アセットマネジメント導入・高度化

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要(道路・橋梁インフラのアセットマネジメントを取り巻く環境)

  • 自治体が道路・橋梁インフラのアセットマネジメントを行う意義は「国民の安全・安心の確保」と「中長期的な財政負担の平準化と縮減」にあります。
  • 道路・橋梁インフラのアセットマネジメントとは、道路や橋梁を単なる構造物ではなく、国民の貴重な「資産(アセット)」として捉え、科学的な手法で将来の損傷や劣化を予測し、計画的かつ最も費用対効果の高い方法で維持管理を行う経営手法です。
  • これは、損傷が深刻化してから対応する従来の「対症療法型管理」から、損傷が軽微なうちに予防的に措置を講じる「予防保全型管理」への根本的なパラダイムシフトを意味します。
  • この転換は、もはや選択肢ではなく、我が国の社会資本の多くが建設された高度経済成長期から半世紀以上が経過し、一斉に老朽化が進行するという、避けては通れない現実に直面しているために不可欠な取り組みとなっています。特に、人口と経済活動が集中する東京都特別区において、その重要性は極めて高いと言えます。

意義

住民にとっての意義

安全性の向上と災害時の機能確保
  • 計画的な点検と補修により、橋梁の崩落や道路の陥没といった、人命に関わる重大事故のリスクを大幅に低減します。
  • 災害時には、緊急輸送道路としての機能が確実に確保され、迅速な避難や救命・救援活動を支えます。
安定した生活基盤の維持

地域社会にとっての意義

経済活動の基盤維持と競争力強化
  • 円滑で信頼性の高い道路ネットワークは、人流・物流の基盤であり、企業の生産活動やサプライチェーンを支え、地域経済の活力を維持します。
  • 安定したインフラは、企業の立地選択において重要な要素となり、地域の経済的な競争力を高めます。
防災・減災能力の強化
  • 首都直下地震などの大規模災害発生時において、緊急輸送道路や避難路として指定された道路・橋梁の機能が維持されることは、被害の拡大を防ぎ、迅速な復旧・復興活動を可能にするための絶対条件です。
  • アセットマネジメントによる計画的な耐震補強や老朽化対策は、地域全体のレジリエンス向上に直結します。

行政にとっての意義

ライフサイクルコスト(LCC)の大幅な縮減
  • 予防保全型管理への転換は、長期的に見たインフラの維持管理・更新にかかる総費用(ライフサイクルコスト)を大幅に削減します。
  • 損傷が軽微なうちに対策を講じることで、大規模な修繕や架け替えに至るケースを減らし、結果として財政負担を軽減します。
財政の平準化と計画性の向上
  • 将来の劣化を予測し、必要な対策の時期と費用をあらかじめ把握することで、年度ごとの予算の大きな変動を抑え、財政支出を平準化できます。
  • これにより、安定的かつ計画的な財政運営が可能となり、他の行政サービスへの影響を最小化できます。
客観的データに基づく説明責任の向上
  • 点検データや劣化予測といった客観的な根拠に基づいて維持管理計画や予算要求を行うため、議会や住民に対する説明責任を果たしやすくなります。
  • なぜその橋梁の修繕が今必要なのか、なぜその工法が選ばれたのかを合理的に説明でき、行政への信頼性向上につながります。

(参考)歴史・経過

1950年代~1970年代(高度経済成長期)
~2000年代(対症療法型管理の時代)
2000年代初頭
  • 国土交通省内で、道路構造物を資産として捉え、ライフサイクルコストを最小化する「アセットマネジメント」の考え方が導入され、検討委員会が設置されるなど、基本的な枠組みの構築が始まりました。
2012年12月
  • 中央自動車道・笹子トンネルで天井板が崩落し、9名が死亡する大惨事が発生しました。これは社会に大きな衝撃を与え、インフラ老朽化対策が国の喫緊の課題として認識される契機となりました。
2013年11月
  • 笹子トンネル事故を受け、政府は「インフラ長寿命化基本計画」を策定しました。これにより、全てのインフラ管理者に対し、個別施設ごとの長寿命化計画(個別施設計画)の策定と、予防保全型メンテナンスへの転換が求められることになりました。
2014年度~2018年度
  • インフラ長寿命化基本計画に基づき、全国の道路管理者による橋梁・トンネル等の5年に1度の定期点検(1巡目)が義務化され、一斉に開始されました。これにより、初めて全国のインフラの健全性に関する網羅的なデータが収集されました。
2019年度~

道路・橋梁インフラに関する現状データ

インフラの急速な高齢化
定期点検結果に見る健全性の実態
  • 道路法に基づき、5年に1度の定期点検が義務付けられており、健全性は4段階(Ⅰ:健全、Ⅱ:予防保全段階、Ⅲ:早期措置段階、Ⅳ:緊急措置段階)で判定されます。
  • 2巡目点検(2019~2023年度)における地方公共団体管理橋梁の全国平均の判定割合は、健全(Ⅰ)が42%、予防保全段階(Ⅱ)が51%、早期措置段階(Ⅲ)が7%、緊急措置段階(Ⅳ)が0.1%でした。
  • 一方で、都市部の特別区ではより厳しい状況が見られます。例えば新宿区(2021年度点検結果)では、健全(Ⅰ)が12%、予防保全段階(Ⅱ)が60%、早期措置段階(Ⅲ)が28%となっており、全国平均を大きく上回る割合の橋梁が早期の対策を必要としています。
  • (出典)国土交通省「令和5年度道路メンテナンス年報」新宿区「新宿区橋りょう長寿命化修繕計画(令和5年度改定版)」
修繕の進捗の遅れ(「点検はするが、直せていない」実態)
  • 全国的に、点検によって問題が把握されても、実際の修繕措置が追いついていない「修繕の遅れ」が深刻な課題となっています。
  • 1巡目点検(2014~2018年度)で「早期措置段階(Ⅲ)」または「緊急措置段階(Ⅳ)」と判定された地方公共団体管理の橋梁のうち、修繕が完了した割合はわずか46%でした。
  • さらに、判定から5年以上経過しても措置に「未着手」の橋梁が約3割、トンネルが約1割も存在しており、危険な状態が放置されている実態が明らかになっています。
  • (出典)日本工業経済新聞社「道路メンテナンス年報」塗装時報「国交省 19年度「道路メンテナンス年報」を公表」
将来の費用推計と財政的圧迫
  • 国土交通省の試算によると、仮に全国で予防保全型のメンテナンスを推進したとしても、今後30年間の維持管理・更新費の総額は、国が所管するインフラだけで約190兆円に上ると推計されています。
  • 年間の維持管理費は増加を続け、2044年度頃にピーク(2018年度比で約1.4倍)を迎えると予測されています。
  • 予防保全への転換は、何もしない(事後保全を続ける)場合に比べて、30年間で約3割のコストを削減する効果があるとされていますが、それでもなお巨額の費用が必要となります。
  • 東京都特別区では、既にインフラ維持管理に必要な予算を十分に確保できておらず、予算充足率は平均で68.3%にとどまっています。このままでは、必要な対策と実際の予算との乖離はさらに拡大していくことが懸念されます。
  • (出典)経済財政諮問会議「インフラの老朽化対策について」しんこうWeb「インフラ維持に30年で195兆円」総務省「公共施設等総合管理計画の進捗状況調査」

課題

住民の課題

インフラ劣化による直接的なリスク
  • 橋梁の崩落や道路の陥没など、生命や財産に直接的な危険を及ぼす重大事故の発生リスクが高まります。
    • 客観的根拠:
      • 全国の道路法定点検(1巡目)では、市区町村が管理する橋梁647本とトンネル48箇所が、既に「Ⅳ(緊急措置段階)」、つまり緊急に対策が必要な危険な状態と判定されました。
      • (出典)サスネット「社会インフラの老朽化」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 笹子トンネル事故のような大惨事が都心部で発生し、甚大な人的・経済的被害を引き起こします。
生活の利便性低下と経済的損失
  • 緊急の通行止めや交通規制が頻発し、通勤・通学や物流に支障をきたし、日常生活の利便性が低下します。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 交通の信頼性低下が地域経済の停滞を招き、企業の立地競争力も低下させます。

地域社会の課題

地域経済への負の影響
  • 物流ネットワークの寸断や交通渋滞の悪化は、企業の生産性低下や輸送コストの増大に直結し、地域経済全体の活力を削ぎます。
    • 客観的根拠:
      • 国の「第5次社会資本整備重点計画」では、「災害に強い道路ネットワークの構築」が重点目標の一つとして掲げられており、信頼性の高いインフラが経済活動の前提であることが示されています。
      • (出典)国土交通省「第5次社会資本整備重点計画」
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • インフラ不安が企業の投資意欲を減退させ、雇用の喪失や税収減につながります。
防災・減災機能の低下
  • 地震などの大規模災害時に、緊急輸送道路上の橋梁が損傷・落橋すれば、避難、救急・救命活動、物資輸送が不可能となり、被害が拡大します。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 首都直下地震等の大規模災害時において、救助の遅れによる「助かるはずの命が助からない」事態が発生します。

行政の課題

財政的課題:維持更新費用の爆発的増大
  • 高度経済成長期に建設されたインフラが一斉に更新時期を迎え、従来の対症療法的な管理では対応不可能なレベルまで維持管理・更新費用が増大します。
    • 客観的根拠:
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察:
      • 財政がインフラ維持費で硬直化し、他の住民サービス(福祉、教育等)を圧迫、または将来世代への巨額な負債の先送りを招きます。
人的課題:技術系職員の不足と高齢化
技術的課題:新技術導入の遅れとデータ活用の不備
  • 点検・管理を効率化・高度化する新技術(AI、ドローン、3Dデータ等)の導入が、予算や知識不足、リスク回避志向などから進んでいません。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

  • 各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。
    • 即効性・波及効果:施策の実施から効果発現までの期間が短く、複数の課題解決や多くの住民への便益につながる施策を高く評価します。
    • 実現可能性:現在の法制度、予算、人員体制の中で実現可能な施策を優先します。既存の体制・仕組みを活用できる施策は優先度が高くなります。
    • 費用対効果:投入する経営資源(予算・人員・時間等)に対して得られる効果、特に長期的な財政負担軽減効果(LCC削減効果)が大きい施策を最優先します。
    • 公平性・持続可能性:特定の施設だけでなく、広範なインフラに適用可能で、一度導入すれば継続的に効果が生まれる仕組みを重視します。
    • 客観的根拠の有無:国の計画や白書で効果が示されている、または先進事例で成果が実証されている施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • 道路・橋梁インフラのアセットマネジメントを推進するにあたり、「財政」「人材」「技術」という相互に関連する3つの核心的課題に対応するため、統合的なアプローチが必要です。
  • 最優先で取り組むべきは**「支援策①:予防保全型アセットマネジメントの高度化」**です。これは全ての基本となる戦略であり、データに基づき「いつ、どこに、何をすべきか」を最適化することで、財政的・人的資源の制約という最大の課題に直接対応するためです。
  • 次に優先すべきは**「支援策②:インフラDXの推進によるメンテナンスの革新」**です。これは「人的課題」と「技術的課題」を解決するための最も強力な手段であり、技術職員不足を補い、業務の質と効率を飛躍的に向上させ、アセットマネジメントの精度そのものを高めるために不可欠です。
  • これらを補完する重要な戦略として**「支援策③:官民連携と広域連携による実施体制の強化」**を位置づけます。これは、区単独では解決が難しい大規模更新や専門技術の確保に対応するためのものであり、前述の2つの施策の効果を最大化する役割を担います。
  • これら3つの支援策は相互に連携しており、例えば、インフラDX(支援策②)はアセットマネジメント(支援策①)のデータ基盤となり、官民連携(支援策③)はDX技術を持つ民間事業者の活用を促進するなど、統合的に進めることで相乗効果が期待できます。

各支援策の詳細

支援策①:予防保全型アセットマネジメントの高度化

目的
主な取組①:橋梁長寿命化修繕計画の継続的更新と精度向上
  • 5年ごとの定期点検結果を速やかに計画に反映し、常に実態に即した最新の状態に保つサイクルを徹底します。
  • 画一的な劣化予測ではなく、各橋梁の立地環境(交通量、塩害の影響、凍結防止剤散布状況など)や過去の補修履歴といった個別データを加味した、区独自の劣化予測モデルを構築し、修繕時期の予測精度を高めます。
主な取組②:ライフサイクルコスト(LCC)評価に基づく予算配分の最適化
  • 全ての修繕・更新事業において、複数の工法や対策シナリオ(例:予防的な部分補修、大規模修繕、架け替え)のLCCを比較検討し、最も費用対効果の高い案を採択するプロセスを標準化・義務化します。
  • LCC評価の結果を次年度の予算要求・編成プロセスに直接連動させる仕組み(例:評価結果を予算査定の必須資料とする)を制度化し、客観的根拠に基づいた予算配分を実現します。
主な取組③:集約・撤去、機能転換の積極的検討
  • 利用頻度が極端に低い橋梁や、近接して複数の橋梁が存在し代替路が確保できる箇所について、統廃合や機能の集約(例:車道橋を歩行者・自転車専用橋へ転換)を積極的に検討します。
  • 長寿命化修繕計画の中に、「集約・撤去に関する方針」を明確に位置づけ、具体的な検討対象リストや、地域住民との合意形成プロセスを含めた手順を定めます。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 30年間のインフラ維持管理・更新に関する総LCCを現行計画比で15%削減
    • データ取得方法: 長寿命化修繕計画に基づくLCCの定期的な再計算と過去計画との比較分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 健全度判定Ⅲ・Ⅳの橋梁に対する措置完了率 100%(判定後5年以内)
    • データ取得方法: 国土交通省「道路メンテナンス年報」および各区の修繕実績管理データとの照合
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 予算計画に対する実績維持管理費の乖離率を±5%以内に抑制
    • データ取得方法: 財政部門と土木部門の予算データおよび決算データの突合分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 長寿命化修繕計画の改定頻度(5年に1回以上)の遵守率 100%
    • データ取得方法: 計画改定実績の確認
    • 集約・撤去の検討対象となった橋梁数 年間2橋以上
    • データ取得方法: 資産管理部門の検討会議議事録および報告書の集計

支援策②:インフラDXの推進によるメンテナンスの革新

目的
  • 最新のデジタル技術を活用し、点検・診断・データ管理業務を効率化・高度化します。
  • 技術職員不足という人的資源の制約を補い、業務品質の向上と均質化を図ります。
    • 客観的根拠:
主な取組①:AI・ドローン等を活用した点検・診断の導入
  • 高所や河川上、交通量の多い道路上など、従来は交通規制や足場の設置が必要で、危険かつコストのかかった箇所の点検にドローンを本格導入します。
  • ドローン等で撮影した高解像度画像から、AIがひび割れや剥離、鉄筋露出といった変状を自動で検出し、その深刻度を評価する画像解析システムを導入します。これにより、点検の客観性と効率を飛躍的に向上させます。
主な取組②:3次元データ(CIM/BIM)によるインフラ台帳の高度化
  • 既存の2次元図面や紙ベースの台帳を、3次元のCIM/BIM(Construction/Building Information Modeling)データに段階的に移行・統合します。
  • 3次元モデル上に、点検結果、補修履歴、センサー情報、周辺の地理情報などを一元的に集約し、インフラの「デジタルツイン」を構築します。これにより、現状把握や修繕計画のシミュレーションが直感的かつ高度に行えるようになります。
    • 客観的根拠:
      • 東京都の外部委託機関では、維持管理計画情報や管理用図書情報に3次元データを活用し、将来維持管理計画や劣化曲線の作成を支援する取り組みを進めています。
      • (出典)(https://www.tecforce.jp/202401/pdf/0109_2.pdf)
主な取組③:新技術導入のための補助金活用と試行フィールドの提供
  • 国の「道路メンテナンス事業補助制度」を最大限活用します。この制度は、新技術の活用やコスト縮減に関する具体的な目標を設定した自治体の事業を重点的に支援するものです。
  • 区が管理する橋梁を、新技術を開発する民間企業や大学の「実証実験フィールド」として提供し、官民学連携で技術の社会実装を促進します。これにより、最新技術をいち早く試行できるとともに、地域全体の技術力向上に貢献します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 点検・診断にかかる職員一人当たりの作業時間を30%削減
    • データ取得方法: 業務量調査(BPR実施前後でのモデル業務における時間計測と比較)
  • KSI(成功要因指標)
    • AI・ドローン等の新技術を導入した点検の割合(橋梁数ベース)を50%以上にする
    • データ取得方法: 点検業務の発注仕様書および実績報告書の確認・集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 点検調書作成などの内業(デスクワーク)にかかる時間を50%削減
    • データ取得方法: 山口県の事例などを参考に、モデル業務での時間計測を実施
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 3次元データ化が完了した橋梁の割合 30%
    • データ取得方法: 資産管理台帳の進捗管理
    • 新技術導入に関する国の補助金採択件数 年間2件以上
    • データ取得方法: 補助金申請・採択実績の集計

支援策③:官民連携と広域連携による実施体制の強化

目的
  • 民間の資金・ノウハウ・人材を積極的に活用し、行政単独では困難な大規模事業や高度な専門性が求められる業務に対応します。
  • 特別区間の連携を強化し、希少な技術職員やリソースを共有することで、区ごとのメンテナンスレベルの格差を是正し、全体のレベルを底上げします。
主な取組①:包括的民間委託の導入
  • 従来のように点検、設計、工事などを個別に発注するのではなく、複数の橋梁や複数の業務(点検、診断、小規模補修、データ管理等)を一体として、複数年にわたり民間に包括的に委託する契約方式を導入します。
  • これにより、行政職員は個別の発注事務から解放され、より上位の計画策定や事業全体の監督に集中できます。一方、民間事業者は長期的な視点で創意工夫を発揮しやすくなり、効率的な業務遂行が期待できます。
主な取組②:PPP/PFI手法の活用検討
  • 特に老朽化が著しく、多額の費用が見込まれる橋梁の大規模な架け替えや更新事業において、PFI(Private Finance Initiative)方式の導入を積極的に検討します。
  • 民間の資金で先行して建設を行い、行政は長期分割でサービス対価を支払うことで、単年度の巨額な財政負担を平準化し、事業の早期着手を可能にします。
主な取組③:特別区間の技術支援・共同発注プラットフォームの構築
  • 特別区間で技術職員を相互に派遣・研修する仕組みや、高度な専門知識を持つ外部専門家(ブリッジドクター等)を共同で雇用する制度を創設します。
  • 新技術(点検ドローン、AI解析サービス等)の導入にあたり、複数の区が共同で仕様書を作成し、一括で発注(共同調達)します。これにより、スケールメリットによるコスト削減と、民間企業の参入意欲向上を図ります。
KGI・KSI・KPI
  • KGI(最終目標指標)
    • 大規模更新事業における財政負担の平準化(単年度のピーク支出を従来方式比で30%抑制)
    • データ取得方法: PFI導入事業と従来型事業のキャッシュフローシミュレーションの比較分析
  • KSI(成功要因指標)
    • 包括的民間委託の導入率(管理橋梁数ベース) 50%
    • データ取得方法: 契約形態の調査・集計
  • KPI(重要業績評価指標)アウトカム指標
    • 補修工事の入札不調・不落率の低下(前年度比20%減)
    • データ取得方法: 契約担当部門における入札結果データの分析
  • KPI(重要業績評価指標)アウトプット指標
    • 特別区間の技術連携に関する協定の締結数 1件以上
    • データ取得方法: 政策企画部門の記録確認
    • 共同発注の実施件数 年間1件以上
    • データ取得方法: 契約担当部門における共同発注実績の集計

先進事例

東京都特別区の先進事例

新宿区「計画的な予防保全とLCC縮減モデル」

  • 新宿区は2011年度からいち早く長寿命化修繕計画を策定し、予防保全型管理への転換を推進しています。特に注目すべきは、データに基づく財政効果の「見える化」です。
  • 成功要因は、予防保全(橋梁寿命を120年と設定)と事後保全(寿命を80年と設定)の2つのシナリオでライフサイクルコスト(LCC)を詳細にシミュレーションした点にあります。その結果、予防保全への移行により、50年間で約35.3億円(46%)もの劇的なコスト縮減が可能であることを定量的に示しました。この客観的なデータは、庁内での予算確保や議会での合意形成を進める上で、極めて強力な根拠となりました。
  • この取り組みにより、場当たり的な対応から脱却し、計画的かつ効率的な予算執行の基盤を構築した先進的な事例と言えます。

千代田区「都心部における修繕費平準化と段階的管理移行」

  • 千代田区は、都心特有の交通量の多さや重要インフラとしての役割を背景に、LCC評価に加え「修繕費の平準化」を特に重視した計画を策定しています。
  • 成功要因は、LCC評価で判明した将来の修繕費の集中(ピーク時で年間約34億円)という課題に対し、安全性を損なわない範囲で工事時期を調整し、年間の支出を約7億円以下に平準化する精緻なシミュレーションを行ったことです。また、「事後保全」から「劣化予測型管理」を経て、最終的に「予防保全」へと段階的に移行するという現実的なロードマップを策定し、限られたリソースの中で着実に移行を目指す戦略を示した点も高く評価できます。
  • 特定年度への財政負担の集中を回避し、持続可能な維持管理体制への道筋を具体的に示した好事例です。

板橋区「新技術活用と集約・撤去を明記した計画」

  • 板橋区の計画は、その具体性において他の区の参考となります。長寿命化修繕計画の中に、導入を検討する具体的な新技術の名称や、インフラストックの最適化に向けた集約・撤去の検討パターンを明確に記載しています。
  • 成功要因は、計画が抽象的な方針に留まっていない点です。「点検ロボット」「ドローン」等の活用を検討技術として具体的に列挙し、新技術導入の方針を明確化しました。さらに、「隣接2橋を1橋に集約」「車道橋を人道橋にダウンサイジング」など、5つの具体的な集約・撤去シナリオを提示し、将来のインフラストック最適化に向けた検討を具体化しています。
  • これにより、現場担当者が何をすべきか理解しやすく、具体的なアクションに繋がりやすい、実効性の高い計画となっています。

全国自治体の先進事例

山口県「AI・デジタル技術を活用した広域点検支援システム」

  • 山口県は、県と県内市町が管理する膨大な数の小規模橋梁を対象に、点検の効率化・高度化を目指し、産学官連携で独自の「AIによる橋梁インフラ点検・診断システム」を開発しました。
  • 成功要因は、①3Dスキャンアプリ、点検アプリ、評価AIアプリをクラウドで連携させ、点検調書の自動作成を実現した技術力、②産(コンサルタント)・学(山口大学)・官(県・市町)のワーキンググループで現場実証を繰り返し、実務者が本当に使いやすいシステムを構築した協働体制、③開発したシステムを技術職員が不足しがちな県内市町にも提供し、県全体のメンテナンスレベルを底上げする広域連携モデルを確立した点にあります。
  • この取り組みにより、点検の総作業時間を約2割削減し、AI活用で評価のばらつきを抑制して点検品質を向上させるという顕著な効果を上げ、第7回インフラメンテナンス大賞で優秀賞を受賞しました。

多摩市「包括的民間委託による持続可能な維持管理体制の構築」

  • 多摩市は、職員の負担軽減と専門性の確保という二つの課題を解決するため、橋梁の定期点検および総合維持管理業務を包括的に民間委託する仕組みを構築しました。
  • 成功要因は、点検、診断、データ整理、小規模な補修計画策定までを一体的に委託することで、行政と民間の役割分担を明確化した点です。公募型プロポーザル方式で技術力と創意工夫のある事業者を選定し、民間の専門的知見を最大限に活用しました。これにより、行政職員は個別の発注事務から解放され、委託業務の管理・監督や、より上位の政策判断に集中できる環境が整いました。
  • 専門家による質の高い維持管理を実現しつつ、職員の業務負担を大幅に軽減するという、持続可能なメンテナンス体制を構築したモデルとして、第6回インフラメンテナンス大賞で優秀賞を受賞しています。

参考資料[エビデンス検索用]

国土交通省
内閣府・内閣官房
総務省
東京都特別区 各区
その他

まとめ

 東京都特別区の道路・橋梁インフラは、高度経済成長期の一斉整備から半世紀以上が経過し、今まさに急速な高齢化の波に直面しています。このまま従来の対症療法的な管理を続ければ、将来的な財政の圧迫と、何よりも住民の安全に対する脅威の増大は避けられません。本記事で示した通り、この複合的な課題を解決する鍵は、データと技術を駆使した「予防保全型アセットマネジメント」へと戦略的に転換することにあります。具体的には、LCC評価に基づく計画の高度化、インフラDXによるメンテナンスの革新、そして官民連携や特別区間の広域連携による実施体制の強化という三位一体の改革が不可欠です。これらの支援策は、コストを縮減し、限られた人材を有効活用し、最終的には都民の安全で持続可能な生活を守るための、最も確実な道筋となります。
 本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
 引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

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