【政府】アルコール健康障害対策推進基本計画(第3期)
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※各施策についての理解の深度化や、政策立案のアイデア探しを目的にしています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。
※掲載内容を使用する際は、各行政機関の公表資料を別途ご確認ください。
出典:厚生労働省「アルコール健康障害対策推進基本計画(第3期)について」令和7年度
概要
令和8(2026)年3月、厚生労働省はアルコール健康障害対策推進基本計画(第3期)を策定しました。令和8年度から令和12(2030)年度までの概ね5年間を対象とする本計画は、飲酒に起因する健康被害・社会問題が個人の問題にとどまらず、ヤングケアラー・DV・自殺・飲酒運転といった広範な社会課題と密接に絡み合っているとの認識を前提に、国・都道府県・市区町村が一体となって取り組む総合的な行動計画として位置づけられています。第2期計画(令和3〜7年度)の評価を踏まえ、「発生予防」「重症化・再発予防と回復支援」「当事者・家族(こどもを含む)への支援」の三つの重点課題を軸に施策が再編されており、東京都特別区の地域保健・福祉行政においても実務的な指針となる内容を多く含んでいます。本計画が示すデータ・施策の方向性・制度設計の枠組みを体系的に理解することは、特別区が独自の計画・事業を構築するうえで不可欠の基礎情報となります。
意義
なぜ今、第3期計画が必要なのか
アルコール健康障害は、本人の肝臓・脳・心血管系への器質的ダメージにとどまらず、アルコール依存症という精神疾患に発展し、さらには家族への虐待・DV・ヤングケアラー問題・自殺リスクの上昇という連鎖的な社会被害をもたらす複合問題です。WHO(世界保健機関)は2022年の総会において「公衆衛生上の優先事項としてアルコールの有害使用の低減に関する世界戦略を効果的に実施するための行動計画」を採択し、2024年には「Global Alcohol Action Plan 2022-2030」を公表しました。さらに2025年12月の国連総会で採択された政治宣言においても、同行動計画の実施加速が明記されるなど、アルコール問題への対応は国際的な公衆衛生上の最重要課題として位置づけられています。
国内でも、令和6(2024)年度から開始された「健康日本21(第三次)」において「生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の減少」および「20歳未満の飲酒をなくす」が数値目標として設定され、令和6(2024)年2月には「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(飲酒ガイドライン)」が策定されるなど、制度的環境は大きく変化しました。第2期計画では一定の成果が認められる一方、女性の生活習慣病リスク飲酒割合の増加や20歳未満・妊婦の飲酒ゼロ目標の未達成など、未解決の課題が明確化しました。こうした状況を受け、第3期計画は一層精緻なターゲット設定と多部門連携を核心に据えた戦略として改定されています。
歴史・経過
アルコール健康障害対策基本法の成立から第3期計画へ
我が国における包括的なアルコール対策の法的基盤は、平成25(2013)年12月に議員立法により成立し、翌平成26(2014)年6月に施行された「アルコール健康障害対策基本法」(平成25年法律第109号)です。同法は、アルコール依存症のほか多量飲酒・20歳未満の飲酒・妊婦の飲酒等の不適切な飲酒による健康障害を「アルコール健康障害」と定義し、飲酒運転・暴力・虐待・自殺等の関連問題と一体的に対処することを基本理念として定めました。
第1期計画(平成28〜令和2年度)の概要
基本法に基づく最初の基本計画として、平成28(2016)年に第1期計画が策定されました。飲酒に関する知識の普及啓発、医療体制の整備、相談支援体制の構築など、アルコール対策の基礎的インフラ整備に重点が置かれました。
第2期計画(令和3〜令和7年度)の成果と課題
令和3(2021)年3月に策定された第2期計画では、発生予防・進行重症化予防・再発予防の各段階に応じた対策が定められ、全都道府県・政令指定都市(67自治体)における関係者連携会議(連携会議)の設置が令和7(2025)年3月時点で67自治体中67自治体(100%)と完全達成されました。また、20歳未満の飲酒者割合や妊娠中の飲酒割合、生活習慣病リスクを高める量の飲酒をする男性の割合はいずれも低下するなど、一定の成果が見られました。一方で、生活習慣病リスクを高める量を飲酒している女性の割合は増加に転じており、数値目標の達成には至りませんでした。連携会議の「年複数回開催」も67自治体中14自治体(21%)にとどまり、量的な体制整備から質的・機能的な連携への深化が課題として残りました。
第3期計画(令和8〜令和12年度)へ
こうした評価を踏まえ、令和8(2026)年3月に第3期計画が策定されました。対象期間は令和8年度から令和12(2030)年度までの概ね5年間であり、三つの重点課題と10の基本的施策を柱とした体系的な構成が採られています。
現状データ
飲酒行動の現状──深刻な「見えない問題」の規模
生活習慣病リスクを高める量の飲酒(令和6年)
厚生労働省「国民健康・栄養調査」によれば、生活習慣病のリスクを高める量(1日当たりの純アルコール摂取量:男性40g以上、女性20g以上)を飲酒している者の割合は、令和6(2024)年時点で全体11.4%、男性13.9%、女性9.3%と測定されています。第2期計画期間において男性の割合は一定程度低下した一方、女性は増加傾向にあり、性差を踏まえた戦略的アプローチの必要性が改めて浮き彫りになっています。これは単なるリスク飲酒の問題にとどまらず、女性は男性と比べて肝臓障害等の臓器障害を起こしやすく、アルコール依存症に至るまでの期間も短いという生理的脆弱性を踏まえると、きわめて憂慮すべき傾向です。
問題飲酒者の規模(令和6年)
令和6年度依存症に関する調査研究事業「飲酒と生活習慣に関する調査」によれば、アルコール使用障害同定テスト(AUDIT)で問題飲酒レベル(8〜14点)に該当する者の割合は男性14.1%、女性3.8%と推計されています。さらにアルコール依存症が疑われるレベル(AUDIT15点以上)は男性5.4%、女性0.8%に上り、これを人口ベースに換算した推計値は304.1万人(95%信頼区間:249.6〜358.7万人)に達します。
一時多量飲酒の実態(令和6年)
同調査によれば、過去30日間に一度に純アルコール量60g以上(ビール中瓶3本以上相当)の飲酒を行った「一時多量飲酒者」の割合は男性19.2%、女性4.7%と推計されています。一時多量飲酒は肝臓への急性障害や心血管系のリスクを高めるのみならず、暴力・事故・性被害といったアルコール関連問題の直接的な温床となるため、単なる習慣的多量飲酒とは区別した対策が求められます。
飲酒すべきでない者の状況
20歳未満の飲酒(令和6年)
厚生労働行政推進調査事業費補助金の研究によれば、中学生・高校生の飲酒者割合(過去30日間に1日でも飲酒した者)は令和6年時点で1.7%と推計されています。第2期計画期間に低下傾向は見られるものの、依然としてゼロには程遠く、第3期計画においても「20歳未満の者の飲酒をなくすこと」が引き続き重点目標として掲げられています。
妊娠中の飲酒(令和5年)
令和5年度母子保健事業の実施状況等に関するデータによれば、妊娠中の飲酒者割合は1.0%と推計されます。胎児性アルコールスペクトラム障害(FASD)のリスクを踏まえれば、この数値は依然として看過できるものではなく、母子保健施策との連携強化が急務です。
飲酒運転による交通事故(令和7年)
警察庁調べによれば、令和7(2025)年の飲酒運転による交通事故件数は2,283件であり、飲酒と交通安全の関連は依然として深刻です。飲酒運転を繰り返す者の背景にはアルコール依存症の問題が潜在している可能性が高く、取締りにとどまらず治療・支援につなげる体制の整備が不可欠です。
アルコール依存症の治療ギャップ──最も深刻な構造問題
推計患者数と実際の受診者数の乖離
アルコール依存症の生涯経験者は令和6年の推計で64.4万人(95%信頼区間:38.3〜90.5万人)に上ります。一方、AUDIT15点以上で依存症が疑われる者は推計304.1万人という巨大な潜在群が存在するにもかかわらず、実際にアルコール依存症で医療機関を受診している患者数は令和4年時点で外来109,323人、入院25,435人の合計約13.5万人にすぎません。依存症疑いの推計304.1万人に対し受診者はその約4%程度であり、残る96%が治療の網の目にかかっていない計算になります。この「治療ギャップ」は、アルコール依存症に対する偏見や誤解(「意志が弱いだけ」という認識が34.7%に存在すること等)が受診抑制の大きな社会的背景であることが指摘されており、対策の最重要課題として第3期計画に位置づけられています。
令和6年における依存症専門医療機関の新規受診患者数は男性11,840人、女性2,873人であり、女性は男性の約24%にとどまります。女性は飲酒による身体的ダメージを受けやすいにもかかわらず、受診率が極端に低い実態は、ジェンダーに配慮した支援アクセスの改善が必要であることを示しています。
アルコール健康障害の重症化──肝疾患の深刻さ
アルコール関連肝疾患の受診・死亡データ
初期段階の無症状であるアルコール関連脂肪肝から始まり、肝線維化の進行を経てアルコール関連肝硬変に至る経過は、不適切な飲酒の継続によって不可逆的に進行します。令和5年の患者調査によれば、アルコール関連肝疾患で受診した患者は71,000人に上り、その内訳はアルコール関連脂肪肝5,000人、アルコール関連肝炎15,000人、アルコール関連肝硬変28,000人となっています。令和6年の死亡者数は6,343人(男性5,452人、女性891人)であり、そのうちアルコール関連肝硬変による死亡が4,966人と大半を占めています。これらの数値は、飲酒の問題を「嗜好」や「個人の習慣」としてのみ捉える視点の危うさを端的に示しています。
知識・理解の普及状況
飲酒ガイドラインの認知度の低さ
令和6年度の調査によれば、飲酒ガイドラインの内容まで知っている者の割合はわずか4.2%にとどまり、「ガイドラインを知っているが内容は知らない」と回答した者を加えても13.6%と極めて低い水準です。令和6年2月に策定されたガイドラインの普及・活用が喫緊の課題であることは明らかです。
アルコール依存症に対する誤解の根強さ
令和5年度世論調査によれば、アルコール依存症者に対するイメージとして「酒に酔って暴言を吐き、暴力を振るう」が51.7%、「昼間から仕事にも行かず酒を飲んでいる」が46.7%と過半数を占めており、「本人の意志が弱いだけ」という認識が34.7%に根強く存在しています。一方、「飲酒をコントロールできない精神疾患である」との正しい認識を持つ者は76.5%、「断酒を続けることにより回復する」と知っている者は29.8%にとどまっており、回復可能性に関する知識の普及が特に遅れていることが示されています。
連携体制の現状
連携会議の設置・開催状況(令和7年3月時点)
都道府県・政令指定都市における連携会議の設置状況は67自治体中67自治体(100%)と完全達成されています。しかし、年複数回開催しているのは14自治体(21%)にとどまります。さらに、連携会議における他部門との連携状況をみると、児童福祉部門との連携は11自治体(16%)、女性支援部門との連携は5自治体(7%)にすぎず、教育部門との連携が42自治体(63%)と比較的高いものの、横断的な連携は全体として未成熟な状況にあります。保健所における相談件数は令和5年度で14,658件、精神保健福祉センターでは3,940件でした。
政策立案の示唆
この取組を行政が行う理由
アルコール問題が「公衆衛生課題」である根本的理由
アルコール問題が純粋に個人の責任領域にとどまらず行政が積極的に関与しなければならない理由は、三つの構造的論拠に基づいています。第一に、アルコール依存症は「本人の意思の弱さ」ではなく「脳の病気(精神疾患)」であり、一定量を超える継続的な飲酒によって誰もが発症しうる医学的疾患であることから、本人による自力での解決に期待するのは医学的に不合理です。第二に、アルコール依存症の治療ギャップが推計304.1万人対受診者約13.5万人というおよそ20対1の規模で存在しており、市場メカニズムや本人のセルフケアのみでは到底解消できない「社会的失敗」が生じています。第三に、アルコール問題はDV・児童虐待・ヤングケアラー・自殺・飲酒運転という社会全体に及ぶ外部不経済を発生させており、これを放置することによる社会的費用は医療費・司法費・家族被害のすべてを含めると計り知れない規模に達します。アルコール健康障害対策基本法(2014年施行)は、まさにこうした複合的な公衆衛生上の必要性を国家として認識したうえで制定されたものです。
行政側の意図──第3期計画の設計思想
「予防」「早期介入」「回復」の三段階的対応の制度化
第3期計画の設計思想の核心は、問題が発生してから対処するのではなく、アルコール健康障害の発生・進行・再発という「ステージ」ごとに異なる介入手段を体系的に配置することにあります。具体的には、発生予防段階では学校教育・啓発・酒類業界の自主規制・飲酒ガイドラインの普及が主軸であり、進行・重症化予防段階ではSBIRTS(スクリーニング・ブリーフインターベンション・専門機関への紹介・自助グループへのつなぎ)という早期介入モデルの制度化が求められています。回復・社会復帰段階では、就労支援・自助グループとの連携・家族支援が重視されます。これらを切れ目なくつなぐ地域連携体制の構築こそが、行政が第3期計画を通じて追求する制度的意図の中心にあります。
ヤングケアラー・DV・自殺対策との政策統合
第3期計画のもう一つの重要な政策意図は、アルコール対策を孤立した「依存症支援」として扱うのではなく、こども・若者施策(ヤングケアラー)・DV対策・自殺対策といった隣接政策と有機的に連接させることにあります。令和6年の子ども・若者育成支援推進法改正によるヤングケアラー支援の法的強化、令和5年DV防止法改正による精神的被害を受けた配偶者への接近禁止命令の拡大など、周辺法制の整備が相次いでいます。第3期計画は、これらの制度改正を踏まえ、アルコール依存症当事者の家族を「支援される側」として明確に位置づけ直した点で、従来計画からの重要な質的転換を遂げています。
期待される効果
治療ギャップの縮小による健康被害の軽減
第3期計画が目指す最大の政策効果は、304.1万人に上る依存症疑い者と約13.5万人の実受診者という巨大な治療ギャップの縮小です。AUDIT等のスクリーニングツールを特定健診や職域健診の場に組み込み、ブリーフインターベンション(短時間カウンセリング)を通じた早期介入を普及させることで、依存症が深刻化する前に医療・相談支援につなぐことが可能になります。この連鎖が機能すれば、アルコール関連肝疾患による年間6,343人超の死亡数の減少や、医療費・社会的費用の削減という二次的効果も期待できます。
女性・若年者・高齢者への特化した介入効果
第2期計画では数値目標を達成できなかった女性の生活習慣病リスク飲酒割合について、第3期では女性に特化した目標値(6.4%以下)を設定しています。女性は男性と比較して少量の飲酒でも臓器障害を起こしやすく、依存症への進行速度も速いという医学的エビデンスに基づき、妊産婦支援・女性健康支援との連動を通じた特化型アプローチの効果が期待されます。また、高齢者については、加齢による代謝機能の低下・服薬との相互作用・認知機能への影響等の特有リスクに留意した啓発が求められています。
課題・次のステップ
連携の「量」から「質」への転換
連携会議の設置100%達成という第2期の成果を踏まえ、第3期の最重要課題は会議の「開催回数」という量的指標から、実際に事例を共有し支援につなげる「機能的連携」という質的指標への転換です。現状では67自治体中14自治体しか年複数回開催を実現できておらず、名目的な会議体の存在が実質的な連携を阻害している面があります。SBIRTSの体制構築を通じて、少なくとも市町村単位で保健所・精神保健福祉センター・専門医療機関・かかりつけ医・自助グループが有機的に機能する「顔の見える連携」を実現することが、次期計画期間(2026〜2030年度)の核心的課題となります。
一般医療機関の巻き込みとかかりつけ医機能の活用
治療ギャップを解消するうえでの最大の鍵は、専門医療機関のキャパシティを超えた潜在患者群に対し、内科・救急・産婦人科等の一般医療機関が「入り口」として機能することです。第3期計画ではこのための「手引」の作成が明記されており、飲酒ガイドラインと組み合わせた研修・人材育成の強化が求められています。特に救急外来は急性アルコール中毒患者や飲酒関連事故の患者と接触する機会が多く、スクリーニングと早期介入の重要な場となり得ます。
飲酒ガイドラインの認知度向上と行動変容への橋渡し
飲酒ガイドラインの内容認知度が4.2%にとどまる現状は、ガイドラインが有効な政策ツールとして機能していない深刻な状況を示しています。策定から普及・活用・行動変容までの「最後の一マイル」を埋めるためには、地域・職域・学校を通じた多チャンネルでの普及、マスメディアとSNSを組み合わせた訴求力の高い広報、そして医療従事者自身の認識向上が連動して進む必要があります。
自助グループの高齢化と新規参加者の減少問題
アルコール依存症の回復において自助グループ(断酒会・AA等)は不可欠の社会資源ですが、会員の高齢化・新入会員の減少・全体的な会員数減少という構造的な衰退が進んでいます。この問題は行政側から自助グループへの支援のあり方の根本的な再検討を促しており、会場提供・広報支援にとどまらず、オンライン活用・若年層へのリーチ方法など、支援の現代化が急務です。
特別区への示唆
特別区の保健所・精神保健福祉センターの役割の再定位
東京都特別区は各区に保健所を設置しており、これは政令指定都市以外の多くの市町村が保健所を持たないのとは異なる、きわめて恵まれた制度的条件を意味します。第3期計画は保健所を地域におけるアルコール健康障害対策の中核機関と位置づけており、特別区の保健所は住民により近い場所でSBIRTSの体制構築・スクリーニング実施・ブリーフインターベンション提供・専門機関への橋渡しを担う実施主体となりえます。また、東京都が設置する精神保健福祉センターとの役割分担・連携体制の明確化も急務であり、相談件数データの継続的モニタリングが連携の質を測る基本的な評価指標となります。
ヤングケアラー支援・DV対策との庁内横断連携の構築
現状では連携会議における児童福祉部門との連携が全国67自治体中11自治体(16%)にとどまっていますが、特別区においては子育て支援・こども家庭センター・女性相談センター・DV相談窓口・教育委員会という複数の関連部門が区役所内または連携先として存在しており、庁内横断的な連携体制を構築しやすい条件にあります。アルコール問題を抱える家庭のこどもへのアプローチという観点から、こども家庭センター・学校(スクールソーシャルワーカーを含む)との連携プロトコルを策定し、ヤングケアラーの早期把握とアルコール対策部門への接続ラインを整備することが重要です。
特定健診・保健指導へのAUDITスクリーニングの組み込み
第3期計画では特定健診(40〜74歳対象)の保健指導場面へのアルコールスクリーニングとブリーフインターベンションの組み込みが求められています。特別区の国民健康保険・後期高齢者医療制度の保険者機能を活用し、特定健診の問診票にAUDITを組み込むこと、および肝機能検査(γ-GTP等)の異常者に対する「肝機能検査に関するフィードバック文例集」を活用した保健指導の徹底は、コストパフォーマンスの高い早期介入手段として即座に実装可能な施策です。
職域との連携強化──大都市東京固有のアプローチ
東京都特別区は国内有数のオフィス集積地であり、事業所数・就業者数において他の自治体とは桁違いのポテンシャルを持ちます。産業保健スタッフ(産業医・保健師)・人事労務担当者に対する飲酒ガイドラインの普及、アルコールチェック義務化事業者(運輸業等)へのアルコール依存症支援情報の提供、ハローワークとの連携による依存症者の就労支援といった職域アプローチは、大都市特別区が特に大きな効果を発揮できる領域です。「治療しながら就業継続」を可能にする職場環境の整備に向けて、産業保健と地域保健の橋渡しを区が担う役割は極めて大きいといえます。
飲酒ガイドライン・AUDIT等の住民周知と区独自の普及事業
飲酒ガイドラインの内容認知度4.2%という低水準は、特別区においても同様の状況が推察されます。区の広報誌・ホームページ・SNS・健診案内等を通じた多面的な普及活動に加え、アルコール関連問題啓発週間(毎年11月10〜16日)を活用した集中的な啓発キャンペーン、地域のかかりつけ薬局・調剤薬局との連携による情報提供など、都市型の普及策を積極的に展開することが求められます。特に女性・若年者・高齢者への特化型アプローチとして、子育て支援センター・地域包括支援センター・大学等との連携が有効な手段となります。
自助グループ・民間団体への支援基盤の整備
自助グループの高齢化・会員減少という全国的課題は、都市部においても例外ではありません。特別区の地域資源として断酒会・AA・アラノン等の自助グループを持続可能な形で機能させるため、区有施設の活動スペース提供・広報支援・民間団体への補助金制度の整備など、ハード・ソフト両面での支援基盤の構築が重要です。また、精神保健福祉センター・保健所が相談支援のなかで自助グループへの橋渡しを日常的に行うための情報共有の仕組み整備も不可欠です。
まとめ
第3期アルコール健康障害対策推進基本計画は、飲酒問題を「個人の嗜好」から「公衆衛生上の複合的社会課題」へと明確に再定位し、令和8(2026)年度から令和12(2030)年度の5年間にわたる国家的対応の枠組みを示した重要な政策文書です。推計304.1万人に上る依存症疑い者に対して実際に医療につながっているのが約13.5万人という巨大な治療ギャップは、アルコール問題が依然として「水面下に沈む氷山」であることを端的に示しており、行政の積極的関与なくしてこの構造を変えることはできません。
同計画が示す三つの重点課題──発生予防・重症化予防と回復支援・家族(こどもを含む)への支援──は、それぞれが独立した対策領域ではなく、相互に連動した一体的な政策パッケージです。女性の問題飲酒割合の増加、中学・高校生の飲酒者割合1.7%という現実、6,343人に上るアルコール関連肝疾患死亡者、そして51.7%が依然として「依存症者=暴力的・意志薄弱」というスティグマを持つ社会的認識の問題は、啓発・医療・福祉・教育・司法が横断的に連携しなければ解決しえない多面的な問題の構造を如実に示しています。
東京都特別区にとって、本計画は「都道府県が取り組む広域課題」ではなく、区民の健康と安全に直結する最前線の施策課題として捉え直す必要があります。各区が保健所機能を持つという制度的優位性を最大限に活用しながら、特定健診へのスクリーニング組み込み・職域との連携強化・ヤングケアラー支援やDV対策との庁内連携・自助グループへの支援基盤整備・飲酒ガイドラインの積極的な住民普及という多軸的な取組を、2026〜2030年の計画サイクルに合わせて戦略的に設計・実装していくことが、区民の健康増進と社会的コストの削減の双方において求められています。アルコール健康障害対策は、その複合性ゆえに「誰かがやるべき問題」として先送りされがちですが、だからこそ基礎自治体として区が庁内横断的なコーディネート機能を発揮し、当事者・家族・地域住民の誰もが必要な支援に確実につながれる地域共生社会の実現に向けて、主体的・能動的な役割を果たすことが今こそ求められています。




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