10 総務

コンプライアンス(法令遵守)

masashi0025

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(コンプライアンスを取り巻く環境)

  • 自治体がコンプライアンス(法令遵守)を推進する意義は、「行政に対する住民の信頼確保」と「公正で効率的な行政運営の実現」にあります。
  • 行政におけるコンプライアンスとは、単に法律や条例といった明文化されたルールを守る「法令遵守」にとどまりません。それは、法令等の奥にある社会的な要請や区民の期待を理解し、全体の奉仕者として高い倫理観に基づき誠実に行動することまでを含む、より広範な概念です(出典)大阪市総務局「コンプライアンスハンドブック〔第7版〕」令和元年度1
  • 行政事務の複雑化や社会からの厳しい視線が注がれる現代において、特に東京都特別区のような大都市自治体では、コンプライアンスの徹底は、不祥事を未然に防ぐための「リスクマネジメント」の根幹であり、健全な自治体経営に不可欠な要素となっています(出典)2

意義

住民にとっての意義

公正な行政サービスの保証
個人情報の保護と権利の擁護
  • 厳格なコンプライアンス体制は、行政が保有する膨大な個人情報を適切に管理・保護し、漏洩や不正利用から住民の権利を守るための基盤となります。
  • これは、デジタル化が進む現代において、住民が安心して行政サービスを利用するための大前提です(出典)品川区「品川区コンプライアンス行動指針」令和4年度
行政の透明性と説明責任の向上

地域社会にとっての意義

行政への信頼醸成
  • 不祥事の防止と公正な職務執行は、行政に対する地域社会全体の信頼を醸成します。
  • この信頼は、円滑な協働関係や住民参加を促し、より良い地域社会を構築するための基盤となります(出典)2
公正な経済活動の促進
持続可能な行政運営
  • 不正行為や事務処理ミスによる財政的損失を防ぎ、経営資源を効率的に活用することで、行政サービスの質を維持・向上させることができます。
  • これは、将来世代に過度な負担を残さない、持続可能な行政運営につながります(出典)3

行政にとっての意義

不祥事の未然防止とリスク管理
  • コンプライアンス体制の構築は、法的・財政的・社会的なダメージにつながる不祥事のリスクを組織的に管理し、未然に防止するための最も効果的な手段です(出典)2
職員の保護と健全な職場環境の構築
業務の効率化と質の向上
  • 適正な事務手続きやルールを標準化し遵守することで、事務処理ミスが減少し、業務の効率化が図られます。
  • これにより、職員はより付加価値の高い、質の高い住民サービスの提供に注力できるようになります(出典)江東区「江東区コンプライアンス基本方針」令和6年度

(参考)歴史・経過

2000年代初頭
  • 牛肉偽装事件や自動車のリコール隠しといった企業不祥事が社会問題化し、コンプライアンスへの関心が高まります。
  • 2004年(平成16年)には、組織内部からの通報者を解雇等の不利益な取扱いから保護する「公益通報者保護法」が制定され、2006年(平成18年)に施行されました。これにより、行政機関を含む全ての事業者で内部通報制度の法的基盤が整備されました(出典)4
2000年代後半
  • 自治体レベルでも不祥事への対応として、独自のコンプライアンス推進体制の構築が進みます。
  • 東京都特別区では、2008年(平成20年)に中野区が「中野区職員倫理条例」を制定するなど、職員の倫理規範を条例で定める動きが広がりました(出典)中野区「中野区職員倫理条例の概要」令和5年度6
2010年代
2020年(令和2年)
  • 公益通報者保護法が制定後初めて大幅に改正され、保護対象が退職後1年以内の者や役員にまで拡大されました。
  • また、事業者(常時使用する労働者数が300人を超える場合)に対して、内部通報に適切に対応するための体制整備が義務付けられ、コンプライアンス体制の水準が一段と引き上げられました(出典)4
2020年代前半
2025年(令和7年)
  • 公益通報者保護法が再度改正され、通報者の保護措置がさらに強化される見込みです(2026年中に施行予定)。
  • また、東京都が全国に先駆けて「カスタマーハラスメント防止条例」を制定(令和7年4月施行)するなど、新たなリスクに対応するための法整備も進んでいます(出典)8

コンプライアンスに関する現状データ

地方公務員の懲戒処分者数の推移
  • 全国の地方公務員の懲戒処分者数は、過去10年間、年間4,000人前後で推移しています。しかし、処分の種類別に見ると、最も重い「免職」が増加傾向にあります。
  • 一方で、心身の故障等を理由とする分限処分(休職)者数は、過去10年間で約12,600人増加しており、特にメンタルヘルス不調による長期休職者の増加が、職場環境における深刻な課題であることを示唆しています。
国家公務員の懲戒処分状況(令和6年)
  • 令和6年(1月〜12月)に懲戒処分を受けた一般職国家公務員は285人で、前年の240人から45人増加しました。在職者数に対する処分者の割合は0.09%です。
  • 処分事由で最も多かったのは「公務外非行関係」の105人(前年比28人増)、次いで「一般服務関係」が91人(同20人増)でした。
  • 特に、セクシュアル・ハラスメントを事由に含む処分は46人(同16人増)、パワー・ハラスメントを事由に含む処分は18人(同7人増)と、いずれも大幅に増加しており、ハラスメント問題の深刻化がうかがえます。
  • 府省庁別では、法務省が44人、国税庁が43人などとなっています。
会計検査院による不当事項の指摘
  • 会計検査院が毎年公表する決算検査報告では、地方自治体を含む国や関連機関の会計経理において、多数の不当事項が指摘されています。
  • 令和5年度決算検査報告における地方自治体関連の指摘事例には、以下のようなものがあります。
    • 道路メンテナンス事業における橋脚の耐震補強設計が不適切であったもの(出典)13
    • ICT活用工事の積算において、経費算定の係数を誤って適用し、工事費が過大に積算されていたもの(出典)13
    • 生活保護費の算定において、収入認定や加算区分の適用を誤り、扶助費の支給額が過大または過少になっていたもの(出典)14
情報公開・個人情報保護制度の運用状況
行政への信頼に関する意識
  • 行政への信頼度を直接的かつ経年で測定した最新の全国調査は限定的ですが、関連する調査からは国民の意識をうかがい知ることができます。
  • 内閣府の「社会意識に関する世論調査」(令和6年10月調査)によれば、「社会のために役立ちたい」と考える国民は63.6%に上り、社会貢献への意欲の高さが示されています。この意識は、公正で信頼できる行政への期待の裏返しと捉えることができます。
  • 一方で、過去の調査では、多くの国民が所得水準や医療・福祉サービスにおいて大都市と地方との格差が拡大していると感じており、これは行政サービスの公平性に対する潜在的な不信感につながる可能性があります。

課題

住民の課題

公正な行政サービス提供への懸念
  • 贈収賄や官製談合といった不祥事は、税金が適正に使われていないという直接的な被害感だけでなく、行政の意思決定が一部の利害関係者のために歪められているのではないかという根深い不信感を住民に抱かせます。
個人情報の漏洩・不適切利用リスク
  • 行政手続きのデジタル化が急速に進む一方で、職員による意図的な情報漏洩や、サイバー攻撃による大規模な個人情報流出のリスクが高まっています。一度事故が発生すれば、行政の信頼は回復困難なダメージを受けます。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 住民が行政のデジタルサービスの利用をためらうようになり、行政DXの推進が阻害され、効率化の恩恵を受けられなくなります。
行政プロセスの不透明性
  • 公共事業の業者選定や人事異動など、行政の意思決定プロセスが住民から見て不透明である場合、疑惑や不信の温床となります。情報公開制度があっても、手続きの煩雑さや非公開決定の多さが、実質的な透明性の壁となることがあります。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 根拠のない噂や誤情報が広まりやすくなり、建設的な対話を通じた合意形成が著しく困難になります。

地域社会の課題

不祥事による行政への信頼失墜
公正な競争の阻害と地域経済への悪影響
  • 官製談合や不適切な随意契約は、公正な市場競争を歪め、真面目に努力している事業者が不利益を被る結果を招きます。結果として、税金が高品質なサービスや物品に効率的に使われず、地域経済全体に悪影響を及ぼします。

行政の課題

職員のコンプライアンス意識のばらつきと知識不足
  • コンプライアンスが一部の担当部署の仕事と捉えられ、一般職員、特に若手職員の間で意識や知識にばらつきが見られます。日常業務に潜む倫理的なリスクに対する判断力が不足しているケースも少なくありません。
不祥事を報告・相談しにくい組織風土
  • 公益通報制度が整備されていても、「通報しても意味がない」「通報すれば報復される」といった懸念から、多くの職員が不正や問題を見て見ぬふりをしてしまう傾向があります。上意下達で風通しの悪い職場環境がその最大の要因です。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 問題が内部で解決されずに隠蔽され続け、最終的に外部からの指摘で発覚する「炎上型」の不祥事となり、組織へのダメージが甚大になります。
不当要求行為・外部からの圧力への対応困難
新たなリスク(カスタマーハラスメント等)への対応の遅れ
  • 暴言や脅迫、過度な要求といったカスタマーハラスメント(カスハラ)は、職員の心身の健康を害し、行政サービスの質を低下させる新たなコンプライアンス上のリスクです。しかし、多くの自治体では、これに組織として対応するための明確な方針や体制が整備されていません。
    • 客観的根拠:
      • 東京都が令和7年4月から「カスタマーハラスメント防止条例」を施行することは、この問題が個人の対応能力を超えた組織的な課題であるとの認識が広がっていることを示しています。厚生労働省の調査でも、事業者の23.2%がカスハラに関する相談が増加していると回答しており、行政機関も例外ではありません。
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、一部署の課題解決にとどまらず、全庁的な意識改革や複数のリスク低減に繋がる施策を高く評価します。
  • 実現可能性
    • 現行の法制度や予算、人員体制の中で、大きな障壁なく着手・実行できる施策を優先します。既存の仕組みを改善・活用できる施策は、優先度が高くなります。
  • 費用対効果
    • 投じる資源(予算、人員、時間)に対し、不祥事防止による損失回避や業務効率化といった効果が大きく見込める施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性
    • 特定の職員層だけでなく、全ての職員に適用され、一過性で終わらずに組織文化として定着・持続する可能性が高い施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無
    • 法改正への対応や、他の自治体での成功事例、各種調査結果など、客観的なエビデンスに基づいて効果が期待できる施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • コンプライアンス推進は、「体制の再構築」「意識の醸成」「文化の変革」という3つの視点から、統合的に取り組む必要があります。これらは相互に関連しており、どれか一つが欠けても実効性は上がりません。
  • 優先度【高】:支援策① 実効性のある内部通報・相談体制の再構築
    • これは全ての取り組みの土台です。問題が表面化する安全なルートがなければ、リスクの早期発見は不可能です。度重なる法改正が示す通り、これは法的にも倫理的にも最優先で取り組むべき責務です。
  • 優先度【中】:支援策② 全職員を対象とした実践的コンプライアンス研修の体系化
    • これは、構築した体制やルールを全職員に浸透させ、血肉化させるための最も重要な手段です。職員一人ひとりのリスク判断能力を高めることで、組織全体の防御力を向上させます。
  • 優先度【低】:支援策③ 透明性確保と外部からの圧力に対応する仕組みの強化
    • これは、重大な不祥事の直接的な引き金となりうる、行政と外部との高リスクな接点を管理する施策です。強固な内部通報制度と、教育された職員という基盤の上に構築することで、最大の効果を発揮します。

各支援策の詳細

支援策①:実効性のある内部通報・相談体制の再構築

目的
  • 職員が、人事上の不利益や職場での嫌がらせといった報復を一切恐れることなく、不正行為や倫理的な懸念を報告・相談できる環境を確立します。
  • 問題を初期段階で把握し、組織として迅速かつ適切に対応することで、重大な不祥事への発展を未然に防ぎます。
    • 客観的根拠
      • 令和7年中に施行予定の改正公益通報者保護法では、事業者の体制整備義務がさらに強化される見込みであり、法的な要請に応えるためにも現行制度の抜本的な見直しは不可欠です。
        • (出典)4
主な取組①:通報窓口の独立性と専門性の確保
主な取組②:通報者保護の徹底と周知
  • 通報者の氏名等が特定され得る情報は、本人の明確な同意がない限り絶対に開示しないことを原則とします。
  • 通報者の探索(いわゆる「犯人捜し」)を明確な服務規律違反として禁止し、違反者には懲戒処分を科すことを就業規則等に明記します。
  • 通報したことを理由としたいかなる不利益な取扱い(解雇、降格、希望しない異動、ハラスメント等)も厳禁であることを、研修や庁内報を通じて全職員に繰り返し周知します。
    • 客観的根拠
      • 改正公益通報者保護法の中核的な目的は、通報者が安心して通報できる環境を確保するための保護強化です。中野区の職員倫理条例でも、通報者の保護と不利益取扱いの禁止が条文で明確に定められています。
主な取組③:調査プロセスの透明化とフィードバックの義務化
  • 通報を受理してから、調査、是正措置、処分に至るまでの標準的なプロセスと目標処理期間を定め、職員に公開します。
  • 調査の進捗や結果、講じられた是正措置の内容について、守秘義務に最大限配慮しつつ、通報者本人に対して必ずフィードバックを行うことを制度として義務付けます。これにより、「通報しても何も変わらない」という不信感を払拭します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 懲戒処分に至る重大不祥事(贈収賄、公金横領、官製談合等)の発生件数:ゼロ
      • データ取得方法:人事部門が管理する懲戒処分記録
  • KSI(成功要因指標)
    • 内部通報制度(外部窓口含む)の職員認知度:95%以上
      • データ取得方法:年1回実施する全職員対象の無記名意識調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 通報後に何らかの是正措置・改善指導が実施された案件の割合:100%
      • データ取得方法:コンプライアンス担当部署の案件管理台帳
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 内部通報・相談の年間受付件数
      • データ取得方法:内部・外部通報窓口の受付記録(※件数の増加は、制度への信頼が高まっている証左として、ポジティブな指標と評価する)

支援策②:全職員を対象とした実践的コンプライアンス研修の体系化

目的
  • 全ての職員のコンプライアンスに関する知識レベルと倫理観を高い水準で平準化し、日常業務に潜むリスクを自律的に判断・回避できる能力を養います。
  • 役職や職務内容に応じて直面しやすい具体的なリスクを理解させ、知識の習得にとどまらず、実際の行動変容を促します。
主な取組①:階層別・職務別の研修プログラム開発
  • 新規採用職員向け:公務員としての服務の根本基準、守秘義務、個人情報保護、情報セキュリティの基礎を徹底する「基本のキ」研修。
  • 若手・中堅職員向け:ハラスメント(加害者にも被害者にもならない)、不当要求行為への初期対応、SNSの私的利用のリスクなど、身近な事例を中心としたケーススタディ研修。
  • 管理監督職向け:部下からの相談対応(パワハラ、メンタルヘルス)、リスクの早期発見と報告義務、風通しの良い職場環境を構築する責務に関するマネジメント研修。
  • ハイリスク部署(契約・財産管理・許認可等)向け:関連法令(会計法、入札契約適正化法等)の改正動向や、利害関係者との接触ルールに関するより専門的で深掘りした研修。
主な取組②:ケーススタディと参加型研修の導入
  • 過去に実際に特別区や他の自治体で発生した不祥事、あるいは判断に迷うグレーゾーンの事例を教材として用います。
  • 講義形式だけでなく、グループディスカッションやロールプレイングを取り入れ、「もし自分がこの立場だったらどう判断し、どう行動するか」を考えさせることで、当事者意識と実践的な対応能力を醸成します。
主な取組③:eラーニングの活用と理解度テストの義務化
  • 全職員が受講必須の基礎的なコンプライアンス研修はeラーニングで提供し、時間や場所を選ばずに学習できる機会を確保します。
  • 研修の最後には、内容の理解度を確認するためのテストを実施し、一定の点数以上(例:90点以上)での合格を義務付けます。これにより、研修の「受けっぱなし」を防ぎ、知識の定着を確実にします。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 職員のコンプライアンス違反を直接の原因とする懲戒処分件数:前年度比30%削減
      • データ取得方法:人事部門が管理する懲戒処分記録
  • KSI(成功要因指標)
    • 研修後の理解度テストにおける全職員の平均点:90点以上
      • データ取得方法:eラーニングシステムおよび研修管理システムの学習記録
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 職員意識調査における「コンプライアンスに関する疑問や懸念を、気兼ねなく上司や同僚に相談できる」と回答した職員の割合:80%以上
      • データ取得方法:年1回実施する全職員対象の無記名意識調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 階層別・職務別研修の対象職員受講率:100%
      • データ取得方法:人事部門の研修管理記録

支援策③:透明性確保と外部からの圧力に対応する仕組みの強化

目的
  • 議員や地域の有力者、事業者等からの公正な職務執行を妨げるような働きかけを組織的に牽制し、職員が法令やルールに則った対応を貫けるよう保護します。
  • 行政運営のプロセスを可能な限り「見える化」し、住民や社会による監視機能を高めることで、不正が発生しにくい環境を構築します。
主な取組①:「特定要求行為」の記録・報告・公表制度の導入
  • 「法令に違反する行為を求める」「正当な理由なく特定の者に有利または不利な扱いを求める」等の行為を「特定要求行為」として明確に定義します。
  • 職員が特定要求行為を受けたと認識した場合、日時、相手方の氏名・所属、要求内容、対応等を所定の様式で記録し、速やかに所属長およびコンプライアンス担当部署に報告することを義務付けます。
  • 報告された記録の概要(個人情報等に配慮した形)を、四半期ごとなど定期的に区のウェブサイトで公表します。これにより、不当な働きかけを行うこと自体にリスクが伴うことを周知させ、抑止力とします。
主な取組②:利害関係者との接触ルールの明確化と徹底
  • 許認可、契約、補助金交付、立入検査など、職務上密接に関わる「利害関係者」の定義を、職務内容に応じて具体的に定めます。
  • 利害関係者からの金品の授受や供応接待の禁止を原則としつつ、例外的に許容される行為(例:多数が出席する会議での簡素な弁当の提供、自己負担での会食等)の基準を具体的に示します。特に、自己負担であっても利害関係者と会食等を行う場合は、所属長への事前届出を義務化するなど、手続きを厳格化します。
    • 客観的根拠
      • 福岡市の「職員倫理行動規準」は、利害関係者の定義から、禁止行為、例外規定、届出様式に至るまで極めて詳細に規定しており、職員が判断に迷わないための優れたモデルケースとなります。
主な取組③:カスタマーハラスメントへの組織的対応体制の構築
  • 東京都のカスハラ防止条例(令和7年4月施行)の趣旨を踏まえ、区独自の対応指針(ガイドライン)を策定します。
  • 暴言、脅迫、威嚇、長時間の拘束、土下座の要求といったハラスメント行為の具体例を明示し、職員向けの対応マニュアル(初期対応、記録の取り方、上司への報告、複数人での対応への切り替え、警察への通報基準等)を作成し、全職場に配布します。
  • 被害を受けた職員が一人で抱え込まないよう、人事部門や保健師等が対応する専門の相談窓口を設置し、必要なメンタルヘルスケアや法的な支援を提供できる体制を整えます。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 住民監査請求において、違法・不当な財務会計行為が認定される「認容・勧告」件数:ゼロ
      • データ取得方法:監査委員事務局が公表する住民監査請求の監査結果
  • KSI(成功要因指標)
    • 特定要求行為の年間記録・報告件数
      • データ取得方法:コンプライアンス担当部署の受付記録(※制度導入初期は、隠れていた事案が顕在化するため、件数の増加を制度が機能している証としてポジティブに評価する)
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 職員意識調査における「不当な圧力を受けた際に、組織が自分を守ってくれると信じている」と回答した職員の割合:85%以上
      • データ取得方法:年1回実施する全職員対象の無記名意識調査
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 特定要求行為の記録概要の公表回数:年4回(四半期ごと)
      • データ取得方法:区ウェブサイトの更新記録
    • カスタマーハラスメント対応マニュアルの全職場への配布率:100%
      • データ取得方法:総務部門による配布管理記録

先進事例

東京都特別区の先進事例

千代田区「官製談合事件後の再発防止策と透明性確保」

  • 令和6年に発覚した官製談合事件を深刻に受け止め、極めて迅速かつ包括的な再発防止策を策定・公表しています。特に先進的なのは、事件の一因とされた外部からの圧力に対応するため、「議員からの要望・申出等の記録の公表」に踏み切った点です。これは、行政運営の透明性を抜本的に高め、不正の抑止力とする強い意志の表れであり、全国の自治体にとっても大きな参考となる取り組みです。また、公正取引委員会の職員を講師に招いた専門研修を実施するなど、研修内容の高度化にも注力しています。
    • 客観的根拠
      • 千代田区「千代田区入札不正行為等再発防止検討報告書」令和6年度、「議員からの要望・申出等の記録の公表」令和6年度
        • (出典)16

江東区「不祥事を契機とした全庁的なコンプライアンス推進体制の構築」

  • 区議会議員への情報漏洩等を伴う贈収賄事件を受け、令和6年に「江東区コンプライアンス基本方針」を策定しました。区長を最高責任者とする推進委員会を中核に、全庁的な推進体制を構築。単なる法令遵守にとどまらず、「風通しの良い職場づくり」や「縦割り行政の弊害解消」といった組織文化の改革にまで踏み込んでいる点が特徴です。職員が誇りと自信を持って働ける組織を目指すという、ポジティブな視点からコンプライアンスを捉え直している点が先進的です。
    • 客観的根拠
      • 江東区「江東区コンプライアンス基本方針」令和6年度
        • (出典)17

中野区「職員倫理条例に基づく包括的なコンプライアンスの推進」

  • 平成20年という比較的早い段階で「中野区職員倫理条例」を制定し、コンプライアンス推進の礎を築いてきました。この条例では、法令遵守の基本姿勢に加え、「公益通報制度」や「不当要求行為への対応」が明確に位置付けられています。特に不当要求行為に対して、職員がとるべき具体的な行動として「拒否・記録・複数対応」を定めており、職員が現場で直面する困難な状況に対応するための実践的な指針となっている点が評価できます。
    • 客観的根拠
      • 中野区「中野区職員倫理条例」平成20年度
        • (出典)6

全国自治体の先進事例

福岡市「利害関係者との接触に関する具体的かつ厳格なルール」

  • 福岡市は、「福岡市職員倫理行動規程」において、職員と利害関係者との接触に関するルールを極めて具体的に定めています。職務内容に応じて「利害関係者」の定義を細かく設定し、金品の授受や供応接待などの禁止行為を詳細に列挙。一方で、自己負担での会食を事前届出制とするなど、現実的な例外規定も設けることで、職員が判断に迷うことなく、適切に行動できるための詳細な羅針盤を提供しています。この規程の具体性と網羅性は、全国の自治体にとって優れたモデルケースとなります。
    • 客観的根拠
      • 福岡市「福岡市職員倫理行動規程」平成14年度
        • (出典)15

大阪市「入札契約事務に特化したコンプライアンス計画」

  • 大阪市は、過去に相次いだ不祥事を教訓に、最も不正のリスクが高いとされる入札契約分野に特化した「入札契約事務コンプライアンス・アクションプラン」を平成27年度から策定しています。このプランの最大の特徴は、PDCAサイクルを導入し、毎年度その実施状況を検証し、結果を踏まえて次年度の計画を更新している点です。談合情報の分析、職員研修、不正が起きにくい制度設計などを組み合わせたリスクベースのアプローチは、継続的な改善を目指す上で非常に効果的です。
    • 客観的根拠
      • 大阪市「入札契約事務コンプライアンス・アクションプラン」
        • (出典)18

参考資料[エビデンス検索用]

まとめ

 東京都特別区におけるコンプライアンス推進は、単なる法令遵守を超え、区民の信頼を確保し、公正で持続可能な行政運営を実現するための最重要の経営課題です。本報告書で提言した、実効性ある内部通報制度の再構築、実践的な研修の体系化、透明性確保と外部圧力に対応する仕組みの強化を三本柱として、全庁的な取り組みを進めることが、不祥事の再発防止と健全な組織文化の醸成に不可欠です。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
記事URLをコピーしました