、職員の行動規範など、区のあらゆる活動においてユニバーサルデザインを優先する原則を明記します。
• 「ハード（もの）・ソフト（こと）・ハート（こころ）」の3つの側面から具体的な目標を設定し、施策の体系を明らかにします。
  • 客観的根拠：
    • 中野区の推進計画では、「ハード」「ソフト」「ハート」の3つの基本理念を定め、それぞれに目標を掲げて施策を体系化しており、実効性の高い計画策定のモデルとなります。
    • （出典）中野区「中野区ユニバーサルデザイン推進計画（第2次）」令和7年度

主な取組②：全部局横断的な推進本部の設置

• 区長または副区長を本部長とし、関係部局の長で構成される「ユニバーサルデザイン推進本部」を設置します。
• 推進本部は、基本方針に基づく各部局の実施計画の進捗管理、重要事業に関する部局間調整、成果評価などを一元的に担い、縦割り行政の弊害を排除します。
  • 客観的根拠：
    • 施策の分断は多くの自治体で課題となっており、強力なリーダーシップと権限を持つ横断的組織の設置が、計画の実効性を高める鍵となります。

主な取組③：当事者参加型デザインレビュー会議の制度化

• 障害のある人、高齢者、子育て当事者、外国人など、多様な背景を持つ区民で構成される「UDデザインレビュー会議」を常設します。
• 主要な公共施設の設計や情報システムの開発など、区の重要事業については、計画の初期段階でこの会議によるレビューを受けることを義務付け、当事者の視点を確実に反映させます。
  • 客観的根拠：
    • 明石市は「当事者・市民参画による計画・取組の推進」を基本目標に掲げ、利用者視点を徹底しています。当事者の参画は、税金の無駄遣いを防ぎ、真に役立つサービスを作る上で不可欠です。
    • (https://www.ecomo.or.jp/barrierfree/benkyo/result/pdf/20210301_002.pdf)

主な取組④：職員向けUD研修の義務化とガイドライン策定

• 全職員を対象としたユニバーサルデザインに関する基礎研修を義務化します。
• 特に、設計、広報、窓口業務など関連性の高い職種の職員には、より専門的な研修を実施します。
• 「情報発信UDガイドライン」「施設設計UDガイドライン」など、職員が日常業務で参照できる具体的な手引を作成・配布します。
  • 客観的根拠：
    • 中野区や世田谷区では、職員向けに「情報発信のユニバーサルデザインガイドライン」を策定し、行政が発信する情報の分かりやすさ向上に努めています。
    • （出典）中野区「中野区情報発信のユニバーサルデザインガイドライン」令和元年
    • （出典）世田谷区「世田谷区情報のユニバーサルデザインガイドライン」

主な取組⑤：UD成果の評価指標（UD-Index）の開発と公表

• 区独自のユニバーサルデザイン達成度を測る評価指標群「UD-Index」を開発します。
• 指標には、ハード面の整備率だけでなく、区民の満足度や意識の変化なども含めます。
• 毎年、この指標に基づき自己評価を行い、結果を区民に分かりやすく公表することで、PDCAサイクルを確立し、取り組みの透明性を高めます。
  • 客観的根拠：
    • EBPM（証拠に基づく政策立案）の観点から、客観的な指標に基づく進捗管理と評価は、政策の質を向上させる上で極めて重要です。

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 区民の生活満足度調査における「暮らしやすさ（移動、情報アクセス等を含む）」項目の肯定的な評価の割合：5年間で15ポイント向上
  • データ取得方法： 年1回実施する区民意識調査
• KSI（成功要因指標）
  • 区の主要な公共事業計画における当事者デザインレビュー実施率：100%
  • データ取得方法： ユニバーサルデザイン推進本部の議事録及び事業報告書
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 職員のUD研修受講後の理解度テスト平均点：90点以上
  • データ取得方法： 研修管理システムによるオンラインテスト結果の集計
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • ユニバーサルデザイン基本方針の策定・公表：初年度に完了
  • データ取得方法： 策定された方針文書
  • ユニバーサルデザイン推進本部の開催回数：年4回以上
  • データ取得方法： 会議開催記録

支援策②：ハード・ソフト両面でのUD実装加速化プロジェクト

目的

• 公共空間や交通機関に残存する物理的な障壁を計画的に解消し、誰もが安全かつ円滑に移動できる環境を実現すること。
• 能力、言語、デジタルリテラシーにかかわらず、すべての住民が行政情報やサービスに公平にアクセスできる環境を整備すること。
• 改正障害者差別解消法を踏まえ、地域の中小事業者が円滑に「合理的配慮」を提供できるよう支援すること。
  • 客観的根拠：
    • バリアフリー法基本方針では、公共交通機関等のバリアフリー化に関する具体的な整備目標が定められており、自治体にはその達成に向けた取り組みが求められています。
    • （出典）国土交通省「バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について」令和2年度

主な取組①：重点整備地区における「シームレスな移動環境」の整備

• 主要駅周辺、区役所や主要な医療・福祉施設周辺などを「UD重点整備地区」に指定します。
• 地区内において、駅から目的地までの経路（歩道、交差点、公共施設入口など）を対象に、段差解消、点字ブロックの連続性確保、多言語案内サインの設置などを集中的に実施し、途切れのない移動環境（シームレス・モビリティ）を実現します。
  • 客観的根拠：
    • 国土交通省はバリアフリー法基本方針において、重点整備地区における面的・一体的なバリアフリー化を推進しており、令和7年度末までに主要な鉄軌道駅の段差解消率100%を目指しています。
    • （出典）国土交通省「公共交通機関におけるバリアフリー化の状況について」令和6年度

主な取組②：区有施設のUD改修計画策定と実行

• すべての区有施設（庁舎、区民センター、図書館、学校、公園など）について、ユニバーサルデザインの観点から総点検を実施します。
• 点検結果に基づき、優先順位を付けた中期的な改修計画（UD化アクションプラン）を策定し、公共施設等総合管理計画と連携させながら計画的に実行します。
  • 客観的根拠：
    • 国は公共施設等総合管理計画に基づき、施設の長寿命化と併せたバリアフリー化やユニバーサルデザイン化を推進しており、計画的な施設改修が求められています。
    • （出典）総務省「公共施設等総合管理計画の策定にあたっての指針の改訂」平成30年度

主な取組③：デジタル・インクルージョン支援拠点の設置

• 地域の区民センターや図書館などに、高齢者などを対象とした「スマホ相談窓口」を常設します。
• 専門の支援員を配置し、オンラインでの行政手続きや情報収集の方法について、個別に丁寧にサポートする体制を構築します。
  • 客観的根拠：
    • 令和6年版障害者白書は、情報アクセシビリティ向上の重要性を指摘しており、デジタルデバイドの解消は、誰一人取り残さない社会を実現するための喫緊の課題です。
    • （出典）内閣府「令和6年版 障害者白書」令和6年度

主な取組④：行政情報・ウェブサイトのUD化徹底

• 区の公式ウェブサイトを、JIS X 8341-3:2016（高齢者・障害者等配慮設計指針）の適合レベルAAに準拠するよう全面的に改修します。
• 区が発行する重要な印刷物（広報誌、各種通知など）については、音声コードの添付、やさしい日本語版の作成、多言語対応などを原則とします。
  • 客観的根拠：
    • 内閣府をはじめとする国の機関では、ウェブサイトがJIS規格の適合レベルAAを達成することを標準としており、これは地方自治体においても遵守すべき基準です。
    • （出典）内閣府「アクセシビリティ報告書」

主な取組⑤：中小事業者向け「合理的配慮」導入支援

• 改正障害者差別解消法に関する相談を受け付けるワンストップ窓口を設置します。
• 携帯スロープの購入、コミュニケーションボードの作成、メニューの多言語化など、合理的配慮の提供に資する小規模な設備投資やツール導入に対して補助金を交付する制度を創設します。
  • 客観的根拠：
    • 令和6年4月1日から民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されたことを受け、円滑な移行を促すためには、行政による具体的な支援策（情報提供、相談体制、財政的支援）が不可欠です。
    • （出典）政府広報オンライン「事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化」令和6年度

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • UD重点整備地区における住民の「移動のしやすさ」に関する満足度：3年間で30%向上
  • データ取得方法： 対象地区の住民を対象とした定点アンケート調査
• KSI（成功要因指標）
  • 区公式ウェブサイトのJIS X 8341-3適合レベルAA達成
  • データ取得方法： 外部の専門機関によるウェブアクセシビリティ監査報告書
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 中小事業者向け「合理的配慮」相談窓口の利用件数：年間200件以上
  • データ取得方法： 相談窓口の受付記録の集計
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • デジタル・インクルージョン支援拠点の設置数：各地域に1か所以上
  • データ取得方法： 事業実施報告書
  • UD改修を実施した区有施設の数：年間10施設以上
  • データ取得方法： 公共施設管理台帳の更新記録

支援策③：「心のバリアフリー」の社会実装と共生文化の醸成

目的

• すべての人が互いの違いを認め、自然に支え合う「心のバリアフリー」を地域社会の文化として定着させること。
• 多様な障害の特性や、「合理的配慮」の重要性に対する区民の理解を深めること。
• 子どもたちが幼少期から多様性と共生の価値観を学ぶ機会を提供すること。
  • 客観的根拠：
    • バリアフリー法基本方針においても、「心のバリアフリー」の推進が重要な柱として位置づけられており、ハード整備と一体となった取り組みが求められています。
    • （出典）国土交通省「バリアフリー法に基づく基本方針における次期目標について」令和2年度

主な取組①：全区立小中学校でのUD・インクルーシブ教育の実施

• 障害のある当事者を講師として招いた交流授業、車いすや白杖の体験学習、パラリンピックスポーツ体験などを盛り込んだ、体系的な「インクルーシブ教育プログラム」を開発し、全区立小中学校で実施します。
• 「合理的配慮」の考え方や、多様なコミュニケーション手段について学ぶ機会を設けます。
  • 客観的根拠：
    • 政府は、東京2020大会のレガシーとして「心のバリアフリー」を学ぶ教育ツールの活用を推進しており、学校教育を通じた次世代への働きかけが極めて効果的であるとされています。
    • （出典）首相官邸「ユニバーサルデザインの推進について」

主な取組②：区民向け「ユニバーサルマナー検定」の普及促進

• 高齢者や障害のある人への適切な声のかけ方やコミュニケーション方法を実践的に学べる「ユニバーサルマナー検定」の受講を促進します。
• 区民や区内事業者の従業員を対象に、受講料の一部を補助する制度を設け、普及を図ります。
  • 客観的根拠：
    • 福岡市では「福岡版ユニバーサルマナー検定」を独自に実施し、市民や事業者の接遇スキル向上と意識啓発に成功しており、他の自治体でも応用可能な有効な手法です。
    • （出典）福岡市「ユニバーサル都市・福岡」

主な取組③：UD優良事業者・活動の表彰制度創設

• ユニバーサルデザインに配慮した店舗づくりや、障害のある人への優れたサービス提供、地域での啓発活動など、共生社会の実現に貢献した事業者や団体、個人を表彰する「（仮称）特別区UDアワード」を創設します。
• 受賞事例を区の広報誌やウェブサイトで広く紹介し、地域全体の取り組み意欲を高めます。
  • 客観的根拠：
    • 優れた取り組みを「見える化」し、社会的に評価することは、他の事業者のインセンティブとなり、取り組みの裾野を広げる効果が期待できます。

主な取組④：インクルーシブ防災の推進

• 地域の防災訓練において、障害のある人や外国人住民が実際に参加し、避難行動や避難所での生活における課題を洗い出す「当事者参加型訓練」を推進します。
• 訓練で得られた知見を基に、地域の防災計画や避難所運営マニュアルを継続的に見直します。
  • 客観的根拠：
    • 令和6年版障害者白書では、防災対策の推進が重要課題として挙げられており、災害時要配慮者の安全確保は行政の重要な責務です。
    • （出典）内閣府「令和6年版 障害者白書」令和6年度

主な取組⑤：広報キャンペーン「わたしたちのまちのUD」の展開

• 区民が日常生活の中で実践している「小さな思いやり」や、区内店舗の「素敵な配慮」などを写真や短いエピソードで募集し、SNSや公共交通機関の車内広告などで紹介する参加型の広報キャンペーンを展開します。
• 「ユニバーサルデザインは特別なことではない」という意識を醸成し、行動変容を促します。
  • 客観的根拠：
    • 抽象的な理念の啓発だけでなく、具体的で共感を呼ぶ身近な事例を発信することが、人々の意識や行動に変化をもたらす上で効果的です。

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 区民意識調査における「障害のある人など、まちなかで困っている人を見かけたら、手助けをすることにためらいを感じない」と回答した区民の割合：5年間で80%以上
  • データ取得方法： 年1回実施する区民意識調査
• KSI（成功要因指標）
  • 区内事業者の「合理的配慮の提供義務」に関する認知度：90%以上
  • データ取得方法： 区内事業者を対象としたアンケート調査
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 「ユニバーサルマナー検定」の年間受講者数：1,000人以上
  • データ取得方法： 講座実施団体からの事業報告
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • インクルーシブ教育プログラムを実施した区立小中学校の割合：100%
  • データ取得方法： 教育委員会からの実施報告
  • 広報キャンペーンによる年間総インプレッション数（SNS、広告等）：500万回以上
  • データ取得方法： 広報課による効果測定レポート

先進事例

東京都特別区の先進事例

世田谷区「共生社会ホストタウンを契機とした総合的推進」

• 世田谷区は、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機に、国の「共生社会ホストタウン」に都内で初めて登録され、これをテコにユニバーサルデザインのまちづくりを総合的に推進しました。
• 馬術競技会場となる馬事公苑周辺の歩行空間整備（ハード）、パラリンピアンとの交流を通じた小中学校での障害理解教育（ハート）、障害者スポーツの振興（ソフト）などを一体的に展開しました。
• 成功要因は、国際的なイベントを単発の行事で終わらせず、ユニバーサルデザインの理念を地域に根付かせるための長期的・総合的な戦略の起爆剤として活用した点にあります。
  • 客観的根拠：
    • 区は、ユニバーサルデザインによる区立大蔵運動場陸上競技場の整備や、商店街への段差解消用スロープ設置助成など、ホストタウンの理念を具体的なハード・ソフト施策に結びつけています。
    • （出典）世田谷区「世田谷区は『先導的共生社会ホストタウン』に登録されました」

新宿区「条例に基づく建築物整備の徹底」

• 新宿区は、都の条例をさらに発展させた独自の「新宿区ユニバーサルデザインまちづくり条例」を制定しています。
• この条例の最大の特徴は、一定規模以上の建築物の新設・改修時に、計画の早い段階での「事前協議」と工事完了後の「完了報告」を義務付けている点です。これにより、車いす使用者用便房や「だれでもトイレ」などの整備基準が、図面だけでなく現場レベルで確実に遵守される仕組みを構築しています。
• 成功要因は、理念の提唱にとどまらず、行政手続きの中にユニバーサルデザインの遵守を担保する具体的なプロセスを組み込んだ、実効性の高い制度設計にあります。
  • 客観的根拠：
    • 条例では、事前協議や完了報告の際に提出すべき図面や写真が詳細に定められており、事業者や設計者が基準を遵守せざるを得ない仕組みとなっています。
    • （出典）新宿区「新宿区ユニバーサルデザインまちづくり条例と届出について」

中野区「ハード・ソフト・ハートの計画的推進」

• 中野区は、「中野区ユニバーサルデザイン推進計画」において、「ハード（都市基盤・施設）」「ソフト（商品・サービス）」「ハート（理解・意識）」の3つの基本理念を明確に掲げ、施策を体系的に整理しています。
• 特に、「中野区情報発信のユニバーサルデザインガイドライン」を策定し、職員が作成する広報物やウェブサイトの分かりやすさを標準化するなど、ソフト面の取り組みに力を入れています。
• 成功要因は、ユニバーサルデザインという包括的な概念を3つの分かりやすい柱に分類し、それぞれに具体的な目標と取り組みを設定した、網羅的かつ計画的なアプローチにあります。
  • 客観的根拠：
    • 同計画では、「安全で快適な歩行空間の整備」（ハード）、「誰もが使いやすいサービスの普及」（ソフト）、「心のバリアフリーの重要性への理解」（ハート）といった具体的な目標が設定され、バランスの取れた推進が図られています。
    • （出典）中野区「中野区ユニバーサルデザイン推進計画（第2次）」

全国自治体の先進事例

福岡市「『ユニバーサル都市・福岡』のブランド化と市民啓発」

• 福岡市は、「ユニバーサル都市・福岡」を都市戦略の柱に掲げ、強力なシティプロモーションを展開しています。
• 特徴的なのは、市民や事業者を巻き込む「ハート」面の施策です。高齢者や障害のある人への具体的な接遇方法を学べる「福岡版ユニバーサルマナー検定」の実施や、小学生向けのUD副読本の作成、バス停に誰もが座りやすいベンチを設置する「おさるのベンチプロジェクト」など、ユニークで参加しやすい啓発活動を多数展開しています。
• 成功要因は、ユニバーサルデザインを行政だけの課題とせず、市民一人ひとりの「おもいやり」の実践として捉え、まちの魅力や誇り（シビックプライド）へと昇華させるブランディング戦略にあります。
  • 客観的根拠：
    • 市は、オンライン講座を含む「福岡版ユニバーサルマナー検定」を継続的に実施し、市民や事業者の意識とスキルの向上を図っています。また、SNSや地元メディアと連携した広報活動も積極的に行っています。
    • （出典）福岡市「ユニバーサル都市・福岡」

明石市「当事者参画を核としたインクルーシブなまちづくり」

• 兵庫県明石市は、「すべての人が自分らしく生きられるインクルーシブなまちづくり条例」を制定し、「当事者抜きに私たちのことを決めるな（Nothing About Us Without Us）」の理念を市政の根幹に据えています。
• 市のあらゆる計画策定や施設整備のプロセスに、多様な障害のある当事者が参画する仕組みが制度化されています。例えば、バリアフリーのまちづくり協議会では、当事者が主体となって課題の洗い出しや改善策の検討を行っています。
• 成功要因は、行政が専門家の視点だけで計画を進めるのではなく、徹底した当事者主権を貫くことで、真に利用者のニーズに即した、実効性の高い施策を実現している点にあります。
  • 客観的根拠：
    • 市の計画では、「利用者視点に立ったユーザビリティの向上」と「当事者・市民参画による計画・取組の推進」が基本目標として明確に位置づけられています。
    • （出典）明石市「すべての人が自分らしく生きられるインクルーシブなまちづくり条例」
    • (https://www.ecomo.or.jp/barrierfree/benkyo/result/pdf/20210301_002.pdf)

参考資料［エビデンス検索用］

• 内閣府
  • 「令和7年版 高齢社会白書」令和7年度
  • 「令和6年版 障害者白書」令和6年度
  • 「リーフレット『令和６年４月１日から合理的配慮の提供が義務化されました』」令和5年度
  • 「障害者差別解消法」関連資料
• 政府広報オンライン
  • 「事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化」令和6年度
• 国土交通省
  • 「公共交通機関におけるバリアフリー化の状況について」令和6年度
  • 「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律（バリアフリー法）」関連資料
  • 「『心のバリアフリー』に関するアンケート調査の結果について」令和元年度
• 首相官邸
  • 「ユニバーサルデザイン2020行動計画」関連資料
• 東京都
  • 「東京都福祉のまちづくり条例」及び同施設整備マニュアル
  • 「令和６年『敬老の日にちなんだ東京都の高齢者人口（推計）』」令和6年度
• 特別区・その他自治体
  • 世田谷区「世田谷区ユニバーサルデザイン推進条例」
  • 新宿区「新宿区ユニバーサルデザインまちづくり条例」
  • 中野区「中野区ユニバーサルデザイン推進計画」
  • 福岡市「ユニバーサル都市・福岡」関連資料
  • 明石市「すべての人が自分らしく生きられるインクルーシブなまちづくり条例」

まとめ

　東京都特別区におけるユニバーサルデザイン基本方針の策定は、人口構造の変動と新たな法的要請に対応するための喫緊の課題です。実効性のある推進には、ハード（環境整備）、ソフト（サービス）、ハート（意識）を統合した包括的なアプローチと、それを支える強力な庁内ガバナンスが不可欠です。先進事例に学び、当事者参画の理念を制度化することで、すべての区民にとって真に暮らしやすい、持続可能で包摂的な都市を実現できます。
　本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
　引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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