インクルーシブな文化芸術環境の推進

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要（インクルーシブな文化芸術環境を取り巻く環境）

• 自治体がインクルーシブな文化芸術環境の推進を行う意義は、第一に、障害の有無や国籍、年齢に関わらず全ての住民のウェルビーイング（QOL）と自己実現を保障することにあります。第二に、多様な価値観が交差・融合する土壌を育み、創造的で活力ある共生社会を構築することにあります。
  • （出典）LIFULL「インクルーシブアートとは？多様性を認め合う社会の実現へ」2024年
  • （出典）国立国会図書館「障害者による文化芸術活動の意義と施策」平成30年
  • （出典）大和総研「緩やかに浸透 障害者文化芸術活動」令和5年
• この取り組みは、単なる福祉施策や文化振興に留まりません。それは、都市の魅力を高め、社会的な結束を強化し、新たな価値創造の源泉となる、未来への戦略的投資です。障害者による文化芸術活動の推進に関する法律や改正障害者差別解消法が示す通り、文化芸術の享受と創造は、全ての人の生まれながらの権利であり、その環境整備は行政の重要な責務です。
  • （出典）e-Gov法令検索「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」平成30年
  • （出典）厚生労働省「第２期「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」の策定に向けた検討会（第３回）資料」
  • （出典）文化庁「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画（第２期）」の概要」令和5年

意義

住民にとっての意義

• QOL（生活の質）の向上と自己実現
  • 文化芸術活動への参加は、生きがいや趣味の充実、自己表現の機会を提供し、精神的な充足感をもたらします。障害当事者への調査では88.1%が文化芸術活動に「興味や関心がある」と回答しており、これはQOL向上への強い潜在的ニーズを示しています。
    • （出典）厚生労働省「障害者による文化芸術活動の幅広い活動を支援するための現状調査と研究 報告書」令和3年
    • （出典）国立国会図書館「障害者による文化芸術活動の意義と施策」平成30年
• 社会的孤立の防止とコミュニケーションの促進
  • 文化芸術活動は、障害の有無に関わらず人々が出会う場を創出し、他者との交流や相互理解を促すコミュニケーションツールとして機能します。芸術家派遣や施設間交流は、新たな発想や価値を生むきっかけとなります。
    • （出典）文部科学省「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画（第１期）」平成31年
    • （出典）文化庁「文化芸術による共生社会の実現に向けた基盤整備事業」令和3年

地域社会にとっての意義

• 共生社会の実現と多様性の尊重
  • アートを通じて異なる背景を持つ人々が協働することで、相互理解が深まり、偏見の払拭に繋がります。これは、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合うインクルーシブな社会の土台を築く上で不可欠です。
    • （出典）LIFULL「インクルーシブアートとは？多様性を認め合う社会の実現へ」2024年
    • （出典）国立国会図書館「障害者による文化芸術活動の意義と施策」平成30年
    • （出典）大和総研「緩やかに浸透 障害者文化芸術活動」令和5年
• 地域コミュニティの活性化と新たな価値創造
  • 文化芸術活動は、地域の担い手を増やし、イベント開催等を通じて地域に新たな人の流れと活気をもたらします。障害者アートなどが新たな文化資源となり、地域ブランドの向上や経済的な好循環を生み出す可能性も秘めています。
    • （出典）文部科学省「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画（第１期）」平成31年
    • （出典）大和総研「緩やかに浸透 障害者文化芸術活動」令和5年

行政にとっての意義

• 複合的な社会課題へのアプローチ
  • インクルーシブな文化芸術施策は、福祉、教育、まちづくり、産業振興など、複数の政策分野にまたがる課題（高齢化、孤立、多文化共生など）に横断的に貢献します。これは、縦割り行政の弊害を乗り越え、複合的な政策効果を生む、費用対効果の高い投資となり得ます。
    • （出典）文化庁「文化芸術の振興に関する基本的な方針（第５次）の策定について」令和4年
    • （出典）文化庁「地方公共団体の文化行政に関する実態調査」令和4年
• 法令遵守と責務の遂行
  • 「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」や、合理的配慮の提供を義務化する改正「障害者差別解消法」への対応は、基礎自治体の法的責務です。積極的な施策推進は、これらの責務を実質的に果たすことに繋がります。
    • （出典）厚生労働省「第２期「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」の策定に向けた検討会（第３回）資料」
    • （出典）全国公立文化施設協会「改正障害者差別解消法と合理的配慮（前編）」令和5年
    • （出典）文化庁「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画（第２期）」の概要」令和5年

（参考）歴史・経過

• 平安～江戸時代
  • 日本でも、視覚障害を持つ琵琶法師や検校など、障害のある人々が芸能の担い手として活躍した歴史があります。
    • （出典）九州大学大学院芸術工学研究院「障害とアート」
• 20世紀初頭～
  • 欧米で精神障害者の作品が「アール・ブリュット」として注目され、芸術の一分野として研究が始まります。
    • （出典）厚生労働省「『障害者アート』の推進に関する意識啓発等事業報告書」平成24年
• 1980年代
  • 国内でろう者による演劇祭が開催されるなど、障害当事者による主体的な文化活動が活発化します。
    • （出典）障害保健福祉研究情報システム「世界のろう演劇の潮流と日本の現状」
• 1990年代
  • 多文化主義を背景に、NPO法人たんぽぽの家が「エイブル・アート」を提唱し、障害者芸術の新たな価値を問い直す運動が始まります。
    • （出典）九州大学大学院芸術工学研究院「障害とアート」
• 2000年代～
  • 文部科学省・厚生労働省による懇談会が設置され、国の施策として障害者アートの推進が本格的に議論され始めます。
    • （出典）障害保健福祉研究情報システム「障害のある人の芸術活動の現在」
• 平成29年（2017年）
  • 「全国障害者芸術・文化祭」が「国民文化祭」と一体的に開催されるようになり、障害者文化芸術が国の主要な文化政策の一つとして位置づけられます。
    • （出典）文化庁「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画（第２期）」令和5年
• 平成30年（2018年）
  • 「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が施行され、国および地方公共団体の責務が明記されます。
    • （出典）Plus hearty「障がい者文化芸術活動推進法とは？」
    • （出典）大和総研「緩やかに浸透 障害者文化芸術活動」令和5年
• 令和5年（2023年）
  • 国の「第2期基本計画」が策定。東京2020大会のレガシーを継承し、2025年大阪・関西万博を見据えた取り組みの推進が掲げられます。
    • （出典）文化庁「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画（第２期）」の概要」令和5年
    • （出典）厚生労働省「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律・基本的な計画について」
• 令和6年（2024年）
  • 改正「障害者差別解消法」が施行され、民間事業者による「合理的配慮の提供」が義務化。文化施設等における対応の重要性が一層高まります。
    • （出典）厚生労働省「第２期「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」の策定に向けた検討会（第３回）資料」
    • （出典）全国公立文化施設協会「改正障害者差別解消法と合理的配慮（前編）」令和5年

インクルーシブな文化芸術環境に関する現状データ

• 1. 多様な住民構成の進展（東京都特別区）
  • 高齢化の進行：特別区の高齢化率は21%を超え、「超高齢社会」に突入しています。全国平均（29.1%）や東京都平均（22.7%）よりは低いものの、生産年齢人口が減少する一方で高齢者人口は増加傾向にあります。特に75歳以上の後期高齢者人口の増加が著しく、令和4年には前年比で5.4万人増加し、過去最多の181.5万人となりました。
    • （出典）特別区長会事務局「数字でみる特別区（令和7年版）」令和7年
    • (https://fp-research.co.jp/archives/718)
    • （出典）東京都総務局統計部「東京都の高齢者人口（推計）」令和4年
  • 障害者数の状況：区内の障害者手帳所持者数は増加傾向にあります。例えば墨田区では、特に軽度の知的障害者の増加率が高いことが報告されています。東京都全体の民間企業における雇用障害者数も過去最高を更新し続けており、令和5年には約23.9万人（対前年比4.8%増）となっています。
    • （出典）墨田区「墨田区障害者行動計画（第３期）」
    • （出典）厚生労働省東京労働局「令和５年 障害者雇用状況の集計結果」令和5年
  • 外国人住民の急増：コロナ禍で一時減少したものの、特別区の外国人人口は再び急増し、令和6年には57.4万人に達しています。これはコロナ前の2018年比で1.26倍の数字です。東京都は全国の在留外国人の約2割（70.2万人、令和6年6月末時点）が集中する最大の集積地であり、多様な文化背景を持つ住民との共生が重要な政策課題となっています。
    • （出典）行政書士松遠事務所「東京23区の外国人人口推移」令和6年
    • （出典）出入国在留管理庁「令和６年６月末現在における在留外国人数について」令和6年
• 2. 住民の参加意欲と実態のギャップ
  • 高い関心、低い参加率：障害当事者への調査では、88.1%が文化芸術活動に「興味や関心がある」と回答しています。この高い関心は、文化芸術活動が生活の質を向上させる上で重要な役割を担うことへの期待の表れです。しかし、過去1年間に実際に鑑賞活動をした割合は44.6%、創作活動をした割合は29.3%に留まります。この「関心」と「参加」の間に存在する40ポイント以上の大きなギャップは、個人の意欲の問題ではなく、機会を提供する側の環境整備に課題があることを強く示唆しています。政策の焦点は、この潜在的な需要を掘り起こし、具体的な参加行動へと繋げるための「橋渡し」をすることにあるべきです。
    • （出典）厚生労働省「障害者による文化芸術活動の幅広い活動を支援するための現状調査と研究 報告書」令和3年
    • （出典）文化庁「障害者の文化芸術の鑑賞活動及び創作活動実態調査」平成29年
  • 参加しない理由：鑑賞しなかった理由として「関心がないから」（31.9%）が最多ですが、次いで「近くで公演や展覧会などをやっていないから」（15.3%）、「時間がないから」、「経済的な余裕がないから」が挙げられています。創作活動をしなかった理由では「関心がないから」（64.3%）が突出していますが、これも情報不足や機会不足が結果的に「関心がない」という諦めに近い回答に繋がっている可能性を考慮する必要があります。
    • （出典）文化庁「障害者の文化芸術の鑑賞活動及び創作活動実態調査」平成29年
    • （出典）文化庁「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画（第２期）」令和5年
• 3. 文化施設・団体の受け入れ体制
  • 法律・計画の認知度不足：全国の劇場・音楽堂等のうち、障害者文化芸術推進法が職員間で周知されている施設は54%に留まります。文化芸術団体においても、関連法規の周知を「行っている」割合は3割未満であり、令和6年4月に合理的配慮の提供が義務化された改正障害者差別解消法についても、周知は1割程度と極めて低い水準です。
    • （出典）福祉新聞「障害者文化芸術推進法の周知進まず 文化庁が劇場、音楽堂を調査」2025年
    • （出典）文化庁「文化芸術団体における障害者による文化芸術活動の推進に関する調査研究 報告書」令和5年
  • ハード面の整備とソフト面の遅れ：多機能トイレや車いす席などの物理的なバリアフリー設備（ハードウェア）は98%の施設が設置している一方、筆談ボードや音声補聴システムといった鑑賞を直接支援するための機材（ソフトウェア）の整備は48%に留まります。これは、施設には入れても、中での体験が保障されていない「見えないバリア」が存在することを示しています。投資の重点を、コストのかかる建築改修から、より費用対効果の高い人材育成やプログラム開発といったソフト面にシフトさせる必要性を示唆しています。
    • （出典）福祉新聞「障害者文化芸術推進法の周知進まず 文化庁が劇場、音楽堂を調査」2025年
  • 人材育成の遅れ：障害に関する職員研修を実施している文化施設は32.2%、文化芸術団体では16.5%と低水準です。障害者からの意見聴取を行っている施設も39.0%に過ぎず、当事者のニーズが企画運営に反映されにくい構造があります。
    • （出典）文化庁「令和５年度 障害者による文化芸術活動の推進に向けた全国の美術館等における実態調査（速報値）」令和6年
    • （出典）文化庁「文化芸術団体における障害者による文化芸術活動の推進に関する調査研究 報告書」令和5年

課題

住民の課題

• 1. 情報へのアクセス障壁
  • 文化芸術活動に関する情報が、それを最も必要としている障害当事者やその家族、外国人住民などに十分に届いていません。ウェブサイトがアクセシビリティに対応していなかったり、多言語化されていなかったりするため、そもそも情報を得ること自体が困難な状況です。
    • 客観的根拠：
      • 障害者による文化芸術活動の推進を阻む要因として、「情報が十分に届いていないこと」が障害当事者の64.8%、障害福祉施設の59.3%から最も多く指摘されています。
      • （出典）厚生労働省「障害者による文化芸術活動の幅広い活動を支援するための現状調査と研究 報告書」令和3年
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 参加意欲のある住民が機会を逸し続け、社会参加の機会損失と文化的な格差が固定化・拡大する。
• 2. 物理的・心理的・経済的障壁
  • 施設のバリアフリー未対応や交通の便の悪さといった物理的障壁に加え、「入場料が高い」「一緒に行く人がいない」といった経済的・社会的な障壁が存在します。また、障害の特性に応じた配慮（音声ガイド、字幕、静かな環境等）がなければ、そもそも鑑賞や参加が困難な場合が多く、周囲に迷惑をかけるのではないかという心理的負担も大きな壁となっています。
    • 客観的根拠：
      • 文化活動をしなかった理由として「経済的な余裕がないから」（12.8%）、「身近で関心がある活動が行われていないから」（10.0%）が挙げられています。また、美術館に行きやすくなる要因として「入場料が安くなる」が50.5%と最多です。
      • （出典）文化庁「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画（第２期）」令和5年
      • （出典）文化庁「文化に関する世論調査」令和2年
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 文化芸術が一部の健常者や経済的に余裕のある層だけのものとなり、社会の分断を助長する。

地域社会の課題

• 1. 専門人材（担い手）の不足と偏在
  • 障害者の文化芸術活動を企画・支援できる専門的な知識やスキルを持つコーディネーターやファシリテーターが絶対的に不足しています。特に、福祉と芸術の両方の知見を併せ持つ人材は極めて稀であり、活動の質の向上や持続的な展開の大きな足かせとなっています。
    • 客観的根拠：
      • 文化芸術団体が障害者を対象とした事業に取り組みにくい理由として「専門的なノウハウ・スキルを持つ人材の不足」や「障害者への応対ができるスタッフの不足」が大きな要因として挙げられています。また、地方自治体の文化政策推進の課題としても「人材・組織・体制」が上位に挙げられています。
      • （出典）文化庁「文化芸術団体における障害者による文化芸術活動の推進に関する調査研究 報告書」令和5年
      • （出典）文化庁「地方公共団体の文化行政に関する実態調査」令和4年
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 活動が単発的・表層的なものに終わり、参加者の満足度も低迷し、持続的な発展が見込めなくなる。
• 2. 分野横断的な連携体制の欠如
  • 文化施設、福祉施設、教育機関、NPO、企業といった多様な主体間の連携が極めて不十分です。各々が持つリソース（場所、人、情報、ノウハウ）が共有されず、地域全体として非効率な状態に陥っています。
    • 客観的根拠：
      • 文化芸術活動を実施する障害福祉施設のうち、「協力してもらう機関はない」と回答した施設が20.4%も存在します。また、公的な支援拠点である「障害者芸術文化活動支援センター」と連携している施設はわずか3.8%に留まり、支援のハブが現場のニーズと結びついていない実態が浮き彫りになっています。
      • （出典）厚生労働省「障害者による文化芸術活動の幅広い活動を支援するための現状調査と研究 報告書」令和3年
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 各主体が孤立したまま活動を続け、リソースが有効活用されず、地域全体の文化的な活力が削がれる。

行政の課題

• 1. 縦割り行政による施策の分断
  • 文化政策は文化部局、障害者福祉は福祉部局、生涯学習は教育部局と、所管が分かれているため、総合的・一体的な施策展開が困難になっています。これにより、施策の重複や隙間が生じ、住民は複雑な制度の狭間で必要な支援を受けにくい状況にあります。
    • 客観的根拠：
      • 地方公共団体の文化政策推進における課題として、「文化以外の行政分野との連携」が上位に挙げられており、多くの自治体が部局間の連携に困難を感じていることが示されています。
      • （出典）文化庁「地方公共団体の文化行政に関する実態調査」令和4年
      • （出典）一般財団法人地域社会振興財団「文化施設の指定管理者制度の導入状況等に関する調査研究報告書」平成30年
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 税金が非効率に使われると共に、住民は複雑な制度の狭間で支援を受けにくくなり、行政への信頼が低下する。
• 2. 成果指標（KPI）の設定と評価の困難さ
  • 文化芸術活動の成果を、イベントの参加者数や開催回数といったアウトプット指標でしか評価しにくい現状があります。QOLの向上や共生社会の実現といった本質的な成果（アウトカム）を測定・評価する手法が確立されていないため、事業の有効性を客観的に示し、継続的な予算を確保することが難しくなっています。
    • 客観的根拠：
      • 国の普及支援事業の実施団体から「事業の結果（アウトプット）や成果（アウトカム）の測定や評価が難しい」という意見が多く聞かれており、これは行政だけでなく現場レベルでも共通の課題であることを示しています。
      • （出典）厚生労働省「障害者による文化芸術活動の推進に関する第２期基本計画の策定に向けた検討会とりまとめ」令和4年
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 事業の有効性を客観的に証明できず、予算確保や継続的な政策展開の説得力が弱まり、施策が尻すぼみになる。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

• 即効性・波及効果：課題解決に直結し、短期間で効果が現れるか。また、他の課題にも良い影響を与えるか。
• 実現可能性：法的、財政的、技術的な制約が少なく、関係者の合意形成が得やすいか。
• 費用対効果：投入する予算に対し、得られる社会的便益（アウトカム）が大きいか。
• 公平性・持続可能性：特定の層だけでなく、広く住民に裨益するか。一過性でなく、長期的に継続できる仕組みか。
• 客観的根拠の有無：現状データや課題分析に裏付けられ、政策効果の蓋然性が高いか。

支援策の全体像と優先順位

• 本報告書では、課題分析に基づき、以下の3つの支援策を段階的かつ相互補完的に実施することを提案します。これらは、まず参加の入口を広げ（①）、次に活動の質と担い手を確保し（②）、最後に行政と地域が一体となって持続可能な仕組みを構築する（③）という戦略的な流れに基づいています。
  • 【優先度：高】支援策①：情報・アクセスハブの構築による参加機会の最大化
    • 最も根深い「情報格差」と「参加への最初の壁」を解消する、即効性の高い施策。全ての施策の土台となります。
  • 【優先度：中】支援策②：分野横断型「インクルーシブアーツ人材」育成・連携強化
    • 「担い手不足」と「連携不足」という構造的課題に取り組む、中長期的な視点での基盤強化策。施策の質を高めます。
  • 【優先度：低→中】支援策③：持続可能な創造エコシステムの基盤整備
    • 「縦割り行政」や「評価の困難さ」に対応し、活動を持続させるための仕組み作り。初期は準備期間とし、①②の進捗に合わせて本格化させます。

各支援策の詳細

支援策①：【優先度：高】情報・アクセスハブの構築による参加機会の最大化

目的

• 障害の有無や言語に関わらず、誰もが必要な文化芸術情報に容易にアクセスできる環境を整備します。
• 参加意欲と実際の行動との間のギャップを埋め、文化芸術活動への参加の裾野を抜本的に広げます。
  • 客観的根拠：
    • 障害当事者の64.8%が「情報が届いていない」ことを課題と感じており、情報アクセシビリティの改善が最優先課題であることを示唆しています。
    • （出典）厚生労働省「障害者による文化芸術活動の幅広い活動を支援するための現状調査と研究 報告書」令和3年

主な取組①：インクルーシブアーツ情報ポータルサイト「Tokyo Art Access Navi（仮称）」の構築・運営

• 特別区が共同で、区内の文化イベント、教室、バリアフリー施設、鑑賞サポート（字幕、音声ガイド、手話通訳等）の有無といった情報を集約したポータルサイトを構築します。
• 障害種別、言語、場所、ジャンル、料金等で容易に検索できる機能を実装します。
• ウェブアクセシビリティ（JIS X 8341-3:2016 レベルAA準拠）を確保し、多言語対応（やさしい日本語を含む）を行います。
• 各施設・団体が容易に情報を登録・更新できるシステムを導入します。
  • 客観的根拠：
    • 鑑賞しない理由として「近くで公演や展覧会などをやっていないから」が挙げられており、これは物理的な距離だけでなく、情報の不在も含まれると考えられます。情報集約によって機会の可視化が求められます。
    • （出典）文化庁「障害者の文化芸術の鑑賞活動及び創作活動実態調査」平成29年

主な取組②：「インクルーシブ・コンシェルジュ」相談窓口の設置

• 各区の役所や主要な文化施設に、専門の相談員「インクルーシブ・コンシェルジュ」を配置します（オンライン相談、電話相談も可）。
• サイトの使い方が分からない、自分に合った活動を見つけたい、参加にあたって配慮が必要な点を施設に伝えてほしい、といった個別の相談に寄り添い、伴走型の支援を行います。
  • 客観的根拠：
    • 障害当事者が必要とする支援として「鑑賞・発表環境に関する相談や情報提供」が54.3%と最も多く、パーソナライズされた情報提供へのニーズが高いことがわかります。
    • （出典）厚生労働省「障害者による文化芸術活動の幅広い活動を支援するための現状調査と研究 報告書」令和3年

主な取組③：鑑賞・参加サポート費用助成制度の創設

• 障害当事者がイベントに参加する際のヘルパー費用や、手話通訳・字幕提供等の合理的配慮にかかる費用を、個人や小規模団体がオンラインで簡易に申請できる小口の助成制度を創設します。
• これにより、参加の障壁となっている経済的負担を直接的に軽減します。
  • 客観的根拠：
    • 文化活動をしない理由として「経済的な余裕がないから」が12.8%を占めます。また、美術館に行きやすくなる要因として「入場料が安くなる」が50.5%と最多であり、経済的支援の有効性を示唆しています。
    • （出典）文化庁「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画（第２期）」令和5年
    • （出典）文化庁「文化に関する世論調査」令和2年

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 具体例：特別区在住の障害者の文化芸術活動（鑑賞・創造）の年1回以上実施率を、現状（鑑賞44.6%, 創造29.3%）から5年間で15ポイント向上させる。
  • データ取得方法：特別区が共同で実施する「住民の文化活動に関する意識・実態調査」（定期実施）により測定します。
• KSI（成功要因指標）
  • 具体例：「Tokyo Art Access Navi」の認知度（区内在住障害者の50%）。
  • データ取得方法：上記調査内の設問により把握します。
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 具体例：活動に「関心があるが参加できていない」と回答した層の割合を現状から20ポイント減少させる。
  • データ取得方法：上記調査内の設問により把握します。
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 具体例：「Navi」掲載情報件数：年間2,000件以上。コンシェルジュによる相談対応件数：年間2,000件以上。鑑賞サポート助成利用件数：年間500件以上。
  • データ取得方法：ポータルサイトのデータベース、相談窓口の業務日報、助成事業の実績報告書から集計します。

支援策②：【優先度：中】分野横断型「インクルーシブアーツ人材」育成・連携強化

目的

• 文化、福祉、教育等の分野で、障害者の文化芸術活動を支える専門人材を育成・確保します。
• 多様な主体が連携・協働するためのプラットフォームを構築し、地域全体で活動を支える体制を整備します。
  • 客観的根拠：
    • 文化施設職員の障害に関する研修実施率は32.2%、文化芸術団体の研修実施率は16.5%と低く、人材育成が急務です。また、福祉施設の20.4%が連携先を持たず、連携促進が必要です。
    • （出典）厚生労働省「障害者による文化芸術活動の幅広い活動を支援するための現状調査と研究 報告書」令和3年
    • （出典）文化庁「令和５年度 障害者による文化芸術活動の推進に向けた全国の美術館等における実態調査（速報値）」令和6年
    • （出典）文化庁「文化芸術団体における障害者による文化芸術活動の推進に関する調査研究 報告書」令和5年

主な取組①：「インクルーシブアーツ・コーディネーター」養成講座の開講

• 特別区が共同で、福祉と芸術の知見を併せ持つ専門人材「インクルーシブアーツ・コーディネーター」を養成する体系的な研修プログラムを開発・実施します。
• 文化施設の職員、福祉施設の職員、教員、アーティスト、行政職員などを対象とし、修了者は人材バンクに登録し、各所からの依頼に対応できる仕組みを作ります。
• 講座内容は、障害の多様な特性の理解、コミュニケーション支援技術、インクルーシブなプログラムデザイン、ファシリテーション技術、権利擁護、助成金活用ノウハウなど、実践的なものとします。
  • 客観的根拠：
    • 文化政策の課題として「コーディネーターの育成」が挙げられており、専門人材の必要性が高く認識されています。
    • （出典）文化庁「地方公共団体の文化行政に関する実態調査」令和4年

主な取組②：文化施設・福祉施設職員向け合同研修の実施

• 区立文化施設の職員を対象に、障害者への接遇や鑑賞サポートに関する基礎研修の受講を奨励または一部義務化します。
• 民間の文化施設や区内の福祉施設職員に対しても、同研修への参加を助成金等でインセンティブを付け、促進します。
• 研修は、当事者団体と協働で企画し、リアルなニーズに基づいた内容とします。
  • 客観的根拠：
    • 改正障害者差別解消法の改正により合理的配慮の提供が義務化されたにもかかわらず、文化芸術団体での周知は1割程度に留まっており、実践的な研修が不可欠です。
    • （出典）文化庁「文化芸術団体における障害者による文化芸術活動の推進に関する調査研究 報告書」令和5年

主な取組③：分野横断型「インクルーシブアーツ推進協議会（仮称）」の設置

• 各区に、行政（文化・福祉・教育部局）、文化施設、福祉施設、当事者団体、NPO、企業、大学等が参画する協議会を設置します。
• 地域の課題共有、情報交換、連携事業の企画立案、共同での助成金申請などを行うプラットフォームとして機能させ、縦割り行政の弊害を乗り越えるエンジンとします。
  • 客観的根拠：
    • 東京都の「インクルーシブな学び東京コンソーシアム」事業では、多様な団体の連携により情報把握や関係性構築の重要性が認識されており、こうした連携体を各区レベルで構築することが有効です。
    • （出典）東京都教育委員会「令和5年度『インクルーシブな学び東京コンソーシアム』事業報告」令和6年

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 具体例：区内の主要文化施設（区立・民間）におけるインクルーシブ対応プログラム（鑑賞サポート付き公演、ワークショップ等）の年間実施件数を5年間で現在の3倍にする。
  • データ取得方法：文化施設への年次アンケート調査および「Tokyo Art Access Navi」のデータ分析により測定します。
• KSI（成功要因指標）
  • 具体例：「インクルーシブアーツ・コーディネーター」養成講座修了者を5年間で各区平均20名育成・登録する。
  • データ取得方法：講座の受講者名簿及び修了者データベースから集計します。
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 具体例：推進協議会を通じて生まれた新規連携事業の数：年間5件以上/区。
  • データ取得方法：協議会の議事録及び事業報告書から集計します。
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 具体例：コーディネーター養成講座の開催回数：年2回。合同研修の年間参加者数：200名以上/区。推進協議会の開催回数：年4回/区。
  • データ取得方法：事業実施記録、参加者名簿、議事録から集計します。

支援策③：【優先度：低→中】持続可能な創造エコシステムの基盤整備

目的

• 一過性のイベントで終わらない、持続可能な活動を支えるための財政的・制度的基盤を構築します。
• 文化芸術活動の社会的価値を可視化し、行政内外の理解と協力を促進します。
  • 客観的根拠：
    • 文化芸術団体が事業に取り組みにくい理由として「財源の確保」が最大の要因として挙げられており、安定した資金供給の仕組みが必要です。
    • （出典）文化庁「文化芸術団体における障害者による文化芸術活動の推進に関する調査研究 報告書」令和5年

主な取組①：分野横断型「インクルーシブアーツ推進助成」の拡充

• 既存の文化振興助成金の中に「インクルーシブ推進枠」を設ける、または新規に分野横断型の助成制度を創設します。
• 文化団体と福祉団体、NPOなどが共同で申請する事業を重点的に採択し、連携をインセンティブ化します。
• 企画段階から発表、記録、評価までの一連のプロセスを支援対象とします。
  • 客観的根拠：
    • アーツカウンシル東京の助成制度は、鑑賞サポートへの費用助成を通じて民間の取り組みを促進しており、これを区レベルで展開・拡充することが有効です。
    • （出典）アーツカウンシル東京「東京芸術文化鑑賞サポート助成」令和6年度
    • （出典）アーツカウンシル東京「アクセシビリティ向上のための助成プログラム」2024年

主な取組②：成果評価（アウトカム）指標の開発と導入

• 大学や研究機関と連携し、文化芸術活動が参加者のQOLや自己肯定感、地域の社会的結束に与える影響を測定するための定性的・定量的な評価指標（ロジックモデル、アンケート調査票等）を開発します。
• 助成事業の成果報告にこの指標の活用を求め、事業の社会的価値を可視化することで、政策の正当性を高めます。
  • 客観的根拠：
    • 事業の成果測定の難しさが指摘されており、客観的な評価手法の確立は政策の継続性と発展性のために不可欠です。
    • （出典）厚生労働省「障害者による文化芸術活動の推進に関する第２期基本計画の策定に向けた検討会とりまとめ」令和4年

主な取組③：民間企業とのマッチング支援と寄付文化の醸成

• 推進協議会が中心となり、企業のCSR活動やパーパス経営と、地域のインクルーシブアーツ活動を繋ぐマッチングの機会（プレゼン会、交流会など）を定期的に提供します。
• ふるさと納税の活用や、個人寄付を促すクラウドファンディング・キャンペーンを区が後援し、財源の多様化を図ります。
  • 客観的根拠：
    • 世田谷区のふるさと納税活用事例や、渋谷区の企業連携事例は、民間資源活用の有効性を示しています。
    • （出典）世田谷区「ふるさと納税『ふるセタ』」
    • （出典）一般社団法人シブヤフォント

KGI・KSI・KPI

• KGI（最終目標指標）
  • 具体例：インクルーシブアーツ活動における民間資金（企業協賛、寄付等）の割合を、関連事業費総額の20%まで引き上げる（5年間目標）。
  • データ取得方法：助成事業の実績報告書における資金調達内訳の分析、および推進協議会による実績集計。
• KSI（成功要因指標）
  • 具体例：開発したアウトカム評価指標を導入した事業の割合：助成事業の80%。
  • データ取得方法：助成事業の成果報告書のモニタリング。
• KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
  • 具体例：助成事業に参加した住民のQOL向上に関する自己評価スコア（5段階評価）の平均点が4.0以上。
  • データ取得方法：各助成事業者が実施する参加者アンケートの結果集計。
• KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
  • 具体例：分野横断型助成の採択件数：年間10件以上/区。企業とのマッチング成立件数：年間5件以上/区。
  • データ取得方法：助成事業の採択記録、協議会のマッチング実績報告。

先進事例

東京都特別区の先進事例

• 渋谷区「シブヤフォント：福祉とデザインの融合による価値創造」
  • 区内の障害者支援事業所に所属する人の描いた文字や絵を、桑沢デザイン研究所の学生がフォントやパターンデータとしてデザイン化。誰でも利用できるデータとして公開・販売し、収益の一部を障害のあるアーティストと福祉事業所に還元する取り組みです。
  • 成功要因：福祉（障害者の創作活動）、教育（学生の技術・学び）、商業（企業の商品化）を繋ぐエコシステムを構築しています。「作品」そのものではなく、応用範囲の広い「デザインデータ」という形にすることで、多様な企業との連携を可能にし、障害者アートの価値を社会経済的な価値へと転換させている点が画期的です。
    • 客観的根拠：
      • （出典）一般社団法人シブヤフォント「シブヤフォント」
      • （出典）culumu「障がいのある人のアートをビジネスに。シブヤフォントの挑戦」2023年
• 豊島区「官民連携による文化拠点の創出とアーツカウンシルの役割」
  • 旧公会堂跡地の再開発で、劇場「東京建物 Brillia HALL」を核とする文化複合施設「ハレザ池袋」を公民連携（PPP）で整備しました。また、区の空き家利活用事業を活用し、民間団体が障害者アートの美術館「ギフテッドアート美術館MOGA」を開設するなど、文化とまちづくりを連動させています。アーツカウンシル東京と連携し、鑑賞支援のノウハウ共有や人材育成にも取り組んでいます。
  • 成功要因：行政が「場」と「機会」を提供し、プログラム運営や専門的な支援はアーツカウンシルや民間事業者が担うという役割分担が明確です。トップダウンの拠点整備と、ボトムアップの活動支援を両輪で進めている点が特徴です。
    • 客観的根拠：
      • （出典）豊島区「地域貢献型空き家利活用事業により障がい者アートミュージアムがオープン」令和6年
      • (https://www.tokyo-23city.or.jp/jigyo/tokei/documents/one23-43.pdf)
      • （出典）アーツカウンシル東京「アーツカウンシル東京の取組」
• 世田谷区「『世田谷たがいちがいプロジェクト』：アートを起点とした地域共生社会の推進」
  • 福祉作業所の製品を販売するオンラインショップ「せせせ」の運営や、株式会社ヘラルボニーと連携したアートポスターの区内展開、障害の有無に関わらず参加できるアートワークショップの開催など、多様な主体を巻き込んだ多角的な事業を展開しています。
  • 成功要因：行政が旗振り役となりつつも、NPOや民間企業といった各分野のプロフェッショナルと積極的に連携しています。「販売」「展示」「体験」といった複数のアプローチを組み合わせることで、区民が様々な形で障害者アートや共生社会の理念に触れる機会を創出している点が優れています。
    • 客観的根拠：
      • （出典）世田谷区「障害者アート作品の販売・レンタル」令和6年
      • （出典）株式会社ヘラルボニー「ヘラルボニー、世田谷区と地域共生社会の実現に向けた「世田谷たがいちがいプロジェクト」を開始。」2025年
      • （出典）世田谷区「世田谷たがいちがいプロジェクト」令和7年

全国自治体の先進事例

• 静岡県「アーツカウンシルしずおか：住民主体のプロジェクト支援」
  • 県の文化政策課から独立性の高い専門機関として設置されています。特定の施設運営ではなく、県民や地域団体が主体となって行うアートプロジェクトへの伴走支援（相談、マッチング、助成）を活動の中心に据えています。障害のある子どもの表現活動を支援する「心のままアートプロジェクト」など、福祉分野との連携事業を数多く支援しています。
  • 成功要因：行政が直接事業を行うのではなく、専門的な知見を持つ中間支援組織が、地域の実情に合わせた多様な活動をきめ細かく支援するモデルです。これにより、行政の縦割りを越えた柔軟で創造的な活動が生まれやすくなっています。
    • 客観的根拠：
      • （出典）アーツカウンシルしずおか「事業報告」
      • （出典）特定非営利活動法人こころのまま「心のままアートプロジェクト」
• 兵庫県・劇団四季等「こころの劇場：大規模連携による子どもたちへの鑑賞機会提供」
  • 劇団四季が主催し、国や自治体、多くの企業が支援する形で、全国の子どもたち（主に小学6年生）を無料で劇場に招待するプロジェクトです。兵庫県でも多くの児童が参加しています。コロナ禍での動画配信を経て、令和5年度には全国で137都市、約50万人の子どもたちが観劇しました。
  • 成功要因：プロの劇団（高品質なコンテンツ）、行政（学校との調整）、企業（資金）という三者の強みを活かした大規模な公民連携モデルです。一自治体では実現不可能な規模と質の文化体験を、効率的に多くの子どもたちに提供することに成功しています。鑑賞機会の保障という点において、非常に優れた事例です。
    • 客観的根拠：
      • （出典）一般財団法人舞台芸術センター「『こころの劇場』2023年度 活動実績」令和6年
      • （出典）一般財団法人舞台芸術センター「『こころの劇場』実績一覧」令和6年

参考資料［エビデンス検索用］

• （白書・計画）
  • 文化庁、厚生労働省「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画（第２期）」令和5年 ¹
  • 文化庁「文化芸術推進基本計画（第２期）」令和5年 ³
  • 内閣府「令和6年版 障害者白書」令和6年 ⁵
  • 東京都「東京文化戦略2030」令和4年 ⁴
• （調査・報告書）
  • 厚生労働省「障害者による文化芸術活動の幅広い活動を支援するための現状調査と研究 報告書」令和3年 ⁷
  • 厚生労働省「全国の障害者による文化芸術活動の実態把握に資する基礎調査 報告書」令和6年 ⁸
  • 文化庁「文化芸術団体における障害者による文化芸術活動の推進に関する調査研究 報告書」令和5年 ⁹
  • 文化庁「障害者文化芸術活動推進に向けた劇場・音楽堂等取組状況調査 報告書」令和6年 ¹⁰
  • 文化庁「文化に関する世論調査」各年度 ¹²
  • 内閣府「障害者に関する世論調査」令和5年 ¹⁵
  • 文化庁、厚生労働省「障害者等による文化芸術活動推進事業事例集」各年度 ¹⁷
• （法令）
  • 障害者による文化芸術活動の推進に関する法律（平成30年法律第47号） ²²
  • 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律（平成25年法律第65号） ²³
  • 文化芸術基本法（平成13年法律第148号） ²⁵

まとめ

　インクルーシブな文化芸術環境の推進は、全ての住民の権利を保障し、共生社会を実現するための核心的施策です。現状は、高い参加意欲と実際の行動との間に大きなギャップが存在し、その背景には情報、人材、連携の不足という構造的課題があります。本報告書で提案した、①情報アクセスハブの構築、②専門人材の育成と連携強化、③持続可能なエコシステムの整備、という三位一体の支援策は、これらの課題に体系的に対応するものです。今後は、施策の成果を客観的に評価する仕組みを構築し、PDCAサイクルを回していくことが不可欠です。
　本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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