2025.10.31 05 特別区(23区) 【2025年10月31日】行政関連ニュースと政策立案のヒント masashi0025 目次 自治体経営世田谷区「第二次総合計画(第3次改定)素案」公表とパブリック・コメント募集「令和8年度江戸川区立小・中学校用務業務委託」受託事業者公募環境政策釧路湿原国立公園の区域拡張方針(メガソーラー対策)毎月30日は「冷蔵庫クリーンアップデー」の推進「良好な環境創出シンポジウム2025」の開催DX政策板橋区 戸籍住民課への「対話型AI」による電話自動応答システム導入防災政策主要な下水道管の「複線化」推進方針生活安全政策ハロウィーン当日の安全対策(ハチ公像周辺の仮囲い・プレスエリア設置)放射線量測定機器の検査における不正行為の発表社会保障令和8年度「高年齢者活躍企業コンテスト」の募集開始労働基準法改正に関する議論(過労死ライン・柔軟な働き方)スポーツ政策東京2025デフリンピック 練馬区ゆかりの代表選手の表敬訪問自治体経営 世田谷区「第二次総合計画(第3次改定)素案」公表とパブリック・コメント募集 概要 出典 世田谷区報道発表 ニュース概要 世田谷区が、今後10年間の区政運営の指針となる「第二次総合計画(第3次改定)素案」を公表しました。行政運営の最上位計画として、11月末まで区民からのパブリック・コメント(意見公募)を募集します。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 総合計画は、自治体運営における全ての個別政策(福祉、環境、DX等)の方向性を定める最上位の指針です。その策定プロセスにおいて区民の意見を公募することは、計画の民主的な正当性を担保し、透明性を確保するために不可欠です。 具体的なアクション 今後10年間の区政の指針となる総合計画の「第3次改定」素案を策定し、広く区民に公表しました。11月末までを期間とし、パブリック・コメントを通じて多様な意見を収集します。 行政側の意図 計画策定プロセスへの区民参加を制度的に保障することで、多様化するニーズを計画に反映させます。これにより、計画の実効性と、策定された計画に対する区民の納得感を高める狙いがあります。 期待される効果 収集した意見を反映させることで、より実態に即した計画が策定できます。また、区民との協働による計画的な行政運営が実現され、区民満足度の向上に繋がります。 課題・次のステップ 収集したパブリック・コメントを丁寧に分析し、どの意見をどのように計画に反映したか(あるいは反映しなかったか、その理由)を明確に示す説明責任が求められます。その後、計画を具体的な事業・予算に落とし込む作業が次のステップとなります。 特別区への示唆 総合計画の見直しは、多くの区で共通する重要課題です。世田谷区の素案で示された重点施策(例:DX、脱炭素、子育て支援)の優先順位付けは、他区が自区の計画を策定・見直しする上で、重要なベンチマーク(比較対象)となります。 他区での横展開・応用 他区は、世田谷区のパブリック・コメント周知方法(ウェブサイト、広報誌、SNSの活用など)や、素案で示された新たな課題(例:デジタルデバイド対策、物価高騰への対応)への向き合い方を、自区の計画策定プロセスにおいて具体的に参考にできます。 「令和8年度江戸川区立小・中学校用務業務委託」受託事業者公募 概要 出典 江戸川区 ニュース概要 江戸川区は、令和8年度の区立小・中学校における用務業務委託について、公募型プロポーザル方式による受託事業者の選定を開始しました。価格だけでなく、業務の質や提案内容を総合的に評価し、事業者を選定します。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 学校用務は、教員の負担軽減、学校の安全管理、学習環境の維持に直結する重要な業務です。民間の専門的なノウハウを活用することで、業務の効率化と教育環境の質的向上を両立させることを目的としています。 具体的なアクション 業務内容を詳細に記した「実施要項」および「要求仕様書」(A・B・Cの3グループ)を公開し、事業者からの企画提案書を公募します。価格点と技術点(提案内容)を総合的に評価するプロポーザル方式を採用しました。 行政側の意図 従来の仕様発注や随意契約から「公募型プロポーザル方式」に切り替えることで、単なる価格競争を脱却します。安全管理や環境整備に関する積極的な提案を引き出し、より質の高いサービス水準を確保する狙いがあります。 期待される効果 専門事業者による安定した業務遂行が期待されます。これにより、教員が授業や生徒指導といった本来のコア業務に専念できる環境が整備され、教育の質の向上に繋がります。 課題・次のステップ 委託開始後、仕様書通りに業務が履行されているかを監視・評価(モニタリング)する仕組みの構築が重要です。また、既存の直営職員やシルバー人材センター等からの円滑な業務移行を管理する必要があります。 特別区への示唆 学校用務のあり方は全区共通の課題です。「プロポーザル方式」の採用は、委託の目的が単なるコスト削減から「教育環境の質的向上」へとシフトしていることを明確に示しており、他区もこの視点を持つ必要があります。 他区での横展開・応用 他区が用務委託を更新・新規導入する際、江戸川区の要求仕様書(特にA,B,Cと分割発注する手法)や、選定基準(価格と技術点の配分)は、質の高い事業者を選定するための優れたモデルケースとなります。この手法は学校以外の施設(図書館、区民館、保育園)の管理委託にも応用可能です。 環境政策 釧路湿原国立公園の区域拡張方針(メガソーラー対策) 概要 出典 47NEWS(環境省関連) ニュース概要 環境省は、北海道の釧路湿原国立公園周辺でメガソーラーの建設が進んでいる問題を受け、公園の指定区域を拡張する方針を固めました。国立公園に指定されれば、国が開発を法的に制限できるようになります。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 「脱炭素(再生可能エネルギー推進)」という政策目的と、「生態系・景観保全」という別の政策目的が現場で対立しています。このコンフリクトに対し、無秩序な大規模開発から貴重な生態系や景観を守るため、法的措置に踏み切りました。 具体的なアクション 生態系調査や関係自治体との意見交換を経て、国立公園法に基づき指定区域を拡張します。これにより、区域内でのメガソーラー建設など大規模な開発行為を法的に制限します。 行政側の意図 既存の条例やゾーニング規制では対応が困難な大規模開発に対し、「国立公園指定」という最も強力な法的規制を適用することで、これ以上の生態系破壊や景観の悪化を確実に防ぐ狙いがあります。 期待される効果 湿地の貴重な生態系や、国立公園としての広大な景観が法的に保全されます。また、他の地域における無秩序な開発計画に対する抑止力となることも期待されます。 課題・次のステップ 最大の課題は、既に「建設済みの発電設備に対しては規制が及ばない」点です。経産省や国交省と連携し、既存設備への対策(例:景観配慮の指導、将来的な撤去誘導など)を別途検討する必要があります。 特別区への示唆 特別区においても、「再開発による高層ビルと景観・日照権」「歴史的建造物の保存と開発」など、「開発 vs 環境・景観」の対立は常に発生します。この事例は、環境や景観を守るためには、「保護区(例:景観地区、風致地区)」の指定・拡張といった強いゾーニング規制が、最終手段として有効であることを示しています。 他区での横展開・応用 他区において、保護すべき緑地や水辺、歴史的街並みの周辺で望ましくない開発が計画された場合、釧路の事例を教訓とすべきです。「建設済みには規制が及ばない」ため、手遅れになる前に、景観条例や都市計画法に基づく「特別地区」の指定・拡張を予防的に検討する根拠となります。 毎月30日は「冷蔵庫クリーンアップデー」の推進 概要 出典 江戸川区 ニュース概要 江戸川区は、食品ロス削減の取り組みの一環として、毎月30日を「冷蔵庫クリーンアップデー」と定めました。区のウェブサイトでは、余った食材を使い切るための「30・10食べきりレシピ」を提供し、実践を呼びかけています。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 家庭から出る食品ロスは、可燃ごみの主要な要因の一つです。この食品ロスを削減することで、ごみの総量を減らし、清掃事業のコスト削減と資源の有効活用(SDGs達成)を促進するために行います。 具体的なアクション 「毎月30日」という覚えやすく具体的な行動日(トリガー)を設定しました。さらに、余りやすい食材(例:冷凍ポテト、鮭フレーク)を活用した「食べきりレシピ」を区のウェブサイト等で具体的に提供し、行動を後押ししています。 行政側の意図 「食品ロスを減らそう」という抽象的な意識啓発にとどまりません。「いつ(30日)」「何を(レシピ活用)」という具体的な行動を提示する(ナッジ理論の活用)ことで、区民の実際のアクション(行動変容)を促す狙いがあります。 期待される効果 各家庭における食品の廃棄(食品ロス)が抑制され、可燃ごみの減量に繋がります。また、レシピを通じて、区民の環境意識や「もったいない」という意識が醸成されることが期待されます。 課題・次のステップ この取り組みの継続的な周知が不可欠です。また、レシピのレパートリーを拡充したり、季節の食材を取り上げたりすることで、区民の関心を持続させることが求められます。効果測定(ごみ減量効果)の分析も重要です。 特別区への示唆 食品ロス(可燃ごみ)削減は、全ての特別区に共通する喫緊の課題です。江戸川区の「具体的な行動日+具体的な解決策(レシピ)」という組み合わせは、低コストで高い行動変容効果が期待できるアプローチとして、非常に参考になります。 他区での横展開・応用 この施策は、他区でもすぐに導入可能です。クックパッドのような民間レシピサイトとの連携や、区内の食品スーパーとタイアップし、30日近辺に「食べきりレシピ」のポップ広告を店頭に設置するなど、民間と連携した形での展開も効果的です。 「良好な環境創出シンポジウム2025」の開催 概要 出典 環境省 ニュース概要 環境省は、豊かな水辺など「良好な環境」を活かした地域づくりと、多様な主体(企業、NPO、自治体)の連携促進を目的とした「良好な環境創出シンポジウム2025」を、12月22日に千代田区でハイブリッド開催すると発表しました。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 環境保全活動を持続可能なものにするため、環境省は「規制」だけでなく「環境資産の活用による地域振興(サステナブル・ツーリズム)」を推進しています。このシンポジウムは、そのモデル事業の成果を共有し、関係者間の連携(共創)を促進するために開催されます。 具体的なアクション 企業(Jリーグ、王子ホールディングス)や観光コンサルタントによる基調講演、モデル事業実施団体によるパネルディスカッション、ブースセッション形式の活動交流会を実施します。 行政側の意図 国(環境省)がハブとなり、企業(CSR・CSV活動)、NPO、自治体をマッチングさせる「場」を提供します。これにより、「水辺の環境活動プラットフォーム」への参加を促し、環境保全活動の担い手を増やし、活動の自走化・ネットワーク化を図る狙いがあります。 期待される効果 自治体やNPOが、環境保全活動における企業連携の手法や、サステナブル・ツーリズムに関する最新の知見、具体的な人脈を獲得することが期待されます。 課題・次のステップ シンポジウムで得た知見や人脈を、各地域(自治体)が持ち帰り、自地域の具体的なプロジェクト(例:水辺空間の魅力向上、環境教育プログラムの開発)に結び付けられるかが課題となります。 特別区への示唆 特別区には、東京湾、隅田川、多摩川、神田川など、ポテンシャルの高い「水辺環境」が豊富に存在します。このシンポジウムは、そうした水辺空間の新たな活用法(例:観光資源化、企業CSR活動の誘致)を考える上で、国の支援策や先進事例を知る絶好の機会です。 他区での横展開・応用 区の地域振興課、環境政策課、都市整備課などの担当者は、このシンポジウムに積極的に参加すべきです。単なる聴講にとどまらず、活動交流会で登壇企業やモデル団体と名刺交換し、自区の水辺活用プロジェクトへの協力(協賛、技術提供)を打診する「営業の場」として活用できます。 DX政策 板橋区 戸籍住民課への「対話型AI」による電話自動応答システム導入 概要 出典 板橋区報道発表 ニュース概要 板橋区は、戸籍住民課への問い合わせに対し、24時間365日対応可能な「対話型AI」による電話自動応答システムを導入しました。これにより、住民の利便性向上と職員の業務負担軽減を同時に図ります。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 自治体DX(フロントオフィス改革)の一環です。最も問い合わせが多く、かつ定型的な回答が多い戸籍住民課の「電話」対応をAIで自動化します。これにより、職員をより複雑な相談業務や窓口対応に振り向け、区民サービスの質と事務効率を同時に向上させます。 具体的なアクション 「対話型AI」技術を導入し、戸籍住民課の業務知識(FAQ)を学習させました。これにより、24時間365日、住民からの電話問い合わせ(例:必要書類、窓口時間)にAIが自動で応答するシステムを構築・運用開始しました。 行政側の意図 住民サービスの最大チャネルである「電話」の自動化に踏み込むことで、職員の負担を抜本的に軽減する狙いがあります。また、開庁時間外でも住民が情報を得られる体制を構築し、「待たない窓口」を実現します。 期待される効果 職員が電話対応に費やしていた時間が大幅に削減されます。同時に、住民にとっては、電話が「つながらない」ストレスや、開庁時間外に「聞けない」不便さが解消されることが期待されます。 課題・次のステップ AIの回答精度の継続的なチューニング(改善)が不可欠です。また、AIでは対応できない複雑な問い合わせやクレームを、スムーズに「人間の職員」へ引き継ぐ(エスカレーション)ためのルール設計と運用が課題となります。 特別区への示唆 戸籍住民課は、全特別区で最も業務負荷の高い窓口の一つです。板橋区のこの取り組みは、他区が追随すべきDXの「キラーアプリケーション」と言えます。特に、PCやスマホが苦手な層も利用する「電話」チャネルへのAI導入は、ウェブのチャットボット導入よりも優先度が高い可能性があります。 他区での横展開・応用 他区は、板橋区の事例を参考に、①導入したAIベンダーと費用対効果(コスト)、②AIの学習プロセス(どの程度の期間とデータが必要だったか)を調査すべきです。戸籍住民課での成功後は、国民健康保険課、介護保険課、子育て支援課など、他の問い合わせが多い窓口への横展開が即座に検討できます。 防災政策 主要な下水道管の「複線化」推進方針 概要 出典 47NEWS(国土交通省関連) ニュース概要 国土交通省は、埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け、住民生活を支える主要な下水道管について、破損に備えて別ルートの管を設置する「複線化」を進める方針を10月30日に明らかにしました。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 地震や老朽化により主要な下水道管(単一障害点)が破損した場合、下水機能が広域で停止し、道路陥没などの二次災害を引き起こします。これを防ぎ、都市機能の麻痺を回避するためにインフラの冗長性(フェイルセーフ)を確保します。 具体的なアクション 国土交通省が年明け以降に関連基準を改正します。対象は「下水処理場につながる管」「直径2メートル以上の大型管」「緊急輸送道路直下の管」などとし、自治体に複線化整備(別ルートでの新設)を求めます。 行政側の意図 従来の「維持管理・更新(壊れたら直す、古くなったら交換する)」というインフラ政策から、「重要インフラは壊れても機能停止しない(冗長性確保)」という、より強靭化を重視した政策へとカジを切る意図があります。 期待される効果 大規模災害や不測の事故が発生した際にも、下水道機能の継続性(BCP)が確保されます。これにより、道路陥没や公衆衛生の悪化といった深刻な二次災害を未然に防ぐことができます。 課題・次のステップ 最大の課題は、莫大な整備費用(財源)の確保です。複線化はゼロからもう1本を通すに等しく、長期の整備計画策定と、他のインフラ整備との優先順位付け(財源の配分)が自治体に重くのしかかります。 特別区への示唆 この国の方針転換は、特別区のインフラ整備にとって極めて重大な(そしてコストのかかる)意味を持ちます。東京都下水道局と緊密に連携し、自区内の該当管路(特に緊急輸送道路直下)がどこに存在するかを早急に特定し、財政影響を試算する必要があります。 他区での横展開・応用 区の都市整備部門や防災部門は、この国の方針を、自区の「都市計画マスタープラン」や「地域防災計画」の見直しに反映させる必要があります。「下水道が止まる」ことを前提とした従来の避難所運営計画なども、見直しが迫られる可能性があります。 生活安全政策 ハロウィーン当日の安全対策(ハチ公像周辺の仮囲い・プレスエリア設置) 概要 出典 渋谷区 ニュース概要 ※これは10月21日発表のニュースですが、10月30日・31日の安全対策に関する重要な政策発表のため、参考情報として掲載します。 渋谷区は、ハロウィーン期間(10月30日~11月1日)の安全対策として、混雑・混乱を避けるため、忠犬ハチ公像周辺に仮囲いを設置し、報道機関向けのプレスエリアを設けることを発表しました。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 特定の主催者がいない自然発生的な群衆(ハロウィーン)に対し、過去の教訓(雑踏事故、トラブル)を踏まえ、公衆の安全を確保し、事故を未然に防止するため。 具体的なアクション 群衆が滞留しやすいシンボル(忠犬ハチ公像)を物理的に封鎖(仮囲い設置)します。また、報道陣の動線を一般参加者と分離するため、専用のプレスエリア(2箇所)を設置します。 行政側の意図 「路上飲酒禁止条例」といった法的措置に加え、群衆の「流れ」を物理的に設計します。「滞留(ボトルネック)の排除」と「メディア・コントロール」という2大リスク要因をあらかじめ排除し、警察警備の効果を最大化する狙いがあります。 期待される効果 渋谷駅周辺の特定箇所への過度な集中を防ぎ、群衆の流動性を確保します。これにより、雑踏事故の発生リスクを低減し、一般通行人の動線を確保します。 課題・次のステップ ハチ公前を封鎖することによる「風船効果」(別の場所、例えばセンター街の奥地などが逆に混雑する可能性)の監視と、それに応じた機動的な警備体制が求められます。 特別区への示唆 自然発生的な群衆(例:花見シーズンの目黒川沿い、大規模デモ、スポーツの凱旋パレード)の管理において、渋谷区の「シンボルの無力化」と「メディア動線の指定」は、自治体(区)が警察と連携して取り得る、非常に高度で有効な戦術として参考になります。 他区での横展開・応用 他区でも、大規模イベント(花火大会、地域祭りなど)の際、最も混雑が予想される「結節点」(例:最寄り駅の出口、橋の上、神社の参道)をあえて一方通行に規制したり、メディアの撮影場所を指定したりすることで、群衆の「流れ」をデザインし、事故を予防する取り組みに応用できます。 放射線量測定機器の検査における不正行為の発表 概要 出典 47NEWS(環境省など関連) ニュース概要 環境省などは10月30日、東京電力福島第一原発や除染土壌の放射線量測定機器について、検査を受託した「千代田テクノル」が不正行為をしていたと発表しました。検査を行わずに、検査済みの校正証明書やシールを偽造していました。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 国民の安全と環境モニタリングの根幹である「測定機器の信頼性」を揺るがす重大な不正です。事実を速やかに公表し、影響範囲を特定した上で、再検査による信頼回復に努める社会的責任があります。 具体的なアクション 不正の事実(対象期間:2022年9月~25年9月、対象台数:環境省分約1100台、東電分199台)を公表しました。関係機関と連携し、不正のあった機器の再検査や代替機器の手配を進めます。 行政側の意図 事実関係を透明性をもって公表し、関係機関(東電、福島県)と連携して影響範囲の特定と対処に全力を挙げる姿勢を示すことで、行政への信頼失墜を最小限に食い止めます。 期待される効果 不正のあった全機器の再検査・交換を通じて、放射線量モニタリングの安全性が再確認されます。また、委託先事業者に対する厳格な対処(契約解除、損害賠償請求等)が行われます。 課題・次のステップ なぜ3年間(2022年~25年)もの長期間、行政側(発注者)が不正を見抜けなかったのか、監督・検査体制の不備を徹底的に検証する必要があります。他の点検受託事業者への一斉調査も求められます。 特別区への示唆 これは対岸の火事ではありません。特別区も区民の生命・安全に関わる多数の点検業務(例:区立施設の消防設備、エレベーター、アスベスト測定、公園の遊具点検)を外部委託しています。委託先が発行する「点検済証」や「報告書」(1の「校正証明書」に相当)を盲信することの重大なリスクを示しています。 他区での横展開・応用 区の契約担当課や各施設の所管課は、この事例を教訓とし、特に生命・安全に関わる重要な点検委託契約を見直すべきです。具体的には、①契約仕様書に「抜き打ちの実地検査」や「第三者機関による再監査」の条項を盛り込む、②不正発覚時の違約金(ペナルティ)を厳格化する、といったリスク管理策の導入が検討されます。 社会保障 令和8年度「高年齢者活躍企業コンテスト」の募集開始 概要 出典 厚生労働省 ニュース概要 厚生労働省は10月30日、高年齢者がいきいきと働くことができるよう創意工夫を行っている企業の事例を募集する、令和8年度「高年齢者活躍企業コンテスト」の実施を発表しました。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 労働力人口の減少対策および「生涯現役社会」の実現に向け、企業による高年齢者の雇用環境整備(例:70歳以上の活躍の場、リスキリング支援)を促進するため。 具体的なアクション 企業の先進的な取り組み事例(創意工夫)を全国から公募し、審査の上、優れた事例を表彰し、その内容を広く社会に公表・周知します。 行政側の意図 「規制(雇用義務)」や「補助金」といった直接的な手段(ハードな政策)だけでなく、「表彰(コンテスト)」というインセンティブ(ソフトな政策)を与えることで、企業の自主的な取り組みを促し、先進事例の横展開(ベストプラクティスの共有)を図る狙いがあります。 期待される効果 高齢者雇用に関する企業の意識改革が進みます。また、多様な働き方のモデルケースが社会に共有されることで、他企業の取り組みが触発されることが期待されます。 課題・次のステップ コンテストの応募を促進するための広報活動と、表彰事例の分析・類型化が重要です。一過性のイベントで終わらせず、優良事例を他企業(特に中小企業)が導入できるよう、具体的なノウハウの普及支援が求められます。 特別区への示唆 特別区は、多数の中小企業が集積する「企業のまち」であると同時に、多くの元気な高齢者が暮らす「高齢者のまち」でもあります。この国のコンテストは、区内の企業と高齢者をマッチングさせ、地域の活力を維持するための絶好の「ツール」として活用できます。 他区での横展開・応用 区の産業振興部門や高齢者支援部門は、この国のコンテストを、区の広報誌や商工会議所、産業振興センターのルートで区内企業に積極的に周知すべきです。さらに一歩進め、区独自で「(〇〇区)高年齢者活躍企業 顕彰制度」を創設し、国のコンテストと連動させることで、区内企業の取り組みを強力に後押しできます。 労働基準法改正に関する議論(過労死ライン・柔軟な働き方) 概要 出典 47NEWS(厚生労働省関連) ニュース概要 厚生労働省の労働政策審議会・分科会で、労働基準法改正を巡る議論が行われています。政府が求める「柔軟な働き方(労働時間規制の緩和)」に対し、労働側は「過労死ライン水準の規制緩和は断じてあってはならない」と強く反発しています。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 政府が指示する「柔軟な働き方」の実現と、労働者の「健康維持・過労死防止」という、相反する可能性のある要請を両立させるため、労働基準法の改正内容(例:14日以上の連続勤務禁止、副業の割増賃金算定)を審議会で議論しています。 具体的なアクション 有識者研究会の報告書に基づき、審議会で「14日以上の連続勤務の禁止」や「副業の割増賃金算定方法の見直し」といった具体的な改正項目について、労使の意見を聴取し、議論を進めています。 行政側の意図 産業界の要望(柔軟性)と労働側の要望(健康確保)の落とし所を探り、早ければ来年の通常国会に提出可能な法案として取りまとめることを目指しています。 期待される効果 現代の多様な働き方(副業、リモートワーク、フリーランス)に対応しつつ、過労死を防止するための新たな労働時間ルールが確立されることが期待されます。 課題・次のステップ 「柔軟な働き方」が、実質的な「規制緩和(=長時間労働の温床)」とならないよう、両者の主張の溝を埋める具体的な制度設計が最大の課題です。 特別区への示唆 この法改正の議論は、特別区にとって「二重」に重要です。①区内事業者の指導監督、②特別区自身(区役所、区立施設)の職員の労務管理、の両方に直結します。特に、24時間シフト勤務が不可欠な福祉・医療・防災の職場への影響は甚大です。 他区での横展開・応用 これは「横展開」ではなく「全区共通の対応準備」を要する課題です。区の人事・労務管理部門は、この審議会の動向を注視すべきです。「14日以上の連続勤務禁止」といった新たな規制が導入された場合、現在のシフト体制が維持可能か、人員体制の見直し(増員)がどの程度必要になるか、シミュレーションと影響試算を開始する必要があります。 スポーツ政策 東京2025デフリンピック 練馬区ゆかりの代表選手の表敬訪問 概要 出典 練馬区 ニュース概要 練馬区は、2025年11月に東京で開催される「東京2025デフリンピック」の機運醸成のため、10月30日に区にゆかりのある日本代表選手4名とスタッフを区役所に招き、区長への表敬訪問を実施しました。 政策立案への示唆 この取組を行政が行う理由 東京で開催される国際大会(デフリンピック)を地域レベルで支援するためです。区民の関心と理解(特に聴覚障害や手話)を高めるとともに、地域ゆかりの選手を応援することで、区民の一体感や郷土愛を育むことを目的としています。 具体的なアクション 練馬区にゆかりのある選手4名(陸上、サッカー、空手、卓球)と監督・スタッフ3名を区役所に招待し、区長がエールを送る表敬訪問を実施しました。あわせて、デフリンピックキャラバンカーの来庁やパネル展の開催も行います。 行政側の意図 デフリンピックという大会自体の広報に加え、「練馬区の〇〇選手」というローカルで身近な視点を加えることで、区民にとって遠い国際大会を「自分ごと化」してもらい、応援の機運を高める狙いがあります。 期待される効果 区民のデフリンピックへの関心と理解が向上します。特に聴覚障害や手話文化に触れる良い機会となり、共生社会の実現にも寄与します。また、地域の一体感の醸成が期待されます。 課題・次のステップ 表敬訪問を一過性のイベントで終わらせず、11月の本大会開催まで継続的に情報発信することが重要です。また、大会後のレガシー(例:区の手話普及事業の強化、障害者スポーツの振興)にどう繋げるかを計画する必要があります。 特別区への示唆 デフリンピックは東京全体のイベントです。認知度向上という課題に対し、練馬区の「地元ゆかりの選手」をフックにする手法は、区民の関心を最も効率的に高める王道のアプローチであり、他区も参考にすべきです。 他区での横展開・応用 他の特別区も、自区の在住・在勤・在学者からデフリンピック選手や関係者を発掘し、同様の表敬訪問、壮行会、区役所でのパネル展示、パブリックビューイングなどを企画できます。これはデフリンピックに限らず、あらゆる全国大会・国際大会に応用可能な「スポーツ振興×地域振興」の基本施策です。 #05 特別区(23区)#91 取組#92 行政ニュース#99 その他 ABOUT ME 行政情報ポータルあらゆる行政情報を分野別に構造化行政情報ポータルは、「情報ストックの整理」「情報フローの整理」「実践的な情報発信」の3つのアクションにより、行政職員のロジック構築をサポートします。