15 教育

アウトリーチ活動（学校や福祉施設等への芸術家派遣）

masashi0025
目次
  1. はじめに
  2. アウトリーチ活動に関する現状データ
  3. 課題
  4. 行政の支援策と優先度の検討
  5. 先進事例
  6. 参考資料［エビデンス検索用］
  7. まとめ

はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

概要（アウトリーチ活動を取り巻く環境）

意義

住民にとっての意義

質の高い文化芸術へのアクセス機会の確保
創造性・コミュニケーション能力の育成
ウェルビーイングと生きがいの向上

地域社会にとっての意義

インクルーシブな社会の実現
地域コミュニティの活性化と関係構築
文化芸術への理解促進と将来の担い手育成

行政にとっての意義

文化政策と福祉・教育政策の連携
「届ける行政」への転換
  • 従来の施設運営（ハコモノ）を中心とした「待ち」の行政サービスから、住民が生活する現場へ直接出向く「アウトリーチ型」の行政サービスへの転換を象徴する事業となり、住民のニーズに寄り添う行政姿勢を示すことができます。
文化芸術資源の有効活用
  • 地域に在住・活動する芸術家という貴重な「人的資源」を有効に活用し、彼らの専門性を社会課題の解決に繋げることで、地域の文化資本全体を高めることができます。

（参考）歴史・経過

  • アウトリーチ活動の思想的源流は、科学分野における研究者と社会との対話活動や、福祉分野における「支援を必要としながらも自ら声を上げられない人々へ手を差し伸べる」活動にあります。この「届ける」という思想が、1990年代後半から日本の文化芸術分野にも導入され、特に公立文化施設が主導する形で全国的に定着していきました。
1990年代後半～2000年代初頭
2000年代
2010年代
2020年代
  • 新型コロナウイルス感染症の拡大により、文化芸術活動は大きな打撃を受けましたが、一方で、人々の心の安らぎや社会的なつながりを維持するために文化芸術が持つ本質的な価値が改めて認識されました。
  • 「文化芸術推進基本計画（第2期）」が策定（令和5年）され、「全ての人の参加機会の提供」や「多様性を尊重した文化芸術の振興」が重点目標として掲げられました。これは、アウトリーチ活動の理念と深く合致しており、その重要性を間接的に示しています。

アウトリーチ活動に関する現状データ

  • 各種データからは、コロナ禍で一度大きく落ち込んだ学校での文化芸術体験機会が回復傾向にあるものの、コロナ以前の水準には及ばず、依然として多くの子どもたちに機会が届いていない「機会格差」が存在することが示されています。また、国の文化予算は横ばいから微増傾向で推移していますが、これが個々のアウトリーチ事業の安定的な財源を保証するものではなく、事業の持続可能性が常に課題であることを示唆しています。
学校における文化芸術鑑賞・体験機会の提供状況
アーツカウンシル東京の都内におけるアウトリーチ関連事業の実績（令和5年度）
国の文化関係予算の推移
高齢者の生きがいと社会参加
  • 内閣府の調査では、60歳以上の高齢者の約8割（79.6%）が何らかの生きがいを「感じている」と回答しています。生きがいを感じる内容として「友人や知人との交際、つきあい」が上位に挙げられており、アウトリーチ活動が提供する社会参加や世代間交流の機会は、高齢者の生きがい創出に直接的に貢献するポテンシャルを持っています。

課題

住民の課題

文化芸術へのアクセスにおける格差の存在
  • 居住地域や家庭の経済力、障害の有無、年齢、子育てや介護といった家庭の状況などによって、質の高い文化芸術に触れる機会に大きな格差が生じています。特に、福祉施設や病院の入所者、外出が困難な人々は、文化芸術から隔絶されがちです。
社会からの孤立とつながりの希薄化
  • 高齢化や単身世帯の増加に伴い、地域社会における「つながり」は希薄化する傾向にあります。文化芸術活動は人々が交流する自然なきっかけとなり得ますが、その機会自体が限られています。
    • 客観的根拠：
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 社会的孤立が深刻化し、住民のメンタルヘルスの悪化や、災害時の共助機能の低下、孤独死などのリスクが増大します。

地域社会の課題

芸術家と地域社会との接点の不足
  • 多くの芸術家は地域社会の中で生活し、創作活動を行っていますが、その存在や活動内容が住民に十分に知られておらず、学校や福祉施設といった地域の拠点と結びつく機会が体系的に整備されていません。
多様なニーズに対応できるプログラムの不足
  • アウトリーチの対象となる学校、高齢者施設、障害者施設、乳幼児のいる家庭など、参加者の特性や状況によって求められるプログラムの内容は大きく異なります。しかし、画一的な公演形式の派遣が多く、多様なニーズにきめ細かく対応できる質の高いワークショップや参加型のプログラムが十分に開発・提供されていません。
    • 客観的根拠：
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • アウトリーチが芸術家からの一方的な「供給」に終わり、参加者の主体的な関与や深い学び、真の交流が生まれにくくなります。

行政の課題

  • 行政が抱える課題は、単年度予算主義による事業の不安定性という「制度的課題」、学校・施設・アーティストを繋ぐ専門コーディネーターの不足という「人的課題」、そしてアーティストの不安定な労働環境を軽視しているという「担い手支援の課題」の三層構造になっています。これらが相互に絡み合い、アウトリーチ事業の持続可能性と質の向上を阻害しています。
事業の継続性を担保する財源と仕組みの欠如
  • 多くのアウトリーチ事業は、単年度の補助金や委託費で運営されており、長期的な見通しを持った安定的な事業展開が困難です。これにより、実施ノウハウの蓄積や、芸術家・施設との継続的な関係構築が阻害されています。
    • 客観的根拠：
      • アーツカウンシル東京の助成事業では、長期的な計画を持つ事業を最長3年間優先的に支援する仕組みがありますが、これは逆に言えば多くの事業が単年度で終了する前提であることを示唆しています。
      • （出典）アーツカウンシル東京「令和5（2023）年度 事業報告書」令和6年
      • アーティストの働き方に関する調査では、事業請負の場合、年度末まで報酬の支払いを待たされるケースも報告されており、単年度会計主義の弊害が芸術家の生活を直撃しています。
      • （出典）(https://www.nettam.jp/course/employment-working-environment/1/)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 事業が単発で終わり、持続的な効果や地域への定着が期待できず、行政投資の効率が著しく低下します。
コーディネートを担う専門人材の不足
  • 学校や施設の多様なニーズを汲み取り、最適なアーティストを選定し、質の高いプログラムを共同で企画・調整する専門的なコーディネーターが絶対的に不足しています。その結果、本来の業務で多忙な学校教員や施設職員に過大な負担がかかっています。
芸術家の不安定な労働環境とキャリアへの配慮不足
  • アウトリーチ活動に従事する多くの芸術家は、フリーランス（個人事業主）として不安定な身分にあり、低廉な謝金、不規則な収入、社会保障の欠如といった深刻な課題に直面しています。「やりがい搾取」とも言える状況が、活動の持続可能性そのものを脅かしています。
    • 客観的根拠：
      • （公財）日本芸能実演家団体協議会の調査では、実演家の最も忙しくなかった月の就業日数が平均7.7日、スケジュールが空いた最長期間が平均44.8日など、収入の不安定さがデータで明確に示されています。
      • （出典）（公財）日本芸能実演家団体協議会「芸能実演家の活動と生活に関するアンケート調査報告書」令和4年
      • 芸術分野の働き方の課題として、低賃金、残業代のない長時間労働、社会保障の重い自己負担といった経済的な厳しさが指摘されています。
      • （出典）(https://www.nettam.jp/course/employment-working-environment/1/)
    • この課題が放置された場合の悪影響の推察：
      • 質の高い芸術家が経済的な理由で活動を継続できなくなり、アウトリーチ事業全体の質の低下を招き、長期的には地域文化の担い手そのものを失うことになります。

行政の支援策と優先度の検討

優先順位の考え方

※各支援策の優先順位は、以下の要素を総合的に勘案し決定します。

  • 即効性・波及効果：
    • 施策の実施から効果発現までの期間が短く、住民・地域・行政・芸術家など複数のステークホルダーに便益が及ぶ施策を高く評価します。
  • 実現可能性：
    • 現在の法制度や予算規模の中で、既存の仕組みや資源（文化財団、NPO等）を活用し、比較的速やかに着手できる施策を優先します。
  • 費用対効果：
    • 投入する予算・人員に対して、文化振興、教育、福祉など複数の政策分野にわたる効果が期待できる施策を優先します。
  • 公平性・持続可能性：
    • 特定の層だけでなく、これまで機会に恵まれなかった人々へも裨益し、かつ単発で終わらない長期的な仕組みづくりに繋がる施策を高く評価します。
  • 客観的根拠の有無：
    • 国の基本計画や他の自治体の先進事例、調査報告書等で効果が示されている、エビデンスに基づいた施策を優先します。

支援策の全体像と優先順位

  • アウトリーチ活動を、一過性のイベントから持続可能な「文化生態系（エコシステム）」へと転換させることを目指し、「基盤整備」「対象拡大」「担い手支援」の3つの観点から支援策を体系化します。
  • **最優先（Priority 1）で取り組むべきは「支援策①：アウトリーチ基盤強化と専門人材育成」**です。これは、全ての活動の土台となるインフラを整備するものであり、事業の質と安定性を確保するために不可欠です。特に、専門コーディネーターの配置は、現場の負担軽減とプログラムの質向上の両面に即効性があり、波及効果が最も大きいと考えられます。
  • **次に優先すべき（Priority 2）は「支援策②：インクルーシブ・アウトリーチの戦略的推進」**です。整備された基盤を活用し、行政が最も介入すべき「文化芸術から最も遠い人々」へ戦略的にアプローチします。これは、文化政策を福祉や保健医療政策と連携させることで、新たな社会的価値と財源の正当性を生み出す重要な一手です。
  • これらと並行して中長期的に取り組むべき**（Priority 3）は「支援策③：芸術家のキャリア支援と活動環境整備」**です。生態系の最も重要な構成要素である芸術家が、専門家として尊重され、持続的に活動できる環境を整えます。これは文化の質の維持・向上のために必須の施策です。

各支援策の詳細

支援策①：アウトリーチ基盤強化と専門人材育成

目的
  • 単発の派遣事業を、安定的・継続的なプログラムへと転換させるための「中間支援組織」としての機能を構築します。
  • 学校・施設、アーティスト、行政を繋ぐ専門人材（アーツ・コーディネーター）を育成・配置することで、プログラムの質の向上と関係者の負担軽減を同時に実現します。
主な取組①：特別区ごとの「アウトリーチ推進拠点」の設置・指定
  • 各区の文化振興を担う公益財団法人や、アウトリーチ活動で実績のあるNPO法人等を「アウトリーチ推進拠点」として指定、または新たに設置します。
  • この拠点が、区内の学校・福祉施設等からの相談受付、ニーズの集約、アーティストバンクの管理、プログラム開発、実施後の評価などを一元的に担う体制を構築します。
主な取組②：専門人材「アーツ・コーディネーター」の育成と配置
  • 推進拠点に、教育・福祉・アートマネジメント等の専門的知見を持つ常勤または非常勤の専門職「アーツ・コーディネーター」を配置します。
  • 杉並区「座・高円寺」の劇場創造アカデミーや、国内大学のアウトリーチ専門課程等と連携し、特別区職員や文化財団職員、意欲のある市民を対象とした体系的な研修プログラムを開発・実施します。
主な取組③：アーティストバンクの整備と質の担保
  • アウトリーチ活動に関心と意欲のあるアーティストや芸術団体を登録するデータベース（アーティストバンク）を構築し、ウェブサイト等で公開します。
  • 登録アーティストを対象に、障害のある子どもや認知症高齢者への対応方法、参加者の主体性を引き出すファシリテーション技術など、対象者別のプログラム開発に関する実践的な研修を定期的に実施し、活動の質を担保します。
主な取組④：複数年度にわたる安定的予算の確保
  • 推進拠点への運営費交付金や、基幹となるアウトリーチ・プログラムに対して、3年から5年の複数年度にわたる予算措置を導入します。
  • これにより、単年度の成果に追われることなく、長期的な視点でのプログラム開発やアーティスト・施設との信頼関係構築を可能にします。
KGI・KSI・KPI
  • KGI（最終目標指標）
    • 区民の年間文化芸術鑑賞・参加率 10%向上
      • データ取得方法： 区が実施する区民意識調査または文化に関する実態調査（年1回実施）
  • KSI（成功要因指標）
    • アーツ・コーディネーターを介して形成されたプログラムの割合 80%以上
      • データ取得方法： 各区の推進拠点からの事業報告書に基づく実績集計
  • KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
    • プログラム参加後の児童・生徒の「自己肯定感」「協調性」に関するアンケートスコア 15%向上
      • データ取得方法： 事業参加者を対象とした事前・事後アンケート調査（尺度を用いて測定）
    • プログラム実施校・施設における次年度の継続希望率 90%以上
      • データ取得方法： 事業実施後の学校・施設へのヒアリング調査
  • KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
    • アーツ・コーディネーターの配置人数 各区に常勤換算で3名以上
      • データ取得方法： 各区の人事データまたは委託契約内容の確認
    • アーティストバンク登録者（団体含む）数 各区で年間50組以上
      • データ取得方法： 各区の推進拠点が管理する登録システムのデータ

支援策②：インクルーシブ・アウトリーチの戦略的推進

目的
  • 高齢者施設、障害者支援施設、病院、ひとり親家庭支援拠点、外国人コミュニティなど、様々な理由で文化芸術へのアクセスが特に困難な層へ、戦略的にアウトリーチ活動を展開します。
  • 文化政策と福祉・保健医療・多文化共生政策との連携を制度的に強化し、文化芸術によるQOL向上や社会的包摂（ソーシャル・インクルージョン）を実現します。
主な取組①：福祉・保健医療部局との連携予算制度の創設
  • 文化振興担当部局と、高齢福祉、障害福祉、子育て支援、保健所などの担当部局が共同でアウトリーチ事業の企画・予算化を行う「部局横断型連携予算制度」を創設します。
  • 福祉施設のレクリエーション予算や、介護予防事業費、子育て支援関連予算などを文化事業と組み合わせることで、財源の多様化と事業の拡充を図ります。
主な取組②：「文化芸術処方箋」モデル事業の実施
  • 地域のケアマネージャーやソーシャルワーカー、医師などが、社会的孤立のリスクがある高齢者や心身に課題を抱える人々に対し、地域の文化活動（鑑賞、ワークショップ参加等）への参加を「処方」するモデル事業を試行します。
  • 各区の推進拠点が活動の受け皿となり、参加への心理的・物理的ハードルを下げるためのサポート（付き添いボランティアの手配など）を行います。
主な取組③：障害のある当事者によるプログラム企画・実施の支援
  • 障害のあるアーティストや、障害者アートを支援するNPO等と協働し、当事者の視点や経験を活かしたプログラムの企画・実施を重点的に支援します。
  • 鑑賞機会の提供だけでなく、参加者が主体となる創作活動や、その成果を発表する機会の創出を重視します。
主な取組④：バリアフリー鑑賞環境の整備支援
  • アウトリーチ公演やワークショップの実施にあたり、手話通訳、音声ガイド、ヒアリングループ（磁気ループ）、多言語字幕などを導入する経費を補助します。
  • 発達障害のある子どもやその家族が安心して鑑賞できる「リラックス・パフォーマンス」など、障害の特性に合わせたプログラムの開発と実施を支援します。
KGI・KSI・KPI
  • KGI（最終目標指標）
    • 福祉施設入所者・利用者のQOL（生活の質）に関する自己評価スコア 10%向上
      • データ取得方法： 標準化されたQOL評価尺度（WHOQOL等）を用いたアンケート調査（事業前後で比較）
  • KSI（成功要因指標）
    • 福祉・保健医療部局との連携によって実施された事業数 各区で年間10事業以上
      • データ取得方法： 各区の事業担当部署からの報告に基づく実績集計
  • KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
    • アウトリーチ参加者の「社会的孤立感」スコア 20%低減
      • データ取得方法： UCLA孤独感尺度等の心理尺度を用いたアンケート調査（事業前後で比較）
    • 「文化芸術処方箋」を通じて新たに文化活動に参加した住民数 各区で年間100人
      • データ取得方法： 各区の推進拠点による参加者登録・追跡調査
  • KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
    • 福祉・医療施設でのアウトリーチ実施回数 前年度比30%増
      • データ取得方法： 各区の推進拠点からの事業報告書に基づく実績集計
    • バリアフリー対応（手話通訳、音声ガイド等）がなされた公演の実施率 50%以上
      • データ取得方法： 各事業の実施仕様書および実績報告書による確認

支援策③：芸術家のキャリア支援と活動環境整備

目的
主な取組①：アウトリーチ活動に関する標準報酬ガイドラインの策定・運用
  • 行政、文化財団、アーティスト団体等が参画する協議会を設置し、活動内容（企画会議、プログラム開発、移動時間、本番、報告書作成等）や芸術家の専門性・経験年数に応じた「標準報酬ガイドライン」を策定します。
  • 区が発注する委託事業や補助金交付事業において、このガイドラインの遵守を推奨、将来的には要件化を目指します。単発の謝金ではなく、プログラム開発や研修参加を含めた包括的な業務委託契約を基本とします。
    • 客観的根拠：
主な取組②：「アーティスト・イン・レジデンス（AIR）」制度の導入
  • 特定の学校や福祉施設、地域コミュニティに、アーティストが一定期間（例：3ヶ月～1年）継続的に滞在し、地域の一員として創作活動とアウトリーチ活動を並行して行う「アーティスト・イン・スクール／コミュニティ」制度を導入します。
  • これにより、芸術家に安定した活動基盤と収入を提供するとともに、地域住民や施設利用者との深く継続的な関係構築を促します。
    • 客観的根拠：
      • 札幌市の「おとどけアート事業」は、アーティストが小学校に一定期間派遣されるモデルであり、子どもたちと深い関係性を築き、創造的な学びを生み出す点で優れた参考事例となります。
      • （出典）指定都市市長会「指定都市会報 第73号」
主な取組③：芸術家のための経営・法務等に関する相談支援
主な取組④：若手芸術家のためのアウトリーチ・デビュープログラム
KGI・KSI・KPI
  • KGI（最終目標指標）
    • 区内で活動する芸術家の年収中央値 15%向上
      • データ取得方法： 各区または特別区単位で実施する「芸術家の経済状況に関する実態調査」（2年に1回実施）
  • KSI（成功要因指標）
    • アウトリーチ活動を主たる収入源の一つとしている芸術家の割合 20%以上
      • データ取得方法： 同上の実態調査
  • KPI（重要業績評価指標）アウトカム指標
    • 標準報酬ガイドラインを適用した事業の割合 95%以上
      • データ取得方法： 区の委託・補助事業における契約内容のモニタリング調査
    • 事業に参加した芸術家の満足度（報酬の妥当性、やりがい、専門家としての成長実感） 80%以上
      • データ取得方法： 事業参加アーティストを対象とした無記名アンケート調査
  • KPI（重要業績評価指標）アウトプット指標
    • アーティスト・イン・レジデンスの実施件数 各区で年間5件以上
      • データ取得方法： 各区の事業担当部署からの報告に基づく実績集計
    • 芸術家向け専門相談会の開催回数 各区で年間12回（月1回ペース）以上
      • データ取得方法： 相談窓口運営団体からの事業報告書

先進事例

東京都特別区の先進事例

墨田区「新日本フィルハーモニー交響楽団とのフランチャイズ連携」

  • 1988年から続くオーケストラと自治体の長期的・包括的な連携モデルです。すみだトリフォニーホールでの公演活動に留まらず、区内の全公立小中学校を楽団員が訪問する音楽出前授業「トコトン音楽道」や、高齢者介護施設・障害者作業所などへの訪問演奏を組織的・継続的に展開しています。
  • 成功要因： 単発の派遣事業ではなく、オーケストラが地域に根ざした「文化パートナー」として、教育・福祉分野に深く関与している点にあります。長期的な信頼関係が、質の高いプログラムと安定的な運営を可能にしています。

大田区「福祉部局と連携したインクルーシブ事業」

  • 「文化芸術に触れる機会の少ない区民への機会の提供」を中期計画の明確な施策方針として掲げています。具体的には、福祉部局と連携してひとり親家庭等を公演に招待する取組や、障がい者施設へアーティストを派遣し、施設の自主生産品の価値向上に繋げるアートプロジェクトを実施しています。
  • 成功要因： 文化政策を文化振興の枠内に閉じず、福祉政策と明確に接続することで、新たな社会的価値と財源の正当性を生み出している点です。部局間の壁を越えた連携が、より効果的なアプローチを可能にしています。

杉並区「座・高円寺『劇場創造アカデミー』による人材育成」

  • 区立劇場である「座・高円寺」が主体となり、単に作品を上演するだけでなく、次代の「劇場人」を育成する2年制の研修所を運営しています。カリキュラムには、演技や演出といった専門技術だけでなく、劇場の社会的役割を学ぶ講義や、地域連携プログラムへの実践的な参加が含まれています。
  • 成功要因： アウトリーチを担える高度な専門性と社会性を持った人材を、地域の中から継続的に輩出する独自の生態系（エコシステム）を構築している点です。これにより、質の高い担い手の安定的な供給が可能となっています。

全国自治体の先進事例

群馬県高崎市「群馬交響楽団による移動音楽教室」

  • 1947年から75年以上にわたり続く、日本の学校アウトリーチの草分け的存在です。戦後間もない時期から、プロのオーケストラが県内の小中学校を巡回し、子どもたちに本物の音楽を届けてきました。この活動が地域住民や行政の強い支持を集め、楽団の財政基盤を安定させるとともに、高崎市を「音楽の街」として全国に知らしめる礎となりました。
  • 成功要因： 長年にわたる継続的な活動が、文化を地域に深く根付かせ、世代を超えて受け継がれる地域の誇りとなっている点です。

北海道札幌市「おとどけアート事業」

  • 札幌市がNPO法人と連携し、公募で選ばれたアーティストを市内の小学校に一定期間（約2ヶ月間）派遣する事業です。アーティストは校内の空き教室などをアトリエとして使い、自らの創作活動を公開しながら、子どもたちと共同で一つのプロジェクトを遂行します。
  • 成功要因： 一過性の鑑賞体験ではなく、アーティストの創造のプロセスに子どもたちが日常的に触れ、深い関係性を築くことを重視している点です。これにより、子どもたちの創造性やコミュニケーション能力、自己肯定感を効果的に育んでいます。

参考資料［エビデンス検索用］

国（内閣府・文化庁・文部科学省）関連資料
東京都・アーツカウンシル東京関連資料
特別区・その他自治体関連資料
財団法人・研究機関等関連資料

まとめ

　東京都特別区におけるアウトリーチ活動は、単なる文化芸術の普及に留まらず、教育、福祉、地域コミュニティ形成といった複合的な社会課題に対応する極めて有効な政策ツールです。今後の行政支援は、一過性のイベント実施から、専門人材が支える安定的「基盤」を整備し、福祉など他分野と連携して「包摂性」を高め、活動の担い手である「芸術家」のキャリアを支援するという、持続可能な生態系（エコシステム）の構築へと舵を切るべきです。
　本内容が皆様の政策立案等の一助となれば幸いです。
　引き続き、生成AIの動向も見ながら改善・更新して参ります。

ABOUT ME
行政情報ポータル
行政情報ポータル
あらゆる行政情報を分野別に構造化
行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の３つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。
関連記事
あわせて読みたい
記事URLをコピーしました