04 東京都

【東京都】東京都無電柱化計画の改定

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はじめに

※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。

エグゼクティブサマリー

 東京都は2026(令和8)年6月、「東京都無電柱化計画」を改定しました。1986(昭和61)年度に第1期電線類地中化計画を策定して以来、約40年にわたり8期の計画を重ねてきた取組の第9期にあたるもので、計画期間は2026(令和8)年度から2030(令和12)年度までの5か年です。今回の改定は、能登半島地震や台風被害といった災害リスクの高まりを背景に、「首都防衛」の中心的取組として無電柱化を一段と加速させる方針を明確にした点に特徴があります。

 これまでの成果として、整備対象都道2,328kmのうち2025(令和7)年度末時点で1,146kmの整備が完了し、地中化率は49%に達しました。区部に限れば69%、多摩地域は24%、島しょは3%であり、地域間で進捗に大きな差が生じています。第8期計画期間における第一次緊急輸送道路の無電柱化速度は、第1期から第6期までの年1.0%、第7期の年1.6%に対し、年2.8%へと加速しました。第一次緊急輸送道路の地中化率は2013年の27%から2025年には52%へと上昇しています。

 第9期計画は5つのポイントを掲げています。重点整備エリアを環状七号線内側から環状八号線まで拡大すること、地中レーダー探査の原則活用や電力・通信の同時施工によるスピードアップ、八丈島など島しょ地域の復興・強靭化、区市町村への連携・支援強化と電柱新設禁止の拡大、そして全国初となる「東京における宅地開発の無電柱化の推進に関する条例」の制定です。5か年では現在事業中の405kmに新たに着手する320kmを加えた都道725kmを軸に、国道57km、区市町村道323kmを合わせた1,105kmで整備を進めます。

 特別区にとって、本改定は二つの意味で重要です。第一に、都道から災害拠点病院や大規模救出救助活動拠点へとつながる区市町村道が「都・区市町村無電柱化検討会議」で抽出され、区の無電柱化計画への位置付けと早期事業化が求められること。第二に、2026(令和8)年2月に区市町村道の緊急輸送道路全線で電柱新設禁止措置が完了し、宅地開発条例の施行も予定されるなど、「電柱を増やさない」局面が制度的に整いつつあることです。財政・技術両面の都の支援メニューをいかに使いこなし、自区の防災・景観・歩行空間の課題に接続するかが、各区の力量を分ける局面に入ったと考えられます。

無電柱化計画改定の意義

「首都防衛」の中心的取組としての位置付け

 今回の改定で最も重要な変化は、無電柱化が単独の道路事業ではなく、都市の強靭化を支える「首都防衛」の中心的取組として明確に位置付けられた点です。背景には、災害が現実のものとして相次いだ事実があります。2024(令和6)年1月の能登半島地震では約3,480本の電柱が倒壊・損壊し、道路閉塞を引き起こすとともに約4万戸が停電する甚大な被害が発生しました。2025(令和7)年10月の台風22号・23号では、1週間で2つの台風が通過し、最大瞬間風速40m以上の非常に強い風によって八丈島などで電柱倒壊や断線の被害が生じました。

 東京においては、首都直下地震の発生確率が今後30年間で約70%とされており、切迫性が高まっています。電柱が倒壊すれば、救助・救援や復旧の動線が物理的に断たれます。無電柱化は、こうした事態を未然に防ぐ「備え」として、防災施策の体系の中に組み込まれたのです。

「電柱を減らす」から「増やさない」への両輪化

 もう一つの意義は、施策の重心が「電柱を減らす」整備事業だけでなく、「電柱を増やさない」予防的規制へと広がったことです。都道においては、2017(平成29)年9月の条例施行により都道全線で電柱の新設が禁止され、条例制定後に約5,300本の電柱が撤去されました。これにより都道の電柱本数は2020(令和2)年度の約54,300本から2024(令和6)年度の約52,200本へと年々減少しています。一方で、区市町村道の電柱本数は約634,500本から約633,500本とほぼ横ばいで推移しており、ここに「増やさない」取組を広げる必要性が示されています。

 今回、2026(令和8)年3月に制定された「東京における宅地開発の無電柱化の推進に関する条例」は、規制区域内の宅地開発において技術的に困難な場合等を除き電柱・電線の新設を原則禁止とする全国初の条例です。整備(減らす)と規制(増やさない)を両輪として回す体制が、制度面で整いつつあると言えます。

無電柱化の歴史と経過

8期40年の積み重ねと加速の転換点

 東京都の無電柱化は、1986(昭和61)年度の第1期電線類地中化計画に始まります。「都市防災機能の強化」「安全で快適な歩行空間の確保」「良好な都市景観の創出」という3つの目的を掲げ、国や区市町村、電線管理者と連携して整備を進めてきました。都道における整備済延長の推移を5期ごとにみると、第1期にあたる昭和61〜平成2年度の276kmから、平成3〜6年度に330km、平成7〜10年度に444km、平成11〜15年度に524km、平成16〜20年度に626km、平成21〜25年度に819km、平成26〜令和2年度に1,021km、そして令和3〜7年度に1,146kmへと、着実に積み上がってきました。

制度面での主な節目

 制度の歴史をたどると、2016(平成28)年12月の「無電柱化の推進に関する法律」成立が大きな転換点となりました。これを受け、都は2017(平成29)年6月に都道府県で全国初となる「東京都無電柱化推進条例」を制定し、同年9月の施行と同時に都道全線で電柱の新設を禁止しています。2021(令和3)年2月には「無電柱化加速化戦略」を策定し、同年6月に計画を改定しました。2022(令和4)年1月には「東京都島しょ地域無電柱化整備計画」を策定し、利島・御蔵島の2島を「電柱のない島」に選定しています。

直近10年の加速

 特に2016(平成28)年以降、無電柱化は都政の最重要政策の一つに位置付けられ、取組が加速しました。第一次緊急輸送道路の地中化率は、2013年の27%から2020年の38%を経て、2025年には52%に達しています。整備のペースを期間ごとに比較すると、第1期から第6期までが年1.0%、第7期が年1.6%、第8期が年2.8%と、計画期を追うごとに速度が高まってきたことが数字に表れています。

国の計画との整合

 国においては、無電柱化推進法に基づく「第3次無電柱化推進計画」が2026(令和8)年6月に策定され、今後5年間で全国1,000kmの整備完了を目指すこととされています。この計画では、高速道路インターチェンジと県庁等を結ぶ区間を優先整備区間として選定する道路啓開の実効性確保、通学路を新たに無電柱化の対象とする児童の事故リスク低減、観光地等での面的整備による景観創出という3つのポイントが示されました。東京都の第9期計画は、この国の計画と整合を図りながら策定されています。

現状データで読み解く到達点と課題

地中化率に見る地域間格差

 2025(令和7)年度末時点の都道の地中化率は、全体で49%です。内訳をみると、区部は整備対象1,288kmに対し896kmが整備済で69%、多摩地域は1,040kmに対し250kmで24%、島しょは173kmに対し6kmで3%となっています。区部が7割近くに達している一方、多摩・島しょとの差は依然として大きく、地域特性に応じた整備の進め方が課題として浮かび上がります。

 なお、ここで用いられている「地中化率」は、電線共同溝等の整備対象延長に対する整備済延長の比率であり、都が事業の進捗管理に用いている指標です。これとは別に、道路延長に対する道路両側に電柱のない道路延長の比率を示す「無電柱化率」という指標も定義されています。両者は分母・分子の取り方が異なるため、他都市や海外の数値と比較する際には指標の定義の違いに留意する必要があります。

諸外国・国内他都市との比較における留意点

 国土交通省の資料によれば、ロンドンやパリなどの欧米主要都市では無電柱化率が100%に達している都市もあるとされる一方、日本の無電柱化率は東京23区で8%程度と立ち遅れているとされています。ただし、海外の数値はケーブル延長ベース、日本は道路延長ベースで算出されている場合があり、単純な横並び比較には注意が必要です。指標の定義と算出基準が異なるため、数値の大小のみで進捗を断ずることは避けるべきと考えられます。それでもなお、国際的にみて日本の無電柱化に伸びしろが大きいことは、多くの資料が共通して指摘するところです。

電柱本数の推移が示す構造

 都内の電柱本数は、2024(令和6)年度時点で都道に約52,200本、区市町村道に約633,500本、合計で約685,700本です。区市町村道が全体の9割以上を占めており、生活道路の無電柱化なくして都内全域の無電柱化は完結しないという構造が、数字から明確に読み取れます。合計本数は2020(令和2)年度の約688,800本から2024(令和6)年度の約685,700本へと緩やかに減少していますが、その大半は都道での撤去によるものであり、区市町村道での「増やさない」取組をいかに広げるかが鍵となります。

災害時の被害想定と効果の定量

 無電柱化の効果は、災害時の被害想定からも裏付けられています。2022(令和4)年公表の「首都直下地震等による東京の被害想定」を基にした推計では、都心南部直下地震発生時の建物全壊等による電柱損壊本数は約4,600本とされています。また、同地震時の配電設備被害による停電率は11.9%とされ、そのうち7.7%は電柱損壊に起因すると推計されています。

 実災害における効果も確認されています。能登半島地震では、輪島市をはじめ8市町の無電柱化区間約20kmにおいて、発災直後から救助・復旧活動を行う車両の通行が可能だったと報告されています。倒壊した電柱や電線の撤去には電線管理者による作業が必要となるため、同地震では道路啓開に際して電線管理者の作業待ちが発生したとされており、無電柱化された区間との対比が際立ちました。これらは、無電柱化が電柱損壊に伴う停電リスクを低減し、都民生活や企業活動の継続性を高める効果を持つことを示す事例と考えられます。

政策立案の示唆

この取組を行政が行う理由

 無電柱化を行政が主体的に進める理由は、市場原理だけでは供給されにくい性質を持つためです。電柱は点検・保守が容易で低コストであり、外灯や交通標識も設置できるという利点があります。意見募集でも電柱の維持を求める声が寄せられており、地中構造物は被災時の点検・復旧が困難だという指摘もありました。こうした個別主体の合理性だけに委ねれば、防災・景観・歩行空間といった社会全体の便益は十分に確保されません。

 無電柱化の便益は、災害時の道路閉塞回避、停電・通信障害の防止、歩道幅員の確保によるバリアフリー、良好な景観の創出など、広く社会全体に及びます。これらは個々の事業者や住民が単独で実現するには費用負担が過大であり、便益が広範に分散するため、道路管理者である行政が計画的に整備を担う必要があります。電線共同溝方式を基本とし、道路管理者が共同溝を整備し電線管理者が電線・地上機器を整備するという役割分担は、こうした性格に対応した仕組みです。

行政側の意図

 今回の改定に込められた行政側の意図は、限られた資源を防災効果の高い箇所に集中させることにあると考えられます。重点整備エリアを環状七号線内側から環状八号線まで拡大した背景には、首都直下地震で環状八号線内側の木造住宅密集地域等に甚大な被害が想定されていることがあります。また、警視庁は震度5強の地震発生時に環状七号線・環状八号線で都心方向への車両流入を規制することとしており、これらの環状道路は災害時の交通管理上も重要な意味を持ちます。

 防災拠点へのアクセスルート整備も同じ発想に立っています。第一次緊急輸送道路に加え、立川広域防災基地、都内84箇所の災害拠点病院、都内60箇所の大規模救出救助活動拠点、警察・消防署へとつながる都道を重点的に整備する方針が示されました。これは、「線」としての緊急輸送道路から、「拠点へのアクセス」という機能に着目した整備へと、選定の考え方を深化させたものと位置付けられます。

期待される効果

整備のスピードアップ

 第9期計画では、整備を加速する具体的な手法が複数導入されています。地中レーダー探査は掘削せずに地下埋設物を把握できるため、試掘調査の削減等の効率化が期待でき、今後設計に着手する全線で原則活用することとされました。設計データの3D化により地下空間を立体的に可視化し、支障物の移設協議や配管ルート検討に活用するほか、関係事業者間で事業情報を一元共有する「無電柱化プラットフォーム(仮称)」の構築も進められています。

 同時施工の拡大も効果が期待される取組です。2025(令和7)年度には電力と通信の引込・連系管路工事の同時施工を行い、個別施工と比べて工事日数削減の効果等が確認されたとされています。水道工事と電線共同溝工事の同時施工についても試験施工と効果検証が予定されており、道路の掘り返しを削減することで工事の効率化が図られると考えられます。

コスト縮減

 費用面では、2017(平成29)年度に設置した技術検討会のもと、新たな管路材料の採用や特殊部のコンパクト化などにより、電線共同溝整備に係る道路管理者負担分について2020(令和2)年度までに約3分の1のコスト縮減を実現したとされています。今後は特殊部の更なるコンパクト化や設置間隔の拡大、新たな低コスト材料の導入などにより、一層のコスト縮減を図る方針です。沿道需要の低い島しょ部などでは、特殊部の設置間隔を従来の100mから最大200mへ延伸する手法も検討されています。

島しょ地域の強靭化

 島しょ地域では、台風被害のあった八丈島の区間や、主要な港・空港と避難所等をつなぐ区間などについて整備の優先度を見直し、約30kmの区間で新規事業に着手します。島しょの整備対象延長は合計173.0kmで、内訳は過去に被災した区間14.8km、発電所や通信拠点と集落をつなぐ区間30.2km、主要な港や空港と避難所等をつなぐ区間40.4km、拡幅整備等の実施予定区間・その他87.6kmです。島しょは現地に常駐する電気・通信の技術者が少なく、被災時の復旧に時間を要するため、無電柱化による予防の意義が特に大きいと考えられます。コンクリート舗装や岩盤など掘削が困難な箇所が多いことから、路肩を活用し掘削せずに管路を敷設する簡易な手法など、地域特性に応じた工法も導入されます。

課題・次のステップ

担い手不足と工期の長期化

 意見募集では、作業員が減少する中での工期短縮の難しさや、細切れの整備区間が進捗を妨げているといった現場の声が寄せられました。標準的な施工単位の整備には長い期間を要するとされており、担い手不足への対応は今後の大きな課題です。これに対しては、DXの活用や同時施工の標準化、関係者間の調整のオンライン化などで対応する方針が示されていますが、効果の検証と横展開が次のステップとなります。

狭隘道路への対応

 区市町村道の多くは歩道がない、または歩道幅員が2.5m未満の狭隘な道路であり、地上機器の設置場所確保が課題となります。これに対しては、道路区域外の公共用地や民地の活用、地上機器や特殊部のコンパクト化などの工夫で対応するとされています。防災拠点につながる緊急輸送道路については、歩道幅員2.5m未満の箇所を含む路線であっても事業の可否を総合的に検討する方針が示されました。

費用負担をめぐる調整

 意見募集では、市街地整備事業に伴う無電柱化の費用負担のあり方について、相反する立場の意見が寄せられました。民間事業者への過度な費用転嫁を避けるべきとする意見がある一方、新たに計画される市街地整備事業で都の補助を受けるものに地区内すべての無電柱化を義務化する方針に強く反対する意見もありました。都は、都市防災機能の強化等のため補助を活用する土地区画整理事業・市街地再開発事業について原則として地区内すべての無電柱化を義務化するとしつつ、複数の補助金の併用は個別ケースに応じて判断するとしています。費用とリスクの適切な役割分担は、関係者との調整を要する継続的な論点と考えられます。

特別区への示唆

「都・区市町村無電柱化検討会議」を起点とした計画への位置付け

 特別区にとって最も実務的な意味を持つのは、2024(令和6)年度に立ち上げられた「都・区市町村無電柱化検討会議」の存在です。この会議では、都道から災害拠点病院など防災上重要な拠点につながる区市町村道が抽出されており、これらを各区の無電柱化計画に位置付け、早期に事業化することが求められています。都道の整備が拠点アクセスを軸に進む中、その「最後の数百メートル」を担う区道が未整備であれば、防災効果は分断されます。都道と区道の連続性をいかに確保するかが、各区の防災計画の実効性を左右すると考えられます。区としては、自区内のどの路線が抽出対象となっているかを早期に把握し、無電柱化推進計画への反映を検討することが、有効な次の一手となる可能性があります。

重層的な財政支援メニューの活用

 区市町村への財政支援は、2008(平成20)年度の開始以降、段階的に拡充されてきました。2025(令和7)年度末時点で累計57区市町村が都の補助制度を活用しています。支援メニューは、通常補助、防災に寄与する路線への支援、無電柱化チャレンジ支援事業など複数あり、対象や補助率が異なります。歩道幅員2.5m未満や整備実績のない自治体の路線を対象とする「無電柱化チャレンジ支援事業制度」は、これまで無電柱化に着手しにくかった区にとって有効な選択肢となり得ます。さらに、木造住宅密集地域の整備地域等では、防災生活道路の地上機器を道路区域外に設置する費用への支援に加え、2026(令和8)年度からは工事費・用地費・補償費の補助率が2分の1とされるなど、支援が強化されています。私道についても、整備地域等内では2022(令和4)年度より工事費や用地費を全額補助しており、区が無電柱化の先導的取組を行う余地が広がっています。各区は、自区の防災・景観・歩行空間の課題に最も適合する制度を選び、組み合わせて活用する設計力が問われます。

まちづくりの機会を捉えた面的展開

 無電柱化を単独事業として進めるだけでなく、まちづくりの機会を捉えて面的に展開する視点も重要です。土地区画整理事業は、道路の新設と同時に低コストかつ広範囲に区画道路の無電柱化を進められる機会とされ、2018(平成30)年度から区画道路を含む助成制度に拡充されました。都市開発諸制度では、開発区域外の道路の無電柱化を公共貢献として評価し、無電柱化延長に応じて最大200%の容積率割増を行う仕組みがあります。神田駿河台では都市再生特別地区を活用し、開発区域を越えた周辺道路の無電柱化が実現した事例もあります。区が施行・誘導する再開発や区画整理の機会に無電柱化を組み込むことで、街路事業や交差点改良と一体で効率的に整備を進められる可能性があります。

「電柱を増やさない」局面への移行と条例対応

 2026(令和8)年2月に区市町村道の緊急輸送道路全線で電柱新設禁止措置が完了したことは、「増やさない」取組が一つの到達点を迎えたことを意味します。都は引き続き、高齢者や児童等が安全に歩ける歩行空間の確保に向け、区市町村に対して電柱新設禁止の拡大を働きかけていく方針です。加えて、2026(令和8)年3月制定の宅地開発無電柱化条例の規制区域は、防災都市づくり推進計画の整備地域・重点整備地域・防災環境向上地区や、無電柱化計画の重点整備エリアを基礎とし、今後段階的に拡大して最終的には都内全域を対象とすることを目指すとされています。都内では開発道路を新設する宅地開発が年間約500件程度行われているとされ、ここで電柱を新設させない取組が標準化すれば、将来の整備コストを未然に抑制できると考えられます。各区は、自区内の規制区域の指定状況や、宅地開発時の事業者への周知・誘導のあり方を、都市計画・建築・道路の各部門で横断的に検討していくことが望ましいと考えられます。

生活道路の安全対策との連動

 生活道路の交通安全対策と無電柱化を連動させる視点も、特別区にとって示唆に富みます。最高速度30km/hの規制と物理的デバイスを組み合わせる「ゾーン30プラス」エリア内の通学路等について、無電柱化が促進されるよう支援が行われます。電柱を避けて車道にはみ出す児童の通行といった日常的な危険を、無電柱化と速度規制の組み合わせで低減する取組です。区が所管する通学路の安全対策と無電柱化を一体で構想することで、防災と日常安全の両面で効果を高められる可能性があります。

事業の意義を住民に伝える広報

 意見募集では、無電柱化工事が完了しても気づかれにくく、関心が高まりにくいという指摘がありました。都は「無電柱化の日(11月10日)」に合わせた啓発イベントやPR動画の配信、無電柱化カードの作成などに取り組んでいます。多額の費用と長い期間を要する事業であるからこそ、その意義と効果を住民に丁寧に伝え、理解と協力を得ることが事業推進の前提となります。区においても、自区の整備状況や効果を可視化し、住民の関心を醸成する広報の工夫が、合意形成と事業の円滑な推進に寄与すると考えられます。

まとめ

 今回の「東京都無電柱化計画」の改定は、約40年にわたり積み重ねられてきた取組を、災害が現実に多発する時代の「首都防衛」という枠組みの中に明確に位置付け直したものと言えます。整備対象都道2,328kmのうち1,146kmが完了し地中化率49%に達したという到達点の上に、重点整備エリアの環状八号線への拡大、防災拠点アクセスの強化、DX活用と同時施工によるスピードアップ、島しょ地域の強靭化、区市町村連携と宅地開発条例という5つの柱を据え、5か年で1,105kmの整備を進める構想が描かれています。整備のペースが期を追って年1.0%から2.8%へと高まってきた事実は、制度と技術の積み重ねが速度に結実してきたことを示しています。

 特別区にとって、本計画は受け身で眺める対象ではなく、能動的に関与すべき政策枠組みと考えられます。都道から拠点へとつながる区道の連続性確保、重層的な財政・技術支援メニューの戦略的活用、まちづくりの機会を捉えた面的展開、宅地開発条例への対応、生活道路の安全対策との連動、そして住民への広報という複数の論点が、各区の実務に直接かかわってきます。区市町村道が都内の電柱本数の9割以上を占めるという構造を踏まえれば、都道の整備がいかに進んでも、生活道路を担う区の取組なくして都内全域の無電柱化は完結しません。電柱を「減らす」整備と「増やさない」規制の両輪を、自区の防災・景観・歩行空間の課題にどう接続し、限られた資源をどこに集中させるか。その設計力こそが、これからの特別区に問われていくのではないかと考えられます。


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