【国保年金課】療養費(接骨院・補装具)点検・審査・支払事務 完全マニュアル
はじめに
※本記事はAIが生成したものを加工して掲載しています。
※生成AIの進化にあわせて作り直すため、ファクトチェックは今後行う予定です。

療養費(接骨院・補装具)点検・審査・支払事務の基本要素と業務フロー
業務の意義と歴史的変遷
国民健康保険制度において、医療機関の窓口で保険証を提示して医療そのものを受け取る「現物給付」が原則であるのに対し、やむを得ない事情で全額自己負担した後に、保険者(自治体)が審査した上で払い戻す金銭給付の仕組みを「療養費」と呼びます。国保年金課における療養費、とりわけ柔道整復師(接骨院・整骨院)の施術代や、医師の指示で作成した治療用装具(コルセットや小児用靴型装具など)の点検・審査・支払業務は、保険財政の適正化を守るための「最後の砦」として極めて重要な意義を持っています。適正な支払いを通じて区民の健康回復を支援する一方で、制度の隙間を突いた不適切あるいは不正な請求を水際で防ぐという、相反する高度なミッションを担っています。
歴史的変遷を辿ると、柔道整復師の施術に係る療養費は、本来「償還払い(患者が一旦全額を支払い、後日役所に請求する)」が原則ですが、昭和初期からの歴史的経緯と患者の利便性から、施術者が患者に代わって保険者に請求する「受領委任払い」という特例的な仕組みが全国的に定着しています。しかし、平成以降、接骨院の数がコンビニエンスストアを凌ぐほど急増し、過当競争に陥った結果、本来は保険適用外である単なる肩こりや慢性的な疲労に対するマッサージ代わりとしての利用や、「多部位請求(痛んでもいない部位を付け足す)」「架空請求」といったモラルハザードが社会問題化しました。治療用装具においても、実態は単なるオーダーメイド靴であるにもかかわらず、高額な治療用装具として不正請求される事例が後を絶たず、現在では自治体による厳格な書面審査と、患者に対する直接の文書照会(受診照会)が不可欠な時代へと変遷しています。
標準的な年間および月次の業務フロー
療養費の審査・支払業務は、毎月決まったスケジュールで膨大な件数の支給申請書(レセプト)を処理する、極めてタイトな月次サイクルで回っています。
請求書の受付と一次点検(月上旬)
毎月上旬、東京都国民健康保険団体連合会(国保連)を経由して、または区役所の窓口へ直接、接骨院からの療養費支給申請書や区民からの治療用装具の申請書が持ち込まれます。担当者は、被保険者資格の有無、記載漏れ、医師の同意書(指示書)の有無、そして算定基準(料金表)に基づく金額の計算が1円の狂いもなく合っているかを機械的かつ厳密に点検します。
内容審査と医科レセプトとの突合(月中旬)
金額や形式の点検を通過した申請書に対し、内容の妥当性を審査します。接骨院の請求であれば、負傷原因が明確か、不自然な多部位請求(3部位以上など)がないか、長期頻回(何ヶ月も毎日通院しているなど)の傾向がないかを確認します。同時に、同じ時期に整形外科などの医療機関を受診していないか(医科レセプトとの重複確認)をシステム上で突合し、重複があれば原則として接骨院の請求を認めないための抽出作業を行います。
患者への文書照会と施術者への返戻(月下旬)
審査の過程で疑義が生じた申請については、施術者へ支払いを保留し、患者本人に対して「本当にこの日に通院したか」「負傷原因は何か」を問いただす文書照会(アンケート)を郵送します。回答結果と申請書の内容に明らかな乖離がある場合や、算定基準違反が発覚した場合は、理由を付して申請書を施術者へ突き返す「返戻(へんれい)」処理を実行します。
支払決定と口座振込処理(月末)
厳格な審査を通過し、支払いが妥当と認められた申請書について、支払決定の決裁を上げます。受領委任払いの場合は各施術者や請求代行団体の口座へ、償還払いの場合は患者指定の口座へ、国保システムを通じて正確に振込データを送信し、月次の支払い業務を完了させます。
各段階における実務の詳解
柔道整復師の請求における「負傷原因」の厳格な審査
接骨院で保険が使えるのは、外傷性が明らかな「骨折・脱臼・打撲・捻挫・挫傷(肉離れ)」の急性・亜急性期に限られます。単なる「肩こり」「腰痛」「筋肉疲労」は全額自己負担となります。実務において、支給申請書の負傷原因欄に「草むしりをしていて腰を痛めた」とあれば急性として認められ得ますが、「日常生活の疲労による」といった記載や、負傷原因が空白である場合は直ちに返戻対象となります。巧妙化する記載に対して、不自然な外傷の連続がないか、過去の請求履歴のデータベースと照らし合わせて見抜く洞察力が求められます。
治療用装具(靴型装具等)における写真と仕様書の確認
治療用装具、特に小児の先天性内反足等に対する靴型装具や、腰痛コルセットの請求においては、医師の「装具装着証明書」と装具業者の「領収書・内訳書」が必須です。実務では、単なる市販のサポーターや健康靴が請求されていないかを見極めるため、装具の現物写真の添付を求め、内訳書に記載された部品名や採型方法が、厚生労働省が定める「補装具の種目、購入等に要する費用の額の算定等に関する基準」に合致しているかを、専門的なカタログと照らし合わせて緻密に審査します。
法的根拠と条文解釈
根拠法令と主要条文の概要
療養費の支給は、国民健康保険法の条文と、厚生労働省からの膨大な通知・事務連絡によって細かく規定された極めて法的な行政処分です。
国民健康保険法第54条(療養費)
「市町村及び特別区は、療養の給付を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者について診療、手当若しくは調剤を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付に代えて療養費を支給することができる」と規定しています。これが療養費制度の絶対的な根拠です。
柔道整復師の施術に係る療養費の算定基準(厚生労働省告示)
接骨院での施術代金について、初検料、再検料、各部位の施療料などを定めた、いわゆる「料金表」です。この告示に基づかない独自料金や、水増し請求は一切認められません。また、関連する厚生労働省保険局長通知等により、受領委任の取り扱いや、多部位請求時・長期頻回受診時の患者への照会義務が行政側に厳格に課せられています。
実務上の意義と解釈のポイント
「保険者がやむを得ないものと認めるとき」の解釈
国保法第54条における「保険者がやむを得ないものと認める」という文言は、療養費の支給可否の決定権(裁量権)が最終的に保険者(市区町村)にあることを示しています。施術者がいくら「治療に必要だった」と主張しても、保険者が医学的・客観的妥当性を欠くと判断すれば、不支給決定を下す法的な権限を有しています。実務において、この保険者権限を正しく行使し、毅然として不正請求を跳ね除ける法的スタンスが担当者には不可欠です。
医科との重複受診に関する解釈(同月内・同部位の原則)
厚生労働省の通知により、同一月に同一部位について、医療機関(整形外科など)での治療と、接骨院での施術を重複して受けた場合、原則として接骨院の療養費は支給されません。これは「二重給付」を防ぐための重要なルールです。ただし、医師が接骨院での後療法を具体的に指示した場合など、例外的に認められる要件もあるため、医科のレセプトデータ(傷病名、診療実日数、投薬内容)を正確に読み解き、例外規定に該当するか否かを慎重に解釈するスキルが要求されます。
応用知識と特殊事例対応
不正請求・不当請求の端緒発見と対応
「部位転がし」と「付け替え」の分析
一部の悪質な接骨院では、同一部位の治療が3ヶ月を超えると算定額が減額されるルール(逓減制)を逃れるため、3ヶ月ごとに「右肩痛」を「左肩痛」へと意図的に負傷部位を変更する「部位転がし」や、家族間で健康保険証を使い回して架空の患者を作り出す「付け替え」といった不正が行われます。担当者は、同一世帯の受診履歴や、特定の施術所の請求パターンを長期間にわたってマクロ分析し、異常値を示す施術所を特定して、国保連や東京都の担当部署へ情報提供(監査の依頼)を行う応用的な分析力が求められます。
患者照会における回答の誘導と施術者の介入
患者へ文書照会を送付した際、患者が接骨院に回答書の書き方を相談し、施術者が都合の良いように(急性外傷であったように)回答を代筆・誘導するケースが頻発します。これを防ぐため、文書照会には「施術者に相談せず、ご自身の記憶で記入してください」と赤字で明記するなどの工夫が必要です。筆跡が明らかに患者本人のものではない、あるいは不自然に専門用語が羅列されている回答書が届いた場合は、直接患者に電話をかけて真実をヒアリングする、踏み込んだ調査能力が実務の成否を分けます。
治療用装具における特殊事例
オーダーメイド靴の美容・予防目的での排除
糖尿病による足病変の予防や、単なる扁平足に対する「履きやすい靴」として、高額な靴型装具が請求される事例があります。療養費の対象となるのは、あくまで「治療上固定が必要な期間」に使用される装具であり、症状が固定した後の「日常生活の利便性向上」や「予防」を目的としたものは対象外です。医師の証明書に「予防目的」といったニュアンスが含まれていないか、病名と装具の機能が医学的に合致しているかを、時には区の嘱託医に助言を仰ぎながら、冷徹に判断する医学的リテラシーが求められます。
東京と地方の比較分析
東京都特別区と地方自治体の位置付けの差異
接骨院の異常な密集度と過当競争
地方自治体では、地域に根ざした少数の接骨院が住民の急性の怪我に対応するという本来の姿が残っている地域もありますが、東京都の特別区(23区)においては、一つの駅前に数十件の接骨院・整骨院が乱立し、熾烈な患者獲得競争が繰り広げられています。「保険適用で1回500円でマッサージします」といった違法スレスレの看板を掲げる店舗も散見され、結果として、グレーゾーンの請求が特別区の窓口に雪崩れ込むという、極めて過酷な審査環境に置かれています。
被保険者の広域流動と越境受診
地方では居住する市町村内の接骨院を受診するのが一般的ですが、特別区では、例えば江戸川区に住む区民が、通勤先である港区や千代田区の接骨院に毎日通うといった「越境受診」が当たり前に行われます。これにより、区内だけでなく、都内全域さらには近隣県(埼玉、千葉、神奈川)にまたがる無数の施術所からの請求を処理しなければなりません。他区や他県の悪質な施術所の情報に触れる機会も多いため、特別区同士でのブラックリスト的な情報共有ネットワークの構築が、地方以上に強く求められます。
抱える課題の違いと傾向
柔道整復師会との交渉と政治的圧力
特別区は人口規模が大きく、国保連を通じた請求金額も莫大であるため、柔道整復師の職能団体(公益社団法人の師会や、民間の請求代行団体)からの注目度も高くなります。審査を厳格化(返戻を増加)させた際、団体側から「患者の受療権の侵害だ」として、区長宛てに抗議文が届いたり、議員を通じて圧力がかかったりするなど、政治的な対応を迫られる場面が地方よりも頻繁に発生します。担当部署は、法と通知に則った正当な行政処分であることを論理的に説明し、毅然として反論する強靭な組織体制が不可欠です。
外国人被保険者の受診と制度の誤解
特別区に多く居住する外国人留学生や労働者が、接骨院の「保険が使える」という看板を見て、単なるリラクゼーションサロンの延長として利用してしまうケースが多発しています。文書照会を送っても日本語が読めずに放置され、不支給となってトラブルに発展することがあります。外国籍の区民に対し、日本の療養費制度の正しい利用方法(急性のケガに限るというルール)を多言語で啓発するという、特別区特有の重い課題が存在します。
特別区固有の状況
23区における療養費請求特性
スポーツ障害と高齢者の慢性疾患の混在
特別区内でも地域によって請求の傾向が異なります。スポーツ施設や大学が多い区では、若年層のスポーツによる捻挫や肉離れの請求が多く、これらは比較的急性外傷として認められやすい傾向にあります。一方、高齢化が進む下町の住宅街区では、高齢者の変形性膝関節症や腰部脊柱管狭窄症といった「慢性疾患」の痛みを和らげるための漫然とした接骨院通いが目立ちます。本来は整形外科で治療すべき慢性疾患が接骨院に流れている実態をいかに防ぐか、区の人口動態に応じた審査の重点ポイントの切り替えが必要です。
新興のチェーン展開型整骨院への対応
近年、23区内を中心に、莫大な資本を投じて多店舗展開するチェーン型の整骨院グループが台頭しています。これらのグループは、徹底的なマニュアル化により、単価を上げるための画一的な多部位請求(来院者全員に3部位請求を行う等)を組織的に行う傾向が見られます。一区の担当者だけでは全容を掴みにくいため、特別区長会や国保連の審査委員会を通じて、特定グループの異常な請求パターンをあぶり出し、広域的な指導網を敷く連携が不可欠となっています。
各区の相対的な位置付けと地域特性
都心区と外郭区による広報戦略の違い
昼間人口が多い都心区(中央区、千代田区など)は、区外から通ってくる労働者が区内の接骨院を利用するため、区民に対する直接の受診適正化のアプローチだけでなく、区内の施術所に対する直接的な指導やポスター掲示の依頼が効果的です。一方、外郭区(練馬区、足立区など)は、自区の住民が区内外の接骨院を利用するため、区報やSNSを通じた区民向けの「接骨院の正しいかかり方」の広報啓発が、医療費適正化の主戦場となります。
最新の先進事例
東京都および特別区における最新の取組
療養費のオンライン請求化と電子審査の推進
長らく紙のレセプトで行われていた柔道整復師の療養費請求ですが、国を挙げてのオンライン請求化が遂に本格稼働を始めました。特別区ではこの波を捉え、国保連の審査システムと連携し、紙の目視確認に頼っていた点検業務を、電子データを用いた自動エラーチェック(算定ルールの論理チェックや、過去の受診履歴との自動突合)へと急速に移行させています。これにより、見落としが激減し、担当者はより高度な「傾向分析」や「悪質事例の抽出」に専念できる体制が構築されつつあります。
民間調査会社を活用した患者照会の高度化
患者への文書照会(アンケート)の回収率低下と、施術者による回答誘導を防ぐため、特別区の一部では、医療費適正化を専門とする民間調査会社へ患者照会業務をアウトソーシングする先進的な取り組みが行われています。専門のオペレーターが、心理学的なアプローチを用いて患者の記憶を正確に呼び起こす電話照会を実施したり、回収したアンケート結果をAIで分析して不正の兆候をスコアリングしたりすることで、返戻率の向上と療養費の削減に劇的な効果を上げています。
業務改革とデジタルトランスフォーメーション
ICT活用による業務負担の軽減
RPAによる医科レセプトとの重複受診チェック自動化
接骨院のレセプトと整形外科のレセプトを突き合わせ、同一月に同一部位の治療を行っていないかを確認する作業は、以前は数万件のデータをエクセルで手作業で検索する苦行でした。現在ではRPA(ロボットによる業務自動化)を導入し、夜間のうちに国保システムの医科受診履歴データベースと接骨院の請求データを自動で突合させ、翌朝には「重複の疑いがある被保険者リスト」を抽出させる業務改革が進んでおり、調査のリードタイムが劇的に短縮されています。
治療用装具の基準価格カタログのデータベース化
補装具の審査において、装具業者が提示する価格が厚生労働省の算定基準の上限内に収まっているかを確認するため、分厚い基準書をめくる作業が行われていました。これを解決するため、基準価格や部材の型番をデータベース化し、申請された部材コードを入力するだけで、上限額の超過や不正な組み合わせをシステムが自動で警告する簡易アプリケーションを庁内で内製(ノーコード・ローコードツールの活用)し、審査の均質化とスピードアップを図る事例が登場しています。
民間活力の導入事例
専門的知見を持つ柔道整復師の点検員としての雇用
素人の行政職員が、プロの施術者が作成したレセプトの医学的な矛盾(「この負傷原因で、この部位を痛めるのは解剖学的にあり得ない」など)を見抜くには限界があります。そこで、臨床経験が豊富で制度に精通した有資格者(柔道整復師)を、会計年度任用職員や業務委託として自治体内部の「専門点検員」として配置する事例が増加しています。専門家の目が入ることで、返戻の理由づけに強固な医学的根拠が備わり、施術者からの反論を封じ込める強力な抑止力となっています。
生成AIの業務適用
当該業務における生成AIの具体的な用途
患者照会文書および返戻理由書のドラフト作成
接骨院の不正が疑われるケースにおいて、患者に事実確認を行うための照会文を作成する際、生成AIが活躍します。「接骨院から『右膝捻挫』として3ヶ月間毎日通院した請求が来ているが、医科レセプトでは同期間に内科で『風邪』で寝込んでいた記録がある。この矛盾について、患者を責めず、記憶を正確に引き出すための丁寧かつ客観的な照会文面のドラフトを作成して」とプロンプトで指示することで、行政特有の威圧感を排しつつ、要点を突いた文面を瞬時に作成できます。(※個人情報は絶対に入力しません)
複雑な通知文の要約と施術者向け指導用スクリプトの作成
厚生労働省から頻繁に発出される療養費の算定基準改定に関する難解な通知を生成AIに入力し、「今回の改定で、接骨院側での算定ルールが厳格化されたポイントを3つに要約し、窓口で抗議してきた施術者に対して、区の担当者が論理的かつ毅然と説明するためのトークスクリプトを作成して」と指示します。これにより、担当職員が最新の法解釈を迅速に腹に落とし込み、現場での対応力を高めるための強力なサポートツールとして活用できます。
実践的スキルとPDCAサイクル
組織レベルにおけるPDCAサイクルの構築
Plan(計画): 重点審査ターゲットの選定と目標設定
年度初めに、前年度の療養費支出のトレンドを分析します。「今年度は、3部位以上の多部位請求を行う施術所」や「特定の高額な靴型装具を頻繁に申請してくる装具業者」など、重点的に監視・点検するターゲットを組織として決定し、文書照会の実施件数や返戻率の目標数値を設定した年間計画を策定します。
Do(実行): 組織的な点検・審査と患者照会の実施
計画に基づき、日々の月次ルーティンの中で、ターゲットに該当するレセプトを確実に網にかけて抽出します。抽出された案件に対しては、点検員、正規職員、管理職が連携して多角的な目視審査を行い、ためらうことなく患者への文書照会や施術者への返戻処理を迅速に実行します。
Check(評価): 返戻率の推移と医療費削減効果の測定
四半期ごとに、実施した文書照会の回収率や、実際に不支給・減額となった件数とその金額を検証します。特定の接骨院に対する指導の結果、翌月以降の多部位請求の割合が減少したか(行動変容の有無)、組織としての取り組みが療養費適正化(医療費削減)にどれだけ寄与したかを定量的に評価します。
Action(改善): 不正発覚時の上位機関への通報と運用ルールの厳格化
検証の結果、単なるミスではなく明らかな故意の架空請求や不正請求が発覚した場合、区だけで抱え込まず、直ちに東京都(福祉局)や厚生局へ通報・情報提供を行い、行政監査・指定取消のトリガーを引くアクションを起こします。また、巧妙な請求手口が新たに判明した場合は、次月以降の一次点検のチェックマニュアルを即座に改訂し、組織の防御力をアップデートし続けます。
個人レベルにおけるPDCAサイクルの実践
Plan(計画): 解剖学・算定基準の知識習得目標の設定
担当者自身が、自らの審査スキルにおける課題を設定します。「骨・筋肉の名称と部位のつながり(解剖学の基礎)を理解する」や「補装具の算定基準の別表を正確に読み解けるようになる」といった具体的な目標を立て、必要な参考書や通知集を準備します。
Do(実行): 疑義を感じる視点の養成と日々の審査実践
毎月のレセプト審査において、単に金額が合っているかだけでなく、「なぜこの患者は休日にばかりケガをするのか」「なぜ首を痛めた翌日に足首も痛めているのか」といった、プロファイリングの視点を持ってレセプトに向き合います。少しでも不自然さを感じたレセプトはコピーを手元に残し、深く調査する習慣をつけます。
Check(評価): 自身の返戻理由の正確性の振り返り
自分が起案して施術者へ返戻したレセプトが、後日、施術者から論理的な反論を伴って再請求された場合、自身の法解釈や通知の理解に誤りがなかったかを客観的に振り返ります。専門の点検員や先輩職員の意見を求め、自分の判断の甘かった部分を検証します。
Action(改善): 知識のアップデートと自分用虎の巻の作成
反省点に基づき、誤解していた算定ルールを再確認し、次からは反論されないよう、より強固な法的根拠に基づいた返戻理由の書き方を身につけます。よく遭遇する不正請求のパターンと、それに対する有効な照会文面をまとめた自分専用の「虎の巻」を作成し、審査スピードと精度を向上させます。
他部署との連携要件
庁内関係部署との連携体制
保健福祉部門(障害福祉担当)との補装具情報の共有
治療用装具(療養費)と、障害者総合支援法に基づく補装具費の支給は、制度が異なりますが、同一人物が双方から二重に支給を受けてしまうリスクが存在します。特に車椅子や高額なコルセットの申請があった場合、国保年金課と障害福祉担当部署がシステムや台帳で情報をクロスチェックし、給付の重複や制度の隙間を突いた不適切請求を防止する密接な連携体制が必要です。
生活福祉部門(生活保護担当)との不正接骨院情報の共有
悪質な接骨院は、国保だけでなく、自己負担のない生活保護受給者(医療扶助)をターゲットにして架空請求を行うケースが非常に多く見られます。国保年金課の審査で「異常な請求パターンを繰り返す接骨院」を発見した場合、直ちに生活保護担当の医療券発行部署に情報提供を行い、その接骨院を指定医療機関から除外するための監視網を全庁的に敷く危機管理の連携が不可欠です。
外部関係機関との情報共有ノウハウ
国保連合会・東京都(福祉局)との監査・指導連携
接骨院の療養費の受領委任の取り扱いは、東京都知事と施術者との間の協定に基づいて行われています。区の権限だけでは施術所の立ち入り検査等に限界があるため、悪質な事例の証拠(患者からの照会回答書、医科レセプトとの矛盾を示す資料など)を客観的かつ論理的に整理し、国保連の柔道整復師審査委員会や東京都の指導担当部署へ迅速にエスカレーションし、個別指導や監査を動かすための質の高い情報提供ノウハウが求められます。
警察機関との連携(詐欺事件への対応)
架空請求や付け替え請求など、極めて悪質で犯罪性(詐欺罪)が高いと判断される事案については、保険者として警察への被害届や刑事告発を視野に入れる必要があります。平時から所轄の警察署の知能犯担当部署と連絡を取り合い、どのような証拠(レセプト原本、患者の供述書など)が揃えば捜査が動くのか、要件をすり合わせておくなど、行政の枠を超えた厳格な対応能力が最終的な抑止力となります。
総括と職員へのエール
療養費の点検・審査業務は、一見すると大量の書類と数字のチェックに追われる地味なルーティンワークのように思えるかもしれません。しかし、その実態は、区民が納めた大切な保険料を食い物にしようとする不正な請求と最前線で対峙し、制度の健全性を守り抜く、極めて高度でタフな「防衛戦」です。分厚い算定基準の通知を読み解き、施術者からの執拗な抗議や反論に対して毅然と立ち向かう日々は、精神的にも大きな重圧を伴うことでしょう。
しかし、皆さんが一つひとつのレセプトに目を光らせ、不正を見逃さない強固な姿勢を貫くことは、真面目にルールを守って施術を行っている大多数の優良な接骨院や装具業者を守ることにもつながります。そして何より、皆さんが守り抜いたその数万円、数十万円の積み重ねが、特別区の国民健康保険財政を支え、真に医療を必要とする区民の命を救うための貴重な財源へと還元されていくのです。
制度の隙間を突く手口は日々巧妙化し、医療と法律の高度な知識がますます求められる時代となっています。決して一人で抱え込まず、チームの知見を結集し、最新のテクノロジーを武器にして、この知的な防衛戦を勝ち抜いてください。特別区の財政と区民の健康を守る「最後の砦」として、皆さんの揺るぎない正義感と専門性が現場で大いに発揮され、輝かしい成果を上げることを心より確信しています。





-320x180.jpg)

-320x180.jpg)

